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名門校の女子生徒会長がアブドゥル=アルハザードのネクロノミコンを読んだら
書店でたまたまこの表紙を見かけたとき、「またか」と私は思った。クトゥルフネタで萌え小説その他を書くことは珍しい事でもなんでもないからだ。
恐らく粗悪なパロディでしかないのだろうと通り過ぎようと思ったとき、本の帯が目に入った。
いわく「※ネクロノミコンはエッチな本ではありません」
やられた!と思った。本来、このキャッチコピーは、とても購買意欲を高めるものとは思えない。つまり、これは私のように一見して粗悪な萌え小説
と決め付ける人間にたいしての狙い撃ち。
的を絞ったメタ発言と考えられる。俄然、興味を覚えた。私は手に持っていた「ラブクラフト全集6、7」と「流れよわが涙、と警官は言った」の間に本書
をそっと挟み会計に向かった。
まず、読み進めていって驚いたのは本書の読みやすさである。例えば「ラブクラフト全集」などを読めば分かる事だが、本来のクトゥルフ神話(という
より日本語訳の問題か)は、言い回しや表現に古臭さや、一種の独特な感じがあって、比較的とっつきにくい小説である。その点、本書はライトノベル
のプリミティブな方針である「手軽で読みやすい小説」に見事答えるかのようにノリのいい文章でつまづくことがない。さらに驚くべきことは、これほど読
みやすい小説でありながら、完全に読者を小説の世界に引き込まないことだ。
本を読むのに夢中でつい目的地を乗り過ごしてしまう……。そんな失敗はさせないぞとばかりに、読者と適度な距離を置く。
まさに電車の友と呼ぶに相応しい姿勢ではないか。