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2011年1月8日 朝日新聞
140人に不要な心臓手術か 奈良・山本病院
診療報酬詐欺事件の舞台となった奈良県大和郡山市の医療法人
雄山(ゆうざん)会「山本病院」(破産手続き中)で、入院患者
140人が不要な手術を受けた可能性のあることが大阪市などの
調査でわかった。医療費が全額公費で負担される生活保護制度を
悪用し、過剰診療で不正請求した疑いがあるとみられる。専門医
が手術の様子を記録した動画などを鑑定し、判断したという。
不正が疑われるのは、狭心症や心筋梗塞(こうそく)の治療で
心臓の血管を金属製の筒で広げる「心臓カテーテル手術」で、山
本文夫・元理事長(53)=詐欺罪で服役中=が主に担当した。
入院していた生活保護受給者の医療費を負担した大阪市など複数
の自治体が、不正な医療費の返還を求めるため、奈良県警から県
に返された手術の記録動画CDやカルテなどを借りて分析した。
大阪市によると、116人分の動画CDやカルテについて、大
学病院の医師7人に鑑定を依頼。カテーテル検査・手術で診療報
酬を請求できるのは、血管内側の75%以上が詰まっている場合
に限られるが、98人が要件を満たしていなかったという。市の
担当者は「98人のうち半分ぐらいは血管が全く詰まっていない
状態で、手術の必要がないことは明白だった」と話す。
京都市や堺市、大阪府東大阪市でも同様の鑑定をした結果、計
52人中42人が基準を満たしていなかったという。
同病院は事件発覚後の2009年7月、県に休止届を提出、同
12月に破産手続き開始が決まった。約1億1300万円の返還
を求めた大阪市をはじめ、堺市や奈良県など29自治体が計約3
億2千万円の債権届を医療法人の破産管財人に提出。大阪市など
は鑑定した医師の「検査・手術の必要性はなく、請求は妥当でな
い」との意見書も付けた。
だが破産管財人の藤本卓司弁護士は昨年12月、「不正の証明
が不十分」として全ての債権を認めないと決定。大阪、堺、京都
各市など5自治体はこれを不服とし、今月中旬にも奈良地裁に債
権を認めるよう「査定」を申し立てる方針だ。藤本弁護士は「高
度な専門性を伴う診療行為は医師によって見解が分かれる。今後
の手続きの中で裁判所に判断してもらうことになる」としている。
県警が詐欺事件で立件したのは過剰診療ではなく、手術をして
いないのにしたように装った手口の8人分にとどまった。捜査関
係者は「不必要な治療だと思っても、医師の裁量で行ったと主張
されれば反論が難しかった」と言う。
◇
〈山本病院事件〉
山本文夫・元理事長は2005年1月~07年5月、生活保護
受給者だった入院患者8人に心臓カテーテル手術をしたように装
い、診療報酬計約830万円をだまし取ったとする詐欺罪に問わ
れ、奈良地裁で昨年1月、懲役2年6カ月の実刑判決が言い渡さ
れ、確定した。また、不慣れな手術で患者を失血死させたとして、
業務上過失致死罪にも問われており、奈良地裁で公判前整理手続
きが進んでいる。