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なぜパレスチナ問題がここまで解決困難なのか。
それは約2000年前にローマ帝国に追放されたユダヤ人が、離散と
流浪の果てに、旧約聖書によって「神が与えた約束の地カナン(いまの
パレスチナ)に帰還するほかはない、というシオニズム(エルサレムの
シオンの丘に帰る)の考えがユダヤ人の間に強固に存在するからだ、
とされる。
それを読み、聞きして、そう思い込み、私はそれを受け売りして講演
などでも語ってきた。
ところがテルアビブ代学でヨーロッパ史を教えているというシュローム
・サンド教授が、その著書「ユダヤ人の起源」の中で、それは歴史を創作
した物語だ、農民である古代ユダヤ人の子孫たちの多くは、ローマに反乱
して敗れた後も、7世紀にイスラム勢力に支配されてからもイスラム教に
改宗してパレスチナの地にとどまった、彼らこそユダヤ人だ、と論証して
いるというのだ。
シオニズム運動を主導する者たちは社会の上層部を占めるヨーロッパ系
ユダヤ人であり、彼らシオニストたちがイスラエルそのものを危うくして
いる、と主張しているというのだ。
それが事実だとしたら、我々はパレスチナ問題を根本から問い直さなけ
ればならない。
パレスチナ問題は2000年の昔からあったユダヤ人とパレスチナ人の
解決不能な民族、宗教問題ではない。
社会の上層部を占めるヨーロッパ系ユダヤ人によって作りだされた、こよ
なく現代の国際政治によって作り出された問題であるということだ。
当然の事ながらこの著書は欧米でベストセラーになっているという。