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『煮解賭(にげと)』
明朝末期、中國北東部の男達の間で、素麗建(すれたて)なる遊びが流行していた。
先端に話題旗をくくりつけた棒を地面に立て、合図と共に棒に駆け寄りに旗を奪
い合うという、己の機敏さを誇示する遊びであった。
やがてこの遊びにも飽きた者達が、毒草を煮込んだ煮汁を飲み、その解毒剤を旗
代わりにして奪い合うという競技に発展させた。
これのせいで命を落とす者が続出したが、競走に勝利したものは現人神として賞
賛され、朝廷に仕える者を輩出するほどであった。
この、解毒剤を賭けた戦いは「煮解賭」と呼ばれ、時代を左右する勝負の場でも
最も信頼できる、決定権獲得試合として行われてきた。
己の速さを誇示できることの少なくなった現代社会においては、電子掲示板などで
「2ゲットォォ!」と、機会を変えて、現代人が機敏さを争っているのかもしれない。
(民明書房刊 「DNAに刻まれた勝負心 現代人の奇行のルーツを探る」より)