11/05/28 08:14:18.15
悲しい夢を見た。僕はゲームの主人公で、大好きな子がいるのだけれど、その子が自殺
してしまう夢だ。そして、僕はこの世界がゲームであることに気付く。
二回目。リトライ。僕は最短距離を突っ切って、彼女の元に駆けつける。でも、その子
が死ぬタイミングには決して間にあわない。
三回目。障害物を全て取り払うチートを発動。僕は階段を駆け上がる。それでも、あと
一歩だけ、遅すぎた。
四回目。彼女の性格を楽天家に書き換える。僕は屋上へと続く階段を駆け上がる。でも
ストーリーは変わらない。彼女は僕が手を伸ばしても届かない場所へと、僕の瞳を見つめ
ながら消えていく。畜生。畜生。畜生畜生畜生。
五回目。僕は彼女とずっと一緒の時を過ごす。運動会 彼がためつくる お弁当 地豆
が二つ じっと手を見る。そんな短歌を読む。彼女は笑う。リストカットのあとをリスト
バンドで隠して、何の後ろめたさも無いかのように、彼女は笑う。それがゲームの中のワ
ンシーンに過ぎないと知っていても、僕は涙が止まらない。
どうしたの? と彼女が訊いて、なんでもないよと、僕が答える。僕は彼女に、次、リ
レーだから行ってくる、と告げる。彼女は一言、がんばってねと行って笑った。本当によ
く笑う子なのだ。僕は彼女の手に、家から持ってきた絆創膏を渡す。分かっていたのだ。
彼女が料理で怪我をすることくらい。
僕はアンカーバトンを受け取る。僕は全力で走る。そして僕は転ぶ。諦めずに走るも、
赤組は白組に負けてしまう。汗だくになった僕に、彼女はタオルを手渡す。よくがんばっ
たね。そう言って、彼女は僕に慰めの言葉を投げかける。
僕は彼女を抱きしめる。恥ずかしいと言われても、かまわない。僕は彼女を強く抱きし
める。いつか必ず失ってしまうであろう、彼女のことを。脆く儚いこころを持った、彼女
のことを。
悲しい夢を見た。僕に大好きな人がいて、その人が死んでしまうゲームの夢だ。
けれどもそれが夢だと分かってなお、僕の目からは、涙が止まらなかった。