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「東京鬼祓師 鴉乃杜學園奇譚」の物語をより深く知るためのショートストーリー
「東京鬼祓師 鴉乃杜學園奇譚」序乃零
作:渡辺 圭子(EDEN'S NOTES)
監修:川嵜 暁(ATLUS)
封札師達の出会いはどのようなものだったのか。。。?
燈治と弥紀はなぜ打ち解けるようになったのか。。。?
◆零&いちる編
初篝の邂逅(はつかがりのかいこう)
初篝の邂逅
なぜ、自分はここにいるのか?
なぜ、皆と同じではないのか?
なぜ、自分の日常だけが違うのか?
答えのでない問いを秘めながら生きる彼女に、ある日、光が射した。
「武藤、ちょっと職員室に来なさい」
HRが始まる前に、武藤いちるは担任教師からの呼び出しを受けた。
わけもわからず職員室行くと、教員たちの目が一斉に彼女に突き刺さる。
この視線の意味するところは大層身に覚えがある。小さい頃から、それはもう、
何度となく向けられた異端を見る好奇と嫌悪の眼差し。
秘密がばれたのだと、いちるは悟った。
高校三年生の秋……あと半年もすれば何事もなく卒業できると思っていたいちるは、
その望みがなくなったことに身を固くした。
そんな彼女の気持ちを知る由もなく、担任教師はスッと一枚の切符を差し出す。
それは、彼女が望んだ平穏な日常との別れであり、自分を偽ることのない非日常の始まりだった。
「はあ……遠足でもないのに、なんでこんなところに……」
いや、遠足だろうが修学旅行だろうがこんなところに来やしない。
青木ヶ原――別名、富士の樹海ともよばれる、いわく付きの原生林である。
都会ではやっと木々が色づき始めたくらいの時期、富士の麓であるここは、
肌寒いほどの風が吹いていた。
教師から手渡されたのは、富士麓の駅までの片道切符だった。
何らかで選ばれ、何らかの研修だか試験だかを受けるのだと聞かされたが、
正直内容はよく分からなかった。
疑問はあったが不安はなかった。
自分の存在そのものが異質である自覚が、いちるにはあったからだ。
この眼は常人のそれとは違うものを見る。