11/01/23 16:56:24 f3WdX4ZA
さて、遅まきながら本書の内容について語ろうと思う。
タイトルから、クトゥルフネタがメインの話なのかと推測してしまうが、そう一筋縄ではいかない。
クトゥルフ神話からは用語を借りるという形だけで、実際はクトゥルフ神話という枠組みにとらわれることのない、自由な物語だ。
ラブコメ+バトルという王道構成で、ラブコメシーンはお約束を守り、基本から外れない安心感がある。
バトルシーンも、主人公達は充分な実力を持っていて、危なげなく見れるので精神衛生上非常に良い。
ヒロインの生徒会長は容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能で生徒会長という非の打ち所のないように見えるが、子供っぽい一面もある。
大食いで、それを気にしている女の子らしいところも非常に可愛らしい、愛すべきキャラクターである。
他には百合キャラやら僕っ娘やら、6歳のロリ。さらには主人公が女装をしたりと、時代のニーズにそった安定したキャストだ。
恐らく作者は、クトゥルフというマニアックなネタに特化して自己満足に浸るよりも、内容自体はごく普通で誰もが安心して読めるライトな
小説をあえて目指したのだろうと想像できる。読者を思う心が感じられるではないか!
最後に、愛すべきあとがきに触れておこう。
作者はやはり、くどくどとした言い訳や弁明を行わないスマートな人物と見え、あとがきはわずか1ページだけである。
そして、そっと書かれた一文
-(前略)「この本を手にとっていただいた皆様のひとときが少しでも心豊かなものとなりますように」と祈るだけです。なむぅ。
クトゥルフ神話はコズミックホラーであり、コズミックホラーは人間の想像力が生んだホラー、恐怖である。
ラブクラフトは、巨大な宇宙や、人間が生まれる前から存在する知的な生命体を描き、その、人間の理解・想像を超えた恐怖を綴った作家である。
真の恐怖とは想像力によってこそ生まれるのだと、あたかもクトゥルフ神話など関係ないのだという風を装った作者が、最後にラブクラフトへの敬意と
愛情を込めて書いたと思われるこの一文は、晴れ晴れとした気持ち良さを与えてくれる名文である。