11/11/03 22:43:33.61 Rkfxyx360
まあ普通に考えたら、金作の自供を取ったほうが良いに決まってますわな。
残りの隊士を拘束するにも、隊を潰すにもそっちのが都合がいいわけだし。
さらに入隊志願の経緯についてもおかしな点がある。
金作が貰ったとされる書付の内容は「尾関弥四郎 内 村井善三郎こと易名北山」
であり、このうち村井善三郎と言う隊士は実在しないし、また尾関弥四郎が当時、万福寺にいたと言う史料も、
新撰組側の史料では裏付けが取れないが、これに自白の任意性を認めるとしてもである。
少なくとも実在の隊士たる尾関弥四郎の名前を挙げる程度には、金作は真摯に釈明している。
金作の供述には当然、自己弁護があるだろうが、少なくとも実在の隊士や接触状況を挙げて、
罪一等を何とか免れたいと思う程度には、彼は「自白」しているのである
(もちろん、彼は新撰組入隊の一事については強く否定している)
一方で富蔵の口供を見ると、入隊経緯はごく簡略で、金作のように具体名が挙がっていない。
と言うより出自を偽って入隊を志願しましたと言う誰でも創作できるようなストーリーなのである。
我々が今日、村井だの尾関だのと言う隊士名を知り得るのは金作の自供によってである。
本当に新撰組と通謀して内応を企んでいる人物がこのような供述を拘束の翌々日にあっさり行うだろうか。
ここも疑問点とされている。まあこういういくつかの疑問点が重なって
「新撰組とのつながりは名目ではないか」と言われている。
ちなみに金作がこの対決審問の後半、沈黙してしまったと言うが、
これが富蔵の反駁が原因だと確定するには富蔵の反駁は抽象的すぎる。
金作が先手を打って罪を軽くするために挙げたような具体的な隊士名の供述など、
富蔵は一切できていない。
江戸時代のお白洲では、証人の出廷じたいが裁判官の権限であり、その心証を示すものだから、
どう抗弁しても有罪の帰趨が決まっていると察した人間が沈黙してしまう例は多数ある
恐らく逮捕以来の取調で体力が消耗していたであろう金作は、富蔵の反駁を聞くうちに
抗弁が無意味であることを悟った可能性も充分あり、断定などできないのである。