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「エロスの姫君」斎王ことり
しとやかで奥ゆかしく、美しい。
本書のヒロイン、綾小路いろはは、まさに大和撫子である。
物語はいろは寄りの三人称で進むが、いろはの奥ゆかしさを最高の形で表現する技法であると断言しよう。
たとえば、肖像画に描かれた女性にいろはが感想を抱くシーン。
『いろはによく似ている』としたすぐ後に
『いろはよりずっと可愛らしく愛らしく』と描写されている。
ここでは、自らの容姿を大したものではないと謙遜するいろはの奥ゆかしさが最もよく表されている。
物語の後半ではいろはは、将来の夫となりえる二人の男性の性格に合わせた言葉づかいをするという気遣いを見せた。
『薔薇の鞭で戦ったとかそういうプレイですか?』は、彼ら二人の性格を知り尽くし、深い思考をしなければ出てこない言葉であろう。
大和撫子としての素質をいろははここに完全に開花させたのだ。
この素晴らしき大和撫子を育て上げたのはいろはの父、豊彦である。彼が娘の事を心底案じているのは
『あの子にはエロスの血が流れているんだ』という台詞から明らかである。案じるあまり、本人に『お前にはエロスの血が流れているのだから』と忠告している。私はここに父の深い情愛を見た。