11/03/26 11:14:05.24 +aY3N3Rv
「こ、この馥郁たる薔薇の香り! 貴様……謀ったな!?」
男は愕然とした様子で呻いた。その手からポロリと杯が落ちる。
しかし、すでに何もかも後の祭りだった。
「謀った? 人聞きの悪いことを言わないでちょうだい」
女は嫣然と笑う。
「世界で最も美味しいお酒が呑みたいと言うから、呑ませてあげただけ。
誰もが認める世界最高のお酒、極上の九鷲酒をね」
女は笑みを消すと、踵を返した。
「ま、待て」
「ダメよ。九鷲酒はもう品切れ」
男は膝から崩れ落ちた。ゆっくりと酔いが醒めていくのがわかる。
「呑んだアンタが悪いのか、呑ませたアタシが悪いのか……」
女の呟きがいつまでも遠雷のように耳に響いていた。
ぐわらんぐわらんぐわらん