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巻き返すと毎日ほざいていた日銭丸
巻き返すどころか巻き戻され落ちるいっぽう
『フッ俺の役目も終わったということか』
そう言うと日銭は灰皿に置いてあったタバコをもみ消し、勘定を済ませると
木床を引きずるような重い足取りで薄暗い立ち飲み店内から外に出た。
久々に見る神々しい夕焼けが日銭を照らし、眼前に広がるまだ熱い海には
カモメが鳴きながら 餌を求めて飛んでいた。
道路脇に止めてあった愛車のスズキワゴンRにキーを挿し、軽いエンジン音を
吹かせて日銭が 乗った車は遠ざかり、やがて小さな点となって峠を越えて
見えなくなった。
すずしい夜風が吹き、街に明かりが灯り始め、林の輝く夏の闇のなかで無数の
セミ達が命尽きるまで鳴きつづけ、また日銭の心もうめきつづけるのであった。