よくわからんお題で次の人がSSを書くスレ3at BOOKALL
よくわからんお題で次の人がSSを書くスレ3 - 暇つぶし2ch100:この名無しがすごい!
10/11/02 12:41:34 Y/3Hqzia
「虹色髭伯爵」

名前の通り虹色の髭を持つ伯爵は、使用人にすら、
「眩しい!」
と避けられねばならなかった。
けれど伯爵としての威厳の為に髭を伸ばし続けた。
髭がないと貧弱な顔が目立ってしまうのである。
けれど孤独感は募る。
誰かの声をまともに聞いて見たかった。誰かと見つめ合ってみたかった。
それだけでよかったのだ。
そんな伯爵がある日、一人くつろいでいたところ。聞くともなしに耳に入っていた会話でテレビに釘付けになった。
虹色のゲロを可愛い女の子が吐いていたのである。
以来、虹色髭伯爵は、二次元髭伯爵と呼ばれるようになった。


お題
「赤裸々きらきら」

101:この名無しがすごい!
10/11/02 17:33:40 KfGyM5tF
会社から帰って、まっさきに私がするのはブログの更新だ。
きららというHNを使い、今日は何を食べた、何を買ったといった日常報告と、
時には下着か、全裸すれすれといった自撮りの写真を載せ、性生活の内容も事細かに記載する。
露悪趣味というのだろう。赤裸々に自分のすべてを晒し出すのが快感なのだ。

とはいえこの時代、自分の個人情報が流出したら最後、どうなるかわかったものではない。
自分の顔はもちろん、名前、住まいが特定できるような内容の文章は書かないし
写真も外で撮ったものは絶対に載せない。セキュリティーソフトも常に最新の状態だ。
馬鹿な趣味だと自覚があるからこそ、細心の注意を払っているのだ。

ブログのコメントには閲覧者からの私へ向けたえげつない言葉が並ぶ。それを見るのも私の楽しみの一つだ。
コメントを見た後はメールチェック。
ファンと称するメールも多く、いそいそとチェックしていると、キラと名乗る人物からのメールがきていた。
最近よくブログにコメントを残している一人で、HNは私からとったと書いていた気がする。
開くと、いかにも疲れた中年といった風情の男性の写真。
ぎょっとして文面を見ると、自己紹介と称し、本名、住所、電話番号、来歴、両親の名前や好物、睡眠時間まで
ここまで、と思うほど微に入り細をうがち書かれていた。

―他人の赤裸々な文章を読んでいるうちに、自分に向けたメッセージだと勘違い。
仲間意識だか連帯感を持ち始め、自分のことも全部知ってくださいなどと言い始める、まあ、よくある手合いだ。
どこかに流してやろうかとニヤつく頬を抑えつつ、やたら長い文章をくるくるとスクロールしていく。

「…… 一日に四回はきららさんを想像しながら自家発電に勤しんでいます
 住所は上記の通りで 一軒家に両親 祖父母と同居しており
 この口うるさい同居人に 僕は常日頃から 聞くに堪えない罵詈雑言を浴びせられております
 あなたは実際の僕を知らないですが きっとこれから僕のすることで―」

あまりの長さにだんだん飽きてきた。一旦気分転換しようとテレビの電源を入れる。
この時間はちょうど夕方のニュースだろう。ぷつんと小気味いい音をたててテレビがついた。
 
ニュースは緊急生中継の文字と共に、どこかのよくある住宅街が映しだされている。
画面の中でごったがえす人ごみ、警察官らしき人物の怒号とサイレンの音が飛び交う。
映像が切り替わり、女性アナウンサーが手元の小さなメモらしきものを読み上げ始めた。

「先ほど、同居していた家族を刃物で切りつけ殺害するという凶行におよんだ犯人が逮捕されました。
 犯行現場である自宅のすぐ前で、凶器である血がついたままの包丁を振り回しながら
 僕がやった きらだよ ここにいる 僕のこと全部知ってくれるだろう
 などと叫んでいるところを近所の住民が目撃し通報にいたったと……」

お題「湯たんぽ猫」

102:この名無しがすごい!
10/11/02 20:05:41 2gO1gOvc
「湯たんぽ猫」

一年で一番空が透き通ってる季節、冬
高台から見る街は、煙突から浮かぶ白い煙が見える
少年は鳩小屋の戸を開け、鳩を大空へと誘い、持っていたラッパを吹き始めた
ラッパの音色が眼下に見える街に響いていく、朝日と共に
少年はラッパを吹き終わると、パンをかじりながら山羊乳を一気飲みし、家を飛び出す
急坂をいきおいよく駆け下り、職場の鉱山へと向かった
「ちーーーーーーーーーーーーーーーす!」
少年は大声で挨拶をし、持ってきた弁当を休憩所へと放り込み持ち場へと走り込んだ
少年の担当は地底奥底で掘られる鉄鉱石を引き上げるエレベータ管理
三十分ごとにブザーが鳴り、ボタンを押すと鉄鉱石を乗せたエレベーターが上昇してくる
ブザーが鳴るまで少年は空を見上げるのが日課だった
いつものように空を見上げていると、雲の合間から何かが落ちてくるのが見えた

五分後、少年のはアルミ製の猫の形をしたものを抱きかかえていた
そう後に湯たんぽの原型となるものだった、猫形の・・・・
空からの落とし物は少年の知的好奇心を奮い立たせるに十分のものだった


「物産展へいく」

103:この名無しがすごい!
10/11/06 00:45:45 2MhwvOyX
「物産展に行く」

 そういい残して家を出て行った父さんが二十年ぶりに帰ってきた。

「……大きくなったな」
「……」
「母さんは……」
「死んだよ」
「そうか、間に合わなかったか……」
「……」
「薬、ようやく手に入れたんだあの物産展の話は本当だったんだ……でも遅かったか……」
「母さんはただ父さんにそばにいてほしかったんだ」
「……すまんどうしても助けたかったんだ、助けられると思ったんだ……」
「……もういいよ……」
「……すまん」

 長い沈黙。どちらも次の言葉が出てこない。と言うよりもう話す言葉なんて無いのかもしれない。もう母さんはいないんだから。ああ母さん。母さん……。

 ……そうだ、そういえば、母さんが最後に残した手紙。父さんが帰ってきたら渡すように言われていた手紙。せめてそれだけは。急いで箪笥の引き出しの奥にあったそれを父に渡す。

「これ、母さんが」
「あいつが……」

 父さんはしばらく読むと最後の一枚を僕に渡した。

「これはお前にだ」
「おれに?」

―お父さんを許してあげて。あなたの、私の大切な家族を大事にして。私の分まで二人は幸せになって―

 涙が溢れた。父さんが僕の肩に手をおいた。

「明日お墓参りに行こう」
「……うん」

 父さんが出て行ったあの日。あの日から止まっていた時計が再びゆっくりと動きだした。

104:この名無しがすごい!
10/11/06 00:47:46 2MhwvOyX
次題 「エピクロスの蝶」

105:この名無しがすごい!
10/11/08 20:46:57 IX0a+Zpb
「エピクロスの蝶」

ある少年が図書館で一冊の本を借りた
少年が借りた本はかなり古い本で、ここ数年誰も借りることがない本だった
表紙のタイトルさえかすんで見えなくなるほど、痛んでいる
なぜ少年がその本を選んだのか、答えは単純だった
たまたまその本を発見し、なんとなく手にとり、そして気になり、貸し出しカウンターへ持って行き借りただけだった
内容は一切見ていなかったし、かすんだタイトルを気にもとめなかった
本を借りた少年はそのまま自転車に乗り近所の公園に行き、ベンチに腰掛け本を開いた
本から漂うかすかなカビの臭い
少年は鼻を抓みながら中表紙に書かれたタイトルを読む
「エピクロスの蝶」と、書かれていた
少年は不思議そうなな顔をして中表紙をめくり、本文を読み始めた
最初のページは難しい漢字がびっしり埋まっていて、少年は八割理解出来ないまま読み進めページをめくった
次のページはひらがなだけで埋まっており、やはり少年は理解出来ないままページをめくった
さらに次のページはカタカナだけで書かれており、少年はこめかみを押さえながらページをめくった
そのページは象形文字らしきもので埋まっており、少年にはまったく理解できなかった
少年は溜息をつき、本をパタンと閉じ、自転車のカゴに入れ、空を見上げて一言呟いた
「意味わかんねー」

「川面に映る景色」

106:この名無しがすごい!
10/11/13 19:50:45 rtYa2bNz
あげ。

107:このみたしけ
10/11/13 23:39:29 IM4QFlNv
「川面に映る景色」

ザバッ!!僕は思いっきり川に飛び込んだ
沈んでいく別世界に沈んでいく

空がどんどん遠のいていく 意識がなくなっていく
まるで僕の人生のようだ 空白で透明で何もない
目の前を虫が流れていく まるで僕のようだ 亡骸が静けさを通り過ぎていく
僕の命はそろそろ終る 僕は僕の心臓の音が止まるのを感じていた

ふと街が見えた入っていくと どこかで見たことのある景色だ 
好きだったあの子 一緒に学校に通った友達 大嫌いなテスト
全ての僕の記憶が眼前に広がる

ふと昔僕が好きだったあの子が現れた 彼女と一緒に手をつないで歩いた記憶が蘇る
全て消し去りたかった記憶 今のつらい現状に支配され記憶の底に眠った記憶
空白ではなかった 僕の人生は確かにここにあった

僕は水面で思い切り息を吐いた
帰り道川面には今のこの世界の景色を映す水面が僕の眼に映った

「ホワイトマヨネーズ」


108:この名無しがすごい!
10/11/14 08:24:25 urqqCjvn
「ホワイトマヨネーズ」

マヨネーズがおかずだと認識されたのはいつの頃からだろうか
どこの飲食店にいってもしょう油よりマヨネーズを置くようになり
どこの家庭の食卓にもマヨネーズがあった
以前だとマヨネーズを好んで食べる人間をマヨラーといい、かなり偏見を持った目で見られていた
しかし、現在ではマヨネーズを付けずに食べる人が変わり者といわれる
そんな時代、マヨネーズの代表格である商品があった
ホワイトマヨネーズ
日本国内シェア率80%という恐るべしシェア率を持つこの商品
町を歩けばホワイトマヨネーズに当たるといわれるほど巷に溢れかえっている
元は某歌番組で新人アイドルが自作マヨネーズの話題がきっかけだった
その歌番組で新人アイドルが自作マヨネーズの作り方を紹介した、TVを見ていた人が試しに作ってみた
意外とおいしいと話題になり、瞬く間に作り方が広まった
マヨネーズに目を付けた某食品会社が新人アイドルと独占契約を結び新製品として発売し
日本中にこのマヨネーズが広まった
商品名はホワイトマヨネーズ
新人アイドルがホワイトシスターという活躍していたアイドルユニット名が由来だ
ホワイトマヨネーズが売れれば売れるほどアイドルユニットの仲は険悪のものとなり
昨年末に解散し、マヨネーズ発案者のアイドルはアイドルを続けながらフリーの食品プロデューサーとして活躍している
推定年収10億とも言われるほどの売れっ子だという
さて、話はこのアイドルが行方不明になったところから始まる

「消えたアイドルを追え、事件の鍵はマヨネーズ」

109:この名無しがすごい!
10/11/14 10:03:22 m2JEoTHo
「消えたアイドルを追え、事件の鍵はマヨネーズ」


「究極にして至高のマヨネーズを探す旅に出ます。」という言葉を残して
アイドルが消えたのは半年前のことである。

その間、北海道のチョコレート工場で働いている、仙台のずんだ餅にマヨネーズを混ぜて食していた、
横須賀の海軍カレーにマヨネーズをかけていた、大阪のたこ焼き屋で修行している、
讃岐うどんの麺つゆにマヨネーズが合うか研究している、
博多でマヨネーズラーメンを発売しようと目論んでいるなど
様々な噂が流れたがどれも確証に欠けていた。

そんな中、我々は新潟へ向かった。
新潟を実効支配しているハッピーターン教団はマヨネーズを嫌悪しており
マヨネーズ一気飲みという行為を炭酸一気飲み以上の過酷な拷問と認識している。
我々は、まず腹を満たすために駅前のレストランに入る。
座席に置かれている調味料は醤油でもマヨネーズでもなくハッピーターン粉であり
壁に張られているアルビレックス新潟ポスターの選手ユニフォームにも亀田製菓の広告が入っている。
我々の近くに座っていた観光客らしき男性が鞄からこっそりマヨネーズを取り出し
新潟名物イタリアンに掛けようとしていたその時だった。
大きな警告音とともにハッピーターンの着ぐるみ集団が現れて男性を取り囲み、
「離せこのカルト信者、ジーク・マヨネーズ!!」と叫ぶ男性を連行していった。


同行のカメラマンが小さな声で呟く。「よりによってここには例のアイドルは来ないでしょう…」
しかしこの時はまだ、このアイドル失踪事件が日本全土を巻き込む大事件の序曲になるとは
思いもよらなかったのだった…



次のお題「逆襲の白鳥」

110:この名無しがすごい!
10/11/15 23:12:13 dd9IY05F
「逆襲の白鳥」

昔々あるところに、醜いアヒルの子がいました。
その子はそれはそれは醜かったため、ほかの子にいつも虐められていました。
醜いアヒルの子は大変悔しい思いをしていましたが、事実醜いのでグウの音も出ません。

あるとき、醜いアヒルの子は奇妙な噂を聞きました。
かつて、醜いアヒルの子と思われていた雛が、実は白鳥の子だったということが
あったらしいのです。
醜いアヒルの子は興奮しました。
「俺の名はスワン……400円になったらスワンのスワン……」
意味不明なことを口走りながら、ほかの雛たちに逆襲するようになったのです。
みんな、醜いアヒルの子のことをバカにしなくなりました。

やがて、時が経ち、みな成鳥となりました。

醜いアヒルの子は、極端に醜いアヒルとなりました。
かつて彼の醜い両親がそうだったようにです。
おわり。

「逆鱗の雪国まいたけ」


111:この名無しがすごい!
10/11/19 01:50:00 5e8UOIZC
「逆鱗の雪国まいたけ」



「雪国まいたけを雪に巻いとけ~」
あまりのつまらなさに歌○さんの逆鱗に触れた。



次のお題「笑い男飯」

112:この名無しがすごい!
10/11/19 15:46:58 g1CBwX1d
「笑い男飯」

深夜、とある坂道で茶碗にご飯を盛った男が走り抜けるという奇っ怪な事件があった
男は上半身裸でスエットのズボンだけを穿き左手に茶碗、右手に箸を握りしめていたと目撃情報もあった
男の顔は半笑い状態で大笑いしたいのを我慢してるようにも見えたらしいが真相は分からない
あくまでも笑い男が茶碗を持って走っていったという噂レベルでの話なのである
噂は75日というように、次第に噂は聞かなくなり、誰もが忘れていった
年の瀬が迫った12月27日の深夜、茶碗を持った人影が目撃された
今度は大爆笑しながら坂道を走り抜けていったという
全開と違って今回は目撃者がちゃんと証拠を残していたのだ
携帯を使い、男を撮影していたのだ
男は満面の笑みを浮かべ、左手にはご飯を盛った茶碗、左手には箸を握りしめていた
まるで一人幸せを享受するかのような画像だった
この画像は幸福の笑い男飯として、子供たちの間で広まっていった
画像が送られてくると、幸せになれる、好きだった相手と両想いになれるなどの尾びれがつき広まっていったのだった

「妹との関係」

113:この名無しがすごい!
10/11/20 10:36:32 xXWVp3Ij
「妹との関係」

ヤツは俺を見ると細く整えた眉をひそめて言った。
「キモ……ださいし」
「お前ね、兄に向かってその台詞はどうなのよ?」
「しかもオタクだし」
「オタクは海外でも人気なんだから莫迦にしちゃいけない」
俺はメガネを外してトレーナーの端で拭いた。……やらなきゃよかった。視界がよりクリアになってしまった。
「お前だってその格好どうかと思うけど」
「どこが悪いのよ?可愛いでしょ」
「いや、ケバいし。そのミニスカートもできれば長くして、中身が間違っても見えないようにしていただきたい」
「二次元のパンチラには喜ぶくせに」
「お前のを見て喜ぶ程墜ちてない!てか、公害だ」
茶髪のツインテールをぴょんぴょんとさせながら、ヤツは首を左右に振りため息をついた。
「つーかこんな兄じゃ間違っても友達に紹介とかできないし」
「紹介されるいわれないし」
「みんな聞いてくるんだもん、兄ちゃんもお前みたいなの?って」
「一緒にするな!」
「こっちの台詞よ!」
俺たちは叫んで互いに睨み合った。
「お前の友達ってどうせ男だろ。紹介されても嬉しくないし」
「こっちもアンタみたいなダサキモオタクと血がつながってるとかバレーるのイヤだし」
てかてか光る唇からキツい台詞がポンポン出てくる。
もう、いい加減にしろ。可愛い妹に言われるなら納得もしよう。でも、こいつは駄目だ。さすがに見るに耐えない。
「妹がこんなに嫌がってるのに、なんでアンタはいつまでもキモイわけ?」
「だからいい加減にして目を覚ませよ!」
「はあ?」
「お前、男だろうがっ」俺は目の前にいる女装の弟の頭を盛大に叩いた。


「只今待ち合わせ中」

114:この名無しがすごい!
10/11/20 10:47:03 hUoFwvb0
「ただいままちあわせちゅう」

久しぶりのデートである!
どのくらい久しぶりかというと!
かれこれ三年ぶりである!
前は目に入ったかわいい子をかったぱしから遊びに誘ったものであるが!
前の仕事をリストラされてからまったく女の子と縁がなくなってしまったのである!
一時期はほんとーーーーーーーーにただの引きこもり生活を送っていた
家を出るのはバイトに行くときだけというきわめて不健康な生活だった
朝起きて、支度してバイトに行き、終わればコンビニで食料品と暇つぶしの雑誌を買って帰宅
そんな単調な生活が2年くらい続いたかな
単調な生活を変える激変的な出会いが一昨日起きた
偶然出来た新しいコンビニに立ち寄った時、そこのオープニングスタッフとしてレジに立っていた彼女
そう!彼女こそ俺にとって運命の女神だったのである!
初対面にもかかわらず、俺たちはまるで運命に導かれるように出会い声を掛け合った
後ろに客がいるにもかかわらず、俺と彼女は話し、そして約束をした
今度の日曜日にねずみランドに行こうと・・・・・・
日曜日、約束の時間である、約束の待ち合わせ場所である、彼女の気配は・・・ない
俺は只今待ち合わせ中なのである
彼女が来ると信じて・・・


「初恋の人」

115:この名無しがすごい!
10/11/24 02:33:58 F6QC/g52
「初恋の人」

思い出に取って置くべきものはそのままにしておくべきだ。
しかしある日、私は当時の小学校のアルバムを開き、彼の
手がかりを見つけようとした。何度も当時の友人に連絡を
取ったが、誰をも教えてはくれなかった。
私の心に重く圧し掛かった錘が、未だに疼いたままであった。
まるで遠い国の住人の様な気がしてしまったのである。
私は携帯電話を床の絨毯に落とし、ただ泣き崩れた。
しかしコールが2回鳴り、私は震えた手で携帯を持った。
その彼だった。
「誰?」
「美里だよ」
「知らないんだけど、ってか覚えてない」
今の彼は昔の彼ではないのであった。
私はただ携帯を握り締めたまま、
髪を掻き揚げ大声で泣いた。絨毯の上で当時の彼が思い出される。
もう二度と戻っては来ない彼を探して、足踏み状態のままでいる。
彼を忘れようと。
思い出は良い記憶のまましまっておくべきだ。
再び繰り返される悲しみを忘れるためにも。


「本物の家族」

116:この名無しがすごい!
10/11/25 19:58:19 yJNmr0SI
「本物の家族」

僕は知っている。
母さんは、死んだのだということを。
父さんも、死んだのだということを。
姉さんも、兄さんも、飼い猫のミケも、みんな。
誰もかも、死んでしまっているのだ。
僕だけを、残して。

伯母は言う、今日から私たちが家族よ。
僕は答える、遠慮します。
伯父は言う、今日から私が君のお父さんだ。
僕は答える、結構です。

ああ、お星さま。どうして僕には家族がいないのでしょう。
どうして? どうして? どうして?
皆が口をそろえて言う。「かわいそうだね、若いのに」
僕はそれを拒絶する。「余計なお世話です、黙ってください」
お願いします。もう僕は、悲しみを思い出したくない。

月も星もない夜の森。
僕は静かに首を吊る。
暗闇はびこる夜の森。
さよならを言う相手はいないけれど。

母さん、父さん、姉さん、兄さん、ミケ―みんな。
今、逢いに逝きます。

「虹色のコップ」

117:この名無しがすごい!
10/11/25 20:23:39 /26jGG4y
「虹色のコップ」

年の暮れの夕方、あるしなびた温泉地
そこを歩く若い恋人が一組
二人は仲睦まじく腕を組んでお土産屋を見て回っている
女が珍しい物を見つけるたびに、男がおーとかほーとか心がこもらない返事を返す
そんな恋人たちが土産街のはじに到達し、さて、引き返そうと振り返った時だった
試食した漬け物屋の二階にガラス土産屋を見つけた
男はもう宿屋に帰ろうと主張したが、女が男の手をとり強制的に連行した
ガラス土産屋の戸を開ける女、その後を男がつまらなそうに追う
二人が中に入ると、そこは一面、ガラスの王国だった
女の瞳は輝き驚きの声を上げ
男の瞳もまた驚きの声を上げ、女のことを忘れてガラス製品に釘付けになった
男は何かに取り憑かれたようにガラス製品を物色し続け、ある一品を見つけた
それは、虹色に輝くガラス製のコップだった
男はこの世の宝物を見つけたような表情で値札を見たと同時にがっくりと項垂れた
そう手持ちの金では買える金額ではなかったのだ
男は店主に安くしてくれないかと持ちかけるが店主は首を縦に振らない
男が諦めて虹色のコップを元の棚に置こうとした時だった
彼女がなぜか裸になり、店主を真剣な眼差しで見ていた
私の体と引き替えでいいから、このコップをください!!
しかし、店主は首を横にふり、君の体じゃ無理だねと冷たい一言を放った


「涙の温泉地」

118:この名無しがすごい!
10/11/26 19:59:25 ThhBi6EH
「涙の温泉地」

 癌にかかり、後3か月の命と医師に宣告された私は、ある晩こっそり病院を抜け出し、とある温泉に向かった。
 長期間の入院生活のため、最後にどうしても大好きな温泉に行きたかったのだ。
 その温泉にどうやって着いたのか、無我夢中でよく覚えていないが、一風変わったところだった。
 夜の川沿いを車で進むと上流に宿の明かりが見え、とりあえずチェックインした。
 古びた日本家屋を改装したのだろうか、藁ぶきの古風な造りで、雅趣に富んだ良い建物だ。
「疲れたでしょう。さっそくおつかり下さい。お召物を預かりましょうか」とフロントの婆さんが手際よく案内をし、服まで脱がせてくれる。
 昨今のサービスはどこもいいが、ここは格別だ。私は部屋に行く前にさっそく風呂場に向かった。
 風呂場には先客がいるが、やけにひっそりとしている。
 彼らの会話を聞くともなしに聞いていると、「肺の影を指摘されて・・・」だの「ご飯がつかえてバリウム検査をしたら、食道のあたりに・・・」だの、どうやら病気の話ばかり聞こえてくる。
 病気の湯治にいい温泉なのだろう。名湯とは意外に近場にあるものだと思った。
「おや、お久しぶりですね」急に聞き覚えのある声が湯けむりの向こうから響いた。
「あ、あなたは・・・」よく目を凝らすと、以前同室だったAさんだった。
 以前はいつも痛みを訴えていたが、今はやや落ち着いた顔である。
「おたくもようやくここに来られましたか」
「ようやくって・・・どういうことです?まるで私が来るのが分っていたような・・・」
「まだ分かりません?ここがどこだか。あの岩にここの温泉の名前が彫ってありますよ」彼は傍の岩を指差した。
 そこには「地獄温泉」と彫られていた。
 その瞬間、私は全てを思い出し、涙を流した。

「母乳スープ」

119:この名無しがすごい!
10/11/26 21:11:54 6NOllmTn
「母乳スープ」

両親が死んで数年がたった
残されれた俺の身内は年の離れた妹だけ
その妹さえ疎遠でほとんど連絡すらしない
そんな冷め切った関係の妹から久しぶりに電話があった
今付き合ってる男と会ってほしい、子供が出来たから結婚する
デキ婚である、女と男、出合って付き合っていけば自然の流れだといえる
それにしてもいきなりで驚いたが、俺はわかったと答え、来週の日曜に二人に会うことになった
妹の婚約者と会うまで少々時間があるので、せめて妹が恥をかかない程度にと髪の毛を切ったり、新しい服を買ったりとした
知り合いの女にアドバイスをもらったり、問答想定集を作り事前訓練をしした
兄として本当に情けないと思うが、ただ一人の身内に恥をかかせることが出来ないのだ
そして二人と会う当日
指定場所である、某駅前の某有名ホテル内の喫茶店にいった
二人はすでに到着し、優雅に談話をしながら俺が到着するのを待っていた
俺はそこそこの態度で席に近づき、男に挨拶をした
妹が射止めた男である、見た目、雰囲気、言葉遣いいうことない
俺が女だったらやはりこの男に惚れていただろうとさえ思う
とりあえず三人とも席に座り、各々頼んだ飲み物を飲み気分を落ち着かせた
妹が男を紹介し、その後に、俺を紹介した
楽しい時はすぐにすぎさり、散会の時間になった
俺は妹にこの男ならおまえを幸せにしてくれるだろうといった
その時の妹の顔、今まで見たこともないような幸せそうな顔だった
そして、妹の旦那になる男に、妹をよろしく頼むなと深々と頭を下げ俺は出口へと向かった
その足で近場の風俗街へと行き、前から調べていた若妻専門店にいった
受付の金髪の兄ちゃんにある条件の嬢を指定し、金を渡した
十数分後、金髪の兄ちゃんに呼ばれ、個室へと足を運び中へ入る
そこには黒髪の大人しそうな女が待っていた
女の乳はぱんぱんに腫れ上がり、少しでも触ると母乳が吹き出しそうだった
そう俺は妹の妊娠姿に興奮してしまい、母乳プレイ出来る風俗店にきてしまったのだった

「ヘブンズゲード」

120:この名無しがすごい!
10/11/26 22:10:10 NrIasPiu
「ヘブンズゲート」

 妄想ドラッグ「ヘブンズゲート」強烈な幻想で使用者の脳髄を壊す威力を秘めたドラッグだ
某大学に通う女(仮名ゆい)はこの薬を服用している、ある罪を消すために。
 ゆいは大学でフランス語Ⅰを選考していた。
授業を担当していたのは河村という新任教師。
ゆいはこの河村の妻を殺害した。
ゆいは走った早くこの地獄から抜け出したかった。
自殺未遂を何度もしたあげく結局ここに辿りついた。
ユイは今この現実から解き放たれようとしている。
 バタン扉の音と共にに一人の男の声が部屋に漏れた。
大声で「死んじゃだめだ」という声が響く。
ユイはあの頃の記憶を思い出す、殺めたあの人の奥さんのことを、あの人を愛してしまったばっかりに
男がドアをこじあけ部屋に入ってくる。
ユイはそっと息を吐き薬を置いた、そして言った。
「もういいよ」
その時銃弾が。男の頭を貫いた。
外から迷彩の服をした西欧風の外人が入ってくる。
ご苦労だったな、その手には殺された何人の写真と男の指名手配書。
ゆいはほっと息を吐き、軍服のジャケットをその西欧風の軍人からもらいそれを肩に掛ける。
そして床に倒れた男のスーツのポケットから銃を抜き取り部屋から立ち去っていった。
 ここは罪人を天国へ導く国『ヘブンズゲート』
全ての軍人は国民を天国をへ導くために活動している。

「仏の性癖」



121:この名無しがすごい!
10/11/27 10:14:09 REqnqWzu
「仏の性癖」
 昔々のその昔、お釈迦様が腐ったキノコスープ食って食あたりして、いよいよ亡くなる寸前の時のお話や。
 世界中のありとあらゆる生き物が、お釈迦様のところにお見舞いに来よった。
 皆常日頃からお釈迦様の説教をありがたく聞いて、生きる道しるべにしとったんや。
 死ぬ前にいろいろ聞いておこうと思ったんやろうなあ。
 そのうち皆、どうも遠慮がなくなったようで、アッチ系の質問が多くなったんや。
 アッチっていったら、そりゃあんたアッチやで。皆好きなアレや。
 お釈迦様も若い頃はモテモテの白馬の王子様で、王宮ではそりゃ激しかったそうや。
 いろんなプレイや性癖のぷろふぇっしょなるやで。皆教えを受けたがった。
 例えばお釈迦様となじみの深いゾウさんがこう聞いてきたんや。
「シッダルダーさんや、わしは嫁とどのくらいの頻度でお勤めしたらええもんでしゃっろ?最近疲れてますのんや」
「あんたは身体がでかいし、奥さんとは5年に一回ぐらいでええわ。
ちゃんと自慢の鼻で、ワイフのアレをクリクリッとしてやれよ。
拙僧がリア厨の頃、遠足で近くの動物園に行ったときなんぞ、婆さんゾウが、鼻でずっと自分の長い乳首を引っ張って遊んでおったもんや。
ガキの拙僧はそれをかぶりつきで見とったんやで」
「へー、さすがは悟りを開いた御方はなんでも知ってはるんやなあ。えろう参考になるわ」
 こんな調子で皆お釈迦様がチアノーゼが出ているにもかかわらず、次から次へと質問しに来たんや。
 お釈迦様はまた律儀にも、それに一つ一つ答えてやった。
 しかしそろそろ心肺停止状態が近づき、さすがに大儀になってきたとき、ようやく人間代表が来て、こんな質問をしおった。
「で、結局私たちはどれくらいの頻度で、どんなプレイでやるのがいいんでしょうか?いろいろありすぎてわからないんです」
 その時はさすがのお釈迦様も疲れておって、どうでもよくなっておった。それでつい阿修羅のような形相で答えてしまった。
「勝手にせいや!」
それ以来人間は勝手にするようになったとさ。どんとはらい。

「はいだら」


122:この名無しがすごい!
10/11/27 10:39:16 OUf1xmdQ
「はいだら」

私にはお兄ちゃんがいる
優しくて妹想いのとてもかっこいいお兄ちゃんだ
しかし、と、あることがきっかけで私とお兄ちゃんとの仲は破かれた
家庭内離婚ならぬ、家庭内別居、兄妹だから別居じゃないか
とにかく同じ家に住みながら、相手のことが視界に入らない、いれない、あえて無視する
そんな生活が続いている
私としてはお兄ちゃんと仲直りして、お兄ちゃんと遊びにいったり、友達に自慢したいのだが
お兄ちゃんが私を見ると、そそくさと自分の部屋へ戻っていってしまって話しかけるタイミングないのだ
それでも何度か話しかけようとしたが、お兄ちゃんは私を避けてしまうのだ
そんなこんなで私が中学校を卒業する年のお正月
両親は偶然引いた町内会くじで見事一等の温泉旅行を楽しむべく遠く離れた温泉郷へといってしまい
家に残されたのは私とお兄ちゃんの二人だけだった
年末、物音一つしない家
いごこちが悪く、私は意味もないのに歩いたりTVを付けたりしたりした
お兄ちゃんはというと部屋にこもって一歩も出てこない
死んじゃったのか?と思いドアに耳を押しつけ中の音を聞くとかすかに音がする
どうやらお兄ちゃんは生きてるらしい、トイレとか食事はどうしてるんだろうと心配になる
そんなことを考えていると部屋からお兄ちゃんの声が聞こえた、はっきりと聞こえた
「はいだらぼっちさま、わたしのこのみをもってせかいをおおいつくすやみをたいじしてくださいませ」
どうやらお兄ちゃんは私たちとは次元の違う人と仲良くやっているみたい
私はお兄ちゃんとの仲はしばらくこのままでもいいかなと思い、こないだ告白してきた男の子に電話した
初詣と初日の出デートの約束をし、私は浮かれながらお昼の用意をすることにした

「寝酒朝酒風呂酒」

123:この名無しがすごい!
10/11/28 21:49:53 ObX+fxNO
「寝酒朝酒風呂酒」


この国では、国家から許可を受けた合法バーで提供される以外のアルコール類は
消毒薬やアルコールランプ用などとして飲用に適さないよう調整されたものを除き
一般国民の所持は禁じられている。
また、アルコールバーでの服用に関しても年齢制限、血液検査、
メンタルチェックなどの項目をクリアしたことを証明するライセンスが必要である。
…とはいったものの、ライセンスを持たない子供や中毒者にアルコールを提供する非合法バーの登場や、
合法バーでも法律の基準を逸脱したアルコール飲料を提供したり
また自宅でアルコールを密造して個人で消費したり闇で販売するといった例が後を絶たず
ついにアルコール事件専門の部署、通称「エリオット」が警察に誕生することとなった。


今回「エリオット」が向かったのはとある温泉街の一見、普通の旅館である。
旅館自体は合法アルコールバーとしての認可を持っているが
その旅館内でアルコール中毒が疑われる不審死が発生したため
アルコール飲料の違法使用の疑いがかかりガサ入れが行われることとなった。


「このベッドの横にある瓶はなんだね?睡眠前のアルコール服用は固く禁止されている!」
「アルコール法の時間外である朝に服用した形跡があるが」
「アルコールバー施設外である風呂場でのアルコール摂取の疑いで逮捕する!」

股間をタオルで隠した姿で警察に連行される男を横目に見ながら捜査員が呟く。
「これで今日も生命の危険につながる危険なアルコール摂取から国民を守れた」




次のお題「かぼちゃ戦争」

124:この名無しがすごい!
10/11/29 15:48:25 XUc51xni
「かぼちゃ戦争」

 かぼちゃが不作になった、というニュースが流れた。最初は誰も気づいていなかった。
それが全世界的な食糧作物の不作の前触れだったとは。
 年を跨ぐ前に、食糧先物価格は高騰した。各国は備蓄米や備蓄小麦を放出したが、
焼け石に水だった。スーパーマーケットには品切れが相次ぎ、かぼちゃが入荷されると
いう風説に惑わされた人々が列を作っていた。その姿は、かつてのソ連のようだった。
 かぼちゃはもはや宝石と同じだった。多くの国がかぼちゃの人工培養を試み、
悉く失敗していた。かぼちゃに漏れなく付着していたウイルスが原因だった。抽出された
ウイルスのDNA解析の結果、それは地球上のどんなウイルスとも似ても似つかないもの
であることが判明した。敵は宇宙にあり。ニュースが踊り、NASAは対宇宙人侵略部隊を
発足させた。それに対応したように、土星に漂う二機の巨大UFOが動きだした。
 人類はそこから始まる宇宙戦争のことを―「かぼちゃ戦争」と呼んだ。

「鈍色の荷馬車」

125:この名無しがすごい!
10/11/29 17:11:56 Dr/JdGec
「鈍色の荷馬車」

うま娘が私の店にきたのはいつ頃だっただろうか
いきなり店にやってきて「ここは気に入ったウマ」と叫んだんだ
私はいきなりのことで大変驚き、イスから転げ落ちておしりを思いっきり痛めつけたものだった
最初はウマウマいってどうしてくれようと思ったが時が経つにつれ、いい奴なのかもなと思うようになったんだ
そんな彼女が明日・・・
生まれ故郷のサンタールチアエバラヤキニクノタレに帰ってしまう
故郷を出るとき母親と約束
一年経ったら必ず帰る
そのたった一年という短い時間を担保にウマ娘は私の店にやってきた
いや迷い混んできたのだ
人間生活に不慣れなウマ娘、いろいろトラブルを起こしながらも少しずつ人間の生活を覚えていった
私との溝も埋まって、昔からの友達、いや妹のように思えてきた矢先だったのに
とにかく母親との約束だから、私は笑顔で送り出してやろうと思う
いつかまた、彼女が私の元に戻って来られるように・・・・

「チューハイと生中」

126:この名無しがすごい!
10/11/30 16:21:43 1lhOdXO6
「チューハイと生中」

 にぎやかな店内は、少しぐらい騒いでも誰も気に留めない寛容さと
 大人しい人間なら気後れするような勢いをもっていて、それは【ひと足お先に忘年会】と名付けられた
 この席でも同じようなものだった。
 飲み物たのんでね~、という軽い幹事の一声で、おのおのメニューを開いて覗き込む。

「男さんは何にします?」
 女が言った。茶色に染まった長い髪をかき上げる仕草に、ゆたかな胸がゆさゆさ揺れる。
 やっぱこの席で正解だったな、おかしくない程度に視線を向けつつ、男はネクタイをゆるめて差し出されたメニューをながめた。
「とりあえずビールかな」
「えっと、瓶と生とノンアルコールとあるみたいですけど」
「生だよ。生中。普通そうでしょ」
 呆れて目を向ければ、つやつや光る唇が突き出されて胸が遠のいた。
「あたし普段チューハイしか飲まなくて」
「ああ、女の子は甘いの好きだよね」
「ビールが苦いんですよぉ!」
 また胸が揺れる。Eか。いやFかもしれない。谷間の具合から見て、寄せて上げている気配もない。
「ビールベースのカクテルもあるよ」
「え、ほんとですか?」
「うん、ほんと。この店にもあるんじゃないかな」
 カラフルなメニュー票。近づくおっぱい。ビールが苦くてほんとによかった。
「あ、やっぱりあたし、コラーゲン入りのチューハイにしよっと」
 遠のくメニュー票。遠のくおっぱい。……おのれ酎ハイめ……


「カマキリの悲哀」

127:この名無しがすごい!
10/12/05 14:57:26 rE1d9wE6
「カマキリの悲哀」

悲哀とは悲しく哀れなこと
この言葉から想像するに
カマキリの短く儚い人生を思い浮かべてしまう
雌は交尾した直後に雄を共食いしてしまう
食われた雄はこれから生まれ孵化するであろう子供達の栄養分となる
卵を産んだ雌はどうなるのかはここでは語るまい
こうしてカマキリは長い歴史を築き上げてきたのだ
子をなすと全世代は死んでいなくなってしまう
これを悲哀と呼ばずになんと呼べばいいのだろうか

「今年もサンタがやってくる」

128:この名無しがすごい!
10/12/05 21:09:35 i/uBxmsN
「今年もサンタがやってくる」

 僕の家はサンタに呪われている。祖父が「サンタクロースなどいない」との
信念の下実行した余りに冒涜的な儀式は成功し、遂に古の伝承であるはずの
サンタクロースがこの世界に召喚されてしまったのだ。
 それからというもの、毎年12月25日はサンタとの対決の日となった。
頼みもしない「プレゼント」を届けに来るサンタと、僕の父親セガール、そして
僕セガール=タロウ。ショットガンの弾は込めた。後は奴のどてっ腹を抉り
取るだけだ。鈴の音が聞こえる。奴が近い証拠だ。
「メリークリスマース!!」
「くたばれFuckinデブ!!」
 散弾銃を開かれた玄関のドアに向けて発射する。奴は弾丸を全て指と指の間で
受け止め、余った2発を歯で噛んで止めていた。にやり。奴は笑う。神話の前には
銃など無力だと。
 再装填したショットガンを向ける前に、サンタクロースは僕の銃をひねり上げた。
僕は父さんから習ったセガール流柔術で応戦すべく距離を取る。そこで、父さんの
狙撃がサンタの頭を打ち抜いた。続けざまに何発もの銃弾が頭部を直撃する。
 サンタクロースは倒れた。プレゼントは最新型ゲーム機だったようだ。
くだらない。僕はプレゼントを踏み潰すと、サンタクロースの死体を父さんと
一緒に屋外へと引っ張って行った。あとは、雪が全てを白く染めてくれることだろう。

「クリスマス売ります」

129:この名無しがすごい!
10/12/07 02:34:22 tFd97gEj
「クリスマス売ります」

「クリスマス売るよ」
 黒っぽいおっさんが俺の近くに寄ってきてそう声を張り上げた。
 よくいる風俗店らしきクリスマスと書かれたでかい看板を持って、おっさんは俺の横に立った。
 おっさんは汚れた顔の中の、うろんな目を遠くにすえて立っている。
 酔っ払っていた俺は、いくらだよおっさん、と声をかけた。
 おっさんは振り向かずに、手だけを捧げるように持ち上げた。
 チップでもねだっているつもりなのだろうか生意気だ。
 そう思いつつ、コートのポケットでぬくまった10円玉があったので、それをおっさんの手に落とした。
「メリーィクリースマース」
 看板の裏から小さなちゃちいベルを取り出し、おっさんは叫んだ。
 それだけで終わった。
 チラシを渡すでも、案内するでもない。
 なんだったんだ10円損した。俺は舌打ちして横断歩道を歩き出す。
 目の前をちらりと白い雪の破片が横切った。
 驚いて空を見上げると、満天の星空なのにちらちらと小さな雪が降り出した。
 後ろで
「10円ぽっちかよ、こんなもんだな」
 とおっさんが呟く声がした。


 「聖なる夜」

130:この名無しがすごい!
10/12/07 08:57:54 h8v30BbX
「聖なる夜」

皆さんこんばんわ。
私の名前は聖なる夜(ひじりなるよ)です。


「ミスターフェラチオと同居」

131:この名無しがすごい!
10/12/08 20:36:00 ZqP+qKlD
「ミスターフェラチオと同居」

インカ帝国初代皇帝マンコ・カパックの末裔がエロマンガ島に築いたエロマンガ帝国。
偶然発見された遺跡群によりこの帝国の存在が明らかとなったのはつい最近のことで、
最後の皇帝ドピューン・フェラチオ六十九世についても
その生涯は未だ謎に包まれている…はずであった。

そのドピューン・フェラチオ六十九世が日本のK県Y市のとある一軒家に住んでるなど
誰が信じるであろうか。
「大橋のぞみは俺の第二王妃」
「……のぞみちゃんはまだ子供だっつーの」
「何を言うユーイチ、我の母はわずか9歳で父の妻になったぞ。」
考古学者の父親がエロマンガ島に行った際持ち帰った王冠に
わずか13歳で暗殺された最後の皇帝の霊が宿っており、色々あって
最後の皇帝は現世に復活したのであった。
現代文明の利器であるパソコンを操りながら悲劇の少年皇帝は言った。
「この世界に生まれ変わったからには現在の人間らしい言葉を覚えるのはテラメンドクサスだが
努力するのシャキーン」





次のお題「らららラズベリー」

132:この名無しがすごい!
10/12/10 08:34:38 m2LqFH7w
「らららラズベリー」

寝ぼけ眼のままイスに座った
テーブルにはいつもどおり代わり映えのしない朝食が並んでいる
顔を上げると姉が食パンを頬張り
姉の隣りでは父親が渋い顔で納豆をかき混ぜ
俺の隣りでは妹が携帯を一心不乱に叩いている、彼氏にでもメールしているのであろう
俺はとりあえず水を飲み一息つき、視線をTVに移す
画面には平日朝にはまったく合わない幼女向け魔法少女ものアニメが流れていた
ちなみにうちの妹はすでにアニメを卒業してしまっているし
姉、父はアニメなどはなから興味ない
そう俺の母親が朝食の支度をしながらちら見をして楽しんでいるのだ
たまに、魔法少女に合わせてポーズを決めたりして
母さんの今朝の服は魔法少女の戦闘コスチュームっぽい感じのを着ている
膝より上のパステルブルーのスカートを穿き
上は臍丸出しのやはりパステルブルーのスクール水着っぽい何かを着ている
俺の母さんは俺の姉妹より童顔で、近所では奇跡の四十代と呼ばれ
商店街を歩いていると、年に数回中学生から告白され、半年に一回高校生からデートに誘われるほどだ
俺は毎朝、年相応に落ち着いてくれよ母さんと突っ込みを入れている、心の中で
そんな母さんが俺のために用意してくれた朝食は・・・・
『らららラズベリー!私たちみんな食べてるよ!あなたたちも毎日食べて仲間になろう!』
静まりかえる食卓に魔法少女の声が響いた
そう俺の目の前に置かれたのは「らららラズベリー」だった
どんなものかというと、よくアニメで不器用な女の子が料理に挑戦して失敗して出来た料理をゼリーで表現した物だ
見た目、臭い、食感ともに最悪だ、間違っても朝から食べる物ではない
母さんがジーッと俺を見ている、どうやら食べて喜ぶところを見たいようだ
俺は母親の期待に応えるべく、らららラズベリーを口に運んだ

「帰りたくないの」

133:この名無しがすごい!
10/12/12 16:08:02 t98CWTIN
「帰りたくないの」

「帰りたくないの」と俺の右足が言った。
「うるせえヴォケ、俺は帰りたいんだ!」と俺の胃袋が言った。
「鞄が重いから帰りたい」と俺の右手が言った。

「帰りたくないの」と俺の右足はくりかえした。
「あ~あ、早く帰りたい」と俺の左手が言った。
「どっちかというと帰りたくない」と俺の左足がボソッと言った

「満場一致で帰宅だな」俺はあっさり決めた。

 そのとたん、俺の両足は勝手に動き出し、駅のホームから線路へと華麗にジャンプした。
 急行電車が通過する、数秒前だった。

次のお題「おかげさまで25周年」

134:この名無しがすごい!
10/12/27 22:27:34 fHLw14q3
「おかげさまで25周年」

「後三カ月であなたは死にます」医師に宣告された。

私にとってそれは絶望的だった。
街中で倒れ、入院。
最初はただの貧血だと思っていたのに……。
まさかこんなことになるなんて……。

身寄りもなく、私が死んでも悲しむ人間は誰も居ない。
振り返ってみるとつまらない人生だった。
二十代前半はスリをした。
二十代後半は泥棒。
体力が落ちた最近はオレオレ詐欺で老人を騙し、騙された老人をさらに騙す。
本当につまらない人生だ。

私は外の景色を眺めていた。
「庭にある木が枯れるころ、私は死んでいるだろう」

後で知った話だが、庭の木は常緑樹だった。
死亡宣告を受けてから

おかげさまで25周年

たった

次のお題「驚くべき歯」




135:この名無しがすごい!
10/12/29 09:59:07 UIxrggFm
「驚くべき歯」

「あと半年であなたは歯槽膿漏になります」歯科医に宣告された

まだ二十歳の僕にとっては絶望的だった
二郎で歯痛、通院
最初はただの虫歯だと思っていたのに・・・
まさか歯槽膿漏になるなんて・・・

両親は健在、僕が歯槽膿漏になったら口臭で家族が迷惑するな
振り返ってみるとここ半年歯を磨いたことがなかった
小学校の検診で虫歯が見つかった
中学校の検診で歯を磨きましょうと注意された
食欲が無限にある最近の僕は二郎という楽園を見つけ、通い詰めた
両親は僕が満足してるのを笑顔で見守ってくれていた、楽しい人生だ

僕は看護師のおっぱいの膨らみを眺めていた
「このおっぱい、俺のものにならねえかな、ペロペロしてえな」

後で知った話だが、偽おっぱいだった
歯槽膿漏宣告を受けてから半年

歯が全部抜け落ちました
今や総入れ歯です

次「お雑煮」

136:この名無しがすごい!
10/12/29 14:40:57 RGEOEViT
「お雑煮」

 私の知人Nの邸宅において、お雑煮とは神聖なものである。どれくらい神聖かというと、
お雑煮の餅をいくつ食えたかでその年の幸運度が決まるという家訓があるほどである。
 喉に餅を詰まらせたNの祖父は、掃除機で餅を吸い出してもらった直後に、おかわりを
求めたことで私を驚かせた。真面目なNから聞いた話である。信憑性は高いといえる。
 昨年の知人Nは、浮かない顔をしていた。理由を問いただすと、正月に風邪を引いていて
お粥しか口にできなかったのだという。カウントゼロである。おみくじで言えば凶を引いて
しまったに等しい。まじないだ迷信だとなだめても、子供の頃からの風習はNに影を落として
いた。付き合っていた彼女の親に嫌われるなど、散々だったと愚痴るのである。
 さて、今年の知人Nは、やけに上機嫌であった。なんでも餅を七つも食べたという。
今年こそは婚約に漕ぎ着けてみせると大見栄を切って見せた。今年の見物である。
 かくいう私は、餅を三つほど食べたところで箸が止まった。その話を馴染みの茶屋で
したところ、まだまだ精進が足りないと、Nに笑われた。今年も楽しい年になりそうである。

「おせち料理と彼女」

137:この名無しがすごい!
10/12/29 16:51:11 0l95PAbJ
「おせち料理と彼女」

「おせち料理を作ってみたの」
 何の前触れもなく、彼女がそんな事を言い出した。
 正直言って彼女は料理が得意ではない。よって僕が彼女お手製の料理に抱く期待など、たかだか知れた物である事は想像に難くないだろう。
「味見してみてよ」
 彼女が笑顔で差し出す小皿を受け取って、見た目はそれなりに煮上がった黒豆を一粒摘んでみる。
「……うん。美味しいよ」
「どうして嘘を吐くの?」
 彼女は最初っから分かっていたように僕に問い掛ける。
「嘘じゃないさ」
「いいえ、嘘よ。だって美味しくないのも」
 彼女はそう断言する。
 確かに僕は嘘を吐いた。明らかに味のしない煮豆が美味いなんて事ある筈がない。けれどもその嘘は必要悪。言うならば『優しい嘘』だとインテリ枠で売っていた熟女タレントも、そんな事を言っていたではないか。
 だから僕は嘘の理由を告げた。
「おせち料理だけにお世辞料理。なんちゃって」
 彼女は呆れたように僕を見て。けれどもその後、口元を弛めると。
「薄ら寒いギャグセンスだけど、まあ稼がせて貰ったから文句は言えないわよね」
 そう言って絢香は笑った。

「大晦日」


138:この名無しがすごい!
10/12/30 15:44:37 rSoMisQr
「大晦日」

 雪が舞い散る空を無感動に眺めていたら後ろからなーなーとバカっぽい声がした。
 振り向くとバカっぽそうな男がひらひらと手を振っていた。

「知ってるかー今日はなー大晦日なんやでー」
「年末スペシャル特番とかダイナマイトとか色々見らなあかんやろー?」
「でもなーうちテレビ一個しか無いねん」
「ほんでなーカウントダウンで盛り上がっててもなーいっつも最後はおとんに『行く年来る年』にチャンネル変えられるんやわー」
「こっちがめっちゃテンション上がってんのに最後は鐘が『ゴーン…』やでー?あんまりやわー」
「ほんまに理不尽がまかり通る世の中やなあ思わん?」
「せやからなー俺もいっちょ理不尽なこと言うたるわー」

 手すりの向こう側であいつは笑った。

「お前そっから飛び降りるんはやめときや」
「……なんで? あんたには関係ないだろ」
 俺が死のうが死ぬまいが。
「関係は無いけどなー理由はあるでー?」
「………なに?」
 バカっぽいしゃべり方をするバカっぽそうな男は、何かの決めゼリフを言うように自信満々に言った。


「今日が大晦日やからや!」



「屋上」

139:この名無しがすごい!
10/12/30 16:49:26 Y//uwza6
「屋上」

都市部といわれる街で誰もいない場所に辿り着くのは至難の技だった。
しかし俺は成功した。
深夜ならば人気もないだろうと徘徊した甲斐があったというものだ。
もっとも、夜景が眺められるような高層ビルには入れなかったが、クラスメイトの加藤の家は俺ん家とは違って新築の三階建てで、やや希望にはそぐわないが贅沢は言えない。
「さすがは三階建て!風が気持ちいいな!」
都会で誰もいない完全な孤独は、風を感じる余裕さえ持たせてくれる。
素晴らしい!
「これが孤独か!全くもって開放的で自由で一人きりだ」
独り言と気付いていても声に出さずにはいられないほどに感動的だ。
「……こら」
はて?孤独なはずなのに誰かが話し掛けてくる。
「人ん家の屋上で何してやがる!」
…………。
「加藤の声みたいだが、幻聴か。今俺は誰もいない屋上で孤独を満喫しているんだからな」
「おい、増谷!人はいるっちゅーに。聞け、話を!」
「さて、始めるか」
「こらこらこら!何で服を脱ぐ!?」
俺は負けないぞ。幻聴なんかにまけるものか。
「お前なんかに負けるものか!」
「何の話だ!」
そうこうしているうちに準備は整った。
「新世紀に降り立った高校生ヒーロー!増谷ぃぃ~レッド!」
腕を振り上げ蹴りなど入れながら決めポーズをつける。
「うむ。満足だ!」
これだ!この快感!
屋上でなければこの達成感は演出できない!
「……戦隊コスプレ?」
「ふふふ、完全オリジナルのヒーローさ!おっと、幻聴に返事しちまったぜ」
「いや、さっきから俺はいるぞ。てか、変身前から全部見て見てたってば。増谷よ」
俺は一人ぼっちなはずなのに恥ずかしさで紅潮した頬をぶった。
「明日はビデオ持ってこよっと」
「……お前、もう友達じゃねーわ」

こうして俺は大都会で一人ぼっちになることが出来た。


「ベランダにうずら卵」



140:この名無しがすごい!
10/12/30 19:45:40 Ox1CpnIU
「ベランダにうずら卵」

 学生の俺がうずらを飼育していることがバレたら、寮を追い出されるのは確実だった。
だが俺はうずらを飼い始めた。事の経緯はこうだ。
 ある夜のことだ。いつのまにか、ベランダに小さな段ボール箱が置いてあった。
中を見ると、発泡スチロールと衝撃吸収剤の山。それを掻き分けた先に、うずらの卵が
六個、置いてあった。「大切に育ててください」というラブリーなメモ用紙も発見された。
そう書かれているからには、きっと有精卵なのだろう。
 偶然だが、俺は生物部に属しており、学校の備品の中から水槽とひよこ電球が
組み合わさった孵卵器を拝借できる立場にあった。六個の卵の行く末は、生死は、
俺の胸先三寸に委ねられていたのだ。1.茹でて食う 2.捨てる 3.孵化させる
「こんな選択肢、反則じゃねえかよ……」
 生物部に入った理由は、純粋に生き物を見たり育てたりするのが好きだったからだ。
 先天性の犬猫アレルギーを抱えた俺は、家でペットが飼えなかった。せいぜい
グッピーを育てることくらいしかできなかった。だが、魚類では俺のペット欲は到底
満足できなかった。そんなとき、学校の鶏は、俺を慰めてくれる唯一の存在だった。

 俺は寮長に黙って、うずらを孵化させることに決めた。一度決めたあとは簡単だった。
中学時代にチャレンジした鶏の孵化と要領は同じだったからだ。大切なのは、ちゃんと
孵卵器をセットすること、手順と時期を決して間違えないこと。それだけだ。
 結果的に、俺は孵化に成功した。四羽のうずらの雛が、餌を求めて口を開ける。俺は
練り餌を水で溶いたものをスポイトでうずらの雛に与える。至福の時だった。

 後日、生物部から孵卵器の件を部長に問い詰められた俺は、立派に育った雛を
生物部に供出させられた。これからは部が交代で面倒を見ることになる。
 だが、実際に孵化に立ち会った俺にいちばんなついてくれているのは、言うまでもない。

「甘酒三連発」

141:この名無しがすごい!
10/12/31 10:46:00 Gu0OrkBX
「甘酒三連発」

甘酒が好きだった母親が渡米して1年が経った
渡米した理由はオバマ大統領の妹だからというかなり変わったものだった
前々からおかしなことをいう母親だったが、ま世間の母親とはそういうものだと思っていた
そんな母親が甘酒を捨て渡米したのだ
母親がどんだけ甘酒が好きかというと、いつも口から甘酒の臭いがしてくるほどだった
寝起きから甘酒、朝食の合間に甘酒、掃除しながら冷やの甘酒、昼飯を食わずに甘酒
・・・とにかく日頃から甘酒漬けなのだ
そこまで好きだった甘酒を捨てアメリカ行きを決めたのは、俺の彼女が原因だったようだ
俺の彼女はアメリカでポルノ女優をしていて、常に陰毛を剃っていた
胸も元来の柔らかさがなく豊胸特有の堅さがあった、僕はそんなかちかちやどーのおっぱいが好きだったのだ
特に全身甘酒プレイがいい感じで二人を興奮させ、すでに子供が15人いるほどだ
こないだどこかの代理店がやってきて是非大家族特集番組を作りたいと打診された
しかし、娘の一人が大五郎好きで、これまた朝から晩まで酒漬けの生活を送っていた
その娘が某少年週刊誌でデビューすることが決まり我が家ではデビューパーティーを開くことになった
そのパーティに参加するため母親はサウジアラビアから来襲するという
戦々恐々の我が家では第一次戦線の兵力を倍増し、我が家の池には全艦隊を待機させた
そんな折り、支持率低下に苦しむ我が家の首相である父親が電撃辞任するニュースが流れた
辞任する父親、政権交代を叫ぶ次男、平和のために全武力放棄を打ってる末娘花子
大混乱する我が家に迫る新年!

「初夢」

142:この名無しがすごい!
11/01/01 02:28:46 6PXcrKYw
底冷えのする寒さに少しばかりの別れを告げて、仄温かな共寝を味わう。
御来光を布で線引き、鴉を殺した惰眠を手にして。
いつもの寝床の広さを捨てて、狭く柔らかな共寝を味わう。
酔いどれ気分で吐かれた言葉、もう今日ここで寝ちゃっていーかなぁ?の気軽さに乗って。

接した体の表面に、罰ゲームで腫れた尻の火照りに似た熱が湧きあがっている事に、眠るキミはきっと気付かない。
貴き寝息は、連勝に高笑いした白組の余韻でリズムを奏でているのだから。

富士鷹茄子の並ばぬ夢見は、新年早々吉凶をつける事はない。
気付かぬ欲が流れる映像、「やっぱり恋人、欲しいんだろうか?」なんて疑問は、目覚めてから捕らわれればよい妄執だ。
今年一年、指針とするかは、本人次第、判断次第。

「お年玉」

143:この名無しがすごい!
11/01/01 02:32:31 6PXcrKYw
↑あ、最後、『本人次第、夢次第。』の方がよかったかも

144:明けましておめでとうございます
11/01/01 08:57:08 hwBdtLza
「お年玉」

お年玉とは、目上の者が目下の者に与えるプレゼントである。
あげたいからといって、上司や恩師に与えるべきではない。
目下といっても犬や猫に与える話も聞いたことはない。
なぜなら、「たま」とは本来「魂」のことであり、精神がある者限定でやったり
もらったりするからである。

ちなみに「たま」というと、君は金玉(睾丸)を連想するだろう。

胎児の頃、睾丸は男性器ではなく、横隔膜のあたりに存在する。
それが生まれるまでの間、数ヶ月をかけて体の中を縦断し、最終的に(上手い具合に)一個ずつ
金玉袋の中におさまって誕生を迎えるのである。
もしうっかり途中でとまってしまって、金玉袋に至らないことを「停留睾丸」という。
この場合でも金玉の旅は続く。

ぎりぎりの位置で止まってしまった場合は、お風呂などで温まると降りてきて、
冷めるとまた体内のもどってしまうケースもあるという。

外科的手術がなかった時代、停留睾丸の者は女性と間違われることもあった。
18世紀のフランスには「ヒゲのマリー」と呼ばれる若者がいた。
親は女だと思って育てたのだが、ある時期からヒゲが生え始めたのである。
ある時マリーがぴょんと跳ねると、体内に留まっていた金玉がストーンと金玉袋の
中に収まったので、やっと男として生活できるようになったという。

そんなわけで、金玉は「落ちてくる玉」として、お年玉を連想させるのである。

「ニート、ついに就職する」


145:この名無しがすごい!
11/01/02 09:42:42 ZxVZNgry
「ニート、ついに就職する」

親戚中で問題になっていた我が家の兄がついに就職が決まった
学校を卒業して、早三年、ついに就職する
親戚のおじさんのコネを最大限に利用して決まった
当面は金を貯めて家を出るのが目標だと兄が語っていた

そんなことがものすごく懐かしい
兄は半日で退社してきたのだ
仕事を紹介してくれたおじさんは激怒し、両親は土下座して謝った
兄はそんなことをよそ吹く風といわんばかりにゲーム屋にいった
母から奪い取った金を握りしめて

「アンゴラの奇跡」

146:計算機 ◆0dHzUh337A
11/01/08 11:52:53 YlThnY7Q
「アンゴラの奇跡」
アンゴラの奇跡というゲームをすることにした
「究極のパソコン作ってその中で神になる」

147:この名無しがすごい!
11/01/08 13:34:45 JaXI9aW+
「究極のパソコン作ってその中で神になる」

僕がパソコンを知ったのはいつの頃だったろうか
たしか、まだ小さい頃だった記憶がある
まだ時代が昭和と呼ばれていた時代
まだ今のパソコンみたいに洗礼されていない時代
まだモニターがグリーンモニターと呼ばれていた時代
まだ記憶媒体がテープだった時代
そうパソコンといわずにマイコンと呼ばれていた時代
その頃、父の書斎で始めてマイコンを見たのだった
そして、いつしか僕の夢は究極とよばれる物を作り、その分野で神になることを夢見た
大学を卒業し、ある半導体メーカーに就職したが、一研究員のままだと神になれないと考えアメリカに留学した
留学中に今の嫁と知り合い、嫁の父親のコネでと、ある企業に就職した
そこで僕は才能を開花させ、思う存分仕事をし、歴史に名を刻んでいった
家庭を顧みずに・・・
そう、嫁が浮気をしているという真実に気付かまま僕は荷馬車のごとく働き続けた
家庭は崩壊し、嫁は他の男のところを渡り歩き、街では歩くセックスマシーンと呼ばれるようになっていた
僕は始めて絶望を知り、辞表を提出し日本に帰った
そう全てを捨て、新しい人生を作り出すために

「旅路の果て」

148:この名無しがすごい!
11/01/08 19:00:04 MEzsdtky
「旅路の果て」

きっかけは有りがちなものだった。
不景気なご時世にリストラの波が押し寄せ、他人事のようにニュースで流れていた「希望退職者募集」が私の会社でも行われた。
戸惑う周囲とは裏腹に私は先頭きって退職を希望した。

それから三年。
会社都合退職の五割増しの退職金で様々な土地に赴いた。
人間とは浅はかだとつくづく感じる。
目的地は自分の趣味趣向が反映されるために著しく偏り、観光地や名所に足を向けずにマニアックな局所を観ては独り納得して次へと移る。
そんな旅の仕方は早々にネタ切れを招き、すぐに目的地を定めることすら困難になる。
そして愚かなことと自覚しつつ、旧友や親戚や恩師を訪ねて「心の旅」と洒落込んだ挙げ句にそのネタも尽きる。
最終的に「人生の旅」だの「魂のナンチャラ」だの、目的を探す旅へと移行していく。
私が差し掛かっているのはその「次」。

明日とは何か?
生きるとは何か?
人とは何か?
未来とは何か?
家庭とは? 愛とは? 死とは?

自分とは何者なのか……。

そんなことは既に考え尽くした。

「金が底ついてきたから、いい加減に働かなくちゃ!」
私の旅はこの繰り返しなのだろう。

「2011年 府中の旅」


149:この名無しがすごい!
11/01/21 13:55:32 yVEj1ZI2
「2011年府中の旅」

偶然入った古本屋にその本はあった
ぷぷる府中編
そう、旅行ガイドブックだ
もう数年前に発行され、既に時代遅れとなっているガイドブックを手に取りぱらぱらとめとページをめくる
どれもこれも古い情報ばかりだった
当然と言えば当然
裏表紙に貼ってある値札を見た
315円
これの倍出せば今年出た最新ガイドブックが買えるんじゃないかと思い、私はガイドブックを本棚に戻し店を出た
その足で旅行代理店にいき府中へ行きたいと申し出た
カウンターの女性社員が丁寧に対応してくれ、そこの旅行代理店おすすめの日帰りバスツアーを申し込んだ
出発は今度の日曜日午前9時だ
私は胸躍らせながら家路についた
ネットで府中のことを調べ始めた
やはり今時の情報検索はネットに限ると実感し、寝た

で、日曜19時
日帰りツアーを終え出発地点である某駅バスターミナルに到着しバスを降りた
結論からいうと、なかなか過酷な旅だったといえた、2011年府中の旅

「さよならはいわないで」

150:この名無しがすごい!
11/01/21 17:22:46 k9oap51m
「さよならはいわないで」

 僕の彼女が光速宇宙飛行士になったと知ったのは、僕たちが二十四歳の時だった。
 言うまでも無く、ウラシマ効果のおかげで、彼女の船内時間は遅くなる。彼女が三十
歳になるとき、僕は五十年の年月を過ごし、七十四歳になっているだろう。
 彼女は僕を捨てたのか? 否。捨ててなどいなかった。彼女は、自分が人類初の
光速フライトから帰還する五十年後まで、僕が待っていてくれると確信していたのだ。
そうでなければ「さよならはいわないで」などというメールを送ってくるはずがない。
 彼女がそうであるように、僕もまた、再会の時を待った。
 僕は自分の健康を保つために、ジムに通い始めた。ベンチプレスを数セットこなし、
縄跳びで三重跳びをし、そしてヘルシーな食生活を続けた。五十年。長い年月だ。
だが、僕には待っている彼女がいるのだ。生きなければならない。
 そして五十年後が経った。だいぶ老けた顔を鏡に映し、僕は正装をして彼女を
宇宙空港にまで迎えに行く。今では、超光速飛行技術は普通のことだ。彼女たちの
無数の船内実験によって、人類の光速科学は発展を遂げた。彼女たちの偉業は
教科書に載った。
 そして僕のことも、人々の話題に上るようになってきた。「五十年待った恋人」
というのが、僕に付けられたアダ名だった。今では顔なじみとなったテレビ局の
クルーが、彼女の到着を告げる。
 開口一番、「ただいま」と、彼女は言った。「おかえり」僕はかすれた声を精一杯
ふりしぼって彼女に声を掛けた。彼女は優しく微笑んでくれた。記憶にある通りの
素敵な笑い顔だった。
 そのためだけに、僕は五十年待ったのだ。

「NEET撲滅法」

151:この名無しがすごい!
11/01/22 12:46:57 vvlCb1X2
「NEET撲滅法」

NEET……それはもはや社会現象となっていた。
働いたら負けを地でいく社会保障制度、生まれた時から歴然と存在する学歴格差。
覆そうと考えるものすらいない、そんな真綿で首を締めるような状況……

あるとき、ひとりの男が立ち上がった。
男は考えた。
必死で働きたくなるよう、駆り立てるものが必要だ。自給自足、自立、無限の可能性。
甘んじるのではなく、みずから生き延びようとする、そんな世界にしなければ
何かがあったときにこの国の人間たちはあっさりとその身を投げ出してしまうだろう。

生まれた時から高学歴を約束されていた男は、ついに首相となり、成し遂げた。

<<NEET撲滅法>>
・心身の健康な者は必ず働くこと
・国は生命及び娯楽、経済の一切を保障しない
・自宅にいられる時間は12時間のみとする

5年後、峻厳の独裁者と呼ばれた男は国民の手により処刑された。
セキュリティを破り必死に声を荒げる国民を見たとき、彼は涙した。「ああ、ようやく彼らも目が覚めたのだ!」


「メロンとスイカ」

152:この名無しがすごい!
11/01/23 06:37:48 Oxl2rlFt
「メロンとスイカ」

「あんた……耳ついてるの? さっきからメロンとスイカはどっちが好きかって聞いてるでしょ!?」
そう言いながら無邪気に顔を寄せてくるのはやめてくれ!
こっちがドキドキしてるのがバレそうで、思わず視線を逸らしてしまう。

ここは地元の果物屋、その軒先で売っている串に刺さったメロンと薄切りのスイカ、二〇〇円均一の価格設定。
部活帰りのおなかを空かした俺らの足を止めるには十分過ぎる品物だった。

「ス、スイカかな……どっちかって言うと……」
「へぇ、高級なイメージのメロンよりもスイカの方が好きなんて、あんたらしいわ。何か理由あるの?」

理由と聞かれて素直に答えるべきか……一瞬悩んだものの、嘘をついても仕方がない。
小学生の頃の古い記憶を辿り、天を仰いで思いを馳せながら口を開く。

「昔さ、俺のばあさん……スイカが好きで毎年、夏になると一玉買ってきては半分に割って一緒に食べたんだ。
二人してスイカで腹一杯にして、『もう喰えん』とか言って笑ってさ……。
まぁ、そのばあさんも去年亡くなっちまったんだけど……」

少しだけ感じた寂しさと恥ずかしさをごまかすために、親指の腹で鼻の横を二、三回引っ掻く。
彼女は申し訳なさそうな困惑した表情を浮かべた。

「ごめんなさい。悪い事、聞いちゃった……」

『いや、別に』と否定しようと思ったとき、彼女の表情が和らいで口元がちょこっとだけ微笑む。
次の瞬間、聞き取れるか聞き取れないかの小さな声が聞こえた。

「でも、あんたのそう言うところ……『けっこう好き』よ」

心臓が飛び上がって思考が停止する。
「えっ? 今、最後のところ、なんて言ったの?」と聞き返したら、
今度は顔を真っ赤にした彼女が大げさに否定した。

「何も言ってないわよ! 耳がついてないかと思えば余計なところはしっかり……
もう、どうでもいいから、そこのカットフルーツ奢りなさいよね」

しっかり聞き取れなかったことを後悔しつつ、「へいへい。奢らせていただきますよ」と財布を取り出す。
バリバリと開いて「……で、メロンとスイカどっち喰うの?」と尋ねたら、とびっきりの笑顔を返された。

「もちろん、大好きな『スイカ』に決まってるでしょ!」


「ツンデレな彼女」

153:この名無しがすごい!
11/01/23 09:58:48 BhW3D33a
「ツンデレな彼女」

「あんたなんか好きでもなんでもないんだからね!」
「あんたのために毎朝起こしにきてあげてるんじゃないんだからね」
「あんたのためにお弁当作ってるわけじゃないんだからね」
「あんたのために一緒に下校してるんじゃないんだからね」
「あんたのために背中流してるあげてるんじゃないんだからね」
「ああああああああああああああんいいいいいいいいいいいい」
こうして僕は高校生にして一児の父親になりました
ツンデレといいながらなにか策略的な強引さを感じずにいられませんでしたが
子供が出来てしまった&親同士がもうこの二人は結婚させようぜと飲み席で約束してしまったこと
いろいろと外堀がうまりすぎてしまったこと、もう逃げられないと悟った僕は十代にして結婚することになったのでした
恐るべしツインデレな彼女・・・いや策士彼女

「天下無敵母さん」

154:この名無しがすごい!
11/01/23 12:00:04 ypQFFE1f
「天下無敵母さん」

うちの母の話をしよう。
負けない。
関西という場で商売人をしているというのに「ねぇもうちょっと負けてよ」というおばちゃんの言葉ににっこりと、
「まかんない」と言い切るその度胸。
そんなだからうちの商品は売れないような気がするんだけど、でも不思議と商品はうれている。
何故って、客が母との「負けろ」「負けない」に熱中して、結局最後には、
「あんたには負けるわ」と商品を買って帰るからだ。
母さんは負けない。

「鳥駅長失踪事件」


155:この名無しがすごい!
11/01/23 20:15:19 Jf6cfSyG
「鳥駅長失踪事件」

「へー、鳥駅長失踪ってニュースでやってるよー。ところで鳥駅ってどこー?」
「ぐぐっても出てこないな。鳥取駅のことじゃないか?」
「鳥取ってどこだっけ?島根といつもごっちゃになって分からないんだよー」
「お前、失礼なやつだな・・・・・・まあ俺もよく分からんけど。
なんでも鳥取県宛に来る手紙は、宛先が『島鳥県』になってることが多いというぞ」
「それどっちの県宛てか分かんないねー」
「まあ殺し屋さんが、人口低下を防ぐため、唯一依頼を受けない県だしな・・・・・・」
「?」
「気にすんな、独り言だ。しかしあの県って確か殆どが無人駅だったが・・・・・・」
「凄いねー。人がいる駅が5本の指以下だよー」
「ゲゲゲの女房効果なんてほとんどないしな。そうか・・・・・・分かったぞ!」
「え、何がー?」
「これはたぶん鳥取駅の誤植だと思うが、こうでもしないと人が興味を持ってくれないニュースなんだ・・・・・・」
「心底せつないねー」
その日も島鳥駅は普通に営業していたという。え?

「独身術」

156:この名無しがすごい!
11/01/24 00:24:32 zx4pBDDZ
#「独身術」

「先生そんな!ひどすぎますよ!」
ぼろぼろの道着をまとった若者が、岩の上にすわる仙人風の老人に食ってかかった。

若者は三十歳くらいだろうか。伸び放題の髪やひげ、そして肉の落ちた手足。
その顔のしわは苦労をしたものに特有で、きっともう何年もの厳しい修行によるものだろう。

「そうですよ先生!こんなの困ります!」
すると、同じような年恰好の若者がもう一人、岩陰から現れて、同じように老人に訴えた。
この出てきた若者も、長く修行生活にあったのだろう。
絡まりながら伸びた髪の様子といい、着ているものの破れといい、初めの男といい勝負である。
彼らは村にいれば男盛りの年ごろだろうに、人里離れたこの岩山で何年暮らしているのだろうか。

「そうですよ!どうにかしてください!」
「先生お願いしますよ!」
見ると、声を聞いて集まってきたようだ。同じような男たちが、口々に岩の上の老人を責め立てる。
彼らのそのみすぼらしい風采といい、人相といい、初めの男と瓜二つ…。

瓜二つ?

「先生、分身術だけ教えてくれても困ります!」
「元に戻る方法は別に修行が必要なんて聞いてなかった」
「早く独身術のほうも教えてください」

#次は「枯れ井戸スコープ」で。

157:この名無しがすごい!
11/01/25 20:48:42 vPxCvAI/
「枯れ井戸スコープ」

我が家の裏庭に枯れ井戸がある
もう何十年も水が干上がってしまっていると、爺ちゃんがいっていた
昔は夏になると井戸水でスイカを冷やしてみんなで食べたと懐かしそうに語っていた
そんな枯れ井戸でも井戸を壊さず保存してる我が家
井戸にまつわる迷信というのは昔から全国各地にあるもので
簡単にいってしまえば井戸を壊してしまうことで発生するかもしれない怪奇現象が怖い
たったそれだけのことだった
確かに何にか物の怪がいるような雰囲気ではある
そんな古井戸と共に生きてきて早二十年!
こんな僕も今年成人式に出席し、帰り際、中学時代同級生だった英子ちゃんと仲良くなれました
英子ちゃんはむっちんプリンプリンな体をしていて、見るだけで前屈みになってしまいます
顔もグラビアアイドルみたいにエッチそうでもうそばにいるだけでお願いしますと頼みたくなってしまうほどです
ある日、英子ちゃんが僕に枯れ井戸を見せてほしいのと頼んできました
僕は二つ返事でOKし、家族が誰もいない日を選んで家に呼びました
当日、彼女は信じられないくらいのミニスカとキャミソール姿でやってきて、僕を誘惑しました
・・・・なんだかんだいろいろありましたが、僕は英子との間に生まれた娘と井戸のまわりを掃除しています
まさか、一発でヒットするとは思いませんでした

「オチが思いつかなくてすみません」

158:この名無しがすごい!
11/01/27 00:07:15 NyrvMIyg
「オチが思いつかなくてすみません」
「待っていたよ」と一人の老人が言った。
彼が誰だかは、知らない。老人は、私が眉根を寄せて渋面を作っているのに構わず、勝手にベラベラと話し始める。
「少し君に意見を聞きたくてね、待っていたんだよ。いや、君でなくてもよかったんだがね、
次にここに現れた者に聞こうと思っていたんだ。で、現れたのが君だったってわけだ。
とりあえず聞くけどね、君の様な、人間には一つの人生があって、それは小説に興す事ができるというのは承知の事実だがね、
いやいや、もしもだよ、地球にも人間と同じように人生があるとするなら、どんな小説になると思うかね?
わしは地球が腹に抱えている生命と言う細胞が、ガンとなり、自信を蝕んでいくという所までは書いたんだが、
先が思いつかないんだ。そのまま殺してやるべきか、それとも、ガンを直すべきか、直すにしても、どうやったらいいものか……」
「ガンなら、その細胞を殺さないと」私は面倒くさ気に言った。
「悪い物ですからね。で、取っ払ったガンの代わりに新しい健康な細胞を移植すればいいのです。
例えば、宇宙人とか。新しい生命が体にマッチしたなら、地球も健康を取り戻す事でしょう」
老人は難しい顔をして、低く唸った。だが、次の瞬間には頻りに頷いていた。
「よし、それでいこう!」
彼は、満足してそう言うと、私に背を向け、どこかへ行ってしまおうとするので、私は急に不安になり、慌てて彼を引き止めていた。
「待って下さい。他人の意見で作った小説が、自分の小説と言えるでしょうか? 私のアイディアをパクらない頂きたいのです。その話は私だけが、作っていい話なのですから。なぜなら私が生んだのですから」
「だが、わしは自分でオチがつけられないんだよ。君のアイディアを是非採用したいのだが……」
「いや、それが貴方のオチなのではないですか。それ以上思いつかないのなら、オチがないのが、貴方の考える、地球の小説のオチなのです」
興奮した私が捲し立てると、老人は引き攣った笑みを顔に浮かべた。「ワナビめ……」

「香り立つ竜彦」

159:この名無しがすごい!
11/01/29 11:28:18 6qGqcvze
「香り立つ竜彦」

職場から歩いて数分の距離に、とある定食屋がある
そこは全定食500円でごはん大盛、おかわりいくらでも、納豆、生卵、お新香取り放題という店だ
そんなわけで昼時はいつも混み合っている
俺の昼の主戦場でもある
安月給の俺はほぼ毎日ここの店で定食を食べる
胃にご飯が入らなくなるまで掻き込み、味噌汁をすする
納豆臭さで上司に怒られるくらい納豆を食べ
主な栄養素は生卵ですと胸を張っていえるくらいに生卵を食べ
お新香は野菜ですと真顔で答えられるくらいにお新香を食う
昼休み一時間を全部使い切って値段以上に満喫して店を出る
俺の一日の食費は500円
俺がいくと店のおばちゃん達の顔が引きつるのはもはやしょうがないだろ
俺が腹一杯で午後仕事にならなくて上司や同僚が呆れるのもしょうがない
二つ名が食べ物の香りで香り立つ達彦なのもしょうがない

「…………」

160:この名無しがすごい!
11/01/31 02:34:05 yyZL9hHD
「…………」

とある居酒屋で俺が聞いた話さな。

「俺はさ、お前以外の女はぶっちゃけモブなんだよ。お前だけしか見てないからよ」
「…………」
「いやほんと、合コンのときの姫ちゃんとか、うん可愛いけどあれだ、人形的な可愛さでさ、化粧美人? お前のにじみ出る素の可愛さの真似は出来んよな」
「…………」
「……な、なあほんと悪かったって。機嫌直してくれよ、な? もう開き直ってどんな言うことでも聞いちゃうからさ?」
「…………」
「なあ、せめてどこに怒ってるのかだけは教えてくれねえか? 俺はほんとどうしていいのか判らねえよ?」
「…………」

男は気づいていなかった。
女が男の口説き文句にうたた寝しているのを。

男は匂い立つほどの美男子で、女は哀愁が漂うほどの醜女だった。
俺はどうにも、何にも感想すら考えられなかった。お前はどう思う? なあうたた寝していた女に口説き続けたお前さんよ。

「喫茶店の屋根で僕は逆立ちをする」

161:この名無しがすごい!
11/01/31 09:56:01 ODqPlj3W
「喫茶店の屋根で僕は逆立ちをする」

「名古屋城だよ」
はっ、今なんとおっしゃられた
「だから、名古屋城なんだってば」
すまない、もう一度言ってくれないか
「だーかーら、名古屋城のまねだよ」
……
どうやら彼はシャチホコの真似をしているらしい。
何からつっこめばいいのか分からないが、このシュールな光景をどうにかしてほしい。
なぜ私の店の上でなのか、どうして魚のオブジェの真似をしているのか、といたいことは沢山あった。
とりあえず、顎を屋根の上に乗せてえびぞりにしろと言ったら、体が硬くて無理だとのたまった。
こんな寒い日に外に出てくだらないことをするなとか、人が集まって来ただとか営業妨害だとか言いたいことは沢山あったが、
その後私がしたことといえば、無視して店の中に入っただけだ。

俺を見ろだとか突っ込み無しは厳しいだとか叫んでるような気がしたが、そんなことはどうでもいい。
些細なことだ。くだらない。
バイトの店員に店を任せ、私は自室にひっこむ。
早まったかなと思いつつ、私は結婚式の案内状をプリンタで印刷する。


「青汁ストレートMヒトミ」

162:この名無しがすごい!
11/02/05 12:27:29 Nn8mEe4v
「青汁ストレートMヒトミ」

ヒトミがコンビニで青汁を買った
ただそれだけだった
彼女はMだから余裕で青汁ストレートを一気飲みできるのだった

「白いスク水に青汁をかけてみたい」


163:この名無しがすごい!
11/02/05 17:44:47 0wHogkvZ
「白いスク水に青汁をかけてみたい」

清い物を「清い」と受容するのは素直な人だと思う。
「清い」と口にすることで、「清いと感じる自分も清い」と見栄を張るのは寂しい人であり、自らの汚れも認めている人であろう。
では、清いものを汚してみたくなる欲求はどんな趣向がそうさせるのだろう?

だがそんな追求は実は不必要で、考えるだけハゲか白髪を生むだけだ。

白いスク水とそれを纏う彼女に青汁をぶっかける。
その衝動と欲求の果てに彼女が表すリアクション―そこまでの妄想とシミュレーションだけで一日の糧となる。

「汚れを汚れとするだかまり」もまた素直な人なのかもしれない。

「だがマズイものをオカワリなんかするものか!」



164:この名無しがすごい!
11/02/06 13:41:34 08cZ68jW
「だがマズイものをオカワリなんかするものか!」

分かる。普段料理など一切しないお前が、想像もつかないほどの努力をして作ったことは、痛いほど分かる。
俺だって出来れば「美味い」と言ってやりたいさ。でも、お前には悪いが、これは美味という感覚からほど遠い代物だ。
正直に不味いと言ってしまおうか。いや、しかし俺の中に眠っている良心ってやつが、それを必死に止めてくる。
とは言っても毎日こんな感じのを食わされるというのは・・・。くそう。

「悪いが、お前とはやっていけそうにない」

165:この名無しがすごい!
11/02/06 16:38:32 pX+u0Gbt
「悪いが、お前とはやっていけそうにない」

寝食を共にし仕事でも常に一緒の相棒から三行半を突きつけられた
いきなりだったのでひどく驚いた
このままずっと今のまま契約が終わるまでやっていくものばかりだと思っていた
しかし、相棒のストレスMAXになったらしい
朝起きていきなり衝撃の三行半に俺は驚き
思わず壁を殴ってしまった
そんなわけで俺は今非常に凹んでいるのである

「昼飯はあの店のラーメンにしよう」

166:この名無しがすごい!
11/02/08 12:50:23 omGcyDCW
「昼飯はあの店のラーメンにしよう」

「今日は休日だし、昼飯はあの店のラーメンにしよう」と親父が言った。
「えーっ、凄い混んでるんじゃない? 止めとこうよ」と俺。あんなところ昼は戦場だ。
「まかせとけって。父さんこう見えてもある格闘家から師匠って言われるくらい、有名なんだぞ。
あんな店、いくら人気店でも楽勝よ」
「んなわけないと思うけどなー。まあ美味しいから行きたいけどね。豚骨がこってりしてるし」
「決まりだな、行くぞ」
 というわけで、親父と出かけたその店は、黒山の人だかりだった。
「いいか、俺について来い。見失うなよ」と親父は言うと、いきなりすばやい動きでカウンターの上に飛び乗り、
全力で他の客の前の、出来立てのラーメンに飛びついた。
「さすが親父! 格闘家の師匠っていうだけあるよな!」俺は思わず興奮して叫んだ。
 しかしどうやら勢いが付きすぎたのか、親父はバランスを崩すと、そのまま横転し、白い豚骨の海に沈んでしまった。 
「親父ぃぃぃぃぃ!」俺の絶叫も空しく、親父はそのまま息を引き取った。
「おい、この店はゴキブリ入りラーメンを出すんかよ!」
 ようやく箸を割ってラーメンを食べようとしていた客が、親父の死体に気付き、店主に食って掛かる。
 仕方がないので俺は、隣の人気のないうどん屋に出直すことにした。

「八百長仮面」

167:この名無しがすごい!
11/02/09 15:33:38 RwZ7tqzX
「八百長仮面」

 今日、ナンパで引っ掛けた女は物をハッキリと言い過ぎる女だ。見た目から
して意思が強そうな感じだとは思った。大方、そういう女には断られるのだが
だからこそ落としてみたくなる、というのも男の本能だ。
 そうして、なんやかんやと笑わせたりおだてたりして居酒屋に連れて入ることには成功した。
何だ、俺に掛かれば一見難しそうな女でも思いのままだとあぐらをかいては見たが、女の態度は
決していいとは思えなかった。
 俺以上に、ワタシイイオンナデショウ、といった尊大な態度で、仕事の話に及ぶとそれがまあ、
上昇志向、デキル女感、自身満々さを全身から溢れさせていた。俺は負けたくなかった。
こういう女を屈服させなければならないとある種の使命感のようなものを胸にたぎらせた。
俺は俺の仕事の話をしようと思ったが、ナンパした女と激論を交わすのは野暮でもあると考えたし、
本気を出すのも大人げないと、考えていたところ女が
「こんなことしなくたって十分もてるでしょうに、どうして?」と言った。
俺は「君だって、モテそうなのに結局は俺についてきたよな」と返した。
女は暇だったから……と気だるそうに二つ折りの携帯を開いた。


168:この名無しがすごい!
11/02/09 15:34:21 RwZ7tqzX
そして、画面をみつめると、俺には絶対向けない関心をたたえた目を携帯の画面に落としていた。
俺はそれが悔しかった。その悔しさから女が携帯を閉じると俺はこともあろうに過去の武勇伝らしき
ものを口にしはじめていた。らしきものというのは、俺は全くモテない。
ナンパも本当に必死だ。モテナイ俺は中学時代、学年のマドンナを後輩にしつこく絡ませ、
そこへ俺がかっこ良く登場し学年のマドンナを最終的には落とすというバカバカしいことをする程にだ。
それを俺に都合良く話を編集して、女に話した。
すると女は「話、八百長くさい」と鋭く指摘するとほろ酔いで
「今会ったばかりで何だけど、かなり今も慣れた男気取っているわよね?仮面?……
って感じよね、その雰囲気が面白くて実は着いて来てやったのよ」と嘲笑った。
「……何だあ?」と図星を突かれてカチンときた俺だが気持ち的にはもう縮んでいた。
「ウフフ……!この八百長仮面!」と言ってさらにからかい挑発してきた。そして女はさらに
「八百長仮面さん、この後どうするの?今ねえ、友達呼んだから一緒に行きましょうよ」と言ってきた。
数分後に現れた友達とは数年前に相撲界で八百長疑惑にて解雇された元力士だった。
俺は、その女と元力士に暴利バーに連れて行かれた。女はそこの店長だった。
酔って、俺の事をずっと八百長仮面と呼んでいたが、その時にはヤクザ化した元力士も気まずそうにしていた。


「消える2月」

169:この名無しがすごい!
11/02/10 11:16:04 AGhVtm+a
「消える2月」

今夜も月が出ている
夜風が俺の体から体温を奪っていく
待ちの光りが俺の肉体をさらけ出す
女のつんざく声音が俺の大事な部分を刺激する
やばい、マジでヤバい、いじってもいなにのにイキそうだ
ああ、もう無理だ、目の前にあった壁に先っぽをこすりつける
ぐりぐり、痛きいい、マジでヤバい、予想以上の快楽だ
女が角オナニーがくせになるのも分かる、自虐的な快感
うおおおおお、ぐりぐりしちゃう、大事な部分と壁が擦れていたい、けど気持ち胃
はぁはぁ、もうもげそてもいい、思いっきり擦る、壁にこすりつける
こうして俺の二月が去っていった
三月に入り俺は病院に入院した
壁に擦りすぎて傷口が化膿し壊疽し始めていたからだ
それでも俺は病室の壁に擦り続けている
やばい、マジでやばい気持ちよすぎるのだ

「神秘の撥水加工」

170:この名無しがすごい!
11/03/08 21:08:09.28 uma89oT5
「神秘の撥水加工」

雨具。
雨や雪などから衣類と体が濡れることを防ぐ撥水性をもった用具である。
古くから傘や雨合羽や長靴の類いは創造され使用されてきたが、二十一世紀を迎えた近代に至っても、完全な物は存在していない。

「あっめあっめ、ふっれふっれ、かあさんがぁ~~」
梅雨時の鬱陶しい空模様の中を楽しげに歌い歩く少女がいた。
「ふぁ~ふぁでおっきがっえうれしぃな~~」
ん?
雨の歩道を僕の方に向かって来る少女の歌声に違和感を感じた。
「ねぇ、お歌間違ってるよ」
目の前まで近付いた少女に思わず話し掛けてしまった。
「いいの。うちのお洋服はふぁーふぁだから、お着替えが楽しみなん」
ふぁーふぁ?
「そうなんか」
なんと答えればいいのか困惑し、相槌をうつことしかできなかった。
「すいません」
ふと背後から女性の声が控えめに割り込んできた。
「その子の母です。実は柔軟剤のことを言いたいみたいなんですけど、そうじゃないんです」
そこまで言われて、ああ、と理解したが真相は違うらしい。
「ファーファなんすか。でも違うって?」
「はい。実は離婚してまして。この子が父親と住んでいた頃は、父親が柔軟剤にこだわりがあって洋服もタオルもファーファでいつもふっくら柔らかだったんです。ですが離婚してからはその習慣もなくなって……」
「そのころのふっくら柔らかが忘れられなくて間違った歌詞を?」
「いいえ」
母親はかぶりを振ってキッパリと言い放った。
「私に復縁を考えさせるため、父親があの頃を思い出させるようにとこの子に教え込んだのです!
雨に濡れたこの子をふっくら柔らかなタオルで吹いてあげた日々。ふっくら乾きたての洋服に着替えさせた日々。この子を囲んで笑いあっていた小さく幸せだった日々……。
そんな手段で復縁を迫るあの人が、私は大嫌いなんです」
涙さえ浮かべて切々と語る母親に、僕がかける言葉はなかった。
「そうっすか」
それだけ答えて親子の前を立ち去った。
数年経ち、子供を持つ身になってみて思うことがある。
雨に濡れた時でも家族の待つ団欒で、着替えにさえ幸せを感じるーーそれが心の撥水効果ではなかろうか。
雨に濡れた子供を叱ったり急かしては分からないことだ。

「驚異の上水道」


171:この名無しがすごい!
11/03/08 21:28:48.19 l1dJ2PBl
「驚異の上水道」

 愛媛では蛇口をひねるとみかんジュースが出ることは良く知られている。
 また、香川では蛇口をひねるとうどんだし汁が出てくる。これもまたよく
知られている。だが、この世にはさらなる上水道が存在しているのである。
「マジ情報なんでしょうね?」
 テレビ局のクルーが何度も確認してくる。まあ信じられないのも無理は無い。
南東北、栃木などという秘境に来たことのある東京都民はほぼいないのだから。
「ここです。この水道です」
 公園に設置された無骨なコンクリートの水道。そこから、信じられないものが
出てくると言う。俺は蛇口をひねった。
「うげえ」「ぐぼあ」「けーー」
 テレビクルーたちはその尋常ではない排出物を見ると、全員が膝をついて
崩れ落ちた。だが、まだ排出は止まらない。どんぶりの中に大量のそれが
満たされる。周囲は吐瀉物に溢れていた。
 そう。吐瀉物。どんぶりに山盛りになっているのは、別名吐瀉物、しもつかれ
である。栃木県民の半数が憎悪するその吐瀉物然とした外見。
 さっそく味見をさせようとクルーの口にしもつかれを流し込む。白目を剥いている
軟弱なクルーもいる。痙攣しているクルーもいる。だが、ここは栃木だ。
 しもつかれを食べねば無病息災は祈れない。食べさせる。胃に流し込む。
それを繰り返すこと三十分。ついにテレビクルーが白旗を上げた。
 残念ながら、この取材の放送はなされず、お蔵入りになった。
 しかしこの世界には、まだまだ驚異の上水道が存在しているに違いない!
負けるなテレビクルー! 都民の知らないおぞましい現実が、上水道で
君たちを待っている! さあ次の取材は沖縄だ。ゴーヤがクルーを呼んでいる!

「5時の夕日」

172:この名無しがすごい!
11/03/09 03:28:01.62 +iHL2GuM
「5時の夕日」

 彼女はぼくの隣の席に座っていた。
 ぼくの席は窓際の一番後ろ。その隣が彼女の席。
 めんどくさがり屋で内向的なぼくと対照的に、彼女は明るくて社交的だった。
 そんな性格なもんだから、授業中にたまにぼくに会話を振ってくる。
「ねえ、ここの解き方教えて!」
「あ、そのストラップ『ウサビッチ』じゃん! あたしも見てる」
「知ってる? 現国の武田って3組の吉田と付き合ってるらしいよ」
 大抵は彼女から一方的に話しかけてきて、ぼくは「へぇ」とか「そうなんだ」
と気の利かない返事をして、会話が早々に終了する。
 めんどくさがり屋で周囲に頓着のないぼくは、彼女の世間話に付いていけない。
 それでももう少し気の利いた返事が出来なのではないか、とその後一人で反省するのが常だった。

 それからしばらくして席替えがあった。
 彼女とは離れ、自然と会話する機会を失った。妙な喪失感を覚え、それからというもの気づかぬうちに彼女の姿を目で追うようになった。
 誰かと話している姿を見ると嫌悪した。
 これが嫉妬だと気づくのに時間はかからなかった。


 いつものように学校から一人で帰っていると、彼女が公園の前で泣いていた。
 そのそばには彼女といつも一緒にいる女子がいる。どうやら泣いている彼女を慰めているらしい。
「気にすることないよ、美香にはもっといい男がいるから」
 そんな声が聞こえた途端、ぼくの中でなにかがはじけた。
 ああ、そうか。ぼくの知ってる彼女はほんの一部に過ぎなかったのだ。
 そして、ぼくの抱いていた感情は実に陳腐であった。

 逃げるように別の道から帰ろうとした時、彼女と目が合った。
 彼女は少し驚いた顔をしていた。それに対して、果たしてぼくはどんな表情で返すことができたのだろうか。

 公園の時計は五時を指していた。
 ぼくと彼女の影は、夕日に照らされどこまでも伸びていた。


「不幸という名の幸福」

173:この名無しがすごい!
11/03/10 00:40:21.99 IhJnh5rK
「不幸という名の幸福」

「暑い。暑過ぎる。ここまで来るともう地球温暖化とかやめて、地球熱体化とかのほうがいいんじゃないか?」
 俺は暑さのせいなのか、元からそういう顔なのか、とにかく顔色の悪い友人に聞いた。
「なんだよ熱体化って……。つーかこれもう罰ゲームだよ! ふざけんなよ、俺が何したんだよ!」
 知るかそんなこと、そう言い返したかったがそんな気力もない。
 俺達が何故こんな何故つらい思いをしているのかというと、それは教室のエアコンが壊れたからだ。
 しかし、何故壊れているのだろう。あながち何かの罰ゲームなのかもしれない。が、俺には何か悪いことをしたつもりはない。
 何もしていないのに罰を与えるとは、なんということだろうか。おそらくそれは罪だ。そして罪には罰だ。
 もしこれが本当に罰だったら俺は与えた人物に天誅を下そう。

 こんな下らないことを考えている内に友人が俺に声をかけた。
「なぁ、このまま文句言ってもしょうがないからこの地獄の中から楽しみを見出そうぜ」
「なるほど、それは名案だ。だけどこの地獄からというと至難の業というか、多分無理だ」
 そう、答えると友人は卑猥な笑みを浮かべた。うわ、気持ち悪い。この笑顔のせいで更に暑くなりそうだ、くたばれ。
 友人は目線をあるところに向けた。そう、女子だ。正確には女子の背中。つまり汗で制服が濡れて下着が透けているということだ。
「素晴らしい」
 俺は思わず声を出してしまっていた。しかし、素晴らしい。黒の下着のようだ。一瞬だけだが、俺のはここが楽園に感じられた。
 一瞬だけ。もう終わった。地獄が舞い戻る。「はーい、戻ってきたよー」と。死ね。
 
 こうして女子の下着を覗いてる内になんだか頭の中がもやもやとしてきた。なんだか頭が軽い。
「ねぇねぇ!もうちょっと下着をしっかりと見してよ!」
 バカな。暑さでとうとう頭がおかしくなったのか。俺は驚きながら友人の方に顔向けた。
 しかし、友人も驚いた顔で俺の方を向いている。
 見るな、バケモノ。頭が悪くなるわ。いや、違う。何故俺の方を向いている。
 まさか、さっきのは俺言ったのか!?
 どうやら、そうらしい。クラスメイトの目線が氷点下だ。
 わぁー涼しいー、ってそれどころではない。
 俺はとっさに「これは罰ゲームだ」
 そう言ったが目線が冷たくなるだけ。
 もう忘れよう。そう思い俺は机に伏せて寝ることにした。起きたときは汗をかいて地獄だろうが、この空気よりましだ。

 

174:この名無しがすごい!
11/03/10 00:41:23.98 IhJnh5rK
お題忘れたスマヌ

「夜空の星の代わりになるもの」

175:この名無しがすごい!
11/03/10 19:16:35.70 yeiL1cYi
「夜空の星の代わりになるもの」

「星空ってどんなものなの?」
盲目の少女は思いきった様子で尋ねてきた。
問われた家庭教師は困惑してしまった。
手近な物や他の感覚で代替して教える事が叶わない夜空。特に星の瞬きや輝きや空の広がりを伝えきれないためだ。
「空に宝石が散らばっている、という想像はできるかい?」
「空が広いことは知っているわ。丘に連れていってもらった時に、頭の上に風が渡って手を伸ばしても天井を感じないくらい高いんでしょ」
漠然としすぎた取っ掛かりは見事に空振りだった。
彼女の好奇心は常に湧き出てくる。
そのため、地球を抱く宇宙や地球同様に存在する太陽や恒星・惑星・月や衛星や人口衛星も一般常識以上に理解はしている。
だからこそその光景を知りたがったのだ。
家庭教師は悩みに悩んだ。
ふすまに穴を開けて簡易プラネタリウムを作っても彼女には不十分な説明だろう。
一ヶ月近く回答を保留し、一つの形にまとめてみた。
「いいかい? 今、北側の夜空を見上げているよ」
食卓に段ボールの板を立て、彼女を食卓の淵に鼻が付くように座らせて家庭教師は説明を始めた。
「北の夜空は北極星を中心に星達が円を描くように動くことは教えたよね? だからまず北極星を見つけてみよう」
言いつつ彼女の右手を段ボールの底辺へ誘う。
「ここがこの辺りの真北。背の高い山が連なる辺りだ」
「地図で教えてもらった山脈のあたりね」
「そう。そこから目線を上げていくと……」
ツツツっと底辺から垂直に立つ段ボールの手前面をはい上がらせる。
途中にあるデコボコに少女は怪訝な顔を表すが、家庭教師は目的地まで止まらずに彼女の指を這わせていく。
「ここに大きな玉があるのが分かるかい? これが北極星だ」
「ああ! 今までのデコボコや粒々は星だったのね。北極星は他のより大きくてよく分かる!」
「そうだ。大きくて光が強いから北の空を見るとすぐに見つかるんだ」
家庭教師は続いて北斗七星・大熊座・カシオペア座……と説明を続けていく。
「これが、北の星空なのね」
少女は説明をなぞるように北極星から他の星座を何度も何度もなぞる。
「これが空に広がっていて、輝いていて、地球から見上げているなんて、きっと素敵なんでしょうね!」
ビニールを貼った段ボールに埋め込んだ砂やビーズやビー玉。見た目はガラクタかゴミにしか見えないが、彼女には満点の星空となった。

「夜明けのパントマイマー」


176:この名無しがすごい!
11/03/23 16:27:23.27 TicwhsVX
「夜明けのパントマイマー」

 うちの学校の新聞部は、広報機関であると同時に、ある種の諜報機関でもある。
たとえばXファイルみたいな、超常現象を解明する組織があると思ってくれれば、
あまり見当違いではない。
 そして新聞部は、超常現象を単にP2(ピーツー)と呼ぶ。Paranormal Phenomena
(超常現象)には、Pが二つあるからね。
 僕は、そのP2を探す役目を持っている。オカルト部と科学部も兼部していると言え
ば、意味が分かるかな? 要するに僕は、面白いことに、ゴーストバスターズみたい
な組織に「所属」しているんだ。
 そして素晴らしいことに、ありがたいことに、僕らの仕事が無くなることは決して
無いだろう。この学校の周辺にある都市は、何故か不自然に歪み、軋み、いまも
「異常」に満ち溢れているのだから。

 夜明けにP2が現れる。それは、唐突に流れた噂だった。
 噂の流布にはいくつかのパターンがあるが、「どんな」P2なのかではなく、
「どこに」でもなく、「いつ」だけが噂になるというのは珍しい。推察するに、
その出現は場所を転々とし、見る者によっても感じ方が変わるのだろう。だが、
実際に見てみるまでは、予断は許されない。
 コードネーム、夜明け。僕らは、毎晩、張り込みを続けた。

 待つこと一週間。ビルの屋上にそいつは現れた。仲間に報告するも、距離が遠い。
 そいつは人の形をしていた。そして、何も無い空間を撫で回していた。と、そこに
そいつが飛び乗る。その行為はまるきり自殺に見えた。だが、そこにはブロックが予め
置いてあったかのように、不可視の足場が存在している。そして、また、そいつは何も
無いところを「パントマイム」し、そこに移動した。間違いなく、そいつはビルの屋上
から別の屋上へと、道路の上空を横断しようとしていた。

 僕はカメラのシャッターを切った。うまく写っていればいいのだが。
 そして僕は、ビルの屋上に向かって走り出した。エレベーターを待っていたのでは
間に合わない。階段を駆け上り、扉の取っ手についた鍵を銃で破壊し、ついにぼくは
屋上に到達した。
 
「動くな」僕はもうすぐこちら側のビルに渡り切ろうとする、そいつに銃口を向けた。
「お前はP2、『夜明けのパントマイマー』と命名された。これ以上の行動は我々との
敵対を意味する。降伏しろ」ほとんど無意味な定型文を口に出す。と、思いがけず、
そいつは言葉を返してきた。

「そう。私はパントマイマー。私の故郷では、誰もがこの力を持っている。それを
あなたがたに伝えたかった」
「お前の故郷に興味は無い。とっとと消え去れ」言うまでも無く、そいつの姿は朝の
日の光に包まれ、消え失せようとしていた。
「そう。<あなた>も、この力を、持っている」消える間際に、そいつはそんな台詞を
漏らした。「なんだと?」僕は問い返したが、もうそこには、夜明けのパントマイマーは居なかった。

「可能性の麦束」

177:この名無しがすごい!
11/03/26 15:45:01.71 0QGl2rLo
「可能性の麦束」

 一枚の絵になりそうなのどかな風景の中を、私達は車で走っていた。
 見渡す限り一面の麦畑が初夏の風に優しく揺れ、金色の海を連想させた。
 周りに人家はまったくといっていいほどなかった。どこまでも続く、麦、麦、麦。
 どこか遠くで鳥の鳴き声が聞こえた。
「とても30年程前あんな悲惨な大事故があった場所とは思えませんね。凄い豊作じゃないですか」
 私は案内をしてくれている、運転席の農夫に話しかけた。
「お前さん、何も分かってねえな。この麦は作っても一切食えねえ。国が買い上げて、処分するために作っているんだ」
「えっ・・・何でそんな無駄なことをしているんですか?」私は衝撃を受けた。
「いいか、一度放射能で汚染された土地は、ちょっとやそっとじゃきれいにならねえ。
しかしこの特殊開発された麦は、土壌の放射性物質を取り込み、土地を浄化してくれるんだ」
「へえ・・・そうだったんですか。でもそれって延々と続くんでしょう?空しくなることってありませんか?」
「俺も農夫だ。作って捨てるだけのものを育てるなんて、最初は空しい作業をしていると思ったが、今じゃ未来のためにしている、最も意義のある仕事だと考えるようになったね」
「なるほど、これらの麦は皆、未来への可能性の麦束なんですね」
「ははっ、そういうことだ。お前さんも分かってきたじゃねえか」
 年老いた農夫は日に焼けた顔に笑みを浮かべた。北国の日は初夏といえどもう沈み始め、麦畑は鮮やかな朱金色に輝いていた。

「桜の樹の下には」

178:この名無しがすごい!
11/03/29 13:01:17.48 MwYsbpRn
「桜の樹の下には」

 横島ツカサ、あるいは通称、邪(よこしま)は、学校最大の部活動、平安部(ほとん
ど何もしない部活)を束ねる、現代の陰陽師である。薙刀高校の学園七不思議を語らせ
るのに、これほどの適役はいまい。邪は、制服が良く似合う背の高い美少年である。
 風が、吹く。入学式も終わり、花を散らしたあとの緑色の桜並木。葉と葉が互いを
打ちならし、ざあざあと雨のような音を響かせる。
「校内に植えられた桜の中で、特に最も古いこの桜の樹は、犬桜と呼ばれているので
おじゃる」
「はあ……」とりあえず頷いておく。
 いままさに入部試験―学園七不思議のレポート提出―を受けている、何の装備も
無い新聞部員としては、頷くくらいしかできることはない。
「江戸の太平の世に、ある剣豪が愛した犬がここで死んだのでおじゃる」
 邪は、歌うように言葉を紡ぐ。扇子を取り出し、流れるように開き、その顔を隠す。
そして、ほほほ、と笑う。
「剣豪は己の刀を質に入れ、愛犬を失った悲しみを紛らわそうと、その場所に桜の樹を
植えたのでおじゃる。それゆえに、この桜の樹は犬桜と呼ばれているのでおじゃる」
 いちいち語尾がうっとおしいが、その薙刀高校の伝承についての知識には舌を巻く。
口伝で現代まで語り継がれた犬桜の他にも、平安部は多くの伝承を伝え持っているに違
いない。
 しかしながら新聞部の入部試験を受ける身としては、過去の七不思議のレポート以上
のことを引き出さねばならない。七不思議とて、永劫普遍のものではない。噂は風化し
たり、新しく追加されたりするものだ。この入部試験はその点を試しているのではなか
ろうか。
「それで、犬桜が学園七不思議である理由とは?」
 そう尋ねたところで、桜の樹の影に隠れた、一匹の犬が目に入った。不自然なほどに
白い犬だった。その犬は邪の足元に走り寄り、おすわりした。
 気を取り直して、僕は質問する。
「それで、犬桜が学園七不思議である理由とは?」
 犬は、邪と僕にしばし見つめられると、嬉しそうに一度くぅんと鳴き、桜の樹をぴょ
んぴょんと駆け上がり、そして消えた。僕は自分の目をこすった。
「それは、諸君ら新聞部がP2と呼ぶものが、時と場所さえ選べば、誰の目にも見える形
で顕現するからでおじゃろう」
 また風が吹き、桜の樹がざあざあと揺れる。扇子を構えて、邪はほほほと笑う。僕は
必死で記憶に集中し、メモ帳に今起きた体験を記述する。
 己の目を信じるならば、この桜の樹の下には―確かに犬が埋まっているのだ。

「最終バスが行ったあと」

179:この名無しがすごい!
11/03/29 18:46:05.20 l9gn58Em
「最終バスが行ったあと」

深夜午前零時十五分
駅から最終バスが発車した
俺はそのバスを見送る
バスの中にはさっきまで一緒にいた彼女が乗っている
さっきまで、黙ったまま見つめ合い別れた彼女
バスがロータリーから出て最初の交差点で右折した
と、同時に耳をつんざくような音がした
さっき右折したバスから黒煙が上がっていた
バスがガス爆発したのだ、違った
とにかく黒煙がもくもくと上がっている
俺は急いでバスへと走り出した
まわりの人たちも走り出す
バスの正面に大型トラックが突っ込んでいた
バスの中ほどまでトラックは食い込み、トラックの後部から炎が上がっている
隣りに鋳たおっさんが携帯を取りだし、電話している
おそらく消防か警察
俺はバスの側により、大声で彼女の名前を叫んだ

「始発バスが発車するまでに、出来ること」

180:この名無しがすごい!
11/04/03 15:05:40.23 8JZXQ4m9
「始発バスが発車するまでに、出来ること」

 4月4日。僕は初めて高校に登校する。今日は入学式がある。遅刻は許されない。
 親の車に乗り、最寄りのバス停ではなく、バスの停留所に向かう。到着。
 そこには、既にエンジンをスタートさせ、暖房を効かせたバスが停車している。
まだ運転手の姿は無い。発車前に、短い休憩を取っているのだろう。
 バスの扉を押し開け、中に入る。中は暖かい。扉を閉める。最後尾まで歩き、
誰も乗っていないことを確かめる。僕が一番乗りだ。
 最後尾の一つ手前、扉の側の向かいに、僕は陣取る。誰が入ってきたとしても
こっそり目視できる位置だ。そして、僕は待つ。
 ドアが開き、誰かが入ってくる。ショートカット。女子の制服。僕と同じ学校だ。
「おはよう」
 僕は一言声をかける。予想外の挨拶に、彼女は吃驚したようだった。ある意味で、
僕はこの反応を楽しむために、早めにバスに乗りこんだのだった。
「おはよう。同じ学校なんだね」
「うん。よろしく」
 互いに名乗りこそしないが、また何度か会う機会もあるだろう。入学初日として
は、悪くない。
 それからぽつぽつと乗客が増え始め、僕たちは学生や社会人の中に埋もれて
いく。発車の5分前に、バスの運転手がやってきて、バスの料金表示パネルの
電源を入れる。僕はガムを取り出し、口に放り込んで、噛み始める。噛んでいる
うちに、バスの発車時刻になる。
「始発バス、出発します」
 運転手が無線機に向けて呟き、バスがゆるゆると動き始める。僕は横目で
さきほど挨拶した彼女を見やる。彼女は、携帯プレイヤーのイヤホンから
流れ出る音楽に、目を閉じて聴き入っているようだった。
 僕はガムを噛みながら、彼女がどんな曲を聴いているのだろうかと想像した。
もしまた早朝のバスの中で出会ったら、それを質問してみることにしよう。

「早期覚醒」

181:この名無しがすごい!
11/04/06 22:56:44.53 ZrjM0BgM
「早期覚醒」

気が付くと両親がいなかった
気が付くと友人たいなかった
気が付くと・・・僕を守ってくれる人が誰もいなかった
気が付くと・・・・・・・・僕の周りから人がいなかった

牧人新が自分の変調を気付いたのは小学校6年の頃だったと思う
夏休み直前の教室で、僕はキレたのだ
隣り席に座っていた、仲のいい友達に・・・キレた
キレたきっかけは今に思えば幼い
ただ、親友が僕の大切な消しゴムを折ったから
そう真ん中からぽきりと消しゴムを折った
それを見た瞬間、僕は席から立ち上がり親友を殴っていた
僕の拳は彼の頬に当たり、口の中で何かが折れる音がした
倒れる彼にまたがり僕は彼の顔を殴った、何度も何度も殴った
教室は静まりかえり、先生が僕を羽交い締めにし僕の暴走を止めた
僕が殴った親友・・・華が変な方向にまがり、口からは血の泡を吐き出していた
目からは大粒の涙をだし、目の周りには青紫のクマが出来ていた

僕は先生に連れられて校長室にいった
校長室には校長と教頭、学年主任、そして僕を止めた先生が僕を睨んでいた
校長たちの説教は数時間続き、眠くなってきたころ母親が校長室にやってきた
先生が読んだのだろうか、母親は目に涙を溜めながら何度も何度も頭をさげいた

学校からの帰り道、僕は母親とラーメン屋に入った
普通の赤暖簾がかかているラーメン屋
間違ってもネットで評判にならないタイプの店
僕と母さんはラーメンを頼んだ
母さんの目はまだ赤く腫れていた
僕は悲しくなり素直に謝り、言い訳をした

「続きはまた明日」

182:この名無しがすごい!
11/04/07 01:50:18.18 MR5d4b/7
「続きはまた明日」

駅舎のあかりを消した私は、社員寮へ歩いていた
私が車掌として乗っていた電車は、一日の疲れを駅でほぐしているようだ
朝から呻らせていたインバータも、今は眠りについている
「はぁ……」
今日もよく、働いた。自分で自分をほめてやりたいくらいだ



そういえば、私が大学の仲間とキャンプしたとき、深夜に列車がはしる音を聞いた記憶がある
規則正しく、しかしながらどこか人間臭いように感じる足音だった
あれももう、二昔も前になってしまった
「光陰矢のごとし、か……」
こうやって車掌として鉄道業務に関わると、あの列車の運転士がどれだけ辛いかがわかる
いまや主流になりつつあるワンハンドルではなく、加速・減速と二つのハンドルをうまく使って動かしているのだ

自分には、できない仕事だ


しかしながら、こうやって車掌をしていると自分もなかなかすごいことをやっているのだな、と思う
田舎の駅にいけば、子どもからは羨望と尊敬が混じった瞳でみつめられ、街の駅ではよく質問をされる
これも、立派なことなんだろうか

遠くで規則正しい足音が聞こえた
私は目をほそめて夜間停泊している電車をみる

―走りたいか、明日も
―ああ、そうだな
電車がそう、答えた気がした


「そうだな……でも」
「続きはまた明日だ」
じゃあな。いつかまた、会おうじゃないか

「仲直り」

183:この名無しがすごい!
11/04/09 22:21:01.48 xIa4E5JY
「仲直り」

 人類とフォーリナーが戦闘を開始してから、200年が経つ。
 人類とは異なる価値観を持つフォーリナーたちは、宇宙に進出した人類を見つけ次第、
片端から駆逐していった。人類はこれに対抗するために<大同盟>を結成。人類全体は、
いやおうなしに宇宙戦争へと駆り立てられた。
 フォーリナーテクノロジーの解析によって、技術力の差を徐々に埋めた人類は、宇宙
艦隊を創設。建造された宇宙船の数は、大小合わせておよそ10万隻。配備されたのは
100万発の核ミサイル。人類は、種が滅びる前に、かろうじてフォーリナーに戦力的
に追いついたかに見えた。
 だが、それを倍するフォーリナーの船団がワープアウトしてきたことで、人類は絶望
的な戦いを強いられることになった。相次ぐ破滅的な会戦の後、フォーリナーと人類は
互いに消耗し合った。宙域は核の放射能によってほぼ永久に汚染され、戦線に近いコロ
ニーは生物の住めない廃墟と化した。
 戦争は人心をも荒廃させた。一生を不毛な戦争の中に生きるという苦痛は、人類とい
う種をも蝕み始めていた。子供は生まれながらに兵士となることを期待された。人類を
人類たらしめていた独自の文化の数々は、あまりにもか細く弱っていた。
 そんな中、突如、講和への道が開かれた。
 フォーリナーの言語解析研究がついに実を結び、完全とまではいえないものの、会話
を行える翻訳機―ほとんど人工知能に近い―が完成したのだ。
 それまでにも、人類は何度も説得を試みていた。フォーリナーが知的生命体ならば、
何らかの講和の道があるはずだと信じて。
 時にわざと捕虜になり、フォーリナーの生体を観察することもあった。だが、フォー
リナーたちは捕虜の前に姿を見せず、また、正確には、捕虜を一切取らなかった。捕虜
は皆、隔離され、20時間以内に殺されるのだs。
 だが、今回は言葉という武器がある。フォーリナーの言葉で、講和の道を訴えること
ができる。誰もが、戦争が終わることを期待した。
 全宙域に、全帯域に、最強度で響き渡る電磁波。それが乗せるのは、変調された、フ
ォーリナーを真似た疑似音声だった。
 「仲直りをしましょう。仲直りをしましょう。仲直りをしましょう……」
 そして、ついに200年間の沈黙を破って、フォーリナーは人類に答えた。
 「仲直りをしましょう」
 その一言の後に、全ての戦線に沈黙が訪れた。どこにも核ミサイルを撃つ船はいな
かった。どこにも陽電子砲を放つ船はいなかった。どこにもレーザーを放つ船はいな
かった。本当に一切の砲声が止んだのだと、後に人類側の提督は語っている。
 人類はその日、戦争に、フォーリナーに、否、不毛なる闘争の時代に勝利したのだった。

「猫と雷鳴」


次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch