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産経抄 8月13日
心臓の移植を受けた40代の女性が手術後、食べ物の好みが変わり、性格が男っぽ
くなった。心臓を提供したドナーの家族を捜し出すと、バイク事故で脳死になった18歳
の若者の嗜好(しこう)と一致していることがわかる。
▼いわゆる「記憶する心臓」の事例が、アメリカで報告されている。似たような話が、
二千数百年前の中国でもあったことを、加藤徹さんの『怪力乱神』(中央公論新社)で
教えられた。
▼魯(ろ)の公扈(こうこ)と趙(ちょう)の斉嬰(さいえい)の2人が病気になり、名医の
扁鵲(へんじゃく)の治療を受けた。扁鵲は、2人の心臓を交換するとちょうどいいと考
え、手術を行う。斉嬰の心臓を移植された公扈は、斉嬰の家に、公扈の心臓を移植さ
れた斉嬰は、公扈の家に帰った。驚いた両家の家族は、扁鵲の説明を聞いて、ようや
く納得したという。
▼臓器提供者を増やすために改正された、臓器移植法が施行された。日本は子供へ
の移植を海外に頼ってきたが、家族の同意によって15歳未満の子供からの臓器提供
が可能になった。それに伴い、18歳未満のドナーから提供された心臓を、同じ18歳未
満の、移植を希望する患者に優先的に提供するルールを設けることになった。
▼海外のデータによれば、子供から子供への移植の方が生存率が高いのが、大きな
理由だ。子供の心臓を提供する親の心情を考慮に入れるべきだ、との声も専門家の間
で上がったらしい。
▼「記憶する心臓」に、医学的根拠はない。ただ脳の機能が知られるようになるまで、
心臓に心が宿っていると、人は信じてきた。「胸の内」といった言葉はその名残といえる。
特別な臓器だからこそ、同じ年ごろの子供のために役立てたい。そんな親の気持ちは、
わかりすぎるほどわかる。