【ラノベ】自作を晒して感想をもらうスレvol.35at BOOKALL
【ラノベ】自作を晒して感想をもらうスレvol.35 - 暇つぶし2ch283:ゾンビ
11/04/24 22:06:52.33 rd2fpYRR
>>255
電撃用だね。すごい良かった。くすくすしたもん。可愛くて。
だから手厳しくw

茶色の髪という表現が安っぽい。手を抜いてるように感じた。もっと気をつかってほしい。
後は、構成の話だけど
「僕は店を出た。~小雨が降り始めた」は削った方がいいな。

「もうっ!」稲里さんは薄紅色に染まった頬を、ぷっくりと膨らませた。
身もだえしたくなるほど可愛かった。
で終えた方がオチが綺麗だよ。最後が惰性に感じた。ショートはオチが重要視さえるから
そこは、一番いい終わり方を選んだ方がいいよ。

次に構成で良かったところを。
雨屋で告白の相手が店主という点。ここでまず掴みが出来てる。次に耳と尻尾で読み手は、もしかして?
って思うんだけど、そこから先はお約束でも、慌てる仕草が可愛いから引き込まれる。
雨も狐の嫁入りにかけてて、設定をうまく活用している。それが最後のオチ、求婚に繋がる。
だから、計算してるなって思うからこそ、求婚で止めた方がいいと感じた。一番、告白の中で求婚が重い
だろうしドラマチックだから、それでいいと思うんだ。

ただ残念なのが、狐と分かってからの展開が単調で早いこと。主人公が押してるようにしか見えない。
稲里さん可愛いけど、受け身過ぎ。ラストの展開の持っていきたいだけに見えちゃうよ。
俺の送ったのは、もう少しどんでん返しを、挟む構成にしてるんだけど、そういう起伏のある演出で
最後に求婚だと、凄いインパクト出ると思う。ちょっと同じトーンが続きすぎると思うんだ。
頑張って。受賞するといいね。

284: [―{}@{}@{}-] DEATH LEGO ◆jMdquu9xa6
11/04/24 22:11:06.80 aFqg725z
紅茶さんの削除依頼には応じないのに
他の人の場合、削除依頼後にアップローダーから消えている。

もし紅茶さんの作品が電撃で応募されている事を知っておきながら
こんな事をやっているなら、アンチ紅茶の人間性がはっきりする。

紅茶さんはメールで削除依頼を出したのに、
削除どころか返事すら来ていない。

これは何かの手違いなのか? もし悪意があるなら酷い話だ。




285: [―{}@{}@{}-] DEATH LEGO ◆jMdquu9xa6
11/04/24 22:13:47.94 aFqg725z
君達
もうちょっと考えた方が良い。

君達が使用しているアップローダーの管理人の管理の仕方を見直せ。
これは酷い。

286: [―{}@{}@{}-] DEATH LEGO ◆jMdquu9xa6
11/04/25 00:17:14.07 XmwdUqft
串と呼ばれた私の2ちゃんねる引退である。

二十代の間は外で遊ぶ事にしたw

君達は2ちゃんねるで今日も明日も明後日も頑張ってくれw

短い間だったが、楽しかったぜw

頑張って一次落ちを抜け出せよw
2ちゃんねるで言い訳しても何も変わらないんだからなw

創作文芸板で電撃スレを立てるがよいw 私はいないから、心配するなw

じゃあなw

287:この名無しがすごい!
11/04/25 18:51:29.07 kD326dor
みんな息してる?

288:この名無しがすごい!
11/04/25 20:00:45.08 J5pVQqUF
すーはーすーはー

289:この名無しがすごい!
11/04/25 21:31:19.09 GG8QqUMh
こっちのスレ、平和になったの?
なったなら晒したいんだけど……数日は様子見た方がいい?

290:この名無しがすごい!
11/04/25 21:37:56.34 HJuAXDOD
串本体はいなくなったらしいですが、引用荒らしはまだいるかもしれません
しばらく晒さない方がいいかも
どうしても晒したいなら止めはしないです

291:この名無しがすごい!
11/04/25 21:57:37.60 wOOSvZXt
>>255です

>>283
>狐と分かってからの展開が単調で早いこと
確かに今のままだと主人公に押し切られてばかりなので、
もう少し変化を付けてみます。


感想ありがとうございました。

292:この名無しがすごい!
11/04/26 00:31:14.40 J375qXsr
>>255
雰囲気だけでも構わないような掌編ならこれでもいいだろうけど、
きちんとオチをつけないといけない、いわゆるショートショートだとしたら、確かに弱いね。
意外性が一切ないから。狐であることも、耳が出て尻尾が出てくるあたりも、全く。
このままいくのだとしたら、これが規定ページ数一杯なのだとしたら、半分まで何とか縮めて余地を作って、
登場人物を増やすか、主人公のネタを入れてひっくり返すしかないんじゃないのかな。
そうじゃなければ、狐じゃなくすとか、かわいいと見せかけて本気でただの妖怪だとか、
設定で裏をかかないと無理だよ。

293:この名無しがすごい!
11/04/26 00:34:54.55 U4RyuN3X

これは作者自らが公開してるけど、親が見たら褒めてくれるのかな?

URLリンク(www5.pf-x.net)


294: [―{}@{}@{}-] この名無しがすごい!
11/04/26 01:27:37.10 eeUmsjzf
感想を求めている人は、感想を付ける人が具体的にどこの部分に対してどう思っているのかを知りたいと思うので、
しっかり文章を引用して、自分がどの辺りに対してどう思ったのかを書くからね^^

そうする事で、感想を求めている人は一層理解しやすくなるよね^^





295:この名無しがすごい!
11/04/26 01:49:02.68 FDUdDt2e
【アドレス】URLリンク(www5.pf-x.net)
【ジャンル】
【タイトル】失われた旋律をもとめて
【評価基準】なんでもいいです
【改稿】OK

296:この名無しがすごい!
11/04/26 01:49:59.23 MHEc49di
哀れな人生だな

297:この名無しがすごい!
11/04/26 01:57:00.89 92AY06/C
哀れな人生だよな

298:この名無しがすごい!
11/04/26 02:00:05.34 ya9QQxRJ
>>294の人、>>295にはいつもの引用感想つけないの?


299:この名無しがすごい!
11/04/26 02:01:01.90 Jn1IajRU
>少女の名はジャンヌ=バティスト=リュリ。
> イタリアのフィレンツエに粉屋の娘として生まれ、兄のジャン=バティスト=リュリと共にフランスへと渡ってきた、まだ齢十四歳の幼い少女である。
> ジャンヌには、兄の務める国王つきの音楽家という大命はない。


はっきりリいってこれちゃんと調べてる?
ルイ14世だから 17-18世紀だけど 当時の基準で言ったら立派な大人だよ。
それにイタリアは都市国家として分裂状態。イタリアという統一された概念はないに等しい。
近代イタリアの統一は19世紀中期以降だ。

読んだけどつっこみどころが多い。酷すぎ。

300:この名無しがすごい!
11/04/26 02:01:56.74 Jn1IajRU
はっきりリいってこれちゃんと調べてる?
ルイ14世だから 17-18世紀だけど 当時の基準で言ったら14歳は立派な大人だよ。
それにイタリアは都市国家として分裂状態。イタリアという統一された概念はないに等しい。
近代イタリアの統一は19世紀中期以降だ。

読んだけどつっこみどころが多い。酷すぎ。


301:この名無しがすごい!
11/04/26 02:22:02.94 Jn1IajRU
これまともな人が見たら、事実関係一つまともに調べられない。で一刀両断されるよ。

このレベルなら架空のソヴュール王国みたいなでっち上げの方がマシ。だしずっと楽。

302: [―{}@{}@{}-] この名無しがすごい!
11/04/26 02:26:15.06 eeUmsjzf
晒すのは「自分」の作品でなければだめだよ^^

以前に晒したのを再び晒すのもだめだよ^^


303: [―{}@{}@{}-] この名無しがすごい!
11/04/26 02:26:50.14 eeUmsjzf
感想を求めている人は、感想を付ける人が具体的にどこの部分に対してどう思っているのかを知りたいと思うので、
しっかり文章を引用して、自分がどの辺りに対してどう思ったのかを書くからね^^

そうする事で、感想を求めている人は一層理解しやすくなるよね^^


304:この名無しがすごい!
11/04/26 02:29:38.76 FDUdDt2e
>>295
 一:アヴィニョンの楽聖
フランスの太陽があぶない。
 四歳で王位を継承した若き少年王、ルイ十四世は、狩猟に出かけたヴェルサイユの地で沼にはまり、おりからの寒さが原因で、風邪を引き、それをこじらせて肺炎となった。
 シャンボール城に用意された専用の一室で、五人の侍医がつき、夜を日に継いで徹底した治療、看病が行われたが、病状は一進一退を繰り返した。
 そして病はなおるどころか、数度にわたるしゃ血の影響により、王は貧血となり、ますます深みにはまっていった。
 病室の次の間には貴顕紳商がひしめき、国王の病状について、様々な憶測が乱れ飛んだ。
 明日の命もあぶないかもしれない。
 もう死はすぐそこ。
 フランスきっての名医が匙を投げた。
 そんなゴシップに揺れる宮廷で、その噂に耳を傾けていた一人の少女がいる。
 少女の名はジャンヌ=バティスト=リュリ。
 イタリアのフィレンツエに粉屋の娘として生まれ、兄のジャン=バティスト=リュリと共にフランスへと渡ってきた、まだ齢十四歳の幼い少女である。
 ジャンヌには、兄の務める国王つきの音楽家という大命はない。
 それでもジャンヌは、保守的な宮廷にあって、その地位を確たるものにするには、何よりもまずフランス語とその音楽への深い教養が必要と感じていた。
 兄の書くフランス風のイタリア音楽は、そんな宮廷の情勢を反映してか、絶妙な具合で随所にイタリア風の華麗な趣味をとりいれ、フィリドール一族の音楽を向こうに回し、堂々たる出来栄えだった。
「おい、ジャンヌ!」
 兄の声だ。
 果たしてそこには兄のジャンがいた。
 特別に王の御許での謁見が許された彼は、寝室を出るやいなや、すぐさまジャンヌのもとへとやってきた。
「聞け、妹よ! 我らはこれよりフランス中を旅して、最高に腕の立つ歌手を見つけてきてもらう」
「お兄様、急に何を!?」
 驚くジャンヌをよそに、リュリは続けた。


ずいぶん独りよがりな文章ですね。
面白みがまるで無いです

305:まともに感想をつけて馬鹿を見た。
11/04/26 02:33:20.22 Jn1IajRU
  |l、{   j} /,,ィ//|     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ     | あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
  |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |     < 『おれはID:FDUdDt2e奴が晒し人だと
  fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人.    |  思ったら感想をつけていた』
 ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ   | 催眠術だとか超スピードだとか
  ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉.   | そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
   ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ. │ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
  /:::丶'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ \____________________

306:この名無しがすごい!
11/04/26 02:37:10.18 5Q4aK93b
>>295
「私はこれより、『王の病気快癒のためのモテット』を作曲する。それには一人のヴィオール奏者と一人のトランペット奏者、二人のヴァイオリニストと一人のリコーダー
弾きが必要だ。そして曲に命を込めるソプラノの歌声が必要なのだ。そのソプラノ歌手を、どうかフランス中を駆け巡り、最高の技量をもった歌手を探す手伝いをして欲しい。
この世の最高の音楽を、私が作曲する。なに、心配はいらない。あの宰相マザランは私と同じイタリアの出身だからな。旅行の許可はすぐにおりるだろう。ジャンヌよ、
我々にはフランスの、この王国の未来がかかっているのだ。その耳で、その手で、その足で、歩き、走り、旅をして、この世の最高の音楽にふさわしい歌手を見つける
のに手を貸して欲しい。兄のたっての頼みだ。聞いてくれるな? ジャンヌよ」
「お兄様……、そんな大命を私に?……」
「仲間はお前しかおらんのだ」
 ジャンはそう言って、妹の頬に接吻をした。
「私の可愛い妹よ。お前に聖セシリアの御加護があるように。神聖な使命だ。頼む!」
 聖職者の行列がやってきた。
 麗しいレースの胸飾りに蝋燭を持ち、侍童がつき従う行列だ。
 その後には名だたる王家の人間たち、そしてコンティ公がいた。
 恭しく行列の中を歩いていたコンティ公だが、リュリを見るとふと歩みを止め、彼に近寄ってきて、こう言った。
「セニューリ・バッティスタ。御苦労だったな。お歌もバレエもおしまいだ。お前の幸運もここまで。国王が崩御なさったら、この私が王位を継ぎ、そなたを泥臭い故郷、
イタリアに強制送還してくれようぞ……」
 カミソリのように鋭利なその眼はリュリへの敵愾心をむき出しにし、それでいて緩やかな口元からはこの劇薬のような言葉が、陰鬱な病魔の具現であるかのように放たれた。
 その一語一語は、ジャンの、ジャンヌの心臓をえぐった。
 ふふっと笑うと、再び行列に戻ってゆくコンティ公。彼はルイ十四世亡き後の最も有力な王位継承者だったのだ。
「妹よ!」
 ジャンが話した。
「聞いた通りだ。国王がおかくれになったら、宮廷での私の地位も、作曲も、この夢の国、フランスへ住むことも、何もかもが御破算になってしまうのだ。ジャンヌよ、やってくれるな?」
「でも私には……、私にはそんな重い使命は……」
「歩きながら考えろ!」
 ジャンが言い放った。
「結果は後からついてくる。今は一刻を争う事態だ。この私の書いた曲で、なんとしても国王の病気を治癒させてみせる。一世一代の大仕事だ。それにはジャンヌよ、
お前の協力が必要なのだ。明日の朝にでもシャンボール城を出発する。そして向かうのだ。音楽の旅に。ジャンヌよ、お前と私にはこのフランスの運命がかかっている。
この私と同じように。ジャンヌよ、兄の願いだ。頼む!……」
 強く迫るリュリに、ジャンヌは戸惑いながらも、その旅への出発を約束した。

「わかったわ。わかったわお兄様。でもこの私のこと、最後まで無事に終えられるとは思わないわ。もしかしたら途中で駄目になってしまうかも。それでもいい?」
「大丈夫。お前は私の妹だ。私のように、生来勝気で負けず嫌いなお前は、この大仕事を立派に成し遂げるだろう」

 シャンボール城に夜明けがやってきた。
 それはまだ太陽が現れる寸前の、夜の名残が濃厚に残った夜の廃墟だった。
 随所に星空の破片が散らばる西の空をゆっくりと朝の色に染めながら、輝く太陽が、東の空へと昇ってきた。
 そしてオレンジ色に滲んだ雲と澄んだまっさらの青空が、ジャンヌの旅路を守るかのように空一杯に広がっている。
 シャンボール城の巨大な車寄せには、ジャンヌとジャンの姿があった。
 そこには一台の二頭立ての馬車が止まっていた。
「これを持っていこう」
 それはフランス王家の紋章である百合の花をかたどったペンダントだった。
「これは国王のパスポートだ。これを持っていれば、私たちは恐れ多くも国王陛下の勅使


もはやどうでもいいですね
駄文でした

307:この名無しがすごい!
11/04/26 02:39:12.58 5Q4aK93b
>>295
ということがわかる。くれぐれもなくさないようにな」
「わかったわ、お兄様」
 リュリはそのペンダントを、ジャンヌの首筋に掛けた。
「うん、似合っている」
 照れくさそうに笑うジャンヌ。
「いいか、可能な限り早く戻る。そして恐らく、これは私の勘だが、南へ向かおう。そうだ。オーヴェルニュ、プロヴァンス、そしてアヴィニョンがいい」
「でもお兄様、南フランスは治安が悪いのでは?」
「なに、国王陛下の威光はフランスをくまなく照らしている。ルイ十四世という太陽を前に、ただひれ伏すばかりだろう。お前は安心して向かえばいい。いざという時は……」
「時は?」
「こう信じろ。自分には聖セシリア様の御加護があると。自分はアポロンの守護する音楽の申し子だと」
「わかったわ、お兄様!」
 馬車に乗り込んで、ジャンヌが言った。
「かならず最高の音楽にふさわしい歌手を探すわ!」
 馬車が出た。それは牛の背中のようなでこぼこの道路の上をなぞり、その車輪から、険しい道の面影を滲ませていた。

 二:サウンドハンター
 新宿駅新南口に隣接する巨大なビル、フラッグには、日本を、いや世界を代表する大型レコード店、「タワーレコード」が入っている。
 有馬航はいつも通り、学習院大学仏文科の授業が終わると、久しぶりのバイトで豊かになった財布を持って、このビルにやってきた。
「今日は、十七世紀の宗教音楽を漁ろう。モテットやミサ曲を中心に。あとルネサンス期の歌唱曲も見ていこう。そうだ、久しぶりに器楽曲も見ていこう。ルクレール、
ヴェラチーニ、コレッリあたりをメインに。ああそうだ、アリアヴォクスの新譜の取り置きを頼んであるんだ。受け取って帰ろう。サヴァールも相変わらずやるよなあ。
今回は『カタリ派の音楽』だもんな。さぞかし香ばしい演奏だろう。なんといっても、埋もれた古謡、俗謡は十八番だからな。ル・コンセール・デ・ナシオンも育ってるよなあ。
版を重ねるごとに音色が研ぎ澄まされていってる。ああ、楽しい。楽しいなあ。なんていい趣味を持ったんだ。古楽、素晴らしい!最高だ!」
 九階のクラシックコーナーへやってくる。
 レジ前には相変わらずセールの廉価版CDが並んでいる。
 それらには眼もくれずに、奥の売り場を目指す。
 そう。航が目指しているのは「古楽」売り場だ。
 それは輸入盤がメインで、ジャケットはもちろん、ライナーノートにも英語やドイツ語、フランス語の解説しかない。
 それでも航はその横文字溢れる輸入盤の海の真っ只中に入っていって、早速、いつも通りに、その棚の中を ―部の人間は“エサ箱”と呼ぶようだが― 探っていた。
 探る時はまず棚をざっと見渡す。
 タワーレコード新宿店の古楽コーナーでは、常に何かしらのイベントがある。
 特定のアーティストや演奏者をテーマにして、それに関連するCDをこぎれいに並べているのだ。
 今日のお祭りの主役はハルモニアムンディフランスのバロック物らしい。
 お馴染の黒を主体とした地味なジャケットに、アンモナイトを象ったレーベルのマークが見える。
「ほう、モンテヴェルディのマドリガ―レ集か。これはいい。おや、ラモ―の『優雅なインドの国々』か。これは今買ったほうが得だな。さて、シャルパンティエは何があるかな……」
 航は慣れた手つきで棚を漁り、これはと思う盤を取り出しては眺め、しまい、また取り出してはしまい、を繰り返している。
「αレーベルの、『極小編成によるプチモテさまざま』、これは買いだ。おや、ボノンチーニの歌曲集がある。買っていこう。だが待てよ……、ストラデッラのオペラ『スザンナ』がある。
こちらの方がよさげだな。さて、どうするか」
 棚の前で、しばし黙考する航。
 やがて、CDを漁るその手が、とある盤の所で止まった。
「これは……、こんな曲が出ていたとは……。『ルイ十四世の誕生を祝うヴェネツィアの晩課』、これはいい! ヴェネツィア楽派は好きなんだ。おや……、これは!?」
 そうしてふと、一枚のディスクを手にした。
「リュリの『王の病気快癒のためのモテット』。初めて聞くタイトルだな」
 それは宮廷の側室たちに囲まれた、ルイ十四世の肖像画をジャケットにしたディスクだった。レーベル名は「ジグザグ」とある。
「買ってみるか……」
 結局、十枚程のCDを手に、レジへと向かった。
「王の病気快癒のためのモテット」。
 その盤に一番期待しながら。


いい加減な話ですね。
ちゃんと調べて欲しいところです



308:この名無しがすごい!
11/04/26 02:41:14.13 5Q4aK93b
>>295
 駒場東大前駅は、もっぱら東大生しか降りない駅だ。
 渋谷から数駅。
 至極ロケーションの良い駅を降りること数分。
「駒場三毛猫ハイツ」に到着する。
 学習院大学に合格して、地元の鎌倉を離れ、東京で一人暮らしを始めた航は、この目黒区の駒場を、その生活の舞台にしていた。
「お前の合格は我が校始まって以来の快挙だ。しっかり卒業しろよ」
 そう恩師に言われたのが昨日のことのように思い出される。
 航はいわゆる義理がたい性格ではない。
 だからそんな恩師の言葉も忘れていればそれでいいのだが、なぜかその恩師の言葉だけは耳に残っている。
 鎌倉の自宅から運んできたCD700枚とともに、航は新生活を始めた。
 といっても、アパートであり、隣への騒音を考えると、とてもステレオでCDをガンガン掛けるわけにはいかない。
 そんなわけで、航はイヤホンをして聴いていた。
 これなら曲を楽しむことは十分可能だ。
 さて、買ってきたCDを開封してみる。
 クラシックファンなら、一度は味わうこのドキドキ感。
 大枚をはたいてかった一枚が、はたして当たりか否か。
 航は五才の時からクラシックを聴いている。
 初めは父の所有していたレコードを聴くことから始まった。
 小学校から帰ると、自室にあるレコードプレーヤーで世界名曲全集の類を聴く。
 ヴィヴァルディの「四季」、チャイコフスキーの「白鳥の湖」、ベートーヴェンの「運命」。
 やがて高学年になるにつれ、サン・サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」、ヘンデルの「オンブラ・マイ・フ」と進んでゆき、
中学生にロマン派に開眼。ベルリオーズやブラームスを聴きまくった。
 そして高校生ではオペラに開眼。
 ヴェルディ、プッチーニ、ベルリーニ、チレアなどのイタリアオペラを聴き漁った。
 そして大学ではバロックに目ざめた。
 きっかけはたまたま深夜に見た「王の舞踏会」という映画の宣伝だった。
 どうやらこの映画では、ジャン=バティスト=リュリという音楽家の人生を扱っているらしい。
 映画自体は単館上映のマニアックなもので、渋谷の映画館で放送しているという情報は手に入れたものの、さてどうやって観にいったらよいものかと、秋葉系の航は参った。
 結局映画は観ずに、そのサウンドトラックを聴くことになった。秋葉原の石丸電気で入手したのだ。
 CDを買ってきて、プレイヤーに挿入し、演奏を聴いた、その時である。
 第一曲目は、リュリの「テ・デウム」と書いてある。
 その曲をかけた瞬間、光り輝く太陽王の面影が、轟くトランペットと雅やかに鳴るフルート、リコーダー、そして力強い通奏低音と弦の合奏によって、奏でられた。
 それはある意味、「驚異」だった。
 それまでロマン派を好んで聴いていた航にとって、天上の楽園から降り注ぐ陽光のように、心を太陽の光でいっぱいにした。
 以来、大のバロック音楽ファンとなり、同時に輸入盤の虜となった。
「これは……、『アルミード』にも通じる抑えた感傷が素晴らしい」オーケストラはベルリン古楽アカデミーとある。ドイツの有力な古楽演奏団体だ。
「これは素晴らしい。さすがは国王に捧げられた曲だ」
 そんな風に思いながら、授業の疲れからか、いつの間にか、航は自宅のベッドの上で眠っていた。
 それはとてつもなく豪華な音のゆりかごだった。
三:シャルトル眼鏡同盟
「眼鏡、眼鏡、眼鏡の友よ。集まり騒いで浮かれよう。黒い眼鏡に紅眼鏡。青い眼鏡に緑色。グラスの色は様々で、そんな視線は色眼鏡。どんなものでも眼鏡をかける。我らは眼鏡の仲間たち……」
 先ほどから、こんな風な歌い文句を吟じながら、街の大通りを歩いている女たちの一団を、ジャンヌは不思議そうな面持ちで眺めていた。
 五十人ほどのその集団は、皆一様に眼鏡をかけている。
 黒い眼鏡に紅いガラスでできた眼鏡。青いガラスの眼鏡もあれば、緑色のガラスを使った物もある。
 ここはシャルトル。
 ステンドグラスが美しい大聖堂で有名なフランス北部の街だ。
 ここへやってきて、ジャンヌは真っ先に大聖堂へお参りをした。
 そして祈った。



どんどんスカスカになっています。大丈夫でしょうか? 
人物はよくかけていません酷いですね

309:この名無しがすごい!
11/04/26 02:43:25.25 5Q4aK93b
>>295
 この旅路が無事に終わることを。
 運よく腕利きのソプラノ歌手を見つけることが出来ることを。
 ジャンはというと、なにか楽想でも浮かんだのか、携帯用ヴァイオリンのキットを手に、先ほどからなにやら楽譜に音符を書き連ねている。
 そんな時に、この謎の一団は、まだ太陽の高い昼下がり、突如として街の通りに現れた。
「ここはシャルトル、古い街。巡礼の徒が訪れる、由緒正しい古い街。そんなシャルトル根拠地に、我らは集う、眼鏡の徒。眼鏡、眼鏡、眼鏡の友よ。集まり騒いで浮かれよう……」
「お兄様、あれは……」
「うん、まさか異教徒でもあるまい。なにかの秘密結社か?……」
「ちょっと、あなた達! こちらへ来なさい!」
 その女たちの先頭にいた、まだ齢二十代と思しき一人の女性が、シャルトル大聖堂の入り口にいたジャンヌたちを呼びとめた。
「我らになんの用だね?」
 そう答えるジャンに、女性は言った。
「あなた達、なにか探し物をしているのでしょう?」
 てだれの兵士が放った矢のように、その言葉はジャンの心の的に命中した。
「いかにもそうだが、あなた達は?」
「我らは、シャルトル眼鏡同盟」
「?」
 その答えが、返事になっていなかった。
 ジャンは一人、この不思議な女たちの集団を、好奇心に満ちた眼で眺めていた。妹のジャンヌもそれは同じだった。
「で、あんた達は一体何がしたいんだ!?」
「視線革命です!」
「視線革命?」
「そう、視線革命! 私たちは何か物を眺める時、少なからず偏見に満ちた色眼鏡で見ます。こうして今、どこからかやってきたあなたがたを見る時も、私たちは偏見という色眼鏡で見ている……。
そんな因習を打破するんです。私たちが掛けているこの眼鏡は偏見の象徴。唾棄すべき愚行です! そんな歪んだ眼差しを変えたい……。そう思って、私たちはわざと色のついた眼鏡を掛けて、
私たちがいかに物事を偏見に満ちた眼で眺めているかを表現しているのです……」
「なるほど。事情はわからんでもないが……」
「シャルトル眼鏡同盟は時代の先端を行きます! 偏見という歪みから抜け出て、新たな時代の真実を、この眼で眺めていきます!」
「では、そんな素敵なシャルトル眼鏡同盟様に、お聞きしたい事がある」
「ほう、なんです?」
 黒いサングラス越しに、相変わらず感情が読めない顔立ちで、女性は答えた。
「あんたがた、歌手を知らんかね? 女性歌手だ。ソプラノがいい。表現力豊かで、才能があって、自在に声を操るソプラノ歌手だ。我々はわけあって、腕の立つソプラノ歌手を探しているんだ」
「リヨンへ行きなさい!」
 直ちに、女性が答えた。
「リヨンへ行くのです! あそこはパリについで栄えている古い街です……。そしてその街の教会には、毎日、神さまへのお祈りを捧げる敬虔なカトリック教徒がいる……。
彼女の名はアルテュ―ル=ノワイエ。瑪瑙のように燃えていて、翡翠のように凛として、水晶のように硬いその声音は、天上の神さまに捧げるのにまさしくふさわしい。
ノワイエを探して旅を続けなさい!」
「これは有益な情報だ。どこからそれを!?」
 驚いて尋ねるジャンに、女性は言った。
「我ら、シャルトル眼鏡同盟はフランス各地に支部があります」
「そうだったのか。ありがとう」
 ジャンはジャンヌのもとへと戻ってきた。
「ジャンヌよ。これよりリヨンを目指すぞ」
「お兄様、リヨンに名歌手がいるって本当ですの!?」
「今は信じるしかあるまい」
 冬の陽が早くも傾きかけて、シャルトルの街を照らしている。
 ジャンヌとジャンは馬車に乗った。
「御者よ、リヨンへ行ってくれ」
「心得ました」
 馬に鞭を入れる御者。
 石畳の凹凸が、車内に直に滲んでくる。
 ゴトゴトと音を立てて、馬車は走りだした。



場面の連携が最低ですね。
小学生の作文のようです




310:この名無しがすごい!
11/04/26 02:46:35.42 5Q4aK93b
>>295
「お兄様、本当に信じていいの?」
「あの御人、吹っ飛んでいるようで、意外と知識はあると見た」
 馬車を見送りながら、眼鏡の一団は、再び街路を歩きだした。
「眼鏡、眼鏡、眼鏡の友よ。どうか一緒に来ておくれ。黒い眼鏡に紅眼鏡、青い眼鏡に緑色。そんな眼鏡を通して見れば、どれも偏見、ここにあり」
「あれは、新手の異教徒でしょうか?」
「わからん」
 馬車はひたすら進んでいた。
 ヴェルサイユを出てから程なく、このシャルトルに着いた。
 夜を徹して進み続けるこの馬車に、フランスの命運がかかっているとは誰も信じないだろう。
「お兄様、リヨンの街にも大聖堂があるのですか?」
「ああ。輝かしいキリストの教えはこのフランスを満たしているからなあ。どんな辺境の地にも、それなりの教会がある。そこにはオルガンの据え付けられた大聖堂があるだろう。
それにリヨンは出版で栄えている街だ。運がよければ、昔のモテットの楽譜に出会えるかもしれない。それを参考にして、作曲するとしよう」
 馬車はリヨンへと向かって走り続けていた。
「御者よ、もっと速く出来んのか?」
「これで精いっぱいでさあ」
 身体から湯気を立てて走る馬を見て、御者が返した。
「そうか。まあヴェルサイユを出てから不眠不休で来ているからな。馬も私たちも。御者よ、疲れてはいないか?」
「大丈夫でさあ、これこの通り、根性だけは負けねえです。はい」
 嘶く馬に鞭を入れながら、御者が答えた。
 四:失踪
 駒場三毛猫ハイツに客がやってきた。
 まだ年の頃は十九か二十歳と思しき娘で、グレーのコートに身をまとって、二階にある201号室のドアのチャイムを押した。
「いないのかなあ……?」
 娘はドアに耳を当てて、なにか気配がしないかと確かめた。
 今日は土曜日。それも十時半だ。
 有馬航は、休日には朝寝坊をするのが習慣だ。
 そんなわけで、こんな早い時間にやってきたことを少しだけ後悔した。
「まだ、寝てるのかなあ……」
 と、その時だ。
 隣の202号室のドアが開いた。
「あ、有馬君? なら寝ていると思うわよ。昨日またCDを漁ってきて、それを徹夜で聴くって言っていたから」
「あの、失礼ですが、あなたは?」
「ああ、自己紹介が遅れたわね。あたしは海江田真琴。東京芸大の楽理科に通っているの。ふとしたきっかけで有馬君の趣味が音楽だとわかって、すっかり打ち解けたわ。もう知り合って
一年にもなるかしら」
「そうなんですか」
「あなたは?」
「ああ、あたしは伊福部七海。航君とは小学生からの幼馴染で、よく一緒に遊んでいたんです。あたしは立教大で、キャンパスも近いから、結構頻繁にここへ通うようになって。実を言うと、
航君に訊きたいことがあって来たんです」
「まあ、なにかしら?」

 海江田真琴はその大きな眼を輝かせて、さも好奇心に溢れたかのように、七海の話を聞いている。
「大学のレポートで、西洋音楽史をテーマにした宿題が出たんです。航君は音楽に詳しいから、なにか参考になる意見をきけないかなって」
「音楽がテーマ? なら私でもお役にたてそうだわ。どんな課題?」
「十七世紀バロック音楽の作曲家で、もっとも重要なリュリの音楽について、その作風の変遷に触れながら、二千字で概説しろって。あたしバロックっていったらバッハかヘンデルしか
知らないでしょう? 困っちゃって。それで今日、航君に訊こうと思って来たんです。わかります?」
「ええ、リュリなら私も知ってるわ。時々演奏もするのよ。そうだ。今度聴きに来たらいいわ。場所は上野の奏楽堂ね。入館料は五百円とられるけど、演奏の鑑賞は無料よ。私、
来週の火曜日にコンサートをするの。そこでリュリの『王の病気快癒のためのモテット』を演奏するわ。オルガンでね。もちろんこれは編曲版よ。本当はソプラノ歌手がいて、ごく
簡素だけど楽器伴奏があるの。ねえ、どう? 聴きにこない?」
「それは願ってもないことです!」
 思わず笑顔をほころばせて、七海は答えた。
「で、そのレポートっていうのは?」
「あ、はい。これです」
 七海は手にしていたプラスチックのケースから、ホチキスで留められた数枚のレポート用紙を取り出した。




突然日本の話になってますが
よく読んでませんけど平気ですか?

311:この名無しがすごい!
11/04/26 02:48:46.66 5Q4aK93b
>>295
「うん……、普通の大学生さんには少々歯ごたえがあるわね。いいわ、有馬君の部屋で話しましょう」
「鍵、持ってるんですか!?」
「ええ、もう深い付き合いだもの」
 真琴はジーンズのポケットから取り出した鍵を差し込み、部屋を開けた。
「有馬君!いる? お隣の真琴よ!」
 部屋の中はしんとしている。
 昨日の夜には、カーテンを閉めずに寝たらしい。
 部屋には冬のか細い朝の光が差し込み、ベッドの上を照らしている。
 青い毛布の上には、十枚程のCDが、あるものは未開封で、あるものはすでに中身をさらけ出して、散乱している。
 どれも七海にはわからない輸入盤だ。
 そしてイヤホンが、壁際に置かれたステレオから伸びた黒いコードもそのままに、ベッドの上にあった。
「あれ……、いないのかなあ……。絶対寝てると思ったんだけど……」
 真琴がそう言って首をかしげた。
 まるでついさっきまでいたかのようだ。その証拠に、ステレオのスイッチはいれたままで、中にはCDが入ったままになっている。
「おかしいなあ、この曜日のこの時間には家にいるのが常なのに……」
「ねえ、真琴さん、これってもしかして、“失踪”じゃないのかな?」
「なんですって!?」
「失踪ですよ。失踪。だってほら、こんな不自然な状況で外出するなんて考えられないでしょう? ステレオのスイッチは入れっぱなし、CDも散らかしっぱなし。あれほど整理グセのある航君が
こんな状態にしておくなんて、考えられません。なにか事件に巻き込まれたのかも……」
「まさか……」
 真琴はそうは言ってもやや不安げに、呟いた。
 その顔からは明らかな狼狽の色が見てとれた。
「ね、警察へ連絡しましょう! 航君、なにか事件に巻き込まれたんだわ!」
「落ちついて!」
 真琴が制する。七海は続けた。
「だって、だって、こんな状況で、いきなりいなくなるなんて、ちょっと考えられないわ」
「でも、おかしな点が一つ!」
「なんでしょう!?」
「玄関に靴が置きっぱなし。もし外出したのなら、靴はないはずだわ」
 そう言って真琴が指差す玄関には、七海にもお馴染の、茶色い革製の有馬の靴が、キチンと並べて置かれている。
「ああ、ほんとだ。じゃあ航君はどこへ!?」
「わからないわ。でももしかしたら、誰かに拉致されたとか!?」
 真琴が答えた。
「このアパートって、六畳一間でしょう? トイレはこの通り無人だし、お風呂にもいないわ。ほんとに“いきなり消えた”っていうのがピッタリ」
「でもそんなことあるかしら?」
 七海の言葉に、すぐには同意しかねるように、真琴が答える。
「状況を整理すると、外にはいない。家にもいない。そしてCDがかけっぱなしになっている。うーん、七海ちゃん、これはちょっとわからないわ」
「あれ、この曲、もしかして私の弾こうとしている曲じゃ……」
 真琴がそう言って、開けっ放しになっている紙ジャケを手に取り、そのフランス語を呼んだ。
「モテ・プル……、ル……、デュ・ロワ」
 なにやら耳なれない言葉が、真琴の口から発せられた。
「間違いないわ。これは『王の病気快癒のためのモテット』よ。私が今度弾こうとしている曲だわ。でもどうやって知ったのかしら。私からは何も言ってないし……。偶然見つけたのかしらね……」
 玄関の靴と掛けっぱなしのステレオと、そしてCD。
 突然いなくなった有馬航の行方を巡って、二人の娘の協力が始まった。
「じゃあ、手を貸してくれるんですね?」
「ええ、もちろんよ。有馬君は私の大事な親友でもあるし」
 五:アヴィニョンの歌姫
「眼が醒めたか、青年よ」
「こ、ここは……?」
 ジャンとジャンヌが見守る中、一人の青年が、陥っていた深い眠りから目覚めた。
「あ、あんた達は一体!?……」
「それはこちらのセリフだ。青年よ、ここはリヨンだ。お前が街の大聖堂で倒れているのを見つけ、連れて来たのだ。一体どこから来たね?」



展開が稚拙
その上遅い。物語としては退屈ですね。


312:この名無しがすごい!
11/04/26 02:53:42.65 tICDcHfP
>>295
これ、お前のじゃないだろ
さすがにこういう真似はよせよ、フェアじゃない

313:この名無しがすごい!
11/04/26 02:55:47.26 5Q4aK93b
>>295
「リ、リヨン!?……。そんな馬鹿な。俺は駒場のアパートで……」
「コマバ!? なんだそりゃ?」
「え、駒場を知らない? そう言えば……」
 航はジャンとジャンヌを交五に見やり、彼らが異人であることに気がついた。
 そして自分の服装を見た。
 おかしい。私服を着ていたはずなのに、いつの間にかグレーのジュストコールにズボン、胸にはレースの飾りがあり、靴はハイヒールを履いている。
「お、俺は駒場から来た……、有馬だ。有馬航だ」
「事情はわからんが……」
 ジャンが言った。
「我らの使命の邪魔をせんで欲しいな。フランスの命運がかかっているのだ。ここリヨンに、腕の立つ歌姫がいると聞いてやってきたのだ」
「あなた達、名前は!?」
そう尋ねる航に、二人はそれぞれ名を名乗った。それを聞いて、航はさらに訊いた。
「上の名前は!?」
「リュリだ」
ジャンが答えた。
「ええy!?リュリ!?ジャン=バティスト=リュリ!?もしかして、『王の病気快癒のためのモテット』を作曲しているのではないかな?」
「なぜそれがわかった!?」
 ジャンが驚いて言った。
 これは密命だ。ジャンと妹の他には知る者はいないはずだ。
「それはこんな曲だよ。ミ、ミ、ド、シ、ソ、ソ、ラ……」
「青年よ! しばし待て! 紙と五線譜を用意する!」
 そうしてジャンは五線譜と羽根ペンを用意すると、航が歌った旋律を書き写し始めた。
「これはリュリの傑作だよ」
「なに!? リュリだと? お前、その名をなんで知っている!?……」
「なぜって、たくさんCDが出ているし……」
「CD……?」
 ジャンヌが不思議そうに繰り返した。
「青年よ。なにやら不思議なやつだが、我らとともに旅に出ないか? なに、ここリヨンまで来たからには安心だ。あの『シャルトル眼鏡同盟』の言うことが正しければ、
我らはこの地で最高の歌姫を手に入れることが出来る……」
「歌姫……。ねえあなた、名前は……」
「私はジャン。ジャン=バティスト=リュリだ。こいつは妹のジャンヌ」
「え!? あなたがリュリ!?……。アルテュ―ル=ノワイエという歌姫が、あなたの曲を歌っていますよ」
「青年よ、なぜその名を知っている!?……」
「リュリさん、あなたがいるということは、どうやらここは十七世紀のフランスのようですね。ライナーノーツに書いてありましたよ。いや、ライナーノーツというのは曲の解説ですがね。
リュリの若き日の傑作だって。ヴェルサイユの地で沼にはまり、肺炎になった国王の病気快癒を願って作られた曲だってね」
「まさしくその通り!」
 ジャンが言った。
「フランスが危ない。もう明日にでも国王がおかくれになったら、この豊かな女神はその優しい乳房を失うことになろう。我らの旅には、フランスの命運がかかっているのだ」
「で、歌手は見つかりましたか!?」
「それがまったく」
 ジャンが答えた。
「ここにいるのは間違いないのだが、なにせ大きな街だ。探すにしても骨が折れてな……」
 ジャンはそうして、まだ人も少ない早朝の礼拝堂を眺め、嘆息した。
「一体これはどうしたことだ?」
 航は自問した。
 その時だった。
 夜明けの礼拝堂へとやってきた一人の少女がいた。
 彼女は堂の中に入ると、恭しく長椅子に座り、 朝の祈りが始まるのを待っていた。
リュリはそんな少女に近づくと、こう訊いた。
「娘よ、そなたに物を尋ねたい。アルテュール=ノワイエという女性歌手を知らんかね?」
「な、なぜその名前を!?……」
 少女は明らかに狼狽の色を見せながら、その長い金髪を暗い礼拝堂の中に輝かせていた。



わけわかりませんねコレ。
冒頭からここまで徹頭徹尾自己満足で誰に読ませようと思っていますか?

314:この名無しがすごい!
11/04/26 02:58:28.70 5Q4aK93b
>>295
「アルテュ―ルは、私の姉です。でもあなた、姉は異教徒なんです。姉はカトリックの威信を恐れて、南仏にいます」
「南仏だと!?……。南仏のどこだ?」
「誰にも言わないと約束してくれますか?」
 切々と祈るその娘に、ジャンは答えた。
「ああ、約束する。お前の姉が異教徒だということは、国王にも秘密にしておく」
「では申し上げます。アヴィニョンです。アヴィニョンの丘の上の、人もよらない廃墟の中で、姉は暮らしています。
「アヴィニョンか……」
 ジャンはその言葉を反芻すると、やがて少女に礼を言った。
「ありがとう少女よ! ではジャンヌ、そして、ええと、名前はなんといったかな」
「有馬です。有馬航」
「おお、有馬だ。行くぞ。二人とも。アヴィニョンを目指して」

 リュリがそう言ってから、夜を日に継いでの大旅行が始まった。
 御者は馬に鞭を入れ、身体から湯気をだして走る馬を駆った。
 航は一体自分がなぜ十七世紀のフランスへとやってきたのか皆目見当もつかなかったが、必死になって歌手を探している二人を見て、とにかくこの二人の力になってやりたいと思っていた。
それゆえ、突然の長旅にも同行したのだ。
「ねえお兄さん、あなたは眼の色が黒いわね。一体どこの人?」
 そう尋ねるジャンヌに、航は答えた。
「日本だよ」と。
「日本? どこ、それは? どこにあるの?」
「あの太陽の昇るところさ」
 そうして、暁光に滲む東の空を眺めた。
「なあ青年よ。お前が聴いたという、アルテュ―ル=ノワイエの歌声は絶品だそうだな。我らに聖セシリアの御加護があらんことを! どうかその気高き歌姫と我らを会わせたまえ」
 馬車はフランスを縦断し、リヨンから、一路、アヴィニョンへと向かった。
 途中、オーヴェルニュで宿をとり、一晩休んだ以外は、ひたすら馬を駆る、旅が続いた。
 身体を揺さぶる石畳の激しさに、何度ひどい疲労を覚えたことだろう。
 それでもジャンたちは馬を走らせた。
 そうして旅をすること一週間、とうとうジャンたちはアヴィニョンに着いた。
「着いた!着いたぞ! アヴィニョンの地、神の歌声を持つという歌姫の居場所に!さあ、探そう。ノワイエを!」
 そして二日、航はジャンヌとともに、アヴィニョンの街をさまよい歩いた。
 そして街の司教から、ノワイエの居場所を突き止めることに、ついに成功した。
「あれは異教徒だからなあ。アルビジョワの徒だ。ここ南仏ではいまだに異端の教えが根強く残っているからなあ。魂の洗濯がなっておらん娘じゃ……。音楽? ああ、確かにあやつは
美しい歌声を持っておる……。あ奴に会いたかったら、街の外れの廃墟に行け。そこに野良猫と共に住んでいる」
「リュリさん、行こう!」
 航が言った。ジャンはその知らせを聞いて、すぐさま街はずれへの道をたどった。

 六:音のラビリンス
「航ったら、あたしが知らない曲ばっかり……」
 航の部屋のCDラックを見ながら、半ば呆れたように七海が言った。
「輸入盤だからね。七海ちゃんみたいに音楽に詳しくない人にはわからないでしょう」
 真琴はそう言って、棚から何枚かのCDを取り出すと、プレーヤーに入れ、それを奏でた。
「あ、この曲は知っている!」
 ヴァイオリンのユニゾンが強烈な、緊張感が溢れた一曲が演奏された。
「ヴィヴァルディの『四季』の、『夏』よ。これはとても有名だから、七海ちゃんでも知っていると思うわ」
「これは!?」
 七海はそうして、紙ジャケのディスクを取り出した。
「コレッリの『教会ソナタ集』ね。これはとても静かな良い曲よ」
 ジャケットからCDを取り出すと、それを再生した。
「うわ、凄い……。なんか、冬の日の陽溜まりみたい……」
「コレッリは室内楽曲が真骨頂だからね。これは名作よ」
「で、真琴さん、航君は一体どこへ!?……」
「そうね……。家から出ていないのなら、どこかこの世界ではない場所。もっと言えば、『異次元』にでも行ったのかしら」
「異次元!?……」



異次元はお前の頭だろというツッコミを何度もしてしまいましたが
基本的な文章が意味不明なようです。日本語から勉強しましょう


315:この名無しがすごい!
11/04/26 03:00:33.21 5Q4aK93b
>>295
「じょ、冗談よ! 有馬君がそんな小説みたいなことになるなんてありえないわ。でも……」
「でも、なんです?」
「でも、そうとしか思えないわね……」
「ねえ、真琴さん、あたし思うんだけど、航君って、CD漁りが趣味でしょう? あたしにもそれを教えてほしいな。必死になってCDを漁っている人の気持ちが知りたいの。ね、良いでしょ? 
芸大の人なら、輸入盤のCDを漁ることぐらいたやすいわよねえ?……」
「そうね。有馬君は恐らく、『音のラビリンス』へ迷い込んだようだわ。それがなんであるか私にもわからないけど、この東京の、新宿に、渋谷に、秋葉原に、音のラビリンスがあるわ。
そこへ行けば、私たちにも有馬君の居場所がわかるかも」

「うわーっ、すごいCDの量! これがタワーレコードのクラシックフロアなの!?」
「こんなので驚いていたのでは駄目よ。こんなの朝飯前。有馬君はいつもこの『音楽の海』を渡っているのね」
「ねえ真琴さん、『運命』ってどこにあるの?」
「ベートーヴェンならこの辺に」
 真琴はそう言って、七海をCD棚の前へと連れていった。
「え!? なにこれ!? なんで二十枚もあるの!?……」
「クラシックはね、七海ちゃん、指揮者、演奏者によって全然違う曲になるのよ。たとえばこれ、カラヤン指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団のものと、ギュンター=ヴァント指揮、
北ドイツ放送交響楽団のものとでは、音色がまるで違うのよ。ほかにも、リッカルド=シャイー指揮、カルロ=マリア=ジュリー二指揮、ホルスト=シュタイン指揮と、いろいろな盤があるわね。
『運命』は有名な曲だから、国内盤だけでも相当な数があるわ。輸入盤にしたら、それこそもう無限よ」
「『第九』は!?『第九』のCDは?」
「それはここ」
 そう言って真琴が指差した個所には、五十枚ほどの『第九』のCDがあった。
「バーンスタイン指揮、ウィーンフィルのは定番ね。ショルティ指揮のもあるわ。シノーポリ指揮もあるし、朝比奈隆の大フィル盤もね。これだけメジャーな曲になると、選ぶだけでも一仕事ね」
「で、航君がいつも聴いているという『古楽』はどこに!?……」
「それはこっちよ」
 真琴は七海を、売り場の一番奥、古楽コーナーへと連れていった。
「古楽を聴く人はね、七海ちゃん。普通の人が聴くクラシックはもう一通り聴いたという人が多いのよ。ブラームスとかシューマンとか、チャイコフスキーとかシューベルトとかマーラーとか、
ブルックナーとかツェムリンスキーとかね。そうやって、十九世紀型の大曲を一通り聴いた人が、ふとしたきっかけではまることがある……。そんなジャンルなの」
 初めて聞く作曲家も多い。
 そんな真琴の説明に、軽い眩暈を覚えた七海だったが、気をとりなおして、古楽の話を聞いた。
「例えばヴィヴァルディなら、こんなのがお勧めよ」
 真琴はそう言って、紙ジャケのCDを一枚、棚から取り出した。
 サンマルコ寺院を背景にしたヴェネツィアの街が描かれている美しいジャケットだった。
「これにはヴィオールのための協奏曲集が収録されているの。ヴィオールって知ってる? 今のチェロが近いわね。大型のヴァイオリンがイメージしやすいかも」
「ヴィオール……」
「そうだ。ヴィオールを聴くならこれがいいわ」
 真琴はまたしても新しいCDを取り出した。
 十七世紀風の白いかつらをかぶり、ベージュ色の服を身にまとった演奏者らしき人物が描かれている。
「これはマラン=マレの『サント・コロンブ師への弔辞』よ。極力削った合奏体とヴィオールの演奏が素晴らしい一枚だわ。ちょっと通向けだけどね」
「サント・コロンブ……」
「あら、ごめんなさい。つい独走しちゃって。有馬君とならいつもこんな調子よ。あ、これもいいわね」
 真琴は白地に黒い文字で、なにやらサインが走り書きされた一枚を取り出した。
「ジャック=シャンピオン=ド・=シャンボ二エールのクラヴサン曲集。これは珠玉の逸品よ」
「はあ……」
 未知の名前の洪水に、危うく溺れそうになる七海。
「で、航君はどこへ!?……」
「そうね。こうやってCDを漁って、たまたま聴いたCDが原因で、どこかへ行ってしまったのかも。もしかしたらね、七海ちゃん、音の海へと漕ぎだしていって……、そうだわ! 
思い出した。有馬君は『オリジナル楽器』の演奏にこだわっていたんだっけ」
「オリジナル楽器!?……」




よくわからない単語が続きます。読んでいて苦痛ですね。
説明は簡潔にそして丁寧に。ひとりよがりでは誰も読みません。



316:この名無しがすごい!
11/04/26 03:02:39.82 5Q4aK93b
>>295
「そう、オリジナル楽器よ。楽器というのはね、七海ちゃん、たとえクラシックのような古い物であっても、変化しているものなの。ヴァイオリンとかは三百年前のものがそのまま残っているけど、
フルートは金属にかわって、オーボエもストップがついたりして、変わっているものなの。バロックは三百年前の曲だから、当然それを弾く楽器も、当時のそのままを再現したものが理想的ね。
音がまるで違うもの。だからね、七海ちゃん、有馬君はそんなオリジナル楽器による演奏を追及していたわ。そうしているうちに、どこかこの世界とは別の次元の世界へと移ってしまったのかも……」
「音のラビリンスから、そこから抜け出す方法はないんですか?」
「本人が好きで行ったのだからね」
 こともなげに、真琴は返した。
「戻ってくるのを待つしかないわ。はっきりしているのは、有馬君はこの世ではない、どこか別の世界へと行ってしまったのではないかということ。それがどんな世界かはわからないけど」
「いつに、いつになったら戻ってくるかしら?」
「さあ、それはわからないわね」
 二人はそれから、渋谷のHMVと秋葉原の石丸電気へと行った。
 CD棚を見るたびに、真琴の講釈が行われたのは言うまでもない。
「航君……、一体どこへ行ったの?……」
 暮れなずむ秋葉原の空を眺めながら、七海が呟いた。
 真琴は一人、そんな七海のそばにいて、一緒に夕焼けの空を眺めていた。
「帰ってくるって」
 真琴が言った。
 七海は静かに聞いていた。

 七:異端の肖像
 アヴィニョンの街はずれ、街を囲む山々の中腹、洞窟の入り口に、ジャン達はやってきた。
「ここに……、ここにノワイエが住んでいる……」
 呟くジャンヌ。
「どれ、早速入ってみよう」
「待って、ジャンさん!」
 有馬が止めた。
「相手は謎の歌姫ですよ。それにここは異教徒の牙城のような場所。僕たち三人だけで乗り込むのはいささか危険じゃないですか?」
「今は一刻を争う事態だ」
 リュリは先頭に立って、航たちに言った。
「それはそうだけど……」
「さあ、行くぞ! アヴィニョンの歌姫に会いに行くのだ」
 そうして松明を持つリュリ。
 そのか細い光を頼りに、三人は薄暗い洞窟に入りこんだ。
「鍾乳洞だな。どこかに地下水があるらしい。水の音がする」
「お、お兄様!」
 急にジャンヌが悲鳴を上げた。
「どうした!?」
「猫よ。黒猫! 不吉だわ! お兄様、ノワイエという人は魔女ではないかしら?」
「案ずるな、妹よ。ルイ九世の御代に、アルビジョワ派など異端は一掃されたのだから」
「ジャンさん、相手は正体不明の輩です。油断しないほうが……」
「まあ、ついてこい」
 ジャンが一蹴した。
 暗闇を松明の光が穿っている。探るように進むジャン。
 やがて、ほのかに明かりが滲んだ場所へやってきた。
「誰だ!?」
 どこからか声が上がった。
「ここにアルテュ―ル=ノワイエという歌手はおらんかね」
「お前は誰だ?」
「私は、ジャン=バティスト=リュリ。フランス国王つきの宮廷音楽家だ。ノワイエはどこにいる?」
 やがて声の主がやってきた。
 ボロボロの麻の服をまとい、一見すると乞食にしか見えないその男は、ジャンを頭のはしからつま先まで、まざまざと眺めた。
「そんな奴はおらん。帰ってくれ!」



登場人物の誰がしゃべっているのか不明です
非常に苦痛ですね




317:この名無しがすごい!
11/04/26 03:04:51.13 5Q4aK93b
>>295
 そう言って踵を返し、また闇の中へと帰ろうとする男に向かって、ジャンが叫んだ。
「お前、今はフランスの運命がかかっているのだ。そなたらの奉ずる教えが異端であろうとなかろうと、構わない。私はただ、この世の最高の音楽にふさわしい歌声を持った歌手が欲しい。
国王の御前で演奏をする。そこで一曲歌ってくれれば、それで十分なのだ」
「そんなこと言われてもな。魔女狩りにでも遭ったらどうしてくれるね? とにかく帰ってくれ」
「ジャンさん、ここは引いた方が……」
 航が言った。
「そうよお兄様、また日を改めて、ね?」
 ジャンはひどく不満そうだったが、やがて男の岩のような重い態度に、元来た道を引き返した。
 その日の夜である。
 ジャンたちは、洞窟の入り口で、野宿をしていた。三人並んで、入り口で眠っていたのである。
 月の明らかな晩だった。
 空は黒く澄みわたり、星空が、真珠のように煌めいている。今にも地上に落ちてきそうなほど、鮮やかな星の群れは、過ぎ去りし太古の英雄や神話に生きた神々の想い出を秘めて輝き、
この夜の主役である月の美しさを一層素晴らしいものにしていた。
「あの星のように……」
 ジャンが言った。
「音楽とは、無数の星々の中からそのいくつかを選び出し、星座へと結実させるかのように、無数の音から、その一つ一つを選んで、音楽にしていくんだ。音楽とは音の星座だ。
それは時として勇ましい英雄であり、悲しみを秘めた王女であり、若さに溢れる娘たちであり、人生の教訓に満ちた老人である。私の音楽は星座の如く輝く……。その輝きには、
アポロンの御加護がある」
 ジャンがそう言った、その時だった。
 一人の人間が、洞窟から出てくると、空を見上げた。
 そして星空に向かって、突然、歌いだしたのだ。
 それははっきりとジャン達に聞こえた。
 降り注ぐ月光の中で、星空と、心地良い夜の闇を歌う声が、しんとした空気に刺繍のように縫い込められていった。
 美しかった。
 それは夜泣き鴬のように可憐で、月のように静かで、星のように輝いて、夜空のように無辺の深さに満ちていた。
 これぞまさしくミューズの歌声だ。
 航がそう感じた時だった。
 傍らにいたジャンが、彼女に声をかけた。
 娘は驚いて、歌をやめた。
「いや、やめなくていい。やめなくていいんだ。そなた、名は、恐らくノワイエだろう。今の歌声、まことに見事だった。その歌声に託して、頼みたい事がある。ヴェルサイユへ来てくれ! 
国王が危ないのだ。病にかかって生死の境をさまよっている! 私は音楽の神、アポロンの御加護によって、その病を治そうと、この世の最高の音楽を捧げることにした。それを歌うのは、
やはりこの世の最高の歌手でなくてはならんのだ。頼む! この私に免じて、ヴェルサイユに来てくれ! 頼む!頼む!」
「お気持ちはわかりますが……」
 ノワイエが返した。
「私は異教徒です。ヴェルサイユなどへ行ったら、魔女裁判にかけられます。私はこのアヴィニョンの地で生きていこうと決めたのです」
「それは案ずるな」
 ジャンが言った。
「そなたは恐れ多くも勅令で国王の御前に召しだされる賓客だ。なに、一曲歌ったらすぐ帰っていい。そなたには指一本聖職者の指は触れさせない。だから頼む! 是非来てくれ! 頼む! 頼む!」
 ひたすら押しまくるジャンに、ノワイエはふと、その眉が緩んだように見えた。
「わかりました」
 ノワイエが言った。
「ヴェルサイユへ参ります。こんな私でも国王のお役に立てるなら、それも何かの巡り合わせでしょう。連れていってください。国王の御元へ」
「ありがとう!!」
 ジャンは少年のように叫んだ。
 そして直ちに馬車に乗るように、ノワイエに促した。

 八:名盤を探せ!
「え、決定版!?……」
「そうよ、決定版を探しに行くの。有馬君のたどったであろう道を進めば、なにか手がかりがつかめるかもしれないわ」
 二月も終りに近いある日、海江田真琴は七海を誘った。
 待ち合わせは秋葉原の万世橋だ。



物語の目的が見えません。ここまでよんで何も得るものが無い。
狂人の妄言ですかねこれ。

318:この名無しがすごい!
11/04/26 03:07:11.05 5Q4aK93b
>>295
「ナイーヴレーベルから出てる、サント・コロンブのヴィオール曲集のTomeⅡよ。そしてシャルパンティエのテ・デウムのクリスティ盤、クープランのクラヴサン曲集よ」
 次々と発せられる未知の言葉の洪水に、危うく溺れそうになった七海。
 しかし、そこは航の幼馴染。しっかりと元のテンションに戻ると、こう返事した。
「行きましょう。東京中を探し手でも、入手しましょう!」
「そうこなくっちゃ」

 銀座の山野楽器のクラシックフロアは、ズラリと並んだ輸入盤が溢れる、まさに「通」向けの店舗だった。
 真琴がいなかったら、オロオロして、まともに来ることはなかったろう。
「ほら、ここが輸入盤コーナーよ」
 真琴がフロアの一隅に七海を連れてきた。
「テ・デウムね、シャルパンティエだから、ここにあるはず……」
 サ行の作曲家の個所を人差し指でなぞる。
「死者のためのミサ曲、真夜中のミサ曲……、うーん、ないなあ、あ、待てよ!? ここに声楽作品集がある!」
 それはハルモニアムンディフランスの、風景画が描かれた五枚セットのCDボックスだった。
「主の御降誕のためのカンティカム、あった! 七海ちゃん、ここにあるわ!シャルパンティエのテ・デウム。これはお買い得な品ね。今日は幸先がいいわ」
 全く未知の単語に出会い、七海は茫然としていた。
「あ、そうだった。七海ちゃんはバロック聴かないのよね。シャルパンティエはね、十七世紀フランスバロック音楽を代表する作曲家よ」
「はあ、そうなんですか……」
 砂糖抜きの紅茶を飲むような気分だ。お茶は確かに口を通り、胃の中に入っていくのだが、いまいち、味がわからない。
「じゃあ次は、渋谷のHMVね。行きましょう!」

 山手線の車中、七海は真琴に訊いた。
「ねえ、真琴さん、こうして航君と同じように輸入盤漁りをしていれば、いつか航君が行った世界に入れるのかな?……」
「それはどうかしら」
 真琴はさらりと返した。
「CD漁りは名曲の海の中を行く航海のようなものよ。当たりに巡り合った時はまさに財宝を見つけた海賊ね」
 渋谷の街は、スクランブル交差点に人が溢れ、東京でも有数の活気を呈していた。
 HMVの店内に入るや否や、真琴はまたしてもその猟犬のような鼻をきかせて、輸入盤コーナーへと向かった。
「サント・コロンブ、サント・コロンブ……、あ、あった。ああ、残念、TomeⅡはないわ。店員さんに訊きましょう」
 数分後。
「そうですか。廃盤……。残念です」
「ねえ、真琴さん、元気を出して」
 七海がそう言うが、真琴が至極がっかりした様子だ。
「残念ね……。あれはサント・コロンブの魅力がわかったものの必聴盤よ。私、TomeⅠは持ってるから、Ⅱも是非欲しかったんだけど……」

 昼休み。休憩のために入った神田の喫茶店で、真琴は今朝買った、シャルパンティエの声楽作品集をまざまざと眺めていた。
 その眼は獲物を探す狼の眼のようで、傍らにいる七海にもドキドキした緊張感が伝わってきた。
「こうなったら秋葉原に賭けるしかないわね。石丸電気の秋葉原店なら、在庫量が豊富だから……」
「いつもそんな感じで航君と?……」
「ええ、そうよ。私もバロック音楽は好きだから」
 ホットミルクティーを飲みほした真琴に、七海が尋ねる。
「ねえ、真琴さん、あの人、知ってます? さっきからずっとあたし達の跡をつけてきてるんです」
 七海はそう言って、斜め向こうの席に通路を挟んで座っている一人の老紳士を眼でそっと示した。真琴は気づかれぬように、さらりと一瞥を与えた。「そうね。何者かしら」

 二人は秋葉原へ向かった。
 神田の古書店街から秋葉原へは、歩いて十五分程だ。
 二人が歩いていると、例によってあの紳士が、黒い杖をつきながら歩いてきた。
「クープランのクラヴサン曲集、廃盤!? 在庫はありません?」
「少々お待ち下さい」
 店員がパソコンで在庫確認をしている間、真琴は意を決して、ピアノ曲売り場の棚の棚の前にいたその老紳士に声をかけた。
「あの、私たちになにか用ですか?」
 紳士は初め、ひどく狼狽していた。が、やがて覚悟を決めたのか、落ち着きを取り戻すと、こう言った。
「実は私はね、アポロンなのですよ」



そろそろ飽きてきたのでやめましょうかね。
ピアノがどうこう言ってるあたり最高につまらなかったです。他作品もあるようなのでそちらも感想書きたいですね。
また訳の分からない引用感想があるようなら後半も是非とも感想書きたいです。

319:この名無しがすごい!
11/04/26 03:10:04.47 U4RyuN3X
とりあえず
URLリンク(www5.pf-x.net)
の作者の事がわかった

320:この名無しがすごい!
11/04/26 03:25:16.71 TV4qEk0w
>>319
どういうこと?

あとこれ↓の解説もお願い


293 :この名無しがすごい!:2011/04/26(火) 00:34:54.55 ID:U4RyuN3X

これは作者自らが公開してるけど、親が見たら褒めてくれるのかな?

URLリンク(www5.pf-x.net)



321: [―{}@{}@{}-] この名無しがすごい!
11/04/26 04:13:49.41 eeUmsjzf
>>318

飽きた ×

疲れた ○

^^

322:この名無しがすごい!
11/04/26 06:05:04.74 5S0yXwDU
僕の一言でスレは動き始めた。そして、荒れた



323:この名無しがすごい!
11/04/26 07:42:38.98 f67GQi1n
音楽好きだから読めたけど、気分的には教科書読んでる感じ。
ようは延々うんちくなんだな。ノベルじゃなくて。

324: [―{}@{}@{}-] この名無しがすごい!
11/04/26 14:11:28.95 eeUmsjzf
感想を求めている人は、感想を付ける人が具体的にどこの部分に対してどう思っているのかを知りたいと思うので、
しっかり文章を引用して、自分がどの辺りに対してどう思ったのかを書くからね^^

そうする事で、感想を求めている人は一層理解しやすくなるよね^^


325:この名無しがすごい!
11/04/26 14:52:16.60 oEosfaD9
>>324
>(感想を求めている人)は、(感想を付ける人が)(具体的にどこの部分に対してどう思っているのか)を(知りたい)と思うので、
>(しっかり文章を引用して、自分がどの辺りに対してどう思ったのか)を(書く)からね^^
お前の文章意味不明過ぎ。文章構造が破綻してる。

326:この名無しがすごい!
11/04/26 15:02:43.52 MNqzsEoL
串はNG登録しているんだからレスするなよ

327: [―{}@{}@{}-] この名無しがすごい!
11/04/26 16:03:45.74 eeUmsjzf
>>325
>>1読め荒らし^^

328:この名無しがすごい!
11/04/26 17:41:11.91 wDCz5gVt
【アドレス】URLリンク(www5.pf-x.net)
【ジャンル】
【タイトル】浅草夢幻譚 凌雲閣の女
【評価基準】おもしろいか
【改稿】OK

じゃあ俺も

329: [―{}@{}@{}-] この名無しがすごい!
11/04/26 22:09:03.98 eeUmsjzf
^^

330:この名無しがすごい!
11/04/26 22:11:12.34 U4RyuN3X

「バトルティータイム」と「海に捧げるコンチェルト」は使うなよ

紅茶先生に悪いし

さすがにお前等にもそんな勇気は無いか

331:この名無しがすごい!
11/04/26 22:19:20.20 wDCz5gVt
【アドレス】URLリンク(www5.pf-x.net)
【ジャンル】
【タイトル】バトルティータイム
【評価基準】おもしろいか
【改稿】OK

こっちか

332:この名無しがすごい!
11/04/26 22:54:02.62 U4RyuN3X
さすがにそれはないだろうけど言っとく

331の引用は止めろよ

333:この名無しがすごい!
11/04/26 23:02:37.94 ZZJoH3Cg
>>328
 あなたを買ってから十日になります。でも僕はまだ手を握ることも、抱きしめることも出来ない。声を聴くことも出来ない。いったいどうして、僕達は出会ってしまったのでしょう。
こうして一緒にいても、話しかけることすら出来ないあなたに、何故、出会ってしまったのでしょう。
 忠晴はそう思いながら、部屋の寝台に仰向けに寝た。
 眠れない夜にも、風が暴れまわる嵐の夜にも、忠晴は彼女のことを想っていた。それは絶えず燃え続けるフィラメントのように、心の中でじくじくと疼き、忠晴の胸を焼いた。
その胸は常に生生とした火傷に喘いでいた。
 火照った顔を、枕に埋める。うつ伏せになり、寝台に敷かれている布団を歪める。
 忠晴は寝台の上で、毛布を抱いた。そうして女性を抱く時の感触を試した。
 あなたの体もきっと、この毛布のように柔らかいのでしょうね。
 忠晴は囁いた。毛布に鼻を埋め、目を閉じる。冬のように近づいてくる眠気が身体を浸す。忠晴はその中にたゆたい、瞼(まぶた)の奥に心地よい眠気が降りるのを感じる。
眠りは心の番人だ。心の中に入ってくる原色の感情を整理し、必要の無い物、害をなす物を追い払う。全てをセピア色に変えて、額縁の中に押し込める。だが彼女だけは別だった。
眠っても眠っても、その姿は色褪せる事無く、かえって艶(なまめ)かしくなりながら、忠晴の心に住んでいる。大いなる眠りの平和な力も彼女にだけは及ぶことが無かった。
錆びた感傷を飲み込み、溶解して心を整える眠りまでも、彼女の前には悲しいほどに無力だった。
 ああ、いっそのこと、出会わなければ良かった!
 忠晴は思った。毛布を抱きながら寝台の上で震えていた。

忠晴は街に憧れていた。
それは屋敷での倦怠感を吹き飛ばし、鬱勃(うつぼつ)とした孤独感を跳ね返す街だった。胸の中で太陽のように輝き、前に向かって歩くことを考えさせる街だった。
浅草。この言葉は、淀んだ忠晴の胸に流れ込んできた。その中に顔を埋め、手で水を掬(すく)い、その清水の一滴までをも飲み干したかった。
初めて忠晴がこの街のことを知ったのは、学校の休み時間、同級生との会話がきっかけだった。
「活動を知らない?そんな奴がいるんだな」
彼はそう言って、さも自慢げに、どこぞの敵討ちだの嫁入りだのの話を、活動の活動弁士を真似ながら、濁った声で、その場面、場面を再現した。
浅草へ、活動を見に行きたい。
それが忠晴が浅草へ恋焦がれるきっかけだった。
「活動の他には何があるの?」
するとまたその同級生は得意げに言った。
「浅草には花屋敷がある。仲見世通りがある。大きな池がある。そこに藤棚の美しい池の橋がある」
それぞれの言葉が弾けていった。
そういう言葉を聞くうちに、浅草という言葉は、忠晴の中で根付き、根を下ろして、成長していった。六区の賑わいだとか、花屋敷という言葉が、その梢を茂らせ、幹を逞しくし、
木陰を黒く大きくしていった。その広い木陰で、池の中洲にかかる藤棚の美しさを、花屋敷の楽しさを、百美人の艶(あで)やかさを思い描いた。
浅草へ行きたい。忠晴は思った。
忠晴は九段の暁星学園に通っていた。その通学の足となるのは、運転手の山川が運転する黒塗りの自動車である。
もう六十にもなろうかというこの老人は、郷里の滋賀のことなどを話してくれた。

一日の課題を全て終え、学園の門の前で車に乗ったとき、忠晴は山川に行った。
浅草へ行きたい、と。
山川は言った。
「若様、浅草はいけません。浅草は。あれは若様のようなお方の通う街ではありませんよ。この山川、お父様からもよく言われているのです。蛾のような街にこの子を連れて行くなと」
昼の蛾のような街!この一言で、忠晴が描いた夢は一蹴された。忠晴は言いようの無い怒りを覚えたが、それ以上何を出来るでもなく、ただ山川のハンドルのままに、いつもと同じ道
を引き返して
、屋敷に帰るだけであった。帰り道に寄り道も無い、観光もない簡素な運転が、忠晴を連れ帰った。
こうなったらなんとしても、浅草へ行く。
忠晴はそんなふうに思った。



一行目から読み辛い

334:この名無しがすごい!
11/04/26 23:06:54.59 ZZJoH3Cg
>>328
そんな六月のある日、山川は朝から具合が芳しくなかった。彼は、急遽呼ばれた屋敷つきの主治医から、急性の心臓疾患の診断を受け、当分の間、仕事にはつかぬよう言われた。
動揺したのは母の静江であった。山川がいなければ、あの子は学校へ行けない。代わりの運転手も、そう早くは手配できそうにない。
忠晴は言った。
「僕がこの足で、学校まで通います」
初めは大反対だった。
「切符も買ったことが無いお前がどうやって学園まで行けるというの?」
「お母様、どうかお許しください。僕は一人で学校へ行って見せます。切符なんて簡単ですよ」
忠晴は言った。
最終的には、父の洋助が判断を下した。そうして数枚の一円紙幣が入った財布が、忠晴に渡された。
「これも、お前が一人前になる機会かもしれん」
洋助は言った。
初めて歩く街路は、甘い夢だった。髪を結った女性、洋装の紳士、杖に下駄履きの老人などが右往左往し、自動車が、路面電車が、道々に溢れていた。
もちろん忠晴は、学園などに行く気はなかった。
目指すは浅草だ。路面電車を待った。
その時忠晴は、東京市街の地図を手にしている訳でも、電車の沿線にどのような駅があるかも知らなかった。だからどうしたら浅草へ行けるかと、車掌に訊いた。ひたすら電車を乗り次いだ。
降りては待ち、来ては乗り、また降りる、そんなことを繰り返すたびに、街の顔が変わっていった。最後に乗った両国行きの電車の、広小路停留場が、小旅行の最後の駅になった。
浅草へ着いた。これは夢ではない。本物の浅草が、今、彼の目の前で繰り広げられていた。忠晴は地面を踏みしめ、浅草の中へと入り込んでいった。
それにしてもなんと音の多い街だろう。下駄の音が、草履の音が、そこらここらに交わされる言葉が、渡り鳥の群れの羽音のように、地上に轟いていた。左手には恐らく三階建てであろう楼閣が、
夏の日盛りの下、甍を誇っている。その手前には、西洋風にあしらわれた水色の駐在所が、花の無い花瓶のように空疎に置かれている。正面に見えるのは仲見世だ。入り口には檜の高札が
建てられ、途方も無く大きな字で、「開帳」と書かれていた。
 およそあらゆる人種の百科事典とも言える雑多な人々が、仲見世通りを動いている。そこは奇態な色の展示場だった。軍人あり官吏あり、駐在の警察官あり。そして数多くの女たち。
あるものは芸者であったり、あるものは仲見世見物へと繰り出した洋装の婦人であったり、あるものは制服の眩(まぶ)しい女学校の生徒であった。 彼女らは笑いながら、仲見世を歩いている。
仲見世にならぶ商店は何れも堅牢な煉瓦造りで、店先には、二階部分にバルコンを配し、欄干を花で飾り、人形を置いている店あり、一枚の大きな紺色の暖簾に、店の家紋と扱う品々
を書いた店ありと、進んでも進んでも、店が続いた。塩、しょうゆ、鰹節、昆布、煎餅、餅菓子、団子の匂いが、一帯を領している。そうして上を見上げると、高い木の木陰に半ば姿を埋めて、
浅草寺の赤い山門が、巍巍としてそそり立っていた。その左手には凌雲閣の先端が見えた。
 浅草寺の朱塗りの山門は、鮮やかな丹の色をして凝っている。褪せた瓦を連ねて、凛として佇んでいる。忠晴は山門を過ぎた。
 忠晴の靴が砂利を踏み、浅草寺の境内へと入ると、まず右手に聳(そび)え立つ五重塔が眼を惹いた。紅白染めの大道芸人の小屋の向こうに、それは立っている。朱塗りの欄干に青い瓦
。浅草寺の主がこの五重塔ならば、浅草六区の主は、間違いなくあの浅草十二階だった。
 浅草寺の境内から見たそれは、境内を取り囲む木立の向こう、夏の青空が地上の埃にまみれて色褪せるその場所に立っている。
 凌雲閣。浅草の天守閣。祭りと祝祭の総元締め。
 忠晴はきっと見つめると、そこに向かって歩み始めた。

入り口で四銭を支払った。忠晴は自分の紺色の制服が怪しまれはしないかと不安だったが、売り子はそんなことにかまうでもなく、釣銭を渡した。忠晴はえもいわれぬ快感を持ってそれを受け取った。
 忠晴は屋上を目指して階段を登った。塔内を巡るそれは、一つ階を登るごとに、並んだ窓からの眺めを変えた。二階、三階と上るにつれて、自分の背中に翼が生えたような気持ちがする。
先ほどは花屋敷前の通りから見上げていた木立の梢が、手を伸ばせば届く程の距離に見える。さらに四階、五階と上ってゆく。忠晴は鳥になっていた。高みを目指して、雲を抜け天を駆ける



文法もまずいですね

335:この名無しがすごい!
11/04/26 23:08:10.11 27tIm8d6
>>331
ヴェルサイユ宮殿で、ボクと握手!Byルイ十四世
 先ほどから、こんな文句がデカデカと旗に描かれたのをボーっと見上げている一人の少年がいる。
 青く晴れた空に、その濃紺の旗は、平和の象徴である鳩の翼をかたどった金の刺繍入りのマークを煌めかせてはためいている。
 ここは月の国。
 長らく人類にとって憧れの存在であった夜空に輝くこの星に、人間が住むようになってから、もう百五十年以上が経過する。
 徹底した国際機関の発展と平和外交の展開により、空前の安定と発展の時を謳歌している世界。
 その母なる星、地球は、温室効果ガスの影響と公害、異常気象の出現により荒廃し、人類は月へと移住していった。
 最初の移民団である「ダイアナ・ファーザーズ」が豊饒の海に最初の植民地を築いて以来、議会政治の発達、科学技術の進展、連邦制の伸長により、新聞の発行や大学の設置が行われ、この第二の地球とも言うべき、「ルナ・デューエ」は繁栄していた。
 そして過去の地球の姿を残すため、国連のユネスコによって、世界の様々な国々の最も輝かしい時期を再現したアトラクション、仮想惑星空間、「ジオ・マーレ」が設立された。
 そのジオ・マーレの入り口で、少年は人を待っていた。
 少年の名は九条頼朝。
 ここ月世界への移民三世だ。
 彼が物ごころついた時にはすでにこの星は人間が住みやすいように管理されていた。
 世界中の気候を調査、測定し、人間に最も心地良い季節を検討した結果、フランスのそれが最も良いという国連決議が出され、ここルナ・デュ―エは環境省が気候管理を行っている。
 湿度は常に五十パーセントに保たれ、年間を通して最高気温は真夏のそれでも二十五度。
 冬は美しい雪が降り、一面銀世界が広がるこの第二の故郷で、頼朝は育った。
「ごめん!トモっち!! 待った!?」
「待ったよ!ハーバード大総長が三人も変わったぞ!」
 そう言って頼朝のもとへとやってきたのは、まだ白い、ノースリーブのワンピースが初々しい一人の少女だった。
「ごめん、ネイルに絵描いてたら遅くなっちゃって……」
 そう言って虹色に染まった指先を頼朝に見せる。
 肩まで伸ばした夜空のような黒髪は、肩のあたりできちんと切りそろえられ、今日が大事な日であることを予期してか、事前に美容院へ行ったと思われた。
「じゃ、行くぞ!飛鳥」
 少女の名は飛鳥=マリナー。頼朝とは幼稚園時代からの幼馴染だ。
 今年で十七歳になる彼女は、時折頼朝もドキッとするほどに女性らしさを明らかにしている。今日も美しい腕を惜しげもなく晒したワンピースで、その桜貝のような指の爪も美しい。首筋の色気は少々悩ましい。
 頼朝は首を振り、いつもの心理状態に戻った。
「それじゃあ、お前の言う通り、十七世紀フランス宮廷で舞踏会。これでいいな?」
 ここジオ・マ―レでは、希望する国、地域どこへでも自由に行くことが出来る。
 初め頼朝は、始皇帝時代の中国か、スレイマン一世の統治下のオスマントルコ帝国に行きたかった。
「中国!? あの拷問の恐ろしい国? 嫌だ嫌だ。もっとラフな国に行きたいよ~」
 そう言ってその瞳を曇らせ、ノーの返事を送る飛鳥に、ではオスマントルコはどうだと訊いた。
「オスマントルコ!? あの女は肌を見せてはいけない国? 駄目駄目! もっとユルイ国がいいよ~」
 そうして飛鳥のダダに悩まされること一時間。
 いろいろな国を検討した結果、絶対王政時代のフランスへ行くと決まった。
「おい、ここの宮廷ではダンスが出来ないと洒落にならんよ。お前、体育は得意だったから大丈夫だけど、俺にはちょっとキツイわ」
「大丈夫! あたしがエスコートしてあげる」
 おい、これって、逆じゃないか。
 そう思った頼朝だったが、結局その案におさまることになり、通っている高校の教科書を読み、模擬トリップスクールで旅行先の時代、風習を一通り予習した。

センスの欠片も感じない

336:この名無しがすごい!
11/04/26 23:09:05.98 ZZJoH3Cg
>>328
 声に振り向くと、一人の少年が、両手に紐のついた双眼鏡を、左手に三つ、右手に四つぶら下げながら立っていた。下駄をつっかけ、黒い半ズボンに、汗で汚れた綿のシャツを着た、
年のころは十歳ほどの少年だった。
「双眼鏡借りないかい?」
 澄んだ瞳をしたその少年がいった。
「いくらだい?」
 忠晴が訊いた。
「一銭だよ」
「じゃあ貸しておくれよ」
 忠晴は一銭を支払い、双眼鏡を借りた。
「君、名前は?」
「鉄二」
「君はもう働いているの?家族は?」
「八歳の妹が一人、あとはお父がひとり」
「君、学校へは行っていないの?」
 忠晴が訊いた。
「おいらが働かないと、しずもお父も飯が食えない。朝と夜は新聞を配って、なんとか飯が食えるんだ」
 双眼鏡を手に呼吸を整え、ハンカチで額の汗を拭った。
 忠晴は初め裸眼で、屋上からの眺めを楽しんだ。
 富士を一望出切る景色。眼下には夥(おびただ)しい瓦屋根が集まっている。忠晴は下を眺めながら、屋上を回り始めた。築地の本願寺が彼方に霞んでいる。砂利のような建物の間に
横たわるあの川は隅田川だろう。さいころを集めたようなあの場所は銀座に違いない。遠くには恐らくは房州の山々がうっすらと見える。凌雲閣の隣にある大池も見えた。池の水面は、
夏の日盛りの日を浴びて、ちらちらと輝いていた。
 忠晴は今度は双眼鏡を持って、眼下の眺めを探った。

 一軒の家が見える。二階建てであるその家の二階の窓辺に、一人の女が、煙管(きせる)をふかしながら座っている。女は年のころはおそらく十七。朱色の浴衣を着て、胸元を露にして
、外を見ながら涼風に身をさらしている様子。そこへ一人の男が現れた。紺色の浴衣を着たその男は、女を見るなり、いきなり平手を食らわした。打たれた女は、煙管をゆっくりと片付け
ると、男に向かい、何やら言っていた。数秒の後、男は女に抱きついた。男は女の顔を両腕で掴むと、その頬を、愛おしそうに撫でた。その両手は唇に、首元に、襟元へと、次第に下がっ
ていった。男は乗りかかるように女にうつ伏し、接吻をした。じっとりと濡れた接吻である。両手はすでに肩を超え、腰の辺りにかかっている。男はさらに頭を下げ、両手で掴んだ腰の真ん
中へ、顔を埋めた。その間、女の顔は眉一つ動かなかった。眼は虚ろで、男の手の為すがままに任せていた。
 これ以上見てはいけない。そう思いつつも、双眼鏡を握る手に汗が沸く。額から流れた汗が、首へと流れた。心臓の鼓動が鳴った。男は女の腰に当てた手を、ぐっと引き寄せた。窓辺
から女が消えた。部屋の奥へと引き摺り下ろされた女の行方は分からなかった。
 これで良かったんだ。
 忠晴は思った。
 見えなくなって良かったんだ。言い聞かせるようにこう囁くと、忠晴は双眼鏡から眼を離し、大きく息を吸った。
 見ると先ほどの少年が、相変わらず双眼鏡を両手に、屋上にいた。忠晴は礼を言いながらそれを返した。
「また来てね」
「また来るよ」
 忠晴が言った。
 
 八階の休憩室で休んでいる時、忠晴は先ほどの少年の身の上を案じていた。
 一回一銭の双眼鏡を日に何台貸せば、食事代になるだろう。
 そう思いながら椅子を離れると、忠晴は、今度は自身の身の上を案じた。
 学校へは黙って休んでいる。家族へ連絡が行くに違いない。なんと言って言い訳しようか。
 そう考えながら休憩室を出、忠晴は凌雲閣の内側にぐるりと並んでいる商店をひやかした。大げさなものではない。一間ほどの間口の商店が並んでいるに過ぎなかった。
 忠晴はそこで、彼女に出会った。
 美術「北門(ほくもん)堂」は神田に店を構える画廊だった。扱う品々は浮世絵、錦絵である。



興味ないです
延々と下らない話題が多い
 


337:この名無しがすごい!
11/04/26 23:11:15.04 ZZJoH3Cg
>>328
 主人の西野加助は豊原国周、月岡芳(よし)年(とし)、歌川広重三代などの名品を多く蒐集し、その商品名鑑は、さながら一館の美術館の如く、古今の逸品を集めていた。凌
雲閣が開業した明治二十三年、加助はそこの八階に支店を出すことにした。
 硝子張りの陳列棚の中に、築地の異人館だとか、ガス灯が灯る銀座通りの町並みを描いた開化絵や錦絵がところ狭しと飾られていた。たおやかな筆遣いは、銀座の煉瓦建
築を、鉄道馬車を、その中を行く洋装、和装の人々をとらえ、見るものの眼を惹いた。店の奥には、「定之方中(ていしほうちゅう)」と書かれた掛け軸が掛けられていた。店を任
せられたのは、息子の留吉である。
 客足は順調だった。少なくとも商いを始めてから十年は、やれ浅草に一大高層楼が出来たといって毎日店に来る客がいた。流行の洋装に身を固めた彼らは、錦絵を、二円で
、三円でと買っていった。それが次の十年では活動が流行りだし、これに客を取られること幾星霜、最後の十年には、八階の売り場は客足が途絶え、手練手管を尽くして仕入
れた品々は、誰が買うでもなく、空しく陳列棚に輝いていた。
 六月のある日、その青年はやって来た。
懐かしい。
 初めてその店の陳列棚を眺めた忠晴は思った。思い返せば子供の頃、屋敷の納戸の中で、父が蒐集した錦絵を眺めた記憶がある。
その時である。一人の女が、忠晴の眼にとまった。
 黒髪を、薄紫色のリボンで一つに束ね、それを頭の後ろから、背中へと垂らしていた。前髪はしんなりと涼しそうな額を覆っている。その間から覗く眼は輝き、けだるそうに萎れ
た眉が、一抹の悲しさをその眼に与えていた。柔和な輪郭。小さな鼻。ほのかに赤い唇。その顔から伸びる細い首は、藍色に紺の青海波(せいがいは)を象った着物の合わせ
目の中に続いていた。胸元は優しく膨らみ、右手が、その上に置かれていた。女の輪郭を描く筆遣いは淡く、夥しい色が氾濫し、滴るような絵姿をなぞっていた。その女の顔を
見た時、忠晴は、全身の血液が湯立つ思いがした。口元からは熱い吐息が立ち上った。忠晴の心臓を、女の手が掴んだ。その眼に、その口元に、言い知れぬ磁力が宿り、忠
晴の両目を、引きずり込んでいた。少年期の甘い思い出が蘇り、それが女への恋慕とあいまって、一曲の旋律のように奏でられた。
「名前を」
 忠晴は囁いた。
「名前を、教えて欲しいんです」
 店の主人は、先ほどから一枚の美人画を凝視するこの青年を、半ば不思議そうに眺めていた。
「名前は、そこに書いてあるでしょう」
 そう言って主人は、天眼鏡を手に陳列棚を開けた。女はいともあっけなく、主人の指でつままれて、棚の上に置かれた。
「絵は歌川豊(ほう)雷(らい)。この女の名前は琉奈(るな)。最晩年の作で、恐らく娘のおときの友達を描いたものでしょう」
 そう言って主人は天眼鏡越しに説明した。
「いくらですか?」
「三円です。ですがまあ、どうしてもというなら、二円五十銭にいたしましょう」
 忠晴は財布を見た。まだ財布の中には、一円紙幣が三枚、入っていた。
「これを下さい!」
 忠晴は言った。この女を手元に置きたい。誰にも触らせたくない。自分だけの、「琉奈」が欲しい。忠晴は震える手で、一円紙幣を手渡した。

 もし世界が時計なら、そのねじを巻くのは女だ。その時計は、決して解けきることの無い神秘的な発条(ぜんまい)で、世界の歯車を回し、太陽を持ち上げ、星を動かし、月を
昇らせる。秒針は絶えず動き続け、二度とは帰らない青春という思い出を、若い時というかけがえのないひと時を、人間の人生に打ち込んでゆく。
 十四歳の忠晴にとって、琉奈との出会いはまさに時計が打ち込んだ楔だった。それは忠晴の心に突き刺さり、それまで味わったことのない思いで忠晴の胸を満たした。忠晴
の中にある淀んだ水が、楔に応えて、潮のように飛沫を上げていた。琉奈への想いの最中で、忠晴の心は海になった。それは惜しみなく与えられた太陽の光によって熟れた
オレンジのようでもあった。
『琉奈さん、僕は幸せです。こうしてあなたとともにいられる事が。でも出来ることなら、僕はあなたと話したい。言葉を交わしたい。手を握り締め、抱きしめたい。天の高みから


しばらくつまらない展開が続きます
この時点で本なら破く

338:この名無しがすごい!
11/04/26 23:13:16.59 ZZJoH3Cg
>>328
『琉奈さん、僕は幸せです。こうしてあなたとともにいられる事が。でも出来ることなら、僕はあなたと話したい。言葉を交わしたい。手を握り締め、抱きしめたい。天の高みから見下ろすあなたに、一度で良いから口づけをしたい。こんな風に思うのは罪ですか?』
 窓の外の景色が琥珀色に滲んでいる。忠晴は時計を見た。七時三分だった。
 今日もまた、空しく一日が過ぎていく。部屋に差し込む夕日の只中で、忠晴は寝台に横になっていた。
 父も母も黙っている。学園からの知らせは、今度ばかりは来なかったようだ。明日からは学園の帰りに、浅草へ行こう。
 琉奈さん。
 忠晴は寝台の上で、一枚の彼女をまざまざと眺めた。琉奈は相変わらず、物憂げな顔で絵の向こうに佇んでいた。

 七月の浅草は、車夫、紳士、老人、芸者が仲見世を行きかう。彼は浅草寺で観音様への参拝を済ませると、凌雲閣へと向かった。
 花屋敷の前の通りを歩く。入り口に二本の日章旗を掲げた入り口は、水色の門があしらわれており、その入り口の横には、花屋敷の塀が続き、赤や黄や桃色の提灯が飾られていた。左手には池を囲む木立が、梢の間から輝く池の水面を覗かせながら、枝を風に揺すっていた。
 凌雲閣の屋上に着いたのは午後四時半。塔の上には特に人影も無く、あの少年が、またやって来た。忠晴は一銭を支払い、双眼鏡を借りた。うだる夏の夕暮れ時、
忠晴は双眼鏡を片手に、塔の上を歩いた。
「お父さんは元気かい?」
 忠晴が訊いた。鉄二は首を振った。
「胸をやられているみたいなんだ。咳をするたびに、つぶれた苺みたいな痰を吐いてさ」
「薬代は、君が稼いでいるの?」
 忠晴が訊いた。鉄二は頷いた。
「しずちゃんはどう?」
「お父の看病さ。でも最近は困っている」
「君が?なぜ?」
「殺してくれっていうんだ。台所から出刃包丁を持ってきてさ。一思いに心臓を刺してくれって。おいら、どうしたらいいか」
 そう言って鉄二は、下界を見下ろした。悲しげな瞳が、一瞬輝いた。
 忠晴は鉄二を見ながら、なんとかこの少年の心を勇気付ける方法はないかと案じていた。そうだ。
 忠晴は鞄を開けると、数枚の紙切れを取り出した。
「「いせ辰(たつ)」の千代紙だよ。これで鶴を折ろう。お父さんの病気が良くなるようにさ」
 黒と灰色の葉に蜂蜜色をした椿が描かれたもの、緑地に白のレース編みのように桜草を描いたもの、暖かそうな蜜柑色をした地に、黒の縞模様が描かれているもの、
白地に緑のつる草と赤い花を描いたもの、どれも忠晴が好んで、収集したものであった。鉄二は初めは目を躍らせ、ぽかんと口を開けて眺めているだけであったが、や
がて無垢な笑みを浮かべて、千代紙を手に、千羽鶴を折った。十五分ほど後、五羽の鶴が出来上がった。鉄二は嬉しそうにそれらを眺めた。忠晴は初めて、この少年
の笑顔を見た。
 「お兄さん、僕、本当にありがたいと思ってるよ。だから今度は僕がお兄さんのお願いを聞いてあげる」
 謎めいた一言に、一瞬忠晴は戸惑った。
 「兄さん、恋をしているね」
 その一言は忠晴の胸を射抜いた。
「どうして分かるの?」
「お兄さん、この浅草十二階、この高さにいるとね、理性は解けて、常識は崩れて、牛乳のように流れているんだ」
 鉄二にそう言われてみると、忠晴はその言葉がまんざら嘘ではないと思うようになった。あのけだるい八階の休憩室。人気の無い屋上。明治の開業当初は人が溢れて
いた凌雲閣も、活動や浅草オペラの興隆とともに次第に客が減り、今では塔は濁った空気が満ちていた。
「お兄さん、初恋の相手と話したいんだろう?」
「ああ、話したい。でも無理なんだ。その人は絵だもの。この世に存在しない夢だもの」
「お兄さん、言っただろう。この高さにいると、下界の常識は音を立てて崩れていくって。手紙を書きなよ。そうしたら僕、それをその人に渡してあげる」
 どこまでが本当なのか。冗談なのか、からかう気なのか、よく分からなかった。しかし鉄二の言葉は、はためいている忠晴の心を押さえ、落ち着かせた。
「君は絵の向こうに行けるのかい?」
 忠晴は半ば疑いを持って鉄二に訊いた。
 鉄二は頷いた。
「じゃあ、僕を連れて行ってくれ。そうしたら僕、自分の口であの人に声をかけようと思う」
 忠晴がそう言うと、鉄二は首を振った。



あいかわらずどうでも良い展開です
 忠晴がそう言うと、鉄二は首を振った。

339:この名無しがすごい!
11/04/26 23:15:19.03 ZZJoH3Cg
>>328
「僕でないと駄目なんだ。今度の満月の夜、僕は絵の向こうに行ける。それまでに手紙を、書いて欲しいんだ。いいかい、次の満月の夜までだよ」
 そう聞いて忠晴は、とにかくこの少年に望みを託してみようという気持ちになった。
「分かったよ」
 忠晴は言った。
「手紙を書いて、持って来る。だからぜひともそれを届けて欲しい。いいかい?」
「ああ」
 空を見上げると、解け残った真昼の月がかかっていた。
 次の満月の夜までに。
 忠晴は胸が弾んだ。そうしていつものように、眼下に広がる町並みを、双眼鏡で探り始めた。
 
『拝啓
あなたにこうしてお手紙を差し上げることになろうとは誰が考えたでしょう。でも私は今、尋常ならざる興奮に胸を躍らせております。
 琉奈さんにはいくつかの質問があります。
 まず琉奈さんは、どこに住んでいるのですか?どこの出身なのですか?何歳なのですか?それと、これが一番聞きたいことなのですが、僕のことをどう思っているのですか?
 あなたは見たところ、なにか物憂げな、病んだような顔立ちをしていらっしゃる。その理由はなんですか?
 もし僕に出来ることがあれば、お手伝いいたします。あなたの力になります。ですからどうか、その悲しみの理由を教えてください  敬具』
                                      
 ここまでを一息に書いてから、忠晴は筆を置いた。透かしの入った上等のフールス紙のうえに、万年筆で書き連ねた字が、涼やかに蒼く照り映えていた。
 時は七月の望月の頃、空には毎夜、少しずつ完全な円形になっていく月が輝いていた。
 忠晴は便箋を三つ折にすると、春陽堂の印がおされた、南天の実と葉が描かれた絵封筒へとしまった。
 「分かった。引き受けたからね」
 七月のある日、凌雲閣の屋上で、鉄二は言った。彼はその封筒を受け取ると、鳶色の肩掛け鞄へとしまった。
「返事は僕が持ってくるから。一晩待っておくれよ」
「明日には返事が来るのかい?」
 鉄二は頷いた。
 それからというもの、忠晴は気もそぞろに、屋敷に帰ってからも返事のことが気になり、食事を半分も終えないうちにナイフとフォークを揃え、晩餐を終えた。
 部屋に戻ると忠晴は、その絵のためだけに空けた引き出しの中に仕舞ってある琉奈を取り出すと、薄明るい卓上ランプの淡い光で、彼女を見た。何度見ても見飽きない、いや、
眺めるたびに新たな輪郭が、筆遣いが浮かび上がり、その美の甍を頑丈にした。彼女の返事が読めるのだ。こう考えると忠晴は、えもいわれぬ高揚感を覚えた。その夜、忠晴
は興奮のためになかなか寝付けなかった。眼の光が失せず、意識も明瞭なまま三時を打つ時計の音を聴き、それから二度、三度と寝相を変え、四時の鐘がなる頃、ようやく眠
りの帳(とばり)が降りた。
 
 翌日、忠晴は凌雲閣へと行った。なんと返事があるだろう。僕の字が下手だと思いはしないだろうか。質問も、あまりにも一時に踏み込みすぎたかな。
 あれこれ考えながら十二階へと着いた。鉄二がやって来た。
「はい、お返事」
 見ると、日に焼けた少年の右手には、白い長封筒があった。
「もらってもいいのかい?」
「返事があるなら持って来て。また渡しにいくから」
そしていつものように、屋上にいる少ない客に、双眼鏡の貸し出しの呼び声をかけていった。

 忠晴は帰宅し、部屋に着いた。中から鍵を掛けた。
 鞄の中から封筒を取り出すと、手に取り、数枚の便箋が入っているであろう事を確かめた。次に切手の有無を調べた。切手は貼っていない。
 「忠晴様へ」と鉛筆で書かれた宛名のみである。住所が書かれて無いか調べたが、何も書かれていなかった。
 忠晴は机の引き出しからペーパーナイフを取り出すと、封を開けた。
 中には数枚の便箋が、それは質素なわら半紙であったが、入っていた。わら半紙の朱色の罫の上に、丸みを帯びた鉛筆の文字が並んでいる。
『拝啓
 忠晴様。お元気ですか。先日はお便りを戴きましてありがとうございます。
 私への質問があるのですね。お答えさせていただきます。
 まずどこに住んでいるか、についてですが、わたくしは白金に住んでおります。番地までは言えませんが、白金です。どこも皆、塀の長いお屋敷ばかりでございます。
わたくしの家はといいますと、あのあたりでは中くらいのお屋敷でしょう。



訳の分からない展開
感情移入もできない


340:この名無しがすごい!
11/04/26 23:17:34.62 ZZJoH3Cg
>>328
 次にどこの出身なのかとありますが、わたくしは京都の出身です。家は江戸時代から続く呉服屋でした。豊雷先生に描いて頂いた時にわたくしが着ていたのは、母が特別に仕立ててくれた
ものなのです。
 さらに何歳なのかというご質問ですが、わたくしは十七になります。
 あなたのことをどう思っているかというご質問ですが、わたくしは、北門堂の狭い陳列棚が嫌で嫌で仕方がありませんでした。それに始終人が行き来して、落ち着きません。そんな境遇から
わたくしを救ってくださった忠晴さまですもの。誰がいやといいましょう。
良くぞわたくしを買ってくださったと感謝いたしております。さらに忠晴様の部屋の引き出しは、良い木で造られたしっとりとした落ち着きがあります。ここで好きに眠れることが、今のわたくしに
とって大変な喜びです。ですから忠晴様、わたくし、あなたを嫌いだとか、うるさいだとか、思っておりませんのよ。全然。どうか自信をもって、私を扱ってくださいまし。
 悲しみの理由ですか。わたくしそんなに暗い顔をしていたでしょうか。いつものように朝起きて、髪を整えて、着物を着て、それで豊雷先生に描いて戴きましたのよ。
 忠晴様の思いは杞憂ですわ。
 私はいつでも元気です。だからどうか忠晴様、ご安心なさって、学業に精をだしてくださいまし。
 長くなりましたわ。今日はこれまで。それではさようなら。
敬具』
嬉しかった。忠晴は引き出しを開け、琉奈を見た。
 分かったよ琉奈さん。この引き出しがお気に入りなのですね。ではどうぞゆっくり休んでください。

忠晴は朝起きると、まず引き出しを開ける。そうして琉奈におはようを言う。いつも変わらぬ顔の琉奈を見て安心する。それから顔を洗い、歯を磨き、母が作った冷製スープを飲む。
路面電車は合いも変わらず混んでいる。出勤途中のサラリーマンで溢れた車内、忠晴は右に左にと揺れる電車に乗っていく。
凌雲閣の屋上で、忠晴は鉄二と会った。
忠晴は、この少年がどうやって絵の向こう側へ行くのか考えていた。
「ねえ鉄二、君は一体どうやって絵の向こう側へ行くの?」
すると鉄二は優しい顔で、こう言うだけだった。
「それは秘密だよ」と。
 でも忠晴は嬉しかった。こうして琉奈と話が出来るのだ。

浅草十二階の下には迷宮がある。
長い夏の一日が終わり、太陽が瓦屋根の連なる歪んだ稜線の向こうに沈み、軒先にそよ風が漂う頃、女たちは動き出す。
一人の男が街の中に足を踏み入れた。一日の仕事を無事終えて、道具箱片手に帰る板金工である。年のころは四十二三、肩のすわったいかつい身体にハッピを着込み、雪駄を鳴らして
道を歩く。軒端に下げられた提灯のか細い光が、街路をまだらに彩っている。
一軒の酒屋の玄関先にある格子窓の向こうから、紫色の浴衣を着た若い娘が、髪を桃割れに結い、まどろんだ瞳を輝かせ、首まで塗った白いおしろいを匂わせながら、男に声をかけた。
「ちょいと、よってらっしゃいな」
男は動じる風も無く、急いでるんでね、とだけ言うと、さっさとその場を離れた。
また別の店先で、男を呼ぶ声がする。
「ちょいと、遊んでおいきよ」
二重の眼が澄んだ、腰まで髪を伸ばした女である。男はまたも動じず、目を背けて通り過ぎた。
こうして歩いている間にも、向こう三軒から、両隣から、無数の声が男を呼んでいた。それは男を仕留めようと躍起になる女たちの戦場だった。家の軒先にある格子窓、その中からは、情念
のこもった悲しい瞳が、男たちへと向けられていた。男はその視線に何を思うでもなく、街のはずれへと遠ざかって行った。
「ちっ、逃げられたよ。おい、おゆき、もっと声を膨らませて、咽喉の奥からしっかり出さないといけないじゃないか」
昆布色の留袖を着た一人の老婆が、店先に現れた。御祭燈のほのかな明かりが、執拗に刻まれた皴の多い顔を照らし出した。
「あたし、これでも一生懸命やってるんだよ」
そういわれて一人の少女が、格子窓の向こうから言った。
藤色の浴衣に浅黄の帯、夕顔の花が描かれたうす桃色の団扇を手にしたその少女は、さっと身を起こして格子窓を離れると、店の軒先へとやって来た。切れ長の眼が涼しい、長い黒髪を
両肩に垂らした少女である。右目の下には小さな泣き黒子がある。



言葉遣いがおかしいですね
時代考証も間違えまくってます

341:この名無しがすごい!
11/04/26 23:27:27.05 J375qXsr
>>331
「いらっしゃいませ! ジオ・マ―レにようこそ! お客様は二名様。行く先は十七世紀フランスのヴェルサイユ宮殿でよろしいのですね?」
 入り口にいる緑に金モールの服を着たジオ・マ―レの案内人に、頼朝ははいと答えた。
「ではこちらへどうぞ」
 そう言って案内されたのは、扉がズラリと並ぶ廊下だった。
「ただ今お客様が大変多く、生憎と空いているのはこちらのボックス席だけになります」
「はい。結構です」
 そこには北欧家具のような白木の二脚の椅子と小卓が一つ、配されていた。
 部屋に窓はない。総面積にして一坪あるかないか。二人が座れば、もうお互いの吐く息も届く近さになる。
 頼朝は飛鳥の潤いに満ちた吐息にドキドキしながらも、務めて平静を装って、椅子に座った。


表現が陳腐すぎる。

342:この名無しがすごい!
11/04/26 23:31:20.95 J375qXsr
>>331
 卓の上には対テロ装備用のヘルメットとでも形容したい、少々仰々しいヘッドマウントディスプレイが置かれている。そして両手に装着するデータグローブが、そして身体を覆う入出力装置データスーツが椅子の上に置かれていた。
 頼朝たちはそれを身につけた。
 重装備のスーツとパーツ一式を身につけた二人。
 やがて、二人は椅子に座った。
「じゃ、行くか」
 頼朝はそれを装着し、準備を始めた。
「着いたら、早速舞踏会だね!」


このへんとか、このへんについて。


「わー!、いよいよだね! 」
「おい、これはあくまで勉強のためだぞ?」
 二人はこの小旅行の体験と結果をレポートにして、夏休みの自由研究にしようとしていたのだ。
 やがて眼の前が真っ暗になると、次の瞬間、ジオ・マ―レの登録商標であるイルカのマークが灯り、次の瞬間、満天の星空が現れた。
 その美しさに思わず嘆息する頼朝。
 気がつけば、頼朝は飛鳥の手を握りしめていた。
「ねえ、トモっち! ユリの花が見える?」
 そう尋ねる飛鳥に、頼朝は答えた。
「いや、見えない。真っ暗なままだ」
「ええ! おかしいなあ。 フランスの紋章のユリの花が見えるはずなんだけど……」
 その時だった。
 星空は一転し、暗黒が、視界を覆った。


説明台詞すぎて、全然生きているキャラクターの発言とは思えない。

343:この名無しがすごい!
11/04/26 23:31:32.14 13DBYeZ1
>>340
少女が言った。
「この小僧が、仕事中は来ちゃ行けないって言ってあるだろう。それにここはあんたがくるような場所じゃないよ。早いとこお帰り」
老婆が言った。
「ごめんようおつるさん。大事な用なんだ」
「手紙の返事かい?」
少女が訊いた。少年は鞄から鉄砲百合の絵が描かれている絵封筒を取り出した。
「わかったよ鉄二、また返事を書くから」
少女はそういうと、うれしそうに封筒を抱きしめた。
おゆき。本当の名は幸田祥子は、今ではかの吉原にも遜色ない色町となった、「十二階下」の私娼である。
紀州の生まれで、八歳の時に母を亡くし、父と二人暮らしとなった。家は藩の御典医を務めた家柄で、父の甲雲は儒学にも造詣のある医学者であった。その父も十歳の時に世を去り、
祥子は父母なき子となった。親戚の一人で、書店を経営する十衛門の下に身を寄せるも、なじめず、十三歳の春、父が残したわずかな漢籍と金を風呂敷に包み、東京へと向かった。
行きの汽車の車中、おゆきは父が残した漢籍を読んだ。「大雅、久しく作(おこ)らず」「燕々ここに飛ぶ この子ここに嫁ぐ」「秦皇 六合(りくごう)を掃いて 虎視 なんぞ勇なるや」幼い
頃に父から聞かされた漢文の詩句が、その胸に満ちていた。
奉公するには年を取りすぎている。自分で仕事を始めるにはまだ若い。大人でも子供でもない、そんな年齢の祥子は、やがて物乞いをするようになった。それが日ごとの食事にも事欠
くようになり、やがて十六歳になった彼女は、その身体を売ることになった。
千束の街で、夜、男を引いた。
十六歳にして操を捨てた少女は、かくして十二階下で酒屋を営むおつるのもとへとやって来た。酒屋といっても、申し訳程度に二三の酒瓶がカウンターテーブルに備えられているだけ
である。そこはこれまでの暮らしに比べれば、幾分快適な場所だった。三度の食事は出る。寝る場所も確保できる。こうして祥子は、「おゆき」という源氏名を持つ私娼となった。

「すぐに返事を書くから、持っていっておくれ」
おゆきが言った。鉄二は頷いた。
「この子ときたら、返事をもらうまで動かないんだからね。仕事の邪魔だよ。あっちへお行き」
「堪忍してよおつるさん。大事な人のためなんだ」と鉄二は言った。
空には月がかかっていた。輪郭の明らかな三日月である。早くも夏の星星が、一面に輝いていた。
『前略
琉奈さん、私にはあなたが人間とは思えなくなりました。あなたにはなにか神秘的な、人知を超えたものを感じる。私が思うに、あなたは天女なのではないかと。羽衣をまとい、淡い青色
の着物を着て舞い踊る天女ではないかと。そんな風に思えてなりません。
最近私はよくこんな風に想像します。もし私たちが出会うとしたら、その場所はどこにあるのか。私のほうからあなたのほうへ、絵の向こう側へと行くのか、それともあなたのほうから私の
ほうへ、絵の中から飛び出してくるのか。またこんなことも考えます。今絵を手にしている私は、自分の側が現実であり、絵の中が虚構だと考えています。でももしかしたら、現実なのは
あなたがいる絵の方で、私たちのほうが、虚構なのではないかと。絵を描く画家は、現実と虚構との橋渡しをするのでないかと。
敬具』

「決めた、あたし、忠晴さんに会う!」
八月のある日、おゆきは鉄二に言った。
「そんな、それじゃあいけないや、忠晴兄さんはおゆきちゃんの手紙を本物の絵の中の人からのものだと思ってるんだもの」
大池の中洲にかかる橋の上、五月には美しい藤の花がさく藤棚の下にあるベンチで、鉄二とおゆきはラムネを飲んでいた。
「鉄二、嘘はいつかバレるのよ。それならいっそのこと、こっちから会ってあげたほうがいいわ」
そういっておゆきは、緑色のラムネの瓶を手に立ち上がると、池を眺めた。夏の午後。池は濁っていた。橋の上には麩を持った数人の観光客が、その切れ端を池に投じていた。数
匹の鯉が、背びれをほのめかしながら動いていた。池の向こうには噴水が、ほとばしる水の音も涼やかに、水面を震えさせていた。
「ねえ鉄二、次の手紙は、八月の中旬、満月の夜だろう?」
鉄二は頷いた。
「じゃああたし、その手紙で、忠晴さんに会いますって約束する」

八月の半ば、満月の夜。鉄二は忠晴からの手紙をもっておゆきの元へいった。
例の如く、水色地に白で竹の木を描いた絵封筒で、それは届けられた。
「じゃああたし、返事を書くからね。たのんだよ」



またもや意味不明な言い回し表現が多い
辞書引くところからはじめてください

344:この名無しがすごい!
11/04/26 23:31:53.55 J375qXsr
>>331
「なあ、なにか見えるか?」
「見えない……。どうしたんだろう……」
 そう言うが早いか、頼朝は急速に落下していく感覚に襲われて、思わず軽い悲鳴を上げた。
「おい、飛鳥!お前……、は……!?」
 慌てて横にいた飛鳥の手をもう一度握ろうとした手が空を切る。
 どこか高いところから、一気に地上に落下するような感覚が全身を貫いている。
「うぉっつ、くおおおおおおお……」
 ジェットコースターに乗っているような感覚に陥り、慌ててもがく頼朝。
「飛鳥! いるか!?……」
 頼朝の声が飛鳥を呼ぶが、その声は空しくかき消された。
「緊急事態です!」
 ジオ・マ―レのアナウンスが走る。
「お客様のアクセスされている機械に異常が発生しました! ただ今原因を調査中。繰り返します……」
 そう告げるアナウンスの声は、氷のように解けていき、やがてその輪郭を失った。
 ズサ……!!
 何かにぶつかったような激しい感覚が頼朝を襲った。
「あ……、飛鳥……」
 そう呼ぶ声も、次第に薄れて、あとにはただ、月のない夜のような静寂があった。


何が起きてるのか全然わからない。

345:この名無しがすごい!
11/04/26 23:33:33.39 J375qXsr
>>331
 どれくらい時間が経っただろう。
「おい、頼朝!起きろ!ご主人様のお出かけだぞ!」
 金槌のような怒声に、頼朝は飛び起きた。
「こ、ここは……?」
 そこは六畳ほどの、狭い部屋だった。
 自分が今身を横たえているベッドの他には、壁際に一台のチェスト、そして洋服ダンスらしいものがあるだけで、これといって特別なことはない。
 ただ、天井から下がった恐らくはオイルランプの明かりと、枕元の小卓の上に五本の燭台がある。そしてそのテーブルの上にはジュール・ヴェルヌの「八十日間世界一周」が、読みかけのまま置かれていた。
 先ほどの声の主は、入り口と思しきドアの向こうから聴こえるらしかった。
「おい頼朝! 早く起きんか!? お出かけの時間だと言っておるだろうが!」
「は、はい!」
 思わず驚いて、そう返事を返す頼朝。
 しかし、彼には何が何やら皆目わからない。
「ここは……、十七世紀のフランスか?……」
 頼朝はベッドから起きると、自分の身なりを確かめた。
 青い生地のパジャマを着ている。
 ドアを開けた。
「なんだ、起きとるのか……。早うせい!時間がないんだ!」
「あ、あの……、僕はなんなんですか!?」
 そう頼朝が訊いた相手は、まだ三十路そこそこと思しき一人の男だった。


いらない文章が多すぎる。ドアを開けたなんて文章だけ書くぐらいなら削れ。

346:この名無しがすごい!
11/04/26 23:33:35.38 13DBYeZ1
>>328
午前四時半。かきいれどきは過ぎていた。おゆきは眼の下にうっすらとくまを浮かべながら、様々な男たちと交わった身体を白い浴衣に包んでいた。なだらかな雪山のように柔和な肩の線、
かすかに火照った首筋、鼈甲のかんざしでまとめた髪のうなじが見える。奥の座敷へと下がった二人は、電灯の灯る中、卓を囲んだ。おゆきはいつものようにわら半紙を数枚持ってくると、
鉛筆を手に、手紙を書き始めた。


『前略
 忠晴様のおっしゃる通り、わたくしたちが出会うのは、わたくしが絵の中から飛び出して行くか、それとも忠晴様がわたくしの世界へ飛び込んでくるのか、それは会ってみなければわかりません。 
 九月一日に、会いましょう。凌雲閣で合いましょう。最上階の十二階で。そこへわたくしも参ります。
 正午に、お会いしましょう。                        敬具』
 
大正十二年九月一日は朝から良く晴れた日であった。
 前日までの風雨も朝にはおさまり、空には太陽が昇り、東京の街を焼いていた。
 今日ばかりは忠晴も、動揺せずにはおれなかった。
 琉奈さんに会えるんだ。そう思いながら忠晴は、いつものように引き出しを開け、琉奈におはようを言う。
 琉奈さん、あなたのほうから飛び出してくるのか、私のほうから飛び込んでゆくのか、果たしてどちらになるんでしょうね。
 そうして引き出しの中から琉奈を取り出すと、折れたり曲がったりしないように、大判のノートの間へはさみ、鞄の中へとしまった。
 忠晴さん、今日から学校ですよ。予習は済んだの?宿題はやってあるんでしょうね。
 そんな母の言葉も、忠晴の耳にははいらない。ただ、いつものように適当に返事をするだけであった。
 朝食を済ませる。南側に面したサンルームに、熱い夏の陽が差し込んでいる。置かれている籐の椅子が、硝子のテーブルが、今にも解けそうな気がする。
 紺色の制服を着る。そして鏡の前で、自分の表情を確かめる。
 寝癖はついていない。目やにもない。いつもどおりの睫の長い眼である。口を開けて、歯を見る。その色は白い。
 
 停留場で市電を待つ。暑さが両腕と首筋に溢れ、湯に浸かっている気がする。額には早くも汗が滲んだ。忠晴はハンカチでそれを拭う。列車がやって来た。忠晴は目の前に並んでいた三
人のサラリーマンの後に続いて、列車に乗った。ベルが鳴り、列車が動き始めた。
 正午までにはまだ時間がある。どこかで暇を潰そう。
 新宿御苑にでも行けば、たっぷり時間を費やせるだろう。渋谷へ行ってもいい。銀座でもかまわない。デパート、庭園、博物館、図書館。これらの施設なら、人目を気にせずにのんびり出来る。
 そう思いながら、忠晴は列車の窓から、夏の朝の景色を見る。街路に溢れる人、道を行く車、全てがいつも通りだった。
 その景色に何の疑いも持たず、夏の一日へ漕ぎ出した。

 明け方に眠り初めてから六時間ほど、おゆきはいつもよりやや早い目覚めに半ば戸惑いながら眼を覚ます。昨夜は盛況だった。夜の七時に最初の客を捕まえて以来、八時、九時と三人の
客が入った。十一時を回るころ、いったん客足は途絶えたが、日付が変わる頃からまた客がやって来た。明け方までおゆきはその可憐な咽喉を使って喘ぎ、華奢な両手を使って男の肩につ
かまり、柔和な両足を使って男の身体をはさんだ。
 寝巻き姿のままおゆきは、布団の上で上半身を起こす。起きた瞬間、両足に痛みを感じる。震える足で起き上がると、手鏡で顔を見る。
 昼の娼婦の顔ときたら、乾いたそっけなさを孕んでいる。夜の電灯の元では、あれほど輝いていた眼が、頬が、唇が、さっぱりしている。
 おゆきは部屋の時計で、時間を見る。十時を回ったところだ。
 着替えよう。
 おゆきは思った。
 

 新宿御苑の温室には、南洋の国々から運ばれた沢山の熱帯樹が、葉振りを存分に茂らせて青い葉を中空に伸ばしていた。夏の温室は虚ろで、疲れた静寂が木陰に宿っていた。忠晴は順
路に従って、広大な温室内を右に左にと進んでいった。睡蓮を植えた池もあった。青臭さが水面に漂っていた。
 忠晴は時計を見た。十時半であった。
 そろそろ浅草へ行こう。忠晴はそう思うと、足早に温室を巡り、そこを出た。

 

つまらん


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