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野獣新説
「あばずれんなよ・・・あばずれんな・・・」
「ちょっとホントに・・・」
田所は知っていた。遠野は学内で有名な尻軽男で、
自分は弄ばれている哀れな男の一人に過ぎない事を。
そして遠野は、自分のような醜男には決してその体を許さない事を。
いつも不真面目に受けていた文学の講義、いつもなら朝練の疲れで眠ってしまっている
あの講義で、昨日「痴人の愛」を取り上げていた。たまたま目が覚めたのは偶然ではないのだろう。田所は譲治を自身に重ねた。
教授は「モテない男が美人を手に入れようとするとこうなる」などと警鐘じみた事を良い、ゲスい笑みを浮かべていた。
いや、直面して罵られ、馬鹿にされ、玩具にされている彼の方が何倍もマシだろう。
遠野は田所を、その純情を知りながら、「頼れる先輩」として嘲笑するのだ。
田所は、顔こそ野獣と綽名されるが、心の優しい青年だった。
しかし、彼は愛の為、今宵心まで野獣と化すのだった。用意していた完璧な計画を実行するために・・・。