11/04/14 08:32:19.23 IMECQCPo
「ジェット☆コースター」
「ジェット☆コースターなんです」
彼女がにこやかに言うと、僕の手を取って引っ張る。確かに、目の前にそれが
ある。僕らは、順番待ちの列の後ろにつく。
でも、発音に違和感があったな。
「ジェットコースターだよね?」
「だから、ジェット☆コースター、なんです」
そう言う彼女は、無邪気な笑みを見せる。頬が少し赤らんでいるのは、春の
日差しが案外強いせいか。わずかに汗ばんだ額に、後れ毛が何本か、張り付いて
いる。彼女はそれをハンカチで拭くと、もう一度僕を見上げる。
彼女の言葉は、今ひとつわからない。でも、そのほほえみを見ると、それ以上
尋ねるのもはばかられた。
「ほら、来ましたよ」
確かに、目の前に期待が来ている。僕らは隣り合った席に腰を下ろし、バーが
膝に降りるのをじっと見守る。期待が、ごとりと一つ、大きめの音を立て、
それからゴンゴンと唸りながら動きだし、やがて滑り始める。
終点について、僕らは再び地上に降りる。足元がふらふらだ。彼女は意外と
平気なようで、僕の腕を引っ張って、ベンチまで連れて行ってくれた。
「待ってて下さいね。ジュース買ってきます」
彼女の後ろ姿を見て、ふと、笑い出しそうになった。そうか、これが僕らの
「初☆デート」なんだものな。
次、「カエルにバックドロップ」