11/05/31 21:46:32.63
今日は卒業式。壇上の教頭先生は、卒業式でも相変わらず髪の毛が薄い。仕方ないけど。
運のいいことに、今年は桜が咲くのがはやい。私たちが在校生として学校を訪れる最後の日には、校門近くの大きな桜の木が既に薄紅色を大きく広げていた。
風があまり吹いていないからか、宙を舞う花弁もあまり見かけないが、そっちのほうがいい。
式が終わったあとで、みんなと、この木の前で写真撮影をするから。あとで、卒業式の写真って言って見てみて、やせ細ったような桜が背景だったら、悲しいでしょ。
はあ、いよいよお別れか。
泣くもんかって思っていたけど、やっぱり駄目だ。もう鼻の奥がじんじんしてる。
そんな私の、泣きそうな感じが退くのを待つわけにもいかないだろう。式は着々と進み、今、マイクの前にいるのは校長先生だ。
いつもは、意図的につまらなくしているとしか思えないお話も、これが最後だと思うと、ちょっと嬉しくもあり、寂しくもある。
私は、涙がでないのを祈りつつ真剣に聴いてやった。
「--諸君は三年前、この大きな幹に集まり、それからというもの、大きく花開くことを夢見て、いまかいまかと待ちかまえていました。
そしてそれぞれの枝に、各々膨らませてきたつぼみを、今、大きく広げようとしています。私たち教職員が、養分を送ることができるのは今日が最後--」
悪化した。視野の下の方がちょっと滲んでる。
今ならまだ大丈夫。涙を溜める程度なら、卒業後の扱い『泣いていないサイド』に引き返せる。
なんとか我慢して卒業式を乗り越えた。校歌で危なかったけど。
あとは、写真撮影を乗り越えれば完璧だ。打ち上げあるとかないとか誰かが言ってたけど、楽しめばそれもいける。
前のクラスが終わって、私たちは桜の木の前にぞろぞろと整列する。珍しく、今日は男子も並ぶのが早かった。
涙を堪えるのに必死で、悪ふざけをする余裕がないのだと、勝手に決めつけた私は、一人ほくそ笑んだ。