10/11/30 07:21:36 L8F9mj7V
高橋是清暗殺後の日本―「持たざる国」への道 [単行本]
松元 崇 (著) 出版社: 大蔵財務協会 (2010/08)
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『高橋是清 暗殺後の日本』 | 一流社員が読む本
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近代国家においては、財政と金融に無知な指導層が国を動かし始めた途端、危機的状況になるか
破綻への道を歩み始める。このことは歴史を紐解くだけで無数の例があり、中でももっとも愚挙としか
言いようのない事態を招いたのが、太平洋戦争に至る日本の2・26事件以後から敗戦までの経緯かもしれない。
「明治維新」と「昭和維新」の違いは、明治維新の指導者の多くが徳川幕藩体制下において行政官として
期待された「文官」の面を持つ武士だったのに対し、昭和維新の指導者の多くは「武官」の面しか持たない軍人
だったという著者の指摘があるが、今の日本の状況を考えると、軍人の代わりに、「ポピュリズムに堕す指導層」
に対する不安と書きたくなってしまう。
256:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/30 07:22:23 L8F9mj7V
福岡県弁護士会 弁護士会の読書:高橋是清暗殺後の日本
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たとえば、第二次上海事変をソ連の陰謀によって発生したというのです(本を引用しています)。
また、1940年(昭和15年)8月の中国大陸における百団大戦について、これは、日本軍と極秘の協力関係を
結んでいた毛沢東の意に反したものだったとしています(コン・チアン氏によれば・・・・)。
2・26事件当時、繁栄していた日本が突然、「持たざる国」になって窮乏化していったわけではない。
経済原理を理解しない軍部の満州経営や華北経営が、経済的な負け戦となって、日本経済をジリ貧に
追い込んでいき、日本を「持たざる国」にしてしまった。軍部による経済的な負け戦は、「贅沢は敵だ」と
言わなければならないほどに国民生活を窮乏化させていった。それを英米の対日敵対政策のせいだと
思い込んだ(思わされた)国民は英米への反感を強め、実はそれをもたらしている張本人である軍部を
よりいっそう支持するようになっていった。そのような状況下で、本来なら戦う必要のなかったアメリカとの
大戦争に突入し、国土を焼野原にされて敗戦を迎えたのが、あの第二次世界大戦だった。
国民の食糧を安定確保することは、戦時中に政府の最重要の課題で、政府は米穀の売買を全面的に
国家統制の下に置いた。その際、地主からの買い上げ価格と、実際の生産者からの買い上げ価格に
差をつける二重価格システムが採用された。政府は、米一石あたり50円で買い入れたが、
小作人(生産者)に対しては、生産奨励のための生産奨励金が上乗せされた。小作人への生産奨励金は、
当初5円だったものが、最終的には200円にもなり、50円しか受けとれない地主の社会的・経済的基盤
を掘り崩すことになった。この仕組みの結果、終戦時には、小作人が耕作する農地は、地主にとって、
ほとんど価値のないものになり、それが戦後の農地解放を地主層に大きな抵抗なく受けいれさせる背景となった。
257:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/30 07:24:57 L8F9mj7V
週刊エコノミスト [2010年11月23日号]
◇書評
・著者インタビュー 松元 崇『高橋是清暗殺後の日本』
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無知な軍部の「経済敗戦」が日本を「持たざる国」にした
■(前略)
是清暗殺後、どうして戦争になったのか。私は、この財政金融の経済合理性を理解しない軍部が、
指導者になったからだと考えます。当時の経済財政関係者は、ほぼ、英米との協調を訴えていまし
たが、みな軍部に蹴散らされていく。
― 軍部主導の経済政策の失敗例として挙げたのが、中国・華北に「円ブロック」を形成しようと
した「円元パー(等価)政策」です。
■法幣(元)など複数通貨が流通していた当時の華北で、経済実勢とそぐわない、強引な固定レート
を設定したのです。結果、日本から大量の正貨(外貨)が流出し、経済に大きな損失をもたらす一方、
国民党の蒋介石政権の財政を助けました。
軍部が自分で自国をジリ貧に追い込み「持たざる国」にしたのです。ところが、軍部は、それを
「英米のブロック経済のせいで日本が苦境に追い詰められた」と言い立て、国民を戦争に誘導して
いったのです。
― 円元パー政策を放棄し、英米協調を図ろうとした池田成彬蔵相に、中小商工業は猛反発し、
軍部支持を強めます。
■「円ブロック」への輸出で潤っていたからです。この政策は輸出に補助金をつけているようなもの
だったから、通貨・金融政策として破綻しているにもかかわらず、やめられない状況に陥りました。
本来は、指導者が経済合理性を説明して世論をリードするべきだったのですが。
― 誰も軍部に逆らえない。
■軍部の力を強めたのが、2・26事件のような暗殺・テロです。暴力で言論が抑えられ、民主主義が
失われていく。是清暗殺後も、世論や政党政治家には「軍はやりすぎ」という感覚がありましたが、
盧溝橋事件(1937年)で軍事優先の世の中になり、戦争に突入していったのです。
258:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/30 07:26:03 L8F9mj7V
スレリンク(eco板:840番)
この「円元パー政策」は、今日の日米経済関係のいびつさとよく似ている。
日銀への政治圧力によって常に日本の金利が米国より低く設定され、
さらに巨額の円売りドル買い介入も実施して、円相場が押し下げられ、
対米輸出が下支えされる。
対米輸出に補助金をつけているのと同じであり、一見すると、それで日本は
儲けているようだが、実際には、金融面から、貿易で稼ぐ以上の資金が米国に
流出している。為替介入で得られたドル資金が米国債に投資されているという
以上の大量のジャパン・マネーが米国へ流出し、日本経済に大きな損失を
もたらす一方、米政権の財政を助けてきた。
259:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/30 07:28:27 rVpHflGq
マネー敗戦 (文春新書) [新書] 吉川 元忠 (著) 出版社: 文藝春秋 (1998/10)
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マネー敗戦の政治経済学 [単行本] 吉川 元忠 (著) 出版社: 新書館 (2003/02)
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吉川元忠『マネー敗戦』 - 資本輸入国が基軸通貨国となる矛盾
URLリンク(critic5.exblog.jp)
「マネー敗戦」で捉えられている構造とは次のようなものだ。80年代前半、米国のマネー経済は
レーガノミックスの下で急速な変貌を遂げ、経常収支が赤字となり、資本を輸入して赤字を埋めるようになる。
世界一の債権国だった米国は一転して世界最大の債務国になり、その債務を穴埋めしたのは日本からの
海外投資だった。本来、資本輸出国と資本輸入国との関係では、資本を輸出する側がその国の通貨建て
で起債し、資本輸入国が発券した債券を輸出国の貯蓄超過分が吸収する。ドイツはそのようにして、
ユーロ・マルクによる起債で資本輸入国の債券を発行させ、その債券をフランクフルト市場に上場させる
ことを発券側に求めた。日本は、なぜか円建ての起債をせず、ドル建て債券である米国債の購入のみで
資本輸出を続け、対外純資産をドルで貯めこみ、相次ぐ為替切り下げによって膨大な資産減価を余儀
なくされた。日本が蓄積した経常黒字と対外純資産は為替変動で常に減価させられ、日本経済の
デフレ圧力となり、デフレ圧力は輸出条件の円安ドル高を求め、円資金はドル債券に流れて米国経済に
成長と繁栄を齎せた。米国は基軸通貨の魔術によって、日本から米国へ富の移転を自由自在に実現し、
その構造を維持して成長と均衡を達成できた。
資本輸出国が為替リスクを負うという本末転倒した不合理な構造。ドルを支えるために資産減価の
自己犠牲を身を滅ぼすまで続ける円。これこそ「マネー敗戦」が告発する日米経済関係である。