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浜村渚の計算ノート(著:青柳碧人 イラスト:桐野壱)
理科や数学が週1時間にまで削られた日本。
これに抗議する数学者ドクター・ピタゴラスとその一味による最初の事件は長野県で起きた。
緊急徴収された数学が得意な女子中学生の浜村渚は、
各市町村に1件ずつ発生する殺人事件の被害者名を見るや否や四色問題の実証だと結論づける。
読者は浜村渚の天才的頭脳にしびれるであろう、
被害者の名前をひらがなにすると色が含まれるというだけで四色問題と確信するとは!
本書は小説なので詳しく書かれないが、他の可能性を排除するのは並々ならぬ知力のはずだ!
しかし疑問も残る、なぜ数学者が今さら四色問題を実証を?
その動機に一切の説明は無いが、行間を深読みすると別の物語が見えてくる。
実際の市区町村には飛び地がたくさんある、もちろん長野県にもあるはずなのに
四色問題が飛び地NGな事はまったく触れられない。
いや、恐らく犯行グループは飛び地と色数に関して新しい定理を発見したのかもしれない。
きっと万人向けにするため編集されただけで、凄い発見があるに違いないのだ!
ところで、この物語の本当に凄いところ2章以降である。
読者は第2の事件でも、事件の法則性を見つけるためにまた何人も犠牲者が出ると思っただろう。
しかし、第2の事件では立地条件だけで容疑者に決めつけた数学喫茶のマスターの口を割らせたのだ。
さらに、第3、第4の事件では犯行声明すら出ていないのである。
つまり数学を使えば何の証拠がなくても真実にたどり着くことができるのだ!
読者は色々疑問に思うかもしれないが、合理性を唱える者たちが間違うはずはない。
きっとレベルを抑えるためにあえて書かなかった何かがあるに違いないのだ!
本書を、数学ということで難しく考える必要はない。
数学好きのヤツらはすぐ美しさやロマンを語り、難問に挑戦したがるが、
本書の事件は数学より主に駄洒落で解決されるので、そんな高尚なセンスは不要である。
登場する数学問題もメインから小ネタまで既知の有名どころばかりなので安心だ。
その一方で、数学好きの読者は物語をよく読めば新たな命題を見出すことができるかもしれない。
表紙絵に萌えるもよし、駄洒落に笑うもよし、本格派にもよし、まさに万能な一冊である。