この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十五ヶ条at BUN
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十五ヶ条 - 暇つぶし2ch164:「川の石」「空中線」「潮騒」
11/08/23 17:26:06.82
―たかが川の石にも、出来不出来はあるらしい。
拾った小石は、大した力を入れなくても手の中で簡単に砕けてしまった。
それは石質とか、そういう地学的なあれこれで説明できることなんだろうけれど。
人間と同じだな、というのが、俺の感じたことだった。

出来の悪い自分は、都会に出てチンピラになってもやっぱり出来が悪くて、
叱られてばかりで、小心で頭が悪くて、そのくせ悪いことは出来なくて……
沈められそうになってた女を助けたら、今度は自分が殺されそうになって、
逃げて逃げて……気がつけば足は何故か、故郷に向かって進んでいた。
川を下った先の、海沿いの小さな村に。

川沿いの道を歩く。駅は見張られているだろうから、川に沿ってどこまでも、どこまでも。
水の音を聞きながら、寒さを堪えて歩いていると、まるで自分自身が川底を歩いているかのようだった。
不出来な小石と、同じように。水流に揉まれ、砕けて、砕けて、丸く、小さく、情けなくなりながら。

丸一昼夜を歩き続けたら、やがて潮騒が聞こえてきた。夏の空に、懐かしい空中線が並び始める。
そして終点。川が海に流れ込む河口域。そこに下りて、なんとなく手で水底をすくってみた。
砕けた小石と再会できるかと思ったが、しかしそこには……砂しかなかった。砕けきった、砂しか。
―悪くない、と思った。こうなってしまえば、出来も不出来も関係無い。ただの砂だ。
それを確認した俺は安心して、逃げ出す際に負っていた深い傷に任せるように、目をつぶり、倒れた。


次は「空中戦」「水」「男」でお願いします。

165:名無し物書き@推敲中?
11/08/28 00:10:14.79
夕方4時の鐘が聞こえた。子供がもう帰ってくるころだ。
夕食はなんにしよう。ピーマンの肉詰めは嫌がるかな? 
そんなこと考えていたら、突然玄関が開いて、
「ママ! トンボが、トンボが!」ってね。服も靴は泥だらけ。
何度言っても水のあるところへいくんだから。これだから男の子は。
「どうしたの?」
「トンボが、2匹、喧嘩してて、」
「へえ、空中戦だ」
「そしたら急に輪っかになって、丸くなって、飛んでっちゃったの! なに、あれ!」
「そ、それは……」
「すっごい喧嘩してたのに、丸くなって、飛んでったんだよ! トンボってふしぎだねえ」
あたしは心の中で思った。お前を作るときも大体同じ手順だったぞと。

「卵黄」「銀幕の女王」「おしまい」

166:「卵黄」「銀幕の女王」「おしまい」
11/08/28 04:47:57.17
「……マスター、プレーリーオイスター」
 朝、ランチの仕込み中で開店前のボクのカフェに入って来た彼女は、ふらふらとした足取りでカウンター席に座ると
左手の付け根で苦しげに眉間を押さえながら、絞り出すような声でいつも通りの注文をしてきた。
 それから彼女は「ん……」と小さく呻いて、自身の長い黒髪に埋もれるようにして、その場にぐでっ、とうつぶせた。
 ノースリーブが脇を強調する。こんな生活をしているくせに、その肌質は少女のよう。芸能人だからか、それともやはり彼女が特別なのか。
 当代を代表する銀幕の女王は、そうは見えない顔をごろりと横向け、顔にかかった髪の下から暗い声で独り言のように呟いた。
「ああ……男なんて全員残らず死んでおしまい、って感じ」
 それは二ヶ月前、初めて彼女と会った日に、店の前で酔いつぶれていた彼女が、介抱するボクに言ったのと同じ言葉だった。
 正しく『男』に含まれるボクはその言葉を無視して、二日酔いに効くとされているカクテル―卵の卵黄にウスターソースと
ケチャップ、胡椒、タバスコ、ブランデーをそれぞれ適量投じたものを、ロックグラスの中に混ぜもせず、彼女に差し出した。
 彼女がそれを一息に仰ぎ飲む。その様は豪快で、六年前に熊に殺されたボクの伯父に似ていた。
 毛深く酒豪の大男だった伯父と彼女の姿が重なった瞬間、なぜだろう、ふっとボクは、彼女のことが好きなんだと気が付いた。
「……ボクは君が好きだ」
 気付いたままにうっかり告白してしまったら、彼女はきょとんとした表情でボクを見上げ、そして言ってきた。
「……あたしも、好きよ」
 それから、続けて。
「まあ、黄身が好きというより、白身が嫌いなんだけど。なんか、ビニールっぽくて。目玉焼きも、黄身だけあればいいくらい」
 ……君も好きなんだ、卵の黄身―そう笑って応えながらなんとなくボクは、彼女がここに来るのは今日が最後になるような気がした。


次は「舞台」「鍵」「トップ」でお願いします。

167:「舞台」「鍵」「トップ」
11/08/30 21:35:19.53
夢では、私はドレスを着てるの。履いたこともないヒールを履いてて、足元は
磨きこまれた木製の床。そう、そこはどこか、古い古い舞台の上……。
カーテンが降りてて、その向こうから観客のざわめきが聞こえる。親戚の集まりに、
隣の部屋でうとうとしてたときに聞いたみたいな、低い声。
みんな、何かを話しているんだ。私の知らない、何かを……。
高らかな場内アナウンスが入った。明るく爽やかな男の声だ。でも、カーテンのこちらでは、
何を言っているのかわからない。男が声を切るたびに群集が反応して、ざわめきが
大きくなっていく。突然、轟くような拍手が起こった。男の声がこちらに向いて、
次のところだけ聞き取れた。「では、○△×さん! どうぞ!」
わたし?! わたしなの? どうしろっていうの!?
名前を呼ばれて、私は焦る。拍手が続いている。私は胸元を、スカートを、靴を見下ろす。
着たこともない本物を見たこともない、素敵な格好。をしている。でも、
でも、
でも。
拍手は続いている。カーテンは上がらない。私はよろよろと前に出ると、柔らかいはずの
ビロードに触れる。それは硬い。石のように硬い。拍手が続いている。
カーテンの真ん中に鍵穴があった。私はそこに目を当てた。
観客席は暗かった。この狭い舞台とちがって、向こうには無限の空間がある。
拍手が続いている。私はどうすればいいんだろう。カーテンは硬い。拍手が続いている。
私はだんだん怖くなる。拍手が、拍手がしぼんでしまう! このままでは! 待って!
私は月夜に目を覚ます。
子供の頃、私はトップスターだった。人生のトップスター。みんな優しくて、このまま
幸せな人生をずっと、ずっと送れると思っていた。でも、いつからか、そうじゃなくなった。
友達とか男の子とか、いろんなものが、私の反応を求めるのだ。
私は戸惑う。うまくやらなくちゃ。うまくやらないと。でも、私には鍵がない―。
私は窓から街を見る。夜中の3時、明かりのある家はまばらだ。
この夜のどこか、眠っているのか、起きているのか、どこかにいる誰かの手に、
きっと私のカーテンの鍵が握られている。信じよう。まだ、早いのだと。
私はもういちどベッドに戻る。今度こそ、いい夢が見られますように―。

つぎ「玉石」「笛を吹く男」「白鷺」で。

168:「玉石」「笛を吹く男」「白鷺」ファンタカレー
11/08/31 18:12:49.62
埼玉県毛呂山町。かつて白鷺の街と呼ばれていた。
そこは白鷺が集団営巣していた。
その習性により街中は糞に伴う臭いや鳴き声で溢れ、住民にとっては苦痛だった。
来る日も来る日も糞による臭いに悩まされ、しまいには住民も呻き声をあげながら街中で排便するようになっていった。
町長は苦悩した。白鷺の糞のみならず人糞の処理する苦痛により次々と削れていく仲間の姿を見るに耐えなかった。

神よ!おお神よ。

町長は祈った。神はいた。鳥の囀りの如く、欧陽 菲菲のラブ・イズ・オーバーを笛で奏でる男が近づいてくる。
笛を吹く男は言った
「この音色は消臭作用がある。私が街中を歩き、この臭いを鎮静しましょう」

正確にはその音色により嗅覚が鈍るらしい。
男は奏で続けた。来る日も来る日も。
徐々に消えていく糞の臭い。美しく響く欧陽 菲菲のラブ・イズ・オーバー。
そのコントラストは薄れ、玉石混交となり、終いには臭いが消えた。
男は言った。「人糞は埼京線に乗せ、東京に捨てるとよい」


つぎ「ブエノスアイレス」「白熊」「娼婦」




169:「ブエノスアイレス」「白熊」「娼婦」
11/08/31 23:13:43.25
1ペソ2円。
ブエノスアイレスでは、50ペソで女が買えるという。
僕がセシリアと出会ったのは、ご多分に漏れず流しっ放しのアルゼンチン・タンゴ、
正露丸のようなアヘンの臭い、どこに立っていても誰かのねっとりした視線が絡みつくような……
そんなよくある売春窟の小さな窓のない部屋だった。
艶のない長い髪、浅黒い肌、小型犬のような黒々とした目で、セシリアは娼婦の笑顔を僕に見せる。
「ブエノス・ディアス・ムチャス・グラスィアス」
ごめんね、セシリア。僕はスペイン語を話せない。ごめんね。
セシリア、君は冬眠しない熊を知っているかい。
果物や野菜が存在しない北極に住む彼らは、アザラシやペンギンを眠らずに殺し続ける。
僕は人間の白熊。これから君を殺す僕を、セシリア、君は許してくれるだろうか。
ごめんね、セシリア。本当にごめんね。

つぎ「絶望」「仮面」「花束」

170:名無し物書き@推敲中?
11/08/31 23:55:33.72
仕事でへとへとなのに、休日には必ずピクニックや、
動物園に連れて行ってくれた母に、なんでうちは貧乏なの、
あのゲームみんな持ってるよって泣きわめいて困らせ、思春期の頃からは
まるで自分ひとりが絶望の淵にたたずんでいるかのごとく振舞ってた。

初めてのボーナスで、母と一緒に京都を散策した。
京都から戻ったら、母は「実はね、もう何年も黙ってたけど」と、
乳房にしこりがあったこと、いまやそれは醜悪な腫瘍として
皮膚を侵していることを告白した。
奨学金を受けながらの大学を頑張っているときに、とても
言い出せなかった、ってそんなの思いやりって言わないから。
物静かで穏やかな仮面の下に、壮絶な愛情を秘めてた馬鹿な母。
その年の誕生日、母の好きな桔梗を1輪贈った。翌年、2輪。
いつか、すごい花束をあげるねって約束したのに、
3輪でようやく花束らしくなったときにはもう、母がそれを見ることはなかった。

「あなたに子どもが生まれたら、その子に愛情の花束をあげてね」って母との約束。
写真の中で微笑する母に似合う、1輪の桔梗のこと、いつか子どもにも話せるかな。

次「線路」「スプレー」「電源」






171:名無し物書き@推敲中?
11/09/01 22:23:56.07

 テレビに異変が起こり始める。制汗スプレーのコマーシャルの女優の顔が彼女の顔に変わる。次は化粧品の女優、そして女性アナウンサーと、出てくる女性全てが彼女の顔に変わる。でもこれはまだ初期段階で最終的には画面が彼女の顔で埋め尽くされる。
 僕はそうなる前に電源を切って布団に潜り込んだ。暗闇にはまだ彼女の顔がぼんやりと浮かんでくる。僕は目をさらにぎゅっと瞑ってそれが消えるのを待った、だけどそれは消えるどころか益々鮮明になってくる。
 耐えきれずに布団を蹴飛ばした。眩しい夏の日差しが闇に馴れた目に刺さる。僕はまた目を瞑った。

 しばらくしてようやく光に慣れ、見開かれた僕の目の前に飛び込んで来たのは線路だった。

 決して比喩ではない。僕は回りくどいのは嫌いだ。かといって現実であるはずがない。だからこれは夢だろう、夢でなければ幻影だろう。枕のすぐ上の方を左右に一直線に敷かれた線路。夢占いで線路は何を意味してたっけ?
 そんな事を考えているとカンカンと踏切の音がした。僕は左側を見つめる。何故かそこから電車が来るようなきがしたからだ。
 突然電車が凄い速さでやって来た。電車は予想通り左から右に駆け抜けていく。乗客は一人もいない。いや、いた。彼女だ。彼女だけが乗っていた。彼女はどういうわけかずっとこちらを向いて静止している。そして何かを呟いている。唇の動きを読む、やはりその事か。

「アイシテル」

 電車が通りすぎた。線路はまだ残っている。僕は枕を線路の上に置いて頭を横にした。夢の中の電車に、幻の電車に轢かれたらどうなるのだろう。瞼が重たくなってきた。カンカンカンという音が次第に大きくなってきた。


次題 「警察官」「乳房」「浣腸器」

172:「警察官」「乳房」「浣腸器」
11/09/02 00:34:49.91
「ホシの名前は浣腸器。女。中国籍だ」
「課長。それって本当に人の名前なんですか」
「もちろん。ちょっと前首相に似てるかもな。池袋で乳房カフェを経営している」
「え、店の名前って、もしかして……」
「ジャストスステム。AカップからKカップまで取り揃えた、通称AtoKの店」
「うわ……俺会員っすよ……」
「自主内偵か。警察官の鑑だな。で、どんなサービスを?」
「ペ、ペ、ペロペロ・・・」
「ペロペロ?」
「…ペロペロ」
「………ペロペロ」
「…………ペロペロ」
「おい、あんまりコンテナを右へ押すなよ」
「…………ペロペロ」<ピタッ

次「桃尻」「独和辞典」「火掻き棒」

173:「桃尻」「独和辞典」「火掻き棒」
11/09/06 03:59:56.38
「さっき君が通りすがりの外国人観光客に言われたっていう言葉、調べてみたけど、
なんていうかな……桃尻、みたいな意味だったよ」
 僕は独和辞典から顔を上げ、隣りの席で落ち着きなく身体を揺すっているマコトを見た。
 場所は予備校、講義開始二十五分前のAクラス教室。僕とマコトは予備校生だった。
「桃尻って……やっぱりセクハラだったんだ、あの夷敵ども!」
 マコトはそのふっくらしたほっぺを膨らませるようにして、怒りを見せた。それから、伏し目がちに僕に訊いてきた。
「ちなみに、さ。健吾は桃尻…………嫌い?」
「そりゃあ、まあ、いいことだとは思わないけど」
「う、嘘!? ……これでも? これでもこれでも?」
 マコトはいじわるそうな表情で、あろう事か僕の胸に背中をくっつけるようにして、膝の上に座ってきた。
 そのまま身体を左右に揺するもんだから、ああ、僕の股間の火掻き棒がぐりぐりと―って、これはまずい。
「いや、あの、マコト……桃尻ってあれだよ? 大きなお尻って意味じゃなくて、桃みたいに安定していない……
もじもじしてて落ち着きのない姿勢のことを言うんだよ? セクハラでもなんでもなくてさ」
「え……ええ!? ちょ、なんだよ、紛らわしい言い方するなよなー!」
「いや、こないだの古典の授業で『桃尻』って出てたからさ……だいたいマコト、別にお尻大きくないじゃん」
「そ、そうかな? まあ……俺も結構、プロポーションには気をつけてるしな!」
 そう言って立ち上がった彼―マコトは、ジーンズの上からでもわかる男らしい尻エクボを、きゅっと引き締めた。


次は「えくぼ」「ゲイ」「死」でお願いします。

174:「えくぼ」「ゲイ」「死」
11/09/06 13:28:12.94
レベルが足りなくて連投になることをお許しください。

彼女は私の人生で最も大切な人だった。
大学の研究室で一緒になった彼女はとても明るく、えくぼが似合う女性だった。
彼女は私の悩みや心配をすべて受け止めてくれた人だった。
男性が好きだということを初めて話したのも彼女だった。
変な目で見られる心配を吹き飛ばしむしろ気にかけて一層親密にしてくれた。
彼女は私の世界を変えてくれた人だった。
初めて女性に恋したことも、初めて一夜を共にしたことも、初めて結婚を申し込んだことも。

175:「えくぼ」「ゲイ」「死」
11/09/06 13:30:22.08
彼女との生活は幸せだった。波風が立たなかったわけではないが、とても充実した生涯だった。
思い出すと、とても幸せな気持ちでいっぱいになる。
けれど、今は純粋な笑顔にはなれなかった。笑顔で見送ってという約束は守れなかったようだ。それでも、妻の器だったものは目の前で笑っていた。

次は「飼い犬」「スポーツマンシップ」「研究所」でお願いします。

176:「えくぼ」「ゲイ」「死」
11/09/06 14:07:10.87
さらに連投申し訳ないです。三語の要素を入れることだと勘違いしてました。
男性が好き→ゲイ 妻の器だったものは→妻は死を受け入れたように(無理があるかな・・・
 
同テーマで書くのはアレだとおもうので私の出したテーマで書いていただけると幸いです。
次からは気を付けます。

177:「飼い犬」「スポーツマンシップ」「研究所」
11/09/07 19:16:10.36
私が勤める研究所には、ろくに研究もせずにのうのうと居座る穀潰しな研究員がいる。
なぜクビにならないのかと、不思議がっている。
研究や開発の現場では、みんなが周りを出し抜こうとして、フェアプレイとかスポーツマンシップとか、そんな精神とは縁遠い世界だ。
このろくでなし研究員も、周囲を欺こうと、わざと能なしのふりをしているのかもしれない、と疑われている。
あるとき、人手が足りず、私は、たまたま通りかかった彼に、試薬の調合を頼んだ。
彼は快く引き受けてくれた。
もしかしたら、ものすごい腕を持っているのかもしれない。こういうちょっとした作業を、目測で正確無比にこなすのかもしれない。
そんな期待を抱きながら、私の調合薬と混ぜて試験機にかけると、結果が明らかにおかしい。
おそらく、彼が配合を間違いやがったのだ。

178:「飼い犬」「スポーツマンシップ」「研究所」
11/09/07 19:18:29.73
「これ、臨床試験だったら、人が死んでますよ!」
私は、彼に怒りをぶつけた。
「悪い、悪い」
と、彼が両手を向ける。
「悪いじゃないでしょ!」
真面目に反省していない様子の彼に、私はさらに怒った。
「よせ」
と、周囲の研究員が私の肩に手をかけた。なおも、彼に殴りかかろうかという勢いの私を止めた。
「なぜ、彼を咎めないんです!」
「いいから」
と、私に黙れという仕草をする。
ミスをした彼は、バツが悪そうに、悪かったという様子で部屋を出ていった。
「なぜ、彼を咎めないんです!」
私は、同じ言葉を繰り返した。

179:「飼い犬」「スポーツマンシップ」「研究所」
11/09/07 19:22:09.12
すると、共同で作業をしていた研究員Aが私を見た。
「昔、彼が真面目に研究をしていたころ、同僚のミスで、彼の飼い犬がひどい状態になったんだ」
「死にはしなかったんだが、植物状態というか、もう安楽死させた方がいいんじゃないかと周りが進めたんだが、彼は、なんとしても、元の元気な姿にしてみせると、新薬の実験を続けて」
「その過程でできたのが、現在、当社で莫大な利益を出している若返り薬だよ」
「彼が会社を辞めたら、特許訴訟を起こされるかもしれないから、どんなに仕事をしなくても、クビにはできない」
私は押し黙った。
こういう話が実際にあるのか。
会社の都合。人命よりもお金が優先される社会。
……しかし、この若返り薬に憧れて、この会社の研究員になったのも事実だ。こんな薬を作れる人物、チームがいるということへの憧れ。一緒に仕事をしてみたい、と思っていた……。
「彼の飼い犬は、どうなったんですか?」
「まだ、彼は研究を続けているらしい」

180:「飼い犬」「スポーツマンシップ」「研究所」
11/09/07 19:23:06.18
次は「勝利」「タイムリープ」「失敗」

181:名無し物書き@推敲中?
11/09/07 21:12:33.23
Z教授は深夜の研究室で湧き上がる興奮を一人、こらえていた。
「人類の叡智の勝利だ。ついに・・・」
教授の発見した数式は、時空操作実現に大きく一歩、近づくものだ。
Z教授は数学者である。しかし、あるときイメージが湧いて以来、
密かに時空操作の最たる夢、タイムリープに関わる数式を考えていたのだ。
Z教授の考えるタイムリープは、現代(0.0,0)と行きたい時点A(x,y,z)とを
つまんでくっつけてしまう数式によって成り立つ。
広げた布のある2点をつまみ寄せ、2点間の布は手のひらに押し込むイメージだ。
数学者には無理だと嘲笑してきた物理学者たちを見返し、人類の夢を
手に入れるのはこの俺だ―。Z教授はついにこらえきれず、笑い出した。

「時空をある一か所で凝縮すると、それはブラックホールだ。
わかる?二度と宇宙空間へ戻らない時空を作り出してしまうんだよ」
物理学者である友人はZ教授の数式の弱点を一瞬にして見破った。
しかし、彼はZ教授を笑わなかった。「着想はいい。お互い、協力しないか?」
自分の失敗は、数式の大いなる欠点を見逃したことでも、名声を得るチャンスを
逃したことでもなく、我執にまみれていたことだったと気づかされ、Z教授は恥じた。
少年のように、純粋に夢を追っていた日々を思い出し、もしタイムリープできるなら
トンボを追っかけていた少年時代だ、とZ教授は心に決めた。

次「白」「リモコン」「箒」

182:「白」「リモコン」「箒」
11/09/10 16:06:53.26
真っ白な白衣を着てある科学者が叫んだ。
「やっと完成だ!これで庭の掃除も労力なしで全自動だ!」
近所で有名な奇人変人科学者は自他ともに認める天才だ。
今回の彼の発明はリモコンで動く竹ぼうきだ。庭を縦横無尽に飛び回り、枯葉や土埃もあっという間に片づける。ついでに作ったセットの塵取りにまとめてポイだ。
彼の発明は毎回評価されるが、いつもバカにされる。
そんな汚名を返上すべく作ったこの作品は、ここ最近の中で彼の自信作だ。
「これで、砂埃が機械に詰まるようなおかしなことは起きないし、リモコンだから自分の好きなように掃除できる。ご老人にも大好評間違いなしだ。」
そう喜ぶ彼の発明した箒にはリモコン操作でごみを散らかすような風などを一切起こさない空飛ぶ機能がついている。


183:「白」「リモコン」「箒」
11/09/10 16:37:58.88
次「機械」「漁師」「アイロン」でお願いします。


184: ◆/XayXVEOhA
11/09/10 17:01:08.13
「機械」「漁師」「アイロン」

少年は夢を見た。
鮫を釣った夢を見た。
船に乗って、釣り糸を垂らし、獲物が仕掛けに食いつくのを待った。
糸が海面にさし込む様子を見つめつつ、
背後にいる漁師の老人に、少年は語りかける。

「おれ、あんたが釣ったのより大きなのを狙ってるんだ」
少年は海面に視線を向けていたけれど、
老人がうなずいたのを背中で感じた。
アタリがあった。少年は糸を引いた。引きは強くて、深かった。
釣り糸が指を切り落とすかと思う瞬間を何度も乗り越えて、

タモ(網)で巨大な鮫を救おうとしたとき、少年は目を覚ました。
少年はもう少年ではなかった。タモを持っていたはずの右手を見た。
その右手はしわがれて、まるで船にいっしょに乗っていた老人のもののように思えた。
「サンチャゴ……」
とつぶやいて、まるで機械じかけのロボットのように立ち上がり、アイロンを手にとった。
彼は、仕事を終えたら海に出ようと思った。鮫を釣りに? いや、サンチャゴに会いに。

185: ◆/XayXVEOhA
11/09/10 17:06:35.06
次も「機械」「漁師」「アイロン」で。

186:名無し物書き@推敲中?
11/09/10 17:29:09.58
東日本大震災で気仙沼は甚大な被害をうけた。多くの人々が路頭に迷うなかで、カツオもまた店を失くし、避難所生活を余儀なくされた。
彼の店というのはクリーニング屋だ。毎日重いアイロンをかけてきた右の掌はタコができていた。
この半年間、大きな絶望感を抱いて生活してきたが、ある日かすかな希望をカツオは見た。
それは気仙沼の漁師達が、復興に向けて港でがれきの撤去をしている光景を目の当たりにしたからだ。
何も彼ら漁師達が、それまで何もしていなかった、というわけではない。多分、カツオは周りの状況がどうなっているのか、判断能力が働いていなかったのだろう。
人は絶望を感じた時、よく周りに注意が向かないものだ。港では大きな機械で陸にあがった船舶を撤去している。
カツオは、自分の店があった場所に行ってみた。そこはまだがれきが片づけられていなかった。
「俺も一から出発だ」カツオは流されてきた材木をかたし始めた。自分の真価が問われているような気がした。




187:名無し物書き@推敲中?
11/09/10 17:30:43.97
次は「老人」「海」「少年」でお願いします。

188: ◆/XayXVEOhA
11/09/10 18:02:59.02
「老人」「海」「少年」

ヘリで運ばれていった老婆は「すみません」と何度もくり返していた。
彼女が何か悪いことをしたわけではないのに「すみません」と
申し訳なさを口にしたことに衝撃を受けたのは海外のメディアで、
海外のメディアが衝撃を受けたことに衝撃(というほどではないけれど驚き)
を受けたのは日本にいる日本人の僕だった。

宮城県は牡鹿、女川町にある島、出島(いずしま)。そこに寺間という地域がある。
とうほくを、とうほ「ぐ」となまって発音するような、
そんな、宮城県にできた「濁点」のように位置する島。
僕は、三月十一日の、その日、海の中にいた。
あわび、うに、こんぶ─手を伸ばせばすぐに手に取れる幸を、
しかし、取らなかった。海の生物も、自分も、この地で生まれた同胞(はらから)。
腹がすいてないのに食べるような真似はしたくなかった。

九月十一日、僕は、海にいた。若い者で出島に残ったのは少ない。
ここで死ぬと覚悟を決めた老人のほうが多い。
僕の家は思い出ごと根こそぎ波に流された。
放射能が空を舞い、東北の大地に降り注ぎ、海底に堆積しているだろうことはネットで知った。
それでも僕は海にもぐった。そして、腹はすいていなかったが、こんぶをすこしかじった。
君がうれしいなら、僕もうれしい。君が悲しいなら、僕も悲しい。
そう言いながら(口からは泡がブクブク出ただけだったけれど)、かじった。
僕の目から溢れた涙が海水に溶けていく。
ああ、僕は海の一部になる……。これでいい。これがいい。すごく、幸せだった。

次は「夢」「生きる」「意味」」でお願いします。

189: ◆/XayXVEOhA
11/09/10 18:05:38.64
すみません。「少年」を入れ忘れました。
>若い者で出島に残ったのは少ない。

→出島に残った少年は僕くらいだろう。
に変えます。ごめんなさい。

190:「夢」「生きる」「意味」
11/09/11 06:40:28.25
人生は夢のごとし、と人は言う。振り返ってみれば、私の人生もそのような
ものだったに違いない。幼い頃から夢を抱き続けてはきたが、挫折する度に、
夢の軌道修正をしてきた。その上で新しい夢を再び抱き続ける。挫折を繰り
返せば、夢は極小に近づく。だが、決してゼロになることはない。それが、
「生きている」ということではないだろうか?例えば、その驚異的な再生
能力に各方面から大きな関心が集まっている海鞘類などはそれを端的に示す
例と言えるだろう。夢は縮むことはあるかも知れないが、再生して以前より
はるかに巨大に成長することもあるのだ。それに意味が必ずある訳でもなく、
我々の体内には中身だけが詰まってる訳でなく、空洞だってあるのだし。
だが、我々日本人の祖先はそのようには多分、考えていなかった。切腹の
お国柄でありながら、詳細な解剖図を作ろうというような科学的探究心は
生まれなかった。日本画の伝統では江戸時代の日本人はすべて出っ腹に
描かれている。引き締まったウエストを美とする観念はこの国にはなかった。
その代わりに、出っ腹の中に神秘的な何かが詰まっていると想像してたんだ
な。多分それは今で言うガッツのようなものだと。
次のお題は、「うんこ」「美女」「イケメン」



191:名無し物書き@推敲中?
11/09/11 12:16:59.67
この板で一番イケメンなのは健一郎
美女は私だけ
他のコテは全部うんこなんだから


192:名無し物書き@推敲中?
11/09/11 23:20:06.92
お題を出せw

193:名無し物書き@推敲中?
11/09/11 23:51:50.15
指定無しの場合はお題継続、というルールが>>1に書いてあるでしょ。

194:名無し物書き@推敲中?
11/09/12 20:34:20.86
正直すまんかった。

195:名無し物書き@推敲中?
11/09/13 11:35:44.52
「ちょっと、うんこ行ってくるよ」
私は笑ってしまった。彼みたいなイケメンが「うんこ」だなんて。
まるで子供みたい(笑)。私がちょっと年上の女に見えて緊張したのかしら。
それとも、逆に安心しすぎてぽろっとでてしまったのかも…。
どっちにしろ彼は結構私に気があるみたいだ。
三分…ホントにアレしてるみたいね(笑)

私は美女ってほど綺麗じゃないし、愛嬌もそんなにはない。
でもそういう私だから、彼はきにいってくれるはずだわ。
いや勿論、彼だけじゃなくて他の男達も、だけど。
五分…どうやら緊張のほうだったみたいね(笑)

それにしてもこの前のあいつ、酷かったわ。
現実が見えてないだの年齢を考えろだの…意味不明だっつーの!
四十手前のくせに年収500アンダーなんて人の事言える立場か!
でも色々言う割には胸の谷間見てたりして、こっちに好意あるのまるだし(笑)
…十分。もしかして喋ること考えてたり、練習してたりして…
私も若いころよくやったわぁ(笑)

でもよかった、こっちの業者さんに変えて。
前のところは五十過ぎの爺とか無職男とか、ろくなもんじゃなかったもの。
私はボランティアじゃないっつーの。ばっくれてやったわ(笑)
でも悪い業者は変えて、いい男とも出会えてやっとこれからって感じね。
ま、もちろん前より私自身もどんどん向上していってるけどね。
二十分。お腹の具合でもわるいのかしら。

…………三十分。……四十分…………一時間。帰っちゃったのかしら。
とりあえず、業者に電話して……いいか。テレビ、なにやってたっけな。


196:名無し物書き@推敲中?
11/09/14 02:11:56.29
なぜ次のお題を書かない。その3語を続けさせたいのかw

197:名無し物書き@推敲中?
11/09/14 04:36:02.15
お花見の時、女子トイレに入ったことがある。
理由は連れの泥酔した女の子がトイレに行ったまま
出てこなくなったからで心配になったからだ。
俺が女の名前を呼びながら怪しまれないように
女子トイレにはいると女は便器を抱いて眠っていた。
困ったことになったと思いながら介抱していると
物音がして知らないOL風の女が入ってきた。
俺は苦笑いをして連れの女の名前を呼びながら早く帰ろうとか
終電が出ちゃうとか言って体をゆすっていたのだが
女はおきない。そうこうしているうちにOL風の女がパンツを下ろす音が聞こえた。
俺はドキドキし始めた。
良くある天使と悪魔の葛藤と言う奴が頭に浮かんだ。
小便の落ちが聞こえ俺は一度、ドアの上を見上げると便所を出た。
ちなみに俺はイケメンではない。
そして連れの女も美女ではないと思う。でもちょっとだけ
可愛いと思うことがある。



198:名無し物書き@推敲中?
11/09/14 12:38:21.52
電車の中でうんこしたくなった事ある?
あたしあるんだけど、特急に乗っちゃったから暫く止まらないし
頭悪そうなこどもが側で騒いで、DQN親も注意しないからイライラするし、
だんだん、漏れそうになってきて涙目になりかけてたら、目の前に座ってたイケメンが
「ここ、座れば? 具合悪そうだし」と席を譲ってくれたんよ。
超ラッキーたすかった! やっぱり美女は得だよね、と思いつつ、
なんとか次の駅に停車するまで耐える事が出来たのでした。
間に合った! うんこ漏れなくて良かった!


次のお題は、
「プリーツスカート」「クリーニング」「実話」

199:名無し物書き@推敲中?
11/09/15 03:51:41.33
親を亡くしてひと月と経っていないのに、若さ故の現金さか、娘は平常営業をしている。
毎朝寝坊し、帰宅すると殆ど部屋にこもっている。どうせネットゲームだろう。
ある休日の朝。「おばあちゃん、見て」とチェック柄のプリーツスカートを私の母に見せている。
母が「あら」と言うのと同時に、私も気づいた。それは妻が結婚前に愛用していた物だ。
「クリーニングしたら、まっさらになった」と随分喜んでいる。よく似合っている。
ふいに娘がショーモデルのターンよろしく私を振り返った。
「お父さん、私、猛勉強して医者を目指す。冗談だと思ってるでしょ、実話だからね」
いつになく真剣な眼差しなので、私も少なからず緊張した。
「お父さんみたいに忙しい仕事は嫌って言ってた子がねえ」と母が心配そうだ。
「寂しかったからね。でも、すごいことだよ、人の命を支える仕事」
嬉しいことを言ってくれる。
「泊り込みが続いて、お母さんが着替えを持っていって・・・」と、ふいに娘が涙声になった。
大規模な自然災害にみまわれ、私の勤務する病院でも大きな被害が出たのだ。
「今日は、お父さんとお母さんの21回目の結婚記念日。今日の花は豪華だよ」
そう言いながら仏前に白百合を供えてくれる。妻に良く似た愛らしい笑顔を浮かべて。
「おばあちゃん、今、写真の中のお父さんとお母さんが笑った」と、いつもの元気な声だ。
「やっぱり天国でもラブラブなんだよ、あのバカップル」なんてひどい言い草だけれど、
ありがとう、そんなお前が大好きだよ。いつでも2人で見守っているよ。
お前、勉強のために、私の書斎をこそり使ってたんだな。精一杯やれ。


「タバコケース」「マニキュア」「雨」

200:名無し物書き@推敲中?
11/09/17 01:19:18.64

 雨が降ると僕は決まって真っ赤なマニキュアを連想する。逆に真っ赤なマニキュアを見ると雨の日を。

 それには理由がある。二階の僕の部屋の窓から見える通りの電柱の陰には、少し前まで雨の日には必ず女が現れたからだ。僕にしか見えない幽霊の女、女の幽霊。
 女は滲むように現れる。いつも非常にゆっくりとぼんやりと現れるのでいつからいたのかはっきりは分からない。ただじいっとこっちを見ている。(自意識過剰じゃなければ)僕を見つめるのだ。
 彼女は白のワンピースで真っ赤な傘を差している。表情は傘に隠れてよく見えない。ただ傘を持つ手が僕の興味をひいた。美しい指、本当に美しい指。そしてそれを引き立てる傘よりも鮮やかな深紅のマニキュア。
 雨で視界が悪く、彼女自身もぼんやりとしているため全体をよく捉えられないにも関わらず、その綺麗な手にだけははっきりと焦点が合う。
 僕は視線をそのままにタバコケースから一本取り、火を着ける。呪われたことはない、雨が降れば現れ、止めば消える。その間僕は窓辺から彼女を見下ろす。それだけなのだ。それだけの関係がしばらく続いた。
 しかしやがて彼女は現れなくなった。だからといって特別これといった感情もわかなかった。彼女の存在は不確かで曖昧なものだったから。でも、いまでもあの真っ赤なマニキュアの手だけは鮮明に思い出すことができる。

 だから雨の日に僕は真っ赤なマニキュアを連想するのだ。


次題 「仏心」「蝉時雨」「彼岸花」

201:名無し物書き@推敲中?
11/09/17 23:06:53.43
桜の木の下には死体が埋まっているらしいが
彼岸花の下には何が埋まっているのだろう?

自殺願望を持った人と言うのは顔に出るものだろうか?
私は外に出ると他人が私の顔を見て嫌な顔をするような気がして
そんな風に思ってしまう。もちろん精神科に行ったら医者は
「気のせいです」そういうだろう。

蝉時雨 一人誰かを 待つ日には

私は孤独だ

すがりつき 仏心に 憎しみを

私は孤独だ
そう嘯いてみたりみなかったりしてそうろう




扇風機 蚊取り線香 朝日



202:名無し物書き@推敲中?:
11/09/18 00:57:45.85
 今年の夏は妻と娘一人で実家に帰省することにした。
そろそろ走り回るような歳になってきたので田舎の空気を吸わせてみようと思ったのだ。夜通しかかって実家に到着した。朝日がまぶしい。
一通り荷物をまとめた後、子供は風通しのいい実家で元気にはしゃいでいるが、作られた気温になれた私と妻は少しバテ気味だ。
そんななか娘は母の部屋にある蚊取り線香に興味を持ったようだ。これは何かと聞いてきたので、わるい虫さんをやっつけるけむりをだすもの、だと教えると
部屋の隅に置いてあった扇風機を持ってきて、蚊取り線香の煙を吹き飛ばした。これでいっぱいやっつける、だそうだ。
いやはや利口な子になるかもしれない。……親ばかだな。


203:名無し物書き@推敲中?:
11/09/18 00:59:09.09
次 電波 猫 誕生日 でお願いします


204: ◆/XayXVEOhA
11/09/18 01:19:09.87
「電波」「猫」「誕生日」

おれには苦手なヤツがいる。同じクラスの女。名前は忘れた。
めんへらってのかねぇ、電波とも言うけど。
でもさ、ときどき正気を取り戻すんだよ、そいつ。
ともだちって間柄でもないんだけどさ、席が近いせいか、やたら話しかけられる。
うぜーって思うことのほうが多い、正直。圧倒的、圧倒的うざさっ。

ごみ、捨ててくるね、誕生日でしょ? と、ある日そいつは言った。
ざわっ……ってなったね、おれん中で、一瞬。おれらは掃除当番だった。
いがいにかわいいかも、とか、思っちまった。
まぁ、名前もろくに知らないんだけどさ。
すかしてんのも柄じゃねえし、いいよ、自分で捨ててくるからって、ゴミ、持った。
ねこ大好き。てか、誕生日じゃないんだけどな。仕方ないか、めんへらだし。

次は「義理」「人情」「恩返し」でお願いします。

205:名無し物書き@推敲中?
11/09/18 05:37:36.29
宮城の兄貴の実家が半壊したとなっては俺だって黙っちゃいられない。
世間に後ろ指指され、お天道様の下を顔を上げて歩けるような男じゃないが安吉38歳。
義理と人情にかけてはこの界隈じゃ知らないものはいない。

「安吉よ。ありがてえよ。うれしいよ。でもな気持ちだけでいいんだ。俺が実家に帰れねえ訳を
知ってるだろ? 親父やお袋に顔を見せられねえの知ってるじゃねえか? ほら何年か前だって
会津に殴りこみに行った帰りだって寄れなかったじゃねえか。だからおめえの気持ちだけでいいんだ」

「兄貴よお。それじゃあ俺の気がおさまらねえよ。だったら俺一人でいかせておくれよ。
兄貴の知り合いじゃなくボランティアだってことにするから」

「安吉よ。おめえはもう少し物分りがいいと思っていたぞ」

「あっそうだ。この間、兄貴は俺の自転車を取り返してくれたじゃんか。
その恩返しだよ。頼むから行かせてくれよ」

「…………分かった。じゃあ一緒に行こう。一緒に言って
後ろ指差されようじゃないか。陰口追われようじゃないか。石投げられようじゃないか。
ああ、そうだな。ああ俺だって人間だ。冷たい血かもしれないが赤い血が流れてるってことを教えてやろうじゃないか」


コート 晩秋 さよなら

206:コート 晩秋 さよなら
11/09/18 11:31:40.22
これで最後のメールにします。わたし、あなたに言いたいことがたくさんあった。
我慢、そうね、ずっと我慢。付き合いだして1年目くらいかな、奥さんがいるって
知っても、知らない振りしました。いつかあなたが本当のことを言って、
わたしのところへ来てくれると信じてたの。だから黙ってた。言えない事情、
あるわよね、男の人だもん。一家のあるじって大変だもん。娘さんもいて、
ご両親と同居で、わたしなんかとは違う。
だから昨日の夜、あなたがお家のことを切り出したとき、あたし、嬉しかったのよ。
わたしが馬鹿だったのかな。馬鹿だったんでしょうね。思ってもみなかった。
あなたがわたしのこと、いつか自分から去ってくれるものだと思っていたなんて。
ごめん。本当に本当に好きでした。嘘つきなあなたが好きでした。
さよなら。

送信ボタンを押すと、朝の公園に聞きなれた受信メロディが響いた。
わたしはため息をつく。息が白い。もう何年前になるのだろう、晩秋のあの日、
この公園、この同じベンチで、わたしと彼は出会ったのだった。
恋の終わりがこんなだなんて、やっぱり、運命ってあるんだろうな。
わたしはゆっくりと立ち上がる。支えを失ったコート姿の彼がくずおれて、
ベンチの上に横倒しになった。背中に突き立ったナイフの周りに、
ハート型をした銀杏の葉が一枚、また一枚と舞い降りてきた。

「洗濯ばさみ」「桜草」「綿菓子」

207:「洗濯ばさみ」「桜草」「綿菓子」
11/09/18 15:30:21.23
出会いは空から降ってきた洗濯バサミだった。

 僕は仕事に疲れ人付き合いに疲れきり何も見えなくなっていた。
携帯を落としたとき、どこに寄ってきたかまったく思い浮かばず、今通ったはずの道さえも通ったかどうか分からない。
 何の刺激も無く・・・違う、何の刺激も感じなくなり、時間は過ぎるものではなく過ぎたものになっていた。
 そんな時に洗濯ばさみが振ってきた。太陽に焼かれ風雨に叩かれもろくなった洗濯ばさみが砕けただけの良くある話。だけどその洗濯バサミは僕の心の窓を開け、ドアを開け、壁を壊してくれた。

 時間は相変わらず早く過ぎた。だけど思い出せることは多くなり過ぎていく時間を感じられるようになった。空が青かったことを思い出した。花が咲くことも枯れる事も思い出した。

 夜中に急に綿菓子が食べたいと言われそれを探してカラオケ屋にいったこと、真夜中に日本海に泳ぎに行きたい!と言われて徹夜で日本海に走ったこと色々な事があった。思い出せることが多すぎて直ぐに思い出せないくらいで、それを痴呆症だと笑われたこともあった。
 ずっと下をむいて歩いていた僕を、あの時洗濯ばさみが上に向けてくれた。

 町を望む高台に開かれたこの場所からは青い空と山腹に雪を残した山々が見える。
君が好きだった海は見えないけど暖かくなれば桜草が咲き乱れるらしいね。バラよりもかすみ草が好きだった君にはいい場所だと思う。

 花粉アレルギーだったけど、もうその心配は無いしね。僕も安心して花をプレゼントできるよ。約束は・・・多分まだ先になりそうだ。

 僕は捨てられなかった洗濯バサミをポケットにしまい頭を下げた。


次は「星」「栗拾い」「うろこ雲」


208:星、栗拾い、うろこ雲
11/09/19 00:29:51.49
祖母と遊んだ栗拾いの帰り、見上げた空にうろこ雲を見て、
「いい天気だね」といったのを覚えている。
祖母は笑って僕の言葉を否定した。なんといったかまでは覚えていない。
その日、白い雲の間から見えた空は高く透き通って、
僕らの他愛ない会話を、底なしの奥へと持っていってしまったのだろう。
夜、下駄で栗の皮をむいていると、ぱらぱらと雨が降ってきた。
柔らかい風が木の枝をぽきりぽきりと鳴らし、下草の葉が
見えない滴にざわめきはじめる。幼い僕はこれが怖かった。
僕は土間の栗を片付けて、座敷に上がる。棘にあたって
ささくれた足の指を洗いに、流しに行った。そのときだ。
高い蛇口に手を伸ばし、べこべこのステンレスに手をかけ上を見ると、
くすんだ窓ガラスの向こう、渦まく雨雲の間に、一瞬だけ星の光が閃いた。
あれから何年経ったろう。菊の花を切りに同じ流しに立った僕は、
ふと、祖母がいた秋を、あの夜見た白い星を思い出す。
もう、僕にも、この窓からは黒い森しか見えない。

次「山びこ」「潮目」「金糸卵」

209:名無し物書き@推敲中?
11/09/19 00:36:01.19
 和夫は子どもたちを連れて栗拾いに出かけた。
 蒸し暑く、首にかけたタオルは汗が絞れそうなほどになった。
時折、イガに気をつけろ、木陰に入れと声をかけながら、そう言う和夫自身が
木々の合間から射す日を見上げながら、木陰を選んで帰路を進んでいた。
 あ、秋だ。
 直視できないほど眩しい日差し、じっとりとまとわりつく空気、それらはいかにも
夏のものだったが、見上げた空に浮かぶうろこ雲は、静かに秋を告げていた。
そう思って空を見直すと、オレンジ色の日差しも夏と異なる柔らかさを含んでいる。
 日本古来の文化は、現代の季節感と合致しないものが多い。
和服しかり、俳句しかり。しかし、DNAの感性に埋め込まれているのか、
季節の先取りとして楽しめたりする。 
 山風に たなびく髪の はかなさよ
 下手な句ひとつ読んで、はて、自分の頭はまだ秋か、それとも
季節を先取りして、すでに冬に突入しているのだろうかと、
彼の頭髪程度に哀愁をにじませた和夫の目に、東の空に煌く一番星が映った。

「システム」「スポンジ」「袋」

210:名無し物書き@推敲中?
11/09/19 00:37:48.55
>>209です。ダブったので次のお題は>208でオネガイシマス。

211:「山びこ」「潮目」「金糸卵」
11/09/19 04:33:31.67
 俺はトレジャーハンターを名乗ってはいるが、所詮趣味であり本業で稼いだ金を趣味に貢いでいるだけだった。
今探しているのは剣山に隠されたと言う秘宝だった。

 いろいろな情報を集めていると錦糸玉子を思い出す。
細く切り裂かれた情報を集めることで形になる、しかも秘宝とくればゴールド、まさに錦糸玉子だ。
 俺の持論はさておき、情報を集めていくと-正しいかどうかは別として-大きな潮目を迎えることがあり
今がまさにそうだった。

 石鎚山は霊峰として、死者が天に上る山として有名だが、いろいろ調べるともうひとつ香川の外れに石鎚山があった。
そのふもとの集落は帰来と呼ばれていて表の石鎚と対を成す、死者が帰り来る山だった。
この地域は弘法大師が開いた四国霊場88箇所を結んだ線の外にあり、一説には高野山の候補地だった話もある地域だ。
 88箇所は秘法を封印するためのもの・・・そういう説もある。なら、なぜ高野山は和歌山にあるのだ?
この地域は剣山の鬼門に当たる。本当に封印ならここのほうが相応しい。
 この説を裏付けるように、この地域にはヤマトタケルに関わる神社があり、源義経が戦勝祈願に参拝したと言う記録もある。
ここの神主は朝廷から派遣されていたらしい。京の島流し先でもあったこの地域に・・・だ。
そして神社本殿からまっすぐに鳥居を眺めるともうひとつの石鎚山がその延長線上にある。

 しかし地元の人に話を聞いていくと歯切れが悪くもやもやが溜まっていく。
俺の調査ではこの石鎚にこそ秘法があるはずだった。とにかく山に登って調査することにした。
この山からは剣山が見えるはずだ。

 しかし、1週間さがして何の手がかりも見つけられなかった。
静謐とした山頂では、誰かの声がやまびことして響いてくるだけだった。

つぎ>>209の「システム」「スポンジ」「袋」 でお願いします


212:名無し物書き@推敲中?
11/09/21 00:01:20.17
姉の部屋に入ってブラジャーを着けたのは事実ですが
計画したわけではありません。たまたま家に一人だったのと
ネットでいやらしい画像を見たせいです。

裸になりそのブラジャーを着けたとき僕が感じたのは
とても不思議な感情だった。一言で言えば自らの心の中に
女性を発見したということになるのだけど、僕が感じたのは
自分が子供のころ―意識というものが生まれる前―の
自分の写真を見ているような感じだった。

僕は工作用にあったスポンジを丸めるとブラジャーの中に入れた。
そしてTシャツを着ると外に出た。

真夜中のコンビニには客がいなかった。カウンターでバイト二人が
おでんの具を入れながら雑談している。僕は胸が高鳴った。

「システムオブダウンですか? しらないっす。かっこいいんですか?
いやー洋楽とか聞かないですもん。いらしゃいませー」
僕は財布を出しながら
わざとらしく胸を突き出してみたがバイトは何も言わないし表情一つ変えなかった。
(つまんねー)僕はそう思ってコンビに袋を受け取った。

月は雲に隠れていた。なんだかテンション下がりまくりだ。
僕は思った。駐車場の陰でオナニーでもしようかと思ったとき後ろで声がした。
そして懐かしき制服の姿が見えた。
「こんばんは! おにいさん。ちょっと良いですか?」





213:名無し物書き@推敲中?
11/09/21 00:10:34.99
警察官の職務は他人の趣味を詮索することではないのだ、たぶん。
僕の胸が大きくなってることは分かっているのだろうけど
一言もそのことについては触れようとしなかった。
「ご協力ありがとうございました!」

僕は住宅街に消えていく、その二人組みの警察官の後姿を見ながら
ちかんにも相手にされない不細工な女のことを考えていた。
そして夜空を見上げ月の形がさっきと変わらないのを確認した。





学校 泥棒 魚 


214:「学校」「泥棒」「魚」
11/09/21 00:49:00.58
 俺の名は怪盗ホワイト、小学校専門の大泥棒だ。
そんな所で何を盗んでいるのかだって?
ダメダメ盗んでいるものをばらしたら、いろいろと大問題だ。
子供たちの未来に影響するから、そこは黙秘権を行使させてもらおう。

 言っておくが、俺は夜ではなく昼間に堂々と盗みを行う
俺は人気者なので子供たちは警戒心も無く近づいてくる。
だが小学生の相手は疲れるので無視するに限る
 そして俺は学校の中庭にある小さな池の前に来た。
俺にかまってくる子供たちも休み時間が終わればいなくなる。

 ふちに座り、ひたすらその時間を待ち、そしてチャンスを待った。
大泥棒の所以はチャンスが来るまであきらめないしぶとさにある
国にも指定されている大事なお宝を諦めるはずが無い。

 この仕事が終わればこの学校からおさらばするつもりなのだが
さすがに警戒されているのかチャンスは訪れない。

 だが執念の前に女神は苦笑した

ばしゃ!

 俺の前足は一瞬でめだかを捕まえた。
金魚や鯉はとっくに盗みつくし学校最後の魚だ。
育てていた子達は悲しむだろうしトラウマになるかもしれない。

だが、そんなものは関係ないこれが野生の掟なのだ。
俺は、めだかが動かなくなるのを確認して歩き始めた。
さぁ今夜の餌は誰にもらおうかな?

次は「とうふ」「アフリカ」「スカイライン」


215:名無し物書き@推敲中?
11/09/23 19:20:34.66
水槽の明かりだけが部屋を照らしている。
天井や何も無い壁に不規則な模様が現れては消え、現れては消える。

私は水槽の前に椅子を持ち出し、何分も中にいるアフリカアロワナを眺めていると
この部屋の主人はこいつなのではないかと錯覚することがある。
私が部屋を留守にしている間、私に隠している能力で持って移動し、食事をし
蛇口をひねっているのではないかと。

まさにそれは妄想だ。でもこの三メートルもある水槽を幾千もの金色の
ウロコを輝かせながら泳いでいるのを見ると、あながち妄想と片付けてしまう
というのも詰まらないと思う。

私は空腹を感じ帰りに寄ったスーパーの袋から豆腐を取り出すと
醤油をかけながら再び水槽の前に戻る。
その時、魚が跳ねて水滴が舞った。

私は眠りにつく前に考える。私が見る夢はきっと魚の意識に影響を受けているだろう。
魚が故郷で見た生まれたばかりの赤ん坊を洗う乳母の姿や
ジャングルの間から見える革命軍の兵士の銃を見た意識が
私の夢に入り込む。そして私は魚の変わりに夢を見るのだ。

魚は私の変わりにスカイラインの夢を見るだろう。きっと車は泥の色をした長い川を身をくゆらせ
上っていくに違いない。


216:名無し物書き@推敲中?
11/09/23 19:21:39.56
お題を忘れました


台風 殺人 子供

217:名無し物書き@推敲中?:
11/09/23 23:26:06.63
また日本に天災がやってきた。地震の次は台風だ。
私の故郷はきっと大昔に意地の悪い領主が民から税を巻き上げ、神への供物さえ出さなせいような状況にして呪われでもしたのだろう。
ここまで不幸が重なるとこんな変な妄想だって出てくるものだ。いわゆる現実逃避だ。
つらい現実というのは、あるラインを超えるとどうでもよくなって来たり、笑えて来たりする。
こんな妄想だって、ちょっと前の私はする余裕もなかった。

地震のあとに隣の吉田さんの家具の一部がなくなっていた時は、こんな時にひどいことする人もいるのだと憤慨した。
行方不明の夫のおなかに瓦礫にまみれて柳包丁が刺さっていた時は私の夫はだれかに恨まれていたのか。
とか、最近出世しだしたのを邪魔になったのだろうか。など、地震の中逃げ出せていたかもしれない。
など、殺人犯への恨みや日常の幸福がなくなった悲しみに半狂乱になっていたものだ。

今はもう、私の心は台風の過ぎた空のように、吹き荒れる風も、温かな空気も、すべてがなくなった。
冷たく、それでいて風すら吹かない私の心。全部を子供が空へと持って行ったのだろうよ。

次 ティッシュ ライトノベル(ラノベ) サイダー でお願いします

218:名無し物書き@推敲中?
11/09/24 16:40:34.30
トイレの個室に飛び込むや否や、ズボンを一気にずり下ろし、ケツを突き出した。
「バピーパブププ」
肛門から勢いよく噴出する俺の汚物が、喜びのファンファーレを奏でる。
やれやれ。完璧、アウトだと思っていた。勝利の笑みを浮かべながら、トイレットペーパーに手を伸ばしかけ、驚愕の事実に気付いた。
トイレットペーパーが切れている!
ポケットを探っても、ティッシュもハンカチもない。あるのは、先ほど図書室で借りたばかりの新刊のラノベだけ。
「ごめんなさい!」
俺はページをビリビリと千切り、ケツを拭き、便器に捨てた。
しかし、ペダルを踏んでも「ズモモモ」と水が溜まるばかりで流れない。
なおも必死にペダルを踏み続けると、逆流でもし始めたのか、サイダーのような泡が
立ち始めた。

次  石原都知事  フラメンコ  保育器


219:「石原都知事」「フラメンコ」「保育器」
11/09/24 18:45:31.36
 我が校には有名な娘(こ)がいる
見た目も可愛く性格も基本的に良い……でも一点だけ意味不明なところがある。

 名前がカグヤだからと、告白されると3つの物を集めて来いというのだ
僕も告白したとき「イシハラトチジ」「フラメンコ」「ホイクキ」の3つを指定された。
こんなものどうしろというんだ?

 僕は悩みに悩んだ、石原都知事なんてどうしろと?
悩んだ末に電話帳で石原さんを眺めていた。すると近所に”石原橡滋”という方がいて電話したところ、散々笑われたけど手伝ってくれることになった。
 フラメンコはいろいろ探したけど田舎の都市ではフラメンコ教室などは無くインターネットで探してみると”フラメンコ(フランドル地方の音楽という意味)”という言葉があったので、だめもとでCDをレンタルした。
 レンタルといっても近所のお店には無くインターネットで借りる無料体験で何とか手に入れた。

 最後のホイクキ保育器はどうにもならない。個人で持っているものじゃないし産婦人科に連れて行くこともかなり恥ずかしい、と言うか無理だ普通こない。
外国人でホ・イクキとかホイ・クキみたいな人を探したがいるはずも無く、こればかりはダウンロードした写真を印刷した。

 無理やり3つそろえて、カグヤさんを公園に呼び出した。
彼女は石原橡滋さんに大うけし「童話でもそうだけど断る口実だってわかるでしょ?でも橡滋さん最高!」とけらけら笑いながら、まずは友達からはじめる事になった。

 彼女とデートの約束をしたがまた3つのお題が付いた・・・

次のお題は「インド」「オリオン」「カンガルー」



220:名無し物書き@推敲中?
11/09/26 02:04:07.15
私は登山が好きである。子どもの頃は地元の小さな山を休日ごとに登っていた。
年齢が上がるにつれ、北岳登頂、南アルプス縦走など本格登山も楽しんだ。
社会人になり、あるきっかけでエアーズロックに登ってみた。
高さ348mということで軽いハイキングのつもりだったが、急な斜面、
足場の悪いガレ場続きで、自然を馬鹿にしてはいけないと感じた、いい経験だった。
赤ちゃんをポケットに入れて、キョロキョロ周囲を見ているカンガルーは
愛くるしさに見とれたが、オーストラリアに生息する生き物たちの不思議な生態、
現在の危機的な環境を思うと、登山が常に危険と隣り合わせなのは、
自然があえて人類に挑戦しているような気すらしたものだ。
そんな山男に砂漠を勧めたのは、休暇のたびインドへ飛び立ってしまう程のフリークだ。
うだる暑さの中、タール砂漠を歩いた夜、疲れ果てた私はシュラフを用意するのさえ
億劫で、砂漠にごろりと寝転んだ。
昼間の熱気を吸い込んだ砂が、温かく、柔らかく私の体を包み込んだ。
満天の星空はまさに降るような煌めきが散りばめられ、せいぜいベルト部の
3つの星で見分けられる程度のオリオン座が、くっきりと人の姿に浮かび上がって見えた。
どんなに高級な布団よりも優しい砂に抱かれ、私は生まれて初めて、
自然に対する過度な緊張を解き、母なる大地の偉大さを感じたのだった。

次「写真」「霧吹き」「コースター」

221:名無し物書き@推敲中?
11/09/26 07:46:40.18
その自殺した作家で有名なバーに入ったとき思ったのは
古臭くて薄暗いけど何だか居心地が良いなということだった。
同僚と二人、カウンターに座りビールを注文する。
夏の夕方にはまだ客は我々、二人しかいない。手伝いの
おばさんが忙しげに準備をしていた。

「ほらあの写真。Sも見たことあるだろ?」
そうWが言って指差したのは私もどこかで見たことがある
作家が片足を椅子に上げている写真だった。

「なんでも別に作家のために写真家がココに来たけど
彼が俺もとれって言ったらしいね」
私は、うなづきその写真を眺める。作家がかつて座っていた席には
今も同じようにそこにある。
「Y子は好きらしいよ。彼のこと」
そういって共通の知り合いである女性のことを口にした。

店の温度は高くグラスには霧吹きで吹いたような水滴が
ついている。私はスーツを脱ぎ作家と同じようにワイシャツ姿になった。
グラスを持ち上げ、カウンター裏の酒のボトルを見る。
シャンデリアのような色とりどりのボトルたち。作家はどれをどのように表現するだろう?
私にはうまい言葉が見つからない。
そして濡れたコースターにグラスを戻す。

「ああ良い気分だ」
同僚がそういって背伸びをする。私も同感だった。
夏はまだ始ったばかりで給料は多くなかったが
私達は若かった。
そしてグラスに新しいビールを注いだ。


疲労 休日 携帯

222:「疲労」「休日」「携帯」
11/09/28 22:06:10.48
「あ~ひび入ってますね、しわも一杯」
「何年も使われていたからな。金属疲労もおこすさ」
「これじゃ使えませんね」
「そうだな困ったもんだ」

 壊れたはしごを横目に先輩後輩らしき二人の男が荷物を下ろしていた
後輩は携帯を取り出し電波状況の確認を始めた。

「彼女と電話か?」
「帰る頃には彼女も休日ですからね。映画でも行こうかと」
「あ~はいはい、誰もそんなこと聞いてない聞いてない」

 後輩が電話で楽しそうに話す横で、先輩はバッテリーの切れた自分の携帯を恨めしそうに見ていた。
しばらくして携帯を耳から話す後輩。

「やっと終わったか、携帯かしてくれないか?」
「バッテリー切れちゃったんで使えませんよ?」
「そうか」

 寂しそうにつぶやく先輩。

「どうかしましたか?」
「1つ相談があるんだが、どうやって助け呼ぼうか?」


次「ハタハタ」「病院」「馬」でお願いします

223:「ハタハタ」「病院」「馬」
11/09/30 15:25:25.37
 『人気天才ジョッキー 羽田 葉太(はねだ ようた)落馬で選手生命危ういか!?』
「……チッ」
 今朝のスポーツ紙の一面を堂々と飾った俺の名前。ガキの頃、
地元で良く捕れた魚に因み「ハタハタ」と呼ばれて、それをかなり嫌がっていた事を不意に思い出す。
心の奥底から湧き出る苛立ちを抑えきれず、病院のベットの上で文句の一つも言えない事も相俟って、
そのイライラをぶつける様に、新聞を傍にあるゴミ箱に叩き付ける様に投げ捨てる。
「どいつもこいつも、知った様な事言いやがって」
新聞各紙では「復帰は難しい」だの「引退を考えている」だの、好き勝手に書かれていた。
「……冗談じゃねぇ」
俺はベッドの傍に立て掛けてある松葉杖を手に取り、リハビリ室へと向かう。
「待ってろよ、『ハタノハタタカミ』。こんな怪我、直ぐに直して戻ってやるから……」
まだ慣れない松葉杖に悪戦苦闘しながらも、俺は一歩一歩、着実に歩みを進める。
略すと同じ「ハタハタ」になる、長年連れ添った相棒とも言える馬の名前を、心に浮かべながら―。

次のお題 「チャット」「明治維新」「横断歩道」でお願いします。



224:「チャット」「明治維新」「横断歩道」
11/10/01 21:21:56.76
 僕が歩いている道は元々川だったところを道路にしたらしい
信号の名前は「石橋」きっとここには橋があったのだろう
横断歩道を渡ると、電柱の影に欄干?のようなものが残っており
そこには「大浦橋」とかかれていた。

 明治維新で日本は文化的に自然と歩む国から
工業が優先される国になった。別にそれは当時の世界を見れば
いや、近くの国々を見るだけでも必要なことだったのだろう。

 だけど、それは本当に必要なことだったのだろうか?
少なくとも、川を消す必要は・・・明治維新が原因ではないが・・・なかったのではないか?
近くの人を捕まえてチャットをしてみたいけど、こんなときに限って誰もいない。

 僕はなんとも言えない切なさのまま仮想現実の町並みからログアウトした。

次は「巾着」「万国旗」「飴」でお願いします。

225:名無し物書き@推敲中?
11/10/01 23:22:06.70
「巾着、じゃなかった茶巾って知ってる?
あっ? 知らない。茶巾っていうのはさ虐めなんだけどね。セーラー服の
スカートをたくしあげて頭の上で縛るわけなんだけどさ。酷いよね。
俺は実際見たこと無いよ。だって男子校だったからさ。だからニュースとかで
聞いたのかな? どこで聞いたか忘れたけど、俺たちの時代はそういう虐めがあったんだよ。

やられた方は恥ずかしいよね。男子の目もあるし。そうそうたぶん女子が女子に
やるんだろうな。陰険だよ。なに嫌だよ。お前話し聞いてないだろ。ほらやるよホールズ。
飴なめて仕事はするなよ。休憩終わったら捨てとけよ。えーとそれで俺は男子校だったから
その現場は見てないんだけどね。見てないって言うと茶巾にされた方は真っ暗で見えないね。

えろいよ。今の子は下着の上になんか履くけど昔は履かなかったもん。
バンバンバン万国旗! 笑えよ。俺の新しいギャグ。バンバンバン万国旗。笑えない?
最近すべり芸も駄目? 万国旗! あっちょっと笑ったw 万国旗! 休憩終了」


弁当 殺人 スズムシ



226:名無し物書き@推敲中?
11/10/02 07:40:59.17
騒ぎが起きて、俺は授業中の居眠りから覚めた。
「なんだ? 何かあったのか」
クラスの連中が、次々と教室から出ていく。
「大変だよ。隣のクラスで殺人だってよ。警察が着てシートで隠す前に死体
を見ておかないとな」
何を考えているのか。
気がつくと教室に残っているのは俺一人だ。
俺は殺人には興味がない。
この状況で俺が興味を持っているのは、憧れのクラス委員長・碧川アリスの
私物を物色することだ。
教室に誰もいなくなったことをいいことに、俺はアリスの席に座り、横に掛
けてあったきれいなカバンを開けてみる。
案の定、中にはピンクのハンカチに包まれた小さな弁当箱が入っていた。
俺は興奮気味に弁当箱を開ける。
すると中には、真っ白いご飯。
そしてその上には梅干しの代わりに、なぜか一匹のスズムシが押し込められ
ていた。
「な、なんだこれは?」
俺は周囲をキョロキョロと見回し、そして目撃者がいないことに少しだけ安
心して、弁当箱を元通りに包み直してカバンにしまった。
多分、これは「組織」からのメッセージだ。
あのスズムシはトリガーに違いない。
今夜あたり、夢の中に引き金に導かれた次の指令が浮かび上がってくるはず
である。
「やれやれ」
俺は少し疲れて、気分転換に隣の教室の殺人とやらを見に席を立った。



次のお題 小説教室 映画監督 同人誌

227:名無し物書き@推敲中?
11/10/03 00:02:48.07
小説教室に通っているような男と映画監督になりたいっていう男は
彼氏にしちゃいけないし、万が一結婚なんてことになったら親子の縁を切る。
と母親に言われた。うちの母親が何故これほどまでに嫌うか理由はしらないけど
父親がシナリオライターだからかもしれない。つまり母親は父親が嫌いなわけだ。

でも母親が父親を嫌いって言うのは子供にしてみれば悲しいことだ。本当に悲しいこと。
だって母親は綺麗じゃなくてもいい。貧乏でも良いから両親が仲良くしているのが
一番の幸せ。と私は思う。他の人もだいたいそうなんじゃないだろうか?

母親は彼氏の条件なんていうけど、私は彼氏を選べるような人間じゃない。
バイトは長続きしないし可愛くない。
私の友人というか知り合いに今度、東京である同人誌の集まりに行こうと誘われた。
彼氏とか出来るかも? とか思ったけど、まさかねえ。

もし私の心がグラスで幸せがお水なら、私の心には半分より少し少ない
お水が入っている。だから誰かに水を注いでほしい。



熊 マントヒヒ ヒグラシ

228:名無し物書き@推敲中?
11/10/04 21:14:29.65
「なんだ? お前、怯えているのか。そうかそうか、愚鈍な粗暴者たるお前
でも、今、自分の囚われた状況を把握する知恵はあるとみえるな。まあしか
し、そうでもなければ、今までこの世界で単独で生きてはこれぬさ、な。ま
ずはお前さんのこれまでの運に乾杯しようじゃないか。なに? 怖くて俺様
の杯が飲めぬか。ふん、無礼者め。ここでお前の日頃の根性を絞り出し俺の
相手ができるのなら、あと少しはお前の寿命も延びたかもしれぬのに。ふん、
所詮はお前はちっぽけな存在なのさ。力は、数には叶わぬ。お前はわしらの
仲間を一匹か二匹は倒せるかもしれない。だが、お前が勇敢な先兵の相手を
しているうちに、第二、第三の牙と拳がお前を葬る。お前は耳を削がれ、手
足を食いちぎられ、生きながらわしらの臓腑の闇に消える。骨も肉も、この
世からなくなるのだよ。どうだね、ビッグ・プー、何か言い残すことはある
かね?」
 数十頭のマントヒヒに取り囲まれた哀れな一匹の熊は、苦しげに思案の糸
をたぐった。脳細胞のシナプスは今の彼にとっては蜘蛛の糸そのものだ。
 と、その時--。
 ビッグ・プーが目を剥いて天を見上げた。
「あっ!あーっ!ヒグラシだ。ヒグラシが飛んでる!」
 途端にマントヒヒの群れに動揺が走った。
「ヒ、ヒグラシだって?!」
「バカな! そんなハズは……!」
「助けてくれー」
 マントヒヒ達は動揺し、熊の指さす天を見上げた。
「みんな落ち着けー! そんなものはいないぞ。騙されるな!」
 頭領の一声で、一同はふっと我に返る。
 だが--時すでに遅く、熊のビッグ・プーは逃げた後だった。

次は「太陽光発電」「アロマロカリス」「産婦人科」でお願いします

229:名無し物書き@推敲中?
11/10/04 23:48:38.21

 生まれてきた子供は酷く不気味だった。

「生まれたての赤ん坊なんてみんなそんなもんだよ」と大抵の人は言うに違いない。しかし私の子供は猿に似てるとかそういった次元の話ではないのだ。

 エビ……だろうか?いや、こんなエビ見たことない。平たい胴体の両脇にヒレのようなものが並んでいる。カタツムリのように突き出した目は愛嬌を感じさせないこともない、しかしこれは……。

「元気な男の子です」

 産婦人科の先生は無表情でそう言って我が子を差し出した。どう持ったらいいのか戸惑いながらも抱いてやる。
口元はかなりグロテスクでお世辞にも可愛いとは言い難い。しかし我が子なのだ、妻と私の愛の結晶なのだ、多少見た目が普通とは異なっていても愛情を注いで育てていけばそのうち、愛くるしいかけがえのない存在になるはずだ……なるはずだ。

「抱かせて」

 ようやく落ち着いた妻がそう言って手を伸ばしてきた。私は少し戸惑ったが、妻の菩薩のような微笑みに折れ、息子を抱かせてやった。

「目があなたにそっくり」

 私は複雑だったが精一杯の笑顔でそれに応えた。

「これからよろしくね」

 妻の言葉にハッとする。そうだ、何はともあれこれからこの三人で暮らしていくのだ。ローン20年3LDK庭付き、太陽光発電のマイホーム。幸せな家族生活。

「この子の名前はアノマロカリスだ」

 不意に口から出た言葉に私は驚いた。しかし何故かはわからないが、その名前はこの子にぴったりのような気がした。妻の側に近づき私は我が子に微笑んだ。

「今日はアノマロカリス」


次題 「断頭台」「レプリカ」「死刑執行人」

230:名無し物書き@推敲中?
11/10/05 01:27:06.93
「所長。我々のことをナチスだというメディアには時々我慢できなくなるんです。
でもそういう奴に限ってレプリに異常が見つかったとき騒いだんではありませんか?」

私は窓の外で揺れている大木を眺める。空は暗く雲が立ち込めている。
ここもあと数時間で暴風雨圏内に入るんだろう。もう一度、予備発電のチェックを
しておくように技師に言っておいた方が良いだろう。そう思いながら部下の言うことを聞いていた。

「ナチス。Nよ。我々はナチスよりも醜悪ではなかろうか? 人を裁き殺すのに痛みはあるが
レプリカントを断頭台にあげるのに誰が心を痛めるだろうか?」

Nは困ったように下を向いた。わかっている哲学の事を言い出してもきりが無いことを
私たちは与えられた役目をするまでだ。収監し刑を執行する。

「所長。噂があるんです。黙っていようと思ってました。所長がレプリを家にかくまっているという噂です」

そう言ってNは所長を見ると視線が交錯しそして離れる。沈黙。風が揺らす外の音が
分厚い窓を通して聞こえる。Nはのどが渇くような思いがする。間違ったことをしてしまったんじゃないかという思い。

「そうだ。私はかくまっている。だからもし君が私を告発するならするがよい」
そう言って死刑執行人である所長はNを見た。

Nは口ごもりやがて頭を下げると部屋の外に向かった。そしてドアに手をかけると
私はあなたの部下ですといって出て行った。


愛 青春 旅立ち

231:名無し物書き@推敲中?
11/10/06 21:12:30.18
第一部 愛
 今月に入って3人目の転校生がやってきた。
 なぜそんなに転校生が多いのか。
 日本に継続的な天変地異が起こり、北海道が地図から消えたり、九州が火山の噴火で住めなくなったりしたためだ。
 故郷を無くし、生き延びた人々が変形した日本列島を転々としている。
 3人目は美少女だった。名前は、
『愛』
 黒板にはただその一文字だけが書かれた。
「君、名字は?」
 担任は尋ねる。しかし、愛は答えなかった。
 この異校の制服を着た妖精は、愛でしかないのだ。

第二部 青春
 セシル森山は85年前のことを回帰していた。
 遙か昔、高校生の頃だったか、彼は過ちを犯した。
 彼の所属する、高校の生物部が飼育していた甲羅長70センチほどのリクガメをダイナマイトで爆殺したのだ。
 火薬の力が強力すぎて、安全圏に退避したはずのセシル森山は全身にリクガメの肉片を浴びて血だらけになった。
「愛、君のいうとおりに僕は僕の二番目に大事なものを壊したよ。だから、僕との約束を守ってくれるよね……愛」
 老境のセシル森山の脳裏に血塗られた青春の幻影が蘇る。
 あの頃、彼は愛の虜と成りはてていた。

つづく

232:名無し物書き@推敲中?
11/10/06 21:13:54.14
第三章 旅立ち
 西暦3912年、一人の宇宙飛行士がかつて地球と呼ばれた星に戻ってきた。
 死の星となった惑星にトボトボと足跡をつけ、サブローは自らの長生きを後悔した。冷凍睡眠やら相対性理論に身を任せて二千年の時をさ迷った結末がこのざまか。
 ほとんど眠っていただけなのにひどく疲れた気がする。
 サブローはポケットから自殺薬を取り出した。
「待って!」
 愛の声がした。
 振り返ると、サブローよりさらに若い学生時代の愛がいた。
「今までご苦労じゃった…」
 セシル森山は全身義体化して機械人間のようだ。
「驚いた。こんな再会があるのか?愛、君はやはり……」
  サブローは顔をグシャグシャにして、かつてのあの頃、三人の転校生の再会に泣きむせぶ。
 その夜、三人は生まれたままの姿で宇宙船の冷凍睡眠装置に入った。次に起きる時は、意識の一元化が起きて、人格が一つになっているはずだ。
 それは三人の旅立ちであると同時に人類の旅立ちでもあった。

おわり

233:名無し物書き@推敲中?
11/10/06 23:44:05.06
じじーお題書きやがれ

234:名無し物書き@推敲中?
11/10/07 00:16:11.80
指定が無い場合はお題継続がルールです。
>>1参照

235:名無し物書き@推敲中?
11/10/07 01:10:35.82
愛は思う。
―私には青春など無縁だし、これからもきっと無縁だろう
愛は16歳の高校生で腋の下からは思春期特有のにおいがした。そう腋臭だ。ある日匿名のメールが来た。
「早く医者に行って腋臭を治してください。みんな迷惑しています」
その内容に愛は深く傷ついた。誰にも相談できなかった。誰にも言えなかった。

愛が無視しようと決心した後も、忘れたころに「臭い」「死ね」「毒ガス注意とかメールが来た。
愛は怒りは、あまりわいてこなかった。臭い自分がいけないんだと思った。臭くなければいいんだからと思った。

愛は引き出しから白く正方形をしたものを取り出す。
ひとつの面に赤く点が打ってあり、その他の面には黒い点が打ってあった。そうサイコロだ。
―1が出たら自殺する
愛は心の中でそう思う。でも1以外が出たらまだ生きていようと。愛は手にサイコロを持ち高く上げると目をつぶった。

「なーんてね。そんなこと……」
愛はそう呟いてサイコロを引き出しに戻す。そしてヘラヘラ笑った。鏡で見たら醜い笑顔で
笑ってると思いながら。
そして親にすべてを打ち明ける決意を決めた。きっと泣くような気がした。


「jk」「KISS]「SEX」




236:名無し物書き@推敲中?
11/10/07 20:36:37.69
2012年1月。去年不可解な理由で中止になったkissのコンサートが開催されることになった。
コンサート当日、鬼頭マトは開催地である日本武道館へ足を運んだ。
「おかしい。場所を間違えたのかしら?」
日本武道館は人一人いない、がらんどうの様を呈している。
と--、そこへ野太い男の大音声が鳴り響いた。
「kissなんかきやせん!全てはお前を呼び寄せる策だ」
警視庁捜査一課の坂下がステージの上に仁王立ちになっていた。
「坂下さん、どうしてあなたが?!」
「なれなれしく呼ぶな。この小娘、いや……JKがあっ!」
坂下はスーツを脱ぎ捨てた。
そこには人間・坂下とは違う、4本の腕を持つ異界の剣士の姿があった。腕のそれぞれに自家発光する長剣を構えている。
「どうした、お前も正体をさらせよ。そんな制服は脱いでさ。JK……このジェダイ・ナイトの尻尾があっ!」
切りつける異形の坂下。辛くも退くマト。
額に流れるミディ・クロリアンの血。宿命の覚醒。
鬼頭マトは覚悟を決めた。もう逃げられない。やるしかない。
冷たいはずの血がたぎる。冷静でいられないのは、やはり私が混血種だから? でも今はいい。ただ目の前の宿敵を倒すこと。
二人の戦士が戦い始めたそのころ、はるか六分儀座Sextansより共和国の宇宙艦隊がビッグワープを開始した。
地球が戦渦に巻き込まれたのはそれから27分後のことである。


237:名無し物書き@推敲中?
11/10/08 06:22:11.57
―結婚すると青春という名で呼ばれるものは消えてしまうのだろうか?
愛は大きなお腹で台所に立ちながらそう思う。結婚して半年で妊娠した。
妊娠はうれかった。だって子供は大好きだし、旦那さんに不満は無いから。
それでもちょっとだけ思う。これから私の人生は、この子中心になるんだ、と。
マグカップにティーバックを入れ熱湯を注ぐとよっこらしょと座る。
妊婦さんは食事の好みが変わるというけど愛はあまり
変わらなかった。辛いものがちょっと苦手になっただけで、それでも我慢すれば食べられた。

―君はどんなことを考えてるのかなあ?
愛はお腹に向かって話しかける。言葉をかけるたびに自分が母親になっていくような気がする。
まるで少しずつ生まれ変わるみたいに。
―君がこの世界に旅立つように、愛もママに旅立つのかな?

愛は目を閉じ羊水の中にいる赤ちゃんを思い浮かべる。
暗く暖かい海の中。そんなことを考えていると睡魔がやってくるような気がした。


「コンビニ」「クレーマー」「許し」




238:「コンビニ」「クレーマー」「許し」
11/10/08 18:04:14.15
 最近たちが悪い人が増えてきていると感じます。
特に自分の立場が上と思い込んでいる方が救いようがないと確信しています。

 コンビニのチケット販売機で自分が間違ったにもかかわらず店員に文句を言う人。
2週間前に買った上に傷だらけのゲームソフトを返品に来る人。
自分たちが無料だと宣伝しておきながら実は完全無料ではなく、文句を言われると開き直る会社。
世の中何かがおかしくなっている、常々そう感じておりました。

 そして先日、ある方の相談に乗ったところ「お前が許すといったが警察につかまった訴えてやる!」と言われて、その方をクレーマー扱いしてしまいました。
このような私にも神は許しを与えてくださるのでしょうか?

 同業者の私の懺悔を聞いたシスターは全てを許してくださりました。
しかし本当に許されたのでしょうか?訴えられたりしないのでしょうか?
私は納得できるまでシスターに何度でも何度でも懺悔に行こうと思います。


次は「白秋」「熊」「栗」でお願いします。

239:名無し物書き@推敲中?
11/10/08 19:23:11.93
マントヒヒの頭領の名はマキラと言った。
死期を迎えた彼には、周囲の修羅はもはや夢と同義であり、苦痛は、はるか遠くにある。
そう。今、圧倒的な炎が森に取り憑いていた。
善と悪、生きた者と死に絶えたもの。
炎は全てを焼き尽くそうとしていた。
「ねえマキラ……」
熊のビッグ・プーは幸か不幸かほとんど無傷であった。
彼は変わり果てたかつてのライバルに語りかける。
「僕ね人間に興味があったんだ。君は嫌いかもしれないけれど、僕は人間が
好き。この次はゼッタイ人間に生まれ変わりたいよ」
ビッグ・プーは奇形の熊で、腹に有袋類のようなポケットを持っている。そ
の中には彼の宝物が隠されていた。
ビッグ・プーは肉のポッケから、かつて自分が食い殺した人間の女の遺品を
取り出した。
北原白秋の詩集『雪と花火』であるが、ビッグ・プーには読めない。
「僕らには今という時間しかないけど、人間には過去というものや、信じら
れないかもしれないけれど、未来というまだ起きてない時間を持っているら
しいんだよ。こういう、呪文が書かれたものには時間を行き来する秘密があ
ると思うんだ。僕、人間になったら絶対この呪文を解いてみせる」
ビッグ・プーの半ば独り言のような語りかけに、マキラは既に応えなくなっていた。
「マキラ……?」
既に四肢を焼失したマキラは、もはやこの地獄にいないかのような安らかな
顔つきをしている。
ビッグ・プーはマキラを愛おしんだ。それは自分でも信じられない感情だった。
「ねむったんだね……マキラ。永劫のやすらぎのねむりに……」
ゴゴゴゴゴゴッ。
ビッグ・プーの頭上から、火の付いた無数の栗の実が落ち始めた。
その一つが彼の脳天を直撃し、巨大熊は四肢のないマントヒヒに折り重なる
ようにして倒れ、そして動かなくなった。

次「棺桶」「三葉虫」「海馬」で

240:「棺桶」「三葉虫」「海馬」
11/10/08 20:39:58.94
今のままの時間は長く続かないことだけはわかる。

 だから私は何年かぶりにおじいちゃんと化石堀に出かけた。
朝日に焼かれた山から煙のように雲が生まれて、空にゆっくりとその頭をもたげ伸びて行く。
久しぶりに見た雲のうまれる姿で子供の頃は山の幽体離脱だと信じていた事を思い出す
 オレンジに染まるうろこ雲は上に行くほど濃くなる空に細く伸びていく。
空はは街でも変わらないはずなのに鮮明に私の目に映り、見とれてしまった。

 おじいちゃんは目を細めて同じように空を仰ぎ「きれいだなぁ」と呟いた。

それから12年

「ただいま~ママ」息子が私に抱きついてくる。
「きょうね~大じいちゃんがね化石見せてくれたの、アンモナイトとか三葉虫とか!卵も見たんだよ!」
 時間が止まってたみたいに変わらない内容、でも私とこの子は違うことを考えているのだろう。
「来週、おじいちゃんが化石掘りに連れて行ってくれるんだよ!」

 懐かしい私の思い出が新しい思い出と重なってゆく。
私にとっては化石の棺桶にしか見えなかった山もこの子には宝の山になるのだろう。

 多分、おおじいちゃんも思い出を層の様に重ねていくのだろう。


 次は「地震」「雷」「火事」でお願いします


241:「棺桶」「三葉虫」「海馬」
11/10/08 20:41:34.76
●ごめんなさい、出だしコピーし損ねました。

 私のおじいちゃんは痴呆症で、まだぼけた感じはないけど海馬の萎縮が見られるらしい。
海馬とか言われてもすごいことなのか大した事ないのかよくわからないけれども、
今のままの時間は長く続かないことだけはわかる。

 だから私は何年かぶりにおじいちゃんと化石堀に出かけた。
朝日に焼かれた山から煙のように雲が生まれて、空にゆっくりとその頭をもたげ伸びて行く。
久しぶりに見た雲のうまれる姿で子供の頃は山の幽体離脱だと信じていた事を思い出す
 オレンジに染まるうろこ雲は上に行くほど濃くなる空に細く伸びていく。
空はは街でも変わらないはずなのに鮮明に私の目に映り、見とれてしまった。

 おじいちゃんは目を細めて同じように空を仰ぎ「きれいだなぁ」と呟いた。

それから12年

「ただいま~ママ」息子が私に抱きついてくる。
「きょうね~大じいちゃんがね化石見せてくれたの、アンモナイトとか三葉虫とか!卵も見たんだよ!」
 時間が止まってたみたいに変わらない内容、でも私とこの子は違うことを考えているのだろう。
「来週、おじいちゃんが化石掘りに連れて行ってくれるんだよ!」

 懐かしい私の思い出が新しい思い出と重なってゆく。
この子は山で何を見るんだろうか?きっと私にも新しい何かを見るのだろう。


 次は「地震」「雷」「火事」


242: ◆/XayXVEOhA
11/10/08 21:02:13.32
「地震」「雷」「火事」


乗せてから訊くのもナンだけど、この車、なんていうか知ってるかい?
デロリアンっていうんだ。
僕も映画でしか見たことなかった。お、エンジンがかかった。良い感じ。
あの年、スティーブ・ジョブスがこの世を去って
次の次元へ行った日のすこし前、こんなニュースが流れた。

「光速を超える素粒子が見つかった」
うん、僕らが生まれる51年前だね。
おなじ年、東日本大震災が起こり、地震はいまだ続いている。
あ、空が光った。そろそろ雷が落ちる時間だ。
映画を参考にデロリアンを現実のものにした君の祖父は、
なぜ僕にキーを預けたのかな。
何があっても君を守るって誓ったの、のぞき見てたのかな?w

教会に雷が落ちたら、この車は走り出すんだ。
必ず2011年の3月10日に戻ってみせる。
記録によると、教会は雷による火事で消失してしまう。
それは防げない。僕らが過去という未来へ進むための代償。
でも君は生き返らせてみせる。誓ったんだ。僕は、誓ったんだ。
もう一度、誓わせてほしい。
何度でも、誓うさ─。


「凡庸」「定番」「普遍」

243:名無し物書き@推敲中?
11/10/09 18:38:19.77
「凡庸」「定番」「普遍」

「凡庸な女の子が好きな男は、やっぱ凡庸な男なのかな?」
「なに?急に」
「いや、べつに。ちょっと考えてみただけだよ」
「分かった!また学校で何かあったんでしょう?」

いつものことだけど、この娘の勘の良さには苦笑してしまう。
昼間、学校で彼女のことをからかわれたのだ。彼女には全然個性がないよね、とかそういうことを言われたのである。

学校では数少ない友人とはいえ、他人の女の趣味にケチをつけるとは本当に無神経な奴らだ。
でも確かに、あらためて考えてみると、彼女は俺みたいなどこにでもいる普通の男子高校生のツボを見事におさえてはいる。
黒髪ストレートで、清楚で、胸はそれなりにふくらんでるし、軽くツンデレ入ってるし、まぁある意味定番な感じなのかもしれない。

一寸黙ってしまった俺を前に、彼女は「悩める青年よ、ここは私に話してみなさい」とか
「大体あんたはいつも余計なこと考えすぎなんだから」とか早口でまくしたてている。
怒ったような口調をしているが、本当は俺のことを心配してくれているのがバレバレである。
彼女の気持ちが嬉しかった。

俺は適当に相槌を打ちながら、また別のことを考えだす。
たしかに俺は今彼女が好きだけど、今から10年経ったら、俺のツボも変わるし、
いろんなことが古い昔のアニメみたいに色あせてしまうんだろうか?
その時、俺の彼女への気持はどこへ行ってしまうんだろう?

どうだろう、彼女には何十年経っても変わらない普遍的な魅力があるような気もするし。分からない。
とりあえず、俺は今彼女のことが死ぬほど好きだ。今はそれでいいんだ。きっと。

彼女の言うとおり、俺は少し考えすぎだな。俺は苦笑した。
「なに?また得意の自己解決?」不満げに口をとがらせる彼女に「おかげさまでもう大丈夫。明日も早いから」と言って立ち上がった。
パソコンの画面に浮かぶ彼女におやすみのキスをして、それから部屋の灯りを消して、ベッドにもぐりこんだ。

「東京」「カレンダー」「心霊現象」

244:名無し物書き@推敲中?
11/10/09 20:18:08.02
すいません長文になります<(_ _)>

私は霊感っていうものを信じていないのですが
東京のマンションに引っ越して来てから、なんか変だなって? 
って思うことがあったので、判断をしていただけたらと思って投稿しました。

細かいことなのですが、ユニットバスに置いてある
シャンプーの位置が何回か違っていたことがあるんです。

私は割りと几帳面な性格で石鹸、シャンプー、リンス、コンディショナーって
決められた位置に置いておくのですが、ずれていたことがあって
初めは「寝ぼけたのかなあ?」と思ったのですが、二回続いたときに朝、会社に出る前に
写メで撮っておいて帰って確認したら位置が違うんです(ーー;)
なんか気持ち悪いし、留守中に大家でも入ってるのかなあ? とか考えます。
(下着やお金は取られてません)

カレンダーで確認したら覚えてるだけでも7回以上あります。
どうしたら良いでしょうか? たぶん心霊現象じゃなく誰かが出入りしているような
気がするんですが。

PS 特定されると怖いので、少し設定を変えてますが殆ど同じです。


「コンビニ」「変態」「許し」



245:名無し物書き@推敲中?
11/10/09 21:36:49.03
深夜のコンビニで、とある全裸の変態が美人の店員に許しをこうた。
「許して下さい。昨夜あなたの部屋に侵入したのは僕です」
「え……えっ? でもどうやって」
「こうやってー」
全裸の変態はコンビニの床に横になり、漫才師のざ・たっちのネタを再現した。
幽体離脱だ。
漫才師との相違点は、変態はネタではなく、本当に幽体離脱したことだ。
「ちょっと待ってよ。幽体離脱してできることは覗きくらいでしょ。実際に
物体を移動させるのはポルターガイストといってまた別の現象になるんじゃないかな」
「ほう、あなた心霊現象に詳しいですね。よろしいタネを明かします」
変態の幽体は美人の店員、海上レイの口の中にすうーっと入っていく。
「ちょっとヤダ!ゲホ……ゲホ」
(聞こえますか)
脳裏から変態の声がした。
(つまり離脱した僕の幽体があなたに憑依したのです。僕は興奮してお風呂
に入り、このきれいな体を洗ったりして楽しんだのです)
(ふーん、なんだそうだったの)
海上レイは家に帰って、カレンダーに五芒星の印をつけた。
「これが私とあなたが出会った日よ、変態の幽体さんゲッツ!」
大都会の東京。そこに蠢くのは普通の人間だけとは限らない。
今日も、
今夜も、
今だって、
想像を絶する魑魅魍魎たちが欲望のスープをかき混ぜながら、面妖な事件を
引き起こしている。
海上レイとお供の変態幽体はそれらの事件に巻き込まれながら、これからも
不思議な体験を繰り返していくのだ。
(あ……ちょっと、ちょっと、ちょっと! ところで変態の肉体はどうなったんだ??)

次は、「お掃除ロボット」「ユムシ」「ダチョウ」でお願いします。

246:名無し物書き@推敲中?
11/10/10 10:24:34.97
「お掃除ロボット」「ユムシ」「ダチョウ」


朝起きたら、部屋の中にもユムシが入り込んでいた。
芋虫のように床をゆっくりを動いている。
あるものは蛍光色に光りながら交尾をしており、あるものは腐ったような灰色をしていて、全く動かない。
「ここにもいる。あっここにも2匹。動かないのはもう死んでるのかな」

お掃除ロボットは忙しそうに、ユムシを捕まえてビニール袋に詰め込んでいた。
「ねぇ、ツノが生えてるのもいるよ」と僕は話しかけた。
「ダチョウを買ってきて、食べさせた方が早いかもしれませんね」とお掃除ロボットは言った。
「本当に?」
「ダチョウはユムシが好物ですからね。でもユムシは人間だって食べれるんですよ」
「こんなの食べれるの?」
「美しいものは全て食べることができるのでしょう?」
「そうだったっけ」
「ご近所の皆さんも、昨日の晩はユムシを食べたって…」

そう言って、お掃除ロボットはカーテンを開けた。
窓の外は人間大のユムシがそこらじゅうを這いずり回っていた。
人間の腹を食い破ったユムシが外に出てきたのだ。
淡い蛍光色と灰色が混ざったユムシの群れが街を覆い尽くしていた。

そんなわけで僕はひきこもりになったんです。

「八月」「戦闘機」「告白」

247:「八月」「戦闘機」「告白」
11/10/10 19:56:51.93
 毎年8月は戦争の月と遠い昔に開祖が定めました。
8月以外は砂嵐や、雨、雪などで戦いにならず、唯一8月だけが自由に戦えるからです。

 戦いといっても、隣国との戦争だけではなく、保存食料の製作等することは多く
生きとし生けるもの全ての戦いが行われています。

 今、僕の国の最新兵器であり人類全ての夢、空を飛ぶ戦闘兵器、通称「戦闘機」が準備を始めています
戦闘機の特徴はとにかく燃料を大量に消費し、また愛情がなければ空を飛ぶことがかないません

 今日は、年に数回しかない星の見える空で絶好の飛行日和です。
僕はこの戦闘機とひとつとなり空を飛びます。僕だけではなく多くの国民が飛ぶために集まっています。
僕は祈りをささげ戦闘機に告白を行います、その告白は僕たちに昔から伝わる伝統。

「僕は君と1つになりそして君は僕に、僕は君となる」
そして私は戦闘機に食べられ燃料となりました。

僕は空を駆け敵を屠るでしょう。

「重機」「ロータス」「ボールペン」





248:名無し物書き@推敲中?
11/10/10 21:23:30.31
「……ロータスとは日本語で蓮のことです。蓮―今が見ごろですね。駅前のお寺の池にも
咲いているんですよ」

校庭にはショベルカーとダンプ、あと名前の知らない重機が午後の日差しの下で眠っている。
例の東日本大震災で倒壊した校舎の撤去が夏休み中に終わるはずだったのに、業者が
忙しすぎて予定が延びているのだ。
私は重機を見ていると大昔に絶滅した恐竜が思い浮かぶ。
それは運転手がいなくて、ただ止まっているだけかもしれない。それとも私がいろいろ
想像するのが好きだからかもしれない。
 そんなんだから虐められるのかな?
英語の教科書にボールペンで「残飯」と書かれていたことがある。修正液で
消したけど薄っすらと後が残っている。とても傷ついた恥ずかしかった。
 もっと人とうまくやることを考える方が大切なんじゃないの? 
内なる声がする。そんなこと分かってる。分かってるけど…



「ホームセンター」「警官」「発砲」



249:名無し物書き@推敲中?
11/10/11 00:29:06.74
「民家立てこもり事件で先ほど犯人の発砲と思われる銃声が2発続いたとのことです」
女性レポーターのヒステリックな実況がテレビから聞こえる。
「・・・・・・消そうか?」と青年が振り返った。
男はそちらを向きもせず「構わない」と視線を窓の外へやった。
警官や機動隊がうごめき、その周囲を野次馬が囲んで騒然としている。

男はその日、新居のための家具を探しに、ホームセンターに行った。
一緒に行った婚約者は「ホームセンターなんて」と難色を示したが、いずれ子どもでもできれば
落書きや傷にまみれるのだ、惜しくない物を選ぶのもいいだろうと、男は合理性を説いてみた。
といって、熱心に説き伏せるほど、男にも目ぼしいものがあったわけでなく、ただの意地だ。
偶然引き出しを開けた食器棚に、ピストルを見つけたときは驚愕で声が出なかった。
こんなところに用はないとばかり早足で店を出る彼女を追うとき、つい、そのまま持って出た。

ホームセンターからの帰り道、家具選びの話から発展して結婚後の将来設計で意見が食い違い、
車内で大喧嘩し、帰宅後も険悪だった。だからちょっとおどかすつもりで「黙れ」と銃口を向けたのだ。
彼女は蒼白になって家を飛び出し、外から携帯電話で通報した。
「本物かな」と彼女の弟が引き金を引き、それを取り返そうと男が手をかけて2発目。
「姉さん、もうちょっと考えて行動してほしいよな」と弟は銃を床に放り出して寝転んだ。
まったくだ。結婚は白紙。それは合意が成立するだろう。結婚前に「価値観の不一致」が
判ったのはかえって幸いだ。だがこの弟とは気が合う。男は内心で苦笑した。
「正直に話してもさ、撃っちゃったら犯罪なのかな?」と弟はマイペースだ。
「姉さんと結婚しなくてもさ、俺とはたまには遊んでよ」と心までお見通しだ。
そうだな、と応えながら、男は遠く夕暮れの空を眺めた。

「写真立て」「リニア」「ゴミ袋」

250:名無し物書き@推敲中?
11/10/11 20:45:11.26
「あんたはもう首だよ。出ていきな」
エバが冷たく言い放った。
僕はただ呆然とするしかなかった。
「ちょっと待ってよ。僕にはまだやりかけのプロジェクトがあるんだ。今度
はかなりの大物なんだ。途中で止めるわけにはいかないよ」
「知ったことじゃないね。ここをどこだと思ってんだい? あんたの遊び場
じゃないんだからね」
「遊び場って……ひどい言い様だな」
「図星だろう! 今まで一度だってあんたの企画がモノになったことがある
かい? さあ、このゴミ袋やるから、そこに私物をかき集めて、お人形の
待ってるお家に帰んな」
エバは僕の顔に向かって、MITのデザイン文字が印刷されたゴミ袋を放り投げた。
僕はこれ以上反論できない。
諦めてデスクに並べられた(エバたちは『散乱した』と言っているが)私物
を片付け始めた。
写真立てのリプリーは今も笑ったままだ。彼女は元気だろうか。そうだ、今
度メールを出してみよう。彼女なら何か気の利いた箴言を返してくれるかも
しれない。
リニアを去るとき、僕はいろいろな思い出が一度に再現されて、どっと涙が
溢れてきた。
リンカーン地球近傍小惑星探査プロジェクト(LIncoln Near-Earth Asteroid Research: LINEAR)。
通称リニア。とにもかくにもここには僕の青春が埋葬されているんだ。
さようならリニア、また会う日まで。

「リモコン」「頭蓋骨」「大仏」

251:「リモコン」「頭蓋骨」「大仏」
11/10/11 23:20:19.62
 テラフォーミング-人の住めぬ星を地球と類似した環境に改造する-技術が開発されてどれぐらいになっただろうか?
しかし黎明期には多くの人々が命を失い、
歴史の教科書には天空をにらむ頭蓋骨が象徴として何百年も載せられている。

 今では完全自立型人類保護システム・・・通称「大仏」が地球型惑星を探し
そこを自動的にテラフォーミングし、超空間転送で資源や移民を受け付ける。
もしそこに人類型生命体がいれば人々に平和な夢を与える名目で侵略を行う。

 大仏とは別に、仏像と呼ばれる小規模テラフォーミングシステムも開発され
超空間転送で他の世界から水、空気、光、重力といった必要な物資を購入し
どんな小惑星でもリモコンひとつで快適な世界となった。

 そして、その新しい技術は建物に仏像を設置することから
寺フォーミングと呼ばれた。


次のお題は「いまいち」「悲しい」「プレーン」でお願いします


252:いまいち、悲しい、プレーン
11/10/12 23:14:37.82
熊のヤング・プーは大好きな蜂蜜を、自分がマーキングしたブナの巨木のくりぬき穴に隠していた。けれども最近、体が少し大きくなってしまい穴に突っ込んだ頭が抜けなくなってしまった。
「僕は死ぬのか。こんな無様な格好で……」
蜂蜜の匂いがプンプン漂う暗い穴は、今や刃の落ちない断頭台となり、ヤング・プーの体力が尽きるまで彼の頭を離さないかのようだ。
ヤング・プーがじっとしていると、高い声がした。
「これは面白い。大自然の知恵の輪みたいだ」
その者はヤング・プーの脇腹をこそぐると、死に際の熊はゲラゲラと笑い出した。
自由が利かないので、首と肩がへんな捻れ方をした。
すると上手い具合にヤング・プーの首がくりぬき穴がすっぽり抜けた。
「ふう、助かったよ。ありがとう」
ヤング・プーの前には、黒澤明の格好をした一匹のネズミがいた。
ネズミはヤング・プーの顔をじいっと見ると、首を横に振った。
「いまいち、だな……」
「え、何のこと?」
「これは失敬。我が輩は映画監督のチューブリック。今、今度撮影するアクション映画の主演男優を探しているところだ。見たところ君は不細工すぎて使えないようだね」
「助けてくれたのは有り難いけど不細工はひどいなあ。僕はこれでも熊界の松田優作と言われているんだぜ。ちょっと僕の演技を見てよ。『……なんじゃあこりゃあ!?』」
(゜Д゜)
「驚いた。君はほんの一瞬だけ時間を止める能力があるようだね。君のしらけた演技で僕の懐中時計が一秒狂ったよ」
「そんなこというなよ。せっかく僕の命を救ってくれたんだ。何か君の手助けがしたいな」
「わかった。じゃあ撮影スタッフに回ってくれたまえ。主演は、そうだな、私が受け持つ」
(なんじゃあ、そりゃあ……)
つづく

253:いまいち、悲しい、プレーン
11/10/12 23:15:18.00
チューブリックはどこからともなく主演女優と称するメスのネズミを連れてきた。恋人同士なのか、やけに仲がいい。
更に別のスタッフ(家鴨である)がやってきて、丸太をくり抜いたコックピットを持ってきた。これを木から吊して飛んでいるように見せかけるらしいのだ。
「飛行機の映画だよ。僕とヒロインのニコルが操縦不能のコックピットでいちゃいちゃ、いや必死に脱出方法を考えるからカメラを回してくれ」
「ホイホイサー!」
チューブリックは天才なのか。ピクリとも動かぬ丸太のコックピットで、さも飛行機がきりもみ状態に陥ったかのような激しい演技を展開した。それに釣られてニコルも熱演する。演技が演技を呼び、激しく呼応した。
撮影は順調に進んだ。誰もが傑作ができると予感した。
だが神は、撮影最後の日に気まぐれな運命のサイコロを投げた。
悲しい出来事が起きた。
吊したあった丸太のロープが切れて、二人の名優が丸太の下敷きになってしまったのだ。即死だった。
チューブリックの芸術魂にすっかり陶酔していたヤング・プーは、頭を掻きむしって混乱した。
「おいチューブリック、ここで止めてどうするんだよ。まだ編集が残っている。アフレコや音楽はどうするんだよ? この映画を完成させられるのは君の才能だけなのに、こんなつぶれた肉の塊になっちゃってさ!」
ヤング・プーは絶叫したが、こんな森の中でドクターヘリがくるわけもなかった。
天才ネズミ監督チューブリックは死んだーー。

すると、物陰で彼らの映画撮影の一部始終を見ていた者がいた。
人間である。
「心配するな。君たちの映画に賭ける情熱は、この私が引き継ぐから」
偶然にも彼は映画関係者だった。たまたまロケハンに来て彼らの撮影風景に出くわしたのだ。

1928年、こうして完成したのがウォルト・ディズニー監督の『プレーン・クレイジー』である。


「ディスク」「カラス」「戦車」

254:名無し物書き@推敲中?
11/10/13 15:26:24.79
カラスの声ばかりが響く、戦場の跡。
夕日が燃やし、蛆が集る死体の群れの端に一機、まだ動く戦車が有った。
戦車の中には誰もいない、運転手はきっと群れに埋れていのだろう。
戦車の中では音楽がなっている、流行りの歌、優しい歌。
人を殺す感触を無くす歌がカラスの声を殺している。
カチャリ、小さく音がした。
ディスクが変わり、歌も変わる。
流れ始めたその歌は、愛が世界を救う歌。

255:「ディスク」「カラス」「戦車」
11/10/13 19:18:53.87
*お題がなかったのでお題継続します。

「いけ!きゅーまる!」
「負けるな!ななよん!」
子供たちがラジコン戦車で遊んでいる。

 元々は砂場とか外で遊んでいたけど、
小さなラジコン戦車が巨大怪獣であるカラスや猫に敗北して以来
子供たちは家の中で遊んでいる。

 服や本、フリスビーに使っているコンパクトディスクだったもの
いろいろな障害物を乗り越え迂回し戦っている。
子供なりにいろいろな戦術を考えているみたいだ。

「これぐらいお手伝いも考えてしてくれればねぇ」
妻がボソッと独り言を言う
「使わないよりいいだろう?」
「それもそうね」

元気に遊ぶ子供たちをニコニコと眺めて夜が更けていく。
今日はいい日だな。

次は「氷雨」「オセロ」「足踏みミシン」でお願いします


256:名無し物書き@推敲中?
11/10/15 22:17:30.24
「……足踏みミシン、液晶テレビ、パソコン、その他なんでも回収いたします。こちらは
粗大ごみの回収車、御用がある方は……」
自分を殺したい。奴を殺したい。
奴の頭を壊したい。ハンマーで叩き割たい。

「毎度、お騒がせいたしております。こちら粗大ごみの回収車でございます。
使わなくなった……」
自分は矮小で醜くい生き物。
自分を殺す。自分を殺して世界を殺す。

「ご家庭でいらなくなった、冷蔵庫、自転車、ゲーム機、足踏みミシン、液晶テレビ、パソコン……」
今、引き取ったばかりのオセロ。オセロを回収させた女。女の胸。
セーターの下で大きく膨らんだ胸。オナニーオナニーオナニーがしたい。シコシコシコ。
―考えるな考えるな考えるな。ああ俺よ。考えるな考えるな。狂ってなんかいない。狂ってなんかいない。

窓を開け手を広げた。手のひらに氷雨が冷たい。
―いつもの公園に行こう

男は住宅街を抜けるために右にハンドルを切った。


「会見」 「自慰」 「大臣」

257:名無し物書き@推敲中?
11/10/16 06:20:28.45
「会見」「自慰」「大臣」


何かの大臣が会見を開いて、就任後わずか一週間で辞意を表明って
テレビニュースでやってて
その「辞意」が「自慰」に聞こえて、俺もちょっと疲れてんのかなって
そう思ったのが水曜日

「あの会見は水曜日だったと思います」俺は答えた
「確かに水曜日なんだな?」
「そう言われると自信なくなるなぁ。木曜日だったかもしれません」
「それじゃダメじゃないか。これ大事なことなんだよ。断言できるのか?」
「ええ、夜テレビで見ましたから」
「テレビニュースは毎晩やってるじゃないか。何で水曜日って言えるんだよ?」
「まあそうですね」
「なんでお前、さっきから嘘つくの?」
「嘘はついていません」

俺は突然腹が立ってきて、そいつの顔面を思いっきり殴ろうとしたけど、
空振りしてしまってうまく殴れなかった
そんな夢をみたのが日曜日

日曜日で本当によかったよ
皆さんも良い休日を

「魔女」「鈴虫」「待ちあわせ」

258:名無し物書き@推敲中?
11/10/16 09:40:10.52
碧川アリスは誰にも気づかれないように席を立ち、教室を出た。
授業中にそんな不可思議な行動がとれるのも、碧川アリスにちょっとだけ人々
の意識から自分をすり抜けさせる、といった異能力が備わっているからなのだが。
廊下を走り出すアリスの脳裏にこんな声が聞こえた。
(アリス、わかってると思うが3分以内に決着をつけないと時空が変転する
からね。そうなったらもう君の手には負えないよ)
「わかってるわよ! 私、神藤先生の授業うけたいのに。こんな時に仕事だなんて最低だわ!」
(理科準備室に反応あり。いつもの怪人じゃない。こりゃ幹部クラスだな。急ぐんだアリス!)
「ところであんた、今どこにいるのよ? いつもなら私の半径3メートル以
内をストーカーしてるくせに」
(すまない。こっちはこっちで忙しくてね。今回は遠隔で指揮をとらせてもらう)
問題の理科準備室に行くと、部外者の老婆が怪しげな行為に耽っていた。人
体模型にフラスコの液体をかけて、擬似的な命を吹き込もうとしているのだ。
老婆はアリスに気づかれても平然としていた。
「遅かったの。一応昨日お前の夢に現れて予告はしておったが、待ちあわせ
の約束より10分遅刻じゃ」

すまん、つづく

259:名無し物書き@推敲中?
11/10/16 09:41:03.96
「夢の約束なんかいちいち覚えてないわ」
「ほう、おぬしが最近町で暴れ回っておる、何と言ったから……サイコナイト
とかいう不良じゃな」
「魔女の幹部に不良よばわりされるなんて私も落ちたものね。時間がないから行くわよ!」
「3分ルールというやつじゃな。はたして間に合うかの」
 2分59秒で決着がつき、魔女は爆死した。
「ちょっと、内臓バラバラで標本もぐちゃぐちゃにして、誰が片付けると
思ってんのよもう!」
アリスが教室に戻ると神藤先生の授業は終了していた。
疲れた。だが丁度昼なのでアリスは気持ちを抑えた。抑えていた食欲が解放
される麗しの一時。
だが弁当箱を開けた途端アリスは逆上した。
「ジミニー!なんでこんなところにいるのよ?」
弁当箱にさっきテレパシーで指揮してきた鈴虫のジミニーが入っていたのだ。ジミニーの周囲の米粒がなくなっていることから、どうやら弁当を食っていたらしい。
(すまない。ちょっと腹が減っていたんでね。そんなこより問題が起きたの
で報告しておく。君が魔女と戦っている間、別の事件が起きてね。なに、人
間界の他愛ない殺人事件さ。そのどさくさにある男子生徒がこの弁当箱を開
いて僕を見つけてしまったんだ。彼には幻覚をかませておいたが、要注意し
ておいてくれ。なんだか君に興味があるみたいだよ)
「何よそれ。詳しく聞きたいわ」
(じゃ……>226を読んでね)

おわり

既視感 ヤクザ オオサンショウウオ

260:「既視感」「ヤクザ」「オオサンショウウオ」
11/10/17 00:07:39.93
 文化祭でスターウォーズを見ていたら愛しのジャバ様に対して
「これってオオサンショウウオみたいだね」
「えぐいよなぁ」
とかひどい事を言う人がいる。

 確かにジャバ様はやくざだし色々とあれだけど、
ハンソロみたいに有能だと、殺さずに生かしておくとか何だかんだと懐が広い
将来結婚するならジャバ様みたいな人で幸せに左団扇を扇ぎたいと思うのは普通の乙女心だと思うんだ。
でも友達皆「趣味が悪い」と否定する。左団扇がいけないのかしら?

 そんなある日街で1人の男性とであったの。
その人からは強烈な既視感を感じる何故だろう?
私はその人に声を掛け付き合い始めた。

 ある日私の部屋で彼と作ったおでんを食べたとき
「おでんにタマネギ入れるんだ?はじめてみたけどおいしいな」
そのときわかった。妄想(ゆめ)にみたジャバ様との結婚生活そのままの台詞
『この人はジャバ様だ』
それは、誰にもわからない私だけの既視感。
きっとこの人にも理解は出来ないだろう。

でも私は多分この人と一生を添い遂げるだろう。左団扇は無理そうだけどね。


次は「扇子」「定刻」「氷」


261:名無し物書き@推敲中?
11/10/17 14:52:13.71
 『定刻になりました。戦闘員の皆様は所定の位置に付いて下さい』
薄暗い廊下に機械的なノイズが混じったアナウンスが響き渡る。
その後廊下にぞろぞろと、黒尽くめの戦闘員達が一列になって出てきた。
 その様子を監視カメラから見ている一人の男。
扇子を左手で扇ぎながら、右手に持ったスプーンでかき氷(ブルーハワイ味)の山を、
シャクシャクと小気味良い音を立てながら崩して、そこから一匙氷を掬うと口の中へと入れる。
「……俺思うんだけどさぁ」
男は気だるげに、斜め後ろに毅然とした態度で控えている老獪な男に問いかける。
「何で御座いましょうか、司令官様」
「俺らって世間から見たら悪役じゃん?」
「はい」
「で、赤いのやピンクいのとかに、最後にはなんやかんやがあって全員倒されるじゃん?」
「まぁ、そうですね」
「……もう止めね、こういうの?」
男はかき氷を食べ終わり、容器の中にスプーンを放り投げる。
「―と、言いましても」
「あぁハイハイ分かってる分かってる。分かってますよ、っと」
 男は椅子から立ち上がると、掛けてあったマントを身に着ける。
「で、俺が倒された後はどうなるんだっけ?」
「はい、総統様と四天王様が登場なさる予定です」
「へぇ、でもお前は生き残るんだな」
薄笑いを浮かべながら男は老人を見やる。
「そ、それは……」
「そんな顔するなって、冗談だから」
男は老人の肩をぽん、と叩くとテーブルの上に置いてあった仮面を手に取り、顔に付ける。
「さぁて、んじゃ一丁。派手にヤラレて逝きますか」

 そして男は、最後の戦場へと向かう―。

次は「アザラシ」「木目」「排煙」でお願いします。

262:名無し物書き@推敲中?:
11/10/17 16:25:38.64
橋の手すりに両肘をかけ少し乗り出す。
生まれたころから住んでいるこの町の、本当にほとんど毎日見ているこの景色。
小学校、中学校、高校と、通学路はこの橋を通っていたし、今の仕事場もこの橋を通る。
じいちゃんが生まれる前にできたこの橋は、今時珍しく木造だ。
川沿いにぽつぽつとある工場は、薄い排煙をたち登らせている。昔はそれこそ要塞のような風貌だった。
廃工場が跡形もないのは、行政が俺たち土方に仕事を回すように頑張ってくれた結果だ。
こんなにさびしくなるなんてな……。
ふと下を流れる川にぽつんと丸いものが見えた。アザラシだ。少し前からこの川にすみつくようになった。
みんながマルちゃんと呼ぶこのアザラシは、タマちゃんゴマちゃんの後継として話題になるかと市や町が期待していたらしいが、
あまりに廃れているところだとテレビは取り上げてくれないようだ。
若い人がどんどん出ていき、観光地でもないここは見向きもされない。相対的にご老人が増えたが、
最近ご老人方がどんどんいなくなっている。雷親父の愛称も、駄菓子屋のみんなのばあちゃんも……。団塊の世代は本当にまとまっていなくなることを痛感した。
ここもいつか消えてなくなるんだろう。せめて息子たちが成人するまではもってほしい。
生まれたときから見ているこの橋も、手すりの木目が浮き出てきて、薄くなった灰色がこの町の未来を表しているように感じた。
俺もあと何年もつかな……。

次は 緑茶 サンゴ 玉の輿 でお願いします

263:緑茶 サンゴ 玉の輿
11/10/17 18:21:37.61
 緑茶を葉っぱごと捨てたような溜池の水をコップですくって太陽にかざしてみると多くの藻が浮いていた。
『藻が多いのは自然の浄化作用が働いている』と聞いてはいるが見栄えが良くないと毎回思うし
水質がどうのという以前に外来魚を放流する連中を逮捕するべきではないのだろうか?

 4年毎のゆる抜きのたびに外来魚を駆除してきたが一向に減らないのは間違いなく誰かが放流しているからで、その為毎年放流されるドジョウやタナゴは居なかった。
それでも子供たちはブロックなどを漁礁として池の底に並べ続けてきた。
一時期はやった鉄製のPCケースの漁礁は朽ち果てながらも、
そこに描かれた竜宮城の文字や鯛や平目、サンゴの絵が残っていることだろう。

 子供たちは話しか知らず見たことの無い生態系を取り戻すというよりも作り上げようとしている。
それが正しいかどうかわからないし懐古主義だと思うこともある
それでも子供たちが目指している事を最後までやり通したいと思う。

 明日にはゆる抜きが始まる。
この玉の輿池-本当は玉越池だが放流を始めてからこのように呼ばれている-にドジョウが居ることを願いながら
今日も、外来魚減らしのために外来魚を釣り上げる。


次は「背高泡立草」「すすき」「焼き芋」



264:黒天使ルシルフェル ◆lgXArV3Q0PD9
11/10/18 02:09:05.32
畜生!焼き芋め!

俺は焼き芋を背高泡立草の茎でめった打ちにする。
焼き芋は二つに割れ四つに割れ、無残な姿を晒す。

知らない人間が多いが、背高泡立草の茎は意外と堅い。
ちょっとした木刀並だ。凶器となりうるレベルだ。そして俺は狂気に駆られていた。

なにせ、憧れのA子とのデートに失敗したのは、全てこの焼き芋のせいなのだ。

畜生、焼き芋の繊維質め! 
胃の中で勝手に炭酸ガスやメタンガスに分解されやがって!
畜生、俺の肛門から勝手に放出されやがって!

ガシッガシッガシッ

俺の猛攻で焼き芋は原型をとどめていない。
焼き芋の存在をわずかなりとも知らしめるのは、そのかぐわしいにおいのみだ。

……いいにおいさせやがって。

クソ、悔しいがやっぱり俺は焼き芋は「す好き」だ。
しまった。焼き芋に対する昂奮で噛んでしまった。

俺は焼き芋にチュッとくちづけするとひと息に喰らいつくした。



次は「天使」「悪魔」「便器」


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