【ラノベ】自作を晒して感想をもらうスレvol.35at BOOKALL
【ラノベ】自作を晒して感想をもらうスレvol.35 - 暇つぶし2ch173: [―{}@{}@{}-] この名無しがすごい!
11/04/22 14:04:17.69 lIcKokI7
>>170
>日暮れ近くなって雨がやみ、薄れていく雲の間から夕日が覗き始めた。
 広彦はもう三十分近く、庭へ続く窓を開け放ち、濡れた花壇や芝生を眺めていた。学校の宿題もそっちのけにして、母親に何度か小言をもらった後である。
「やっぱり来ないかなー」
「ご飯できたよ。寒いから雨戸を閉めてくれるかな」
 母の秋が部屋向こうの台所からひょこりと顔を出す。
 はーいと間延びした返事をして雨戸を引っ張り出そうとしたそのとき、石垣の上から待ちわびていた鳴き声がした。
 子供らしい丸顔を笑顔でいっぱいにして、広彦は急いで台所を振り向いた。
「おかーさん、トラ来た!」
 虎模様の猫はしなやかに着地してニャンと鳴いた。この時間になると決まって総上家へやってくる。広彦の手に湿った鼻を押しつけるしぐさは食事の催促だ。
「やっぱり野良猫なんだよ」
 おかずを一品皿にのせてやってきた秋を、広彦は見上げる。

普通

174: [―{}@{}@{}-] この名無しがすごい!
11/04/22 14:05:40.35 lIcKokI7
>>170
>「そうかなぁ」
 秋は広彦の隣に膝をつき、あんかけの卵焼きののった皿を猫の前に置いた。たちまちたいらげたトラを、ほっそりとした手で優しく撫でる。トラは気持ち良さそうに人懐こく鳴いた。
「こんなに綺麗なんだから、ちゃんと飼われていると思うけど」
「でも首輪してないし」
「そうだね」
「ね、うちで飼ってもいいでしょう」
「春彦さんが良いって言ったらね」
 広彦は母親を見上げ頬を膨らませた。
「おとーさんはダメだって言うけど、おかーさんは飼いたいんでしょ?」
「春彦さんが良いって言ったらね」
 秋は皿を取り上げると立ち上がった。
「雨戸を閉めて。いつまでも冷たい風に当たってると風邪引いちゃうよ」
 トラは満足そうにニャアと挨拶し、いつもどおり素っ気無く帰っていく。広彦は拗ねた顔をして雨戸を閉め、台所へ移った。
「二人で一緒におとーさんに頼もうよ」
「どうして?」
「おかーさんも飼いたいなら、ぼくの味方でしょ」
 サラダを盛りつけていた秋は手を止め、首を傾げた。
「そうねぇ、誰の味方かって言ったらトラの味方かな」
「トラ?」
「いつも決まった時間にここへ来て、出されたものを食べて帰る。トラがそうしたいなら、それでいいんじゃないかな。首輪をつけてうちに閉じこめるなんてかわいそうじゃない?」
 黒味の薄い茶色の目が広彦を見つめる。広彦はちょっと考え、頷いた。
「かわいそうかも」
 秋は微笑み息子の頭を撫でた。
「いつかトラも、どこにも帰らずうちに居つくようになるかもしれないよ」
「そうしたら飼っていい?」
「そうしたら、一緒にお父さんにお願いしよう」
「ちぇー。それじゃ、結局ダメだよ」

読んでる人が退屈する。

175: [―{}@{}@{}-] この名無しがすごい!
11/04/22 14:08:06.49 lIcKokI7
>>170
>広彦は両手を頭の後ろへ回して唇を尖らせた。秋は笑ってテレビを指差した。
「テレビを消して。もうお父さんも帰ってくるから」
 言い終わらないうちにチャイムが鳴った。春彦だ。広彦はリモコンを放り出し、廊下へ飛び出した。
「おかえり!」
 玄関扉を開けると、外の空気はいっそう冷たくなっていた。だが、ひやりと背中が冷えたのは寒さのせいだけではなかった。
 見慣れた父のかたわらに見慣れない少女が立っていた。
 年頃は広彦と同じだろう、長い髪をツインテールにした可愛い女の子だ。しかし、つぶらな黒い目は奇妙だった。鉱物を思わせる、作り物めいた冷たさがあった。
「こんばんは」
 まるで花咲くように、にっこりと笑う。けれど、その目は冷たいままだ。
「あら、その子は?」
 エプロンを脱いだ秋が廊下をやって来る。
「ちょうど門のところで会ったんだ。広彦の学校の友だちだって。何か用があるそうだよ」
「こんな時間に、一人で?」
 秋は驚いたように少女を見たが、すぐにリビングを指差した。
「ちょうどご飯ができたから、食べていったらいいわ」
 しかし少女は笑みを引っ込め、首を振った。視線はずっと広彦へ向いている。
「あんたが総上広彦ね」
 姿に見合った可愛らしい声は、ひどくすさんで張りつめていた。
「初めまして。さようなら」
 ぞっと全身の毛がそそりたつのを広彦は感じた。本能的な恐怖を感じて勢いよくドアを閉じ、鍵をかける。
 どんと、凄まじい衝撃があって空気が震えた。アルミのドアがひしゃげて砕けたガラスが飛び散った。秋が悲鳴を上げたが、長くは続かなかった。
 気づくと倒れていた。視界の半分が赤い。まだ靴をはいたままの春彦の足がすぐそばにある。だが、そのかたわらに眼鏡の取れかかった頭が横たわっているのはなぜだろう。手を伸ばして父に触れてみようとしたが、体が動かなかった。口の中がピリピリしたし、体中が痛かった。
 ドアがなくなった玄関の向こうに、少女の姿はない。代わりにトラが広彦を覗きこみ、ざらざらした舌でしきりと頬をなめている。
 そのうち近所の人の姿が見え始め、サイレンの音が近づいてきた。トラの姿はどこかへ消え、いろんな顔と手が自分を覗きこみ触れるのを感じた。
「ああ、ひどい」
「子供はまだ息があるぞ」
「かわいそうに、こんな……」
 赤い回転灯が人々の頭上で輝いているのをぼんやり見ながら、広彦は気を失った。

これをもっと早く持ってくる。

176: [―{}@{}@{}-] この名無しがすごい!
11/04/22 14:10:58.05 lIcKokI7
>>170
>第一章~猫御殿~

 雨がやんだばかりの空にはいまだ分厚い雲が立ち込めている。三月下旬だというのに空気は冷たく、重い。
 総上広彦を乗せた軽トラックは暴れ馬よろしく音を立てて、川沿いに立つアパートの前に停まった。
「よっしゃー! 今日も絶好調、オレ!」
 運転席から飛び降りた勝呂猛が両腕を伸ばし、天へ届けとばかりの大声を上げる。
 逆立てた金髪に、唇や眉や鼻にはピアスを通し、擦り切れたジーンズと破れかけのシャツに鋲のついたジャケットという格好。今年、成人式を迎えたばかりだが、新成人としての落ち着きはまるでない。
 広彦は遅れて助手席を出ると、かろうじて血の繋がりが証明されている義兄を絶不調な青い顔で振り向いた。ダウンジャケットにジーンズという普通の格好も、猛といると対照的な地味さがある。整ってはいるもののパッとしない顔つきのせいかもしれない。
「あんまり大きな声出さないでよ。ただでさえ目立つんだから」
 古くからある工業団地だ。建物はおろか公園や商店などもどことなく古臭い。トタン造りのアパートを背景に、猛の姿は妙に目立っていた。というか浮いている。
「おらおら、さっさと荷物運ぶぞヒコ助」
 まるで聞いていないが、いつものことなので広彦も気にしない。トラックごとアパートに突っ込まなかっただけましだ。
「鍵もらって来る」

ここは普通

177: [―{}@{}@{}-] この名無しがすごい!
11/04/22 14:13:59.77 lIcKokI7
>>170
>アパートのすぐ隣家へ向かい、チャイムを鳴らす。
 その瞬間にドアが開き、魚類を思わせる面長の顔をした老人が現れた。ギョロリとした目は広彦を素通りし、鼻歌を歌いながら荷おろしの準備をしている猛を見た。
「きさまか、うるさく叫んでおったのは!」
「どーも! そいつのアニキの猛っす」
「うるさいわ、このガキンチョめが。静かにせい!」
 痩せた体から出ているとは思えない大音声が、あたりにびりびりと響き渡る。猛はヒャーと舌を出して頭をかいた。
「すいまっせーん」
 盛大な鼻息を吹いたあと、老人はようやく広彦を見上げた。
「で、なんじゃ?」
「今日からアパートの部屋をお借りする総上です」
「ああ、きみか」
 老人はちょっとうなって、胸ポケットにはさんであった眼鏡を取った。分厚いレンズをつけた姿はますます魚っぽい。
「目が悪いもんでな。今日はあのガキンチョがつきそいかい」
「叔父は仕事で」
 正確には叔父ではないが。老人はズボンのポケットから鍵を出し、広彦へ渡した。
「お借りするだなんて、そんなたいそうなモンじゃないがね。近ごろの若いもんは、言葉ばかり丁寧で気に食わん」
 まぁよろしくと素っ気無い言葉だけを残して、ドアが閉まった。
 ただでさえ気分が悪いところへさらに嫌な気持ちになり、広彦は仏頂面でアパートへ向かった。タンスを抱えた猛が後に続く。
「どうした?」
「いやなじいさん」
「この前、親父と来たときは感じの良い人だったんだろ。今日はたまたま留守番してたんじゃねぇの」
「同じ人だよ。子供だけだから見くびってるんだ」
「オレは大人だぜ」

次に続く

178: [―{}@{}@{}-] この名無しがすごい!
11/04/22 14:15:02.65 lIcKokI7
>広彦は二階の南端にある部屋の前で立ち止まり、呆れ顔で猛を振り向いた。
「ガキンチョって言われてたじゃん」
「偏屈なじいさんだと思って我慢しな、これから世話になるんだから」
 パンクな格好をしている割にまともなことを言って、さっさと開けろと視線で促す。広彦はそこだけ新しい鍵穴に鍵を差込み、少し軋むドアを開けた。
 入ってすぐが台所、そして十畳の部屋がひとつとトイレ。風呂はない。これから始まる高校生活の三年間、もしくはそれから先も暮らすことになるかもしれない新居は日当たりが悪く、湿ったにおいがした。
 もともと少ない荷物を運び終わるのに時間はかからなかった。汗を洗い落としたいという猛の要望で、近くの銭湯に寄ってから昼食をすることになった。
 平日の昼間のこと、銭湯にいるのはご老人ばかりだ。猛の姿は異星人じみて目立っていたが、本人はまるで気にする様子がないのもいつものこと。すぐ向かいにあったラーメン屋で昼食を済ませ、アパートへ戻る頃には二時を過ぎた。
「それにしても、猫の多い町だな」
 家の軒先や石垣の上などを眺めながら歩いていた猛が、ふと顔をしかめてぼやいた。
「昔からそうだよ」
「俺はぜってー住めねぇな」
 たいがいのことに対して怯まない猛も、犬や猫は大のつくほど苦手なのだ。
「じゃーな、しっかりやれよヒコ助」
「もうその呼び方やめてよ」
 猛は軽トラへ乗り込み、にやっとした。もともといかつい顔をしているだけあって、そうすると悪役の俳優みたいになる。人好きのするタイプとはほど遠い。
「女連れでライブに来れるようになったら変えてやるよ」
 人差し指と小指を立てる手まねをしてみせたが、すぐに引っ込めちょっと真面目な顔つきをした。
「本当に一人で大丈夫か。無理して思い出すことでもねぇと思うんだがな、オレは」
「人の心配してる暇があったら、自分の心配したら。このあとのデートがうまくいくか」
「デートじゃなくてライブだよ」
 殴るそぶり。広彦が後ろへよけると同時に、エンジンを吹かす。
「とにかく、いつでも戻っていいんだからな。変な遠慮すんなよ」
「分かってる」
 かくいう猛は二年前に家出して以来、東京で暮らしている。今日、広彦の手伝いに来たのも住んでいる場所が近かったからだ。その猛が実家のことを話すのも妙なものだった。
 軽トラは行きと同様、勢いよく走り出し、たちまち小さくなっていった。広彦はしばらくそれを見送り、アパートへと踵を返した。

ライトのベルなんだからギャグを増やすべき場所。

179:この名無しがすごい!
11/04/22 14:19:06.87 Eot2JteL
レス番号が飛んでいるな。また串か


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