11/07/18 00:19:13.82
ソ連兵に追っかけられ
二人が神社の前をとおりかかった、そのときだった。鳥居の前に立っている、ソ連兵の姿が見えた。
「お姉ちゃん、ソ連兵よ」
めざとく見つけた信子が、小声で道子にささやいた。
「知らんふりしているのよ。向こうを見たらダメよ」
道子が、ささやき返した。どんなことになるかわからない。胸がドキドキする。
そのとき、ソ連兵のうしろから、二人の朝鮮人の若者が、のっそりと姿をあらわした。
ソ連兵が、朝鮮人に、道子と信子を指さして、
「あれは、ヤポンスキー(日本人)か、それとも、カレンスキー(朝鮮人)か」
と聞いた。朝鮮人の若者は、ニヤニヤしながら、
「あの二人……ヤポンスキーだよ」
と言った。するとソ連兵は、いきなり道子たちのところへ走りよってくると、二人の背中の方へむけて、
銃剣を突きつけた。
道子は思わず、悲鳴をあげた―つもりだったが、顔面がこわばって、声が出ない。
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