11/04/21 09:43:02.26 rmnW5/Z2
「200」
「二〇〇だよ」
そう言ったのは、俺の妹だ。何が嬉しいのか、目をきらきらさせている。
「だから、何なんだよ」
「だから、二〇〇なのよ。二〇〇になったら、ベスト三出してくれるんだって」
何だか、両手をぱたぱたさせながら主張する。ペンギンを彷彿させる姿に、
こちらの顔がゆるむ。
「もう、なにがおかしいのよおっ」
要するに、学校で本を読むたびに読書カードを出していて、クラス全員分の
総数が二〇〇になると、個人別の読書数ベスト三が発表される、と言うのだ。
「私、絶対自信あるんだ。二〇冊くらいは読んでるもん。クラスの人数が三五人、
つまり平均すると一人六冊足らずだから、私、絶対に一位だよね」
「さあ、どうかなあ」
そうはいかないものだ。俺にはわかる。
翌日、妹が学校から帰ってきた時、すっかりしょげていた。
「どうだった?」
「信じられない」
彼女は三位だったそうだ。なら、喜べばいいのだが、その上が凄かったらしい。
二位が四〇冊、一位は何と七〇冊も読んでいたそうなのだ。
そうなる事はわかっていた。本など読まない子も多いはずだし、読む子は無茶
苦茶に読む。それに、一位は知っていたから。
「こんにちは。兄さん、いますか?」
「あれ、ちーちゃん? そうだよ、お兄ちゃん、あの子がトップだったの」
やがて入ってきた子は、俺の横にやってきた。
「よう、ちー。トップだったって?」
「はい、兄さんのおかげです」
俺は、俺の隣にちょこんと腰を下ろしてくる子の頭を撫でてやる。その子も、
嬉しそうに目を閉じて、俺の腕に頭を擂り擂りしている。その様子を、妹は目を
丸くして見ている。
「お兄ちゃん、ちーちゃん、どうして……」
「いや、まあな。なあ?」
「///(はあと)」
妹は急に立ち上がり、わなわなと震えだした。
「いいもん、五〇〇の時には見返してやるんだから!」
次、「天ぷら粉と唐揚げ粉」
201:この名無しがすごい!
11/04/21 13:28:52.45 q0YI1ljl
「天ぷら粉と唐揚げ粉」
謎の新人類登場により、かつて地球を支配していた旧人類は全滅しようとしていた
旧人類、そう私たち人類である
新人類登場は誰にも予想できなかったし、考えもしなかった
なぜいきなり姿を現したのか、どこからきたのか、彼らは我々と何が違うのか
姿形は我々と旧人類と瓜二つ、つまり手足があり胴がありその上に頭があり、二足歩行し道具を使う
なのに、旧人類には彼ら新人類のことがまったく分からなかった
いつ旧人類に取って代わったのかさえ分からない
気が付いたら隣りの人が新人類になっていた
新人類は旧人類を見ると周到に追いかけて殺す
どうやら無意識のうちに旧人類を追いかけ殺していくようにプログラムされているかのようだった
一人殺され二人殺され、百人殺され、千人殺され、万人殺され…
日を追う毎に新人類は旧人類を殺していく、今日はあの国がなくなった、明日はあそこだと噂が流れる
ニュースでは天気予報の変わりに新人類分布図を解説し始めた
私の家族はなんとか新人類から逃れ、山奥の別荘に逃げてきた
食料も水も豊富にあるから、見つからなければ生きていけるだろう
「ねーパパー、これどっちが天ぷら粉?こっちは唐揚げ粉でいいのかな?」
「ラベルを見てごらん、ちゃんと書いてあるだろ?」
「・・・ラベル?ラベルってなーに?ねえ、パパ、パパをあげたら・・・」
娘の言動がいつもと違った、私は娘の言葉に戦慄を感じた。
そうこの時、娘を突き飛ばしてでも別荘から逃げ出すべきだったのだ
「あげ、あげ・・・パパフリッターにしたらおいしいかな?脂肪分ばかりでまずい?」
娘が背後に隠していた大鉈が見えた、瞬間、私の脳から鮮血が勢いよく飛び散った
娘はいつの間にか新人類になっていたのだ・・・
「あの日見た空の色は」
202:この名無しがすごい!
11/04/23 21:30:58.32 6hHfKJxO
「あの日見た空の色は」
「もう、どうしようもないのか?」
「当たり前よ。別れるほかに、選択肢なんてないわ」
彼女の声は、冷たかった。
どうしてこうなったんだろう。春に出会い、すぐに互いに強く惹かれた。夏になる前に、彼が
告白し、彼女は涙を流して、それを受け入れた。
それから、二人はずっと一緒だった。互いの一言一言が、それは嬉しくて、その度に心躍った。
生活のあらゆる瞬間に、互いを求め合った。
でも、それが、少しずつずれ始めたのは、夏の終わる頃だった。同じようなやり取りのはずなのに、
いつの間にかなじり合いになり、次第に口論に発展した。求め合いながらも、反発する瞬間が多く
なった。やがて、顔を見合わせるだけで、それが苦痛になった。
でも、彼は思うのだ。今、目の前の彼女は、あの時と同じ姿だ。それを見て、心の、どこか深い
ところで、あの時の気持ちがうずくように思い出される。自分は、今でもこの女を愛している、
それが感じられるのだ。しかし、二人の関係は、このままでは終わってしまう。何とかならないか?
ふと、空を見た。今、赤く染まった太陽が、川の向こうに沈もうとしていた。それを見て、彼は
思い出した。彼が告白したのは春、今は秋、だけど、空の様子は驚くほど似ている。
「なあ」
「何よ?」
女の声は、あいかわらず冷たい。だが、彼はかまわずに続けた。
「あの日見た空の色は、ちょうどこんなじゃなかったか?」
彼女も、夕日に目をやる。その表情が、何かを思い出すように、少しゆるむ。
しばらくそうしていて、彼女は再び彼に顔を向けた。
「そう。懐かしいわね。別れにはふさわしいのかも。じゃあ、さよなら」
次、「コスモフリーザー」
203:この名無しがすごい!
11/04/23 22:42:24.99 OsXpnM+b
「コスモフリーザー」
近い将来、日本のある家電メーカーが究極の冷凍庫を作ると予言した小学生がいた
小学生はその冷凍庫を「コスモフリーザー」と名付けた
十数年後、小学生は高校を卒業し、アメリカへ旅だった
留学ではない、アメリカ東部にあるといわれる謎の家電組織に呼ばれたのだ
年収は200万ドル、業績に応じてボーナスあり
彼はアメリカ側が提示した条件をそのまま受け入れ渡米した
両親と彼女や友人は当然大反対をしたが、彼はおかまいなしに契約書にサインをしパスポートを申請し、ビザを取得し航空券を受け取り渡米した
故郷に未練がないといえば嘘になるが、離れるなら早いほうがいいだろうという彼の判断だった
渡米一ヶ月、いまだに両親と彼女から日本に帰ってこいとメールが来る
最初のうちは丁寧に返事をしていたが、だんだん面倒になり放置するようになった
アメリカに渡り、二週間、フランスから来た女の子と仲よくなった
彼女とはよく食事したり、休日を一緒に過ごしたりするようになった
気が付くと一緒に暮らすようになっていたので、日本の彼女にごめんとメールした
返信は三日三晩続いたが、すべて無視した
渡米した月の中旬、始めて学校に行き、学力テスト、一般常識テストを受けた
ほぼ満点を取った彼は、ひとまず実習課に配属され、そこで年齢相応の勉学と、好きな研究をする権利を与えられた
彼はフランス人の彼女をほっぽりひたすら研究に励んだ
論文をいくつも書き、世界的な科学雑誌に投稿したり、学界で発表したりした
やがて世界はコスモフリーザーの重要性を認識し始めた
そうこれがコスモフリーザー歴元年とも夜明けをもたらした少年の日常だった
204:この名無しがすごい!
11/04/23 22:43:47.11 OsXpnM+b
次「未来からやってきた娘」
205:この名無しがすごい!
11/04/24 09:35:20.89 dZUWWm7z
「未来からやってきた娘」
今日家を訪ねてきた少女が言うには、自分は俺の娘で、つまり俺はこいつのお父さん
なのだという。
未来から来た証拠として見せられた独立情報端末には、あと10年は開発されないであ
ろう次世代の3Dビジョン機能が搭載されていた。複数のウィンドウに表示された写真は、
俺と彼女のラブラブなツーショットばかり。その中には、いつか行こうと決めただけで、
まだ行っていない場所の写真まで存在していた。
「お母さんが癌で死んだあと、画期的な抗癌剤が発明されたんだ。ベクターウイルスを
媒介に、人工たんぱくから成る癌抑制剤生成装置を生体にインプラントして、一生癌に
ならなくするタイプのやつが」
注射器一式を使って、その少女は歴史を書き換えるつもりでいるらしい。
「お母さんが死ななきゃいけない理由なんてないんだよ。たった一年、薬の認可が
遅かっただけで、死んじゃうなんて……」
「だから、お父さんが、お母さんを説得してこの注射を打ってよ。ううん、寝ている
ときでもかまわない。歴史を書き換えられれば、お母さんさえ生きていれば、私は
どうなってもいいの。ねえ、お願い。お父さん!」
俺は娘の言うことがよく分かった。俺だって、彼女を失って生きていける自信は無い。
生き残るのは彼女であるべきだ。だが、現実は違っていた。
「お前は知らないだろうが、実は俺も、末期癌なんだ」
「そんな……」少女はよろめいた。その聡明な頭で、状況を理解する。
注射器は一式しかない。今ここで俺にその注射を使わなければ、娘である自分が
生まれてくることもない―娘が存在する以上、俺が結婚前に癌で死ぬことはありえない
―俺に注射を打って癌から救うという未来は確定していて、娘を主体に、円環状の
構造を描いている。
「お父さんは、知ってたんだね。お母さんが癌で死ぬことを。知ってて、私を行かせた
んだね……過去の自分を救いに……ひどいよ。あんまりだよ」
少女は泣き崩れた。俺は少女を強く抱きかかえた。
「彼女は、俺が一生をかけて愛してやる。何の悔いも無く死ねるように。いずれ生まれて
くるお前のために、大量の記録を残す。約束する」
「それでも、私は、お父さんを許さない!」
「許してくれなくてもいい。それでも、お前は俺の娘で、お母さんの子だ」
俺は抗癌剤の注射を受けた。未来に帰る間際に、娘は言った。
「お母さんのこと、幸せにしてね!絶対絶対、幸せにしないと許さないんだからね!」
その夜、彼女から一通のメールが届いた。
「私のこと、好き?」「誰よりも愛してるよ。俺は癌なんかじゃ死なない。生き延びて、
お前を絶対に幸せにしてみせる」
「タロットカード犬」
206:この名無しがすごい!
11/04/24 12:53:42.16 E5SoAd97
「タロットカード犬」
「よろしくお願いします」
新宿駅西口付近。
会社帰りで疲れた頭が、テキトーに占い師を冷やかしてもしてやろうという思考を方針づけたのは、そんな摩可不思議なことでもないだろう。
「好きなカードをお選びください」
場に何芒だかわからないタロットが配置されている。俺はなんとなく目にとまったそのカードをめ
「俺ターンドロー!犬のカード!」
くろうと思ったのに、前方の占い師がなにやらそう叫びながら、俺から取り上げるようにめくり、場へたたきつけた。
「……」
「………」
「…………」
「…………あなたのターンですy」
「いや仕事しろよ?」
「帰ってきたガリガリちゃん(擬人化)」
207:この名無しがすごい!
11/04/24 14:04:06.40 kWpfsHL1
「帰ってきたガリガリちゃん(擬人化)」
西暦2213年夏
人類の大半が死滅して約二百年
かつて人類が築き上げた高度文明は消え去り、高層ビル群などもほぼ消え去った
太陽からは容赦ない日差しが降り注ぎ、日中平均気温50度、夜になると-30度になった
そんな状況でも生き残った人類は過酷な環境に適応し生きていた
ある者たちは洞窟深くに潜り、地底人と名乗り
またある者たちは海に出て行き、海洋人と名乗った
そして、過酷な平野に留まった者たちもいた
平野に留まった人間達は昼間は崩壊した建物の中で日差しから身を隠し
夜になれば防寒具を着込み平野に現れ行動する
彼らの目の前に現れたのは人型だった
「私ガリガリです!よろしくお願いします、あんパン!てへへ」
丸坊主の少年が女の子の声でいった、声はどこか癒される声だった
人型はガリガリと名乗り、手を差しのばす
「握手は嫌いですか?私は好きです、アイスは溶けて変わらずにいられませんけど、それでも好きです」
彼らは人型が何を言っているのか理解出来ずにお互いに顔を見合わした
「アイスは人を愛し、人はアイスを愛する、アカギカンパニーはそうやって人をはぐくみ」
バスン!人型の顔が吹っ飛び首から黒煙が上がる
彼らの一人がランチャーで人型を撃ったのだ
人型が停止するのを確認すると、彼らは来た道を戻り出す
日の出前に戻らなければ高温で死んでしまうのだ
「魔法少女ほむほむパルプンテ」
208:この名無しがすごい!
11/04/24 22:09:13.90 x0JX38mk
「魔法少女ほむほむパルプンテ」
「お待ちなさい」
男たちはまさに、少女を袋小路の路地に追いつめたところだ。壁にその体を押し詰めると、一人が
彼女の両手を頭の上に押さえ、もう一人が服の襟元にかけようとしていた。そこに、背後から声が聞
こえたのだ。
慌てて振り向くと、そこに、黒髪の少女がたたずんでいた。美少女だが、その顔には愛嬌のかけら
もない。
男は、最初こそ驚いたが、相手が少女である事に気がつくと、すぐに表情を緩めた。
「何だ、お嬢ちゃん。今はこの子一人で手一杯なんだ」
「それとも、お前も遊んで欲しいのか?」
押さえつけられた少女は、救いを求める。
「助けて、お願い、助けて!」
彼女は、そんな声のすべてを無視して、斬りつけるような鋭さで言い放つ。
「私は魔法少女ほむほむ。悪を許さない」
そう言うなり、右手を挙げる。どこから現れたのかわからぬバトンがその手にあった。それを一振り
すると、彼女は叫んだ。
「ピピルマピピルマ・パルプンテ!」
瞬間、その姿が消失した。彼女は、時間跳躍を行ったのだ。次に、どこに出現するのか、それは、
彼女にもわからないのだった。
男たちは、顔を見合わせた。
「何だったんだ?」
「わからん。ともかく、邪魔はなくなったらしいな」
「いやー、何なの!」
路地に少女の悲鳴が一声響き、すぐにそれも男の手に押さえ込まれた。
次、「モヒカン刈り=ライオン」
209:この名無しがすごい!
11/04/25 19:32:04.72 ej4JdeVP
「モヒカン刈り=ライオン」
『バーバー・ライオン ☆モヒカン刈ります!☆』
…
いつもの帰り道、ちょっと気分転換をと、横路地へわがおみ足を流れさせたさきには、そう電
光掲示板をループするオレンジ色の点文字群がとらえられた。
「これは、モヒカン型に刈ってくれるのか、それともモヒカンそのものを刈るのかわからなく
ないか?」
常識的に考えれば無論前者なのだろう。
しかし、電光のほうでなく、出入扉に書かれた『バーバー・ライオン』の文字が、微妙にホラー
映画のタイトルじみたようにただれていて、そんな突拍子もない想起を誘う。
「ま、ちょうど髪伸びてきたとこだし、入ってくか…」
カランカラン!
「すいませーん。散髪お願いしま」
「でるるrrらあ!」
突然、そんな野太い叫声をともなって突きを放たれた日本刀の切っ先だが、俺の首の皮一枚の
ところで制止した。
「……」
「…ちっ。モヒカンじゃなかったか」
「モヒカン『狩り』かよ!」
「ほっぷすてっぷ○○○」
210:この名無しがすごい!
11/04/25 19:44:27.97 v+AmvLqd
「ほっぷすてっぷ○○○」
世界の果てで愛を歌う少女がいるという
果たして愛とは歌えるものなのだろうかという素朴な疑問
私は愛の歌を確かめるべく彼女に会いに行くことにした
図書館やネットで彼女の情報収集した
情報収集の結果、彼女がいると思われる場所は全世界で256箇所
それもほとんどが信じるに足りない情報ばかりだった
私は落胆し、偶然入った喫茶店で新聞を読んだ
そこに目に止まる一文
ほっぷすてっぷ○○○
一瞬、理解不能になった私は手にしていたコーヒーカップを落とすところだった
もう一度、紙面を見る
やはり意味不明な一文が紙面にでかでかと印刷してあった
私はこれは一体何なのだと思い考え込んだ、しかし、やはりというべきか答えが出ない
コーヒーを一気に飲み干し、ウェートレスを呼び、こう告げた
「僕と結婚してください」
211:この名無しがすごい!
11/04/26 01:24:38.75 hLoQC4f+
「僕と結婚してください」
その記念すべき言葉を贈ってくれたのは、自分自身の父だった。
私はため息をつきながら仏壇を眺める。そこには母の遺影。
両親を襲った交通事故さえ無ければ父は今も正常だったろう。
それまでの平和で暖かい生活が脳裏を蘇ったが、形になる前に消えた。
父は正常とは言えない意識の中で、私に母を見ている。
私は正常かもしれない意識の中で、父に答える。
「これなんの音?ベッドの下から聞こえるけど」
212:この名無しがすごい!
11/04/26 12:40:53.33 woA8Gwir
「これなんの音?ベッドの下から聞こえるけど」
かしゃりかしゃり。
そんな金属様の音に、少女は気になってベッドの下を覗いた。
スパン!
「ッ―――」
あとには、体から脱出を果たした少女の顔が、ごろり、と、
床一面をキャンパスに見たて幼稚な朱絵を描いただけだった。
「夢野久作によろしく」
213:この名無しがすごい!
11/04/26 14:28:23.52 zyrn+dVb
「夢野久作によろしく」
お隣に塀が出来たってねへー
隣の客は牡蠣食う客だ
まんじゅうこわい
僕がそんな歌を歌っていると彼女がいった
「へい!ボーイ!ユアナイスガイ!」
カタカナ英語だった
彼女はこんなんでも帰国子女
アメリカに十年暮らしていた
「あーサンクス!サークルケーサンクスイズフェーマスコメディアン」
とりあえず返事をする
「オーーー!マイグランパーパーゴットファーザー!」
そう意味なんて無い言葉のやり取り、これが彼女流のコミュニケーション
それは置いといて、俺は鞄から一冊の本を取り出した
タイトルは「夢野久作によろしく」
表紙を見るにどうやらハードボイルドみたいだ
本を開き読み始める
隣りで彼女が着替え始めた、いつもの癖だから気にしない
気にしない俺、ハードボイルドに決めてみた
「朝食は牛乳とトマト」
214:この名無しがすごい!
11/04/26 19:12:10.82 +/lIK0cP
その日は凛吏が家へ泊まりに来ていた。理事長の娘でお嬢様な彼女も
たまには庶民的な生活を味わってみたいとか何とか。
当然、俺と同じ部屋に寝るわけにもいかないので俺だけ別室で凛吏に
はミディアと一緒に寝てもらっていた。
~ミディアの部屋にて~
「どうして優神さんは、私に振り向いてくれないのでしょう。こんなに
魅惑的なプロポーションをしていて、なおかつエロチックな発言も沢山
しているというのに。どうにか優神さんをエロ好きに」
「ほんっとアイツ鈍いわよね。あたしだっていつもはツンツンしてるけ
ど、たまにはちょーっとデレたりもしてるのよ? やっぱり胸が小さい
のがいけないのかしら」
二人の美少女は別室の鈍チン野郎へぐちぐち文句を垂れていた。
いくら主人公は恋愛に鈍いのが鉄則だからといって、彼女らもいい加
減待ちきれなくなっていた。
ミディアは思う。どうにか優神をエロ好きに。
凛吏は思う。どうにか自分の貧相なバストを豊満に。
ふと、思い出したようにミディアが口を開いた。
「そういえば、胸を大きくするには牛乳だとよく聞きますね」
続いて凛吏も口を開く。
「そういえば、トマトを沢山食べるとエッチなことが好きになるらしい
わね」
明かりの消えた部屋の中、二人の瞳がキラリと光った。
~翌日~
「なあ、今日の朝飯は何がいい?」
「「朝食は牛乳とトマト」」
「そ、その……自動販売機の下とか?」
215:この名無しがすごい!
11/04/26 19:18:01.72 +/lIK0cP
上のはミス
その日は凛吏が家へ泊まりに来ていた。理事長の娘でお嬢様な彼女も
たまには庶民的な生活を味わってみたいとか何とか。
当然、俺と同じ部屋に寝るわけにもいかないので俺だけ別室で凛吏に
はミディアと一緒に寝てもらっていた。
~ミディアの部屋にて~
「どうして優神さんは、私に振り向いてくれないのでしょう。こんなに
魅惑的なプロポーションをしていて、なおかつエロチックな発言も沢山
しているというのに。どうにか優神さんをエロ好きに」
「ほんっとアイツ鈍いわよね。あたしだっていつもはツンツンしてるけ
ど、たまにはちょーっとデレたりもしてるのよ? やっぱり胸が小さい
のがいけないのかしら」
二人の美少女は別室の鈍チン野郎へぐちぐち文句を垂れていた。
いくら主人公は恋愛に鈍いのが鉄則だからといって、彼女らもいい加
減待ちきれなくなっていた。
ミディアは思う。どうにか優神をエロ好きに。
凛吏は思う。どうにか自分の貧相なバストを豊満に。
ふと、思い出したようにミディアが口を開いた。
「そういえば、胸を大きくするには牛乳だとよく聞きますね」
続いて凛吏も口を開く。
「そういえば、トマトを沢山食べるとエッチなことが好きになるらしい
わね」
明かりの消えた部屋の中、二人の瞳がキラリと光った。
~翌日~
「なあ、今日の朝飯は何がいい?」
「「朝食は牛乳とトマト」」
「ああ、そういや今日は安売りだったな」
216:この名無しがすごい!
11/04/27 08:44:07.13 fLIJx6Fk
「そ、その……自動販売機の下とか?」
「ああ、そういや今日は安売りだったな」
彼は、我が意を得たりとばかりに、うなずく。
「そうだよ、五台くらい回れば、二〇〇円くらいなら手に入る。二人分のジュースが買えて
おつりが来るぞ」
そういうと、俺の手を引いて、手近な自販機に向かう。まず、彼が見本とばかりに膝を
ついて、その下をのぞき込む。そっと手を伸ばして、地面との隙間を探った。
「あれ?」
彼が怪訝な表情を浮かべる。
「どうした?」
「いや、何か……あれ、あ、わあああああ!」
彼の体が、絶対に入れないはずの、自販機と地面との間のわずかな隙間に、みるみる
吸い込まれていったのだ。慌てて俺は彼の足を引っ張る。しかし、俺自身も、彼に引っ張
られて、目の前が真っ暗になった。
気がついたとき、そこは異世界だった。それが俺と彼との英雄への道の始まりだった。
「RPGがなんぼのんもんじゃ」
217:この名無しがすごい!
11/04/27 09:03:36.10 ZZZcnbO/
「RPGがなんぼのもんじゃい」
勇者。
俺は勇者だ。
そうだろう。
魔王?なんのことだ。
魔物?なんのハナシだ。
ここはそんなファンタジー世界じゃない。
現実だ。
「っ!対戦車ライフル(RPG)だ!全員散れーっ!」
ドーン!
突然の強襲で俺の所属する一個小隊が散り散りにはじかれる。
「くそっ!トニー!ジャック!スペツナズ!」
ダメだ!みんなLPが0だ!
仕方ない、俺も一度落ちたほうがいいだろう。
――――某マンションの一室にて。
「ぐへへへ。RPGがなんぼのもんじゃい。FPS楽しいお」
「ざっくばらばら」
218:この名無しがすごい!
11/04/27 16:14:13.41 2di+C6Qs
「ざっくばらばら」
ざっくばらんに話せば、僕は死体遺棄事件の共犯者だ。
彼女から「人を殺してしまった」と電話を受けて、冗談だろうと思いつつ駆け付ける
と、そこにはダンボールに詰められた死体があった。
「マンションの前でこの金髪の人と残りの二人がナンパしてきてね。あんまりしつこい
から、思いっきりぶん殴ったのよ。そしたら、動かなくなっちゃって。しょうがないから
引っ越しの時に使ったダンボールを持っていって、中に詰めて、ここまで運んできたの」
そのとき僕は彼女の部屋から逃げ出し、警察に助けを呼ぶべきだったのだろう。
だが、そのステップは大きく省略され、僕らは別の考えに憑りつかれてしまった。
どうやって処分するか。このサイズでは怪しすぎる。小さくしよう。そうしよう。
そして僕は言われるままに青いビニールシートと肉切り包丁と手袋を遠くのホーム
センターで買ってきて、彼女に手渡した。
彼女は部屋の床にビニールシートを広げ、死後硬直した遺体をごろんと取り出すと、
ざくざくと肉切り包丁で遺体を切断し始めた。まず腕を肩から切り落とし、次に脚を
膝と鼠径部の二個所で切り落とした。腹部を切開し、臓物をビニール袋に詰めた。
胸部と腹部を切り離す。最後に首を切り落として、遺体は九つの部位に分断された。
彼女はそれらを生ゴミとして出すことを提案した。もちろんこのマンションではない、
別のマンションのゴミとして、だ。
彼女のマンション周辺のゴミ曜日は、おおむね統一されている。禁止されている黒い
ビニール袋でも、表面に「生ゴミ」と大きく書いておけば、業者は放置していったりは
しないだろう。
僕はサングラスをかけて―こんな使い方をするとは思わなかったが―ゴミ出しに
出掛けた。ゴミ置き場を監視するカメラがあるかもしれないが、解像度はたかが知れて
いる。その間、彼女はビニールシートを片付けるのに忙しい。僕が帰って来た時には、
折り畳まれたビニールシートと、風呂に入っている彼女の姿があった。
僕は、そういった内容を、一か月後に警察に洗いざらいぶちまけた。事件の証拠は
未だに見つかっていない。新聞の一面を飾ることも無い。ただ、僕は罪の意識に耐え
きれなくなったのだった。だが、警察官の反応はいまいちだった。
「ざっくばらばら殺人事件ねえ……」
君、作家にでもなったほうがいいよ。そう言われて、僕は丁重に警察署から追い
払われた。
「リサイクルサイクル」
219:この名無しがすごい!
11/04/27 19:17:04.83 PgJZwkrd
「リサイクルリサイクル」
仕事がない
ハロワークから紹介を受け応募した数60社
無料求人誌を見て応募した数、もう覚えてない
ネットで求人見て応募した数、やはり覚えてない
もう一年以上働いていない、親に泣きついて生活費だけは仕送りしてもらっている
もういい年なのになさけない
そんな落ち込んでる俺に声を掛けてくれる人がいた
軽トラで街中を走って中古品回収してるリサイクル回収業のおっちゃんだ
余程俺の顔から生気がなくなっていたんだろう
おっちゃんはよく分からねえけど人生捨てたもんじゃねえよ
がんばらなくていい、ただ小さな楽しみでいいから見つけなといってくれた
仕事がないなら、おっちゃんが社長に頼んでやるけどどう?やる?ともいってくれた
俺はおっちゃんの優しさに触れ、泣いた、何年ぶりの涙だろうか
おっちゃんに頭を下げ社長を紹介してもらうことにした
後日携帯に連絡がいくだろうからとおっちゃんは笑顔でいってくれた
おっちゃんありがとう、こんなどうしょうもない俺に救いの手をさしのべてくれて
・・・その時はマジで感動し感謝した
あれから半年
俺はおっちゃんが紹介してくれたリサイクル屋で働いている
いや搾取されている
リサイクル回収に使う軽トラは会社からレンタル月10万、ガソリンなど消耗品は俺持ち
回収してきた商品は分別して社長が値踏みする、思いっきり買いたたかれる
簡単にいってしまえば、社長の軽トラをレンタルして社長が転売するブツを集めてくるだけだ
そこにはエコなどというきれい事はまったくなく
ひたすらにどん欲な金儲けしかなかった
働けば働くほど赤字になっていくシステムによって、俺は社長から借金をしていることになっている
半年でざっと50万近い、なぜって軽トラレンタル料を上回る利益を出せないからだ
もはや俺はこの社長の奴隷といってもいいだろう、近いうちに社長とおっちゃんをどうにかしようと画策している
我が自由のために
ちなみに会社名はリサイクルリサイクルだ、この名前を見かけたら石でもぶつけてやってくれ
「図書館日和」
220:この名無しがすごい!
11/04/28 00:51:59.99 puCqFOVx
「図書館日和」
「にゃにゃにゃ、チェルシーちゃん参上っ。待った?」
街中にある、待ち合わせ場所として有名な時計台の前に佇んでいた
僕の背中をそんな声が陽気に叩いた。
「ううん。全然待ってない。僕も今きたとこだよ」
僕は微笑みながら振り返る。
そこには待ち合わせの相手、チェルシーちゃんが
向日葵のような笑顔をたたえて立っていた。
本当に、いつ見てもチェルシーちゃんは可愛い。そんな
彼女と僕が今日デートだなんて今でも信じられない。
「なーんだにゃ? やけににゃにゃしちゃて」
チェルシーちゃんが怪訝そうに僕の顔を覗きこんできた。
「な、なんでもないよ」
僕は咄嗟に手を振って誤魔化す。
「ふーん。まあいいけどっ。それじゃいこっ?」
「うん」
ぱあっと向日葵すら超える笑顔を見せたチェルシーちゃんに
手を引かれ、僕は絶好のデート日和の中を歩き出す。
繋がれた手を見ながら、僕は確信にも似た期待の感情を膨らませていた。
きっと、今日は最高の思い出がつくれる―。
という話を一人、図書館で執筆する俺。
ふと手を休めて外を見ると、今日の天気は今書いていた
小説と同じでとても清々しい天気だった。
ぼんやりと青い空を見つめ、俺はぽつりと呟く。
「今日は図書館日和だな」
「こういうのって、やっぱ何となく辛いよね」
221:この名無しがすごい!
11/04/28 16:46:33.23 1F20Li3B
「こういうのって、やっぱ何となく辛いよね」
近頃、昔付き合っていた彼女から電話が掛かってくる。
彼女はもう結婚していて、今年で二歳になる子供もいる。旦那さんも真面目な人で、
彼女の状況は客観的に言って幸福だと、誰もが認めるだろう。
それに比べて、俺は大学を卒業したものの就職活動に失敗し、今では実家に戻って
ニートをしている。
彼女が電話をしてくる理由は、単なる暇つぶしだ。俺がニートをしていることを
知ってから、彼女はスカイプ―無料で電話ができるアプリケーションだ―で俺と
よく話すようになった。
だいたいの場合、文字によるチャットから始まり、通話に移行する。チャットでも
通話でも、彼女のとりとめのない愚痴を―旦那が返ってくるのが遅いとか、家事を
手伝ってくれないとか、最近天気が悪くて困るだの―俺が聞き流すだけだ。
そんなことで彼女が満足するというなら、僕は何時間でも彼女の言葉に耳を傾け
続けるだろう。
今日の天気は晴れていた。めしおち。そうタイプして、マイク付きのヘッドホンを
外し、昼食を取る。そしてスカイプに戻る。ちょっと図書館行ってくるので落ちます。
そうタイプする。
「もしかして、私のこと嫌い?」
「なんでそうなるの?」俺は聞いた。
「だって私、元カノなのに未練たらしく電話しまくってるし、まーくんが新しい彼女
作らないのも、私がまーくんの時間をたくさん奪っちゃってるせいだし、みんな私が
悪いんだよ……」
彼女はうつ傾向がある。ネガティブな考えに憑りつかれると、視野が狭窄するのだ。
「こういうのって、やっぱ何となく辛いよね」
「そんなことはない」
僕は自分の声の大きさに吃驚した。
「そんなことはない」
もう一度、僕は確かめるように繰り返す。
「ありがと」
そう呟いて、彼女は電話を切った。
「セーブデータは消えました」
222:この名無しがすごい!
11/04/28 18:21:24.99 Pg4QhCTj
「セーブデータは消えました」
セーブデータというのは外的な記憶媒体の一つ。
当たりまえのことだけれど、例えば、だ。
私の暮らしているこの現実(みらい)のように、VR技術を駆使したゲームが隆盛したとしら、
どうだろう?
そう。頭にヘッドギアをはめ込むアレ。
その場合、人間の脳はゲーム世界と直接リンクすることになる。
これも当然。
でもだから、記憶とセーブデータもリンク、というより、セーブデータが記憶領域を拡張して
いる、といったほうが正しいかもしれない。
つまり、VRゲームでのセーブデータというものは、人間の記憶とほとんど同じ。
だから。
だから今回のように。
『セーブデータが破損してしまった』人間。
…私のような人間は。
ほとんど記憶喪失と変わらない。
「――――またここに戻ったか…」
「セーブデータが消えました2(↑の続き)」
223:この名無しがすごい!
11/04/28 18:54:31.79 nYkQkek6
「セーブデータが消えました2(↑の続き)」
「私、難しいこと嫌いなのよね、よく分からないしさ」
彼女はそう呟きながらタバコに火をつけた
「おっと、俺の前でタバコは止めてくれよ」
俺は火がついたタバコを握りつぶした
かなり熱いが我慢する
「ちょっと、なにすんのさーあんたタバコを握りつぶしたんだよー?わかってんの?」
「ああ。分かってるよ、俺の手は昔から鍛えてるから少々の熱さなら平気なんだぜ?」
「・・・嘘。あんた嘘付いてる、なんで熱くないなんていうの?もう!」
彼女は俺の手をいとおしそうに握ると涙を流しながら「バカ」といった
俺は彼女のことを愛している、彼女も俺のことを愛してるはずだ
ぐさり
「なんてね。てへ!私があんたのこと心配するとでも思った?ばーかー」
俺は自分の背中を触る、深々と刺さるナイフがあった
「どうせ、死んでもセーブしたところからやり直すんでしょ」
彼女は俺の腹に蹴りを入れた
なんてことだ、彼女は最初から俺を殺すことが目的だったんだ
と、いいたいところだが、彼女はさっき俺がナンパした女だった
「奇跡はあるよ」
224:この名無しがすごい!
11/04/28 19:23:40.53 /omwLka3
「奇跡はあるよ」
「あたし、奇跡って信じてるの」
唐突な告白だった。
「具体的に言うと恋愛とか。30億ずつの男と女が一人を見つけて、愛し合うの。コレって奇跡みたいなもんだよね?」
彼女は恋愛に幻想を抱いているようだ。
打算も濁りも無い純粋な恋愛を信じる。彼女はそのような類の人間らしい。
「ねぇ、アンタはどう? 奇跡とかって信じてる?」
「うん、信じてるよ」
俺もまた、その類の人間だった。
「俺と君の間に、奇跡はあるよ」
「卵かけフランスパン」
225:この名無しがすごい!
11/04/28 22:51:37.00 1F20Li3B
「卵かけフランスパン」
さて、今日の料理の時間です。テレビの前の皆さん、準備はいいですか。
まず、フランスパンを包丁で切ります。このときなるべく薄く切るのがコツです。
次に、スクランブルエッグを付くります。卵は前もって撹拌しておいてください。
フライパンに少量の油を敷き卵を流し込みます。そして、長い箸でぐちゃぐちゃに
かき混ぜま。塩を少々入れてもいいかもしれません。
スクランブルエッグができたら、先ほどのスライスフランスパンンの上に乗せます。
これで完成です。
好みでサンドイッチにしてもいいでしょう。キャベツ、シーチキン、ベーコン、
チーズなどを挟むのも美味しいですね。
では、これで料理の時間は終わりです。テレビの前の皆さん、ぜひお試しあれ。
「ネクタイの柄はくまの○ーさん」
226:この名無しがすごい!
11/04/29 13:53:40.51 QuUSxFUy
「ネクタイの柄はくまの○ーさん」
世界史教師の蓮池直哉(26歳)が自宅で殺害されたのは3月△日(水)の午前9時から11時ごろだった。
蓮池直哉はモデル顔負けの甘いマスクに加え、
高学歴で文武両道、実家は裕福…とにかく女性にモテる男であり
大学時代から付き合ってる有名局アナ、父親を通じて知り合った女性ライター、
勤めていた高校の複数の生徒など、さまざまな女性と性的な仲であった。
警察は被害者の交友関係から犯人特定に繋がる情報を得ようとしたものの、
殺害の動機を持つものが多すぎること、加えてそのほぼ全員にアリバイがあったことから難航していた。
(註:局アナは全国ネットの生放送番組に出演していた。
女性ライターは前日夜からドイツに滞在していた。
高校の生徒はほとんど卒業式の予行演習で体育館に集められていた。
欠席した生徒についても現在まで不審な点は見当たらない)
事件発生から一週間後、我々は蓮池直哉殺害現場となった部屋にふたたび足を踏み入れた。
部屋の中でも血だまりが色濃い一帯には人の形をした印が付けられている。
今は鑑識に運ばれている遺体は数十ヶ所の刺傷切傷があり使用された凶器は複数、
性器は切り取られたうえでナイフで串刺しにされていた。
そして今でも壁には蓮池直哉の血液で
『汝の罪は苦痛の果ての死を以てのみ償われる』『惨めに死ね』
『正義の神に代わり高貴なる断罪を執行する』などの文面に混じり
ひときわ大きな血文字で『ネクタイの柄はくまのプーさん』と描かれている。
「なんでプーさんなんですかね?捜査の手がかりにもならないしなんなんだか」
同僚が溜め息混じりに呟いた。
次のお題
「レイチェル(笑)」
227:この名無しがすごい!
11/04/29 13:57:59.75 2ZbwJ5rN
「レイチェル(笑)」
学園都市とは名ばかりの荒くれ都市レイチェル
今日も荒くれ者が青春を謳歌する
電撃姫こと四坂琴音は街に出て弱い物いじめ
白馬に乗った王子様が琴音をお仕置きしてくれるまで街を彷徨い歩くのさ
ちょっとばかり弱いものを炒めるのも私へのご褒美
「ガストの宅配」
228:この名無しがすごい!
11/04/30 03:16:23.67 l1dF+E5x
「ガストの宅配」
港町の上空を鳥に乗った少女が飛んでいる。
彼女の名前はガスト、遠い町から修行にやってきた見習い魔女であり
住み込みで働いているレストランの食事を暖かいうちにお客さんに配達するのが仕事である。
「…今日の宅配はこれで終わりっと♪…あっなたっのたーめにチャイニーズスープ♪……んぬぅ?」
お気に入りの歌を歌いながら月夜を飛行するガストの前に
モップに跨がる少女が立ち塞がった。
彼女の名前はミスド、ドーナツ屋の配達を生業としている修行中の魔女であり、
「ガスト!魔女のくせ白い鳥に乗るなんて外道だわ!
魔女といったら箒!!メーヴェに乗る魔女とか!!ありえない!!!」
「…この鳥の名前はメーなんとかじゃなくてスカイラークだと何度言えば
というかそっちこそ箒じゃなくてモップ…」
「うるさい!私の可愛いダスキンをモップ呼ばわりするとは何事!!
今日こそ決着をつけてやる!!!やーいやーい貧乳女」
「…黙れピザデブ」
こうして今宵も港町の上空で壮絶な戦いが始まったのであった。
「ももものこ」
229:この名無しがすごい!
11/04/30 10:39:57.71 ay2qtIP8
「ももものこ」
百々(ももも)、という名前の子と知り合ったのは、私が四国、徳島県の学校に初めて
赴任したときのことだ。
小学六年生の彼女は、かわいくて元気な女の子だった。成績も優秀で、特に家庭科の
授業では料理の才能をいかんなく発揮した。女子のリーダー格であり、いじめを許さな
い正義感を持っていた。彼女のおかげで、クラスはいつもいい雰囲気に保たれていた。
しかし彼女にはひとつだけ問題があった。将来の夢を書くというレクリエーションで、
彼女は何のためらいも無く、先生のお嫁さんになりたい、と言い放ったのだ。僕は困惑
した。数年間の四国での勤めを終えたら、転属願を出して本州の地元に戻るつもりだっ
たのだ。
だが、彼女の熱心なアプローチは、とどまる事を知らなかった。毎月ラブレターを
貰い、バレンタインデーにはハート型の手作りチョコを貰った。僕は内心呆れながらも、
彼女の情熱がいつか覚めるだろうことを期待した。それに、初恋は実らないというでは
ないか。僕はそれでも、彼女が送ってくれたラブレターを時折読み返した。
それから七年が経ち、僕は彼女と結婚した。とっくに彼女の担当教諭ではなくなって
いたが、教室を超えた、学年を超えた、そして学校を超えた恋のアプローチに、ついに
根負けしたというのが正しいところだ。
僕らはやるべきことをやり、彼女は妊娠した。
「名前は百々子。ももものこ、で決まりね」
彼女は自分の子供の名前まで、既に決めていたらしい。僕は遠大な計画の一部に過ぎ
なかったのだ。
「二人目はあなたが名前を決めてね」
語尾にハートマークをつけて、百々は言った。
「チェルノブイリ生物圏保護区」
230:この名無しがすごい!
11/04/30 15:28:02.83 Adfp5reh
「チェルノブイリ生物圏保護区」
『Biosphere Reserves of Chernobyl』
略称ブロック(BRoC)。日本では、“領域"と書いてブロックと読む場合が多いみたい。
1986年4月、あの大規模原発事故は、人々に直接的な死をもたらしはしなかった。
“直接的な”悪影響を引き起こしはしなかった。
その代わり。
その代わり起こったのは。
新生物(ネオクリーチャー)の誕生、そしてその大繁殖。
事故により放出された放射能は、人もなにもかも含めた生き物すべてを、手当たり次第に化け物へと変えていった。
ヤツらは獰猛だった。狂暴だった。強靭だった。
近くにある街や村落からつぎつぎと、文字通り人間を食い潰し、今や、ユーラシア大陸のほぼ
すべてはヤツら新生物の巣と化している。
「今日はずいぶんと獲物が少なかった」
そして私は、そんな新生物のメス。
思考能力があるということは、元は人間だったのだろう。
しかし、生前(?)の名は忘れてしまったし、なにより、名などどうでもよい。
「まずそうな人間のコドモが二匹…か」
ずる…ずる…と、引きずるのもなかなか楽ではない。
「……か…た……す…」
「ん?あら、まだ息があったの?でももう一匹は…死んでるわね。ま、生きてたほうが美味し
いからかまわないけれど」
「ひっ…!ひ……ぃゃ…」
なにやらか細い声でうめいている。もうだいぶ原型はとどめてないが、狩る前の記憶からする
と、人間の女児だったはず。10歳前後かな。
「お…ゃめ……ぁさん」
かすかに、「お母さん」という単語が聞こえた。
どうやらあまりの激痛と恐怖で発狂しかけているみたい。
…それとも。
それとももしかして、本当に私がこの子の母親だと、そんなこともあるのかもしれない。
なにせ、私には「こう」なる前の記憶がないのだもの。
でもまあ、どうでもいいことでしょう。
とにかく今夜は、踊り食いが楽しめそうでなによりだ。
「ゲーム」
231:この名無しがすごい!
11/04/30 16:57:12.53 aDZXoMEB
「ゲーム」
運命の輪ともいうべきなんだろうか
私の一族はみな共通のルールに従い死んでいった者ばかりだ
祖父、祖母、父、母、兄もルール通りに死んだ
私に残された身内は妹だけになってしまった
妹だけはルールに縛られることなく生きてほしい
これが私の願いでもあり希望であった
我が一族を縛るルール
それは至極簡単なことだった
ある年齢に達するまでに先祖が掛けた呪いを解かなければ、呪いにより死んでしまう
たったそれだけのこと
こんな科学万能な世界で何をと思ってしまうほど、馬鹿げている
馬鹿げているからこそ、呪いは呪いとして発動しつづけ我が一族を呪い続けたのだ
妹を守るために私はこの呪いに終止符という楔を打つつもりだ
兄は死ぬ直前にこれはゲームだ、簡単に見えて実はやはり簡単だ
仕掛けさえしってしまえば誰にでも解くことが出来るといっていた
それと兄はもう一つ付け加えた、爺様の生まれ故郷に行けと
私は妹の手を引き切符を買い電車に乗り込んだ
「ゴールデンウィーク」
232:この名無しがすごい!
11/04/30 18:42:37.10 Adfp5reh
「ゴールデンウィーク」
「がっ……」
どさっ。
倒れこんだ。
「なにうずくまってんのよクソ虫?」
「……ぉまえが、俺のゴールデンウィークポイント(弱点)を…」
「アンタがあたしに触れるからよ」
「触ってきたのはお前からだが!?」
「そのほうが蹴りやすいじゃない」
「だからなんで?」
本日、某高校の入学式。
席が隣同士になったよしみで握手をこわれたのはいいのだけれど、なぜかその直後こういうこ
とに。
「いや、俺これ、暴行罪で訴えていいレベルだと思うんだけど?」
「今日はエイプリルフールにゃんっ♪」
「全国の入学式はたいてい一日にはありませんー!残念でしたー!」
「仕方ないじゃん。なんかスレの流れが暗黒面化してたんだもん」
「だからって無理矢理すぎだ馬鹿野郎」
「ビーナッツとは何か」
233:この名無しがすごい!
11/05/01 06:55:28.74 9K8Z1PTk
「ピーナッツとは何か」
チャーリー・ブラウンは、積年の疑問を持っていた。
この漫画のタイトル、ピーナッツとは何か、という疑問である。その疑問が解ければ、
自分がなぜチャーリーブラウンなのか、なぜ自分が率いる野球チームが勝てないのか
という難問にも、答えが見出せそうに思えたのである。
妹のサリー・ブラウンに訊いたところ、「知らないわよ」と言われた。
ルーシーに訊いたところ、「何で私がそんあ質問に答えなきゃなんないのよ!」と言
われた。
ライナスに訊いたところ、「僕よくわかんないや」と言われた。
シュローダーに訊いたところ、「それは難しい質問だね」と言われた。
先生に訊いたところ、「勉強すればいつか分かるわよ」と言われた。
そうか。結局、誰も満足な答えを持っちゃいないんだ。
チャーリー・ブラウンは家に戻ると、スヌーピーに尋ねた。
「ねえ、君はどう思う?」
スヌーピーは犬語で答えた。
「タイトルはユナイテッドがシュルツに相談せず、勝手に決めたのさ」
しかしチャーリー・ブラウンは犬語を理解できなかった。
「君に訊くなんて、僕はどうかしているんだろうね」
チャーリー・ブラウンは少し笑うと、家の中に入って行った。
「皇帝の椅子」
234:この名無しがすごい!
11/05/01 08:25:02.43 aZtl+3Cy
「皇帝の椅子」
ここに、皇帝の椅子がある。私は彼女に皇帝の椅子に座るよう促した。
彼女は、頭にハテナマークを浮かべた様子ながらも、私の指示にしたがってくれた。
よし、チャンスだ。と私は彼女に告白した。
「結婚してください! 一生幸せにします!」
彼女は答えた。
「ごめんなさい!」
ちくしょう……肯定の椅子じゃなかったのかよ……。
「猫舌ソーセージ」
235:この名無しがすごい!
11/05/01 10:23:24.47 qfajAQ2p
「猫舌ソーセージ」
「何だよ、それって?」
ハ○ーの質問に、ロ○が自慢げに答える。
「だから、猫舌ソーセージ。兄貴が開発したんだ」
○ーマイオ○ーが、あきれ顔で聞く。
「だから、それ、何の役に立つの? 誰得?」
「まあ見ててよ」
○ンはそう言うと、斜め向かいにいたネビ○・○ングボトムに声をかける。
「これやるよ。うまいんだぜ」
「いいの? ありがとう」
3人が見つめる中、彼は嬉しそうにそれを食べた。
「変わった味だけど、おいしかったよ」
彼はそう言って、カボチャスープを一口。その途端に、それを吐き出した。
「うわっち。熱いよ、何だよ、これ。こんなの飲めないよ」
「わあ、きたない」
向かいの席のパー○ティたち数人の女の子が悲鳴を上げてよける。もちろん、
すぐにネ○ルへの総攻撃が始まる。
「ははは、こんな風になるんだ」
○ンはそれを指さして笑う。○リーも笑ったが、ふと見ると、ハー○○オニー
が皮肉な表情を浮かべてごそごそしていた。よく見ると、ソーセージらしきものを、
皿の上で細かく切り分け、ロ○の前のカボチャスープの器に入れていた。それらは、
スープに沈んで、外見では見えなくなる。
「馬鹿馬鹿しい。ハリ○、もう行きましょ」
彼女はそう言うと、ついと席を立つ。スープを取り上げる○ンをちらりと見て、
ハ○ーもその後に付いた。
「ロ○、気を付けてね」
「ああ、じゃあね」
二人の背後で、直後に派手な悲鳴が聞こえた。
「うっかり関取」
236:この名無しがすごい!
11/05/01 11:32:03.69 9K8Z1PTk
「うっかり関取」
―では愚霊(ぐれい)さん。関取に昇進したご感想をどうぞ。
ついにやった、という感じですね。感無量です。
―相撲取りになろうとした経緯を教えてください。
元々、日本のゲームに興味がありました。
―相撲に興味があったという意味ですか?
いえ、セキトリゲームというのがあるでしょう。
―関取ゲーム、ですか?
いや、席取りゲームです。椅子を取り合うやつです。
―それが相撲と何か関係が?
はい。子供の頃、セキトリをやりたい!と親に言ったら、
日本の相撲部屋に連れていかれました。
―うっかり間違ってしまったと?
そうですね。子供だったので、良く分からずに、これが
日本の席取りゲームなんだと納得して、猛特訓しました。
―気付いたのはいつごろですか。
ごく最近です。
席取りという割に、席が無いので変だなとは思っていたのですが。
―えー、インタビューの途中ですが、日本相撲協会から
ストップが入ったため、ここでインタビューを中断致します。
放送が再開されるまでしばらくお待ちください。
「狼のダンス」
237:この名無しがすごい!
11/05/01 13:15:19.95 qfajAQ2p
「狼のダンス」
昨日、我が家の犬が脱走した。
夕方に姿を消し、翌朝には戻っていた。普段は大人しい日本犬なのだが。そう
言えば、去年も今頃そんな事があった。数日間、毎晩姿を消したのだ。
夕方、物陰に隠れて、私は犬を見張った。すると、彼は急にそわそわと辺りを
見回し、鎖を限界まで引っ張り、首を捻るようにして、首輪を脱した。そのまま、
小走りに裏山に駆け出した。
そっとあとをつけると、彼は山道を駈け、尾根筋に出ると。林の中の空き地に
出た。そっと覗くと、何匹もの犬が集まっていた。近所の飼い犬や、見慣れた野
良犬もいた。
彼らは、声も出さずに互いを見合うようにたたずみ、それから、彼方に見える
奥山に、揃って頭を向けた。
そうして、やはり揃って頭を下げ、立ち上がり、また腹這い、それから立ち上
がって、輪になってぐるぐる回った。
いつまでも続く不思議な動きを見ていると、不意に、その意味が理解出来た。
それは、「狼のダンス」だったのだ。彼らの神であったニホンオオカミを悼ん
で、犬たちが捧げる踊りだった。
これは人間の触れるべきものではない。踊り続ける犬たちに背を向けて、私は
家に帰った。
「鯨が地面に埋まっています」
238:この名無しがすごい!
11/05/02 01:43:03.45 nmqN1jk2
「鯨が地面に埋まっています」
「………うまそうだな………」
最近くじらなんてスーパーとかにはないもんなー。
捕鯨なんたら…だったっけ?
しかしこれ、これはどうなんだろうか?
密漁になるんだろうか?
海の見える丘なんてまったくない、変哲のないフツーの公園。
そのど真ん中にグサッ!!!……っと、体の半身を地面に突き刺したザトウクジラが屹立?して
いる。
…しかし俺も冷静なものだな。
むしろあまりの状況に発狂しかけているのか?
「いや、大学生にとって食費は文字通り死活問題だし…」
これはもらっていっていいよな?
全部は無理だけど、今日の晩飯用に100gくらいなら。
そう言い訳でなぐさめ、俺は包丁がわりのカッターを、近くコンビニまでいって買うことにした。
「uNkNowN」
239:この名無しがすごい!
11/05/02 09:09:39.36 6f6Ifwk8
「uNkNowN」
「ふふふ……やったぞ、うまく入った」
俺は、多分天才ハッカーだ。たった今、最近大人気の少女アイドルのツィターに、
彼女になりすまして入り込んだところだ。そんなことして何をするかって? もち
ろん、嫌がらせだ。悪戯だ。
これから、ここに彼女のつぶやきを偽造する。何と書くか。もちろん、思い切り
嫌がらせでなければならない。何が一番の嫌がらせか? 当然、排泄行為だ。何しろ、
アイドルといえば『○○ちゃんは、絶対にうんこなんかしない!』の世界だからな。
とすれば、書くことは決まっている。
「うんこナウ」
そんな風にタイプして、はり付ける。しかし、何だ? いよいよ実行段階で、どうし
てこんなに手が震えるんだ? いや、怖くない。犯人が俺だと言うことを調べ上げられ
る奴もいるわけない。だから……くそ、落ち着け。ここまで来たら、やるしかないんだ。
「えい! ははは、やってやったぞ」
改めてディスプレイを見る。
「あれ?」
手が震えた上、日本語変換を忘れていたらしい。そこには、こんな文字列が。
「uNkNowN」
「なんでだよー」
「夫テレポーター」
240:この名無しがすごい!
11/05/03 01:54:59.99 00WiIkM2
「夫テレポーター」
ふむ。下品―ていうかエロネタしか思い付かないな。
Sch(えすちゃん)の、「よくわからんお題で次の人がSSを書くスレ」、というスレッド
に投稿するのが僕の日課だ。といっても、やり始めたのは最近なんだが。
…しかし困った。
「ナニナニをテレポートさせて云々だとか、どこどこにテレポートしてあれこれだとか、
成人向けのエロ漫画によくありそうな展開しか思い浮かばない」
だがここはピンク板ではないし、露骨なのは控えたほうがいいだろう。
「…個人的な趣味趣向としては嫌いじゃないが…」
ちなみに、時間帯的にそういうあれにお世話になったのかと勘繰るかもしれないが、そう
でもない。
今日は禁欲デーなのだ。
「……ってもうこんな時間か、仕方ない…」
そううそぶき、僕は次の人のためにお題を考えた。
「forbidden404error」
241:この名無しがすごい!
11/05/03 12:33:29.79 FE7iTKVx
「forbidden404error」
今日からゴールデンウィークだ。しかし俺は特にやることもなく、
自宅に引きこもってオナニーに明け暮れているというのが現状だ。
ダウンロードツールを使って、同人漫画サイトと動画サイトから
オナニーのおかずを並行ダウンロードしていたときのことだ。
いきなり全ての進捗バーが真っ赤に染まり、エラーの嵐が表示
される。forbidden404error。forbidden404error。forbidden404error。
クソッ!俺はアクセス禁止を食らってしまったらしい。今まで
ずっと同じことを繰り返してきたというのに、なぜ今日アク禁を食ら
わなくちゃいけないんだ。俺はプロキシサーバを次々と設定して
試してみたが、どの鯖でも同じエラーが出てダウンロードができな
かった。俺の愛用するロリコンサイトには串対策機能まで組み込
まれたらしい。
「クソッ」
俺は諦めて幼女を見るために近くの公園でも散歩しようかと思い、
着替えを始めた。
外出用の服を着終えたとき、玄関からピンポーンと音が聞こえた。
「警察です。児童ポルノ所持容疑であなたを逮捕しに来ました。
いるのは分かっています。今すぐ開けてください。開けないと公務
執行妨害も追加されますよ」
俺は3TBのハードディスクを埋めたロリコン画像の隠し場所を
探したが、そんな都合のよい場所は存在しなかった。
クソッ。Winnyが廃れたときに収集を止めていればこんなことには……。
俺は観念してドアを開けた。手錠を手に持った警察官二人が
ニタニタと笑ってこちらを見ていた。
「ばあちゃんの草餅」
242:この名無しがすごい!
11/05/04 09:25:07.11 qW1c/O4z
「おばあちゃんの草餅」
桃太郎は、鬼退治の旅に出ました。おばあちゃんは、草餅を持たせてくれました。
「おばあちゃんのは誰にもまね出来ないくらいおいしいんだから、きっと役に立つよ」
桃太郎が道を急いでおりますと、道ばたに、犬耳少女が座り込んでおりました。
「お腹がすいて動けません。何か下さい」
桃太郎は、草餅を出してやりました。犬耳少女は一口食べて、びっくりしました。
こんなおいしいもの、食べたことがなかったのです。
「これは何ですか?」
「おばあちゃんの草餅だ」
では、彼のそばにいると、これが何度も食べられる、犬耳少女はそう思いました。
「お願いです、私をペットにして下さい。素敵なサービスもしますから」
桃太郎は喜んで、彼女に首輪をして、紐でつないで再び歩き始めました。
しばらくすると、今度はお猿の尻尾の少女がいました。
「お腹がすいて(以下略)」
桃太郎から草餅を貰い、その由来を聞いた少女も、ペットになることを望みました。
桃太郎は首輪を(以下略)。
さらに行くと、記事の翼を持つ少女が(以下略)
彼女もペットに(wy
桃太郎はそれに満足すると、家に帰り、3人の少女に色々サービスさせて、天国の
ような毎日を送りました。そんな素敵な日々は、おばあさんが死ぬまで続いたと言う
ことです。
「カエル・コミュニケーション」
243:この名無しがすごい!
11/05/04 12:26:15.91 EUvszhyQ
「カエル・コミュニケーション」
グローバル化した世界で問題が発生した
言葉
今までは英語で意思疎通をしてきたが、近年新興国台頭によりもっと扱い安い言語をという世界の流れになってきた
英語圏の人たちは英語こそが一番簡単で一番意思疎通がしやすい言語と主張し
非英語圏、特にアジア圏の人たちは自国語こそがすばらしいと主張した
世界を二分する議論になり、非英語圏で英語を使うだけで差別されうという事件も起きた
国連は新しい国際言語を作ることを発表しそれに伴い言語学者が言語策定作業に入った
しかし、やはり新しい言語というのはなかなか難しく作業が進まなかった
そんな事態の中である言語が注目される
カエル語
言語学者さえ知らない言語が注目されたのだ
発見は当時18歳の少年だった、少年がなぜこの言語を発見したのかは謎だ
言語学者はカエル語の文法の単純さ発音しやすさに驚いた
一旦、教えてもらえば誰でもしゃべれるようになり
大人が一時間程度文法の勉強をすればすらすらと文章が書けるようになった
学者達はこれをカエル・コミュニケーションと呼ぶことにした
国連を通じて世界中にカエル・コミュニケーションの伝えられ、各国で教育が始まった
そして半年が過ぎ人類のほぼ全てといっていいほど言語がなくなった
代わりに人類はげこげーこげこたーげーことカエルそっくりの鳴き声を操るようになっていた
「電波時計が止まった日」
244:この名無しがすごい!
11/05/04 14:44:01.63 TylT3vyu
「電波時計が止まった日」
2020年。あらゆる時計の電波時計化は、着々と進行し、約9割が電波時計になっていた。
機械時計はクラシック時計と呼ばれるようになり、時計職人は死滅するかに思えた。
だが、時計職人たちは座して死を待つような男達ではなかった。彼らはテロを行ったのだ。
それも完全に合法なテロを。
ある日、共振現象により通常ではありえない超高周波を出すTV広告が流れた。
全ての電波時計は止まった。狂わなかったのはクラシック時計だけだった。時計職人たちは
待ち構えた。クラシック時計を求める客を。しかし、混乱が続いたのはたったの5分と19秒の間だけだった。
基地局から定期的に発せられる信号が、全ての電波時計の時刻を再設定し、駆動させた。
「作曲家だった男」
245:この名無しがすごい!
11/05/04 15:05:23.38 YYghixvf
「作曲家だった男」
男は若いときから天才のピアノ弾きだった。
曲を奏でれば絶賛されるほどの腕前だったが、しかし、それは他人の、との前置きが必要だった。
男が作った曲を奏で始めると、決まって客足は遠のいたのだ。
ある日、長年付き添ってくれた愛する妻に、昔貴方が創った曲が聴きたい、と言われたが、
男はアレの何処がいいんだよ、と一蹴して、家から飛び出た。
男は悔しかった。有名な曲を聴いても、自分の創った曲と比べて何が劣っているのかわからなかった。
それに、自分が奏でれば、曲はさらに良くなっているというのに、なぜ、自分の曲だけが有名にならないのか、と。
男は酒におぼれ、金もつきたときに一件の汚い居酒屋を見つけた。そして、その居酒屋にあったメニューを馬鹿にしながらたのんだ。
メニューには、タイムマシン、と書いてあった。
半信半疑だった男を乗せて、居酒屋型タイムマシンは過去へ飛んだ。
男は、そこでこれから発表されるだろう、他人の曲を自らの曲として発表することにした。
男の曲は有名になった。しかし、愛する妻は、これは貴方の曲ではない、と去っていった。
男は大切な者を失って、名声を得た。しかし、この瞬間から、作曲家ではなくなってしましまった。
「インド人とカリー戦記」
246:この名無しがすごい!
11/05/04 17:59:53.82 Mf0VXF9S
「インド人とカリー戦記」
「インド人だからってすぐカレーと結びつけんじゃねーよ!」
「は?いきなりなんですか?ていうかおじさん誰?」
「そもそもカリーってのは『食事』って意味なんですぅー!」
「はあ…」
「だいたいインドってどこやねん!国か?国のことゆーてんのか?本来はインドゆー
たらネパールとかパキスタンもさすねんで!?」
「いや知りませんよ…」
「ターバン巻いてカレー作ってばっかおもたら大間違いや!ターバン巻いてんのなん
かほとんどおらんわ!つーかネパールとかにもカレーあるっちゅうねん!」
「なんでエセ関西弁なんですか?」
「ちょっ!おまっ!俺がほんまもんのインドみせたる!」
ガシッ。
「あ…おまわりさーん!小児誘拐でーす!たすけてー」
「………え?」
「ライジングサン」
247:この名無しがすごい!
11/05/04 18:30:43.53 HPS3nQRC
「ライジングサン」
「おい兄ちゃん。面子が一人足りねえんだ。混ざって打っていかえねか?」
雀荘で声をかけられたひょろりとしたその男は、申し訳なさそうに卓に座った。
あの三人がコンビ打ちをして初心者をカモにしているということは、この雀荘
ではもはや常識になっている。だが、あの男に警告をしてやる義理は無い。
俺は休憩所に立って煙草を吸いながら、横目でその男がハコにされるのを
見届けることにした。だが、その時。
「あ、あのう……和了りです。天和と、あと、国士無双です」
「ダ、ダブル役満!?」「ふざけんじゃねーぞ!?」「てめえサマったな!?」
「そう言われましても……和了りは和了りですし……」
俺はその男のほうに歩いて行くと、大声で啖呵を切った。
「おう!!負けは負けじゃろが!!払うもん払って出て行きやがれ!!」
「あ、兄貴……」「兄貴がそう言うんじゃ……」「仕方がねえ……」
俺は事を治めると、そのひょろりとした男に訊いた。
「で、どうやった?」
「ま、まぐれですよ。まぐれ。ビギナーズラックってやつです」
俺はそいつの手を捻り上げた。右手の中指に、麻雀ダコがあった。
「なあ、嘘は良くねえぜ、確かその名は……Mr.ライジングサン」
「ば、ばれてしまいましたか。はは……」
男は残された左手でハンカチを取り出して、額の汗を拭いた。
「湿度百パーセント」
248:この名無しがすごい!
11/05/04 18:36:57.39 EUvszhyQ
「湿度百パーセント」
湿気で世界が滅びた日
世界から生き物という生き物が全滅した
何の前触れもなく湿度が上がり続けた
なぜ上がり続けたのかは不明
原因を解明する人間が既に死に絶えてしまっているのだから
おそるべき湿度地獄
それでも空には雲が浮いていた
「今月号の付録は縞パン」
249:この名無しがすごい!
11/05/04 23:23:04.14 qW1c/O4z
「今月号の付録は縞パン」
目の前に、母さんが座っています。六畳一間、畳み張りの客間。
ここにいるのは僕と母さんのふたりだけです。ふたりとも、対と正座です。
「これは、なんなのかしら?」
母さんは、僕との間に、それはそれは丁寧に整えられた代物を指さし尋ねます。僕は応えられるはずもなく、見つめていた畳みがさらにハッキリしたように感じました。
母さんは、もう一度、尋ねてきました。「これは、なんなのかしら?」と。
結果の見えている真実をこれでなんど僕は繰り返したことでしょうか。ですがこの場合、相手の望んでいる答えが見えていないのでは、どうしようもないことでしょう。
「ふ、ふろ……」
「嘘おっしゃいっ!」
同じ繰り返しを想定していたのでしょう。母さんは僕の言葉を途中で遮ってしまいました。とりつく島もありません。あったとしても、それはきっと、ランゲルハンス島ほどに違いありません。
母さんは、ひざにのせた右手のひとさし指をしきりに上下させています。きっと心の中では今晩あたり、自身の息子を青い制服のおじさん達に引き渡す算段でもしていることでしょう。だてに一緒に暮らしているワケじゃありません。見ればわかります。だれか助けて。
「さあ、さっさといいなさい。あなたの机の引き出しに入っていたこれは。いったいどこから盗んできたんだい!」
青いストライプをあしらった小さな布が微かに動いたように見えました。おそらく目の錯覚ではないことでしょう。
「母さん、どうか信じてください」
口に出したところで激高されるであろう言葉をどうにかこうにか飲み込みます。だって言っても信じてもらえないじゃないですか。
「毎月購読している雑誌の付録だったのですよ」
だなんて。
「水虫薬/鍵盤ハーモニカ」
250:この名無しがすごい!
11/05/05 00:43:45.53 7zPcQrfc
「水虫薬/鍵盤ハーモニカ」
「水虫薬÷鍵盤ハーモニカ」という式によっていかなる=が結ばれるのか、このレポートはその
ことについて考察するものである。
まず「÷、すなわち『割る』」という営為の定義づけをおこなう。
ここでいう「割る」とは数学的、あるいはわり算的な「÷」であり、すなわちそれは「分ける
」ことに他ならない。
そのように定義する。
これにより問題となるのは、「鍵盤ハーモニカ(以下A)」というもの、はたして、いかにし
て、他の事物を「割る」ことができうるのか。
また「水虫薬(以下B)」というものが、いかにして、他の事物から「割られる」ことができうるのか。
さらに、Aの「割る」、そしてBの「割られる」という二つの文脈が同一面上に存在しうるの
か(つまり、二つの「割る」が文脈上で同じニュアンスをもっていられるのか、ということで
ある)。
この三つのことがらが明瞭となってはじめて、「BはAに割られる」つまり「B/A」とはど
ういった答え(=)を結ぶこととなるのか、と問うことができるのである。
では一つずつ見ていこう。
まずは、
「もしブツ(もしも野球部のマネージャーが手塚治虫の『ブッダ』を読んだら)」
251:この名無しがすごい!
11/05/05 16:08:47.51 rUaU+5PR
「もしブツ(もしも野球部のマネージャーが手塚治虫の『ブッダ』を読んだら)」
野球部マネージャーの十文字霧絵が友人から借りた『ブッダ』に嵌まったことがきっかけで
野球部内でブッダが人気を集め部室には文庫版のブッダが常備されるようになった。
野球部が甲子園に出場を決め、優勝こそしなかったが4番エースの草薙大和は
実力もさることながら可愛らしい顔立ちもありマスコミのちょっとした注目を浴びた。
インタビューで愛読書について聞かれた草薙は緊張もあり答えに詰まったため
「手塚治虫のブッダが好きです」と答えた。
そのときからマスコミの間で草薙大和は『ブッダ王子』と呼ばれるようになった。
次のお題「もしドラ(もしも野球部のマネージャーが『映画ドラえもん のびたの鉄人兵団』を観たら)」
252:この名無しがすごい!
11/05/05 17:54:57.72 NsxtYowY
「もしドラ(もしも野球部のマネージャーが『映画ドラえもん のびたの鉄人兵団』を観たら)」
どんな組織もドラえもんで分析できる。
静にはそう思っていた時期がありました。
4番は出来杉君、キャッチャーはジャイアン、スポンサーはスネオ。
のび太?
まぁ、ベンチに入れておけばいい。
でも、それはレギュラー放送だけの教訓。
いざ、甲子園になると出来杉はスランプで役立たず。
スポンサーのスネオのプレッシャーに負けそうになってしまった。
やけっぱちで、のび太を4番、ピッチャーにしたら、これが大活躍。
でも、一回戦で敗退。
ドラえもんの力で上位に入っては他チームに失礼だと言う事でわざと負けました。
本当にのび太に実力があったのに気づいたのは、卒業してから。
次のお題「生ユッケ」
253:この名無しがすごい!
11/05/05 18:46:29.63 YImK26e5
『生ユッケ』
夢を見たよ
焼肉屋で生ユッケを食べる夢を
一緒に食べていたのは君かな
君は笑顔でおいしいおいしいいいながら口いっぱいに生ユッケを放り込んでいたね
僕は生肉はあまり関心しないなといったよね
でも、君はおいしいは正義と店内に響き渡る声で答えたね
ニュースで生ユッケ関連の報道を見る度に君は青ざめるね
そう、僕と君がいった店はあの社長の店だよね
とぅっとるー
目覚ましがなって僕は勢いよく上半身を起こした
寝汗で寝間着がびっしょりだ
なんて夢を見たんだろう、最近よく見る夢だ
彼女と格安の焼肉屋にいって彼女が生ユッケをおいしいおいしいって食べる夢
本当にたわいもない夢なのに・・・
夢の中の僕はとても冷たい人で彼女は現実では考えられないほど食欲旺盛で
夢は現実を投影すると本で読んだことがあるけど
僕はそんなに冷たい人間じゃないと自信を持って言える
さて、洗顔して支度して待ち合わせ場所に行こうかな
彼女とのデート
彼女が前々から行きたがっていた焼肉屋に連れて行ってやるつもりだ
格安で有名な店だから、彼女が喜ぶこと請け合い
なにせ彼女は無類の肉好きだからね
腹一杯食べさせてやるんだ
254:この名無しがすごい!
11/05/05 20:10:45.98 NsxtYowY
>>253
次のお題を…
255:この名無しがすごい!
11/05/05 21:26:51.82 YImK26e5
思いでの駅舎
256:この名無しがすごい!
11/05/05 21:59:17.83 WiISX3bU
思いでの駅舎
「ああ、ありますよ。それはもう、とっておきです」
ほほう、聞かせて貰えるかな?
「ええ、是非聞いて下さい。それは僕が高校2年の時のことです。僕は、夏休みを
田舎の普通列車の旅に費やしたんですが、あれは、その4日目だった。ちょうど、
海岸沿いを通る鉄道の普通列車で、終点についた時は、すでに夜遅くだったんです」
ふん、それで?
「仕方がないから、その駅舎で一晩を過ごすことにしたんです。それは、地方の中心
都市ではあったんですが、駅前にはろくに商店街もない、寂れたところでした」
食事はどうしたんだ?
「ああ、それは、駅前に『200円ラーメン』というのがあったんで、でも、その後
ですよ」
何が?
「いや、そこなんです。ラーメンを食べて、店を出たら、目の前に、暗闇の中に、ほわっ
と駅舎が浮かんで見えて、それが印象的でね」
ふふん、それで?
「その時なんです。横から声がかかりました」
ん?
「その声は、『君、頑張れば、大作家になれるよ』そう聞こえたんです。見ると、
それは白いひげの占い師で。だから、僕がいまだにワナビやってるのは、その易
者のせいなんです。だから、こんな文でも、感想は欲しいんです。よろしくお願
いします!」
ああ、やっぱり。「思い出の易者」だったんだ。
「乾燥機の大活躍」
257:この名無しがすごい!
11/05/06 02:32:54.29 zpRjdiN6
「乾燥機の大活躍」
「先生、最近、筆がノっていますね」
「おぉ、やっぱりそうか」
「読者の気持ちをつかんでいる感じがします。彼女でもできたのですか?」
「まぁ、彼女のおかげもある。……。これで、完成と」
「では、データを…」
「いや、ちょっと待ってくれ」
彼はそう言うと、原稿をプリントアウトして洗面所へ向かった。ぶーんと乾燥機の音が聴こえる。
しばらくすると、彼は戻ってきた。
「こんな時間に洗濯ですか?」
「いや、まぁ……。じゃあ、これ」
そういい、データが入ったUSBメモリを編集者へ渡した。
「ありがとうございます。では、来月もお願いします」
編集者は帰って行った。
彼は洗面所へ戻り。原稿を乾燥機の中に入れて、スイッチを押した。
ロボットみたいな声がする。
「この作品はよくできています。今回はベストセラーにランクインするでしょう」
そうだ、乾燥機ならぬ感想を言う機械、感想機だったのだ。
次のお題「カレーライスと拳銃」
258:この名無しがすごい!
11/05/06 02:58:38.22 udiLnFL+
「カレーライスと拳銃」
今手にしている拳銃
これは祖父が高校入学の記念に買ってくれた物だ
どうしても許せない奴がいたら一回だけ撃てと
その一発は絶対に外すなと言われ、拳銃を受け取った
カレーライス
今、テーブルの上にあるカレーライス
これは祖母が昨日の晩に作ってくれたものだ
一晩おくと味が染みこんでおいしくなるんですよ
明日の昼に食べましょうね、と笑顔でいわれた
ちなみに平日の昼なので家族はみんな出払って家にいない
婆ちゃん一人で食べたみたいだ
俺は学校帰りに幼なじみの文子を連れて駅前のケーキ屋にいた
文子が妊娠した記念にケーキを買って二人でお祝いするために
高校生夫婦がいたっていいじゃないか
高校生が子育てしたっていいじゃないか
二人はそう誓い合って親に内緒で借りたマンスリーマンションでケーキを食べる
彼女の笑顔は今までにないほどの笑顔だった
僕は父親として祖父から受け取った拳銃で文子と子供を護り
祖母から教わったカレーライスレシピで二人を喜ばせたい
「なぁ、文子」
「なあに?」
「カレーライス好きか?婆ちゃんから教わったカレーがめっちゃうまいんだ」
「ぷっ!カレーライスレシピだって昭和の人みたーい」
プッツン
俺は祖父からもらった拳銃で彼女の頭を撃ち抜いた
祖母のカレーライスをバカにする奴は何ぴたりとも許せね!
「もう一つの世界」
259:この名無しがすごい!
11/05/06 09:31:28.15 tM/OmP6y
「もう一つの世界」
「ありがとう、私の初めてを貰ってくれて」
かすかに涙ぐむ彼女の頭を、僕は胸に抱える。鼻先を軽くこすりつけてくる彼女の
髪に唇を落としていると、彼女は顔を上げ、目を閉じて、キスをせがんできた。顔を
寄せると、情熱的に吸い付いてくる。舌を絡ませると、彼女の手が、僕の首に回り、
まとわりつく。
しばらくそうして、それから、顔を離した。互いの唇の間を、粘液の橋がつなげて
いる。
「じゃあ、教えてよ。『初めての後、一つ願いを聞いて欲しい』と言ってたよね?」
「うん。でも、いいの?」
「もちろんさ。愛する君のためならね」
彼女は頬を赤らめて、それでも嬉しそうだ。
「じゃあ、ちょっと待って、先に飲み物用意するから」
そう言うと、コップにジュースを二人分、運んできた。僕も緊張していたし、身体を
動かした後だ。ジュースはとてもおいしかった。だが、なぜか急に眠気を覚えて、目の
前が暗くなった。
気がついた時、目の前はやはり真っ暗だった。が、それは目隠しだとわかった時、
慌てて起きあがろうとして、両手両足を拘束されているのがわかった。どうやら、
うつ伏せで、お尻を上げた形になっているらしい。顔に触れる感触から、ベッドの
上らしかった。
「おい、一体どうしたんだ、何なんだ?」
「ごめんね。私、本で読んで、一度、試してみたかったの」
次の瞬間、僕の尻に何かぬるぬるしたものが塗られて、それから何か太いものが
押し付けられる。それは、無理矢理に中に入ろうとするようだ。
「駄目だよ! 駄目だって、痛い、痛い!」
「大丈夫、私も、始めは痛かったけど、すぐに気持ちよくなったもの」
「いや、それとは……わあ、わああああああ!」
僕らがもう一つの世界に目覚めた瞬間だった。
「クリック・クロック・クラック」
260:この名無しがすごい!
11/05/06 16:35:41.72 6ItERUTu
「クリック・クロック・クラック」
近未来、クリック・クロック・クラック、通称3Cと呼ばれるハッキングソフトが、
インターネットのアンダーグラウンド、ピア・ツー・ピア-ネットワークに出回って
いた。
それは、陥落させたいシステムをマウスで選択(クリック)し、ある程度の時間
放置する(クロック)ことで、ハッキング(クラック)を成功させるという強力な
ツールだった。
何らかの理由で、OSやブラウザ、無料電話ツールなどの主要ソフトウェアのアップ
デートを怠った管理者は、このツールによって常に痛い目を見てきていた。
俺は、そんな状況をどうにかするために、3Cの逆コンパイルを行った。自動逆解析
プログラムによって生成された人間には理解不能なソースコードが、俺の手元にあった。
理屈はどうあれ、このソースコードは、コンパイルして、動かすことができる。
その点が重要だった。
俺は各関数の呼び出し回数と、幾度かのテストから、3Cの起動シーケンス部分をどう
にか解読すると、そこにマーカープログラムを追加した。このマーカープログラムは、
3CをインストールしたPCに消えない痕跡を残し、犯人逮捕を容易にする。
3Cのインストールは、法律上は、器物損壊未遂に当たる。だが、警察が踏み込ん
でも、既にその証拠となる3C自体が見つからないケースが相次いだ。3Cのアンインス
トールは他のアプリケーションとは違って徹底的で、ゴミすら残らないのだ。
それで俺のような天才プログラマに、出番が回ってきたのだ。本来なら、むしろ
3Cの開発に協力してやりたいくらいだが―天才ハッカーとしてはそちらのほうが
やりがいがある―サイバーポリスからの多額の報酬に目が眩んだ。
ピア・ツー・ピア-ネットワークに、偽の署名をした3Cを放流する。このソフトは
本物と同じように働き、そして消えない証拠を残す。ハッカー気どりのクラッカーたち
が異常に気付いたときには、完全に手遅れになるという寸法だ。
俺はサイバーポリスから報酬を貰うと、指定の銀行の貸金庫に紙に包まれた札束を
放り込んだ。マーカープログラムは、間抜け野郎(ハッカー気どり)のネットワークを
あぶり出すだろう。俺はそれを読みとるプログラムを、サイバーポリスに内緒で既に
作成し終えていた。間もなく世界中の間抜け野郎のマシンが全て俺の手に落ちる。
それを使って何をやってやろうか―俺は自身のハッカーとしての血が滾るのを感じた。
「遺伝子プリンター」
261:この名無しがすごい!
11/05/06 20:24:21.76 kf9xbDqW
「遺伝子プリンター」
「えーと、性別は…女の子がいいわよね?あなた?」
「は?男がいいに気まってんだろ?」
「じゃあ男の子と女の子の双子にしちゃいましょう!」
「えっ、男女の双子って一番高いだろ…」
「いいじゃない、大きくなったらお返ししてくれるわ♪」
「それもそうか…じゃあ『双子』に、性別は『男女』っと」
「体型や性格はどうしようかしら?」
「そう?じゃあ体型はーっ……性格はーっ、と、こんな感じかしら」
「おいおいそれじゃケンカしちまうんじゃないか?」
「そうやっていい大人に育っていくのよー?」
「そんなもんか?」
「いいからお金!」
「はいはい、えーと、うげっ、800円かよ。たけーな…」
ちゃりりんっ。
「はいじゃあスイッチオンッ!」
ピーガー、ガコンガコンガコガコカカカカカカカ。
――。
ガコン!
「あ"―――!」
「ほら!産まれたわ!かわいー!名前なににしようかしら!」
「そうだなあ…」
「名無しのQB」
262:この名無しがすごい!
11/05/06 20:26:10.77 kf9xbDqW
あ、訂正
「体型は―」
と
「そう?―」
の間に
「おまえが決めていいよ」
てセリフが抜けてます
263:この名無しがすごい!
11/05/07 12:21:17.16 klNmf9/Q
「名無しのQB」
「おはようございます、先生」
紅い服を着た女性が部屋に入ってきていった
「やあ、おはよんば!」
白衣を着た中年親父が女性に向かっていった
「雨止みませんね、先生。夕方から会合だってのに」
「なに。雨が降っていようが関係ないよ」
「先生、雨降ると子供みたいに外出たがらないじゃないですか」
「な、そんなことはないよ。僕は大人だからね傘一つあればどこにだってはせ参じるつもりだよ」
「こないだの雨の時だって、前に仕事したQBさんから相談があるから会いたいっていわれた時だって」
バッ!先生と呼ばれている男が急に女の口を押さえた
「おっと気味の悪い癖だ。いちいち過去を振り返っていたら進歩しないよ」
チッチッと指を振った
「もごもごっがご」
「おっとなんだね、言いたいことがあるなら言いたまえ」
先生は女性の口を離した
「QBさん先生が相談に乗ってくれなかったから大変な目にあったらしいですよ」
「ふふん。それが彼の運命なんだよ、僕がいくら有益なアドバイスを持ってきたとしても運命は変えられない」
「そ、それでもQBさんは」
「おっと、ストップだ助手くん。君の仕事は私に文句言うことかね?違うだろ、君の仕事はなんだね」
「名無しのQB確保及びサンプル個体の経過報告です」
「分かってるじゃないか、だったら早急に街に行き名無しのQBを探して着たまえ」
「はっ!」
「君への贈り物」
264:この名無しがすごい!
11/05/07 14:56:17.61 yI0oVJxZ
「君への贈り物」
「やるよ」
「え、私に…?」
「ああ、まあ、クリスマスだしな」
「あ、ありがとう。…見ていい?」
「ああ」
ゴソゴソ…
「わあー!綺麗なチョコレートケーキ」
「チョコレートじゃない、ミソだ」
「…へ?」
「ミソケーキだ」
「…」
「なんだその顔は。まさか一口も食ってもみないで捨てるつもりじゃないだろうな?」
「そ、そうだよね!美味しいかもしれないもんね!」
あーん。
ぱk
「ちなみにミソはミソでも、パンツ的なミソだがな」
「………」
「いやー、今朝下痢でさー。そのくせあんまり臭わなかったからお前に検便させてやろうと思
って?」
「…………」
「おらおら、泣くほど嬉しいならもっと喰えよメスブタァ」
「リアルラック」
265:この名無しがすごい!
11/05/08 00:01:20.20 WmXxOHfi
「リアルラック」
「そんなはずない、俺はもっと飛べるはずだ」
青年は、担架で運ばれながら、かすかにそうつぶやいた。
「こいつ、3階の窓から急に飛び降りまして。ただ、自殺でもなさそうで」
「多分、リアルラックじゃないかな」
「ああ、最近よく聞く奴か」
数年前から注目されるようになった症状だ。本当は、現実感覚欠如症候群という。
ゲームにのめり込みすぎたことから、現実感覚がなくなるのだという。一昔前の、
ゲーム脳とかの話に似ているが、問題はもう少しやっかいだ。
違いは、コンピュータ内部の疑似世界が、その性能の向上と共に、現実に近い感覚
をもたらすまでに至ったことで、ゲーム内の体験が、本当の体験として身体に受け入
れられるようになったことだ。そのため、本当にゲーム内の動きを身体が覚えてしま
う。でも、実際の身体はそんなことが出来ない。だから、彼のように危険なことでも、
不安無しにやらかしてしまい、大けがをすることになるのだ。
「ま、そこまでゲームにのめり込める気持ちがわかんないですけどね。じゃあ、俺は
署に戻ります」
「ああ、俺は直帰だ。じゃあな」
俺は、アパートのドアを開ける。
「あら、お帰りなさい。食事出来てるわ。それとも、お風呂にします? それとも、
わ・た・し?」
「それもいいな。お前もエッチだな」
「やあん。早く準備なさって」
俺は、さっそくディスプレイの前に陣取り、体感装置に接続する。すぐに、腕の中
に新妻の身体の柔らかさが感じられる。
「やあだ、もう、すぐ手を出すんだから」
「お前だって待ってるんじゃないか。ほら」
「あん、もう、だめえ」
そう、これは新婚体験ゲーム。何しろ実際の結婚に関わるリスクはないから、新婚気分の
いいとこ取りだ。それに、アクションゲームと違って、無理な運動などしないから、リアル
ラックも起きない。
と思っていたら、3日後、いつもの感じで受付嬢の身体に手を伸ばして、セクハラで訴え
られたのだった。
「奇想農場」
266:この名無しがすごい!
11/05/08 07:40:49.38 z8CwuEEj
「奇想農場」
こんにちは、アナウンサーの堀井です。今日は、小説家なら一生に一度は行ってみた
いと噂される、奇想農場にお邪魔してみました。
こちらは農場主の奇想英彦さんです。この農場を作ったきっかけはなんだったので
しょうか。さっそくお話を伺ってみたいと思います。
「誰でも、アイデアが枯渇することってあるでしょう。そういう人たちに、現実は小説
より奇なり、ということを思い出して欲しかった。その思いが契機になりました」
なるほど、それでこの動物園と遊園地と水族館と映画館と図書館と野菜農場が一緒に
なったような施設ができた、と。
「娯楽施設なんか、全部まとめてしまえ、と思ったんです。感覚入力が一定値を超えると、
人は何かしらアイデアを思いつくものです。それを第一に考えて施設を配置しました」
しかし、こうして見ると東京ディズニーランドが霞んで見えますね。
「最初から子供向けじゃないですからね。そこのところを思い知らせてやろうという
考えがあります。小説家をターゲットにしたのもそのためです」
実際、小説家の方が来てどのような感じになるのでしょうか。
「エウレカ!という感じになるそうですね。熱心なリピーターもいて、ノートパソコン
などを使ってここで書いていく方もおられます」
最後に、莫大な運営費をどうまかなっているかお伺いしたいと思います。
「主に、入園代と、小説家や学校、有志からの寄付ですね。驚くほどの寄付が集まって
います。これからも奇想農場がアイデアの源泉であるように、努めたいと思います」
本日はどうもありがとうございました。
「縦書きクロニクル」
267:この名無しがすごい!
11/05/08 23:52:03.24 0EYSPmt/
「縦書きクロニクル」
「また難解なお題をだしやがって…」
今日も今日とて、Schの某スレッドをよく利用していたのだが、これまたなんというかハードルさんが激昂…とい
うより、すげー面倒臭いことを考えるヤツだなあ。
「縦書きのうえに年代記(クロニクル)かよ……いやただの歴史年表だろ!」
しかし、どうしたものかな。
PCですらない僕に縦書きなんて面倒なことは不可能に近い。
かといって横書きに甘んじるのはお題設定したヤツになんか負けた気がする。
…こいつ性格悪いんじゃないのか?
まあいい。
なら、僕が、こうすればいいだけのことだ。
「>>266の恋愛遍歴」
268:この名無しがすごい!
11/05/09 08:34:37.57 GkIHUG4B
「>>266の恋愛遍歴」
彼女と付き合ったことに、特に理由は無い。強いて言えば、恋愛というもの全般に興味
があったからだろうか。
僕ははじめの頃、人生の中で恋愛というものを経験することは、執筆の役に立つことだ
と考えていた。愛情や嫉妬というものは、昼ドラのメインテーマになっている。小説を書
くにも、何かしらの貢献があるだろうという意識があった。僕はまるで大学の退屈な講義
を受講するような気分で、彼女と付き合い始めた。
彼女は一言で言えば、自意識過剰だった。僕はすぐに幻滅した。彼女には、自分のこと
しか見えていなかった。別段可愛い顔をしているというわけでもないのに、やたらと自分
のことや、彼氏にしたい理想の男性のことを語った。お菓子の何々が好きだとか、芸能人
の誰々が好きだとか。そういうことを一方的に、延々と喋り続けた。
これもまた、大学の講義を受けるように、僕は頭の中に記憶し、必要に応じてノートに
メモしていった。彼女は知らないだろうが、僕は記憶すること、メモすることにかけては
人より抜きん出ていたので、自然と彼女の第一の理解者になった。
理解者。そう。彼女はそれを求めていた。彼女が求めていたのは、それ以上のものでは
なかった。人生のパートナーという感覚は、彼女にも、僕にも無かった。その点で、二人
の関係は事実上の終末が約束されていた。
しかし、恋愛というものについてネットで調べるうちに、興味深い記述を発見した。そ
れは、エーリッヒ・フロムという心理学者が書いた本の要約だった。
「愛するということ」と僕は呟いた。
愛とは技術、テクニックだと、フロムは論じていた。それも一朝一夕に成るテクニック
ではない。生涯を通じて高めていくテクニックなのだと。
僕はその本をネットで注文し、頭からお尻まで全部読んだ。愛されるのではなく、愛し
なさい。それがその本のテーマだった。いかにして愛するか。いかにして与えるか。無償
の愛。恋人に「愛されている」という錯覚を与える無数のテクニックを磨けと、その本は
語っていた。それは僕にとって、晴天の霹靂だった。
僕は無性に彼女に電話したくなって、生まれて初めて愛しているよと囁いた。彼女は僕
の幼稚な告白を笑った。それでも僕は満足していた。まだ僕には、学ぶべきことが多く残
っているのだから。
「ひどい誤解」
269:この名無しがすごい!
11/05/09 09:33:41.22 GkIHUG4B
age、と僕は書きこんだ。
間違えてsageてしまった時には、誰かがageねばならないものなのだ。
やれやれ。
270:この名無しがすごい!
11/05/09 09:34:18.87 GkIHUG4B
……やれやれ。
271:446
11/05/09 09:53:44.24 y8JucV2Q
……やれやれ。
やっていいの?
ああ。やれやれ。
じゃあ、やってみるね。
ああ。
できたよ。責任とってね。
……ああ? あ、ああ。
でも、大丈夫? いろんなこととか。
ああ……何とかなるだろう。
ありがとう。……だから、好き。
ああ。
「『あああ』から始まります」
272:この名無しがすごい!
11/05/09 10:22:10.61 fp6Ebjn7
あああ・・・
「そんな・・」
彼は驚愕に目を見開き、手から流れ落ちる自らの血を凝視した
「・・違う、こんな結末は違う・・・」
そう呟いた彼は命の灯火が消えようとしている中で気を失うその一瞬
走馬灯を見た
ってなわけで「走馬灯」
273:この名無しがすごい!
11/05/09 22:52:00.87 ZbANYS/J
「走馬灯」
私の名は走馬 灯(そうま あかり)。
もしかしてこういう名前のキャラクターなんてすでにいたりするのかしら。
こうも思うほどしっくりくる我が尊名。
「灯、部活は?」
それを呼ぶ、線の細い容姿を連想させる、かぼそいながらもハスキー地味た声。
それは美声といってもいいだろう。少なくとも、心地がいいのだから。
「行かないわ」
「いい加減、幽霊部員のレッテルを貼られるんじゃない?」
「もとから似たようなものよ」
「そんなことないでしょ?」
「さあ。もう、よくわからない」
「なにが?」
「私が。そしてあなたが」
「私?」
「そう私」
「あなた?」
「そうあなた」
「そうね」
「ええ、そう」
「ところで」
「ところであなたは誰なのかしら」
「もう思いだせない?」
「誰が話しているのかしら」
「もう思いだせない?」
「誰が声を発しているのかしら」
「もう認識できない?」
「わからない。眠いわ」
「そう。じゃあ、気をつけて」
「なにを?」
「さあ?」
――×日未明。
女子高生の轢死体が発見された。
「ブラックホールの向こうまで」
274:この名無しがすごい!
11/05/09 23:34:56.27 7yEuooxc
「ブラックホールの向こうまで」
暗闇の研究室
明かりは小さな電球一個
ぼわーんと照らされる二つの顔
一つは初老の男性
もう一つは二十歳前後の女性
「いいかね、ブラックホールとは莫大なエネルギーを生み出すんだ」
初老の男性が自慢げに語る
女性ははいはいと苦笑しながら頷き返した
「宇宙は常に膨張していってる。最近までは膨張はいつか収まりそしてゼロに収束されるものだと信じられていた」
「違うのですか?」
「最近の研究だと、膨張はさらなる膨張を呼び、加速をまして膨張し続けている」
「それじゃ最後はどうなってしまうのですか?」
「薄れてしまうんだよ。膨張することによって時間の先端によって最後尾が引っ張られるからね」
「それじゃ私たちはいつか・・・」
「心配に及ばない、その時には既に地球なんてありゃせんだろ」
初老の男性が手をぱたぱたと振る
「そうならないように私たちはブラックホールから莫大なエネルギーを取り込む必要があるのだ」
「そのエネルギーで、他の銀河に逃げるんですね」
「そうだよ。ブラックホールには全世界の原発なんて目じゃないほどのエネルギーがあるのだから」
「私たちの未来はブラックホールに掛かっていると言っても過言じゃないんですね!」
「そうじゃよ、これこそまさに超自然エネルギーじゃ」
「なんだかわくわくしますね!博士!」
「総理の決断」
275:この名無しがすごい!
11/05/11 14:16:28.90 HJL8fElD
「総理の決断」
とある国にたいへんアニメが好きな総理大臣おりました。
総理は国の一大事を前にして、いつでも笑って素早く決断を下す優秀な人でありました。
国民の評判も、いつもすぐに動いてくれるし笑顔を絶やさない余裕のある素晴らしい総理だと、上々だったのです。
しかし、国民は知りませんでした。
総理の笑顔は素晴らしいアニメを見て満足していることの表れであることを。
その素早さは、少しでも多くアニメを見る時間を得るためのものであることを。
ところが此度、国を襲いました大事変におきましては、総理はたいへん悩んでおりました。
たいへん難しい決断を迫られていたのです。
総理は部屋に籠もって悩んで悩んで、それでも決断をすることができませんでした。
やがて焦った側近達は、いつもは黙って見ているだけなのですが、今度ばかりは総理に、まだですかご決断はまだですか、と急き立てます。
総理もしだいに焦って参りまして、なかなか決断出来ないことと、アニメを見る時間が削られていくことに頭を抱えてうんうん唸りだし、
しまいにアアともガアとも聞こえる叫び声を上げました。
その声を聞いた側近達は居ても立ってもいられずに、総理の籠もる部屋に飛び込んで大丈夫ですか、と声を上げました。
「総理! 大丈夫です……か……?」
側近達はそのときの総理の様子に、まさに顎が外れるような表情になりました。
総理は部屋に備え付けのテレビにかぶりつくようにして、アニメを見ていたのでした。
「総理……何をなさってるんですか。アニメなんて見ているときではないでしょう!」
総理を前に一同は、彼がおかしくなってしまったのではないかと疑いつつも、口々に怒りの言葉を捲し立てました。
しかし、総理はテレビにかぶりついたままピクリともしません。部屋に響くアニメの音が虚しく響くだけでした。
「総理、総理……難しいのは分かります。しかし、そろそろご決断いただかないと困るのです。どうか、どうか! ご決断を!」
側近が皆、固唾をのんで総理を見つめる中、彼はとうとう動きました。
総理は顔をアニメから側近達に向け、険しい目つきでじろりと眺め回した後、バッと勢いよく仁王立ちのポーズを決めて、
「ジャッジメントですの!」
大声で叫んだのでした。
「……総理、総理。……決断は、ディシジョンです」
「電気羊のウール」
276:この名無しがすごい!
11/05/12 01:43:41.16 zT2Z3Q4y
愛玩用のロボットペットが普及してもう何年になるのか。
いまや犬をはじめ猫、鳥、魚、はては昆虫にいたるまで様々な愛玩用動物が機械化されている。ある人に言わせれば
死なないから良いのだそうで、またある人に言わせれば必要なときには音声をオフにすることができるから良いのだそうだ。
今回の取引は電気羊のウールである。
この商売が長い私も、かつて巡った町でいくつかの噂を仕入れている。
愛玩用機械動物は、最新の機能として放牧や搾乳など家畜としての機能もある程度満たしつつあるというのだ。
無機物から有機物を発生させるメカニズムは既に一般化されている。その上での応用なのかもしれないが、いかにも
怠惰で飽き性の我々が好みそうな家畜である。今なら高値で売れるだろう。
「今日は何をお探しで」
店のオヤジが言う。
「ウールだ」
私は行商カードを提示した。これさえあればこの世界のどこでだって、仕入れを行うことができる。
「ウール……」
「そうだ。電気羊のウールだ。まだ残ってるかい?」
ありますとも。売り物じゃないんですがね、とオヤジは笑って一度奥に引っ込もうとした。が、そのまま振り返って言った。
「猫のドンブリ、なんてのもありますけど……」
「ド……機械猫かい?」
なんというどうでもいい機能だ。いやしかし好事家というものは何でも欲しがるものだ。悪くはない。
「いいえ、こりゃ生身です」
「おいおい」
それは多少悪趣味ではあった。
「ひとまずウールを見ようか」
私は言った。オヤジはゆっくりと奥に引っ込むと、ごく普通の機械羊を持って戻ってきた。シルバーのボディにいくつかの
継ぎ目が見える。両手で抱えられるほどの家庭用電気羊である。今では駅前で変える程度のものだ。
「毛なんて生えてないじゃないか」
「生えませんよ。そりゃ機械ですから」
オヤジは言う。
「ウールを買おうと言ってるんだ。売り物じゃないと言ってたが、貴重なのはわかる。言い値でもいい」
買い手が付けば値段などどうにでもなる。
「ですから、お客さんの目の前にあるのがウールですよ」
お客さん、騙されたんですよ。とオヤジは言った。
「その羊ね。ウールってんです。なぁ、ウール」
ピピピ、と名前を呼ばれた羊のセンサーアイが明滅した。
やられた。ポケットをまさぐり、タバコを取り出そうとする私にオヤジがマグカップをさし出してきた。中には薫り高いコーヒーが入っている。
「シャレにならねぇ……。オヤジ、俺みたいなのは今日で何人目だ」
タバコに火を付け、カップを持ちながら問うた。
「お客さんで15人目です」
ひひ、と笑う。
「お客さん、猫のドンブリも見ますか?」
見ると、奥の部屋から生身の三毛猫がこちらを見ていた。
次「富士の湧き水殺人事件」
277:この名無しがすごい!
11/05/12 11:57:52.84 UmwFf//k
「富士の湧き水殺人事件」
「課長!殺人事件です!」
「なに!」
「害者は朝田昼夫23歳!殺害場所は○×自然記念公園わき水付近!」
「よし!おまえとおまえいって調査してこい」
「「あいあいさっさ!」」
ぴーぽぴーぽー
キーッ!がちゃがちゃバンバン
「お疲れ様です!」
「ご苦労さま。で、害者はどこに?」
「はっ!あちらです!ご案内いたします、どうぞ」
「それにしても、人気のない公園ですね」
「そうだな、夏にならないと来ようって気にもならんな」
「だからここで殺人が・・・」
「ここです、この池の中に」
「うむ。本当だ、男が沈んでる・・・」
「何が手掛かりになるような物ありましたか?」
「いえ、まだ発見していません。争った形跡もなく自殺かと」
「いや。これは他殺だな」
「また何か掴んだんですね」
「ああ。見たまえ男の首に痣らしきものが見える」
「!!本当だ」
「君、ここの班長にいって早く男を引き上げさせてくれ」
「了解いたしました」
「これぞまさに「富士の湧き水殺人事件」」
「オチもなけりゃ希望もねえ」
278:この名無しがすごい!
11/05/12 12:26:10.00 4Oad8LEo
「オチもなけりゃ希望もねえ」
「もうだめだ。もうおしまいだ。死ぬしかない」 A氏は絶望していた。
「ちょっと待って!早まらないでください!」 B氏が引き止めた。
「でも『物語の初めに死体を転がせ』って偉い人も言ってますし」 C氏が煽った。
「そんなセオリーがこの作者に通じると思ってんのか?」 D氏が不満を述べた。
「そう。重要なのはこのSSのタイトルからして、オチも希望も無いことなんだ」 E氏が見解を語った。
「だけどよう。俺達の努力で未来を変えられるんじゃねえのかよう」 F氏は勇敢だった。
「そうかもしれない。物語の登場人物が独り歩きするという説もある」 G氏は仮説を立てた。
「俺達が独り歩きすれば、作者もオチを考える気になるかもしれない」 H氏は希望を言った。
ターン。発砲音が聞こえ、H氏は床に倒れた。額を撃ち抜かれている。即死だった。
「KI BO Uというキーワードはタイトルで禁止されている」 I氏は冷静だった。
「つまり言ったら死ぬというわけか」 J氏は冷淡とも言える態度で言った。
「俺達はみんな死ぬんだ……」 K氏は絶望した。
「いや、そんなオチらしいオチがあるとは思えないな」 L氏は推理した。
「じゃあどうなるんだ?」 M氏は訊ねた。
「何も起こらないかもしれないな」 N氏は答えた。
「それこそ我々が最も恐れていることじゃないか?」 O氏は動揺した。
「もしかして、このままアルファベットを使いきるというオチなのでは?」 P氏は大胆にも発言した。
「作者がそんなオチらしいオチを考えているわけがない」 Q氏は失望した。
「だとするとそろそろ終わりが見えてきたかもしれないな」 R氏は予想した。
「ああ、もうそろそろだろうな」 S氏は嘆息した。
「突然ですが、皆さんには殺し合いをしてもらいます」 T氏がパクった。
「著作権に訴えても無駄だよ。我々には武器も何もない」 U氏は落ち着き払っていた。
「作者を殺そうじゃないか」 V氏は無駄な提案をした。
「作中人物がどうやって作者を殺すんだよ」 W氏は現実主義者だった。
「もうすぐZ氏が登場するぞ」 X氏が期待を込めた目で辺りを見回す。
「Z氏ならいませんよ。さっき僕が殺しておきましたから」 Y氏は血走った眼でフヒヒと笑った。
全員がオチを求めて天を仰いだ。ツバメが一羽、青空を横切って行った。
「レイニーレイ」
279:この名無しがすごい!
11/05/12 17:45:18.84 zXkrYp1M
「レイニーレイ」
陽光は透き通った水を通り抜けて底に光を与える。だがそれは決して温かみを帯びておらず、ただ冴え冴えとした冷たい光であった。
太陽を見上げる少女は、直に触れればきっと愛しいであろう温度を思い浮かべる。
最初は暖かで幸せな物だと考えていたが、実は熱すぎて触れた瞬間溶けてしまうかもしれないと思い直す。
いや、本当は今足元にある光のように温度は無いのかもしれない。
少女は表情を曇らせる。しかし一層降り注ぐ光が増すと暗い気分は消えて再び陽光への憧れが頭をもたげた。
何時だったか、と少女は光の中に腰を下ろして回想を始める。
祖母は言っていた。あの太陽に触った女性がいた。そして死んだのだと。
憧れを抱き続ける少女への警告だったのか、真実だったのか。分からないがそのときの祖母はとても悲しそうだった。
しかし少女は首を傾げる。陽に触れて消えていけるのならば本望ではないか。自分ならば本望だ。
それから数年。上にある太陽が奇妙な揺れ方をしていたある日。
大人になったあのときの少女は意を決して光の底を蹴った。予感があったのだ。今なら太陽に触れる事が出来るだろうという強い予感が。
浮いた身体は真っ直ぐと朧気に揺れる太陽を目指す。近付くにつれて五感がじんわりと温度を感じ始める。
指先に今まで感じた事のない暖かな温度を感じ―少女は海面から腕を、頭を、そして身体を突き出した。そして目に映る光景に歓喜する。
予感通り陽光が降り注ぐ日だったのだ。晴れの空から降る滴のなかに陽光が宿っている。それは海底に注ぐ光とは違い酷く温かい。
感極まった少女がしばらく空を見上げていると海を巻き上げる聞き慣れない音がした。少女はその方向に目を向け、驚いて顔半分出して海に引っ込む。
海に浮く見慣れない白の物体の上。そこに自分とは違った二本の足を持つ青年が目を丸くして少女を見つめていた。
「得体の知れない物」
280:この名無しがすごい!
11/05/14 08:55:55.38 zfoW2oOp
「得体の知れない物」
それから、わたしはおかしくなってしまいました。
なんだか胸がつっかえるようで、チクチクするような感じがあったり、ちょっと息苦しかったりするんです。
学校でも家に帰ってもそのことを考えると、胸のドキドキが誰かに聞こえるんじゃないかというくらい大きくなって、顔がカーッと熱くなりました。
何かがわたしの中にいるようで、もう何が何だか分からなくなって泣きそうでした。
友達や家族と話しているときに何かの拍子にそうなって、誰かに気付かれやしないかと不安にもなりました。
それでもみんなには出来るだけ心配をかけたくないし、変な風に思われたくなかったから、出来る限り普段通りに過ごすように努力しました。
何か言ってくる人なんていなかったから、きっと誰にもばれていない。
けれど、安心していられたのはつかの間でした。二日目から胸のつかえがちょっと重くなったように感じて、三日目になると大きく膨らんだような感じがしました。
ちょっとしたことでそれが頭に浮かび、胸がバクバクして顔が熱くなります。とうとう周りの友達も心配しだして、わたしはそのたびに大丈夫だからと返しました。
四日目、起きたときわたしの中の何かは驚くくらい透明でした。昨日寝る前は枕を抱きしめてのたうち回らずにはいられないほどだったのに。
わたしは明るい気分で学校に行って、午前はいつも通りに授業を受けて、午後にいつも通りにその教室移動のため席を立ちました。
わたしは移動先の教室のことを考えて、ふと思い出してしまいまったんです。あの時のことを。
とたんに動悸が始まって息が切れて、わたしはしゃがみ込んで動けなくなってしまいました。
みんながわたしを取り囲んで、保健室に連れて行ってくれました。
保健室の先生はみんなを返した後わたしをベッドに寝かせて、何があったの、話してちょうだいと言いました。
わたしはこの四日間、自分がどんな状態だったかを正直に話しました。
「先生、わたしどうしちゃったんでしょうか? わたしの中にあるこの得体の知れない物は何なんでしょうか?」
すると先生は、なぜかにやりと笑みを浮かべて言いました。
「ふふーん、分かったわ。あなたは恋をしちゃったのね。それは恋の病の症状よ!」
わたしはハッとして先生を見ました。
そうか、そうだったのか。これが、恋という物なんだ。
「で、一体誰に恋しちゃったわけよ?」
にやけた顔で先生は聞きました。
わたしは胸が苦しくなって言葉に詰まったけれど、思いきって四日前の放課後のことを、全て先生に話しました。
「わたし……、他のクラスでなんですが、噂になってるのを聞いちゃったんです。
それで、放課後に家庭科室にいるって聞いて……行ったんです」
「うんうん。それで?」
「放課後の家庭科室で……、午後四時四十四分にふたつある姿見で合わせ鏡を作ってその十三番目に見たんです、それを」
「えっ」
「伊達マスク」
281:この名無しがすごい!
11/05/14 23:41:19.45 rZK2cyRE
「伊達マスク」
この歳になるとジャケットがどうとか、ズボンの着こなしがどうとか、そういった話題について行く気が起きない。
コンビニで見かける若者向けの雑誌を見て私は溜息をついた。もう字すら読めない。
ギャル語、とテレビは言っていたか。それは最早難解な見知らぬ土地の言語のように私には思えた。
流行が移り変わるたびに私は歳を自覚していく。
そして今回「伊達マスク」という商品が流行り出したときも自分の老いを感じ、
正直なところうんざりして「またか」などと斜めに見ながらブームが過ぎていくのを眺めていようと思っていた。
「おはよう。早いな」
「お互いにね。時間厳守を謳うくせに十分前行動なんて、何とも矛盾した社訓だよ」
ある朝、同僚と雑談して無駄な時間を潰し、出社時間丁度にタイムカードを押していると見慣れない男性が
私を追い越して行った。
私の勤める会社は機密が多い。部外者などもってのほかだ。
「立ち入り禁止ですよ」
するとその人は振り返り怪訝な顔をした、と思ったら次の瞬間には破顔して「言っていなかったね」
と聞きなれた声を発する。
「あれ、その声は」
「私だよ。伊達マスクを買ってみたんだ。どうだい? 若返っただろう?」
べり、と剥がれた肌色の皮の下から上司の顔が出てくる。
上司を嫌っている同僚は心底驚いて固まっている私を置いてさっさと行ってしまった。
「なんだ、知らないのかね」
上司は説明を始める。伊達マスク。所謂、伊達メガネと同じお洒落道具。
ナノマシンに自分の若い頃の顔や化粧をした顔を記憶させ張り付けるのだという。
「私のコレは結構ランクが上のヤツでね。着脱が手軽にできるんだよ」
「安い物は剥がれないのですか?」
「いや、勿論剥げるとも。しかし大変らしい」
「それ、他の人がつけたらどうなるんです?」
「キミも反対派の様な事を言うんだなぁ」
上司は呆れたように肩を竦めて、持ち主の声紋認証をしなければ張る事ができないのだと幼子に
聞かせるように教えてくれる。
他にも自分以外の顔は作れない事、本人証明の専用のカードがある事など数々の犯罪防止策を乞いも
していないのに喋っていた。
私はやや気分を害しながらも機嫌を損ねては出世に関わるので頷き、しかし内心では唾を吐いていた。
それから数日後。定時間近、オフィスに不在だった上司が飛び込んできた。
「おや、ずいぶんと……」
老けましたな、という言葉を飲み込む。
「伊達マスクはどうしましたか?」
「無くしてしまったんだ!キミ、見ていないか?」
「さあ……でも大丈夫なんでしょう?」
「テレビくらい見たまえ!」
上司は怒鳴ってから行ってしまう。上司命令だと解釈して携帯でニュースを見る。
「世界で三億人以上の使用者がいる伊達マスクの不具合についてです。
製作会社は引き続きマスクの盗難に気を付けるよう使用者に呼びかけています。
これまでの盗難報告は二千件を越え偽装殺人も発生しており―」
状況を把握した私は笑いを堪えながら携帯を閉じる。そして同僚に話しかけた。
「知ってたか?」
「ああ、知っていたよ。何ともいい気味だ」
同僚はニヤニヤ笑いながらデスクの引き出しに手を入れた。
「何をしてる?」
私が尋ねると同僚は一層笑みを深めて引き出しから肌色の皮を一瞬見せる。
目を丸くすると同僚は悪戯っぽく人差し指を口に当てる。
「明日から俺が上司だ。言っとくが内緒だぞ」
「俺が上司だ、って……本物はどうする?」
私は彼の目に浮かぶ暗い光を見てそれ以上は何も言わない事にした。
カチリ、と仕事の終わりを告げる時計の長針に従い私は席を立つ。
「それじゃあ。いい人生を」
「ありがとう。良い上司に恵まれるといいな」
街路を歩いて帰宅していると風に乗って肌色のマスクが足元に落ちる。
私はそれを拾い上げてから―流行物は嫌いなので近くのゴミ箱に投げ入れた。
「夢オチ」
282:この名無しがすごい!
11/05/14 23:43:53.24 CGuyO7hT
「夢オチ」
・・・そう、僕は気が付いたのだ
このスレ
そうこのスレに書かれたこと
全てが・・・
全て僕が見た夢だってことに
「さよならマリアンヌ」
283:この名無しがすごい!
11/05/16 04:11:25.50 PgLF96vy
「さよならマリアンヌ」
「今日はさようならを言いに来たんだ」
驚きと戸惑いの表情を見せる彼女に、ぼくは意を決してそう告げた。
いきなりの告白に困惑したのか、いつもは気丈な彼女も言葉を失っている。
「何度も考えたんだけどさ、やっぱりこのままじゃだめだと思うんだ」
張り裂けそうな想いを抑え、必死に乾いた笑みを捻り出す。
「付き合いだしてもう四年……出会った時は大学生だった俺らも今じゃあ立派な社会人だ。
お互い別々の仕事に就いて、徐々に忙しくなって、会うのだってこうして仕事の終わった夜中だけ……。
もう限界なんだよ、いろいろ」
付き合おうと言い出したのは、ぼくの方からだった。
新入生歓迎会でほろ酔いながら九州訛りで自己紹介する彼女に一目ぼれし、それから一年越しで彼女を口説き落とした。
『マリアンヌ』―それが彼女のあだ名だった。本名の真理とかけてあるのだが、どうも本人は気に入ってないらしい。
聡明で優しい彼女と一本気でどこか抜けてるぼくとは相性が良かったらしく、なんやかんやで四年も付き合うことができた。
歪みが生じたのは今にしてみれば仕方のないことだったのだ。
年齢も二十代半ばに差し掛かり、周りで結婚すり人もちらほらあらわれ、ぼくも彼女と結婚するのかなと頭に描いていた。
そんな漠然としたビジョンをそれとなく彼女に話したら鼻で笑われた。
どうやら彼女は結婚願望がないらしい。
結局のところそれが別れを切り出した一番の理由だった。
五月の夜風は湿気を含んでいる。
押し黙っていた彼女はようやくその口を開いた。
「さよならって……どういうこと?」
彼女の声は心なしか震えている。
「ごめん……。自分から付き合おうって言っといて勝手だとは思う。だけどこのままじゃ俺たちはダメだと思うんだ。
だから別れよう」
「……ッ!」
彼女のハンドバックが何やらきらりと光っている。
「ふざけないでよ!! なによ、さんざん今まで振り回しといてどの口がそんなこと」
「しょうがないだろ? きみは俺と結婚したくないって言ったじゃないか。だったらそれぞれ別の道を歩んだ方が……」
「結婚!? はッ! 当たり前でしょ!? アンタと結婚するくらいなら死んだほうがマシよ!」
「なっ、マリアンヌ!! いくら何でもそれは」
「――!」
つづく