09/11/22 20:19:05
姫宮邸
亜弓(部屋の中が暗い。今日は曇っているの?日差しが温かい。
ああこの感じ…晴れてるきっと眩しい程に明るい。はっきり見えたり見えなかったり…
いつも視界が不安定。でも日差しの温もりで晴天がわかる。
気づかなかったわ今まで…この皮膚の感覚…日差しを覚えてた)
お茶を手元が狂ってテーブルから落とす亜弓。ばあやが心配しても一人で歩いて稽古に出かける。
亜弓「ついてこないで!一人で歩きたいの。それにねばあや。舞台の上では私はいつも一人。
ばあやにお供なんかして貰えないわ」
(そうよ…わたしはひとり…いつだってひとり…いつだって舞台の上ではひとりで闘っている。
まただわ。ふいに霞がかかったようにぼんやりとなる…別の世界になるようだわ…
目を閉じれば人の会話に
車の音…音の洪水。人の動く気配 通り過ぎていく人の匂い。近づいてくる音遠ざかっていく音…
目を閉じていても距離感はわかる…空気の音に人の気配…音…大丈夫…!私はやれるわ…!)
劇団オンディーヌ新東京スタジオ
「さあさ皆の衆、大神様のシルシを受けてくだされ。頂いたものは無病息災、長寿延命、福徳円満」
「シルシを!シルシを!紅を!紅を!」
シルシを求め集まってくる人が霞んで見える亜弓。
亜弓(どうしよう…手元が狂ったらきっと目の事を気づかれてしまう…息遣い…?ではきっと…ここ)
震える手で額を指し何とかやり過ごす。
(大丈夫…!芝居をやれるわ…!)
休憩に入り床に落ちてる台本を気づかずに踏んでいく亜弓を見てハミルが驚く。
(やるわ…何としてもやってみせる…!「紅天女」!私の阿古夜…!)