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■『自民党長期政権の政治経済学』斉藤淳著(エール大学・政治学者)
(前略)読み終えて思ったのは「自民党政権と貧困ビジネスは同じだったのか!」ということです。…
この本で注目すべき内容はたくさんあるのですが、個人的にあげたいのは次の3つ。
1 自民党は自らの実績を有権者に説明するのではなく、有権者にきちんと自民投票したかを説明させる「逆説明責任体制」をつくった。
2 交通インフラの整備は逆に自民党の支持基盤を破壊する。
3 そのため、自民党が強い地域では意外なことに交通インフラの整備が遅れており、その一方で、有効性の低い公共投資が行われる。
4 結果的に、自民党の金城湯池である地域ほど、実は交通インフラなどが整備されてなく経済成長からも取り残されている。
1の「逆説明責任体制」とはやや分かりにくい言葉ですが、次のようなものです。
普通、政党、特に与党だった政党は任期中の実績をアピールして選挙に臨みます。
ところが、自民党の長期政権の中で、自民党はそれほど実績をアピールせずに逆に選挙での得票状況をチェックして,
公共事業等の配分を行うことが行われていました。
つまり、有権者側が自民党に対して自民党を支持していることを「証明」しなければならなかったのです。
このように考えると、小さな村や町などで自民党の支持が厚かったことも、
単に住民が保守的だったからというのではなく、小規模な村や町ほど地方議員の数も多く、
また町内会などの結束も強いので監視が容易だったからと考えられるのです。…
3。竹下登、青木幹雄という自民党の有力者を出した島根県は全国でも有数の「自民王国」ですが、交通インフラは未発達なままです。
この地域でもっとも重要だと考えられる山陰自動車に関してもいまだに全面開通には至っていません。
一方で島根県では、現在は中断された中海の干拓事業に30年以上にわたって500億円以上の工費が投じられました(133ー135p)。
そして、島根県の人口一人当たりの行政投資額は1980年代なかばからずっと全国1位です。
つまり、島根ではあえて交通インフラを整備せず、それ以外の分野に集中的に公共投資が行われているのです。
もちろん、単純に新幹線や高速道路を熱望し、その実現に尽力する自民党の代議士も多いでしょうが、
島根ではより狡猾な戦略がとられていたと考えられます。
そこで4。
自民党の代議士にとって有利な公共事業とは、実は経済成長を実現させるものではなく、いつまでも自らがコントロール可能なものです。
ということは素早く完成させる必要はなく、場合によってはいつまでもダラダラと工事が続いたほうが自民党の代議士にとっては有利になります。
本書に皮肉なことに与党の政治家は、地元後援会や業界団体の要求に全く応じない場合には支援を受けられないが、
逆に早期に要求を実現してしまうと、その後の支援体制が弱体化する可能性が高かった。(16p)
とありますが、八ッ場ダムなどはまさにその成れの果てと言えるのかもしれません。…
もちろん、自民党の個々の代議士があえて自らの地盤を低成長のままにとどめようとしたわけではないでしょうが、
結果として、自民党の支持基盤が厚い地域ほど、経済成長から取り残されているような現象が起こっています。
冒頭で「貧困ビジネス」といったのはこのことで、貧しい地域は公共投資を得るために自民党に頼るしかないが、
その投資は有効なものでないため経済成長は起こらない、よってますます自民党に頼るという、
ある種の負のサイクルが働いていたことがこの本からは読み取れるからです。
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