11/01/21 17:22:46 k9oap51m
「さよならはいわないで」
僕の彼女が光速宇宙飛行士になったと知ったのは、僕たちが二十四歳の時だった。
言うまでも無く、ウラシマ効果のおかげで、彼女の船内時間は遅くなる。彼女が三十
歳になるとき、僕は五十年の年月を過ごし、七十四歳になっているだろう。
彼女は僕を捨てたのか? 否。捨ててなどいなかった。彼女は、自分が人類初の
光速フライトから帰還する五十年後まで、僕が待っていてくれると確信していたのだ。
そうでなければ「さよならはいわないで」などというメールを送ってくるはずがない。
彼女がそうであるように、僕もまた、再会の時を待った。
僕は自分の健康を保つために、ジムに通い始めた。ベンチプレスを数セットこなし、
縄跳びで三重跳びをし、そしてヘルシーな食生活を続けた。五十年。長い年月だ。
だが、僕には待っている彼女がいるのだ。生きなければならない。
そして五十年後が経った。だいぶ老けた顔を鏡に映し、僕は正装をして彼女を
宇宙空港にまで迎えに行く。今では、超光速飛行技術は普通のことだ。彼女たちの
無数の船内実験によって、人類の光速科学は発展を遂げた。彼女たちの偉業は
教科書に載った。
そして僕のことも、人々の話題に上るようになってきた。「五十年待った恋人」
というのが、僕に付けられたアダ名だった。今では顔なじみとなったテレビ局の
クルーが、彼女の到着を告げる。
開口一番、「ただいま」と、彼女は言った。「おかえり」僕はかすれた声を精一杯
ふりしぼって彼女に声を掛けた。彼女は優しく微笑んでくれた。記憶にある通りの
素敵な笑い顔だった。
そのためだけに、僕は五十年待ったのだ。
「NEET撲滅法」
151:この名無しがすごい!
11/01/22 12:46:57 vvlCb1X2
「NEET撲滅法」
NEET……それはもはや社会現象となっていた。
働いたら負けを地でいく社会保障制度、生まれた時から歴然と存在する学歴格差。
覆そうと考えるものすらいない、そんな真綿で首を締めるような状況……
あるとき、ひとりの男が立ち上がった。
男は考えた。
必死で働きたくなるよう、駆り立てるものが必要だ。自給自足、自立、無限の可能性。
甘んじるのではなく、みずから生き延びようとする、そんな世界にしなければ
何かがあったときにこの国の人間たちはあっさりとその身を投げ出してしまうだろう。
生まれた時から高学歴を約束されていた男は、ついに首相となり、成し遂げた。
<<NEET撲滅法>>
・心身の健康な者は必ず働くこと
・国は生命及び娯楽、経済の一切を保障しない
・自宅にいられる時間は12時間のみとする
5年後、峻厳の独裁者と呼ばれた男は国民の手により処刑された。
セキュリティを破り必死に声を荒げる国民を見たとき、彼は涙した。「ああ、ようやく彼らも目が覚めたのだ!」
「メロンとスイカ」
152:この名無しがすごい!
11/01/23 06:37:48 Oxl2rlFt
「メロンとスイカ」
「あんた……耳ついてるの? さっきからメロンとスイカはどっちが好きかって聞いてるでしょ!?」
そう言いながら無邪気に顔を寄せてくるのはやめてくれ!
こっちがドキドキしてるのがバレそうで、思わず視線を逸らしてしまう。
ここは地元の果物屋、その軒先で売っている串に刺さったメロンと薄切りのスイカ、二〇〇円均一の価格設定。
部活帰りのおなかを空かした俺らの足を止めるには十分過ぎる品物だった。
「ス、スイカかな……どっちかって言うと……」
「へぇ、高級なイメージのメロンよりもスイカの方が好きなんて、あんたらしいわ。何か理由あるの?」
理由と聞かれて素直に答えるべきか……一瞬悩んだものの、嘘をついても仕方がない。
小学生の頃の古い記憶を辿り、天を仰いで思いを馳せながら口を開く。
「昔さ、俺のばあさん……スイカが好きで毎年、夏になると一玉買ってきては半分に割って一緒に食べたんだ。
二人してスイカで腹一杯にして、『もう喰えん』とか言って笑ってさ……。
まぁ、そのばあさんも去年亡くなっちまったんだけど……」
少しだけ感じた寂しさと恥ずかしさをごまかすために、親指の腹で鼻の横を二、三回引っ掻く。
彼女は申し訳なさそうな困惑した表情を浮かべた。
「ごめんなさい。悪い事、聞いちゃった……」
『いや、別に』と否定しようと思ったとき、彼女の表情が和らいで口元がちょこっとだけ微笑む。
次の瞬間、聞き取れるか聞き取れないかの小さな声が聞こえた。
「でも、あんたのそう言うところ……『けっこう好き』よ」
心臓が飛び上がって思考が停止する。
「えっ? 今、最後のところ、なんて言ったの?」と聞き返したら、
今度は顔を真っ赤にした彼女が大げさに否定した。
「何も言ってないわよ! 耳がついてないかと思えば余計なところはしっかり……
もう、どうでもいいから、そこのカットフルーツ奢りなさいよね」
しっかり聞き取れなかったことを後悔しつつ、「へいへい。奢らせていただきますよ」と財布を取り出す。
バリバリと開いて「……で、メロンとスイカどっち喰うの?」と尋ねたら、とびっきりの笑顔を返された。
「もちろん、大好きな『スイカ』に決まってるでしょ!」
「ツンデレな彼女」
153:この名無しがすごい!
11/01/23 09:58:48 BhW3D33a
「ツンデレな彼女」
「あんたなんか好きでもなんでもないんだからね!」
「あんたのために毎朝起こしにきてあげてるんじゃないんだからね」
「あんたのためにお弁当作ってるわけじゃないんだからね」
「あんたのために一緒に下校してるんじゃないんだからね」
「あんたのために背中流してるあげてるんじゃないんだからね」
「ああああああああああああああんいいいいいいいいいいいい」
こうして僕は高校生にして一児の父親になりました
ツンデレといいながらなにか策略的な強引さを感じずにいられませんでしたが
子供が出来てしまった&親同士がもうこの二人は結婚させようぜと飲み席で約束してしまったこと
いろいろと外堀がうまりすぎてしまったこと、もう逃げられないと悟った僕は十代にして結婚することになったのでした
恐るべしツインデレな彼女・・・いや策士彼女
「天下無敵母さん」
154:この名無しがすごい!
11/01/23 12:00:04 ypQFFE1f
「天下無敵母さん」
うちの母の話をしよう。
負けない。
関西という場で商売人をしているというのに「ねぇもうちょっと負けてよ」というおばちゃんの言葉ににっこりと、
「まかんない」と言い切るその度胸。
そんなだからうちの商品は売れないような気がするんだけど、でも不思議と商品はうれている。
何故って、客が母との「負けろ」「負けない」に熱中して、結局最後には、
「あんたには負けるわ」と商品を買って帰るからだ。
母さんは負けない。
「鳥駅長失踪事件」
155:この名無しがすごい!
11/01/23 20:15:19 Jf6cfSyG
「鳥駅長失踪事件」
「へー、鳥駅長失踪ってニュースでやってるよー。ところで鳥駅ってどこー?」
「ぐぐっても出てこないな。鳥取駅のことじゃないか?」
「鳥取ってどこだっけ?島根といつもごっちゃになって分からないんだよー」
「お前、失礼なやつだな・・・・・・まあ俺もよく分からんけど。
なんでも鳥取県宛に来る手紙は、宛先が『島鳥県』になってることが多いというぞ」
「それどっちの県宛てか分かんないねー」
「まあ殺し屋さんが、人口低下を防ぐため、唯一依頼を受けない県だしな・・・・・・」
「?」
「気にすんな、独り言だ。しかしあの県って確か殆どが無人駅だったが・・・・・・」
「凄いねー。人がいる駅が5本の指以下だよー」
「ゲゲゲの女房効果なんてほとんどないしな。そうか・・・・・・分かったぞ!」
「え、何がー?」
「これはたぶん鳥取駅の誤植だと思うが、こうでもしないと人が興味を持ってくれないニュースなんだ・・・・・・」
「心底せつないねー」
その日も島鳥駅は普通に営業していたという。え?
「独身術」
156:この名無しがすごい!
11/01/24 00:24:32 zx4pBDDZ
#「独身術」
「先生そんな!ひどすぎますよ!」
ぼろぼろの道着をまとった若者が、岩の上にすわる仙人風の老人に食ってかかった。
若者は三十歳くらいだろうか。伸び放題の髪やひげ、そして肉の落ちた手足。
その顔のしわは苦労をしたものに特有で、きっともう何年もの厳しい修行によるものだろう。
「そうですよ先生!こんなの困ります!」
すると、同じような年恰好の若者がもう一人、岩陰から現れて、同じように老人に訴えた。
この出てきた若者も、長く修行生活にあったのだろう。
絡まりながら伸びた髪の様子といい、着ているものの破れといい、初めの男といい勝負である。
彼らは村にいれば男盛りの年ごろだろうに、人里離れたこの岩山で何年暮らしているのだろうか。
「そうですよ!どうにかしてください!」
「先生お願いしますよ!」
見ると、声を聞いて集まってきたようだ。同じような男たちが、口々に岩の上の老人を責め立てる。
彼らのそのみすぼらしい風采といい、人相といい、初めの男と瓜二つ…。
瓜二つ?
「先生、分身術だけ教えてくれても困ります!」
「元に戻る方法は別に修行が必要なんて聞いてなかった」
「早く独身術のほうも教えてください」
#次は「枯れ井戸スコープ」で。
157:この名無しがすごい!
11/01/25 20:48:42 vPxCvAI/
「枯れ井戸スコープ」
我が家の裏庭に枯れ井戸がある
もう何十年も水が干上がってしまっていると、爺ちゃんがいっていた
昔は夏になると井戸水でスイカを冷やしてみんなで食べたと懐かしそうに語っていた
そんな枯れ井戸でも井戸を壊さず保存してる我が家
井戸にまつわる迷信というのは昔から全国各地にあるもので
簡単にいってしまえば井戸を壊してしまうことで発生するかもしれない怪奇現象が怖い
たったそれだけのことだった
確かに何にか物の怪がいるような雰囲気ではある
そんな古井戸と共に生きてきて早二十年!
こんな僕も今年成人式に出席し、帰り際、中学時代同級生だった英子ちゃんと仲良くなれました
英子ちゃんはむっちんプリンプリンな体をしていて、見るだけで前屈みになってしまいます
顔もグラビアアイドルみたいにエッチそうでもうそばにいるだけでお願いしますと頼みたくなってしまうほどです
ある日、英子ちゃんが僕に枯れ井戸を見せてほしいのと頼んできました
僕は二つ返事でOKし、家族が誰もいない日を選んで家に呼びました
当日、彼女は信じられないくらいのミニスカとキャミソール姿でやってきて、僕を誘惑しました
・・・・なんだかんだいろいろありましたが、僕は英子との間に生まれた娘と井戸のまわりを掃除しています
まさか、一発でヒットするとは思いませんでした
「オチが思いつかなくてすみません」
158:この名無しがすごい!
11/01/27 00:07:15 NyrvMIyg
「オチが思いつかなくてすみません」
「待っていたよ」と一人の老人が言った。
彼が誰だかは、知らない。老人は、私が眉根を寄せて渋面を作っているのに構わず、勝手にベラベラと話し始める。
「少し君に意見を聞きたくてね、待っていたんだよ。いや、君でなくてもよかったんだがね、
次にここに現れた者に聞こうと思っていたんだ。で、現れたのが君だったってわけだ。
とりあえず聞くけどね、君の様な、人間には一つの人生があって、それは小説に興す事ができるというのは承知の事実だがね、
いやいや、もしもだよ、地球にも人間と同じように人生があるとするなら、どんな小説になると思うかね?
わしは地球が腹に抱えている生命と言う細胞が、ガンとなり、自信を蝕んでいくという所までは書いたんだが、
先が思いつかないんだ。そのまま殺してやるべきか、それとも、ガンを直すべきか、直すにしても、どうやったらいいものか……」
「ガンなら、その細胞を殺さないと」私は面倒くさ気に言った。
「悪い物ですからね。で、取っ払ったガンの代わりに新しい健康な細胞を移植すればいいのです。
例えば、宇宙人とか。新しい生命が体にマッチしたなら、地球も健康を取り戻す事でしょう」
老人は難しい顔をして、低く唸った。だが、次の瞬間には頻りに頷いていた。
「よし、それでいこう!」
彼は、満足してそう言うと、私に背を向け、どこかへ行ってしまおうとするので、私は急に不安になり、慌てて彼を引き止めていた。
「待って下さい。他人の意見で作った小説が、自分の小説と言えるでしょうか? 私のアイディアをパクらない頂きたいのです。その話は私だけが、作っていい話なのですから。なぜなら私が生んだのですから」
「だが、わしは自分でオチがつけられないんだよ。君のアイディアを是非採用したいのだが……」
「いや、それが貴方のオチなのではないですか。それ以上思いつかないのなら、オチがないのが、貴方の考える、地球の小説のオチなのです」
興奮した私が捲し立てると、老人は引き攣った笑みを顔に浮かべた。「ワナビめ……」
「香り立つ竜彦」
159:この名無しがすごい!
11/01/29 11:28:18 6qGqcvze
「香り立つ竜彦」
職場から歩いて数分の距離に、とある定食屋がある
そこは全定食500円でごはん大盛、おかわりいくらでも、納豆、生卵、お新香取り放題という店だ
そんなわけで昼時はいつも混み合っている
俺の昼の主戦場でもある
安月給の俺はほぼ毎日ここの店で定食を食べる
胃にご飯が入らなくなるまで掻き込み、味噌汁をすする
納豆臭さで上司に怒られるくらい納豆を食べ
主な栄養素は生卵ですと胸を張っていえるくらいに生卵を食べ
お新香は野菜ですと真顔で答えられるくらいにお新香を食う
昼休み一時間を全部使い切って値段以上に満喫して店を出る
俺の一日の食費は500円
俺がいくと店のおばちゃん達の顔が引きつるのはもはやしょうがないだろ
俺が腹一杯で午後仕事にならなくて上司や同僚が呆れるのもしょうがない
二つ名が食べ物の香りで香り立つ達彦なのもしょうがない
「…………」
160:この名無しがすごい!
11/01/31 02:34:05 yyZL9hHD
「…………」
とある居酒屋で俺が聞いた話さな。
「俺はさ、お前以外の女はぶっちゃけモブなんだよ。お前だけしか見てないからよ」
「…………」
「いやほんと、合コンのときの姫ちゃんとか、うん可愛いけどあれだ、人形的な可愛さでさ、化粧美人? お前のにじみ出る素の可愛さの真似は出来んよな」
「…………」
「……な、なあほんと悪かったって。機嫌直してくれよ、な? もう開き直ってどんな言うことでも聞いちゃうからさ?」
「…………」
「なあ、せめてどこに怒ってるのかだけは教えてくれねえか? 俺はほんとどうしていいのか判らねえよ?」
「…………」
男は気づいていなかった。
女が男の口説き文句にうたた寝しているのを。
男は匂い立つほどの美男子で、女は哀愁が漂うほどの醜女だった。
俺はどうにも、何にも感想すら考えられなかった。お前はどう思う? なあうたた寝していた女に口説き続けたお前さんよ。
「喫茶店の屋根で僕は逆立ちをする」
161:この名無しがすごい!
11/01/31 09:56:01 ODqPlj3W
「喫茶店の屋根で僕は逆立ちをする」
「名古屋城だよ」
はっ、今なんとおっしゃられた
「だから、名古屋城なんだってば」
すまない、もう一度言ってくれないか
「だーかーら、名古屋城のまねだよ」
……
どうやら彼はシャチホコの真似をしているらしい。
何からつっこめばいいのか分からないが、このシュールな光景をどうにかしてほしい。
なぜ私の店の上でなのか、どうして魚のオブジェの真似をしているのか、といたいことは沢山あった。
とりあえず、顎を屋根の上に乗せてえびぞりにしろと言ったら、体が硬くて無理だとのたまった。
こんな寒い日に外に出てくだらないことをするなとか、人が集まって来ただとか営業妨害だとか言いたいことは沢山あったが、
その後私がしたことといえば、無視して店の中に入っただけだ。
俺を見ろだとか突っ込み無しは厳しいだとか叫んでるような気がしたが、そんなことはどうでもいい。
些細なことだ。くだらない。
バイトの店員に店を任せ、私は自室にひっこむ。
早まったかなと思いつつ、私は結婚式の案内状をプリンタで印刷する。
「青汁ストレートMヒトミ」
162:この名無しがすごい!
11/02/05 12:27:29 Nn8mEe4v
「青汁ストレートMヒトミ」
ヒトミがコンビニで青汁を買った
ただそれだけだった
彼女はMだから余裕で青汁ストレートを一気飲みできるのだった
「白いスク水に青汁をかけてみたい」
163:この名無しがすごい!
11/02/05 17:44:47 0wHogkvZ
「白いスク水に青汁をかけてみたい」
清い物を「清い」と受容するのは素直な人だと思う。
「清い」と口にすることで、「清いと感じる自分も清い」と見栄を張るのは寂しい人であり、自らの汚れも認めている人であろう。
では、清いものを汚してみたくなる欲求はどんな趣向がそうさせるのだろう?
だがそんな追求は実は不必要で、考えるだけハゲか白髪を生むだけだ。
白いスク水とそれを纏う彼女に青汁をぶっかける。
その衝動と欲求の果てに彼女が表すリアクション―そこまでの妄想とシミュレーションだけで一日の糧となる。
「汚れを汚れとするだかまり」もまた素直な人なのかもしれない。
「だがマズイものをオカワリなんかするものか!」
164:この名無しがすごい!
11/02/06 13:41:34 08cZ68jW
「だがマズイものをオカワリなんかするものか!」
分かる。普段料理など一切しないお前が、想像もつかないほどの努力をして作ったことは、痛いほど分かる。
俺だって出来れば「美味い」と言ってやりたいさ。でも、お前には悪いが、これは美味という感覚からほど遠い代物だ。
正直に不味いと言ってしまおうか。いや、しかし俺の中に眠っている良心ってやつが、それを必死に止めてくる。
とは言っても毎日こんな感じのを食わされるというのは・・・。くそう。
「悪いが、お前とはやっていけそうにない」
165:この名無しがすごい!
11/02/06 16:38:32 pX+u0Gbt
「悪いが、お前とはやっていけそうにない」
寝食を共にし仕事でも常に一緒の相棒から三行半を突きつけられた
いきなりだったのでひどく驚いた
このままずっと今のまま契約が終わるまでやっていくものばかりだと思っていた
しかし、相棒のストレスMAXになったらしい
朝起きていきなり衝撃の三行半に俺は驚き
思わず壁を殴ってしまった
そんなわけで俺は今非常に凹んでいるのである
「昼飯はあの店のラーメンにしよう」
166:この名無しがすごい!
11/02/08 12:50:23 omGcyDCW
「昼飯はあの店のラーメンにしよう」
「今日は休日だし、昼飯はあの店のラーメンにしよう」と親父が言った。
「えーっ、凄い混んでるんじゃない? 止めとこうよ」と俺。あんなところ昼は戦場だ。
「まかせとけって。父さんこう見えてもある格闘家から師匠って言われるくらい、有名なんだぞ。
あんな店、いくら人気店でも楽勝よ」
「んなわけないと思うけどなー。まあ美味しいから行きたいけどね。豚骨がこってりしてるし」
「決まりだな、行くぞ」
というわけで、親父と出かけたその店は、黒山の人だかりだった。
「いいか、俺について来い。見失うなよ」と親父は言うと、いきなりすばやい動きでカウンターの上に飛び乗り、
全力で他の客の前の、出来立てのラーメンに飛びついた。
「さすが親父! 格闘家の師匠っていうだけあるよな!」俺は思わず興奮して叫んだ。
しかしどうやら勢いが付きすぎたのか、親父はバランスを崩すと、そのまま横転し、白い豚骨の海に沈んでしまった。
「親父ぃぃぃぃぃ!」俺の絶叫も空しく、親父はそのまま息を引き取った。
「おい、この店はゴキブリ入りラーメンを出すんかよ!」
ようやく箸を割ってラーメンを食べようとしていた客が、親父の死体に気付き、店主に食って掛かる。
仕方がないので俺は、隣の人気のないうどん屋に出直すことにした。
「八百長仮面」
167:この名無しがすごい!
11/02/09 15:33:38 RwZ7tqzX
「八百長仮面」
今日、ナンパで引っ掛けた女は物をハッキリと言い過ぎる女だ。見た目から
して意思が強そうな感じだとは思った。大方、そういう女には断られるのだが
だからこそ落としてみたくなる、というのも男の本能だ。
そうして、なんやかんやと笑わせたりおだてたりして居酒屋に連れて入ることには成功した。
何だ、俺に掛かれば一見難しそうな女でも思いのままだとあぐらをかいては見たが、女の態度は
決していいとは思えなかった。
俺以上に、ワタシイイオンナデショウ、といった尊大な態度で、仕事の話に及ぶとそれがまあ、
上昇志向、デキル女感、自身満々さを全身から溢れさせていた。俺は負けたくなかった。
こういう女を屈服させなければならないとある種の使命感のようなものを胸にたぎらせた。
俺は俺の仕事の話をしようと思ったが、ナンパした女と激論を交わすのは野暮でもあると考えたし、
本気を出すのも大人げないと、考えていたところ女が
「こんなことしなくたって十分もてるでしょうに、どうして?」と言った。
俺は「君だって、モテそうなのに結局は俺についてきたよな」と返した。
女は暇だったから……と気だるそうに二つ折りの携帯を開いた。
168:この名無しがすごい!
11/02/09 15:34:21 RwZ7tqzX
そして、画面をみつめると、俺には絶対向けない関心をたたえた目を携帯の画面に落としていた。
俺はそれが悔しかった。その悔しさから女が携帯を閉じると俺はこともあろうに過去の武勇伝らしき
ものを口にしはじめていた。らしきものというのは、俺は全くモテない。
ナンパも本当に必死だ。モテナイ俺は中学時代、学年のマドンナを後輩にしつこく絡ませ、
そこへ俺がかっこ良く登場し学年のマドンナを最終的には落とすというバカバカしいことをする程にだ。
それを俺に都合良く話を編集して、女に話した。
すると女は「話、八百長くさい」と鋭く指摘するとほろ酔いで
「今会ったばかりで何だけど、かなり今も慣れた男気取っているわよね?仮面?……
って感じよね、その雰囲気が面白くて実は着いて来てやったのよ」と嘲笑った。
「……何だあ?」と図星を突かれてカチンときた俺だが気持ち的にはもう縮んでいた。
「ウフフ……!この八百長仮面!」と言ってさらにからかい挑発してきた。そして女はさらに
「八百長仮面さん、この後どうするの?今ねえ、友達呼んだから一緒に行きましょうよ」と言ってきた。
数分後に現れた友達とは数年前に相撲界で八百長疑惑にて解雇された元力士だった。
俺は、その女と元力士に暴利バーに連れて行かれた。女はそこの店長だった。
酔って、俺の事をずっと八百長仮面と呼んでいたが、その時にはヤクザ化した元力士も気まずそうにしていた。
「消える2月」
169:この名無しがすごい!
11/02/10 11:16:04 AGhVtm+a
「消える2月」
今夜も月が出ている
夜風が俺の体から体温を奪っていく
待ちの光りが俺の肉体をさらけ出す
女のつんざく声音が俺の大事な部分を刺激する
やばい、マジでヤバい、いじってもいなにのにイキそうだ
ああ、もう無理だ、目の前にあった壁に先っぽをこすりつける
ぐりぐり、痛きいい、マジでヤバい、予想以上の快楽だ
女が角オナニーがくせになるのも分かる、自虐的な快感
うおおおおお、ぐりぐりしちゃう、大事な部分と壁が擦れていたい、けど気持ち胃
はぁはぁ、もうもげそてもいい、思いっきり擦る、壁にこすりつける
こうして俺の二月が去っていった
三月に入り俺は病院に入院した
壁に擦りすぎて傷口が化膿し壊疽し始めていたからだ
それでも俺は病室の壁に擦り続けている
やばい、マジでやばい気持ちよすぎるのだ
「神秘の撥水加工」
170:この名無しがすごい!
11/03/08 21:08:09.28 uma89oT5
「神秘の撥水加工」
雨具。
雨や雪などから衣類と体が濡れることを防ぐ撥水性をもった用具である。
古くから傘や雨合羽や長靴の類いは創造され使用されてきたが、二十一世紀を迎えた近代に至っても、完全な物は存在していない。
「あっめあっめ、ふっれふっれ、かあさんがぁ~~」
梅雨時の鬱陶しい空模様の中を楽しげに歌い歩く少女がいた。
「ふぁ~ふぁでおっきがっえうれしぃな~~」
ん?
雨の歩道を僕の方に向かって来る少女の歌声に違和感を感じた。
「ねぇ、お歌間違ってるよ」
目の前まで近付いた少女に思わず話し掛けてしまった。
「いいの。うちのお洋服はふぁーふぁだから、お着替えが楽しみなん」
ふぁーふぁ?
「そうなんか」
なんと答えればいいのか困惑し、相槌をうつことしかできなかった。
「すいません」
ふと背後から女性の声が控えめに割り込んできた。
「その子の母です。実は柔軟剤のことを言いたいみたいなんですけど、そうじゃないんです」
そこまで言われて、ああ、と理解したが真相は違うらしい。
「ファーファなんすか。でも違うって?」
「はい。実は離婚してまして。この子が父親と住んでいた頃は、父親が柔軟剤にこだわりがあって洋服もタオルもファーファでいつもふっくら柔らかだったんです。ですが離婚してからはその習慣もなくなって……」
「そのころのふっくら柔らかが忘れられなくて間違った歌詞を?」
「いいえ」
母親はかぶりを振ってキッパリと言い放った。
「私に復縁を考えさせるため、父親があの頃を思い出させるようにとこの子に教え込んだのです!
雨に濡れたこの子をふっくら柔らかなタオルで吹いてあげた日々。ふっくら乾きたての洋服に着替えさせた日々。この子を囲んで笑いあっていた小さく幸せだった日々……。
そんな手段で復縁を迫るあの人が、私は大嫌いなんです」
涙さえ浮かべて切々と語る母親に、僕がかける言葉はなかった。
「そうっすか」
それだけ答えて親子の前を立ち去った。
数年経ち、子供を持つ身になってみて思うことがある。
雨に濡れた時でも家族の待つ団欒で、着替えにさえ幸せを感じるーーそれが心の撥水効果ではなかろうか。
雨に濡れた子供を叱ったり急かしては分からないことだ。
「驚異の上水道」
171:この名無しがすごい!
11/03/08 21:28:48.19 l1dJ2PBl
「驚異の上水道」
愛媛では蛇口をひねるとみかんジュースが出ることは良く知られている。
また、香川では蛇口をひねるとうどんだし汁が出てくる。これもまたよく
知られている。だが、この世にはさらなる上水道が存在しているのである。
「マジ情報なんでしょうね?」
テレビ局のクルーが何度も確認してくる。まあ信じられないのも無理は無い。
南東北、栃木などという秘境に来たことのある東京都民はほぼいないのだから。
「ここです。この水道です」
公園に設置された無骨なコンクリートの水道。そこから、信じられないものが
出てくると言う。俺は蛇口をひねった。
「うげえ」「ぐぼあ」「けーー」
テレビクルーたちはその尋常ではない排出物を見ると、全員が膝をついて
崩れ落ちた。だが、まだ排出は止まらない。どんぶりの中に大量のそれが
満たされる。周囲は吐瀉物に溢れていた。
そう。吐瀉物。どんぶりに山盛りになっているのは、別名吐瀉物、しもつかれ
である。栃木県民の半数が憎悪するその吐瀉物然とした外見。
さっそく味見をさせようとクルーの口にしもつかれを流し込む。白目を剥いている
軟弱なクルーもいる。痙攣しているクルーもいる。だが、ここは栃木だ。
しもつかれを食べねば無病息災は祈れない。食べさせる。胃に流し込む。
それを繰り返すこと三十分。ついにテレビクルーが白旗を上げた。
残念ながら、この取材の放送はなされず、お蔵入りになった。
しかしこの世界には、まだまだ驚異の上水道が存在しているに違いない!
負けるなテレビクルー! 都民の知らないおぞましい現実が、上水道で
君たちを待っている! さあ次の取材は沖縄だ。ゴーヤがクルーを呼んでいる!
「5時の夕日」
172:この名無しがすごい!
11/03/09 03:28:01.62 +iHL2GuM
「5時の夕日」
彼女はぼくの隣の席に座っていた。
ぼくの席は窓際の一番後ろ。その隣が彼女の席。
めんどくさがり屋で内向的なぼくと対照的に、彼女は明るくて社交的だった。
そんな性格なもんだから、授業中にたまにぼくに会話を振ってくる。
「ねえ、ここの解き方教えて!」
「あ、そのストラップ『ウサビッチ』じゃん! あたしも見てる」
「知ってる? 現国の武田って3組の吉田と付き合ってるらしいよ」
大抵は彼女から一方的に話しかけてきて、ぼくは「へぇ」とか「そうなんだ」
と気の利かない返事をして、会話が早々に終了する。
めんどくさがり屋で周囲に頓着のないぼくは、彼女の世間話に付いていけない。
それでももう少し気の利いた返事が出来なのではないか、とその後一人で反省するのが常だった。
それからしばらくして席替えがあった。
彼女とは離れ、自然と会話する機会を失った。妙な喪失感を覚え、それからというもの気づかぬうちに彼女の姿を目で追うようになった。
誰かと話している姿を見ると嫌悪した。
これが嫉妬だと気づくのに時間はかからなかった。
いつものように学校から一人で帰っていると、彼女が公園の前で泣いていた。
そのそばには彼女といつも一緒にいる女子がいる。どうやら泣いている彼女を慰めているらしい。
「気にすることないよ、美香にはもっといい男がいるから」
そんな声が聞こえた途端、ぼくの中でなにかがはじけた。
ああ、そうか。ぼくの知ってる彼女はほんの一部に過ぎなかったのだ。
そして、ぼくの抱いていた感情は実に陳腐であった。
逃げるように別の道から帰ろうとした時、彼女と目が合った。
彼女は少し驚いた顔をしていた。それに対して、果たしてぼくはどんな表情で返すことができたのだろうか。
公園の時計は五時を指していた。
ぼくと彼女の影は、夕日に照らされどこまでも伸びていた。
「不幸という名の幸福」
173:この名無しがすごい!
11/03/10 00:40:21.99 IhJnh5rK
「不幸という名の幸福」
「暑い。暑過ぎる。ここまで来るともう地球温暖化とかやめて、地球熱体化とかのほうがいいんじゃないか?」
俺は暑さのせいなのか、元からそういう顔なのか、とにかく顔色の悪い友人に聞いた。
「なんだよ熱体化って……。つーかこれもう罰ゲームだよ! ふざけんなよ、俺が何したんだよ!」
知るかそんなこと、そう言い返したかったがそんな気力もない。
俺達が何故こんな何故つらい思いをしているのかというと、それは教室のエアコンが壊れたからだ。
しかし、何故壊れているのだろう。あながち何かの罰ゲームなのかもしれない。が、俺には何か悪いことをしたつもりはない。
何もしていないのに罰を与えるとは、なんということだろうか。おそらくそれは罪だ。そして罪には罰だ。
もしこれが本当に罰だったら俺は与えた人物に天誅を下そう。
こんな下らないことを考えている内に友人が俺に声をかけた。
「なぁ、このまま文句言ってもしょうがないからこの地獄の中から楽しみを見出そうぜ」
「なるほど、それは名案だ。だけどこの地獄からというと至難の業というか、多分無理だ」
そう、答えると友人は卑猥な笑みを浮かべた。うわ、気持ち悪い。この笑顔のせいで更に暑くなりそうだ、くたばれ。
友人は目線をあるところに向けた。そう、女子だ。正確には女子の背中。つまり汗で制服が濡れて下着が透けているということだ。
「素晴らしい」
俺は思わず声を出してしまっていた。しかし、素晴らしい。黒の下着のようだ。一瞬だけだが、俺のはここが楽園に感じられた。
一瞬だけ。もう終わった。地獄が舞い戻る。「はーい、戻ってきたよー」と。死ね。
こうして女子の下着を覗いてる内になんだか頭の中がもやもやとしてきた。なんだか頭が軽い。
「ねぇねぇ!もうちょっと下着をしっかりと見してよ!」
バカな。暑さでとうとう頭がおかしくなったのか。俺は驚きながら友人の方に顔向けた。
しかし、友人も驚いた顔で俺の方を向いている。
見るな、バケモノ。頭が悪くなるわ。いや、違う。何故俺の方を向いている。
まさか、さっきのは俺言ったのか!?
どうやら、そうらしい。クラスメイトの目線が氷点下だ。
わぁー涼しいー、ってそれどころではない。
俺はとっさに「これは罰ゲームだ」
そう言ったが目線が冷たくなるだけ。
もう忘れよう。そう思い俺は机に伏せて寝ることにした。起きたときは汗をかいて地獄だろうが、この空気よりましだ。
174:この名無しがすごい!
11/03/10 00:41:23.98 IhJnh5rK
お題忘れたスマヌ
「夜空の星の代わりになるもの」
175:この名無しがすごい!
11/03/10 19:16:35.70 yeiL1cYi
「夜空の星の代わりになるもの」
「星空ってどんなものなの?」
盲目の少女は思いきった様子で尋ねてきた。
問われた家庭教師は困惑してしまった。
手近な物や他の感覚で代替して教える事が叶わない夜空。特に星の瞬きや輝きや空の広がりを伝えきれないためだ。
「空に宝石が散らばっている、という想像はできるかい?」
「空が広いことは知っているわ。丘に連れていってもらった時に、頭の上に風が渡って手を伸ばしても天井を感じないくらい高いんでしょ」
漠然としすぎた取っ掛かりは見事に空振りだった。
彼女の好奇心は常に湧き出てくる。
そのため、地球を抱く宇宙や地球同様に存在する太陽や恒星・惑星・月や衛星や人口衛星も一般常識以上に理解はしている。
だからこそその光景を知りたがったのだ。
家庭教師は悩みに悩んだ。
ふすまに穴を開けて簡易プラネタリウムを作っても彼女には不十分な説明だろう。
一ヶ月近く回答を保留し、一つの形にまとめてみた。
「いいかい? 今、北側の夜空を見上げているよ」
食卓に段ボールの板を立て、彼女を食卓の淵に鼻が付くように座らせて家庭教師は説明を始めた。
「北の夜空は北極星を中心に星達が円を描くように動くことは教えたよね? だからまず北極星を見つけてみよう」
言いつつ彼女の右手を段ボールの底辺へ誘う。
「ここがこの辺りの真北。背の高い山が連なる辺りだ」
「地図で教えてもらった山脈のあたりね」
「そう。そこから目線を上げていくと……」
ツツツっと底辺から垂直に立つ段ボールの手前面をはい上がらせる。
途中にあるデコボコに少女は怪訝な顔を表すが、家庭教師は目的地まで止まらずに彼女の指を這わせていく。
「ここに大きな玉があるのが分かるかい? これが北極星だ」
「ああ! 今までのデコボコや粒々は星だったのね。北極星は他のより大きくてよく分かる!」
「そうだ。大きくて光が強いから北の空を見るとすぐに見つかるんだ」
家庭教師は続いて北斗七星・大熊座・カシオペア座……と説明を続けていく。
「これが、北の星空なのね」
少女は説明をなぞるように北極星から他の星座を何度も何度もなぞる。
「これが空に広がっていて、輝いていて、地球から見上げているなんて、きっと素敵なんでしょうね!」
ビニールを貼った段ボールに埋め込んだ砂やビーズやビー玉。見た目はガラクタかゴミにしか見えないが、彼女には満点の星空となった。
「夜明けのパントマイマー」
176:この名無しがすごい!
11/03/23 16:27:23.27 TicwhsVX
「夜明けのパントマイマー」
うちの学校の新聞部は、広報機関であると同時に、ある種の諜報機関でもある。
たとえばXファイルみたいな、超常現象を解明する組織があると思ってくれれば、
あまり見当違いではない。
そして新聞部は、超常現象を単にP2(ピーツー)と呼ぶ。Paranormal Phenomena
(超常現象)には、Pが二つあるからね。
僕は、そのP2を探す役目を持っている。オカルト部と科学部も兼部していると言え
ば、意味が分かるかな? 要するに僕は、面白いことに、ゴーストバスターズみたい
な組織に「所属」しているんだ。
そして素晴らしいことに、ありがたいことに、僕らの仕事が無くなることは決して
無いだろう。この学校の周辺にある都市は、何故か不自然に歪み、軋み、いまも
「異常」に満ち溢れているのだから。
夜明けにP2が現れる。それは、唐突に流れた噂だった。
噂の流布にはいくつかのパターンがあるが、「どんな」P2なのかではなく、
「どこに」でもなく、「いつ」だけが噂になるというのは珍しい。推察するに、
その出現は場所を転々とし、見る者によっても感じ方が変わるのだろう。だが、
実際に見てみるまでは、予断は許されない。
コードネーム、夜明け。僕らは、毎晩、張り込みを続けた。
待つこと一週間。ビルの屋上にそいつは現れた。仲間に報告するも、距離が遠い。
そいつは人の形をしていた。そして、何も無い空間を撫で回していた。と、そこに
そいつが飛び乗る。その行為はまるきり自殺に見えた。だが、そこにはブロックが予め
置いてあったかのように、不可視の足場が存在している。そして、また、そいつは何も
無いところを「パントマイム」し、そこに移動した。間違いなく、そいつはビルの屋上
から別の屋上へと、道路の上空を横断しようとしていた。
僕はカメラのシャッターを切った。うまく写っていればいいのだが。
そして僕は、ビルの屋上に向かって走り出した。エレベーターを待っていたのでは
間に合わない。階段を駆け上り、扉の取っ手についた鍵を銃で破壊し、ついにぼくは
屋上に到達した。
「動くな」僕はもうすぐこちら側のビルに渡り切ろうとする、そいつに銃口を向けた。
「お前はP2、『夜明けのパントマイマー』と命名された。これ以上の行動は我々との
敵対を意味する。降伏しろ」ほとんど無意味な定型文を口に出す。と、思いがけず、
そいつは言葉を返してきた。
「そう。私はパントマイマー。私の故郷では、誰もがこの力を持っている。それを
あなたがたに伝えたかった」
「お前の故郷に興味は無い。とっとと消え去れ」言うまでも無く、そいつの姿は朝の
日の光に包まれ、消え失せようとしていた。
「そう。<あなた>も、この力を、持っている」消える間際に、そいつはそんな台詞を
漏らした。「なんだと?」僕は問い返したが、もうそこには、夜明けのパントマイマーは居なかった。
「可能性の麦束」
177:この名無しがすごい!
11/03/26 15:45:01.71 0QGl2rLo
「可能性の麦束」
一枚の絵になりそうなのどかな風景の中を、私達は車で走っていた。
見渡す限り一面の麦畑が初夏の風に優しく揺れ、金色の海を連想させた。
周りに人家はまったくといっていいほどなかった。どこまでも続く、麦、麦、麦。
どこか遠くで鳥の鳴き声が聞こえた。
「とても30年程前あんな悲惨な大事故があった場所とは思えませんね。凄い豊作じゃないですか」
私は案内をしてくれている、運転席の農夫に話しかけた。
「お前さん、何も分かってねえな。この麦は作っても一切食えねえ。国が買い上げて、処分するために作っているんだ」
「えっ・・・何でそんな無駄なことをしているんですか?」私は衝撃を受けた。
「いいか、一度放射能で汚染された土地は、ちょっとやそっとじゃきれいにならねえ。
しかしこの特殊開発された麦は、土壌の放射性物質を取り込み、土地を浄化してくれるんだ」
「へえ・・・そうだったんですか。でもそれって延々と続くんでしょう?空しくなることってありませんか?」
「俺も農夫だ。作って捨てるだけのものを育てるなんて、最初は空しい作業をしていると思ったが、今じゃ未来のためにしている、最も意義のある仕事だと考えるようになったね」
「なるほど、これらの麦は皆、未来への可能性の麦束なんですね」
「ははっ、そういうことだ。お前さんも分かってきたじゃねえか」
年老いた農夫は日に焼けた顔に笑みを浮かべた。北国の日は初夏といえどもう沈み始め、麦畑は鮮やかな朱金色に輝いていた。
「桜の樹の下には」
178:この名無しがすごい!
11/03/29 13:01:17.48 MwYsbpRn
「桜の樹の下には」
横島ツカサ、あるいは通称、邪(よこしま)は、学校最大の部活動、平安部(ほとん
ど何もしない部活)を束ねる、現代の陰陽師である。薙刀高校の学園七不思議を語らせ
るのに、これほどの適役はいまい。邪は、制服が良く似合う背の高い美少年である。
風が、吹く。入学式も終わり、花を散らしたあとの緑色の桜並木。葉と葉が互いを
打ちならし、ざあざあと雨のような音を響かせる。
「校内に植えられた桜の中で、特に最も古いこの桜の樹は、犬桜と呼ばれているので
おじゃる」
「はあ……」とりあえず頷いておく。
いままさに入部試験―学園七不思議のレポート提出―を受けている、何の装備も
無い新聞部員としては、頷くくらいしかできることはない。
「江戸の太平の世に、ある剣豪が愛した犬がここで死んだのでおじゃる」
邪は、歌うように言葉を紡ぐ。扇子を取り出し、流れるように開き、その顔を隠す。
そして、ほほほ、と笑う。
「剣豪は己の刀を質に入れ、愛犬を失った悲しみを紛らわそうと、その場所に桜の樹を
植えたのでおじゃる。それゆえに、この桜の樹は犬桜と呼ばれているのでおじゃる」
いちいち語尾がうっとおしいが、その薙刀高校の伝承についての知識には舌を巻く。
口伝で現代まで語り継がれた犬桜の他にも、平安部は多くの伝承を伝え持っているに違
いない。
しかしながら新聞部の入部試験を受ける身としては、過去の七不思議のレポート以上
のことを引き出さねばならない。七不思議とて、永劫普遍のものではない。噂は風化し
たり、新しく追加されたりするものだ。この入部試験はその点を試しているのではなか
ろうか。
「それで、犬桜が学園七不思議である理由とは?」
そう尋ねたところで、桜の樹の影に隠れた、一匹の犬が目に入った。不自然なほどに
白い犬だった。その犬は邪の足元に走り寄り、おすわりした。
気を取り直して、僕は質問する。
「それで、犬桜が学園七不思議である理由とは?」
犬は、邪と僕にしばし見つめられると、嬉しそうに一度くぅんと鳴き、桜の樹をぴょ
んぴょんと駆け上がり、そして消えた。僕は自分の目をこすった。
「それは、諸君ら新聞部がP2と呼ぶものが、時と場所さえ選べば、誰の目にも見える形
で顕現するからでおじゃろう」
また風が吹き、桜の樹がざあざあと揺れる。扇子を構えて、邪はほほほと笑う。僕は
必死で記憶に集中し、メモ帳に今起きた体験を記述する。
己の目を信じるならば、この桜の樹の下には―確かに犬が埋まっているのだ。
「最終バスが行ったあと」
179:この名無しがすごい!
11/03/29 18:46:05.20 l9gn58Em
「最終バスが行ったあと」
深夜午前零時十五分
駅から最終バスが発車した
俺はそのバスを見送る
バスの中にはさっきまで一緒にいた彼女が乗っている
さっきまで、黙ったまま見つめ合い別れた彼女
バスがロータリーから出て最初の交差点で右折した
と、同時に耳をつんざくような音がした
さっき右折したバスから黒煙が上がっていた
バスがガス爆発したのだ、違った
とにかく黒煙がもくもくと上がっている
俺は急いでバスへと走り出した
まわりの人たちも走り出す
バスの正面に大型トラックが突っ込んでいた
バスの中ほどまでトラックは食い込み、トラックの後部から炎が上がっている
隣りに鋳たおっさんが携帯を取りだし、電話している
おそらく消防か警察
俺はバスの側により、大声で彼女の名前を叫んだ
「始発バスが発車するまでに、出来ること」
180:この名無しがすごい!
11/04/03 15:05:40.23 8JZXQ4m9
「始発バスが発車するまでに、出来ること」
4月4日。僕は初めて高校に登校する。今日は入学式がある。遅刻は許されない。
親の車に乗り、最寄りのバス停ではなく、バスの停留所に向かう。到着。
そこには、既にエンジンをスタートさせ、暖房を効かせたバスが停車している。
まだ運転手の姿は無い。発車前に、短い休憩を取っているのだろう。
バスの扉を押し開け、中に入る。中は暖かい。扉を閉める。最後尾まで歩き、
誰も乗っていないことを確かめる。僕が一番乗りだ。
最後尾の一つ手前、扉の側の向かいに、僕は陣取る。誰が入ってきたとしても
こっそり目視できる位置だ。そして、僕は待つ。
ドアが開き、誰かが入ってくる。ショートカット。女子の制服。僕と同じ学校だ。
「おはよう」
僕は一言声をかける。予想外の挨拶に、彼女は吃驚したようだった。ある意味で、
僕はこの反応を楽しむために、早めにバスに乗りこんだのだった。
「おはよう。同じ学校なんだね」
「うん。よろしく」
互いに名乗りこそしないが、また何度か会う機会もあるだろう。入学初日として
は、悪くない。
それからぽつぽつと乗客が増え始め、僕たちは学生や社会人の中に埋もれて
いく。発車の5分前に、バスの運転手がやってきて、バスの料金表示パネルの
電源を入れる。僕はガムを取り出し、口に放り込んで、噛み始める。噛んでいる
うちに、バスの発車時刻になる。
「始発バス、出発します」
運転手が無線機に向けて呟き、バスがゆるゆると動き始める。僕は横目で
さきほど挨拶した彼女を見やる。彼女は、携帯プレイヤーのイヤホンから
流れ出る音楽に、目を閉じて聴き入っているようだった。
僕はガムを噛みながら、彼女がどんな曲を聴いているのだろうかと想像した。
もしまた早朝のバスの中で出会ったら、それを質問してみることにしよう。
「早期覚醒」
181:この名無しがすごい!
11/04/06 22:56:44.53 ZrjM0BgM
「早期覚醒」
気が付くと両親がいなかった
気が付くと友人たいなかった
気が付くと・・・僕を守ってくれる人が誰もいなかった
気が付くと・・・・・・・・僕の周りから人がいなかった
牧人新が自分の変調を気付いたのは小学校6年の頃だったと思う
夏休み直前の教室で、僕はキレたのだ
隣り席に座っていた、仲のいい友達に・・・キレた
キレたきっかけは今に思えば幼い
ただ、親友が僕の大切な消しゴムを折ったから
そう真ん中からぽきりと消しゴムを折った
それを見た瞬間、僕は席から立ち上がり親友を殴っていた
僕の拳は彼の頬に当たり、口の中で何かが折れる音がした
倒れる彼にまたがり僕は彼の顔を殴った、何度も何度も殴った
教室は静まりかえり、先生が僕を羽交い締めにし僕の暴走を止めた
僕が殴った親友・・・華が変な方向にまがり、口からは血の泡を吐き出していた
目からは大粒の涙をだし、目の周りには青紫のクマが出来ていた
僕は先生に連れられて校長室にいった
校長室には校長と教頭、学年主任、そして僕を止めた先生が僕を睨んでいた
校長たちの説教は数時間続き、眠くなってきたころ母親が校長室にやってきた
先生が読んだのだろうか、母親は目に涙を溜めながら何度も何度も頭をさげいた
学校からの帰り道、僕は母親とラーメン屋に入った
普通の赤暖簾がかかているラーメン屋
間違ってもネットで評判にならないタイプの店
僕と母さんはラーメンを頼んだ
母さんの目はまだ赤く腫れていた
僕は悲しくなり素直に謝り、言い訳をした
「続きはまた明日」
182:この名無しがすごい!
11/04/07 01:50:18.18 MR5d4b/7
「続きはまた明日」
駅舎のあかりを消した私は、社員寮へ歩いていた
私が車掌として乗っていた電車は、一日の疲れを駅でほぐしているようだ
朝から呻らせていたインバータも、今は眠りについている
「はぁ……」
今日もよく、働いた。自分で自分をほめてやりたいくらいだ
そういえば、私が大学の仲間とキャンプしたとき、深夜に列車がはしる音を聞いた記憶がある
規則正しく、しかしながらどこか人間臭いように感じる足音だった
あれももう、二昔も前になってしまった
「光陰矢のごとし、か……」
こうやって車掌として鉄道業務に関わると、あの列車の運転士がどれだけ辛いかがわかる
いまや主流になりつつあるワンハンドルではなく、加速・減速と二つのハンドルをうまく使って動かしているのだ
自分には、できない仕事だ
しかしながら、こうやって車掌をしていると自分もなかなかすごいことをやっているのだな、と思う
田舎の駅にいけば、子どもからは羨望と尊敬が混じった瞳でみつめられ、街の駅ではよく質問をされる
これも、立派なことなんだろうか
遠くで規則正しい足音が聞こえた
私は目をほそめて夜間停泊している電車をみる
―走りたいか、明日も
―ああ、そうだな
電車がそう、答えた気がした
「そうだな……でも」
「続きはまた明日だ」
じゃあな。いつかまた、会おうじゃないか
「仲直り」
183:この名無しがすごい!
11/04/09 22:21:01.48 xIa4E5JY
「仲直り」
人類とフォーリナーが戦闘を開始してから、200年が経つ。
人類とは異なる価値観を持つフォーリナーたちは、宇宙に進出した人類を見つけ次第、
片端から駆逐していった。人類はこれに対抗するために<大同盟>を結成。人類全体は、
いやおうなしに宇宙戦争へと駆り立てられた。
フォーリナーテクノロジーの解析によって、技術力の差を徐々に埋めた人類は、宇宙
艦隊を創設。建造された宇宙船の数は、大小合わせておよそ10万隻。配備されたのは
100万発の核ミサイル。人類は、種が滅びる前に、かろうじてフォーリナーに戦力的
に追いついたかに見えた。
だが、それを倍するフォーリナーの船団がワープアウトしてきたことで、人類は絶望
的な戦いを強いられることになった。相次ぐ破滅的な会戦の後、フォーリナーと人類は
互いに消耗し合った。宙域は核の放射能によってほぼ永久に汚染され、戦線に近いコロ
ニーは生物の住めない廃墟と化した。
戦争は人心をも荒廃させた。一生を不毛な戦争の中に生きるという苦痛は、人類とい
う種をも蝕み始めていた。子供は生まれながらに兵士となることを期待された。人類を
人類たらしめていた独自の文化の数々は、あまりにもか細く弱っていた。
そんな中、突如、講和への道が開かれた。
フォーリナーの言語解析研究がついに実を結び、完全とまではいえないものの、会話
を行える翻訳機―ほとんど人工知能に近い―が完成したのだ。
それまでにも、人類は何度も説得を試みていた。フォーリナーが知的生命体ならば、
何らかの講和の道があるはずだと信じて。
時にわざと捕虜になり、フォーリナーの生体を観察することもあった。だが、フォー
リナーたちは捕虜の前に姿を見せず、また、正確には、捕虜を一切取らなかった。捕虜
は皆、隔離され、20時間以内に殺されるのだs。
だが、今回は言葉という武器がある。フォーリナーの言葉で、講和の道を訴えること
ができる。誰もが、戦争が終わることを期待した。
全宙域に、全帯域に、最強度で響き渡る電磁波。それが乗せるのは、変調された、フ
ォーリナーを真似た疑似音声だった。
「仲直りをしましょう。仲直りをしましょう。仲直りをしましょう……」
そして、ついに200年間の沈黙を破って、フォーリナーは人類に答えた。
「仲直りをしましょう」
その一言の後に、全ての戦線に沈黙が訪れた。どこにも核ミサイルを撃つ船はいな
かった。どこにも陽電子砲を放つ船はいなかった。どこにもレーザーを放つ船はいな
かった。本当に一切の砲声が止んだのだと、後に人類側の提督は語っている。
人類はその日、戦争に、フォーリナーに、否、不毛なる闘争の時代に勝利したのだった。
「猫と雷鳴」
184:この名無しがすごい!
11/04/10 14:54:53.39 fRElr38b
「猫と雷鳴」
春、深夜
にゃーにゃーにゃーにゃーにゃー
猫が鳴いている
発情きだろうか、かなりしつこく鳴き続けている
にゃーにゃーにゃーにゃごーにゃぎょー
別の猫が返事を返す
ぶしゅーーーーーにゃ!
どうやらケンカが始まったようだ
ざーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ
唐突だが雨が降り出した
まさかの雨だ
春の長雨ともいうし、明日一日雨かもしれない
雨が降り始めても猫たちのケンカは継続中
発情で交尾相手を探してたんじゃないのかい!と突っ込みたくなる
ゴロゴロゴロゴロ、ガッーーーーーーーーーー!
街が一瞬で暗くなった、どうやらどこかの送電線に雷が落ちたのだろうか
それと合わせるように、サイレンの音が聞こえ始めた、警察かはたまた消防車、救急車か
俺は夜空を見上げる
どんよりとした厚い雲が空を覆ってい、雨粒が落ちてくる
「はぁ、帰ってねよう」
俺は家に向かって歩き出した
「目玉焼きには醤油、ラーメンは魚介醤油味」
185:この名無しがすごい!
11/04/11 20:29:37.11 Ihvdz8kT
私の友人には意味不明なこだわりがある。
先日、朝食の話題になり、私が「目玉焼きは塩胡椒に限る」と言えば、「目玉焼きには醤油だ!」とキレられた。
今日の昼にはラーメンを食べに行ったが、味噌ラーメンが売りの店で醤油ラーメンを頼んだ。アホか。
「鶏ガラじゃねえか!」と彼は怒り、ほとんどを器の中に残して行った。
店を出てから聞くとラーメンは魚介醤油味一筋らしい。
同じようなものばかり食べていて飽きないのだろうか。
今日を振り返り気付いたことがある。彼は醤油信者だ!
そう気付いた時には時すでに遅し。私は濃口醤油のように真っ黒な服を着た集団に真っ黒な車に乗せられて、どこかに運ばれてしまった。
この数週間後、日本で醤油の消費量が跳ね上がるとは経済ジャーナリストも予測出来なかった事態である。
「まるでマレーシア」
186:この名無しがすごい!
11/04/12 10:20:36.40 VYcyAM9B
「まるでマレーシア」
「こんにーちは、おげんきーでーかー? わたしはーぺんでーす」
目の前にいる自称マレーシア人が俺に挨拶をくれた
満面の笑みってやつで
俺はそのまま奴の横を素通りして、ポケットからタバコを取り出し火を付ける
「のーーーーーーぅ! スモークはヘルスにバッドね、ベリーベリーバッドね」
男が大げさに手と首をふりながら俺からタバコを奪う
奪ったタバコはすぐに地面に投げ捨てられる
男はタバコを踏みつけ、何度も何度も踏みにじる
「おい! 人のタバコに何しやがる」
「なぜ怒るのでーすか? ここはパブリックスペースね。みんなの共有空間、スモークよくないね」
いつもこんな調子なのだ、話にならない
俺は話すことを諦め歩き出す
そうここはマレーシアンスパ
まるでマレーシアにいるようなリゾートスパ
なぜマレーシアなのか、よく分からないが、値段が安いので俺はよく利用している
そしてさっき俺のタバコを取り上げたのは、高校から友達でここでバイトしている男
生粋の日本人だ
バイトの規則でたどたどしい日本語を使わなければならない
かわいそうにあんなへんてこな日本語だと余計なトラブルも発生するだろうに
俺は手を振りながら歩いて行く
「ユーロビートは彼女の青春」
187:この名無しがすごい!
11/04/12 15:56:04.19 c5ocApLs
「ユーロビートは彼女の青春」
ユーロビートのCDを全部焼いたのは、彼女が僕の元を去ってからちょうど六ヶ月が
経ってからだった。
三年間の遠距離恋愛。現実には数カ月に一回しか会えない彼女と、僕は必至でコミュ
ニケーションした。mixiでの交換日記のような行為、Skypeでのチャットと通話。
僕はその時々の服装で写メを送り、彼女に評価を求めたりした。それはおおむね
不評だった。もっとかっこよくならないと捨てちゃうぞ、と彼女は言った。
彼女がユーロビート好きだと分かってから、僕はユーロビートのCDを集め始めた。
そして、音楽プレイヤーを使ってmp3形式のファイルを抽出して、彼女にSkypeのファ
イル転送機能で贈った。違法だと分かっていたが、なかなか会えない彼女への、僕なり
のプレゼントだった。彼女を繋ぎとめておくために、僕は新しいCDを買い続けた。
彼女が別れを切り出してきたとき、僕は恐れてきた日がついに来たことを悟った。
遠距離恋愛は、大抵いつかは破局するものだ。僕にはそれを止めるための手段も、
金も、地位も、持ち合わせていなかった。
オーケー。いいだろう。僕は失恋した。これは予定調和だ。有り得るべき事態が起
こっただけだ。それでも、僕の涙は止まらなかった。
もう一度言おう。ユーロビートのCDを全部焼いたのは、彼女が僕の元を去ってから
ちょうど六ヶ月が経ってからだった。
もう一度やり直したいと彼女から連絡が入ったのは、その三日後だった。
「もうCDは無いけど、それでもいい?」と僕は聞いた。
「当たり前でしょ」彼女は即答した。
僕には少し意外なことに、彼女が好きだったのは、音楽ではなく、僕自身のほう
だったのだ。
「ジェット☆コースター」
188:この名無しがすごい!
11/04/14 08:32:19.23 IMECQCPo
「ジェット☆コースター」
「ジェット☆コースターなんです」
彼女がにこやかに言うと、僕の手を取って引っ張る。確かに、目の前にそれが
ある。僕らは、順番待ちの列の後ろにつく。
でも、発音に違和感があったな。
「ジェットコースターだよね?」
「だから、ジェット☆コースター、なんです」
そう言う彼女は、無邪気な笑みを見せる。頬が少し赤らんでいるのは、春の
日差しが案外強いせいか。わずかに汗ばんだ額に、後れ毛が何本か、張り付いて
いる。彼女はそれをハンカチで拭くと、もう一度僕を見上げる。
彼女の言葉は、今ひとつわからない。でも、そのほほえみを見ると、それ以上
尋ねるのもはばかられた。
「ほら、来ましたよ」
確かに、目の前に期待が来ている。僕らは隣り合った席に腰を下ろし、バーが
膝に降りるのをじっと見守る。期待が、ごとりと一つ、大きめの音を立て、
それからゴンゴンと唸りながら動きだし、やがて滑り始める。
終点について、僕らは再び地上に降りる。足元がふらふらだ。彼女は意外と
平気なようで、僕の腕を引っ張って、ベンチまで連れて行ってくれた。
「待ってて下さいね。ジュース買ってきます」
彼女の後ろ姿を見て、ふと、笑い出しそうになった。そうか、これが僕らの
「初☆デート」なんだものな。
次、「カエルにバックドロップ」
189:この名無しがすごい!
11/04/14 08:44:59.41 IMECQCPo
>>188だけど、ごめん
×期待 → ○機体
190:この名無しがすごい!
11/04/14 19:13:25.59 7Tcsvj0Y
「カエルにバックドロップ」
「カエルにバックドロップをかましたいんです!」
TVに写るアイドルいった、笑顔でいった、真面目だった
司会者はぽかーんとした顔をしていた
司会者の隣りに座っている局アナの笑顔が引きつっていた
アイドルは笑顔で「カエルにバックドロップって素敵じゃありません?」
外野の観客達はざわめき始めた
アイドルの笑顔だけが眩しかった
後に世界的哲学問題に発展していくとは、この時、誰も知るよしがなかった
と、ある哲学者が「カエルにバックドロップ」の意味するところ書いた本が出版された
世界的大ヒットになり、なぜか映画化され世界的ヒットになった
世界に命題を投げつけた張本人のアイドルは、その後共演した俳優と結婚した
二人子供を産み、子供が成人する前に離婚した
離婚理由は私はアイドル、一生アイドルなのだから家庭にいちゃいけないの
離婚した彼女は再びアイドルの階段を登り始め、CDが年間売り上げ1位になった
そして彼女はインタビューでこう聞かれた
「カエルにバックドロップ」とはいったいなんだったんですか?
聞かれた彼女は不思議そうな顔で答えた
「そんなこと知りませんよ、大体何なんですかー?カエルにバックドロップって」
彼女は自分の発言が世界的な難問になったのも知らずに結婚し子供を産み離婚しアイドルに返り咲いたのだった
そして彼女は笑顔でいった
「焼き芋には男爵いも」
「焼き芋には男爵いも」
191:この名無しがすごい!
11/04/15 13:24:12.69 H+RQGG3U
「焼き芋には男爵いも」
ある秋の日曜日。俺達は真昼間から公園の落ち葉をかき集めて、焚き火を
しようとしていた。本当はルール違反だが、この公園にルールを強制する輩はいない。
そうこうしているうちに、友人がアルミホイルと芋を買って戻ってきた。
「おい。俺は焼き芋をするといったんだぞ」俺はうめき声を出した。
「だから芋を買ってきたじゃないか」
「これはジャガイモだろう?普通は焼き芋といったらサツマイモじゃないか」
「はあ?焼き芋といったらジャガイモだろう?」
俺は考える。友人がおかしいのだろうか。それとも俺がおかしいのだろうか。
それとも村上春樹の最新作1Q84のように、この世界のほうが変わってしまったの
だろうか。はは。まさか。そんなはずは。
俺が空を見上げると、月が二つ見えた。
いや、そんなはずはない。俺が村上春樹ワールドの住人になる必然性などは
ないはずだ。
「おい。地球を回る衛星の数はいくつだった?」
「何言ってるんだ。二つに決まっているだろ」
「惑星に二つの衛星が存在する確率は天文学的に見るとレアケースだよな」
「そうだよ。でも存在するんだからしょうがないだろ。そんな話は置いといて、
さっさと芋を焼こうぜ」
ジャガイモの焼き芋は、ほくほくしていておいしかった。俺はどうやら
この世界に溶け込むことができそうだった。
「白い鴉」
192:この名無しがすごい!
11/04/16 13:54:18.48 Dg0ameDM
「白い鴉」
物の本によるとかつての日本には白い鴉がそこら中にいたらしい
スズメと並びよく見かけたと書かれている
スズメを串刺しにして炭火で焼く料理が焼き鳥屋にあるが
それと同じく白い鴉を串刺しにして焼いて食べていたそうだ
なかなかさっぱりしていて美味だと書いてある
そこら中にいるから、みんな競うように採り食べた
その結果、白い鴉は絶滅したと思われそうだが
実は進化し、普段我々がよく目にする黒い鴉になったそうな
そんな話を授業の合間に先生がしてくださった
話を聞いた生徒たちはみな一様に驚いたそうな
その日、私は風邪で寝込み家にいたので先生から直接そのお話は聞けなかった
学校帰りに寄ってくれた親友が教えてくれたのだ
私は大層その話に興味を持ち、家中の百科事典をひっくり返し読みあさった
百科事典には白い鴉の記述はなく、私は祖父の代から本棚のすみっこに置いてあるある本を開いた
知識の泉という本のタイトル
タイトルにある通り謎を持った人間がその本を開けば、たちどころに謎が解決すると死んだ祖父から聞かされた
なぜそんな便利な本があるのか家人の誰も知らない
とりあえず本を開き白い鴉の記述を探した、すぐに見つかった
そう上記通り、日本中にいたと書いてあった
私は顔を本から上げ、窓の外を見た
何か白い物体が数体、庭の木々の枝に留まりこちらを見ていた
「最終決戦、運命の日彼女は僕に告白した」
193:この名無しがすごい!
11/04/16 15:03:44.73 7nkp+Sfq
「最終決戦、運命の日彼女は僕に告白した」
人類とフォーリナーの劇的な「仲直り」事件のあと、フォーリナーとの間に結ばれた
和平条約。その条約に基づき、人類とフォーリナーとの戦闘は、ヴァーチャル空間にそ
の場を移していた。
ゲーム。そう一言で呼ばれるある種の遊戯が、銀河の所有権を決める。理不尽なよう
だが、人が死なない次世代の戦争として、現在ではこれが一般的になっている。
僕は十二歳でそのゲームを極めた。隠された相手の手の内も、手に取るように読めて
しまう。だが、退屈だと思ったことは無い。ゲームの勝敗を決めるのは、技術もさるこ
とながら、運が大部分を占めていることに変わりはなかったからだ。
人類のランキングのトップを走る僕は、通算成績では圧倒的に勝ちこしてはいたが、
やはり常勝不敗という訳ではなかった。実際、今日も敗北を味わった。いつものよう
に、ゲームのヘッドセットを外す前に、自分のプレイングをリプレイし、負けたゲーム
の反省点を洗いだす作業を行う。
明日。フォーリナーとの一連のゲームが始まる。人類のネットワークでのシミュレー
ションではない、フォーリナーとの直の対戦が。そんな時、一通のメールが届いた。
簡素なメールだった。ただ、好きです。付き合ってください。と書いてあるだけの
メール。僕あてに大量に届くファンレターの中で、なぜかそのメールだけが目を引いた。
リョウコ=ヒラサワ。日系人だ。確か、自分は一度も通ったことはないが、一応の
籍を置いている小学校の同じクラスにそんな名前の子がいたと記憶している。僕は
一考した。
「僕が明日のゲームに勝ったら、君と付き合うことにしよう」
なぜフォーリナーとの最終決戦の前日に、そんな軽率なメールを返したのか、今でも
よく分からない。僕の手紙を極秘に検閲している政治家たちの顔は、青ざめていること
だろう。明日、僕は銀河を賭けて戦うのだ。私情は一切許されるものではない。
確かに、僕はそのくだらないメールを無視すべきだった。だが、手が勝手に動いた。
僕は一瞬、その無意識の流れに身を任せた。気分は、悪くない。
一夜明け、決戦の日。そこには一つだけはっきりしていることがあった。
「ツモ!!国士無双(ライジングサン)!!役満!!」
僕は運命の日、この長い宇宙の歴史の中で、最高のツキに恵まれていた。
「格安ツアーに騙されて」
194:この名無しがすごい!
11/04/17 00:15:50.96 QQrafLT8
「格安ツアーに騙されて」
「格、これはどういう事なんだ?」
「そんな事言われても、なあ? 俺に振るなよ。先に返事したのはお前だろう、安」
二人がいるのは南の島。白い砂浜と椰子の木。椰子の葉で屋根を葺いたコッテージ。
典型的な南国の観光地の風景だった。ただし、見かけだけは、だ。
「南の島のバカンス、やってみない?」
そんな風に誘ったのは、二人の共通の女の友人である津和子、通称ツアーだった。彼女は、
知り合いの伝手で定員が割れたので、南の島のバカンスコースにただで補充があると二人に
言った。彼らは大喜びで参加を希望したのだ。
で、行った先は、何と国内。しかもバカンスではなく、バカンスを演出する仕事だったのだ。
文句を言う暇も与えられず、あっという間に分担を説明され、気がつけば働かされていた。
もっとも、出費はないし、三食も宿舎もついている。その上、南国を演出する手前、パイナッ
プルやらパパイヤなどの余り物も味見させて貰えた。その意味では、南国のバカンス気分の片鱗
はあったかも知れない。
一週間後、戻ってきた二人を迎えたツアーは、にこやかな顔で言った。
「楽しかった?」
二人は、何かを言いかけて、それから顔を見合わせ、目と目で話をして、ため息をついた。そし
て返事したのだ。
「ああ」「まあな」
次、「片栗粉に出来る事」
195:この名無しがすごい!
11/04/17 00:23:57.28 QQrafLT8
ごめん、2つ前のお題で書いたので、これもさらさせて。
ルール違反かも知れないけど、ごめん。
「焼き芋には男爵いも」
「そうかあ? 焼き芋はサツマイモだし、男爵ってジャガイモだろう?」
「焼き芋がサツマイモだって、そんな事、一体誰が決めたんだ?」
彼女はそんな風に言い返してくる。腕組みをして、顎を上げて、威張って僕を
見上げる。議論好きの虫が暴れ始めたらしい。なら、受けて立たざるを得まい。
「じゃあ、そのあたりの人間に聞いてみなよ、サツマイモ以外を挙げる奴はいない
だろう。断言していいね」
「そうだろうね」
彼女は涼しい顔だ。
「しかしだ。ジャガイモを焼いて食べるとする。その時、それを何と呼ぶのか?」
「え? えー。焼きジャガイモ、かな?」
「では聞くが、そんな料理の名を聞いた事があるのか?」
いや、それは聞いた事がないが。と言うより、ジャガイモは焼いて食べないだろう。
「そもそもジャガイモは皮を剥いて水でさらして食べるじゃないか。焼いて食わない
んだ。その設定がおかしい」
「そうだな。ジャガイモにはソラニンという毒性成分があるからだ」
あいかわらず、無駄に博識だ。この小さな身体のどこに、それだけのものが詰まって
いるのだろう?
「だから、仮にだ、ジャガイモの中でソラニンの含有量が少ないのが男爵であるなら、
ジャガイモを焼いて食うなら男爵がいい。そうはならないか?」
「……うむ。確かにな」
これはいけない、言いくるめられてしまいそうだ。だが、何か、大きな間違いがある
ような……そうだ。
「ちょっと待て。その仮定が事実かどうか、全然わからないじゃないか」
「そうだ。だから、今日、私の家で試してみないか?」
「え、それは……」
彼女は、急に横を向いて、早口になった。その頬が紅い。
「何度も言わせるな。うちに来ないか?」
僕の心臓が急に暴れ始める。もしかすると、少し声が震えるかも知れない。
「ああ、行くよ」
翌日、僕たちは、二人とも腹痛で学校を休んだ。
196:この名無しがすごい!
11/04/17 23:17:17.77 WF3rNcaz
「片栗粉に出来る事」
ウチの大黒柱の冴えない親父がリストラに遭った
来月末には会社を追い出される
このままでいくと再来月には無収入一家のできあがりである
ちなみにウチは標準的四人家族
父、母、俺、妹
父はこの不況でなければ定年退職までつとめられたはずの普通の人
母はパートに出るも、同僚と揉めてすぐに辞めてしまう困った人、よくいえば専業主婦にぴったりな人
俺は高校卒業後、浪人しながら親が進める大学にいくために予備校通い、おそらく来年もダメ
妹、この両親になぜ生まれたのかと考えてしまうほどかわいく頭がよく回転する子、ちなみに俺には懐いていない
こんなどこにでもある家庭の大黒柱の親父が職を失った
親父は青ざめ、お袋は泣いた、しかしこれは現実なのよね、しゃーない
俺はいやがる妹を部屋に呼んでこれからどうなるか分からないから覚悟するようにと告げた
妹はそんなこと分かってるわよとぷいとそっぽをむいた
それから半月後
親父は会社に出勤しなくなった、リストラにあったわけだし行きたくない気持ちも分かるけど
まーなんだ辛気くさい顔で家にいられても困る
俺は妹の手を取り、家を出て駅前のファストフード店にいった
知ってるか?少し前まではファーストだったんだぜ、ファストなんていってる奴はいなかった
そんなことはどうでもいい、俺は妹に先日発売になったばかりのセットメニューを頼み、俺はコーヒーSを頼んだ
客席の端っこに俺たち兄妹は陣取った
互いに頬を紅くしながら見つめ合う
そう、俺がいやがる妹を部屋に呼んだ夜……妹と結ばれたのだ
妹に家の状況を説明してるはずだったが、気が付くと妹が濡れた瞳で俺を見つめ
自分の唇を怪しくなめ回していた、俺はそれに答えるようにキスをし……
俺たち兄妹はただならぬ関係になった
この後、妹は自分の貯金通帳を広げ、俺にいくら用意出来るとと聞いた
ファストフード店を出ると駅に向かいそのまま隣り県の主要都市に電車で向かった
電車から降りると俺たちは駅前の不動産屋に向かった
そう、二人の新しい家を探すために
妹のお腹には新しい生命が宿っていたのだった
「彼女は生徒会長」
197:この名無しがすごい!
11/04/20 09:54:24.18 DhfzxdV7
「彼女は生徒会長」
「実はよ、俺の彼女、生徒会長なんだぜ」
そう言ってにやりと笑ったのは、古い友人だった男だ。小学校低学年まで家が
近くて仲がよかったのだが、家の事情で転校して疎遠になった。それですっかり
忘れていたのだが、高校二年の今年、ふとした弾みで、それが彼である事がわ
かったのだ。俺は懐かしさに手を握り、彼も握り返してくれ、それからの事を
あれこれと語ったあげく、彼が言ったのがこの言葉だった。
俺はそいつの顔を見直して、首を捻った。ミンミンゼミがあくびをしたような
顔だちで、それに、成績が俺以上に低空飛行なのも知っている。性格がいいとの
評価も聞いた事がない。生徒会長は美人でスタイル抜群、その上に常に冷静な
切れ者との評判だ。どう考えても釣り合わない。
「嘘だろ? 信じられないぞ。それに、本当なら、俺だって聞いた事がありそう
なものだぞ」
すると、奴は眉をひそめて、それから納得顔で頷いた。
「ああ、ああ、違うよ。この学校の会長じゃない。あれは恐ろしい女だからな」
それならわからないでもない。でも、うらやましい話ではある。
「それじゃ、どこの高校だ?」
「いや、それがな」
高校じゃないのか? 中学校か? 中学生が相手とは、たちが悪い。
「どこの中学校だ?」
「ああ、いや」
彼はそう言って、それから声を潜めた。
「○○小学校だ」
あとで警察に連絡を入れようと、心に決めた瞬間だった。
次、「カラスが勝手でしょ」
198:この名無しがすごい!
11/04/20 18:50:50.40 IGQyu6vM
「カラスが勝手でしょ」
毎朝鴉の鳴き声で起こされる
いつの頃からだろうか、街中にカラスがあふれかえりだしたのは
いつの頃からだろうか、街中からスズメの姿を見なくなったのは
私は真っ白な天井を見ながらそう思った
ベッドで横になったまま私は今日のスケジュールを考える
何か約束はなかったか、どこかいく予定はなかったか、何か食べたい物はないか
大事なことからたわいもないことまで一通り思い出したりする
約束がある場合は時間にその予定を入れ、なければ効率よくスケジュール消化出来るように組み立てる
と、いっても適当に割り当てるだけなのでほんの数分で終わる
スケジュールが出来ると、起きて、下着を着ける
睡眠の時は何も付けない、束縛されるのが大っ嫌いだから
下着を着け、室内着を着てカーテンを開け窓を全開にし空気を入れ換える
室内の淀んだ空気を入れ替えないままだと一日気分が悪い
そのまま冷蔵庫の元まで行き、ミネラルウォーターを飲みTVを付ける
かーかーかーかー
カラスが鳴いている
一羽ではない
何話も何話も鳴いている
まるで昔あった巨匠の映画のようだ
「カラスが勝手に鳴いている、カラスの勝手でしょかーかー」
呟き、私は身震いしてみた
何の意味はない、さて仕事行く支度をしよう
「私の彼はアル厨」
199:この名無しがすごい!
11/04/20 21:27:32.55 aAjgfobm
「私の彼はアル厨」
「見て御覧。素敵な黄金の王冠だろう」と、彼は言った。
わざわざヨーロッパの職人に依頼して作ってもらった特注品の王冠なのだ。美しくな
いわけがあるだろうか。それはもともとは、神殿に奉納するために作られたものだ。
私は興味の無さそうな顔をして、バッグから別の黄金の品物を取り出した。こちらは
純金の塊である。それが必要だからだが―わざわざ通し穴まで空けてある。
重さはどちらも同じだ。
彼は大きな水槽も用意している。天秤に王冠と純金の塊とを縛り付け―同じ重さだ
から釣り合っている―そのまま水槽の中へと浸す。
ゆっくりと、バランスが崩れる。僅かだが、王冠のほうが軽い。それを見て、彼は
大歓声を上げた。
「ほら!王冠には銀の混ぜ物があったんだよ!アルキメデスの原理だ!この王冠には
銀が少し混じっているんだ!」
分かっているとは思うが、そういうふうに王冠を作ってくれと特注したのは、彼自身
なのである。彼はこのような実証実験のために、先祖代々の資産を食い潰してきたのだ。
今回実証されたのは、アルキメデスの原理。
私の彼は、この21世紀を迎えても、未だにアルキメデスの虜なのだ。これをアル厨
と言わずしてなんといおう。
まあ一番の謎は、私がなぜこんな男と付き合うことになったかだ。
大学の講義で歴史を教えている彼に、少し興味を持ったのが始まりだった。しかし
これほどまでのアル厨だったとは。私はため息をついて、彼の黄金の王冠を拝借した。
「似合ってるよ」彼はおせじが上手い。
「とてお、すごく、似合ってる。美しい」そう言われて、今回の散財を許してしまう。
いつもそうなのだ。彼はアル厨だが、コミュニケーションが取れないわけではなかった。
「次のパーティーに、これをつけていってもいいかしら」彼は直ぐに肯いた。
結局、私は彼が好きなのだろう。そのバカっぽいところも、科学者っぽいところも、
金持ちなところも、全部含めて。私は彼が好きなのだ。
私はパーティーに思いを馳せ、彼の隣で踊る自分を想像した。うん、悪くない。
「200」
200:この名無しがすごい!
11/04/21 09:43:02.26 rmnW5/Z2
「200」
「二〇〇だよ」
そう言ったのは、俺の妹だ。何が嬉しいのか、目をきらきらさせている。
「だから、何なんだよ」
「だから、二〇〇なのよ。二〇〇になったら、ベスト三出してくれるんだって」
何だか、両手をぱたぱたさせながら主張する。ペンギンを彷彿させる姿に、
こちらの顔がゆるむ。
「もう、なにがおかしいのよおっ」
要するに、学校で本を読むたびに読書カードを出していて、クラス全員分の
総数が二〇〇になると、個人別の読書数ベスト三が発表される、と言うのだ。
「私、絶対自信あるんだ。二〇冊くらいは読んでるもん。クラスの人数が三五人、
つまり平均すると一人六冊足らずだから、私、絶対に一位だよね」
「さあ、どうかなあ」
そうはいかないものだ。俺にはわかる。
翌日、妹が学校から帰ってきた時、すっかりしょげていた。
「どうだった?」
「信じられない」
彼女は三位だったそうだ。なら、喜べばいいのだが、その上が凄かったらしい。
二位が四〇冊、一位は何と七〇冊も読んでいたそうなのだ。
そうなる事はわかっていた。本など読まない子も多いはずだし、読む子は無茶
苦茶に読む。それに、一位は知っていたから。
「こんにちは。兄さん、いますか?」
「あれ、ちーちゃん? そうだよ、お兄ちゃん、あの子がトップだったの」
やがて入ってきた子は、俺の横にやってきた。
「よう、ちー。トップだったって?」
「はい、兄さんのおかげです」
俺は、俺の隣にちょこんと腰を下ろしてくる子の頭を撫でてやる。その子も、
嬉しそうに目を閉じて、俺の腕に頭を擂り擂りしている。その様子を、妹は目を
丸くして見ている。
「お兄ちゃん、ちーちゃん、どうして……」
「いや、まあな。なあ?」
「///(はあと)」
妹は急に立ち上がり、わなわなと震えだした。
「いいもん、五〇〇の時には見返してやるんだから!」
次、「天ぷら粉と唐揚げ粉」
201:この名無しがすごい!
11/04/21 13:28:52.45 q0YI1ljl
「天ぷら粉と唐揚げ粉」
謎の新人類登場により、かつて地球を支配していた旧人類は全滅しようとしていた
旧人類、そう私たち人類である
新人類登場は誰にも予想できなかったし、考えもしなかった
なぜいきなり姿を現したのか、どこからきたのか、彼らは我々と何が違うのか
姿形は我々と旧人類と瓜二つ、つまり手足があり胴がありその上に頭があり、二足歩行し道具を使う
なのに、旧人類には彼ら新人類のことがまったく分からなかった
いつ旧人類に取って代わったのかさえ分からない
気が付いたら隣りの人が新人類になっていた
新人類は旧人類を見ると周到に追いかけて殺す
どうやら無意識のうちに旧人類を追いかけ殺していくようにプログラムされているかのようだった
一人殺され二人殺され、百人殺され、千人殺され、万人殺され…
日を追う毎に新人類は旧人類を殺していく、今日はあの国がなくなった、明日はあそこだと噂が流れる
ニュースでは天気予報の変わりに新人類分布図を解説し始めた
私の家族はなんとか新人類から逃れ、山奥の別荘に逃げてきた
食料も水も豊富にあるから、見つからなければ生きていけるだろう
「ねーパパー、これどっちが天ぷら粉?こっちは唐揚げ粉でいいのかな?」
「ラベルを見てごらん、ちゃんと書いてあるだろ?」
「・・・ラベル?ラベルってなーに?ねえ、パパ、パパをあげたら・・・」
娘の言動がいつもと違った、私は娘の言葉に戦慄を感じた。
そうこの時、娘を突き飛ばしてでも別荘から逃げ出すべきだったのだ
「あげ、あげ・・・パパフリッターにしたらおいしいかな?脂肪分ばかりでまずい?」
娘が背後に隠していた大鉈が見えた、瞬間、私の脳から鮮血が勢いよく飛び散った
娘はいつの間にか新人類になっていたのだ・・・
「あの日見た空の色は」
202:この名無しがすごい!
11/04/23 21:30:58.32 6hHfKJxO
「あの日見た空の色は」
「もう、どうしようもないのか?」
「当たり前よ。別れるほかに、選択肢なんてないわ」
彼女の声は、冷たかった。
どうしてこうなったんだろう。春に出会い、すぐに互いに強く惹かれた。夏になる前に、彼が
告白し、彼女は涙を流して、それを受け入れた。
それから、二人はずっと一緒だった。互いの一言一言が、それは嬉しくて、その度に心躍った。
生活のあらゆる瞬間に、互いを求め合った。
でも、それが、少しずつずれ始めたのは、夏の終わる頃だった。同じようなやり取りのはずなのに、
いつの間にかなじり合いになり、次第に口論に発展した。求め合いながらも、反発する瞬間が多く
なった。やがて、顔を見合わせるだけで、それが苦痛になった。
でも、彼は思うのだ。今、目の前の彼女は、あの時と同じ姿だ。それを見て、心の、どこか深い
ところで、あの時の気持ちがうずくように思い出される。自分は、今でもこの女を愛している、
それが感じられるのだ。しかし、二人の関係は、このままでは終わってしまう。何とかならないか?
ふと、空を見た。今、赤く染まった太陽が、川の向こうに沈もうとしていた。それを見て、彼は
思い出した。彼が告白したのは春、今は秋、だけど、空の様子は驚くほど似ている。
「なあ」
「何よ?」
女の声は、あいかわらず冷たい。だが、彼はかまわずに続けた。
「あの日見た空の色は、ちょうどこんなじゃなかったか?」
彼女も、夕日に目をやる。その表情が、何かを思い出すように、少しゆるむ。
しばらくそうしていて、彼女は再び彼に顔を向けた。
「そう。懐かしいわね。別れにはふさわしいのかも。じゃあ、さよなら」
次、「コスモフリーザー」
203:この名無しがすごい!
11/04/23 22:42:24.99 OsXpnM+b
「コスモフリーザー」
近い将来、日本のある家電メーカーが究極の冷凍庫を作ると予言した小学生がいた
小学生はその冷凍庫を「コスモフリーザー」と名付けた
十数年後、小学生は高校を卒業し、アメリカへ旅だった
留学ではない、アメリカ東部にあるといわれる謎の家電組織に呼ばれたのだ
年収は200万ドル、業績に応じてボーナスあり
彼はアメリカ側が提示した条件をそのまま受け入れ渡米した
両親と彼女や友人は当然大反対をしたが、彼はおかまいなしに契約書にサインをしパスポートを申請し、ビザを取得し航空券を受け取り渡米した
故郷に未練がないといえば嘘になるが、離れるなら早いほうがいいだろうという彼の判断だった
渡米一ヶ月、いまだに両親と彼女から日本に帰ってこいとメールが来る
最初のうちは丁寧に返事をしていたが、だんだん面倒になり放置するようになった
アメリカに渡り、二週間、フランスから来た女の子と仲よくなった
彼女とはよく食事したり、休日を一緒に過ごしたりするようになった
気が付くと一緒に暮らすようになっていたので、日本の彼女にごめんとメールした
返信は三日三晩続いたが、すべて無視した
渡米した月の中旬、始めて学校に行き、学力テスト、一般常識テストを受けた
ほぼ満点を取った彼は、ひとまず実習課に配属され、そこで年齢相応の勉学と、好きな研究をする権利を与えられた
彼はフランス人の彼女をほっぽりひたすら研究に励んだ
論文をいくつも書き、世界的な科学雑誌に投稿したり、学界で発表したりした
やがて世界はコスモフリーザーの重要性を認識し始めた
そうこれがコスモフリーザー歴元年とも夜明けをもたらした少年の日常だった
204:この名無しがすごい!
11/04/23 22:43:47.11 OsXpnM+b
次「未来からやってきた娘」
205:この名無しがすごい!
11/04/24 09:35:20.89 dZUWWm7z
「未来からやってきた娘」
今日家を訪ねてきた少女が言うには、自分は俺の娘で、つまり俺はこいつのお父さん
なのだという。
未来から来た証拠として見せられた独立情報端末には、あと10年は開発されないであ
ろう次世代の3Dビジョン機能が搭載されていた。複数のウィンドウに表示された写真は、
俺と彼女のラブラブなツーショットばかり。その中には、いつか行こうと決めただけで、
まだ行っていない場所の写真まで存在していた。
「お母さんが癌で死んだあと、画期的な抗癌剤が発明されたんだ。ベクターウイルスを
媒介に、人工たんぱくから成る癌抑制剤生成装置を生体にインプラントして、一生癌に
ならなくするタイプのやつが」
注射器一式を使って、その少女は歴史を書き換えるつもりでいるらしい。
「お母さんが死ななきゃいけない理由なんてないんだよ。たった一年、薬の認可が
遅かっただけで、死んじゃうなんて……」
「だから、お父さんが、お母さんを説得してこの注射を打ってよ。ううん、寝ている
ときでもかまわない。歴史を書き換えられれば、お母さんさえ生きていれば、私は
どうなってもいいの。ねえ、お願い。お父さん!」
俺は娘の言うことがよく分かった。俺だって、彼女を失って生きていける自信は無い。
生き残るのは彼女であるべきだ。だが、現実は違っていた。
「お前は知らないだろうが、実は俺も、末期癌なんだ」
「そんな……」少女はよろめいた。その聡明な頭で、状況を理解する。
注射器は一式しかない。今ここで俺にその注射を使わなければ、娘である自分が
生まれてくることもない―娘が存在する以上、俺が結婚前に癌で死ぬことはありえない
―俺に注射を打って癌から救うという未来は確定していて、娘を主体に、円環状の
構造を描いている。
「お父さんは、知ってたんだね。お母さんが癌で死ぬことを。知ってて、私を行かせた
んだね……過去の自分を救いに……ひどいよ。あんまりだよ」
少女は泣き崩れた。俺は少女を強く抱きかかえた。
「彼女は、俺が一生をかけて愛してやる。何の悔いも無く死ねるように。いずれ生まれて
くるお前のために、大量の記録を残す。約束する」
「それでも、私は、お父さんを許さない!」
「許してくれなくてもいい。それでも、お前は俺の娘で、お母さんの子だ」
俺は抗癌剤の注射を受けた。未来に帰る間際に、娘は言った。
「お母さんのこと、幸せにしてね!絶対絶対、幸せにしないと許さないんだからね!」
その夜、彼女から一通のメールが届いた。
「私のこと、好き?」「誰よりも愛してるよ。俺は癌なんかじゃ死なない。生き延びて、
お前を絶対に幸せにしてみせる」
「タロットカード犬」
206:この名無しがすごい!
11/04/24 12:53:42.16 E5SoAd97
「タロットカード犬」
「よろしくお願いします」
新宿駅西口付近。
会社帰りで疲れた頭が、テキトーに占い師を冷やかしてもしてやろうという思考を方針づけたのは、そんな摩可不思議なことでもないだろう。
「好きなカードをお選びください」
場に何芒だかわからないタロットが配置されている。俺はなんとなく目にとまったそのカードをめ
「俺ターンドロー!犬のカード!」
くろうと思ったのに、前方の占い師がなにやらそう叫びながら、俺から取り上げるようにめくり、場へたたきつけた。
「……」
「………」
「…………」
「…………あなたのターンですy」
「いや仕事しろよ?」
「帰ってきたガリガリちゃん(擬人化)」
207:この名無しがすごい!
11/04/24 14:04:06.40 kWpfsHL1
「帰ってきたガリガリちゃん(擬人化)」
西暦2213年夏
人類の大半が死滅して約二百年
かつて人類が築き上げた高度文明は消え去り、高層ビル群などもほぼ消え去った
太陽からは容赦ない日差しが降り注ぎ、日中平均気温50度、夜になると-30度になった
そんな状況でも生き残った人類は過酷な環境に適応し生きていた
ある者たちは洞窟深くに潜り、地底人と名乗り
またある者たちは海に出て行き、海洋人と名乗った
そして、過酷な平野に留まった者たちもいた
平野に留まった人間達は昼間は崩壊した建物の中で日差しから身を隠し
夜になれば防寒具を着込み平野に現れ行動する
彼らの目の前に現れたのは人型だった
「私ガリガリです!よろしくお願いします、あんパン!てへへ」
丸坊主の少年が女の子の声でいった、声はどこか癒される声だった
人型はガリガリと名乗り、手を差しのばす
「握手は嫌いですか?私は好きです、アイスは溶けて変わらずにいられませんけど、それでも好きです」
彼らは人型が何を言っているのか理解出来ずにお互いに顔を見合わした
「アイスは人を愛し、人はアイスを愛する、アカギカンパニーはそうやって人をはぐくみ」
バスン!人型の顔が吹っ飛び首から黒煙が上がる
彼らの一人がランチャーで人型を撃ったのだ
人型が停止するのを確認すると、彼らは来た道を戻り出す
日の出前に戻らなければ高温で死んでしまうのだ
「魔法少女ほむほむパルプンテ」
208:この名無しがすごい!
11/04/24 22:09:13.90 x0JX38mk
「魔法少女ほむほむパルプンテ」
「お待ちなさい」
男たちはまさに、少女を袋小路の路地に追いつめたところだ。壁にその体を押し詰めると、一人が
彼女の両手を頭の上に押さえ、もう一人が服の襟元にかけようとしていた。そこに、背後から声が聞
こえたのだ。
慌てて振り向くと、そこに、黒髪の少女がたたずんでいた。美少女だが、その顔には愛嬌のかけら
もない。
男は、最初こそ驚いたが、相手が少女である事に気がつくと、すぐに表情を緩めた。
「何だ、お嬢ちゃん。今はこの子一人で手一杯なんだ」
「それとも、お前も遊んで欲しいのか?」
押さえつけられた少女は、救いを求める。
「助けて、お願い、助けて!」
彼女は、そんな声のすべてを無視して、斬りつけるような鋭さで言い放つ。
「私は魔法少女ほむほむ。悪を許さない」
そう言うなり、右手を挙げる。どこから現れたのかわからぬバトンがその手にあった。それを一振り
すると、彼女は叫んだ。
「ピピルマピピルマ・パルプンテ!」
瞬間、その姿が消失した。彼女は、時間跳躍を行ったのだ。次に、どこに出現するのか、それは、
彼女にもわからないのだった。
男たちは、顔を見合わせた。
「何だったんだ?」
「わからん。ともかく、邪魔はなくなったらしいな」
「いやー、何なの!」
路地に少女の悲鳴が一声響き、すぐにそれも男の手に押さえ込まれた。
次、「モヒカン刈り=ライオン」
209:この名無しがすごい!
11/04/25 19:32:04.72 ej4JdeVP
「モヒカン刈り=ライオン」
『バーバー・ライオン ☆モヒカン刈ります!☆』
…
いつもの帰り道、ちょっと気分転換をと、横路地へわがおみ足を流れさせたさきには、そう電
光掲示板をループするオレンジ色の点文字群がとらえられた。
「これは、モヒカン型に刈ってくれるのか、それともモヒカンそのものを刈るのかわからなく
ないか?」
常識的に考えれば無論前者なのだろう。
しかし、電光のほうでなく、出入扉に書かれた『バーバー・ライオン』の文字が、微妙にホラー
映画のタイトルじみたようにただれていて、そんな突拍子もない想起を誘う。
「ま、ちょうど髪伸びてきたとこだし、入ってくか…」
カランカラン!
「すいませーん。散髪お願いしま」
「でるるrrらあ!」
突然、そんな野太い叫声をともなって突きを放たれた日本刀の切っ先だが、俺の首の皮一枚の
ところで制止した。
「……」
「…ちっ。モヒカンじゃなかったか」
「モヒカン『狩り』かよ!」
「ほっぷすてっぷ○○○」
210:この名無しがすごい!
11/04/25 19:44:27.97 v+AmvLqd
「ほっぷすてっぷ○○○」
世界の果てで愛を歌う少女がいるという
果たして愛とは歌えるものなのだろうかという素朴な疑問
私は愛の歌を確かめるべく彼女に会いに行くことにした
図書館やネットで彼女の情報収集した
情報収集の結果、彼女がいると思われる場所は全世界で256箇所
それもほとんどが信じるに足りない情報ばかりだった
私は落胆し、偶然入った喫茶店で新聞を読んだ
そこに目に止まる一文
ほっぷすてっぷ○○○
一瞬、理解不能になった私は手にしていたコーヒーカップを落とすところだった
もう一度、紙面を見る
やはり意味不明な一文が紙面にでかでかと印刷してあった
私はこれは一体何なのだと思い考え込んだ、しかし、やはりというべきか答えが出ない
コーヒーを一気に飲み干し、ウェートレスを呼び、こう告げた
「僕と結婚してください」
211:この名無しがすごい!
11/04/26 01:24:38.75 hLoQC4f+
「僕と結婚してください」
その記念すべき言葉を贈ってくれたのは、自分自身の父だった。
私はため息をつきながら仏壇を眺める。そこには母の遺影。
両親を襲った交通事故さえ無ければ父は今も正常だったろう。
それまでの平和で暖かい生活が脳裏を蘇ったが、形になる前に消えた。
父は正常とは言えない意識の中で、私に母を見ている。
私は正常かもしれない意識の中で、父に答える。
「これなんの音?ベッドの下から聞こえるけど」
212:この名無しがすごい!
11/04/26 12:40:53.33 woA8Gwir
「これなんの音?ベッドの下から聞こえるけど」
かしゃりかしゃり。
そんな金属様の音に、少女は気になってベッドの下を覗いた。
スパン!
「ッ―――」
あとには、体から脱出を果たした少女の顔が、ごろり、と、
床一面をキャンパスに見たて幼稚な朱絵を描いただけだった。
「夢野久作によろしく」
213:この名無しがすごい!
11/04/26 14:28:23.52 zyrn+dVb
「夢野久作によろしく」
お隣に塀が出来たってねへー
隣の客は牡蠣食う客だ
まんじゅうこわい
僕がそんな歌を歌っていると彼女がいった
「へい!ボーイ!ユアナイスガイ!」
カタカナ英語だった
彼女はこんなんでも帰国子女
アメリカに十年暮らしていた
「あーサンクス!サークルケーサンクスイズフェーマスコメディアン」
とりあえず返事をする
「オーーー!マイグランパーパーゴットファーザー!」
そう意味なんて無い言葉のやり取り、これが彼女流のコミュニケーション
それは置いといて、俺は鞄から一冊の本を取り出した
タイトルは「夢野久作によろしく」
表紙を見るにどうやらハードボイルドみたいだ
本を開き読み始める
隣りで彼女が着替え始めた、いつもの癖だから気にしない
気にしない俺、ハードボイルドに決めてみた
「朝食は牛乳とトマト」
214:この名無しがすごい!
11/04/26 19:12:10.82 +/lIK0cP
その日は凛吏が家へ泊まりに来ていた。理事長の娘でお嬢様な彼女も
たまには庶民的な生活を味わってみたいとか何とか。
当然、俺と同じ部屋に寝るわけにもいかないので俺だけ別室で凛吏に
はミディアと一緒に寝てもらっていた。
~ミディアの部屋にて~
「どうして優神さんは、私に振り向いてくれないのでしょう。こんなに
魅惑的なプロポーションをしていて、なおかつエロチックな発言も沢山
しているというのに。どうにか優神さんをエロ好きに」
「ほんっとアイツ鈍いわよね。あたしだっていつもはツンツンしてるけ
ど、たまにはちょーっとデレたりもしてるのよ? やっぱり胸が小さい
のがいけないのかしら」
二人の美少女は別室の鈍チン野郎へぐちぐち文句を垂れていた。
いくら主人公は恋愛に鈍いのが鉄則だからといって、彼女らもいい加
減待ちきれなくなっていた。
ミディアは思う。どうにか優神をエロ好きに。
凛吏は思う。どうにか自分の貧相なバストを豊満に。
ふと、思い出したようにミディアが口を開いた。
「そういえば、胸を大きくするには牛乳だとよく聞きますね」
続いて凛吏も口を開く。
「そういえば、トマトを沢山食べるとエッチなことが好きになるらしい
わね」
明かりの消えた部屋の中、二人の瞳がキラリと光った。
~翌日~
「なあ、今日の朝飯は何がいい?」
「「朝食は牛乳とトマト」」
「そ、その……自動販売機の下とか?」
215:この名無しがすごい!
11/04/26 19:18:01.72 +/lIK0cP
上のはミス
その日は凛吏が家へ泊まりに来ていた。理事長の娘でお嬢様な彼女も
たまには庶民的な生活を味わってみたいとか何とか。
当然、俺と同じ部屋に寝るわけにもいかないので俺だけ別室で凛吏に
はミディアと一緒に寝てもらっていた。
~ミディアの部屋にて~
「どうして優神さんは、私に振り向いてくれないのでしょう。こんなに
魅惑的なプロポーションをしていて、なおかつエロチックな発言も沢山
しているというのに。どうにか優神さんをエロ好きに」
「ほんっとアイツ鈍いわよね。あたしだっていつもはツンツンしてるけ
ど、たまにはちょーっとデレたりもしてるのよ? やっぱり胸が小さい
のがいけないのかしら」
二人の美少女は別室の鈍チン野郎へぐちぐち文句を垂れていた。
いくら主人公は恋愛に鈍いのが鉄則だからといって、彼女らもいい加
減待ちきれなくなっていた。
ミディアは思う。どうにか優神をエロ好きに。
凛吏は思う。どうにか自分の貧相なバストを豊満に。
ふと、思い出したようにミディアが口を開いた。
「そういえば、胸を大きくするには牛乳だとよく聞きますね」
続いて凛吏も口を開く。
「そういえば、トマトを沢山食べるとエッチなことが好きになるらしい
わね」
明かりの消えた部屋の中、二人の瞳がキラリと光った。
~翌日~
「なあ、今日の朝飯は何がいい?」
「「朝食は牛乳とトマト」」
「ああ、そういや今日は安売りだったな」
216:この名無しがすごい!
11/04/27 08:44:07.13 fLIJx6Fk
「そ、その……自動販売機の下とか?」
「ああ、そういや今日は安売りだったな」
彼は、我が意を得たりとばかりに、うなずく。
「そうだよ、五台くらい回れば、二〇〇円くらいなら手に入る。二人分のジュースが買えて
おつりが来るぞ」
そういうと、俺の手を引いて、手近な自販機に向かう。まず、彼が見本とばかりに膝を
ついて、その下をのぞき込む。そっと手を伸ばして、地面との隙間を探った。
「あれ?」
彼が怪訝な表情を浮かべる。
「どうした?」
「いや、何か……あれ、あ、わあああああ!」
彼の体が、絶対に入れないはずの、自販機と地面との間のわずかな隙間に、みるみる
吸い込まれていったのだ。慌てて俺は彼の足を引っ張る。しかし、俺自身も、彼に引っ張
られて、目の前が真っ暗になった。
気がついたとき、そこは異世界だった。それが俺と彼との英雄への道の始まりだった。
「RPGがなんぼのんもんじゃ」
217:この名無しがすごい!
11/04/27 09:03:36.10 ZZZcnbO/
「RPGがなんぼのもんじゃい」
勇者。
俺は勇者だ。
そうだろう。
魔王?なんのことだ。
魔物?なんのハナシだ。
ここはそんなファンタジー世界じゃない。
現実だ。
「っ!対戦車ライフル(RPG)だ!全員散れーっ!」
ドーン!
突然の強襲で俺の所属する一個小隊が散り散りにはじかれる。
「くそっ!トニー!ジャック!スペツナズ!」
ダメだ!みんなLPが0だ!
仕方ない、俺も一度落ちたほうがいいだろう。
――――某マンションの一室にて。
「ぐへへへ。RPGがなんぼのもんじゃい。FPS楽しいお」
「ざっくばらばら」
218:この名無しがすごい!
11/04/27 16:14:13.41 2di+C6Qs
「ざっくばらばら」
ざっくばらんに話せば、僕は死体遺棄事件の共犯者だ。
彼女から「人を殺してしまった」と電話を受けて、冗談だろうと思いつつ駆け付ける
と、そこにはダンボールに詰められた死体があった。
「マンションの前でこの金髪の人と残りの二人がナンパしてきてね。あんまりしつこい
から、思いっきりぶん殴ったのよ。そしたら、動かなくなっちゃって。しょうがないから
引っ越しの時に使ったダンボールを持っていって、中に詰めて、ここまで運んできたの」
そのとき僕は彼女の部屋から逃げ出し、警察に助けを呼ぶべきだったのだろう。
だが、そのステップは大きく省略され、僕らは別の考えに憑りつかれてしまった。
どうやって処分するか。このサイズでは怪しすぎる。小さくしよう。そうしよう。
そして僕は言われるままに青いビニールシートと肉切り包丁と手袋を遠くのホーム
センターで買ってきて、彼女に手渡した。
彼女は部屋の床にビニールシートを広げ、死後硬直した遺体をごろんと取り出すと、
ざくざくと肉切り包丁で遺体を切断し始めた。まず腕を肩から切り落とし、次に脚を
膝と鼠径部の二個所で切り落とした。腹部を切開し、臓物をビニール袋に詰めた。
胸部と腹部を切り離す。最後に首を切り落として、遺体は九つの部位に分断された。
彼女はそれらを生ゴミとして出すことを提案した。もちろんこのマンションではない、
別のマンションのゴミとして、だ。
彼女のマンション周辺のゴミ曜日は、おおむね統一されている。禁止されている黒い
ビニール袋でも、表面に「生ゴミ」と大きく書いておけば、業者は放置していったりは
しないだろう。
僕はサングラスをかけて―こんな使い方をするとは思わなかったが―ゴミ出しに
出掛けた。ゴミ置き場を監視するカメラがあるかもしれないが、解像度はたかが知れて
いる。その間、彼女はビニールシートを片付けるのに忙しい。僕が帰って来た時には、
折り畳まれたビニールシートと、風呂に入っている彼女の姿があった。
僕は、そういった内容を、一か月後に警察に洗いざらいぶちまけた。事件の証拠は
未だに見つかっていない。新聞の一面を飾ることも無い。ただ、僕は罪の意識に耐え
きれなくなったのだった。だが、警察官の反応はいまいちだった。
「ざっくばらばら殺人事件ねえ……」
君、作家にでもなったほうがいいよ。そう言われて、僕は丁重に警察署から追い
払われた。
「リサイクルサイクル」
219:この名無しがすごい!
11/04/27 19:17:04.83 PgJZwkrd
「リサイクルリサイクル」
仕事がない
ハロワークから紹介を受け応募した数60社
無料求人誌を見て応募した数、もう覚えてない
ネットで求人見て応募した数、やはり覚えてない
もう一年以上働いていない、親に泣きついて生活費だけは仕送りしてもらっている
もういい年なのになさけない
そんな落ち込んでる俺に声を掛けてくれる人がいた
軽トラで街中を走って中古品回収してるリサイクル回収業のおっちゃんだ
余程俺の顔から生気がなくなっていたんだろう
おっちゃんはよく分からねえけど人生捨てたもんじゃねえよ
がんばらなくていい、ただ小さな楽しみでいいから見つけなといってくれた
仕事がないなら、おっちゃんが社長に頼んでやるけどどう?やる?ともいってくれた
俺はおっちゃんの優しさに触れ、泣いた、何年ぶりの涙だろうか
おっちゃんに頭を下げ社長を紹介してもらうことにした
後日携帯に連絡がいくだろうからとおっちゃんは笑顔でいってくれた
おっちゃんありがとう、こんなどうしょうもない俺に救いの手をさしのべてくれて
・・・その時はマジで感動し感謝した
あれから半年
俺はおっちゃんが紹介してくれたリサイクル屋で働いている
いや搾取されている
リサイクル回収に使う軽トラは会社からレンタル月10万、ガソリンなど消耗品は俺持ち
回収してきた商品は分別して社長が値踏みする、思いっきり買いたたかれる
簡単にいってしまえば、社長の軽トラをレンタルして社長が転売するブツを集めてくるだけだ
そこにはエコなどというきれい事はまったくなく
ひたすらにどん欲な金儲けしかなかった
働けば働くほど赤字になっていくシステムによって、俺は社長から借金をしていることになっている
半年でざっと50万近い、なぜって軽トラレンタル料を上回る利益を出せないからだ
もはや俺はこの社長の奴隷といってもいいだろう、近いうちに社長とおっちゃんをどうにかしようと画策している
我が自由のために
ちなみに会社名はリサイクルリサイクルだ、この名前を見かけたら石でもぶつけてやってくれ
「図書館日和」
220:この名無しがすごい!
11/04/28 00:51:59.99 puCqFOVx
「図書館日和」
「にゃにゃにゃ、チェルシーちゃん参上っ。待った?」
街中にある、待ち合わせ場所として有名な時計台の前に佇んでいた
僕の背中をそんな声が陽気に叩いた。
「ううん。全然待ってない。僕も今きたとこだよ」
僕は微笑みながら振り返る。
そこには待ち合わせの相手、チェルシーちゃんが
向日葵のような笑顔をたたえて立っていた。
本当に、いつ見てもチェルシーちゃんは可愛い。そんな
彼女と僕が今日デートだなんて今でも信じられない。
「なーんだにゃ? やけににゃにゃしちゃて」
チェルシーちゃんが怪訝そうに僕の顔を覗きこんできた。
「な、なんでもないよ」
僕は咄嗟に手を振って誤魔化す。
「ふーん。まあいいけどっ。それじゃいこっ?」
「うん」
ぱあっと向日葵すら超える笑顔を見せたチェルシーちゃんに
手を引かれ、僕は絶好のデート日和の中を歩き出す。
繋がれた手を見ながら、僕は確信にも似た期待の感情を膨らませていた。
きっと、今日は最高の思い出がつくれる―。
という話を一人、図書館で執筆する俺。
ふと手を休めて外を見ると、今日の天気は今書いていた
小説と同じでとても清々しい天気だった。
ぼんやりと青い空を見つめ、俺はぽつりと呟く。
「今日は図書館日和だな」
「こういうのって、やっぱ何となく辛いよね」
221:この名無しがすごい!
11/04/28 16:46:33.23 1F20Li3B
「こういうのって、やっぱ何となく辛いよね」
近頃、昔付き合っていた彼女から電話が掛かってくる。
彼女はもう結婚していて、今年で二歳になる子供もいる。旦那さんも真面目な人で、
彼女の状況は客観的に言って幸福だと、誰もが認めるだろう。
それに比べて、俺は大学を卒業したものの就職活動に失敗し、今では実家に戻って
ニートをしている。
彼女が電話をしてくる理由は、単なる暇つぶしだ。俺がニートをしていることを
知ってから、彼女はスカイプ―無料で電話ができるアプリケーションだ―で俺と
よく話すようになった。
だいたいの場合、文字によるチャットから始まり、通話に移行する。チャットでも
通話でも、彼女のとりとめのない愚痴を―旦那が返ってくるのが遅いとか、家事を
手伝ってくれないとか、最近天気が悪くて困るだの―俺が聞き流すだけだ。
そんなことで彼女が満足するというなら、僕は何時間でも彼女の言葉に耳を傾け
続けるだろう。
今日の天気は晴れていた。めしおち。そうタイプして、マイク付きのヘッドホンを
外し、昼食を取る。そしてスカイプに戻る。ちょっと図書館行ってくるので落ちます。
そうタイプする。
「もしかして、私のこと嫌い?」
「なんでそうなるの?」俺は聞いた。
「だって私、元カノなのに未練たらしく電話しまくってるし、まーくんが新しい彼女
作らないのも、私がまーくんの時間をたくさん奪っちゃってるせいだし、みんな私が
悪いんだよ……」
彼女はうつ傾向がある。ネガティブな考えに憑りつかれると、視野が狭窄するのだ。
「こういうのって、やっぱ何となく辛いよね」
「そんなことはない」
僕は自分の声の大きさに吃驚した。
「そんなことはない」
もう一度、僕は確かめるように繰り返す。
「ありがと」
そう呟いて、彼女は電話を切った。
「セーブデータは消えました」
222:この名無しがすごい!
11/04/28 18:21:24.99 Pg4QhCTj
「セーブデータは消えました」
セーブデータというのは外的な記憶媒体の一つ。
当たりまえのことだけれど、例えば、だ。
私の暮らしているこの現実(みらい)のように、VR技術を駆使したゲームが隆盛したとしら、
どうだろう?
そう。頭にヘッドギアをはめ込むアレ。
その場合、人間の脳はゲーム世界と直接リンクすることになる。
これも当然。
でもだから、記憶とセーブデータもリンク、というより、セーブデータが記憶領域を拡張して
いる、といったほうが正しいかもしれない。
つまり、VRゲームでのセーブデータというものは、人間の記憶とほとんど同じ。
だから。
だから今回のように。
『セーブデータが破損してしまった』人間。
…私のような人間は。
ほとんど記憶喪失と変わらない。
「――――またここに戻ったか…」
「セーブデータが消えました2(↑の続き)」
223:この名無しがすごい!
11/04/28 18:54:31.79 nYkQkek6
「セーブデータが消えました2(↑の続き)」
「私、難しいこと嫌いなのよね、よく分からないしさ」
彼女はそう呟きながらタバコに火をつけた
「おっと、俺の前でタバコは止めてくれよ」
俺は火がついたタバコを握りつぶした
かなり熱いが我慢する
「ちょっと、なにすんのさーあんたタバコを握りつぶしたんだよー?わかってんの?」
「ああ。分かってるよ、俺の手は昔から鍛えてるから少々の熱さなら平気なんだぜ?」
「・・・嘘。あんた嘘付いてる、なんで熱くないなんていうの?もう!」
彼女は俺の手をいとおしそうに握ると涙を流しながら「バカ」といった
俺は彼女のことを愛している、彼女も俺のことを愛してるはずだ
ぐさり
「なんてね。てへ!私があんたのこと心配するとでも思った?ばーかー」
俺は自分の背中を触る、深々と刺さるナイフがあった
「どうせ、死んでもセーブしたところからやり直すんでしょ」
彼女は俺の腹に蹴りを入れた
なんてことだ、彼女は最初から俺を殺すことが目的だったんだ
と、いいたいところだが、彼女はさっき俺がナンパした女だった
「奇跡はあるよ」
224:この名無しがすごい!
11/04/28 19:23:40.53 /omwLka3
「奇跡はあるよ」
「あたし、奇跡って信じてるの」
唐突な告白だった。
「具体的に言うと恋愛とか。30億ずつの男と女が一人を見つけて、愛し合うの。コレって奇跡みたいなもんだよね?」
彼女は恋愛に幻想を抱いているようだ。
打算も濁りも無い純粋な恋愛を信じる。彼女はそのような類の人間らしい。
「ねぇ、アンタはどう? 奇跡とかって信じてる?」
「うん、信じてるよ」
俺もまた、その類の人間だった。
「俺と君の間に、奇跡はあるよ」
「卵かけフランスパン」
225:この名無しがすごい!
11/04/28 22:51:37.00 1F20Li3B
「卵かけフランスパン」
さて、今日の料理の時間です。テレビの前の皆さん、準備はいいですか。
まず、フランスパンを包丁で切ります。このときなるべく薄く切るのがコツです。
次に、スクランブルエッグを付くります。卵は前もって撹拌しておいてください。
フライパンに少量の油を敷き卵を流し込みます。そして、長い箸でぐちゃぐちゃに
かき混ぜま。塩を少々入れてもいいかもしれません。
スクランブルエッグができたら、先ほどのスライスフランスパンンの上に乗せます。
これで完成です。
好みでサンドイッチにしてもいいでしょう。キャベツ、シーチキン、ベーコン、
チーズなどを挟むのも美味しいですね。
では、これで料理の時間は終わりです。テレビの前の皆さん、ぜひお試しあれ。
「ネクタイの柄はくまの○ーさん」
226:この名無しがすごい!
11/04/29 13:53:40.51 QuUSxFUy
「ネクタイの柄はくまの○ーさん」
世界史教師の蓮池直哉(26歳)が自宅で殺害されたのは3月△日(水)の午前9時から11時ごろだった。
蓮池直哉はモデル顔負けの甘いマスクに加え、
高学歴で文武両道、実家は裕福…とにかく女性にモテる男であり
大学時代から付き合ってる有名局アナ、父親を通じて知り合った女性ライター、
勤めていた高校の複数の生徒など、さまざまな女性と性的な仲であった。
警察は被害者の交友関係から犯人特定に繋がる情報を得ようとしたものの、
殺害の動機を持つものが多すぎること、加えてそのほぼ全員にアリバイがあったことから難航していた。
(註:局アナは全国ネットの生放送番組に出演していた。
女性ライターは前日夜からドイツに滞在していた。
高校の生徒はほとんど卒業式の予行演習で体育館に集められていた。
欠席した生徒についても現在まで不審な点は見当たらない)
事件発生から一週間後、我々は蓮池直哉殺害現場となった部屋にふたたび足を踏み入れた。
部屋の中でも血だまりが色濃い一帯には人の形をした印が付けられている。
今は鑑識に運ばれている遺体は数十ヶ所の刺傷切傷があり使用された凶器は複数、
性器は切り取られたうえでナイフで串刺しにされていた。
そして今でも壁には蓮池直哉の血液で
『汝の罪は苦痛の果ての死を以てのみ償われる』『惨めに死ね』
『正義の神に代わり高貴なる断罪を執行する』などの文面に混じり
ひときわ大きな血文字で『ネクタイの柄はくまのプーさん』と描かれている。
「なんでプーさんなんですかね?捜査の手がかりにもならないしなんなんだか」
同僚が溜め息混じりに呟いた。
次のお題
「レイチェル(笑)」
227:この名無しがすごい!
11/04/29 13:57:59.75 2ZbwJ5rN
「レイチェル(笑)」
学園都市とは名ばかりの荒くれ都市レイチェル
今日も荒くれ者が青春を謳歌する
電撃姫こと四坂琴音は街に出て弱い物いじめ
白馬に乗った王子様が琴音をお仕置きしてくれるまで街を彷徨い歩くのさ
ちょっとばかり弱いものを炒めるのも私へのご褒美
「ガストの宅配」