この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十五ヶ条at BUN
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十五ヶ条 - 暇つぶし2ch209:名無し物書き@推敲中?
11/09/19 00:36:01.19
 和夫は子どもたちを連れて栗拾いに出かけた。
 蒸し暑く、首にかけたタオルは汗が絞れそうなほどになった。
時折、イガに気をつけろ、木陰に入れと声をかけながら、そう言う和夫自身が
木々の合間から射す日を見上げながら、木陰を選んで帰路を進んでいた。
 あ、秋だ。
 直視できないほど眩しい日差し、じっとりとまとわりつく空気、それらはいかにも
夏のものだったが、見上げた空に浮かぶうろこ雲は、静かに秋を告げていた。
そう思って空を見直すと、オレンジ色の日差しも夏と異なる柔らかさを含んでいる。
 日本古来の文化は、現代の季節感と合致しないものが多い。
和服しかり、俳句しかり。しかし、DNAの感性に埋め込まれているのか、
季節の先取りとして楽しめたりする。 
 山風に たなびく髪の はかなさよ
 下手な句ひとつ読んで、はて、自分の頭はまだ秋か、それとも
季節を先取りして、すでに冬に突入しているのだろうかと、
彼の頭髪程度に哀愁をにじませた和夫の目に、東の空に煌く一番星が映った。

「システム」「スポンジ」「袋」

210:名無し物書き@推敲中?
11/09/19 00:37:48.55
>>209です。ダブったので次のお題は>208でオネガイシマス。

211:「山びこ」「潮目」「金糸卵」
11/09/19 04:33:31.67
 俺はトレジャーハンターを名乗ってはいるが、所詮趣味であり本業で稼いだ金を趣味に貢いでいるだけだった。
今探しているのは剣山に隠されたと言う秘宝だった。

 いろいろな情報を集めていると錦糸玉子を思い出す。
細く切り裂かれた情報を集めることで形になる、しかも秘宝とくればゴールド、まさに錦糸玉子だ。
 俺の持論はさておき、情報を集めていくと-正しいかどうかは別として-大きな潮目を迎えることがあり
今がまさにそうだった。

 石鎚山は霊峰として、死者が天に上る山として有名だが、いろいろ調べるともうひとつ香川の外れに石鎚山があった。
そのふもとの集落は帰来と呼ばれていて表の石鎚と対を成す、死者が帰り来る山だった。
この地域は弘法大師が開いた四国霊場88箇所を結んだ線の外にあり、一説には高野山の候補地だった話もある地域だ。
 88箇所は秘法を封印するためのもの・・・そういう説もある。なら、なぜ高野山は和歌山にあるのだ?
この地域は剣山の鬼門に当たる。本当に封印ならここのほうが相応しい。
 この説を裏付けるように、この地域にはヤマトタケルに関わる神社があり、源義経が戦勝祈願に参拝したと言う記録もある。
ここの神主は朝廷から派遣されていたらしい。京の島流し先でもあったこの地域に・・・だ。
そして神社本殿からまっすぐに鳥居を眺めるともうひとつの石鎚山がその延長線上にある。

 しかし地元の人に話を聞いていくと歯切れが悪くもやもやが溜まっていく。
俺の調査ではこの石鎚にこそ秘法があるはずだった。とにかく山に登って調査することにした。
この山からは剣山が見えるはずだ。

 しかし、1週間さがして何の手がかりも見つけられなかった。
静謐とした山頂では、誰かの声がやまびことして響いてくるだけだった。

つぎ>>209の「システム」「スポンジ」「袋」 でお願いします


212:名無し物書き@推敲中?
11/09/21 00:01:20.17
姉の部屋に入ってブラジャーを着けたのは事実ですが
計画したわけではありません。たまたま家に一人だったのと
ネットでいやらしい画像を見たせいです。

裸になりそのブラジャーを着けたとき僕が感じたのは
とても不思議な感情だった。一言で言えば自らの心の中に
女性を発見したということになるのだけど、僕が感じたのは
自分が子供のころ―意識というものが生まれる前―の
自分の写真を見ているような感じだった。

僕は工作用にあったスポンジを丸めるとブラジャーの中に入れた。
そしてTシャツを着ると外に出た。

真夜中のコンビニには客がいなかった。カウンターでバイト二人が
おでんの具を入れながら雑談している。僕は胸が高鳴った。

「システムオブダウンですか? しらないっす。かっこいいんですか?
いやー洋楽とか聞かないですもん。いらしゃいませー」
僕は財布を出しながら
わざとらしく胸を突き出してみたがバイトは何も言わないし表情一つ変えなかった。
(つまんねー)僕はそう思ってコンビに袋を受け取った。

月は雲に隠れていた。なんだかテンション下がりまくりだ。
僕は思った。駐車場の陰でオナニーでもしようかと思ったとき後ろで声がした。
そして懐かしき制服の姿が見えた。
「こんばんは! おにいさん。ちょっと良いですか?」





213:名無し物書き@推敲中?
11/09/21 00:10:34.99
警察官の職務は他人の趣味を詮索することではないのだ、たぶん。
僕の胸が大きくなってることは分かっているのだろうけど
一言もそのことについては触れようとしなかった。
「ご協力ありがとうございました!」

僕は住宅街に消えていく、その二人組みの警察官の後姿を見ながら
ちかんにも相手にされない不細工な女のことを考えていた。
そして夜空を見上げ月の形がさっきと変わらないのを確認した。





学校 泥棒 魚 


214:「学校」「泥棒」「魚」
11/09/21 00:49:00.58
 俺の名は怪盗ホワイト、小学校専門の大泥棒だ。
そんな所で何を盗んでいるのかだって?
ダメダメ盗んでいるものをばらしたら、いろいろと大問題だ。
子供たちの未来に影響するから、そこは黙秘権を行使させてもらおう。

 言っておくが、俺は夜ではなく昼間に堂々と盗みを行う
俺は人気者なので子供たちは警戒心も無く近づいてくる。
だが小学生の相手は疲れるので無視するに限る
 そして俺は学校の中庭にある小さな池の前に来た。
俺にかまってくる子供たちも休み時間が終わればいなくなる。

 ふちに座り、ひたすらその時間を待ち、そしてチャンスを待った。
大泥棒の所以はチャンスが来るまであきらめないしぶとさにある
国にも指定されている大事なお宝を諦めるはずが無い。

 この仕事が終わればこの学校からおさらばするつもりなのだが
さすがに警戒されているのかチャンスは訪れない。

 だが執念の前に女神は苦笑した

ばしゃ!

 俺の前足は一瞬でめだかを捕まえた。
金魚や鯉はとっくに盗みつくし学校最後の魚だ。
育てていた子達は悲しむだろうしトラウマになるかもしれない。

だが、そんなものは関係ないこれが野生の掟なのだ。
俺は、めだかが動かなくなるのを確認して歩き始めた。
さぁ今夜の餌は誰にもらおうかな?

次は「とうふ」「アフリカ」「スカイライン」


215:名無し物書き@推敲中?
11/09/23 19:20:34.66
水槽の明かりだけが部屋を照らしている。
天井や何も無い壁に不規則な模様が現れては消え、現れては消える。

私は水槽の前に椅子を持ち出し、何分も中にいるアフリカアロワナを眺めていると
この部屋の主人はこいつなのではないかと錯覚することがある。
私が部屋を留守にしている間、私に隠している能力で持って移動し、食事をし
蛇口をひねっているのではないかと。

まさにそれは妄想だ。でもこの三メートルもある水槽を幾千もの金色の
ウロコを輝かせながら泳いでいるのを見ると、あながち妄想と片付けてしまう
というのも詰まらないと思う。

私は空腹を感じ帰りに寄ったスーパーの袋から豆腐を取り出すと
醤油をかけながら再び水槽の前に戻る。
その時、魚が跳ねて水滴が舞った。

私は眠りにつく前に考える。私が見る夢はきっと魚の意識に影響を受けているだろう。
魚が故郷で見た生まれたばかりの赤ん坊を洗う乳母の姿や
ジャングルの間から見える革命軍の兵士の銃を見た意識が
私の夢に入り込む。そして私は魚の変わりに夢を見るのだ。

魚は私の変わりにスカイラインの夢を見るだろう。きっと車は泥の色をした長い川を身をくゆらせ
上っていくに違いない。


216:名無し物書き@推敲中?
11/09/23 19:21:39.56
お題を忘れました


台風 殺人 子供

217:名無し物書き@推敲中?:
11/09/23 23:26:06.63
また日本に天災がやってきた。地震の次は台風だ。
私の故郷はきっと大昔に意地の悪い領主が民から税を巻き上げ、神への供物さえ出さなせいような状況にして呪われでもしたのだろう。
ここまで不幸が重なるとこんな変な妄想だって出てくるものだ。いわゆる現実逃避だ。
つらい現実というのは、あるラインを超えるとどうでもよくなって来たり、笑えて来たりする。
こんな妄想だって、ちょっと前の私はする余裕もなかった。

地震のあとに隣の吉田さんの家具の一部がなくなっていた時は、こんな時にひどいことする人もいるのだと憤慨した。
行方不明の夫のおなかに瓦礫にまみれて柳包丁が刺さっていた時は私の夫はだれかに恨まれていたのか。
とか、最近出世しだしたのを邪魔になったのだろうか。など、地震の中逃げ出せていたかもしれない。
など、殺人犯への恨みや日常の幸福がなくなった悲しみに半狂乱になっていたものだ。

今はもう、私の心は台風の過ぎた空のように、吹き荒れる風も、温かな空気も、すべてがなくなった。
冷たく、それでいて風すら吹かない私の心。全部を子供が空へと持って行ったのだろうよ。

次 ティッシュ ライトノベル(ラノベ) サイダー でお願いします

218:名無し物書き@推敲中?
11/09/24 16:40:34.30
トイレの個室に飛び込むや否や、ズボンを一気にずり下ろし、ケツを突き出した。
「バピーパブププ」
肛門から勢いよく噴出する俺の汚物が、喜びのファンファーレを奏でる。
やれやれ。完璧、アウトだと思っていた。勝利の笑みを浮かべながら、トイレットペーパーに手を伸ばしかけ、驚愕の事実に気付いた。
トイレットペーパーが切れている!
ポケットを探っても、ティッシュもハンカチもない。あるのは、先ほど図書室で借りたばかりの新刊のラノベだけ。
「ごめんなさい!」
俺はページをビリビリと千切り、ケツを拭き、便器に捨てた。
しかし、ペダルを踏んでも「ズモモモ」と水が溜まるばかりで流れない。
なおも必死にペダルを踏み続けると、逆流でもし始めたのか、サイダーのような泡が
立ち始めた。

次  石原都知事  フラメンコ  保育器


219:「石原都知事」「フラメンコ」「保育器」
11/09/24 18:45:31.36
 我が校には有名な娘(こ)がいる
見た目も可愛く性格も基本的に良い……でも一点だけ意味不明なところがある。

 名前がカグヤだからと、告白されると3つの物を集めて来いというのだ
僕も告白したとき「イシハラトチジ」「フラメンコ」「ホイクキ」の3つを指定された。
こんなものどうしろというんだ?

 僕は悩みに悩んだ、石原都知事なんてどうしろと?
悩んだ末に電話帳で石原さんを眺めていた。すると近所に”石原橡滋”という方がいて電話したところ、散々笑われたけど手伝ってくれることになった。
 フラメンコはいろいろ探したけど田舎の都市ではフラメンコ教室などは無くインターネットで探してみると”フラメンコ(フランドル地方の音楽という意味)”という言葉があったので、だめもとでCDをレンタルした。
 レンタルといっても近所のお店には無くインターネットで借りる無料体験で何とか手に入れた。

 最後のホイクキ保育器はどうにもならない。個人で持っているものじゃないし産婦人科に連れて行くこともかなり恥ずかしい、と言うか無理だ普通こない。
外国人でホ・イクキとかホイ・クキみたいな人を探したがいるはずも無く、こればかりはダウンロードした写真を印刷した。

 無理やり3つそろえて、カグヤさんを公園に呼び出した。
彼女は石原橡滋さんに大うけし「童話でもそうだけど断る口実だってわかるでしょ?でも橡滋さん最高!」とけらけら笑いながら、まずは友達からはじめる事になった。

 彼女とデートの約束をしたがまた3つのお題が付いた・・・

次のお題は「インド」「オリオン」「カンガルー」



220:名無し物書き@推敲中?
11/09/26 02:04:07.15
私は登山が好きである。子どもの頃は地元の小さな山を休日ごとに登っていた。
年齢が上がるにつれ、北岳登頂、南アルプス縦走など本格登山も楽しんだ。
社会人になり、あるきっかけでエアーズロックに登ってみた。
高さ348mということで軽いハイキングのつもりだったが、急な斜面、
足場の悪いガレ場続きで、自然を馬鹿にしてはいけないと感じた、いい経験だった。
赤ちゃんをポケットに入れて、キョロキョロ周囲を見ているカンガルーは
愛くるしさに見とれたが、オーストラリアに生息する生き物たちの不思議な生態、
現在の危機的な環境を思うと、登山が常に危険と隣り合わせなのは、
自然があえて人類に挑戦しているような気すらしたものだ。
そんな山男に砂漠を勧めたのは、休暇のたびインドへ飛び立ってしまう程のフリークだ。
うだる暑さの中、タール砂漠を歩いた夜、疲れ果てた私はシュラフを用意するのさえ
億劫で、砂漠にごろりと寝転んだ。
昼間の熱気を吸い込んだ砂が、温かく、柔らかく私の体を包み込んだ。
満天の星空はまさに降るような煌めきが散りばめられ、せいぜいベルト部の
3つの星で見分けられる程度のオリオン座が、くっきりと人の姿に浮かび上がって見えた。
どんなに高級な布団よりも優しい砂に抱かれ、私は生まれて初めて、
自然に対する過度な緊張を解き、母なる大地の偉大さを感じたのだった。

次「写真」「霧吹き」「コースター」

221:名無し物書き@推敲中?
11/09/26 07:46:40.18
その自殺した作家で有名なバーに入ったとき思ったのは
古臭くて薄暗いけど何だか居心地が良いなということだった。
同僚と二人、カウンターに座りビールを注文する。
夏の夕方にはまだ客は我々、二人しかいない。手伝いの
おばさんが忙しげに準備をしていた。

「ほらあの写真。Sも見たことあるだろ?」
そうWが言って指差したのは私もどこかで見たことがある
作家が片足を椅子に上げている写真だった。

「なんでも別に作家のために写真家がココに来たけど
彼が俺もとれって言ったらしいね」
私は、うなづきその写真を眺める。作家がかつて座っていた席には
今も同じようにそこにある。
「Y子は好きらしいよ。彼のこと」
そういって共通の知り合いである女性のことを口にした。

店の温度は高くグラスには霧吹きで吹いたような水滴が
ついている。私はスーツを脱ぎ作家と同じようにワイシャツ姿になった。
グラスを持ち上げ、カウンター裏の酒のボトルを見る。
シャンデリアのような色とりどりのボトルたち。作家はどれをどのように表現するだろう?
私にはうまい言葉が見つからない。
そして濡れたコースターにグラスを戻す。

「ああ良い気分だ」
同僚がそういって背伸びをする。私も同感だった。
夏はまだ始ったばかりで給料は多くなかったが
私達は若かった。
そしてグラスに新しいビールを注いだ。


疲労 休日 携帯

222:「疲労」「休日」「携帯」
11/09/28 22:06:10.48
「あ~ひび入ってますね、しわも一杯」
「何年も使われていたからな。金属疲労もおこすさ」
「これじゃ使えませんね」
「そうだな困ったもんだ」

 壊れたはしごを横目に先輩後輩らしき二人の男が荷物を下ろしていた
後輩は携帯を取り出し電波状況の確認を始めた。

「彼女と電話か?」
「帰る頃には彼女も休日ですからね。映画でも行こうかと」
「あ~はいはい、誰もそんなこと聞いてない聞いてない」

 後輩が電話で楽しそうに話す横で、先輩はバッテリーの切れた自分の携帯を恨めしそうに見ていた。
しばらくして携帯を耳から話す後輩。

「やっと終わったか、携帯かしてくれないか?」
「バッテリー切れちゃったんで使えませんよ?」
「そうか」

 寂しそうにつぶやく先輩。

「どうかしましたか?」
「1つ相談があるんだが、どうやって助け呼ぼうか?」


次「ハタハタ」「病院」「馬」でお願いします

223:「ハタハタ」「病院」「馬」
11/09/30 15:25:25.37
 『人気天才ジョッキー 羽田 葉太(はねだ ようた)落馬で選手生命危ういか!?』
「……チッ」
 今朝のスポーツ紙の一面を堂々と飾った俺の名前。ガキの頃、
地元で良く捕れた魚に因み「ハタハタ」と呼ばれて、それをかなり嫌がっていた事を不意に思い出す。
心の奥底から湧き出る苛立ちを抑えきれず、病院のベットの上で文句の一つも言えない事も相俟って、
そのイライラをぶつける様に、新聞を傍にあるゴミ箱に叩き付ける様に投げ捨てる。
「どいつもこいつも、知った様な事言いやがって」
新聞各紙では「復帰は難しい」だの「引退を考えている」だの、好き勝手に書かれていた。
「……冗談じゃねぇ」
俺はベッドの傍に立て掛けてある松葉杖を手に取り、リハビリ室へと向かう。
「待ってろよ、『ハタノハタタカミ』。こんな怪我、直ぐに直して戻ってやるから……」
まだ慣れない松葉杖に悪戦苦闘しながらも、俺は一歩一歩、着実に歩みを進める。
略すと同じ「ハタハタ」になる、長年連れ添った相棒とも言える馬の名前を、心に浮かべながら―。

次のお題 「チャット」「明治維新」「横断歩道」でお願いします。



224:「チャット」「明治維新」「横断歩道」
11/10/01 21:21:56.76
 僕が歩いている道は元々川だったところを道路にしたらしい
信号の名前は「石橋」きっとここには橋があったのだろう
横断歩道を渡ると、電柱の影に欄干?のようなものが残っており
そこには「大浦橋」とかかれていた。

 明治維新で日本は文化的に自然と歩む国から
工業が優先される国になった。別にそれは当時の世界を見れば
いや、近くの国々を見るだけでも必要なことだったのだろう。

 だけど、それは本当に必要なことだったのだろうか?
少なくとも、川を消す必要は・・・明治維新が原因ではないが・・・なかったのではないか?
近くの人を捕まえてチャットをしてみたいけど、こんなときに限って誰もいない。

 僕はなんとも言えない切なさのまま仮想現実の町並みからログアウトした。

次は「巾着」「万国旗」「飴」でお願いします。

225:名無し物書き@推敲中?
11/10/01 23:22:06.70
「巾着、じゃなかった茶巾って知ってる?
あっ? 知らない。茶巾っていうのはさ虐めなんだけどね。セーラー服の
スカートをたくしあげて頭の上で縛るわけなんだけどさ。酷いよね。
俺は実際見たこと無いよ。だって男子校だったからさ。だからニュースとかで
聞いたのかな? どこで聞いたか忘れたけど、俺たちの時代はそういう虐めがあったんだよ。

やられた方は恥ずかしいよね。男子の目もあるし。そうそうたぶん女子が女子に
やるんだろうな。陰険だよ。なに嫌だよ。お前話し聞いてないだろ。ほらやるよホールズ。
飴なめて仕事はするなよ。休憩終わったら捨てとけよ。えーとそれで俺は男子校だったから
その現場は見てないんだけどね。見てないって言うと茶巾にされた方は真っ暗で見えないね。

えろいよ。今の子は下着の上になんか履くけど昔は履かなかったもん。
バンバンバン万国旗! 笑えよ。俺の新しいギャグ。バンバンバン万国旗。笑えない?
最近すべり芸も駄目? 万国旗! あっちょっと笑ったw 万国旗! 休憩終了」


弁当 殺人 スズムシ



226:名無し物書き@推敲中?
11/10/02 07:40:59.17
騒ぎが起きて、俺は授業中の居眠りから覚めた。
「なんだ? 何かあったのか」
クラスの連中が、次々と教室から出ていく。
「大変だよ。隣のクラスで殺人だってよ。警察が着てシートで隠す前に死体
を見ておかないとな」
何を考えているのか。
気がつくと教室に残っているのは俺一人だ。
俺は殺人には興味がない。
この状況で俺が興味を持っているのは、憧れのクラス委員長・碧川アリスの
私物を物色することだ。
教室に誰もいなくなったことをいいことに、俺はアリスの席に座り、横に掛
けてあったきれいなカバンを開けてみる。
案の定、中にはピンクのハンカチに包まれた小さな弁当箱が入っていた。
俺は興奮気味に弁当箱を開ける。
すると中には、真っ白いご飯。
そしてその上には梅干しの代わりに、なぜか一匹のスズムシが押し込められ
ていた。
「な、なんだこれは?」
俺は周囲をキョロキョロと見回し、そして目撃者がいないことに少しだけ安
心して、弁当箱を元通りに包み直してカバンにしまった。
多分、これは「組織」からのメッセージだ。
あのスズムシはトリガーに違いない。
今夜あたり、夢の中に引き金に導かれた次の指令が浮かび上がってくるはず
である。
「やれやれ」
俺は少し疲れて、気分転換に隣の教室の殺人とやらを見に席を立った。



次のお題 小説教室 映画監督 同人誌

227:名無し物書き@推敲中?
11/10/03 00:02:48.07
小説教室に通っているような男と映画監督になりたいっていう男は
彼氏にしちゃいけないし、万が一結婚なんてことになったら親子の縁を切る。
と母親に言われた。うちの母親が何故これほどまでに嫌うか理由はしらないけど
父親がシナリオライターだからかもしれない。つまり母親は父親が嫌いなわけだ。

でも母親が父親を嫌いって言うのは子供にしてみれば悲しいことだ。本当に悲しいこと。
だって母親は綺麗じゃなくてもいい。貧乏でも良いから両親が仲良くしているのが
一番の幸せ。と私は思う。他の人もだいたいそうなんじゃないだろうか?

母親は彼氏の条件なんていうけど、私は彼氏を選べるような人間じゃない。
バイトは長続きしないし可愛くない。
私の友人というか知り合いに今度、東京である同人誌の集まりに行こうと誘われた。
彼氏とか出来るかも? とか思ったけど、まさかねえ。

もし私の心がグラスで幸せがお水なら、私の心には半分より少し少ない
お水が入っている。だから誰かに水を注いでほしい。



熊 マントヒヒ ヒグラシ

228:名無し物書き@推敲中?
11/10/04 21:14:29.65
「なんだ? お前、怯えているのか。そうかそうか、愚鈍な粗暴者たるお前
でも、今、自分の囚われた状況を把握する知恵はあるとみえるな。まあしか
し、そうでもなければ、今までこの世界で単独で生きてはこれぬさ、な。ま
ずはお前さんのこれまでの運に乾杯しようじゃないか。なに? 怖くて俺様
の杯が飲めぬか。ふん、無礼者め。ここでお前の日頃の根性を絞り出し俺の
相手ができるのなら、あと少しはお前の寿命も延びたかもしれぬのに。ふん、
所詮はお前はちっぽけな存在なのさ。力は、数には叶わぬ。お前はわしらの
仲間を一匹か二匹は倒せるかもしれない。だが、お前が勇敢な先兵の相手を
しているうちに、第二、第三の牙と拳がお前を葬る。お前は耳を削がれ、手
足を食いちぎられ、生きながらわしらの臓腑の闇に消える。骨も肉も、この
世からなくなるのだよ。どうだね、ビッグ・プー、何か言い残すことはある
かね?」
 数十頭のマントヒヒに取り囲まれた哀れな一匹の熊は、苦しげに思案の糸
をたぐった。脳細胞のシナプスは今の彼にとっては蜘蛛の糸そのものだ。
 と、その時--。
 ビッグ・プーが目を剥いて天を見上げた。
「あっ!あーっ!ヒグラシだ。ヒグラシが飛んでる!」
 途端にマントヒヒの群れに動揺が走った。
「ヒ、ヒグラシだって?!」
「バカな! そんなハズは……!」
「助けてくれー」
 マントヒヒ達は動揺し、熊の指さす天を見上げた。
「みんな落ち着けー! そんなものはいないぞ。騙されるな!」
 頭領の一声で、一同はふっと我に返る。
 だが--時すでに遅く、熊のビッグ・プーは逃げた後だった。

次は「太陽光発電」「アロマロカリス」「産婦人科」でお願いします

229:名無し物書き@推敲中?
11/10/04 23:48:38.21

 生まれてきた子供は酷く不気味だった。

「生まれたての赤ん坊なんてみんなそんなもんだよ」と大抵の人は言うに違いない。しかし私の子供は猿に似てるとかそういった次元の話ではないのだ。

 エビ……だろうか?いや、こんなエビ見たことない。平たい胴体の両脇にヒレのようなものが並んでいる。カタツムリのように突き出した目は愛嬌を感じさせないこともない、しかしこれは……。

「元気な男の子です」

 産婦人科の先生は無表情でそう言って我が子を差し出した。どう持ったらいいのか戸惑いながらも抱いてやる。
口元はかなりグロテスクでお世辞にも可愛いとは言い難い。しかし我が子なのだ、妻と私の愛の結晶なのだ、多少見た目が普通とは異なっていても愛情を注いで育てていけばそのうち、愛くるしいかけがえのない存在になるはずだ……なるはずだ。

「抱かせて」

 ようやく落ち着いた妻がそう言って手を伸ばしてきた。私は少し戸惑ったが、妻の菩薩のような微笑みに折れ、息子を抱かせてやった。

「目があなたにそっくり」

 私は複雑だったが精一杯の笑顔でそれに応えた。

「これからよろしくね」

 妻の言葉にハッとする。そうだ、何はともあれこれからこの三人で暮らしていくのだ。ローン20年3LDK庭付き、太陽光発電のマイホーム。幸せな家族生活。

「この子の名前はアノマロカリスだ」

 不意に口から出た言葉に私は驚いた。しかし何故かはわからないが、その名前はこの子にぴったりのような気がした。妻の側に近づき私は我が子に微笑んだ。

「今日はアノマロカリス」


次題 「断頭台」「レプリカ」「死刑執行人」

230:名無し物書き@推敲中?
11/10/05 01:27:06.93
「所長。我々のことをナチスだというメディアには時々我慢できなくなるんです。
でもそういう奴に限ってレプリに異常が見つかったとき騒いだんではありませんか?」

私は窓の外で揺れている大木を眺める。空は暗く雲が立ち込めている。
ここもあと数時間で暴風雨圏内に入るんだろう。もう一度、予備発電のチェックを
しておくように技師に言っておいた方が良いだろう。そう思いながら部下の言うことを聞いていた。

「ナチス。Nよ。我々はナチスよりも醜悪ではなかろうか? 人を裁き殺すのに痛みはあるが
レプリカントを断頭台にあげるのに誰が心を痛めるだろうか?」

Nは困ったように下を向いた。わかっている哲学の事を言い出してもきりが無いことを
私たちは与えられた役目をするまでだ。収監し刑を執行する。

「所長。噂があるんです。黙っていようと思ってました。所長がレプリを家にかくまっているという噂です」

そう言ってNは所長を見ると視線が交錯しそして離れる。沈黙。風が揺らす外の音が
分厚い窓を通して聞こえる。Nはのどが渇くような思いがする。間違ったことをしてしまったんじゃないかという思い。

「そうだ。私はかくまっている。だからもし君が私を告発するならするがよい」
そう言って死刑執行人である所長はNを見た。

Nは口ごもりやがて頭を下げると部屋の外に向かった。そしてドアに手をかけると
私はあなたの部下ですといって出て行った。


愛 青春 旅立ち

231:名無し物書き@推敲中?
11/10/06 21:12:30.18
第一部 愛
 今月に入って3人目の転校生がやってきた。
 なぜそんなに転校生が多いのか。
 日本に継続的な天変地異が起こり、北海道が地図から消えたり、九州が火山の噴火で住めなくなったりしたためだ。
 故郷を無くし、生き延びた人々が変形した日本列島を転々としている。
 3人目は美少女だった。名前は、
『愛』
 黒板にはただその一文字だけが書かれた。
「君、名字は?」
 担任は尋ねる。しかし、愛は答えなかった。
 この異校の制服を着た妖精は、愛でしかないのだ。

第二部 青春
 セシル森山は85年前のことを回帰していた。
 遙か昔、高校生の頃だったか、彼は過ちを犯した。
 彼の所属する、高校の生物部が飼育していた甲羅長70センチほどのリクガメをダイナマイトで爆殺したのだ。
 火薬の力が強力すぎて、安全圏に退避したはずのセシル森山は全身にリクガメの肉片を浴びて血だらけになった。
「愛、君のいうとおりに僕は僕の二番目に大事なものを壊したよ。だから、僕との約束を守ってくれるよね……愛」
 老境のセシル森山の脳裏に血塗られた青春の幻影が蘇る。
 あの頃、彼は愛の虜と成りはてていた。

つづく

232:名無し物書き@推敲中?
11/10/06 21:13:54.14
第三章 旅立ち
 西暦3912年、一人の宇宙飛行士がかつて地球と呼ばれた星に戻ってきた。
 死の星となった惑星にトボトボと足跡をつけ、サブローは自らの長生きを後悔した。冷凍睡眠やら相対性理論に身を任せて二千年の時をさ迷った結末がこのざまか。
 ほとんど眠っていただけなのにひどく疲れた気がする。
 サブローはポケットから自殺薬を取り出した。
「待って!」
 愛の声がした。
 振り返ると、サブローよりさらに若い学生時代の愛がいた。
「今までご苦労じゃった…」
 セシル森山は全身義体化して機械人間のようだ。
「驚いた。こんな再会があるのか?愛、君はやはり……」
  サブローは顔をグシャグシャにして、かつてのあの頃、三人の転校生の再会に泣きむせぶ。
 その夜、三人は生まれたままの姿で宇宙船の冷凍睡眠装置に入った。次に起きる時は、意識の一元化が起きて、人格が一つになっているはずだ。
 それは三人の旅立ちであると同時に人類の旅立ちでもあった。

おわり

233:名無し物書き@推敲中?
11/10/06 23:44:05.06
じじーお題書きやがれ

234:名無し物書き@推敲中?
11/10/07 00:16:11.80
指定が無い場合はお題継続がルールです。
>>1参照

235:名無し物書き@推敲中?
11/10/07 01:10:35.82
愛は思う。
―私には青春など無縁だし、これからもきっと無縁だろう
愛は16歳の高校生で腋の下からは思春期特有のにおいがした。そう腋臭だ。ある日匿名のメールが来た。
「早く医者に行って腋臭を治してください。みんな迷惑しています」
その内容に愛は深く傷ついた。誰にも相談できなかった。誰にも言えなかった。

愛が無視しようと決心した後も、忘れたころに「臭い」「死ね」「毒ガス注意とかメールが来た。
愛は怒りは、あまりわいてこなかった。臭い自分がいけないんだと思った。臭くなければいいんだからと思った。

愛は引き出しから白く正方形をしたものを取り出す。
ひとつの面に赤く点が打ってあり、その他の面には黒い点が打ってあった。そうサイコロだ。
―1が出たら自殺する
愛は心の中でそう思う。でも1以外が出たらまだ生きていようと。愛は手にサイコロを持ち高く上げると目をつぶった。

「なーんてね。そんなこと……」
愛はそう呟いてサイコロを引き出しに戻す。そしてヘラヘラ笑った。鏡で見たら醜い笑顔で
笑ってると思いながら。
そして親にすべてを打ち明ける決意を決めた。きっと泣くような気がした。


「jk」「KISS]「SEX」




236:名無し物書き@推敲中?
11/10/07 20:36:37.69
2012年1月。去年不可解な理由で中止になったkissのコンサートが開催されることになった。
コンサート当日、鬼頭マトは開催地である日本武道館へ足を運んだ。
「おかしい。場所を間違えたのかしら?」
日本武道館は人一人いない、がらんどうの様を呈している。
と--、そこへ野太い男の大音声が鳴り響いた。
「kissなんかきやせん!全てはお前を呼び寄せる策だ」
警視庁捜査一課の坂下がステージの上に仁王立ちになっていた。
「坂下さん、どうしてあなたが?!」
「なれなれしく呼ぶな。この小娘、いや……JKがあっ!」
坂下はスーツを脱ぎ捨てた。
そこには人間・坂下とは違う、4本の腕を持つ異界の剣士の姿があった。腕のそれぞれに自家発光する長剣を構えている。
「どうした、お前も正体をさらせよ。そんな制服は脱いでさ。JK……このジェダイ・ナイトの尻尾があっ!」
切りつける異形の坂下。辛くも退くマト。
額に流れるミディ・クロリアンの血。宿命の覚醒。
鬼頭マトは覚悟を決めた。もう逃げられない。やるしかない。
冷たいはずの血がたぎる。冷静でいられないのは、やはり私が混血種だから? でも今はいい。ただ目の前の宿敵を倒すこと。
二人の戦士が戦い始めたそのころ、はるか六分儀座Sextansより共和国の宇宙艦隊がビッグワープを開始した。
地球が戦渦に巻き込まれたのはそれから27分後のことである。


237:名無し物書き@推敲中?
11/10/08 06:22:11.57
―結婚すると青春という名で呼ばれるものは消えてしまうのだろうか?
愛は大きなお腹で台所に立ちながらそう思う。結婚して半年で妊娠した。
妊娠はうれかった。だって子供は大好きだし、旦那さんに不満は無いから。
それでもちょっとだけ思う。これから私の人生は、この子中心になるんだ、と。
マグカップにティーバックを入れ熱湯を注ぐとよっこらしょと座る。
妊婦さんは食事の好みが変わるというけど愛はあまり
変わらなかった。辛いものがちょっと苦手になっただけで、それでも我慢すれば食べられた。

―君はどんなことを考えてるのかなあ?
愛はお腹に向かって話しかける。言葉をかけるたびに自分が母親になっていくような気がする。
まるで少しずつ生まれ変わるみたいに。
―君がこの世界に旅立つように、愛もママに旅立つのかな?

愛は目を閉じ羊水の中にいる赤ちゃんを思い浮かべる。
暗く暖かい海の中。そんなことを考えていると睡魔がやってくるような気がした。


「コンビニ」「クレーマー」「許し」




238:「コンビニ」「クレーマー」「許し」
11/10/08 18:04:14.15
 最近たちが悪い人が増えてきていると感じます。
特に自分の立場が上と思い込んでいる方が救いようがないと確信しています。

 コンビニのチケット販売機で自分が間違ったにもかかわらず店員に文句を言う人。
2週間前に買った上に傷だらけのゲームソフトを返品に来る人。
自分たちが無料だと宣伝しておきながら実は完全無料ではなく、文句を言われると開き直る会社。
世の中何かがおかしくなっている、常々そう感じておりました。

 そして先日、ある方の相談に乗ったところ「お前が許すといったが警察につかまった訴えてやる!」と言われて、その方をクレーマー扱いしてしまいました。
このような私にも神は許しを与えてくださるのでしょうか?

 同業者の私の懺悔を聞いたシスターは全てを許してくださりました。
しかし本当に許されたのでしょうか?訴えられたりしないのでしょうか?
私は納得できるまでシスターに何度でも何度でも懺悔に行こうと思います。


次は「白秋」「熊」「栗」でお願いします。

239:名無し物書き@推敲中?
11/10/08 19:23:11.93
マントヒヒの頭領の名はマキラと言った。
死期を迎えた彼には、周囲の修羅はもはや夢と同義であり、苦痛は、はるか遠くにある。
そう。今、圧倒的な炎が森に取り憑いていた。
善と悪、生きた者と死に絶えたもの。
炎は全てを焼き尽くそうとしていた。
「ねえマキラ……」
熊のビッグ・プーは幸か不幸かほとんど無傷であった。
彼は変わり果てたかつてのライバルに語りかける。
「僕ね人間に興味があったんだ。君は嫌いかもしれないけれど、僕は人間が
好き。この次はゼッタイ人間に生まれ変わりたいよ」
ビッグ・プーは奇形の熊で、腹に有袋類のようなポケットを持っている。そ
の中には彼の宝物が隠されていた。
ビッグ・プーは肉のポッケから、かつて自分が食い殺した人間の女の遺品を
取り出した。
北原白秋の詩集『雪と花火』であるが、ビッグ・プーには読めない。
「僕らには今という時間しかないけど、人間には過去というものや、信じら
れないかもしれないけれど、未来というまだ起きてない時間を持っているら
しいんだよ。こういう、呪文が書かれたものには時間を行き来する秘密があ
ると思うんだ。僕、人間になったら絶対この呪文を解いてみせる」
ビッグ・プーの半ば独り言のような語りかけに、マキラは既に応えなくなっていた。
「マキラ……?」
既に四肢を焼失したマキラは、もはやこの地獄にいないかのような安らかな
顔つきをしている。
ビッグ・プーはマキラを愛おしんだ。それは自分でも信じられない感情だった。
「ねむったんだね……マキラ。永劫のやすらぎのねむりに……」
ゴゴゴゴゴゴッ。
ビッグ・プーの頭上から、火の付いた無数の栗の実が落ち始めた。
その一つが彼の脳天を直撃し、巨大熊は四肢のないマントヒヒに折り重なる
ようにして倒れ、そして動かなくなった。

次「棺桶」「三葉虫」「海馬」で

240:「棺桶」「三葉虫」「海馬」
11/10/08 20:39:58.94
今のままの時間は長く続かないことだけはわかる。

 だから私は何年かぶりにおじいちゃんと化石堀に出かけた。
朝日に焼かれた山から煙のように雲が生まれて、空にゆっくりとその頭をもたげ伸びて行く。
久しぶりに見た雲のうまれる姿で子供の頃は山の幽体離脱だと信じていた事を思い出す
 オレンジに染まるうろこ雲は上に行くほど濃くなる空に細く伸びていく。
空はは街でも変わらないはずなのに鮮明に私の目に映り、見とれてしまった。

 おじいちゃんは目を細めて同じように空を仰ぎ「きれいだなぁ」と呟いた。

それから12年

「ただいま~ママ」息子が私に抱きついてくる。
「きょうね~大じいちゃんがね化石見せてくれたの、アンモナイトとか三葉虫とか!卵も見たんだよ!」
 時間が止まってたみたいに変わらない内容、でも私とこの子は違うことを考えているのだろう。
「来週、おじいちゃんが化石掘りに連れて行ってくれるんだよ!」

 懐かしい私の思い出が新しい思い出と重なってゆく。
私にとっては化石の棺桶にしか見えなかった山もこの子には宝の山になるのだろう。

 多分、おおじいちゃんも思い出を層の様に重ねていくのだろう。


 次は「地震」「雷」「火事」でお願いします


241:「棺桶」「三葉虫」「海馬」
11/10/08 20:41:34.76
●ごめんなさい、出だしコピーし損ねました。

 私のおじいちゃんは痴呆症で、まだぼけた感じはないけど海馬の萎縮が見られるらしい。
海馬とか言われてもすごいことなのか大した事ないのかよくわからないけれども、
今のままの時間は長く続かないことだけはわかる。

 だから私は何年かぶりにおじいちゃんと化石堀に出かけた。
朝日に焼かれた山から煙のように雲が生まれて、空にゆっくりとその頭をもたげ伸びて行く。
久しぶりに見た雲のうまれる姿で子供の頃は山の幽体離脱だと信じていた事を思い出す
 オレンジに染まるうろこ雲は上に行くほど濃くなる空に細く伸びていく。
空はは街でも変わらないはずなのに鮮明に私の目に映り、見とれてしまった。

 おじいちゃんは目を細めて同じように空を仰ぎ「きれいだなぁ」と呟いた。

それから12年

「ただいま~ママ」息子が私に抱きついてくる。
「きょうね~大じいちゃんがね化石見せてくれたの、アンモナイトとか三葉虫とか!卵も見たんだよ!」
 時間が止まってたみたいに変わらない内容、でも私とこの子は違うことを考えているのだろう。
「来週、おじいちゃんが化石掘りに連れて行ってくれるんだよ!」

 懐かしい私の思い出が新しい思い出と重なってゆく。
この子は山で何を見るんだろうか?きっと私にも新しい何かを見るのだろう。


 次は「地震」「雷」「火事」


242: ◆/XayXVEOhA
11/10/08 21:02:13.32
「地震」「雷」「火事」


乗せてから訊くのもナンだけど、この車、なんていうか知ってるかい?
デロリアンっていうんだ。
僕も映画でしか見たことなかった。お、エンジンがかかった。良い感じ。
あの年、スティーブ・ジョブスがこの世を去って
次の次元へ行った日のすこし前、こんなニュースが流れた。

「光速を超える素粒子が見つかった」
うん、僕らが生まれる51年前だね。
おなじ年、東日本大震災が起こり、地震はいまだ続いている。
あ、空が光った。そろそろ雷が落ちる時間だ。
映画を参考にデロリアンを現実のものにした君の祖父は、
なぜ僕にキーを預けたのかな。
何があっても君を守るって誓ったの、のぞき見てたのかな?w

教会に雷が落ちたら、この車は走り出すんだ。
必ず2011年の3月10日に戻ってみせる。
記録によると、教会は雷による火事で消失してしまう。
それは防げない。僕らが過去という未来へ進むための代償。
でも君は生き返らせてみせる。誓ったんだ。僕は、誓ったんだ。
もう一度、誓わせてほしい。
何度でも、誓うさ─。


「凡庸」「定番」「普遍」

243:名無し物書き@推敲中?
11/10/09 18:38:19.77
「凡庸」「定番」「普遍」

「凡庸な女の子が好きな男は、やっぱ凡庸な男なのかな?」
「なに?急に」
「いや、べつに。ちょっと考えてみただけだよ」
「分かった!また学校で何かあったんでしょう?」

いつものことだけど、この娘の勘の良さには苦笑してしまう。
昼間、学校で彼女のことをからかわれたのだ。彼女には全然個性がないよね、とかそういうことを言われたのである。

学校では数少ない友人とはいえ、他人の女の趣味にケチをつけるとは本当に無神経な奴らだ。
でも確かに、あらためて考えてみると、彼女は俺みたいなどこにでもいる普通の男子高校生のツボを見事におさえてはいる。
黒髪ストレートで、清楚で、胸はそれなりにふくらんでるし、軽くツンデレ入ってるし、まぁある意味定番な感じなのかもしれない。

一寸黙ってしまった俺を前に、彼女は「悩める青年よ、ここは私に話してみなさい」とか
「大体あんたはいつも余計なこと考えすぎなんだから」とか早口でまくしたてている。
怒ったような口調をしているが、本当は俺のことを心配してくれているのがバレバレである。
彼女の気持ちが嬉しかった。

俺は適当に相槌を打ちながら、また別のことを考えだす。
たしかに俺は今彼女が好きだけど、今から10年経ったら、俺のツボも変わるし、
いろんなことが古い昔のアニメみたいに色あせてしまうんだろうか?
その時、俺の彼女への気持はどこへ行ってしまうんだろう?

どうだろう、彼女には何十年経っても変わらない普遍的な魅力があるような気もするし。分からない。
とりあえず、俺は今彼女のことが死ぬほど好きだ。今はそれでいいんだ。きっと。

彼女の言うとおり、俺は少し考えすぎだな。俺は苦笑した。
「なに?また得意の自己解決?」不満げに口をとがらせる彼女に「おかげさまでもう大丈夫。明日も早いから」と言って立ち上がった。
パソコンの画面に浮かぶ彼女におやすみのキスをして、それから部屋の灯りを消して、ベッドにもぐりこんだ。

「東京」「カレンダー」「心霊現象」

244:名無し物書き@推敲中?
11/10/09 20:18:08.02
すいません長文になります<(_ _)>

私は霊感っていうものを信じていないのですが
東京のマンションに引っ越して来てから、なんか変だなって? 
って思うことがあったので、判断をしていただけたらと思って投稿しました。

細かいことなのですが、ユニットバスに置いてある
シャンプーの位置が何回か違っていたことがあるんです。

私は割りと几帳面な性格で石鹸、シャンプー、リンス、コンディショナーって
決められた位置に置いておくのですが、ずれていたことがあって
初めは「寝ぼけたのかなあ?」と思ったのですが、二回続いたときに朝、会社に出る前に
写メで撮っておいて帰って確認したら位置が違うんです(ーー;)
なんか気持ち悪いし、留守中に大家でも入ってるのかなあ? とか考えます。
(下着やお金は取られてません)

カレンダーで確認したら覚えてるだけでも7回以上あります。
どうしたら良いでしょうか? たぶん心霊現象じゃなく誰かが出入りしているような
気がするんですが。

PS 特定されると怖いので、少し設定を変えてますが殆ど同じです。


「コンビニ」「変態」「許し」



245:名無し物書き@推敲中?
11/10/09 21:36:49.03
深夜のコンビニで、とある全裸の変態が美人の店員に許しをこうた。
「許して下さい。昨夜あなたの部屋に侵入したのは僕です」
「え……えっ? でもどうやって」
「こうやってー」
全裸の変態はコンビニの床に横になり、漫才師のざ・たっちのネタを再現した。
幽体離脱だ。
漫才師との相違点は、変態はネタではなく、本当に幽体離脱したことだ。
「ちょっと待ってよ。幽体離脱してできることは覗きくらいでしょ。実際に
物体を移動させるのはポルターガイストといってまた別の現象になるんじゃないかな」
「ほう、あなた心霊現象に詳しいですね。よろしいタネを明かします」
変態の幽体は美人の店員、海上レイの口の中にすうーっと入っていく。
「ちょっとヤダ!ゲホ……ゲホ」
(聞こえますか)
脳裏から変態の声がした。
(つまり離脱した僕の幽体があなたに憑依したのです。僕は興奮してお風呂
に入り、このきれいな体を洗ったりして楽しんだのです)
(ふーん、なんだそうだったの)
海上レイは家に帰って、カレンダーに五芒星の印をつけた。
「これが私とあなたが出会った日よ、変態の幽体さんゲッツ!」
大都会の東京。そこに蠢くのは普通の人間だけとは限らない。
今日も、
今夜も、
今だって、
想像を絶する魑魅魍魎たちが欲望のスープをかき混ぜながら、面妖な事件を
引き起こしている。
海上レイとお供の変態幽体はそれらの事件に巻き込まれながら、これからも
不思議な体験を繰り返していくのだ。
(あ……ちょっと、ちょっと、ちょっと! ところで変態の肉体はどうなったんだ??)

次は、「お掃除ロボット」「ユムシ」「ダチョウ」でお願いします。

246:名無し物書き@推敲中?
11/10/10 10:24:34.97
「お掃除ロボット」「ユムシ」「ダチョウ」


朝起きたら、部屋の中にもユムシが入り込んでいた。
芋虫のように床をゆっくりを動いている。
あるものは蛍光色に光りながら交尾をしており、あるものは腐ったような灰色をしていて、全く動かない。
「ここにもいる。あっここにも2匹。動かないのはもう死んでるのかな」

お掃除ロボットは忙しそうに、ユムシを捕まえてビニール袋に詰め込んでいた。
「ねぇ、ツノが生えてるのもいるよ」と僕は話しかけた。
「ダチョウを買ってきて、食べさせた方が早いかもしれませんね」とお掃除ロボットは言った。
「本当に?」
「ダチョウはユムシが好物ですからね。でもユムシは人間だって食べれるんですよ」
「こんなの食べれるの?」
「美しいものは全て食べることができるのでしょう?」
「そうだったっけ」
「ご近所の皆さんも、昨日の晩はユムシを食べたって…」

そう言って、お掃除ロボットはカーテンを開けた。
窓の外は人間大のユムシがそこらじゅうを這いずり回っていた。
人間の腹を食い破ったユムシが外に出てきたのだ。
淡い蛍光色と灰色が混ざったユムシの群れが街を覆い尽くしていた。

そんなわけで僕はひきこもりになったんです。

「八月」「戦闘機」「告白」

247:「八月」「戦闘機」「告白」
11/10/10 19:56:51.93
 毎年8月は戦争の月と遠い昔に開祖が定めました。
8月以外は砂嵐や、雨、雪などで戦いにならず、唯一8月だけが自由に戦えるからです。

 戦いといっても、隣国との戦争だけではなく、保存食料の製作等することは多く
生きとし生けるもの全ての戦いが行われています。

 今、僕の国の最新兵器であり人類全ての夢、空を飛ぶ戦闘兵器、通称「戦闘機」が準備を始めています
戦闘機の特徴はとにかく燃料を大量に消費し、また愛情がなければ空を飛ぶことがかないません

 今日は、年に数回しかない星の見える空で絶好の飛行日和です。
僕はこの戦闘機とひとつとなり空を飛びます。僕だけではなく多くの国民が飛ぶために集まっています。
僕は祈りをささげ戦闘機に告白を行います、その告白は僕たちに昔から伝わる伝統。

「僕は君と1つになりそして君は僕に、僕は君となる」
そして私は戦闘機に食べられ燃料となりました。

僕は空を駆け敵を屠るでしょう。

「重機」「ロータス」「ボールペン」





248:名無し物書き@推敲中?
11/10/10 21:23:30.31
「……ロータスとは日本語で蓮のことです。蓮―今が見ごろですね。駅前のお寺の池にも
咲いているんですよ」

校庭にはショベルカーとダンプ、あと名前の知らない重機が午後の日差しの下で眠っている。
例の東日本大震災で倒壊した校舎の撤去が夏休み中に終わるはずだったのに、業者が
忙しすぎて予定が延びているのだ。
私は重機を見ていると大昔に絶滅した恐竜が思い浮かぶ。
それは運転手がいなくて、ただ止まっているだけかもしれない。それとも私がいろいろ
想像するのが好きだからかもしれない。
 そんなんだから虐められるのかな?
英語の教科書にボールペンで「残飯」と書かれていたことがある。修正液で
消したけど薄っすらと後が残っている。とても傷ついた恥ずかしかった。
 もっと人とうまくやることを考える方が大切なんじゃないの? 
内なる声がする。そんなこと分かってる。分かってるけど…



「ホームセンター」「警官」「発砲」



249:名無し物書き@推敲中?
11/10/11 00:29:06.74
「民家立てこもり事件で先ほど犯人の発砲と思われる銃声が2発続いたとのことです」
女性レポーターのヒステリックな実況がテレビから聞こえる。
「・・・・・・消そうか?」と青年が振り返った。
男はそちらを向きもせず「構わない」と視線を窓の外へやった。
警官や機動隊がうごめき、その周囲を野次馬が囲んで騒然としている。

男はその日、新居のための家具を探しに、ホームセンターに行った。
一緒に行った婚約者は「ホームセンターなんて」と難色を示したが、いずれ子どもでもできれば
落書きや傷にまみれるのだ、惜しくない物を選ぶのもいいだろうと、男は合理性を説いてみた。
といって、熱心に説き伏せるほど、男にも目ぼしいものがあったわけでなく、ただの意地だ。
偶然引き出しを開けた食器棚に、ピストルを見つけたときは驚愕で声が出なかった。
こんなところに用はないとばかり早足で店を出る彼女を追うとき、つい、そのまま持って出た。

ホームセンターからの帰り道、家具選びの話から発展して結婚後の将来設計で意見が食い違い、
車内で大喧嘩し、帰宅後も険悪だった。だからちょっとおどかすつもりで「黙れ」と銃口を向けたのだ。
彼女は蒼白になって家を飛び出し、外から携帯電話で通報した。
「本物かな」と彼女の弟が引き金を引き、それを取り返そうと男が手をかけて2発目。
「姉さん、もうちょっと考えて行動してほしいよな」と弟は銃を床に放り出して寝転んだ。
まったくだ。結婚は白紙。それは合意が成立するだろう。結婚前に「価値観の不一致」が
判ったのはかえって幸いだ。だがこの弟とは気が合う。男は内心で苦笑した。
「正直に話してもさ、撃っちゃったら犯罪なのかな?」と弟はマイペースだ。
「姉さんと結婚しなくてもさ、俺とはたまには遊んでよ」と心までお見通しだ。
そうだな、と応えながら、男は遠く夕暮れの空を眺めた。

「写真立て」「リニア」「ゴミ袋」

250:名無し物書き@推敲中?
11/10/11 20:45:11.26
「あんたはもう首だよ。出ていきな」
エバが冷たく言い放った。
僕はただ呆然とするしかなかった。
「ちょっと待ってよ。僕にはまだやりかけのプロジェクトがあるんだ。今度
はかなりの大物なんだ。途中で止めるわけにはいかないよ」
「知ったことじゃないね。ここをどこだと思ってんだい? あんたの遊び場
じゃないんだからね」
「遊び場って……ひどい言い様だな」
「図星だろう! 今まで一度だってあんたの企画がモノになったことがある
かい? さあ、このゴミ袋やるから、そこに私物をかき集めて、お人形の
待ってるお家に帰んな」
エバは僕の顔に向かって、MITのデザイン文字が印刷されたゴミ袋を放り投げた。
僕はこれ以上反論できない。
諦めてデスクに並べられた(エバたちは『散乱した』と言っているが)私物
を片付け始めた。
写真立てのリプリーは今も笑ったままだ。彼女は元気だろうか。そうだ、今
度メールを出してみよう。彼女なら何か気の利いた箴言を返してくれるかも
しれない。
リニアを去るとき、僕はいろいろな思い出が一度に再現されて、どっと涙が
溢れてきた。
リンカーン地球近傍小惑星探査プロジェクト(LIncoln Near-Earth Asteroid Research: LINEAR)。
通称リニア。とにもかくにもここには僕の青春が埋葬されているんだ。
さようならリニア、また会う日まで。

「リモコン」「頭蓋骨」「大仏」

251:「リモコン」「頭蓋骨」「大仏」
11/10/11 23:20:19.62
 テラフォーミング-人の住めぬ星を地球と類似した環境に改造する-技術が開発されてどれぐらいになっただろうか?
しかし黎明期には多くの人々が命を失い、
歴史の教科書には天空をにらむ頭蓋骨が象徴として何百年も載せられている。

 今では完全自立型人類保護システム・・・通称「大仏」が地球型惑星を探し
そこを自動的にテラフォーミングし、超空間転送で資源や移民を受け付ける。
もしそこに人類型生命体がいれば人々に平和な夢を与える名目で侵略を行う。

 大仏とは別に、仏像と呼ばれる小規模テラフォーミングシステムも開発され
超空間転送で他の世界から水、空気、光、重力といった必要な物資を購入し
どんな小惑星でもリモコンひとつで快適な世界となった。

 そして、その新しい技術は建物に仏像を設置することから
寺フォーミングと呼ばれた。


次のお題は「いまいち」「悲しい」「プレーン」でお願いします


252:いまいち、悲しい、プレーン
11/10/12 23:14:37.82
熊のヤング・プーは大好きな蜂蜜を、自分がマーキングしたブナの巨木のくりぬき穴に隠していた。けれども最近、体が少し大きくなってしまい穴に突っ込んだ頭が抜けなくなってしまった。
「僕は死ぬのか。こんな無様な格好で……」
蜂蜜の匂いがプンプン漂う暗い穴は、今や刃の落ちない断頭台となり、ヤング・プーの体力が尽きるまで彼の頭を離さないかのようだ。
ヤング・プーがじっとしていると、高い声がした。
「これは面白い。大自然の知恵の輪みたいだ」
その者はヤング・プーの脇腹をこそぐると、死に際の熊はゲラゲラと笑い出した。
自由が利かないので、首と肩がへんな捻れ方をした。
すると上手い具合にヤング・プーの首がくりぬき穴がすっぽり抜けた。
「ふう、助かったよ。ありがとう」
ヤング・プーの前には、黒澤明の格好をした一匹のネズミがいた。
ネズミはヤング・プーの顔をじいっと見ると、首を横に振った。
「いまいち、だな……」
「え、何のこと?」
「これは失敬。我が輩は映画監督のチューブリック。今、今度撮影するアクション映画の主演男優を探しているところだ。見たところ君は不細工すぎて使えないようだね」
「助けてくれたのは有り難いけど不細工はひどいなあ。僕はこれでも熊界の松田優作と言われているんだぜ。ちょっと僕の演技を見てよ。『……なんじゃあこりゃあ!?』」
(゜Д゜)
「驚いた。君はほんの一瞬だけ時間を止める能力があるようだね。君のしらけた演技で僕の懐中時計が一秒狂ったよ」
「そんなこというなよ。せっかく僕の命を救ってくれたんだ。何か君の手助けがしたいな」
「わかった。じゃあ撮影スタッフに回ってくれたまえ。主演は、そうだな、私が受け持つ」
(なんじゃあ、そりゃあ……)
つづく

253:いまいち、悲しい、プレーン
11/10/12 23:15:18.00
チューブリックはどこからともなく主演女優と称するメスのネズミを連れてきた。恋人同士なのか、やけに仲がいい。
更に別のスタッフ(家鴨である)がやってきて、丸太をくり抜いたコックピットを持ってきた。これを木から吊して飛んでいるように見せかけるらしいのだ。
「飛行機の映画だよ。僕とヒロインのニコルが操縦不能のコックピットでいちゃいちゃ、いや必死に脱出方法を考えるからカメラを回してくれ」
「ホイホイサー!」
チューブリックは天才なのか。ピクリとも動かぬ丸太のコックピットで、さも飛行機がきりもみ状態に陥ったかのような激しい演技を展開した。それに釣られてニコルも熱演する。演技が演技を呼び、激しく呼応した。
撮影は順調に進んだ。誰もが傑作ができると予感した。
だが神は、撮影最後の日に気まぐれな運命のサイコロを投げた。
悲しい出来事が起きた。
吊したあった丸太のロープが切れて、二人の名優が丸太の下敷きになってしまったのだ。即死だった。
チューブリックの芸術魂にすっかり陶酔していたヤング・プーは、頭を掻きむしって混乱した。
「おいチューブリック、ここで止めてどうするんだよ。まだ編集が残っている。アフレコや音楽はどうするんだよ? この映画を完成させられるのは君の才能だけなのに、こんなつぶれた肉の塊になっちゃってさ!」
ヤング・プーは絶叫したが、こんな森の中でドクターヘリがくるわけもなかった。
天才ネズミ監督チューブリックは死んだーー。

すると、物陰で彼らの映画撮影の一部始終を見ていた者がいた。
人間である。
「心配するな。君たちの映画に賭ける情熱は、この私が引き継ぐから」
偶然にも彼は映画関係者だった。たまたまロケハンに来て彼らの撮影風景に出くわしたのだ。

1928年、こうして完成したのがウォルト・ディズニー監督の『プレーン・クレイジー』である。


「ディスク」「カラス」「戦車」

254:名無し物書き@推敲中?
11/10/13 15:26:24.79
カラスの声ばかりが響く、戦場の跡。
夕日が燃やし、蛆が集る死体の群れの端に一機、まだ動く戦車が有った。
戦車の中には誰もいない、運転手はきっと群れに埋れていのだろう。
戦車の中では音楽がなっている、流行りの歌、優しい歌。
人を殺す感触を無くす歌がカラスの声を殺している。
カチャリ、小さく音がした。
ディスクが変わり、歌も変わる。
流れ始めたその歌は、愛が世界を救う歌。

255:「ディスク」「カラス」「戦車」
11/10/13 19:18:53.87
*お題がなかったのでお題継続します。

「いけ!きゅーまる!」
「負けるな!ななよん!」
子供たちがラジコン戦車で遊んでいる。

 元々は砂場とか外で遊んでいたけど、
小さなラジコン戦車が巨大怪獣であるカラスや猫に敗北して以来
子供たちは家の中で遊んでいる。

 服や本、フリスビーに使っているコンパクトディスクだったもの
いろいろな障害物を乗り越え迂回し戦っている。
子供なりにいろいろな戦術を考えているみたいだ。

「これぐらいお手伝いも考えてしてくれればねぇ」
妻がボソッと独り言を言う
「使わないよりいいだろう?」
「それもそうね」

元気に遊ぶ子供たちをニコニコと眺めて夜が更けていく。
今日はいい日だな。

次は「氷雨」「オセロ」「足踏みミシン」でお願いします


256:名無し物書き@推敲中?
11/10/15 22:17:30.24
「……足踏みミシン、液晶テレビ、パソコン、その他なんでも回収いたします。こちらは
粗大ごみの回収車、御用がある方は……」
自分を殺したい。奴を殺したい。
奴の頭を壊したい。ハンマーで叩き割たい。

「毎度、お騒がせいたしております。こちら粗大ごみの回収車でございます。
使わなくなった……」
自分は矮小で醜くい生き物。
自分を殺す。自分を殺して世界を殺す。

「ご家庭でいらなくなった、冷蔵庫、自転車、ゲーム機、足踏みミシン、液晶テレビ、パソコン……」
今、引き取ったばかりのオセロ。オセロを回収させた女。女の胸。
セーターの下で大きく膨らんだ胸。オナニーオナニーオナニーがしたい。シコシコシコ。
―考えるな考えるな考えるな。ああ俺よ。考えるな考えるな。狂ってなんかいない。狂ってなんかいない。

窓を開け手を広げた。手のひらに氷雨が冷たい。
―いつもの公園に行こう

男は住宅街を抜けるために右にハンドルを切った。


「会見」 「自慰」 「大臣」

257:名無し物書き@推敲中?
11/10/16 06:20:28.45
「会見」「自慰」「大臣」


何かの大臣が会見を開いて、就任後わずか一週間で辞意を表明って
テレビニュースでやってて
その「辞意」が「自慰」に聞こえて、俺もちょっと疲れてんのかなって
そう思ったのが水曜日

「あの会見は水曜日だったと思います」俺は答えた
「確かに水曜日なんだな?」
「そう言われると自信なくなるなぁ。木曜日だったかもしれません」
「それじゃダメじゃないか。これ大事なことなんだよ。断言できるのか?」
「ええ、夜テレビで見ましたから」
「テレビニュースは毎晩やってるじゃないか。何で水曜日って言えるんだよ?」
「まあそうですね」
「なんでお前、さっきから嘘つくの?」
「嘘はついていません」

俺は突然腹が立ってきて、そいつの顔面を思いっきり殴ろうとしたけど、
空振りしてしまってうまく殴れなかった
そんな夢をみたのが日曜日

日曜日で本当によかったよ
皆さんも良い休日を

「魔女」「鈴虫」「待ちあわせ」

258:名無し物書き@推敲中?
11/10/16 09:40:10.52
碧川アリスは誰にも気づかれないように席を立ち、教室を出た。
授業中にそんな不可思議な行動がとれるのも、碧川アリスにちょっとだけ人々
の意識から自分をすり抜けさせる、といった異能力が備わっているからなのだが。
廊下を走り出すアリスの脳裏にこんな声が聞こえた。
(アリス、わかってると思うが3分以内に決着をつけないと時空が変転する
からね。そうなったらもう君の手には負えないよ)
「わかってるわよ! 私、神藤先生の授業うけたいのに。こんな時に仕事だなんて最低だわ!」
(理科準備室に反応あり。いつもの怪人じゃない。こりゃ幹部クラスだな。急ぐんだアリス!)
「ところであんた、今どこにいるのよ? いつもなら私の半径3メートル以
内をストーカーしてるくせに」
(すまない。こっちはこっちで忙しくてね。今回は遠隔で指揮をとらせてもらう)
問題の理科準備室に行くと、部外者の老婆が怪しげな行為に耽っていた。人
体模型にフラスコの液体をかけて、擬似的な命を吹き込もうとしているのだ。
老婆はアリスに気づかれても平然としていた。
「遅かったの。一応昨日お前の夢に現れて予告はしておったが、待ちあわせ
の約束より10分遅刻じゃ」

すまん、つづく

259:名無し物書き@推敲中?
11/10/16 09:41:03.96
「夢の約束なんかいちいち覚えてないわ」
「ほう、おぬしが最近町で暴れ回っておる、何と言ったから……サイコナイト
とかいう不良じゃな」
「魔女の幹部に不良よばわりされるなんて私も落ちたものね。時間がないから行くわよ!」
「3分ルールというやつじゃな。はたして間に合うかの」
 2分59秒で決着がつき、魔女は爆死した。
「ちょっと、内臓バラバラで標本もぐちゃぐちゃにして、誰が片付けると
思ってんのよもう!」
アリスが教室に戻ると神藤先生の授業は終了していた。
疲れた。だが丁度昼なのでアリスは気持ちを抑えた。抑えていた食欲が解放
される麗しの一時。
だが弁当箱を開けた途端アリスは逆上した。
「ジミニー!なんでこんなところにいるのよ?」
弁当箱にさっきテレパシーで指揮してきた鈴虫のジミニーが入っていたのだ。ジミニーの周囲の米粒がなくなっていることから、どうやら弁当を食っていたらしい。
(すまない。ちょっと腹が減っていたんでね。そんなこより問題が起きたの
で報告しておく。君が魔女と戦っている間、別の事件が起きてね。なに、人
間界の他愛ない殺人事件さ。そのどさくさにある男子生徒がこの弁当箱を開
いて僕を見つけてしまったんだ。彼には幻覚をかませておいたが、要注意し
ておいてくれ。なんだか君に興味があるみたいだよ)
「何よそれ。詳しく聞きたいわ」
(じゃ……>226を読んでね)

おわり

既視感 ヤクザ オオサンショウウオ

260:「既視感」「ヤクザ」「オオサンショウウオ」
11/10/17 00:07:39.93
 文化祭でスターウォーズを見ていたら愛しのジャバ様に対して
「これってオオサンショウウオみたいだね」
「えぐいよなぁ」
とかひどい事を言う人がいる。

 確かにジャバ様はやくざだし色々とあれだけど、
ハンソロみたいに有能だと、殺さずに生かしておくとか何だかんだと懐が広い
将来結婚するならジャバ様みたいな人で幸せに左団扇を扇ぎたいと思うのは普通の乙女心だと思うんだ。
でも友達皆「趣味が悪い」と否定する。左団扇がいけないのかしら?

 そんなある日街で1人の男性とであったの。
その人からは強烈な既視感を感じる何故だろう?
私はその人に声を掛け付き合い始めた。

 ある日私の部屋で彼と作ったおでんを食べたとき
「おでんにタマネギ入れるんだ?はじめてみたけどおいしいな」
そのときわかった。妄想(ゆめ)にみたジャバ様との結婚生活そのままの台詞
『この人はジャバ様だ』
それは、誰にもわからない私だけの既視感。
きっとこの人にも理解は出来ないだろう。

でも私は多分この人と一生を添い遂げるだろう。左団扇は無理そうだけどね。


次は「扇子」「定刻」「氷」


261:名無し物書き@推敲中?
11/10/17 14:52:13.71
 『定刻になりました。戦闘員の皆様は所定の位置に付いて下さい』
薄暗い廊下に機械的なノイズが混じったアナウンスが響き渡る。
その後廊下にぞろぞろと、黒尽くめの戦闘員達が一列になって出てきた。
 その様子を監視カメラから見ている一人の男。
扇子を左手で扇ぎながら、右手に持ったスプーンでかき氷(ブルーハワイ味)の山を、
シャクシャクと小気味良い音を立てながら崩して、そこから一匙氷を掬うと口の中へと入れる。
「……俺思うんだけどさぁ」
男は気だるげに、斜め後ろに毅然とした態度で控えている老獪な男に問いかける。
「何で御座いましょうか、司令官様」
「俺らって世間から見たら悪役じゃん?」
「はい」
「で、赤いのやピンクいのとかに、最後にはなんやかんやがあって全員倒されるじゃん?」
「まぁ、そうですね」
「……もう止めね、こういうの?」
男はかき氷を食べ終わり、容器の中にスプーンを放り投げる。
「―と、言いましても」
「あぁハイハイ分かってる分かってる。分かってますよ、っと」
 男は椅子から立ち上がると、掛けてあったマントを身に着ける。
「で、俺が倒された後はどうなるんだっけ?」
「はい、総統様と四天王様が登場なさる予定です」
「へぇ、でもお前は生き残るんだな」
薄笑いを浮かべながら男は老人を見やる。
「そ、それは……」
「そんな顔するなって、冗談だから」
男は老人の肩をぽん、と叩くとテーブルの上に置いてあった仮面を手に取り、顔に付ける。
「さぁて、んじゃ一丁。派手にヤラレて逝きますか」

 そして男は、最後の戦場へと向かう―。

次は「アザラシ」「木目」「排煙」でお願いします。

262:名無し物書き@推敲中?:
11/10/17 16:25:38.64
橋の手すりに両肘をかけ少し乗り出す。
生まれたころから住んでいるこの町の、本当にほとんど毎日見ているこの景色。
小学校、中学校、高校と、通学路はこの橋を通っていたし、今の仕事場もこの橋を通る。
じいちゃんが生まれる前にできたこの橋は、今時珍しく木造だ。
川沿いにぽつぽつとある工場は、薄い排煙をたち登らせている。昔はそれこそ要塞のような風貌だった。
廃工場が跡形もないのは、行政が俺たち土方に仕事を回すように頑張ってくれた結果だ。
こんなにさびしくなるなんてな……。
ふと下を流れる川にぽつんと丸いものが見えた。アザラシだ。少し前からこの川にすみつくようになった。
みんながマルちゃんと呼ぶこのアザラシは、タマちゃんゴマちゃんの後継として話題になるかと市や町が期待していたらしいが、
あまりに廃れているところだとテレビは取り上げてくれないようだ。
若い人がどんどん出ていき、観光地でもないここは見向きもされない。相対的にご老人が増えたが、
最近ご老人方がどんどんいなくなっている。雷親父の愛称も、駄菓子屋のみんなのばあちゃんも……。団塊の世代は本当にまとまっていなくなることを痛感した。
ここもいつか消えてなくなるんだろう。せめて息子たちが成人するまではもってほしい。
生まれたときから見ているこの橋も、手すりの木目が浮き出てきて、薄くなった灰色がこの町の未来を表しているように感じた。
俺もあと何年もつかな……。

次は 緑茶 サンゴ 玉の輿 でお願いします

263:緑茶 サンゴ 玉の輿
11/10/17 18:21:37.61
 緑茶を葉っぱごと捨てたような溜池の水をコップですくって太陽にかざしてみると多くの藻が浮いていた。
『藻が多いのは自然の浄化作用が働いている』と聞いてはいるが見栄えが良くないと毎回思うし
水質がどうのという以前に外来魚を放流する連中を逮捕するべきではないのだろうか?

 4年毎のゆる抜きのたびに外来魚を駆除してきたが一向に減らないのは間違いなく誰かが放流しているからで、その為毎年放流されるドジョウやタナゴは居なかった。
それでも子供たちはブロックなどを漁礁として池の底に並べ続けてきた。
一時期はやった鉄製のPCケースの漁礁は朽ち果てながらも、
そこに描かれた竜宮城の文字や鯛や平目、サンゴの絵が残っていることだろう。

 子供たちは話しか知らず見たことの無い生態系を取り戻すというよりも作り上げようとしている。
それが正しいかどうかわからないし懐古主義だと思うこともある
それでも子供たちが目指している事を最後までやり通したいと思う。

 明日にはゆる抜きが始まる。
この玉の輿池-本当は玉越池だが放流を始めてからこのように呼ばれている-にドジョウが居ることを願いながら
今日も、外来魚減らしのために外来魚を釣り上げる。


次は「背高泡立草」「すすき」「焼き芋」



264:黒天使ルシルフェル ◆lgXArV3Q0PD9
11/10/18 02:09:05.32
畜生!焼き芋め!

俺は焼き芋を背高泡立草の茎でめった打ちにする。
焼き芋は二つに割れ四つに割れ、無残な姿を晒す。

知らない人間が多いが、背高泡立草の茎は意外と堅い。
ちょっとした木刀並だ。凶器となりうるレベルだ。そして俺は狂気に駆られていた。

なにせ、憧れのA子とのデートに失敗したのは、全てこの焼き芋のせいなのだ。

畜生、焼き芋の繊維質め! 
胃の中で勝手に炭酸ガスやメタンガスに分解されやがって!
畜生、俺の肛門から勝手に放出されやがって!

ガシッガシッガシッ

俺の猛攻で焼き芋は原型をとどめていない。
焼き芋の存在をわずかなりとも知らしめるのは、そのかぐわしいにおいのみだ。

……いいにおいさせやがって。

クソ、悔しいがやっぱり俺は焼き芋は「す好き」だ。
しまった。焼き芋に対する昂奮で噛んでしまった。

俺は焼き芋にチュッとくちづけするとひと息に喰らいつくした。



次は「天使」「悪魔」「便器」

265:名無し物書き@推敲中?
11/10/18 18:11:09.24
 茶羽だ。気味が悪い。
 里中は中央公園の公共トイレで便座に座り、「悪魔」と名乗る人物が来るのを待っている。
 深夜0時を過ぎた公園のトイレはひっそりとして、コオロギだかツクワムシだかの鳴き声しか聞こえなかった。
 トイレには先客がいた。秋でも寒いからね。足が腐った浮浪者は里中を見て言った。皮膚の腐敗した臭いが漂ってくる。トイレの汚臭と相まって里中は思わず便器の中に吐いてしまった。浮浪者は「おいおい、兄さん大丈夫か」と笑いながらトイレの壁を叩いた。
「お待たせしました」
 ふいに声が聞こえ、顔を上げると口角をニッと上げた男が里中を見下ろしていた。悪魔だ。
「遅いな」
「すみません。今日はこのほかにも三軒あったもんですから。ところで、今回の方はどちらに……」
「横にいるだろ?」
「ああ、これですか。もう死んでますね」
 里中は便座から立ち上がると溜息をついて、浮浪者が入っていた個室を覗いた。確かに浮浪者は舌をだらりと出して、ピクリとも動かなかった。「悪魔」は「どうします?」とニタニタ笑う。
「まあ、今回は俺が預かる」
「あれ? いいんですか?」
「まあ。この男も十分に地獄を見ただろ」
 悪魔はしばらく上を向いて考えていたが「それもそうですね」と頷いて笑った。
「さて」
 里中は浮浪者を抱えるとトイレの外に連れ出した。空を見上げてじっと待つ。やがて眩い一筋の光が差し込むと、浮浪者は細かい星の屑になって消えた。トイレの影に隠れていた悪魔が里中に声をかける。
「でも、やっぱり珍しいですよ。あの男は事故だったとはいえ、人を車でひき殺してたんですよ?」
「いや、まあそうなんだが……」
 里中はそう言って靴の裏を悪魔に見せた。厚い靴底の裏で茶羽のゴキブリが潰れて引っ付いている。
「天使である俺がうっかり命を奪ってしまった。さっきのはせめてもの罪滅ぼしだ」
 静かな公園の空気に、気味が悪い悪魔の笑い声がしばらく続いたのだった。


次は「おもちゃ」「電動ドライバー」「父親」

266:名無し物書き@推敲中?
11/10/18 22:26:24.58
―これは遊戯でありセラピーだ。
頭に「おもちゃ」と書かれた帽子をかぶり床に寝ている俺はそう思った。
ここは精神病院で白い服を着た看護士と医師が楽しそうに笑っている。

「さて電動ドライバーさんの番ですよ!」
電動ドライバーと書かれた帽子をかぶった若い女はそう言った男の方を向き
また下を向いて黙った。

「Aさん。あなたは電動ドライバーです。さてどうしましょうか?」
床には細い糸くずがあって、それが誰かが動くたびに揺れていた。その先に誰かの足首が見える。
頭はムカついたが体は解放されていた。なぜなら自分以外のものになっているからだ。
自分でいるときだけ問題はやってくる。

「……さてと、妻がガーデニングを手伝ってくれと言っていたな」
父親と書かれた帽子を被った若い男がそういって電動ドライバーに近づいた。
電動ドライバーの若い女が緊張するのが分かった。
それが若い男のせいなのか父親と書かれた帽子のせいなのか知らない。
俺はただおもちゃとしてこの舞台を眺めている。おもちゃに悩みは無い。
苦痛も無い。ただ眺めるだけだ。



「腋」「勃起」「宅配」



267:名無し物書き@推敲中?
11/10/19 01:20:27.48

日曜日の朝。目覚めたばかりの私は、シャワーを浴びている。
ここは都心のワンルームマンション。一人暮らしの私の部屋。
肩までの髪をゆっくと掻きあげて、胸の膨らみにスポンジを這わせる。
半透明のシャボン玉が、胸の谷間から締まったウエストへと、音もなく流れてゆく。
しっかりと洗わなくちゃ、今日は特別な日なのだから。
腕の先から足の先まで、私は自分の身体をピカピカに磨き上げてゆく。
全身をすっかり清潔にした私は、髪にタオルを巻き付けてから腋に液体を噴射すると、バスローブを羽織って居間に戻った。

開かれた窓からは爽やかな風が流れ込み、レースのカーテンをひらひらと揺らす。
そんな光景を横目に見ながら、私は荷物の到着を待つ事にした。
『ピンポーン』ベルの音がした。午前十時。予定通りだ。
「お届け物です」宅配業者の声が聞こえた。二十代前半だろうか、ハキハキとした感じのいい声。
私はバスローブのまま、まだ乾ききっていない髪を拭きながら玄関へと向かった。
「はーい」
私がドアを開けると、短髪の青年は爽やかそうな笑顔で私に荷物を渡した。
「印鑑お願いします」
「印鑑……サインでもいいですか?」
「結構です。これをお使いください」
宅配の青年はボールペンを差し出した。
「ありがとうございます」
受け取ろうとした私のバスローブの紐がはらりと落ちて、次の瞬間、前が、はだけた。
宅配の青年は、私の露わになった胸を見て、それから視線を下に移した。
青年の股間が明らかに膨らんでゆくのが見えた。勃起していた。
『いけない!』私が身体を隠すより早く、青年は私を押し倒す。
ベルトを外す金属質の音がしたかと思うと、次の瞬間には私の一番弱い身体の中心に、異物が侵入してくるのを感じた。
レイプされている……そう思うと、自然に涙が流れてきた。
最初は身体が上下に揺すられているのを感じていたけれど、そのうちに頭が真っ白になり、何も分からなくなっていった。


続く

268:名無し物書き@推敲中?
11/10/19 01:21:37.16
ぼうっとしている私の横で、男は宅配の制服を身に着けてはじめていた。
「すみません。こんなことは初めてなんです。身勝手なお願いなんですけれど、会社には言わないで下さい」
男は申し訳無さそうな顔をしていた。
「分かっていますよ。私もこんな事、大勢に知られたくはないし」
「これも身勝手な申し出なんですが、今、僕は独身で彼女も居ないんです。もし、嫌じゃなかったら責任をとらせて……」
遮る様に私は言う。
「今、好きな人がいるんです」
これは嘘。まだ私は一人に縛られたくないだけ。
「そうですか……本当に申し訳ありません。また、よろしくお願いします」
言い残すと、男は部屋を出て行った。
何がまたお願いしますなんだろう。私は笑った。こんな事のあとは、大事になる前に普通は転職をするものだ。少なくともいままでの男はみんなそうだった。次に会う事は、たぶんない。

けだるい気分のまま、私はバスローブを整えて配達された荷物へと向かった。
立ち上がった拍子に、男の忘れ物が、茂みの中から内股へと、とろりと伝わる。
私は荷物の包装を丁寧に解くと、箱も開けずに新しい包装紙に包み直した。
そして、真新しい宅配のタグを用意すると、届け先に自分の住所を書き入れた。
次は……来週の日曜日でいいかな。来週は残業続きだから、お昼頃の指定にしよう。真昼の情事とかね……私はひとりで微笑んだ。
それにしても良く効く媚薬だ。あんなに真面目そうな青年があんなにまでなるなんて。私は腋に鼻を近づけて、風呂上がりに吹き付けた媚薬の香りを嗅いだ。
さてと、来週の日曜日は特別な日。


「友情」 「花」 「揉め事」

269:名無し物書き@推敲中?
11/10/19 15:49:44.29
 道端に咲いているタンポポの花を見ると、ゆーちゃんと揉め事を起こしたあの日の事を思い出す。
思えばゆーちゃんと喧嘩らしい喧嘩をしたのは、あの日が最初で最後かもしれない。
 私とゆーちゃんが、家の近くにある公園へと何時もの様に遊びにいったら、
地面にたくさんの、ふわふわした綿毛がついたタンポポが一面に生えていた。
それをみた私とゆーちゃんは、競い合うかの様に吹いて綿毛を飛ばす。
空に舞う綿毛に見惚れ、次から次へと手当たり次第にタンポポを吹いて周って―。
しばらくしたら、綿毛が付いてるタンポポは一輪だけとなってしまった。
そこで、取り合いの喧嘩が始まった。
蹴るわ殴るわ、髪を掴んで引っ張り合うわで、今思い出しても酷い事をしたものだと思う。
 母親が来て喧嘩は止められたが、ゆーちゃんは、流血こそはしなかったものの、
顔には痛々しい青痣ができていて、自分が原因にも関わらず、それを直視できなかった私。
去り際に、ゆーちゃんが一言。
『たっくんなんかと、もう二度とあそばないもんっ!!』
涙や鼻水を流しながらそう叫んだゆーちゃんの顔は今でも忘れられない―。

 「―で、ホントにアレ以来顔も見せなくなっちゃうんだもんなぁ」
煙草に火を付け一服した後、そう愚痴る私。
「随分前の筈なのに、つい最近みたいな感じだよ」
すーっと息を吸うと、たちまち灰となって消えていく煙草。
「あの頃を思い出すといつも思うんだ。友情なんて所詮、下らない事で簡単に壊れちゃうモノだったんだな、って」
スーツの懐から携帯灰皿を出すと、その中に吸殻を入れる。
「なぁ、そう思うだろ? ゆーちゃん」
私が問いかけるその前には、無骨な墓石が一つあった。
「―でもさぁ。何も、謝る前に居なくなっちゃう事は無いだろ?」
知らず、語りかける私の声に涙声が混じる。


270:269
11/10/19 15:50:19.07

 事故に遭って家族全員が亡くなったと知ったのは、喧嘩があった日の僅か二日後の事だった。
着慣れない礼服を着て葬式に出ると、そこには青痣などない、満面の笑みを浮かべたゆーちゃんの写真があった。
それを見た瞬間、私は泣き喚きながら、しきりにごめんね、ごめんねと叫んだ、らしい。

 「―その時大変だったらしいよ。全然泣き止まなかったから」
苦笑いを浮かべる私。だがその眼には、依然として涙が留まっていた。
「さて、と。そろそろ時間だから行くな」
私は立ち上がると最後に一言、ゆーちゃんに呟く。
「―ごめんな、ゆーちゃん」

次は「豚」「メガネ」「フィリピン人」でお願いします。



271:名無し物書き@推敲中?
11/10/19 23:38:37.94
「お前の母さんはフィリピン人で日本に売春目的で来たけど金を盗んで
売春バーを追い出され千葉の田舎を歩いてるところを養豚業者に拾われて
仕事を手伝うようになったけど、馬鹿だから長続きしない。
その上、豚とやった。それでお前が出来たんだよ。父親は豚なんだよ。
だから戸籍もないし、名前も無いし人格も無い」
私は女の首に回したロープを引っ張った。

「俺はお前とやりたくて仕方がない。でもな、俺は豚とやっちゃいけない。
それは俺がまともだからだ。そんなことぐらいは分かってる。
だからお前とすることは出来ない。
悲しいと思わないか? お前はやりたくてやりたくて下着に染みを作って
俺はやりたくてやりたくて胸が掻き毟られそうなのに
お前とやることが出来ないんだ。なあ―地獄だよ」
私は女の前にひざまづくと女のあごの先に手を当て顔を上げさせる。
女の唇は濡れ頬は上気して紅かった。







272:名無し物書き@推敲中?
11/10/19 23:38:53.39
「だからこのバイブレーターに仕事をしてもらう。
お前は満足できないかもしれない。でも満足しなきゃいけない
わかるだろ? ごめんよ」
そう言って俺は女の下着に手を当てた。

最近、裕美の趣味がだんだん酷くなってきてる。病気なんじゃないだろうか?
裕美が言わせている台詞も冗談の範囲を超えているような気がする。
俺はそのうち殺されるんじゃないだろうか? と思う。
冷え切った汗がメガネを伝いももみあげに落ちた。
裕美と別れたいと感じている。
裕美は好きだ。でも死にたくない。



「痴漢」「目撃」「ストーカー」


273:「痴漢」「目撃」「ストーカー」
11/10/20 22:25:26.28
 僕はとんでもない物を目撃した。
それは……多分殺人事件だったと思うけど何日待ってもニュースにはならず、
もう1度現場に行く勇気も無く、嫌な気持ちのまま日々を過ごしていた。

 ある日警察が僕を訪ねてきて、纐纈(こうけつ)さんについて聞かれた
それはよく知っている、僕が大好きな人の名前だ。

 二人の警察官は僕の表情を見て何かを確信した上で確認をしてくる
「はい……あの、僕の片思いの人ですから」
恥ずかしいことを言わせるなよ!と思っていると、言葉だけは丁寧な否定を許さない口調で任意同行を求められた。

「つまり、纐纈さんが女性をストーカーしていて、想いがエスカレートした結果殺したという訳ですか?」
ふざけないでほしい、纐纈さんが人を殺せるわけ無い。
電車で痴漢されていた僕を助けてくれたやさしい人
僕の思いを全て警察にぶつけた。

警察は不快な目つきで、私が女性が首を絞められて死んだと知っていた事を追求してきた。
僕はもう、自分が犯人だとしか言えなくなっていた。

次は「密室」「暖炉」「孤島」でお願いします

274:名無し物書き@推敲中?
11/10/21 01:10:05.99
英国の本格推理小説において暖炉と柱時計が必要なように
日本のサスペンスドラマにおいて断崖絶壁は不可欠であると思う。
そこにおいて犯人は告白する。自らについて、愛について
そして犯行について。語り手は犯人であるが聞き手は登場人物ではなく
読者自身であり視聴者である。語られなければいけないことを、聞かなければ
ならぬ人物が聞く。時に涙し時に震えながら。

さて私はこの物語の語り手である。物語は東京の武蔵野市のコンビニに始まり
の東京都小笠原の孤島を経て新宿の交差点で終わることになっている。
第一のクライマックスは商業ビルでの密室殺人である。
鍵のかかった従業員用の更衣室が死体が発見されるはずだが
先のことなど誰が知っていよう?

それでは物語の旅へと行こうじゃないか。カバンも折りたたみ傘も地図もいらない。
必要なのはきっと―好奇心だけである。


「暴行」「無罪」「精神鑑定」

275:暴行 無罪 精神鑑定
11/10/23 08:58:25.47
「判決が下ったよ」
 悪魔が舞い降りてぽつりと言った。
「はあ? あんた誰。何言ってんの?」
 黒井ミミは咥えていたタバコをぽろりと落とした。
 畳の上に、また一つ焦げ目が増える。
「有罪。お前は有罪」
「な、何言ってんのよ。あっち行ってよ。気持ち悪い動物ねえ」
 手で野良猫を追いやるしぐさをした。
「有罪! 有罪! 有罪だ! ところで俺、悪魔だから」
 悪魔は蛇のロープを取り出して、黒井ミミの両腕と胴体を縛り付けた。
 何匹もの蛇が絡み合い、黒井ミミの体をギリギリと締めあげる。
「認めない! 私はこんな仕打ち絶対認めないんだから!」
 黒井ミミが蛇の緊縛から逃れようともがいていると、部屋のドアが開かれた。
「なんだい? 騒々しいねえ。あんたの部屋の真下にいるってのはつくづく災難だよ」
 黒井ミミの部屋の真下に住む磯野ハナが不機嫌そうな顔を向けた。
「あんた、また男でも連れ込んでんじゃなかろうね。困るよ。ここは夜這い
禁止の寮なんだからね」
「違います。これ見てくださいよ。悪魔が私を暴行してんですよ。魔界のSM
ですよ。ひどいと思いません?」
 磯野ハナは怪訝そうな顔をした。
「はあ? 悪魔だって。どこにいるんだいそんなもん。あんたバカか? 悪
魔なんてね、今時ライトノベルにだって出てきやしないよ。驚いたね。あん
た、あっち系だったのかい」
「だから、ここに、いるじゃないですか」
「フン、私には何も見えないがね。やれやれ、前から変わり者だと思ってた
けど、あんたどうやら精神鑑定が必要みたいだね。桑原桑原だよ」
 磯野ハナは虫を見るような一瞥を向けると、ドアを強く閉めて退散した。
つづく

276:暴行 無罪 精神鑑定
11/10/23 09:00:10.28
「さあ、人間・黒井ミミ、一緒にくるんだ。貴様には地獄の苦しみが待っている」
 悪魔が哀れな彼女を引っ張ろうとすると、
「待て!」
 上級悪魔がやってきて悪魔を制した。
「判決が覆った。人間・黒井ミミは無罪が確定した」
「えっ、なんでだよ」
「詳細は不明だが、どうやら天使との間で裏取引が行われたようだ」
 2体の悪魔は黒井ミミを解放して丁寧に謝罪した。どうやらクレームを気
にしているようだ。
「ちょっと、あんた達、この落とし前どうつけてくれるのよ?」
「いや……それは、その、つまり……」
「永井様は何がお望みでしょうか」
「そうねえ」
 黒井ミミは咄嗟に目に付いた、悪魔が持ち帰ろうとした蛇のロープをひっ
たくった。
「あ、それは魔界のツールでして、その……」
「この玩具おもしろそうね。もらっておくわ」
「とほほ」「仕方ありません」
 こうして黒井ミミは自在に動く蛇のロープを手に入れた。
 彼女がこのロープを何に使ったのか。それはまた、いずれ―

おわり

地下鉄 化石 月面

277:名無し物書き@推敲中?
11/10/23 15:06:26.69
本文長すぎるってあぷろだに怒られた・・・15行なのに

278:地下鉄 化石 月面
11/10/23 15:08:44.56
「地震か!」と小さく叫んだその瞬間、揺れは不意に収まった。
「危ない所だった」。窓をあければ、大正の帝都は今日も賑やかだ。

彼が”化石”と酷評した電車が、満員で東京の街を這い回ってる。
早く、地下鉄を完成させねば。地震で中止する訳にはいかないのだ。

50年後。大震災を逃れ、世界大戦も回避し、軍閥も解体した日本は
順調に科学を進歩させ、驚くべき高みにまで達していた。

これで6行。
ごめん つづくw

279:名無し物書き@推敲中?
11/10/23 15:10:09.04
(残り9行れす。これで15行かあ、つかれた)

彼も骨肉腫を完治し、30年ぶりの地下鉄に乗る。感無量だ。
だが見知らぬ路線だ・・・と路線表を見て、彼は驚愕と落胆に棒立ちになった。

「そうだったのか・・・これは”もしも”の世界だ。紙上の架空世界なのだ。」
じっと車席にうずくまり、空しい笑みを浮かべる。
「”関東大震災”はあったんだ・・・」

疑念を打ち消す様に、可愛い娘の声でアナウンスが入る。
「次は、静かの海駅。静かの海・月面クレーター前でーす。」
彼は苦笑した。この世界をでっちあげ奴、よっぽど焦っていたんだな。
地球から月に、地下鉄が通じる訳がないのに。

次のお題は:「新幹線」「紙とお水」「領収書」でお願いします

280:新幹線、紙とお水、領収書
11/10/23 17:31:44.67
空から金属とプラスチックの塊が落ちてきた。
それだけでも許せないのに、それらは一つの形を成しており、かなり大きい。
落ちてきたのは日本の新幹線の先頭車両だった。
「どうやら人は乗っていないようだな」
ロシア空軍のイワノフ将軍は中を調べさせて困惑した。
「かつて我々が別の名前の国家だった時代、ミグ25戦闘機のパイロットが
日本に亡命したことがあった。だが今ここに墜落しているのは戦闘機や人工
衛星なんかじゃない。新幹線という日本の最速の電車だ。こんなことがある
のだろうか」
ロシアは連邦時代の習わしに基づいてこのことを秘密にし、イワノフは密か
に日本を訪れた。
イワノフは走行する新幹線車内で、政府官房長官の西崎喜幸と会談した。
「話は変わるが―」イワノフはどうでもいい北方領土の話題をかいくぐっ
て核心に入った。「日本の新幹線に飛行能力はあるのか?」
西崎はきょとんとして
「音速を超えたらいいなとは夢見ていますが、空を飛ぶ予定はありませんよ」
「日本にはオタクという技術集団がいるだろう。彼らは新幹線を変形させて
飛行機にするとか朝飯前のような気がするが」
「手足をつけてロボットに変形させることは可能です。ただしこれは玩具で
の話でして」その時車内で騒ぎが起きた。
「さあさあ、お立ち会い! どなたか紙とお水はお持ちか?」
あごひげを蓄えたメガネの老人が車内を見渡して叫んだ。
「持ってたらどうなる?」
「これは外国の客人。日本へようこそ。なあに、ちょいと奇跡をごらんに入
れようと思いましてね」
イワノフは西崎を見て目で尋ねたが西崎はノーノーと首を横に振った。
すまん、つづく

281:新幹線、紙とお水、領収書
11/10/23 17:35:06.54
イワノフは何も言わずにポケットから吉野家の牛丼屋の領収書を出してヒゲ老人に渡した。
西崎も仕方なく、紙コップの水を差し出す。
ヒゲ老人はにやりと歯を見せて笑い、これはどうもと会釈をして、紙と水を受け取った。
次にヒゲ老人は紙をびりびりに裂いて、紙コップの水の中にそれを捨てた。
そして何かをつぶやくと―
「すごい! ボリショイサーカスの前座に招待したいよ」
何と紙コップの中から白い小さな妖精が何匹も飛び出して宙を舞い始めたの
だ。
しかしイワノフはヒゲ老人に日本円のチップを与えながらも内心は暗い気持
ちに囚われていた。
(できればただの手品でかたづけたいところだ。だがこれが神の所業ならど
うする? 私の前で起きた二度の奇跡は偶然なのか……)
イワノフか帰国するのと同時刻、名もないヒゲの老人が死体で発見された。
ロシアの将軍が部下に命じて暗殺したのである。ロシア政府にとっては容易
い手品だった。

空から金属とプラスチックの塊が、再び落ちてきた。
またしても日本の新幹線だ。
今度はイワノフがじきじきに車内を探索した。
車内の狭いトイレの中に、問題の人物はうずくまっていた。
「ヒゲの……やっぱりあんたの仕業か」
死んだはずの老人は上着の埃をはたいてにやりと笑った。
「ご招待にあずかり光栄です。イワノフ将軍」
「貴様、目的はなんだ?」
イワノフは内心震撼していた。今度の敵はアメリカでも日本でもない。気ま
ぐれな、神なのだ。
「お忘れですか。ボリショイサーカスに出させてくださるって仰ったのを」
老人の軽い言葉は小さなきっかけに過ぎなかった。このときはまだ、ロシア
の領土面積が激減する自体になろうとは当のイワノフでさえ思わなかったの
である―

おわり

282:「新幹線」「紙とお水」「領収書」
11/10/25 09:47:29.71
かぐや姫は、三人の男を前にして言いました。
「私と結婚したければ、次に言うものを探し出し、ここに持って来てください」
「新幹線、紙とお水、領収書」
男たちは、矢継ぎ早に質問しました。
「新幹線とはなんでおじゃる?」
「私にもわかりません。未来の乗り物かなにかでしょうか?」
「紙とお水には、二つのものが含まれてないか?」
「お題がそうなのだから、仕方ないでしょう!」
「領収書は、なんの領収書でもいいのですか?」
「では、この世で一番高価なものの領収書とします」
男たちは話し合いました。
「麻呂は、我が財力にかけて、領収書を持ってくるでおじゃる!」
「俺は、新幹線なるものを見つけて見せよう!」
「では私は、残りの紙とお水を」
それぞれの思惑を胸に、三人の男たちは旅立った。


283:282
11/10/25 21:57:41.61
次のお題は下記でお願いします。
もしも
改変
後悔


284:名無し物書き@推敲中?
11/10/25 23:08:28.73
「質問ですか? そうですね……別に無いんですけどね。
あっここに来る前に面接したところでですね、履歴書を改変しちゃったんですよ。
もちろん、さっき出した履歴書はしてないですよ。
受かりたかったんですよね。時給が1200円なんですもん。
条件も僕にあってたし。まあこういうことをここで言うのって失礼なことだと思うんですけど
ぶっちゃっけちゃいますけどねw 後悔してるかって言えば後悔してます。
まじめに書いておけば良かったなあって。もってもいない資格書くから
突っ込まれちゃうんでね。まあ自業自得なんですけど。
2ちゃんねるのプログラマースレで書いてあったんですよ。べつに資格なんて持ってなくても
あとから勉強しとけば、ばれないって。だってデザイン系の会社なのに
php必要ないでしょ? あー失敗したなあ。でも嘘書かなかったら
受かってたかは分からないですけどね。僕のほかにも
面接来てる人いたし。もしも……っていうんですか。もし受かってたとしたら
逆にプレッシャーきつかったかもしれないですね。だから良かったのかも。
こう見えて楽観的ですからね。失敗したことはクヨクヨしないことにしてるんです。
さっきも言いましたけど、別の面接でのことを言うのって失礼かもしれないんですが
正直に答えてっておっしゃったんで言っちまいましたw 
落としても良いですよw」


「恐怖」「交番」「停電」

285:「もしも」「改変」「後悔」
11/10/25 23:42:59.16
「もしも~だったら」
これを実現できる装置が発明された。
ただし、現実世界を改変するわけではなく、あくまでシミュレーションの中で、もしも~だったらが実現される。
膨大な現実世界のデータと、道行く人の脳波を読み取り集めた思考データを元に、常にシミュレーションを繰り返し、あらゆる可能性をデータベース化した末に成し遂げられた。
「もしも~だったら」とスマートフォンに問いかけると、音声認識され、このデータベースから答えが返ってくる。
俺は、さっそく試してみた。
「もしも俺がリア充だったら」
データベースから答えが返ってきた。イメージが脳に送られ、現実世界のように感じることができる。
……好きだった彼女と付き合って、いい会社に入って、業績を上げて、彼女と結婚し、やがて役員となり、円満に退職する……。
「いい夢を見た」率直な感想だった。
「じゃあ今度は、もしも世界があと三日で終わるとしたら」
……突然、隕石が落ちてきた。直径1kmもある隕石が地表に降り注ぎ、灼熱地獄。地球が太陽の公転軌道を外れ、太陽がだんだんと小さくなって、極寒地獄。生物は三日で死滅した……。
「俺が死ぬのが、結構早かった……」

286:「もしも」「改変」「後悔」
11/10/25 23:43:51.62
しばらく考えて、俺はあることを閃いた。
「もしもこのまま時間が過ぎたら」
……何も変わったことはなく、一日が過ぎる。二日目、突然、隕石が落ちきた! そして、さっきと同じ光景が続く……。
「もしもこのまま時間が過ぎたら、未来が見えるのではないか?」
そう思って、試してみた……。
「これ壊れてるんじゃないか?」
何度か繰り返したが、同じ結果だった。
「こういうもしもは、こういう結果が返ってくるようになってるんじゃないか?」
ふと思いついて、ツーちゃんねるでスレを立ててみた。
「同じ結果が返ってきた」というレスが多数付いた。
しかし、逆に、これ以外の結果が出たというレスがない……。
「どうすればいい?」
このまま時間が過ぎて、本当に隕石が落ちきたら、たぶん後悔する。
「未来を知ってしまったのだから、世界が改変されて、何事もなく世界が続く可能性もあるんじゃないか?」
ツーちゃんねるでは「世界の終わり」関連スレが乱立している。
「リア充死ね!」と、意味もなく俺は書き込んでしまった。
「お前が死ね」と、返された。
やばい、このままだと、本当に死ぬかもしれない。

287:名無し物書き@推敲中?
11/10/25 23:45:29.28
せっかく書いたので投稿しました。
次のお題は284さんので。
「恐怖」「交番」「停電」


288:「恐怖」「交番」「停電」
11/10/26 12:53:50.07
 山田舎の新しい派出所にて、数刻ほど立ち番をして居たら不意に電灯が消えた。
 停電だろう、真っ暗だ。仕方なく手探りで、備え付けの石油洋灯を探すことにした。

「―やあ。ついにこんな田舎にも交番が出来ましたかあ。」
 背後からの声に振り返って見れば、頬被りをした農夫が両手に籠を抱えつつ立っている。
「ええ、どうも。今年からは交番では無く、派出所と呼ぶようになつたのですが。」
「へえ、派出所? なにか響きが乾いてていけないですね、交番のほうがよかつたなあ。
なんたつて元は番屋でしよう。江戸落語の禁酒番屋だつて、禁酒派出所にしちや仕舞いが悪い。」
 落語なぞ聴くとは、洒落た農夫だ。言われてみれば、肌艶も良くて水飲み百姓とも思われない。
 私は少し襟首を正して彼との雑談を続けた。
「まあ、近代化ですよ。幕府が人気投票で選ばれる時代です。なにやら、選挙やら国会やらいう。」
「はあ、恐ろしいもんですなあ。」
「アハハ、恐ろしいことなどありませんよ。」
「いやいや、恐ろしいもんですわ。おいらも身の振り方を考えねばなあ。」
 農夫はなんだか無性に悄気た様子で背中を丸め、とぼとぼと去って行った。
 私はそれを見送ってから、再び洋灯を探そうとして―そこで気付いた。

 ……今夜は空に月もなく、停電で辺りは真っ暗で、洋灯も手探りでしか探せない。
 なのになぜ、あの農夫の姿や表情はよく見えたのか。照明など、持っていなかったのに。
 ―狐火、という言葉を思い出した。

 電灯は、農夫が去るのを待っていたかのようにして復旧した。
 私は、あの農夫が狐だとしたらどんな恐怖を抱いていたのか、想像しながらその日の立ち番を過ごした。


次は「目の疲れ」「効果的」「回復」でお願いします。

289:目の疲れ、効果的、回復
11/10/26 21:36:20.99
古くさい格好をした少年が歩いていた。彼の髪は柳のようにだらしなく伸び、顔の半分近くが隠れている。片方の目だけが白髪の間からギョロリと覗いていた。
彼が足を踏み入れた場所は、未成年が入り込んでいいとは決して言えない、夜の風俗街。
どぎついネオン看板に彩られたビルの谷間を、何かを求め探すかのように少年は彷徨っていた。
「父さん、こんなところに奴がいるのかな」
『いる、いると言ったらいるんじゃ!』
どうやら少年は父親と話しているようだ。
しかし、父親の姿はどこにもない。
「僕には何も感じられないけど」
『奴は弱っておるのかもしれぬ。だからお前ではわからんのじゃ』
「父さんは奴を感じるの?」
『うむ。どうやら奴とは他人ではないような気がしてな。微かな波動を感じるのじゃ』
風俗街の奥の奥、袋小路になっているところで少年はようやくハッとした。
「父さん!」
『うむ、ここじゃ。ここに奴がおる』
袋小路のマンホールの下から妖しげな気配が漏れてくる。
少年は父の言われるままに蓋を開けて下水道に降りていく。
その闇の奥、ちょっと広い地下空間に、やつはいた。
  つづくのじゃ

290:目の疲れ、効果的、回復
11/10/26 21:37:17.03
バックベアードと呼ばれる巨大な目玉の妖怪だ。だが今や彼の巨大な目は重い瞼に閉じられ、その端からは多量の目脂が溢れている。
『どうした大統領? いつぞやに比べると、すっかり勢いが削がれておるな』
《目玉の……これは久しぶりだな》
バックベアードはテレパシーで語りかけていた。
三者の間に、かつてバックベアードが栄華を誇っていた頃の、激しくも懐かしい戦いが蘇る。三者はまさに宿敵同士だった。
《実はな……人間が作った3Dテレビ。あれをちと見過ぎてな……この俺としたことが目の疲れが著しい。物が四重に見える。重度の眼精疲労に陥ったというわけさ》
『ほう、人間の機械に惑わされたか。それはちと他人事ではないのう』
「バックベアード、僕が毛針を打ってあげようか」
《おっと少年、それは御免被りたい》
少年の毛針には何度も痛い目に遭っているバックベアードは悲鳴を上げた。
「大丈夫だよ、ツボを狙って打ち込めば人間の鍼治療と同じさ。あなたの症状に効果的に効くはずだよ」
《本当か……?》
「父親のわしが保証しよう」
少年は両の拳を握りしめると、毛髪を逆立てて巨大眼球生命体のツボめがけて針を発射した。
《ぎゃっ……おっ?……おおおっ。少年、しばらく見ない間に鍼師の資格でも取ったか》
バックベアードはほとんど閉じていた瞼を全開し、巨大な眼球を晒した。
回復したのだ。
だが回復したのは眼力だけではなかった。
なんと精力まで回復してしまったらしい。元気を取り戻したバックベアードはお礼もそこそこに意気揚々と夜の風俗街へ消えていった。

次回「ストリップ」「レントゲン」「魔術師」

291:「ストリップ」「レントゲン」「魔術師」
11/10/27 00:41:26.22
「レントゲンでは駄目だ!」
主任研究員Aは声を荒げた。
「見え過ぎてはいかんのだ! 服だけが透けるように。人間の肌は透過しないレベルの波長が必要なのだ!」
紫外線、X線、赤外線、可視光線。そのどれにも属さない領域の波長。仮にストリップ光線とでも名付けようか。
この波長を見付け出すこと。制御して、自在に発振、受光できる装置を作ること。それが主任研究員Aが自らに課した使命だった。
「人は服を着ることにより、ファッションを身につけた。着飾った姿に惹かれ、男女が語り合う。しかし、その内側を知ることができない。付き合いだしてからわかったところで、お互いが傷ついてしまう。最初からわかっていれば、偽巨乳女に騙されることなんてなくなるんだ!」
「……偽物かどうかは、ある程度、見ればわかると思いますがね」
そばで聞いていた助手がつぶやいた。
「君みたいにリア充ではない私には、違いがわからんのだよ! リア充は死ね!」
やれやれといった感じで助手が言う。
「その勢いで、さっさと開発してくださいよ。黒魔術師じゃなくて、光の魔術師と呼ばれるぐらいの成果を出してくださいよ」


292:「ストリップ」「レントゲン」「魔術師」
11/10/27 09:48:41.55
すいません、次のお題は、
「カマトト」「二次元」「進化」で。

293:「カマトト」「二次元」「進化」
11/10/27 11:42:49.39
「カマトトの語源って知ってる?」
 放課後のマック、仲良し女子三人でクラスのムカツク女子評をしていたらそんな話になった。
「あのね、カマってのはカマボコのことで、トトっていうのは魚のことなんだって。
つまりカマトトっていうのは、『え~、カマボコって魚だったんですか~!? 知らなかった~』って、
知ってることを知らない振りして男に媚びる馬鹿女の様子を元にした言葉なわけよ」
「あぁー、今も昔も男は馬鹿な女が好きだもんねぇ」「あるある」
 頷く二人に対して、私は前々から思っていた持論を披露することにした。
「でもこれさ、イマドキじゃ意外と、カマボコが魚だって本当に知らないこともあり得るじゃん?」
「あぁー、あたしも昔あれ、卵の白味で出来てると思ってたわ」「アルアル」
「だからさー、カマトトって言葉も進化しないといけないと思うんだよね。例えばさ、『ニジカプ』とか。
『二次元といえばカップリングって? なにそれ~』みたいな白々しい態度を取る女子の様子を例えて―」
 ―と、笑いながらそこまで語った所で、目の前の二人の様子に気がついた。
「……にじ……げん? といえば、カップリング……なの?」「ちょっと……わかんナイ?」
 二人とも、キョトーンとしている。心の底から、キョトーンとしている。
 そこで私は迷うこと無く言い放った。

「うんごめんなさいなんでもない。忘れて」


次は「アンプ」「女」「研究所」でお願いします。

294:名無し物書き@推敲中?
11/10/27 22:43:50.28
野球場には野球場の雰囲気があるように裁判所には裁判所の
雰囲気がある。そして音楽の練習スタジオにも練習スタジオの
雰囲気ってものがある。

僕はスタジオのベンチでサービスのコーヒーを飲みながらそう考えていた。
時刻は午前二時になるところだ。終電はとうに出て行ってしまったし
僕らのほかにはスタジオは使われていない。
分厚い防音扉を通して聞こえてくるとても小さなドラムの音のほかは何も聞こえない。
とてもリラックスする。身体は弛緩してるけど頭はさえている。

僕はコーヒーをテーブルに置いてさっきまでやっていた曲の事を考える。
ベースが作った曲でちょっと前に流行ったグランジ系の曲で
わりと良く出来てはいたが、ありがちといえばありがちだった。これっていうものが無かった。

バンドのメンバーの中にはプロになりたいっていう奴がいる。
ヴォーカルとドラムだ。僕とベースは趣味でやれれば良いって考えてる。
そして派閥が出来る。プロ志望、そうでもない派。


295:名無し物書き@推敲中?
11/10/27 22:48:19.41
さっきからスタジオの受付の兄ちゃんがアンプを直している。
フェンダーのアンプでテスターを片手に基盤に顔を近づけては
首を振ったり、ため息をついている。きっとどこかの若造がめちゃくちゃに
弄繰り回したんだろう。僕が若い頃、そうだったみたいに。
兄ちゃんは髪が長く痩せていて、うつむいたその姿は女性を思わせる。
AC/DCと書かれたTシャツに胸のふくらみは無い。

「はいスタジオお漏らしです! はいご予約ですね。お時間は……
バンド名は……流体力学研究所さま……わかりました」

僕は目を閉じ午前二時の音に身を浸す。それは優しくて暖かくて
ざらついていてた。街の息遣い。僕はそんな音楽を作りたい。


「映画」「着る」「ビル」

296:「アンプ」「女」「研究所」
11/10/27 23:09:31.07
「さあ、君の好みの女の子を選びたまえ」
 研究所の奥にある暗い一室に通された僕は、そこに並ぶカプセルの中に浮かぶ女の子たちから好きな子を選ぶよう博士に促された。
 カプセルに付けられたプレートには、それぞれ名前が書かれている。
「アヤナミレイ、シキナミアスカラングレー、ナガトユキ、ミカヅキヨゾラ、カシワザキセナ(ニク)」
 みんな目を閉じていて、液体の中に裸で浮かんでいる。
「彼女たちは、何なんですか? 生きているんですか?」
「好みの子がいないかね? 彼女たちはクローンだよ。研究の成果だ。みんな君の言うことを聞いてくれる」
 女の子が入ったカプセルが並ぶ異様な光景に少し慣れてきて、一人一人の裸を目にして、なんだか恥ずかしくなってきた。
「これは究極の育成シミュレーションゲームだ。好きな子を選んで、君の好きなように育てられる」
「しかし、これは人権侵害ではないですか?」
「彼女たちは人間ではない。戸籍には登録されていないから問題ない」
「オリジナルの方が騒ぎ立てたら?」
「彼女たちは友達が少ない子たちばかりだ。周りも誰も騒ぎ立てない」
「なぜ僕に依頼するんですか?」
「正直に言えば、君も友人が少ないからだ。それに君は慎重だ。実験をするには慎重な方がいい」

297:「アンプ」「女」「研究所」
11/10/27 23:09:49.39
「……わかりました」
 だんだんとその気になってきた。目の前にいる女の子をどんな風に育てよう? 従順に、我が道を行くような感じに?
「彼女たちの心は、今は真っ白な状態だ。しかし、すぐに学習する。喜び、悲しみ、怒りもする。何度も繰り返すうちに、アンプを通したように増幅もされる」
「怒りが爆発したら怖いですね。特にアスカ、いや、ナガト……」
「君はボリュームを操作するように、彼女たちの心をコントロールするんだ」
「もしも、彼女たちを育てることに失敗したら?」
「廃棄してやり直せばいい」
「廃棄とは?」
 博士は、部屋の角にある四角い箱を指差した。
「あそこに放り込むだけだ。高温の溶鉱炉につながっている」
「……」
「気にすることはない。ここにたどり着くまでに、もう何度も使用している」
「……わかりました」
 僕は、恐る恐る立ち並ぶカプセルの一つを指差そうとした。
「もう一つ、もし選んだ子と違う女の子に変更したくなったら、ここで廃棄してからというルールだ」
 それを聞き、指差そうと上げた手をいったん降ろした。
「もう少し考えさせてください」
 彼女たち全員を育成して、最も満足できる順番は何か、僕は考えを巡らせた。

298:296
11/10/27 23:10:56.01
次のお題は295さんので。

299:アンプ、女、研究所
11/10/28 04:12:57.34
真夜中に光明寺から電話がかかってきた。
「大変じゃ」
「どうした? 俺の睡眠を妨げるほどの一大事なら応じるが」
「研究所が、炉心溶融した」
「なんだって?」
「あの女のせいじゃ。あの女がまた暴れよって……」
「もしもし、おい聞こえないぞ。大丈夫か」
電話の調子が悪いのは、電波状況のせいではない。
光明寺の声が小さくごにょごにょと聞こえてくる。
俺は電話の音声をアンプにつないだ。
「状況を! もう一度言ってくれ」
「あら、その声は如月さんね? お久しぶり」とスピーカーから冷静な女の声がした。
アヤナミレイ―碇博士の置き土産。呪われた人造人間。あいつがまた暴走したのか。
やれやれ! 眠気の吹っ飛んだ俺は、いざ研究所へとアルピーヌ・ルノーを走らせた。
それにしても放射能防護服を身につけての運転は随分と窮屈だなあ―。

300:「映画」「着る」「ビル」
11/10/28 18:36:22.78
 いやー、『沈鬱の暴走ハリケーン・ファイナル』…………名作だったなぁ。ファッキンマザーファッカー級の名作だった。
 まさか二十一世紀も十年が過ぎた今、あんな知能指数の低そうな汗臭い筋肉アクション映画を作るとは……やってくれるぜ!
 伊勢丹そばにあるビル九階の映画館で映画を観た俺は、一人で余韻に浸りながら下りのエレベータに乗り込んだ。

「―キムの演技、かっこよかったね」「うん、かっこよかった!」
 エレベータに乗り合わせていた俺以外の二人―若い女の子二人が、そんな会話を始めた。
 どうやら彼女らも俺と同じ映画を観たらしい。なんてセンスのいい女の子だ。確かにキム・ステファンの役は最高だった。
「でも、ジョーは最悪。衣装もダサいし、なんで主人公につっかかるか意味わかんないし」「あれはないよねー」
 …………な……に?
 おま、バッカてめぇら! 常に喪中のような黒スーツを着るジョー・グッドマンはかつて力不足で恋人を死なせた後悔から
主人公には自分みたいになって欲しくないと思い厳しく当たったってちゃんと作品中で描写されてたし名演してただろうが!
「いやマジ、ジョーは要らない子だったわー」「ははっ、否定できない」
 ぐぅ………………ッ! 俺はもう辛抱できなくて、ついつい思わず……口を開いてしまった。
「……あのー。ジョーはあれ、恋人が死んで、それで狂犬と呼ばれる刑事になったんですよ」
 一応はちょっと気取った風に言った俺の言葉に、前に立っていた彼女らはこちらを振り向いて―
「…………え?」「ぅわ」
 ―完全に不審者を見つめる表情をしてから、怯えた様子ですぐに目を逸らした。
 直後、一階に到着したエレベータのドアが開いた。少女らが慌てて下りていく。

 くそっ、なんだよ映画のことなんてわかってねー低能ビッチが、と彼女らを非難することでプライドを保とうとしていた俺は、
去り際に彼女らの一人が手に持っていた映画のパンフレットがちらりと目に入り―完全に死にたくなった。
 そのパンフレット……つまり彼女らが今日観た映画は―韓流アイドルのキム・イドンと、二枚目タレント北島城がW主演の
日韓共同製作の韓流ラブロマンス、『僕と彼女の幸せな出来事』というお洒落映画だったのだ。


次は「圧力鍋」「狩り」「クラブ」でお願いします。


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