11/09/19 00:36:01.19
和夫は子どもたちを連れて栗拾いに出かけた。
蒸し暑く、首にかけたタオルは汗が絞れそうなほどになった。
時折、イガに気をつけろ、木陰に入れと声をかけながら、そう言う和夫自身が
木々の合間から射す日を見上げながら、木陰を選んで帰路を進んでいた。
あ、秋だ。
直視できないほど眩しい日差し、じっとりとまとわりつく空気、それらはいかにも
夏のものだったが、見上げた空に浮かぶうろこ雲は、静かに秋を告げていた。
そう思って空を見直すと、オレンジ色の日差しも夏と異なる柔らかさを含んでいる。
日本古来の文化は、現代の季節感と合致しないものが多い。
和服しかり、俳句しかり。しかし、DNAの感性に埋め込まれているのか、
季節の先取りとして楽しめたりする。
山風に たなびく髪の はかなさよ
下手な句ひとつ読んで、はて、自分の頭はまだ秋か、それとも
季節を先取りして、すでに冬に突入しているのだろうかと、
彼の頭髪程度に哀愁をにじませた和夫の目に、東の空に煌く一番星が映った。
「システム」「スポンジ」「袋」