11/01/09 11:00:06
<医薬品副作用>救済、抗がん剤の死者も 民主議員ら検討
毎日新聞 1月9日(日)9時45分配信
国の医薬品副作用被害救済制度に「抗がん剤」による死亡を含めるよう見直しを求める動きが出始めた。
昨秋には民主党国会議員による勉強会も発足、制度改正の検討を開始した。
抗がん剤は副作用がほぼ避けられず、現在は制度の対象外になっているが、東京、大阪両地裁が7日に和解を勧告した肺がん治療薬「イレッサ」訴訟の原告・弁護団も、死亡した場合は救済対象に含めるべきだと主張している。
医薬品副作用被害救済制度は80年、整腸剤による副作用が問題化した薬害スモンを教訓に法制化された。
薬を適正に使用したのに死亡や入院相当以上の健康被害が生じた場合、最高約2380万円の遺族年金や障害年金などが給付される。
財源は、国内すべての製薬会社と薬局製造販売業者8340者が出荷数量などに応じて分担する拠出金で、09年度総額は約38億円。
健康被害を受けた人からの申し立てを受け、厚生労働省の審議会が薬の使用状況などを審査し、09年度は1052件の請求に対し861件(総額約18億円)が給付対象になった。
抗がん剤を対象から除外している理由について、厚労省は
「重い副作用が起きる確率が高いうえ、代替の治療法がない患者が使用する場合も多く、副作用は受忍せざるを得ないという考えに基づいている」と説明する。
最近は抗がん剤も進歩し、一部では副作用も軽減されてきているが、強い薬剤であることには変わりない。
弁護団の水口(みなぐち)真寿美弁護士は
「がん患者は残された命を大切にしたいという切実な思いで抗がん剤を使う。死亡被害まで受忍すべきだとする理由はない」と反論した。
民主党議員の会は昨年10月、約50人で発足、抗がん剤の副作用にあった患者らからヒアリングを進めている。
同会の事務局長を務める本多平直(ひらなお)衆院議員は「がん患者の立場に立った制度の在り方を検討したい」と話す。
抗がん剤を販売する大手製薬会社の幹部は「延命目的で抗がん剤を使用する末期がん患者の場合、死亡原因が薬による副作用か、がんなのかを区別するのは難しいが、企業として被害者を見過ごすこともできない。
拠出と給付のバランスが取れ、制度が維持できるならば実現も可能ではないか」と話している。【佐々木洋】