09/09/14 04:51:55 w9t63DBY
ここは、スパロボオリジナルキャラの子供達の成長を暖かく見守るスレです。
子供の設定(年齢性別や立ち絵)及び他キャラの両親の設定、搭乗メカの設定等、 各職人さんにお任せします。
が、>>2に記載されている禁止事項、推奨事項、更に議論討論板などには目を通しておいてください。
※ 重要事項 ※
現在、新キャラ規制及びサルベージ対象キャラは一時的に解放されています。
新キャラの乱立や無理のあるサルベージにならないよう気をつけてください。
<<まとめサイト>>
URLリンク(banpresto-srw.com)
URLリンク(www.geocities.jp)
≪議論討論板≫
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)
<<人物辞典>>
URLリンク(www.geocities.jp)
URLリンク(zeradlove2005.hp.infoseek.co.jp)
<<お絵かき掲示板>>
URLリンク(bbs4.oebit.jp)
URLリンク(banpresto-srw.com)
<<前スレ>>
ゼオラとアラドの子供マダァー? 二十九代目
スレリンク(gamerobo板)l50
<<過去ログ(Jane)>>
URLリンク(u3.getuploader.com)
2:それも名無しだ
09/09/14 04:56:11 w9t63DBY
現在までの登場人物
アラド&ゼオラ→ゼラド(姉)&アオラ(弟)
ゼンガー&ソフィア→ゼフィア(♂)
トロンベ&スレイ→スレイチェル(イグニッション)
イルイ&???→イルス(♀)
ブリット&クスハ→クリハ(♀)
セレーナ&ルアフ→レイナ(♀)
セレーナ&ルアフ→レイナ(♀)
アイビス&???→アイミ(♀)
トウマ&ミナキ→トウキ(兄)&ミナト(弟)
ギリアム&ヴィレッタ→ヴィレアム(♂)
リュウセイ&マイ→マリ(♀)
リュウセイ&ラトゥーニ→リトゥ(♀)
キョウスケ&エクセレン→レモン(長女)&アルフィミィ(次女)&タカヤ(長男)
ハザル&ルリア→ハザリア(兄)&ルル(妹)
アルマナ&クォヴレー(?)→ルナ(♀)
キャリコ&スペクトラ→キャクトラ(♂)
シュウ&サフィーネ→シュウヤ(♂)
シュウ&モニカ→クリストファー(♀)
孫光龍&孫龍王(真・龍王機)→孫真龍(♀)
ジョッシュ&グラキエース→ラッシュ(弟)&ラキア(姉)
イングラム&ヴィレッタ(未確定項)→イングレッタ(♀)
アークライト&セレイン→レラ(♀)
ジーク&光珠→アークorジキミ(♂)
秋水&サリー→咲美(♀)
タスク&レオナ→レタス(♀)
ケイサル・エフェスの孫→ルサイケ(♀)
バラン・ドバンの孫→ラン(♀)
カズマ・アーディガンのライフデータ→マーズ(ロボ)
マサキ&リューネ→マキネ(♀)
マサキ(ランドール)&ウェンディ→ランディ(♂)
ユウキ&カーラ→ユウカ(♀)
ラウル&ミズホ→ミズル(♂)
フィオナ&ラージ→ラーナ(♀)
紫雲統夜&カティア→克夜(♂)
ランド&メール→ランル(♀)
3:それも名無しだ
09/09/14 04:57:03 w9t63DBY
その他
アラド、ゼオラ、クォヴレー、イングラム、ゼンガー、トロンベ 他保護者の方々
ディストラ姉さん、アストラ兄さん、龍王姐さん、ガンスレメイド隊(A~F) 、龍鱗機、XNガイスト など人格持ち機動兵器
αビンボーズ、αユーレーズ などディス・レヴに住まう方々
ラミア、ヒューゴ、アクア、アクセル、ルアフ 他教師の方々
その他、因果地平の彼方へ消えていったキャラ達等は人物辞典参照
※禁止事項※
・新キャラの追加は一時的に解放されています。(新キャラと既存キャラの基準は人物辞典に登録されているか否かです)
・放置キャラのサルベージも同様に開放中です。過去に名前だけあるいは一発ネタだけでしか登場していないキャラクターの再利用も可能となっています。
・新キャラ規制についての意見は議論板にてお願いします
推奨事項他
・主役は子供達全員です。でも、バランガ一家が中心にいる方がいいかも。
・嫌なネタはスルーの方向でお願いします。
・過去のネタと矛盾は極力抑えましょう(過去ログに事前にしっかり目を通しましょう)
・版権キャラは…まあ、控えめにね、あくまで主役は子供達なんで。
・その他議論は本スレではなく議論板で
・ハザリアが好きな職人さんはなるべく半角を使って819ランをさせてあげましょう
・職人の自分語り、投下に対しての質問も議論板でお願いします
4:それも名無しだ
09/09/14 04:58:51 JEXMGI8V
今宵もベッドの上で精子が飛び交う
5:それも名無しだ
09/09/14 05:35:15 mlJRLsZx
まだこのきもいスレあったのか
6:それも名無しだ
09/09/14 06:39:09 lZc4xXyL
これは酷い
荒らしや屑がいれば、こんなのもいるのかw
7:それも名無しだ
09/09/14 07:58:17 6BoOOF3A
>>1乙!スレ立て俺も挑戦していたんだが規制されてて無理だったorzありがとう
8:それも名無しだ
09/09/14 08:53:53 STHsdiiF
【前スレの流れ!】
29代目スレ顕在!そして初代スレの思ひ出! →留年の危機!マジ説教される子供たち!
→シュールの極み!ハスキーアヤ! →エースボーナス!ショボいほうが萌える! →
ゼラドの告別式!?そして終わらない虚乳! →逆ハーレム!生徒会長は胸元を露出すべき!
→感涙!ハスキーアヤが玉となす! →貴腐人!あまりにも完成されたおばさま方! →
動き出す時間!ゼラドの微妙な21歳! →昇竜拳世代狙い撃ち!スパロボNEO発表! →
オーダーメイド!ラーナに納品するガンスレ! →騒音!それでもアヤは玉になる!
→ワザ。ワザ!拳で語れラーナとランル! →追悼!ノアの象徴は咲美の中に! ガマン
大会!そんなことよりラザニアヒャッホー! →おせっかいタカヤ!連れ込み疑惑!
→父の日!自由を愛するシュウはプールではしゃぐ! →むらたボックス!そしてすっと
ばすランディ1/2! →朝の風景!朝夜関係ないアサキムおじさん! →夜のコンビニ!
ターレスさんを焚きつける克夜! →結婚の報告!微妙に間違った相手のところに行く
親たち! →フィオル対シュロウガ!そしてユウカは蕎麦を打つ! →「破」公開!肩車
されるマーズ! →居候アサキム!久保とは違うんです! →大正ほっぺ!浪漫の嵐に散
歩しないかね! →弁当男子!女の子はどうしてるのか! →ほうげん!言語中枢に及ぶ
汁の恐怖! →ハゲタカ!聖闘士にはなれないマーズ! →野球第2世代!慣れないことす
るユウカ! →天食!相手にするだけムダな克夜! →フィリオ瀕死!のりしお騒動!
→姫様を返せ!人を越え獣も越えるキャクトラ! →タイムダイバー終了!あるいはこんな
イングレッタ! →よろしくお願いします!ショタ不足の第2世代! →ひまわりの祝祭!
なんならうちの実家に来るか! →夏休みの終焉!意外にモテるミズル! →スパロボ学園
発売!ワンダースワン派のタカヤ! →夏休み終了!ToLoveるも終わり! →新西暦少女!
さきみちゃんあそびましょう! →選択肢間違えた!変なエンディング!
ルアフ「まあ、政権交代で外国人参政権も時間の問題なんじゃないかっていわれてるけどさ」
アクア「突然アンタッチャブルな話題はやめてください」
ヒューゴ「へへ、俺、今年で二十歳だから、選挙初めてだったんスよ」
アクア「ヒューゴ! どうして急に公式年齢に戻るの、ヒューゴ!」
ラミア「しかし、サイボーグのヒューゴ先生に選挙権があるのかという話だ」
ヒューゴ「そうなんすよ、ワクワクしてたのに通知書が来なくて」
ルアフ「戸籍上死人扱いなんじゃないの、君」
アクア「ヒューゴ! 気を落とさないでヒューゴ!
もし、もしもよ! 仮の話だけど、その、もしヒューゴが、あのね、私の戸籍と」
9:それも名無しだ
09/09/14 08:57:04 STHsdiiF
ルアフ「あれ? これカメラまわってるんじゃない?」
ヒューゴ「うーっす、そんじゃあ、前説、始めましょおかぁ」
アクア「バカー! この小芝居のバカー!
職務に忠実なヒューゴなんて大嫌い!」
ヒューゴ「え~と、このスレはですね、
アラド・バランガさんとゼオラ・シュバイツァーさんの娘、ゼラドを始めとする
バンプレストオリジナルキャラクターたちの子供たちを捏造したり、
バンプレストオリジナルキャラクターのキャラをねじ曲げてみたり、
まあお台場にガンダム観に行っちゃおうみたいなノリで
デンドロビウムを設置しちゃうみたいな、そんな感じの場所です」
ラミア「さらに、デンドロビウムにソシエお嬢さん乗せてみたりな」
アクア「あ、あのね、ヒューゴ、大嫌いって、そのままの意味じゃないのよ。
ただね、ヒューゴ、ちょっと、やらなくてもいい職務に対して真面目すぎるんじゃないかって」
ヒューゴ「アクア、前説真面目にやんないなら
お台場で全長111メートルの『テコンV』作る作業を手伝って来いよ」
アクア「バカー! ヒューゴのバカー! お台場の申し子ーっ!」
ルアフ「さて、当初アララだのドアラだの呼ばれてたゼラドくんを取り巻くお話も
2005年10月27日、めでたく2スレ目に入り」
アクア「なんなんですか、その、スレの歴史を振り返ってみよう見たいなムダな企画」
ルアフ「毎度毎度似たり寄ったりの人物紹介なんかしてらんないんだよ!」
アクア「余計な波紋を産み出すだけだからよした方がいいんじゃないかっていってるんです!」
ヒューゴ「やりましたね! この方式なら、あと29回くらいまわしていけます!」
ルアフ「あと29回まわしていきたいね」
ラミア「赤子アオラの世話で手一杯なクォヴレーと、それに嫉妬するゼラド。
ゼラドにあやされていないと泣きやまない赤子アオラ、
デビルメイクライダンテにまるで歯が立たないディス・アストラナガンなど、
2代目スレは和やかなムードで始まったのであった」
アクア「だから、今さらバランガ姉弟の年齢差なんか混ぜっ返さなくていいじゃないですか」
ヒューゴ「その一方、なんか貧乏している天才科学者3名がフラフラ現れたり、
『最終地獄ジュデッカSEED ですてに~♪』なるテレビ番組名が出てきたりと
世界は徐々に構築されていくのであった」
ルアフ「そして、クリハくんの弟(名称未定)、ミナトくんの弟(仮名トウキ)、
ヴィレアムくんの妹(仮名ギリッタ)、アイミちゃんの妹(名称未定)など、
新しいお友達もぞくぞくと誕生していったのさ」
アクア「名前のチョイスに悪意を感じますよ!」
ラミア「ああ、そうだ。トウキの名前を出すのはマズい」
アクア「そこは別にマズくありませんよ!」
ラミア「弟とか書いてある」
アクア「もはやそんなことどうでもいいですよ!
双子は先に生まれた方が弟になったり兄になったりっていう、風習的なアレなんじゃあないですか!?」
ラミア「そして、なぜか男装していて『ルナ君』とか呼ばれていた時期の
現生徒会長の画像は、このとおり内申書といっしょに保管してあるのであった」
アクア「それは捨ててあげてください! 本人にとっては恥ずかしい過去なんですから!」
ヒューゴ「正直、俺、DFCスーツ着てたのって消したい恥ずかしい過去なんだ」
アクア「ヒューゴ! 突然なにを言い出すのヒューゴ! お願いだからウソだといって!
あの栄光の日々を恥だなんて思わないで!」
10:それも名無しだ
09/09/14 08:58:52 STHsdiiF
ヒューゴ「あっ!」
ルアフ「どうしたんだい、ヒューゴくん」
ヒューゴ「この学校の校長先生って、エリ・アンザイ先生だったらしいす」
ルアフ「へぇ~」
ラミア「そうだったのか」
アクア「ちょっと、どうするのよこの空気!
なんでそんな、リアクションに困る情報ひっくり返してきちゃうのよ」
ヒューゴ「だって、そう書いてあるんだもん」
アクア「うわ~ん! バカ! ヒューゴのバカ!
ちょっとふてくされた顔で私を見ないで!」
ルアフ「そうこうしているうちに、紫雲さんとかカルヴィナさんの子って出していいの?
って話になったら若干荒れて」
ラミア「決まり事とかめんどくさいし、いっそゼラドを♂にするのもありなんじゃないか?
という意見が出たらもっと荒れて」
ヒューゴ「じゃあ設定詰めていこうぜみたいな話になったら収集がつかなくなって」
ルアフ「したらなんか職人が自分語りし始めちゃって」
アクア「やめましょうよ! もう、そういう誰も得しない思い出ほじくり返すの」
ラミア「そんな中、トウマとミナキの子トウキと、クスハとブリットの娘クリハは
着々とフラグを積み立てていくのであった」
アクア「なんなんですか、そのトウキくんへの執着!」
ラミア「一方、私が教師になったのは、世の中は平和になったというのに、
ムダなパワーに恵まれているばかりに一般の保育施設では困り者扱いされている子供たちの現状を聞き、
『教師になってみない?』とのエクセ姉様の勧めに従い、
一生懸命試験にパスした結果だったことが明らかになったのであった」
アクア「あっ、ズルい! 自分のイイエピソードばっかりしっかり語って!」
ラミア「あとなんかエキドナ先生は理系の先生だった」
エキドナ「あ、どうも」
アクア「なんでちょっと他人行儀なんですか! いま疎遠なんですか、あなたたちは!」
エキドナ「そういえば、携帯番号知りません」
ラミア「まぁ、疎遠だ。
あと、クリハがトウキに告白してOKもらってた」
アクア「もういいですよ、クリハさんとトウキくんの進捗具合は!」
ラミア「その次の日、リトゥがトウキに告白して玉砕したのであった」
アクア「そっとしておいてください、それは!」
ルアフ「なんかあのころは、
『このままじゃクリハとトウキが主役になっちゃうんじゃ?』って危ぶまれてたらしいよ」
ヒューゴ「あ~」
アクア「遠い目をしないでヒューゴ! ほんとコメントに困るから!」
11:それも名無しだ
09/09/14 09:01:33 STHsdiiF
ルアフ「ま、だいぶ昔の話だし、このへんのことは特に気にすることないと思うよ」
アクア「投げた! 飽きたんだ! 飽きたんですね!」
ラミア「トウキ関連のあれやこれやもなかったことにして問題ないと思う」
アクア「ラミア先生はトウキくんのこと嫌いなんですか!?」
ラミア「お前は好きなのか?」
アクア「妬ましいですよ!」
ヒューゴ「お前、教育者としてなんてこというんだ」
アクア「だってヒューゴが、ヒューゴが、うわーん!」
ルアフ「ま、そういうわけで、取りあえず今年の世界柔道における
日本男子勢程度には頑張っていきまっしょいだよ」
ヒューゴ「キャスター・セメンヤ選手が女性アスリートでもいいじゃないか」
アクア「まあ、ね、高速道路が無料化したらいいなくらいのテンションで」
ラミア「松ちゃん監督作品第2弾への期待程度を持ち合わせていれば上等だ」
アクア「期待してないんですか!」
ラミア「ではお前は『大日本人』が『北京原人』より面白かったと言い切れるのか」
アクア「比較対象含めてコメントに困ります!」
ヒューゴ「あ、この学校って、マオ社の経営だったんだったらしいよ」
アクア「ヒューゴ! お願い少しでいいから仕事を忘れて! 私を見て!」
ラミア「さ、『キラー・ヴァージンロード』を観に行くとしよう」
アクア「だから、チョイスに悪意がありますよ!」
12:それも名無しだ
09/09/14 12:13:41 seOxIG++
>>1
乙です
>>8
いつもながらGJです
悪意は人を成長されるのに必要不可欠だって誰かが言ってた
13:それも名無しだ
09/09/14 16:59:16 rFdF9kHv
>>1は我々にとって乙な存在なのだ
容量オーバーだと新スレに気付かなかったりするから困る
14:それも名無しだ
09/09/14 19:16:10 yHzO99qG
過去ログのzipまだ読める?
15:それも名無しだ
09/09/15 00:45:52 s4+fehk9
お弁当を作りたいなあ。
ゼラド・バランガがそんなことを考えたのは、いつもより早く起きた朝6時のことだった。
カーテンからは、すでに秋の兆しを見せ始めた明るい陽光が差し込んでいる。ベッドを降りて
窓を開けると、柔らかな風が頬のうぶ毛をくすぐった。
◆
「お母さん、わたし、お弁当作る!」
朝から寸胴に入った豚骨スープを火にかけていたゼオラお母さんは、
ゼラドの発言に八の字眉毛を作った。
「お弁当だったらそこに置いてあるわよ」
食卓の上に、お弁当箱が3つ並んでいる。一番大きな四段重ねがお父さん用で、残り2つ
の三段重ねがゼラドと弟用だ。一番下にはごま塩をたっぷりかけたご飯がぎゅうぎゅうに
詰められていて、真ん中の段には唐揚げとハンバーグとショウガ焼きを中心にしたおかず、
そして一番上の段にはぶつ切りにされたリンゴとパイナップルが入っている。いつ通り
のバランガ家式お弁当箱だった。
「こういうんじゃなくてぇ」
ゼラドはお気に入りのもふもふしたスリッパで床を踏んで抗議した。
「なんていうかこう、ちっちゃいお弁当箱の中に赤とか黄色とか緑とか詰まってて、
キラキラしてて宝箱みたいな、そんなお弁当なの!」
ゼラドは、口が達者な方ではない。身振り手振りを交えて一生懸命説明した。
お母さんが、柔らかく笑ったような気がした。スリッパをぱたぱたと鳴らして、
てきぱきと動き始める。卵焼き用のフライパンに塩コショウと生卵をひとつ、レタスに
プチトマト、ピーマンとバラ肉と小麦粉、醤油とソースとケチャップと海苔。それから、
バランガ家にこんなものがあったのかと驚くほど小さなランチボックス。そんなもの
が次々と調理台の上に並ぶ。
「さ、どうぞ」
「え、えぇと」
思わず包丁を握ったものの、ゼラドはどうしたらいいのかわからない。そういえば、お弁当
を作るなんて生まれて初めてのことかもしれない。調理実習でだってゼラドは、いつも食べる
専門で、調理する側には混ぜてもらえなかった。混ぜてもらう以前に、まず食材を生かじりして
調理室の隅に隔離されるのがいつものことだった。
「もう、しょうがないわね、じゃあ」
まず、プロセスチーズを小さく角切りする。卵をよく溶いてミックスベジタブルと砂糖、
塩コショウを加えてよく混ぜる。よく熱したフライパンに油を敷いて、卵を載せるや菜箸
で手早くかき混ぜる。ここでラップを広げてスクランブルエッグと角切りチーズを載せる。
ラップをしっかりと閉じて5分くらい待つ。お母さんの声に従って手を動かすと、まるで
魔法のように綺麗な卵焼きが出来上がった。
やっぱりお母さんは凄いなあと、ゼラドは感心するしかなかった。
16:それも名無しだ
09/09/15 00:47:22 s4+fehk9
「どうしたの、急に」
「うぅんと、なにがどうってわけじゃないけど」
「でもあなた、今日はお弁当ふたつ食べるつもりなの?」
ゼラドの胃袋だったら、バランガ家式お弁当箱を平らげて、ちっぽけなランチボックス
を三時のおやつ代わりに片付けるなんて簡単なことだ。でも、そんなことをするつもりはなかった。
「自分で食べる用じゃないの」
なんとなく、お母さんの微笑みが深くなったような気がした。
「じゃあ、誰用なの?」
「う~ん」
そう聞かれて、一番に思いつくのはクォヴレー・ゴードンお兄ちゃんだった。小さなこ
ろからゼラドの面倒を見てくれたお兄ちゃんになら、お弁当のひとつやふたつあげない理由はない。
しかし、生憎とクォヴレーお兄ちゃんは3日くらい前からどこかに出かけたきりだった。
「お父さーん」
いつの間にか食卓についていたアラドお父さんは、すでにドンブリ2杯を空にしていた。
さすがはお父さんだ。
「これ、いる?」
ご飯粒の突いた低い鼻先にハンカチで包んだランチボックスを差し出すと、お父さんは
少し迷うような顔をした。そして3杯目のドンブリを空にした。
「お父さんはいいや。お母さんのお弁当があるし」
「え~」
「足りないようだったら、焼きそばパンでも買うし」
「あなた、いい歳をして買い食いはやめてください」
「え~、だってよぉ~」
やんわりと夫婦ゲンカを始める両親を背に、ゼラドは冷蔵庫の方を見た。いつ起きて
きたのだろう。弟のアオラが冷凍室に顔を突っ込んで業務用アイスをスプーンで直に
すくって頬に詰め込んでいた。
「アオラ~、お弁当、いる?」
アオラはスプーンを加えたまま、じぃとランチボックスを見つめた。そして、ぷいと
横を向いてしまう。
「いらね」
「なによ。お姉ちゃんが一生懸命作ったのに」
「高校生にもなって、姉ちゃんが作った弁当なんて持ってけないよ」
「お母さんの作ったお弁当は持ってくじゃない」
「むしろ、母さんの弁当じゃなきゃヤダ」
「なによ、アオラのマザコン」
「単純に量と質の話してるんだよ」
「アオラの欲張り!」
「行ってきまぁーす」
17:それも名無しだ
09/09/15 00:49:24 s4+fehk9
アオラはすでに学生服に着替えていた。ドンブリ飯に豚骨スープをぶっかけてざぶざぶ
と口の中に流し込むと、肩に鞄を引っかけて玄関に行ってしまう。
「ゼラド、あんたもそろそろ着替えないと遅れるわよ」
お母さんの声を背中に、ゼラドはランチボックスを見下ろしていた。
このお弁当、本当にどうしよう。
◆
黒板の上に貼り付けられた時計は、もう12時半をまわっていた。
OG学園2年A組の昼休みも、もう半分以上が終わっている。
「う~ん」
空になった三段重ねを鞄の中にしまいながら、ゼラドはハンカチに包まれたままの
ランチボックスを見つめていた。
「なにやってんの、あんた」
机をくっつけてお弁当を食べていたレイナ・レシタールが不思議そうな顔をしている。
「あ、レイナ。これいる?」
「いらないわよ」
カロリーゼロのゼリー食品のパックを握りつぶして、レイナが後じさる。どうやら、
レイナは何回目かのダイエットに挑戦中のようだ。幼馴染みのよしみで、結果予想なんか
しちゃいけないということをゼラドは知っていた。
「やめてよ、そそのかすの」
「そそのかすっていうんじゃないけど」
「どこで拾ってきたの、それ」
「失礼しちゃう! ちゃんと自分で作って来たもん!」
「ウソおっしゃい。あんたがそんな、お腹に溜まんないメニューチョイスするわけないじゃない」
「自分で食べる用じゃないもん」
なぜか突然、レイナが警戒するように眉をひそめた。
「じゃ、誰用なの」
「決めてないけど」
「なによ、それは」
レイナは頬杖を突いて、なぜか安心しているような顔をする。今日のレイナは百面相だ。
「あんたは、ほんと、もう、だいたい間が悪いのよ。
珍しく難しい顔してお弁当食べてると思ったら、いったいなに言い出すのよ」
「う~ん」
昼休みは半分以上終わっている。まわりを見ると、ほとんどのクラスメイトはお弁当
を食べ終わっていた。
ふと思いついて、ヴィレアム・イェーガーの席を見る。ヴィレアムはゼラドの隣の家に
住んでいて、物心つく前からの幼馴染みだった。
ヴィレアムは、机をはさんでキャクトラ・マクレディと向き合っていた。やけに真面目
くさった顔をしてなにか話し込んでいる。
18:それも名無しだ
09/09/15 00:51:43 s4+fehk9
遠い惑星バルマーからやって来た、留学生兼お姫様のボディガードであるキャクトラ・
マクレディはヴィレアムととても仲がいい。よく「友よ」と呼び合っているし、親友同士
なんだろう。
いったいなにを話しているんだろう。二人とも真面目な男の子だから、政権交代の話でも
しているのかもしれない。とてもじゃないけど、話しかけられる雰囲気じゃなかった。
「クリハー」
視界の隅でヴィレアムが突然机に突っ伏す姿が見えたような気がした。
「なぁに?」
「これ、お弁当、よかったらなんだけど」
クリハ・ミズハはゼラドを振り替わると、にわかに困ったような顔をした。
「ゴメンね、ゼラド。いまわたし、ペプチド強化習慣だから」
クリハの机の上には、いつも通り緑のような青のような黒のような得体の知れない汁
を注がれたコップがある。
クリハ・ミズハは実にオーガニックな食生活を送る女の子だ。ゼラドが聞いたこともな
いような薬草や食材をミックスして、様々な効能を産み出す汁を作っている。ただし動機は、
おなじく健康ドリンクの制作を趣味にしている母親、クスハ・ミズハとは少し異なる。豊満
な胸を持つ母親とは似ても似つかないバストサイズを改善するためのものだ。ただし、今の
ところ成功したためしはない。
幼馴染みであるゼラドは、クリハの切実さを知っている。だから、栄養バランスよりも
彩りを優先させたようなお弁当を強要することは、とてもできない。
一方、クリハのカレシであるところのトウキ・カノウが、これから磔刑に向かう聖者
のような顔をして椅子に座っていた。
ゼラドは問題なく飲めるからよくわからないけれど、クリハ謹製の汁は大抵の人間にと
ってはまるで口に出来ない味なんだそうだ。それでも、「恋人同士はおなじものを食べる
べきだと思うの」というクリハの希望に応え続けているトウキのことを、正直にいって
ゼラドは少し尊敬していた。
「アイミちゃーん」
残るいまひとりの幼馴染みであるところのアイミ・ダグラスは、やっぱりクリハとおなじ
ような表情を浮かべた。
「ゴメン、ゼラド。わたし、大会控えてて、いまちょっと食事コントロール中なの」
宇宙飛行士になることを夢みるアイミは、いつもスポーツに打ち込んでいる。一日の大半
の時間をトレーニングと自己管理に費やしていた。
ゼラドだって、運動は嫌いじゃない。でも、食べたいものを制限してまで打ち込むスポーツ
とは、完全に想像を絶した領域だった。
それにしてもアイミは、タッパ入りのおじやや梅干し、バナナ、炭酸入りコーラなんて
お昼ご飯を食べて、いったいなんの大会に備えているんだろう。
「ねえ、ゼラド?」
誰なら受け取ってもらえるかなあと考えていたゼラドの背中を、アイミの声が引き留めた。
19:それも名無しだ
09/09/15 00:53:39 s4+fehk9
「そのお弁当、誰かに受け取ってもらうために作ったんでしょう?」
「うん、まあ、誰かに」
「じゃあ、普段は渡さないようなひとに渡せばいいと思うよ!」
アイミがにっこりと満面の笑みを浮かべる。
「う~んと、じゃあ、ミナトくーん」
アイミがかくんと天井を仰いでなにかブツブツ呟き始めた。
トウキの双子の弟であるミナト・カノウは、耳にイヤホンを付けてスパゲティをすすっていた。
気配を感じたのか、イヤホンの片方だけを外してゼラドを見る。空手をやっているからなのか、
ミナトにはときどき妙に勘の鋭いところがある。
「ミナトくん、お弁当いる?」
「俺は今『乙女パスタに感動』中なんだ」
モーニング娘。の派生ユニットのひとつである『たんぽぽ』のナンバーを口にしながら、
ミナトはまたイヤホンを耳にはめてしまう。
「ゼラド、よく考えてみて。
こう、普段お世話になってる人とか、感謝してるひととか」
急に元の状態に戻ったアイミがアドバイスをくれた。
「感謝、かあ」
ゼラドは教室の中をきょろきょろと見まわした。
弁当男子のタカヤ・ナンブと紫雲克夜は、きゃっきゃとさざめきながら互いのおかず
を取り換えっこしていた。なんだか入っていけない雰囲気だった。
ガタンと音をさせて、席を立つ生徒がいた。男子だった。高過ぎる身長を猫背に曲げて、
やっぱり長過ぎる脚をがに股にして教室から出ようとしている。離れていく机の上には、
分厚い本が伏せられていた。
キャクトラとおなじく惑星バルマーからの留学生であるハザリア・カイツだった。ただし
彼は、王位簒奪者の孫なので立場は微妙らしい。それはさておき、ハザリアは恐ろしく頭が
いい。なにか困ったことが起こったとき、ゼラドは何度も助けてもらった。感謝をする材料
はずいぶんある。
「ハザリアくん」
ハザリアはアクビをしながら、のたりとゼラドを振り返る。
「ハザリアくん、お弁当食べる?」
「いらぬ」
頭の回転が速い人間の常で、ハザリアは回答も早い。足を引きずるような歩き方で教室
から出て行こうとする。
「俺はいま、醤油ラーメンについてのレポートを作成中だ。
なんだ、あの醤油ラーメンというのは。名前のわりに、それほど醤油の味がせぬではないか。
にもかかわらず、醤油ラーメンは厳然として醤油ラーメンと呼ばれておる。
これは地球式の命名法について興味深い関連があるやもしれぬ。
ゆえに、俺は今日も醤油ラーメンを食しにいくのだ」
20:それも名無しだ
09/09/15 00:55:45 s4+fehk9
それはもうレポートじゃなくて、ただのグルメエッセイなんじゃないかな。
ゼラドがそんなことを考えている間に、ハザリアはもう教室から出ていた。
凝り性のハザリアは、一度気に入った食べ物があったら3ヶ月くらいおなじものを食べ
続けるところがある。ゼラドがなにをいってもムダだった。
◆
あちこち声をかけているうちに昼休みは終わり、午後の授業もすぐに終わり、もう放
課後になっていた。
ゼラドは、ひとりでOG町内をとぼとぼと歩いていた。いつもはレイナあたりと一緒
なのだけれど、今日はなんとなく1人になってしまった。
「これ、どうしよう」
手提げ鞄の中には、まだあのランチボックスが入っていた。包みに使ったハンカチは、
一度もほどいていない。
ガチャガチャという金属的な音が聞こえた。少し前のT字路を、4つ脚ロボのマーズ
くんが歩いていた。十歳前後の男の子と変わらない上半身の下で、メカニカルな4本脚
がわさわさと動いている。
「しっあわっせはー、あるいてこねー、だーかっらあるいてゆくんだねー」
ご機嫌そうに鼻歌を歌いながら、マーズくんはどこで拾ってきたのか木の枝をクチャ
クチャと噛んでいた。
宇宙船ヴァルストークの備品として作られたマーズくんは、その気になれば生ゴミでも
そのへんの石でも消化してしまえるらしい。その上、誰からもお行儀とか礼儀作法を教わ
らずに育ったせいか、たまにびっくりするようなものを口にしている。
「いーっちにっちいっぽ、みぃ~っかでさんぽっ」
「マーズくん、マーズくん」
なぜか赤いフレームのメガネをかけたマーズくんがきょろりとゼラドを見上げる。
「そんな枝、かじっちゃダメだよ。これ、お弁当食べる?」
マーズくんは少しの間きょとんとすると、突然その目を小鬼のように吊り上げた。
「あのね、ゼラドちゃん。おれぁーゼラドちゃんのこと、けっこースキよ。
んでも、ハタラキもねーのにホドコシを受けるゆわれはねーよ!
おれぁーモノゴイじゃねーんだっ!」
いったいどこでどんな育ち方をしてきたのか、作られて3年も経っていないとは思えない
ほどマーズくんはシビアな考え方をする。どうやら怒らせてしまったらしい。小さな肩を
いからせて、ガチャガチャと歩いていってしまう。
21:それも名無しだ
09/09/15 00:57:32 s4+fehk9
◆
しょうがないから、このお弁当はいつも学校帰りに買い食いしているアイスの代わりに
食べちゃおうか。ゼラドはしょんぼりとそんなことを考えた。
「無限ほっぺの乙女か」
アサキム・ドゥーイン。『ビーター・サービス』という修理屋の敷地内でネットゲーム
をやり続けている住所不定無職の男性だ。漆黒のマントを羽織り、シルバーアクセサリを
じゃらつかせたその姿は、買い物袋を提げた主婦たちが歩く住宅街の真ん中では奇異と
いうか不審だった。
年齢からいえばもう中年といっていいはずなのに、アサキムの姿はやけに若々しい。
下手をすると、そのへんにいる20代前後の若者よりも生活力とか責任感がないように見える。
「アサキムさん」
ゼラドは、少し緊張していた。このアサキム・ドゥーインという人物は、どこかクォヴレー
お兄ちゃんと似ているような気がする。髪の色も、背丈も、容貌もまるで違うのに、どこか
似通った雰囲気を漂わせている。どこが似ているのか、ゼラドにもよくはわからなかった。
しばしば異世界に戦いに行くクォヴレーお兄ちゃんと、朝も夜もなくネットゲームの世界で
狩りをしているアサキムの、どこに共通点があるというのだろう。
「どうしたんですか? こんなところで」
アサキムが居着いている『ビーター・サービス』は、ここからだいぶ遠い場所にあった。
「健康のために、いつも一駅分歩くことにしているんだ」
「ゲームしながら歩いたら危ないと思いますよ」
「常に危険と隣り合わせに生きる、
それは、天国を求めて煉獄の炎に焼かれる恍惚にも似ている」
「収入のためにはなにかしないんですか」
「ツィーネを働かせているよ」
ツィーネというのはアサキムの恋人で、アサキムのネットーゲーム生活を支えるた
めに勤めに出ているらしい。
ひょっとして、このひとは人間の屑なのかもしれない。ゼラドの胸に不安が広がる。
そういえば一駅分歩くといっても、そもそも無職のアサキムがどこに出かけていたの
だろう。オフ会かなにかかもしれない。
「君は?」
「わたしは」
指先でつまんだランチボックスが、やけに重い。
「なにやってるんでしょう」
ため息をつく。
「朝、なんとなくテンション上がってお弁当作ったけど、
誰に渡すかなんて全然考えてなくて、渡そうとする相手の都合も考えてなくて、
そんなことしてるうちに結局こんな時間になっちゃって。
ひょっとしたらわたしは、もの凄く身勝手な人間なのかもしれません」
「彷徨に他人の都合を考えるのは愚か者のすることだよ。
愚者といったほうが格好がいい」
ぼんやりとした明かりを浮かべる携帯ゲームの画面から目を話さず、アサキムが静かに言い切る。
22:それも名無しだ
09/09/15 00:59:31 s4+fehk9
「彷徨し、惑い、行きつ戻りつを繰り返す、そのことごとくは自分のためにこそ行うべき行為さ。
煉獄の炎に身を焦がしながら無限回廊を歩くのは、一種の快楽なのだから。
そして快楽は積み重ねている内にひとつの結実を迎える。
救いであっても無限の罰であっても、それはきっと僕自身が望み求めた果実なんだ。
そして彷徨と咆吼をかけてなにか格好いいことをいおうとしたけど思いつかない。
僕の鬼神咆吼は、いつ参戦するんだろうね」
ゼラドは、そっとあたりを見まわした。そのへんを歩いている買い物帰りのおばさんに
通報されたらどうしようかと心配になっていた。
「わたし、あんま頭よくないんです。
アサキムさんがなにをいっているのか、よくわかんないです」
黒髪を揺らして、アサキムは冷笑を浮かべる。
「無限獄に触れたことのないものにはわかるまい」
「ツィーネさんて、どこで働いてるんですか?」
「ブラック企業だよ」
お弁当を受け取って喜んでくれる人は誰だろう。誰よりもお弁当を欲している人は誰
だろう。ゼラドにはぼんやりとわかったような気がした。
◆
住宅街だったら晩ご飯の匂いがしなくなってずいぶん経つほどの時間だというのに、
その会社には当たり前のように明かりが点いていた。
オフィスというわりには窓ひとつない、変わった部屋だった。薄っぺらい長机の上に
ノートパソコンがいくつも置かれ、ひとり半畳分もないスペースで青白い顔をした人々が
カタカタとキーボードを叩いている。
「あら、あなた、バランガさん? どうしたの?」
薄手のランジェリーの上に適当に黒布を巻き付けたような格好をしたツィーネ・エスピオ
さんは、思いがけず愛想のいい顔でゼラドを迎えた。手元のノートパソコンの横には、栄養
ドリンクの容器が何本も並んでいる。分厚くファンデーションを塗られた顔は、安っぽい
蛍光灯に照らされて黄色く見えた。
「あのぅ、これ、お弁当」
「え?」
優しさという言葉すらも忘れていたという顔で、ツィーネさんが目を見開く。
「その、アサキムさんから」
長細い部屋の薄汚れた壁に、キーボードを叩くカタカタという音がしばし反射した。
「あの、エスピオさん。ここなんですけど」
後輩社員らしい女性がツィーネさんに声をかける。返事はない。ツィーネさんは顔を
深くうつむけていた。赤毛を載せた肩が、ふるふると震えているように見える。
「エスピオさん? 泣いているんですか、エスピオさん?」
「そんな、そんなことないわよ。あるはずないじゃない」
ウソをついてツィーネさんにお弁当を渡すこの行為が、正しいのかどうかゼラドにはわからない。
ただ、ツィーネさんの声は湿っていたし、たしかに幸せそうだった。
23:それも名無しだ
09/09/15 01:54:53 kNbV7NpD
なんだただの神SSか
アサキムがやってたのは学園なのかポケモンなのかDQなのか
ゼオラのお母さんっぷりが、かかずヴォイスで完璧に脳内再生されたぜ。
24:それも名無しだ
09/09/15 03:54:08 6RR4FvA2
イラストのログってもう上げられたんだっけ?
25:それも名無しだ
09/09/15 08:28:12 TUlCt4L3
とwwwんwwwこwwwつwww
で、博多ですか久留米ですか熊本ですか玉名ですか
それにより豚骨の種類も変わるんですが
26:それも名無しだ
09/09/15 08:57:44 f+bB0WtL
GJです
こいつら馬鹿だな~って読み進めていったら、この考えられさせられる締め
ゼラドがやったことが正しいのか間違ってるのかわからないけど、アサキムは一発ぶん殴られとくべきだと思う
27:それも名無しだ
09/09/15 10:59:56 MvGMUm0S
>>25
業務用の、トンコツなんだか味の素なんだかわかんない粉末を
段ボールごと買ってたりするんだろう、バランガ家は。量がもの凄いし。
ヴィレアム「ゼラド作の弁当だって!
どうしよう、『美味しかったよ』って、どんな顔の角度でいえばいいんだ」
キャクトラ「友よ、そういうことはお弁当を受け取ってからいうべきだと思う」
ヴィレアム「はっ、そうだ。いったい、どうやったらゲットできるんだ」
キャクトラ「普通に行って『くれ』といえばくれそうだぞ。
なにか、渡す相手にお困りのようだし」
ヴィレアム「いや、でもさ、そういう、ガッツいてるみたいの、女子に引かれるんじゃないか」
キャクトラ「友よ、下手に謀を巡らしているのも相当引かれると思うぞ」
ヴィレアム「そ、そうか。じゃ、行くぞ! 俺は行っちゃうぞ!」
ゼラド「クリハー」
ガクッ
キャクトラ「友よ、全体的にそんな感じだな友よ」
28:それも名無しだ
09/09/16 01:35:06 bFCZtRfL
アイミ(ゼラドだって、ああいうふうにお弁当作ってきたりするんだ。
そうよ、アイミ、待ってるだけじゃダメよ!
炭酸入りのコーラなんて飲んでる場合じゃないわよ。
炭酸入りのコーラって、それただのコーラだし!
自分から! 自分から踏み出して行かなくちゃ!
アイミ、ガンバ! チャチャチャ! 略してアバチャ!)
【調理室】
カル「え? 疲労回復に最適なスィーツですか?」
アイミ「うん。あの、身体動かしたあとは糖分が必要でしょ?
だから、そのぅ、14Kg分の砂糖水を、新人歓迎用のお茶みたいな感じで
無理なく摂れるスィーツ、カル君なら知ってるんじゃないかなぁって」
カル(あぁ、アイミさん、頬をほんのりと染められて、なんて可憐なんだ。
でも、この可憐さが向かう先は、十中八九、あの、
AKB48のライブ中にメッセージボードを使ってメンバーと
なんとなく意思疎通を図ることに血道を上げるカラテバカアイドル地獄変だ。
うぅ、アイミさんは、どうしていつまでもあんな男のことを!
いや、ダメだ、カル・ノールバック。憎しみに心を囚われるな!
あいつが無言の背中でアイミさんを惹きつけるというのなら、
俺はアイミさんのためにこそ行動する!
そう、さならがら、
『BUSTARD!!』でカル=スに再びスポットライトが当たる日を待ち続けたあのころのように!
さしあたり、ここでアイミさんと手と手を触れ合ってスィーツを作ることで!)
カル「そうですね、アイミさん! では、まず材料の買い出しを一緒に!」
アイミ「あ、そこにあったレシピと冷蔵庫にあった材料で、取りあえず作ってみたんだけど、どうかな」
カル「え?」
アイミ「さすがカルくんは几帳面だね! あちこちにレシピのメモを残してるなんて!」
カル(バカ! 俺のバカ! メモ魔!)
【カノウ家】
カル「ミナト、間もなく、ここにアイミさんが来ると思う」
ミナト「は、そうなの? 俺、忘れ物でもしたかな」
カル「その前にミナト!
なにもいわずに、このバケツに入った14Kg分の砂糖水を俺にぶっかけてくれ!」
ミナト「お前はまたなにをいっているんだ」
カル「そして俺の顔を踏みにじりながら、
『カル=スがラスボスになんてなるわけないだろ』と宣告してくれぇっ!」
ミナト「うん、まあ、ラスボスは無理なんじゃないの」
29:それも名無しだ
09/09/16 03:15:32 J9CQD7I/
ホントだ。炭酸入りのコーラだ。
タッパ入りのおじやや梅干し、バナナと来たから炭酸抜きのコーラがそのまま続いてるものとして読んでた。
14Kg分の砂糖水とか栄養バランスの良い食事を取ってるけど何の大会に出るの?
濁されてるアイミの片親は地上最強の生物なの?
30:それも名無しだ
09/09/16 04:26:54 6nLxq+4P
ツィーネ「ブラック会社に勤めてるんだけど、もうあたしは限界かもしれない」
アサキム「どうしたんだい、ツィーネ。顔色が悪いね。
さあ、笑っておくれ。僕は君の笑顔が一番好きなんだ」
ツィーネ「アサキム、アサキムぅ・・・・・・!」
アサキム「元気が出たね、ツィーネ。
それじゃあ、明日からまた一生懸命働いておくれ」
ツィーネ「アサキム! あたし、アサキムのためならいくらでもがんばれる!」
メール「ねえ、ダーリン。
アサキムにはもうなにをいってもムダだから、
ツィーネを2、3発引っぱたいて正気に戻す必要があると思う」
ランド「いや、俺もちょいちょいいってはいるんだよ。
でも、なんか本人は幸せらしいし」
ランル「いよいよもって『めだかボックス』の掲載位置がヤバいちゃ。
西尾維新ブランドをもってしても太刀打ちできないジャンプシステムの強大さに舌を巻くばかりちゃ。
考えてみれば小学生男子を対象にした少年ジャンプで、
ヒネてて友達いなさそうな高校生から大学生の男子ご用達の西尾維新を、どうして呼んでしまったのか。
『デスノート』のノベライズだかスピンオフがそんなに売れたのか。
興味は尽きんばかりちゃ。
そして妹的なキャラを中心とした『ToLoveる』がいなくなった途端、
『年上にして妹属性』のキャラを投入した『あねどきっ!』には、
もはや恐ろしさすら感じるあたしであったっちゃ・・・・・・更新、と」
メール「ランル! いま重要な話をしてるんだから、ブログの更新は後になさい!」
ランル「現実なんか直視したくなか」
メール「ダーリン! 見てよ!
アサキムは明らかにうちの娘に悪影響を与えてる!」
ランド「いや、兄妹もあれで、色々考えてると思うぞ」
メール「いっそなにも考えてないほうがマシよ!」
31:それも名無しだ
09/09/16 09:11:24 f6uuxg05
ヒューゴ「なんやかんやいって、『美味しんぼ』っていいよなぁ」
アクア「そっ、そうよねヒューゴ!
最初は栗田さんのこと邪険にしてた山岡さんが・・・・・・っ!」
ヒューゴ「テレビアニメ版の最終回あたりのさ、
『やっぱ俺には栗田さんが必要だよ』っていうのが、
男女のアレじゃなくて、あくまでも仕事上のパートナーっていうのが、
なんていうか大人っぽくて、ガキのころ憧れたよなぁ」
アクア「どぉしましょぉ先生!
わたしはいま、デレられてるんでしょうか、それとも防衛線を張られているんでしょうか!」
ラミア「たぶん、目の前の女によっぽど興味がないんだろう」
32:それも名無しだ
09/09/17 01:02:54 428Bskp7
【OG学園 武道場】
ラン「こんちゃー、出稽古に来たでー」
ちょーん
ゼフィア「・・・・・・むぅ」
???「うふふっ」
ラン「あら珍し。新入部員?」
ミスティリカ「2年B組、ミスティリカ・レックスです!
父は地球防衛隊に勤めてます。
連邦軍とは微妙に別系統だから、ひょっとしたらケンカしてるかもしれません!」
ラン「わざわざ騒ぎ起こす防衛隊に存在価値はあるん?」
ゼフィア「レックス。見ての通り、我が剣道部はなぜ廃部していないのか不思議なほどひとがいない。
たまに現れたかと思うとすぐにどこかへ行く幽霊部員揃いだ。
だから、入部してもらっても君の練習相手がいない。
心苦しいのだが」
ミスティリカ「え、わたし、べつに剣道やりに来たんじゃないですよ?」
ゼフィア「は?」
ラン「ほんなら、マネージャーにでもなりに来たん?」
ミスティリカ「ああ、マネージャー。それもいいですね」
ゼフィア「このような小所帯で、マネージャーの必要など」
ミスティリカ「べつに肩書きはなんだっていいんですよ。
ゾンボルト先輩のお側に置いていただけるなら」
ゼフィア「なっ!?」
ラン「なんやてっ!?」
ミスティリカ「そしてわたしを朝に夜に陵辱してください!」
ゼフィア「・・・・・・は?」
ミスティリカ「さあ! 放課後の武道場で陵辱の限りを尽くしたらいいじゃない!
このメガネを白濁したなにかで曇らせればいいじゃない!」
ゼフィア「取りあえずメガネの位置を直しなさい」
ミスティリカ「むりなのぉぉぉーっ、初期設定れ、Lv2まで自己開発してりゅのぉーっ!」
ゼフィア「自己開発とはなんだ」
ミスティリカ(初対面の男の人にこんなお願いをするわたしって、なんて最低の屑なのかしら)
ラン「その独り言、めっちゃ聞こえとるからね」
33:それも名無しだ
09/09/17 01:05:00 428Bskp7
ばたーん!
ランディ「あーっ、いたいた!」
克夜「ちょっと目を離したスキに!」
ミスティリカ「あ、半端ハーレムの子と初心者向きハーレムの子」
克夜「なにが初心者向きだ! 僕の話はまだ終わっていないぞ」
ランディ「行ったれカッちゃん! この変態を黙らせろ!」
克夜「だいたい、君んとこのお父さんはなんだ!
せっかくヒロインが複数いるのにハーレムエンドがないなんて、騎士道精神が足りない!
騎士たるもの、ヒロインには漏れなく手を付けるべきだ!」
ランディ「うん、紫雲家的にはそれ正義かもしんないけど、世間一般では腐れ外道だからな」
ミスティリカ「そんなことありません!
シェルディアさん姉妹が泊まりがけで遊びに来るたび、
(あれから何年も経ってるのに。
ミストにとってあの子たちは妹的存在以外の何者でもないってわかっているのに、
それなのに心がモヤモヤする私って、なんて最低の屑なのかしら)
って身もだえするお母さんを見ると、最高にメガネ曇るわ!」
ランディ「お前は最低だ、この陵辱メガネ!」
克夜「攻略もしなかったヒロインと友人関係を結ぶとは、なんて騎士道不覚悟なんだ!
うちのお父さんなんて、
シャナ=ミア陛下がいくら寂しそうな顔をしていても眉ひとつ動かさないし、
そもそもシャナ=ミア陛下の名前をちょっと忘れてるぞ!
引きずっていても一文にもならない未練なら、最初からなかったかのように扱うのが騎士の情けだ!」
ランディ「ミストさんと統夜さんのどっちが正しいのか、俺にはもう判断つかねえ!」
克夜「うちのお父さんがハーレムエンドを迎えるのにどれだけ苦労したと思ってるんだ!
誰かひとりをエコヒイキすることがなく、まんべんなく八方美人な態度を貫き、
その結果築かれたのが紫雲家だ!
努力を怠りハーレムエンドに背を向けたミストさんを、僕は認めることが出来ない!」
ミスティリカ「お父さんはともかく、わたしは頑張ってるもん!
毎日毎朝、鏡に向かってアヘ顔の練習してるもん!」
ランディ「変態的なカミングアウトをするな!」
克夜「・・・・・・負けた」
ランディ「何に負けたんだカッちゃん!」
克夜「頑張ってくれミスティリカさん。
僕には君を攻略することは出来ないけど、きっとどこかに君を攻略できる変態がいる」
ミスティリカ「あなたも頑張って紫雲さん。
あなたに攻略される気はさらさらないけど、きっとどこかにあなたに攻略されたがるヌルいヒロインがいるわ」
ランディ「気持ち悪い友情を築くなーっ!」
34:それも名無しだ
09/09/17 01:06:22 428Bskp7
ランディ「あ、なんか、スンマセン。お騒がせして。
あのバカどもは、火の精霊とかにお仕置きさせとくんで。
あとランさんはいたならツッコミ手伝ってください。俺、声ガラガラです」
ラン「お勤めご苦労さん」
ゼフィア「お前も、いつまでも火の精霊などといっていてはいけないぞ」
ミスティリカ「ヤダもんヤダもん! ゾンボルト先輩に陵辱してもらうんだもん!」
ランディ「駄々こねんじゃねえ、この陵辱志願!」
克夜「ゾンボルト先輩はヘタレなんだ。陵辱なんかできるはずないだろ」
ズルズルズルズルズルズル
ラン「あ、ちょい、待ち、ふたりとも」
ランディ「なんですか、いっときますけどこの変態と会話成立させるの、すごく大変ですよ」
ラン「な、ミスティリカちゃん、やったっけ?
あんた、ゼフィアちゃんのこと好きなん?」
ランディ「こいつのは好きとかなんとかそういうんじゃないですよ。ただの変態性欲ですよ」
ラン「男の子は黙っとるの!」
ミスティリカ「今朝校門で、服装検査をしているゾンボルト先輩を見かけたときから決めてたんです」
ラン「へえ」
ミスティリカ「わたし、小さいころから見てました。
毎日毎日、毎朝毎朝、
(夜な夜な妻を陵辱せずにはいられない俺に、人の親たる資格はあるのか?)
って自己嫌悪に陥っているお父さんの姿を!
ゾンボルト先輩は完璧です!
わたしをぐちゃぐちゃに陵辱した朝に、ハラキリしかねない鬱に襲われそうな臭いがぷんぷんしてます。
あぁ、想像しただけでメガネ曇るわ」
克夜「Pちゃんくん、ああいうのはサディストなんだろうかマゾヒストなんだろうか」
ランディ「ただの変態だろ」
ミスティリカ(あぁ、こんな逸材を見出すなんて、わたしってなんて最低の屑なのかしら)
ランディ「地獄に堕ちろ変態!
サフィーネさんの子として生まれ変われ!
最低最悪の輪廻転生に組み込まれろ!」
ミスティリカ「サフィーネ・グレイスさんは、さすがにちょっと」
ランディ「お前なんかに拒否られてサフィーネさんもさぞかし心外だろうよ!」
35:それも名無しだ
09/09/17 01:08:22 428Bskp7
ラン「あんねえ、ミスティリカちゃん」
ミスティリカ「なんです?」
ラン「残念やけど、ゼフィアちゃんはもうウチと付きおうとるから」
ゼフィア「はぁっ!?」
ラン(シッ、ゼフィアちゃん。
あの子、会って5分でわかるレベルの変態やないの。
もうカノジョがいるってことにしとき)
ゼフィア「はぁ」
ミスティリカ「ほんとに付き合ってるんですかぁ?」
ゼフィア「う、ウム」
ラン「な、今日もこれから、デっ、デート行くトコやったし」
ランディ「ランさん、大丈夫っすか? デートって単語の時点ですでに噛んでるじゃないっすか」
ミスティリカ「なるほど、剣道の練習後、むせかるほど汗臭い男性と
腕を組んで歩くプレイなんて、あなたも相当のレベルに達しているようですね」
ラン「なんのレベルやの?」
ゼフィア「俺は、汗臭いのか・・・・・・」
ラン「ゼフィアちゃん、いちいち落ち込まんの! この子の思うツボやないの!」
【公園】
ゼフィア(ら、ラン殿っ、う、腕に)
ラン(シッ、あの子、まだ着いて来とるやないの。
恋人同士やなんていうなら、腕くらい組んどらんと不自然やろ)
ゼフィア(・・・・・・しかし、これは着いてきてるというか)
ドン ドン ドン
ラン「な、ミスティリカちゃん。
押しとるよね? メッチャ押しとるよね?」
ミスティリカ「だって、恋人同士が行く場所なんて決まってるでしょ?」
ゼフィア「なっ!?」
ラン「うん、そうなんよ。
ウチら、これから恋人同士が行くとこに行くの。
せやから、ミスティリカちゃんを連れてくことはできんの、わかる?」
ミスティリカ(こんな、陽も落ちていない時間から獣のように絡み合うふたりの目の前で、
女としてまったく相手にされないわたしって、なんて最低の屑なのかしら。
あぁ、想像するだけでメガネ曇るわ)
ラン「むしろ、あんたのメガネいつ雲っとらんの」
ゼフィア「けっ、けものっ!?」
ミスティリカ「あれ? どうしたんですか、その冷や汗は。
これから獣欲に身を任せようっていうひとには見えませんよ?」
ゼフィア「う、あの・・・・・・」
36:それも名無しだ
09/09/17 01:11:09 428Bskp7
ラン「もうアカン! ミスティリカちゃん!
ウチもドバン家の女や! 武術でハナシつけようやないの!」
ミスティリカ「わたしはドバン家の女じゃないし、武術でなんて話つけるっていわれても困りますよ」
ラン「じゃあ、なんでもええ! あんたの得意はなんや!?」
ミスティリカ「カクテルとか作るの得意です」
ラン「あんた、1ヶ所くらい18歳未満にふさわしい部分はないん?」
【竜巻亭】
レーツェル「スレイチェルが戻ってきたら面倒だから、手早く済ませよう。
一本勝負、フードでもドリンクでもいい。
ゼフィアが『美味い』と判断した方が勝ちだ」
ゼフィア「しかし、カクテルといっても、俺は、酒は」
ミスティリカ「安心してください。
アトリームにだってカクテルはあったそうですよ。
地球のカクテルとは比較にならないほど
『わたしお酒弱いのぉ』とかいっちゃう女子向けのがね」
レーツェル「私は個人的にそういう女子は嫌いだな」
ラン「どうでもエエですよ、そんなこと!」
タン タン タン
レーツェル「ほぅ」
ラン「ウチはカクテルのことよぅ知りませんけども、アレはどうなんですのん?」
レーツェル「カクテルとは、味はもちろん、その色彩、香り、その場の雰囲気などを総合して味わうものだ。
彼女は、さりげなく店内のBGMをChicagoの『Hard To Say I'm Sorry』に切り替えている。
ステア用にやや大きめに用意した氷を洗って角を取り、
バー・スプーンを中心に向けてミキシング・グラスの内側の壁を擦るようにまわしている。
スプーンを止めずに回転させながら抜き、ストレーナーをかぶせてグラスに注ぐ。
一連の動作に、まったくのブレがない。
あれは、昨日今日マドラーを手にした人間の動きではないぞ」
ラン「未成年の女の子が昨日今日マドラーを手にしたわけやないって、問題やと思いますよ」
タン
ミスティリカ「どうぞ。シー・ブリーズ。
名前の意味は『海のそよ風』。その名の通り爽やかで飲みやすいカクテルです。
1980年代のアメリカで大流行したんですよ。
レシピはウォッカとグランベリー、グレープフルーツ。
でもこれは、ウォッカを使わずグレープフルーツを増量した、
ヴァージン・ブリーズと呼ばれるノンアルコール・カクテルです」
ゼフィア「う、ウム」
ミスティリカ「どうです?」
ゼフィア「ウッ!」
ばたん!
37:それも名無しだ
09/09/17 01:12:53 428Bskp7
ラン「ゼフィアちゃん!」
ミスティリカ(あぁ、ウォッカを使っていないと謳っておきながら、
その実ガンガンに使っている、わたしってなんて最低の屑なのかしら)
ラン「スーパーフリーや! スーパーフリーの手口や!」
レーツェル「無効! この勝負、無効!」
ミスティリカ(勝負なんて根本的に興味がないのよ。
さぁ、ゾンボルト先輩。
アルコールに溺れて正体をなくし、わたしをグチャグチャに陵辱すればいい。
あなたは、どんな自己嫌悪に悶えてくれるかしら。
あぁ、想像するだけでメガネ曇るわ)
ラン「ゼフィアちゃんを離し!」
ミスティリカ「そこ、どいてくださいよ」
ラン「勝負を投げたのはあんたや!
ミスティリカちゃん、あんたは間違うとる!
ひととして、もう取り返しがないくらいに間違うとる!
ウチとてドバン家の女! あんたにゼフィアちゃんを好きにさせるわけにはいかん!」
ミスティリカ「それで、どうするんですか」
ラン「こうするんや!」
ブンブンブンブンブンブンブンブンブンブンブンブン!
ミスティリカ(あれは、お母さんが作ったデータにあった、
エンダークのミナール・ハンマーに類似した質量エネルギーによる攻撃。
原始的なだけに、その破壊力は極めて高い。
そして、原始的ゆえにモーションの予測は容易。
鉄球に強烈な回転モーメントを加えて、一気呵成に相手を叩き潰す!
そう、このタイミングで!)
ばちこーん
ミスティリカ(特色が書いてあるだけで攻略法もなにもないデータって、
それ根本的な解決になってませんよね)
ばったり
ミスティリカ「楽しい宴会でしたね」
ラン「立ち、ミスティリカちゃん。
まだ間に合う。まっとうな人生を歩むんや」
ミスティリカ「やめてくださいよ、手なんか差し伸べるのは」
ラン「ミスティリカちゃん」
ミスティリカ(敵に手を差し伸べられるような夢色チェイサーなんて、
全然メガネ曇らないわ)
38:それも名無しだ
09/09/17 03:21:00 JORvu9ww
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ノヌ レ /:l l:::::lヽ|l l:l し !/ ';:l,、-‐、::::l ';::::l:::::l:::::::::l:::
/ ヽ、_ /::l l:::::l l\l ヽ-' / ';!-ー 、';::ト、';::::l:::::l:::::::::l::
ム ヒ /::::l/l::::lニ‐-、`` / /;;;;;;;;;;;;;ヽ! i::::l::::l:::::::::::l:
月 ヒ /i::/ l::l;;;;;ヽ \ i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l l::l::::l:::::::::::::
ノ l ヽヽノ /:::l/:l /;;l:!;;;;;;;;;', ';;;;;;;;;;;;;;;;;ノ l:l:::l:::::::::::::
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.・. ・ ・. ・ ヽ \ リ レ ヽ! り レノ `y
39:それも名無しだ
09/09/17 11:28:34 Y4Qg1V1e
はんなりフリーター、性別イグニション、マッドサイエンティスト、変態
ゼフィア先輩はモテモテで羨ましいなあ
40:それも名無しだ
09/09/17 14:34:57 8Q+5zWm4
かっちゃんゼフィヤンに弟子入りすればいいのに。
そういえばこの二人武者頑駄無と騎士ガンダムのどっちが素晴らしいかで相容れない存在だった事思い出した。
41:それも名無しだ
09/09/17 19:31:20 oXr+3gkF
あー痒い、半年風呂入ってないから痒い痒い痒い
子作りまだー?
42:それも名無しだ
09/09/17 21:22:30 ke6Pd06h
↑シェルディア
43:それも名無しだ
09/09/17 23:11:57 wQDTCoFP
克夜「三国伝ひとり勝ちのこのご時世に武者も騎士もないもんだと思ってたけど、
武田信玄頑駄無や上杉謙信頑駄無が列伝形態で発売されるとはね」
ハザリア「メーカーお得意のランナー流用とはいえ、
やはり肉抜き穴とか気になる三国伝と比べて、列伝シリーズはガッチリ作ってあるな」
克夜「ロードオブザリングとか流行ってたころに、
ガンダルフガンダムとかゴラムアッザムとかやってたら、変わってたのかなあ」
ハザリア「それは個人的に欲しいが、壮絶に売れ残ると思うぞ」
ミスティリカ「アトリームにもBB戦士はあったそうですよ。
地球のよりはるかに、Ez-8がアプサラスかぶって零覇利法師なね」
ハザリア「それはただの武者○伝だ、すっこんでおれ」
ミスティリカ(興味ない相手はスルーし倒す男に、
女を陵辱する価値があるのかしら)
ハザリア「そもそも陵辱する気などないわ! あっちに行け陵辱メガネ!」
ミスティリカ「だったらメガネだけ陵辱すればいいじゃない!
さあ、ここにメガネ置いとくから!
そしてわたしは、(メガネより相手にされないわたしって、なんて最低の屑なのかしら)
ってメガネ曇らせるから!」
ハザリア「メガネを陵辱とは、それはどんな日本語だ! 逆に興味があるわ!」
ミスティリカ「ええと、まず、このメガネのツルの部分をにょうど」
ハザリア「黙れ、黙れよ! メガネの陵辱法など知りたくもないわ!」
ミスティリカ(あなたって、根本的に陵辱に向いてないわね)
ハザリア「いいたいことがあるならハッキリいえ、この陵辱志願のド変態が!」
44:それも名無しだ
09/09/18 02:31:02 1HYuz87J
ミスティリカ「ああん、ゼフィア先輩…あの身長190以上の大男で筋肉モリモリマッチョマンの変態に滅茶苦茶にされる私を想像するだけで眼鏡が曇るわぁ」
レイナ「(先輩もお気の毒に…)」
ゼラド「先輩は筋肉モリモリだけど変態じゃないよ。むしろ紳士だよ」
レイナ「惚れてる相手と夜二人っきりで稽古してるってのにまるで仲が進展しないのは紳士としてどうなのよ?」
ミスティリカ「そんな二人で『夜の稽古』なんて!」
ラン「あ…あかんてゼフィアちゃん…神聖な道場でこんなこと…」
ゼフィア「フン…本当は期待していたのだろう?」
ラン「そんなこと…あらへん」
ゼフィア「下着無しで道着を着ている女が何を言う。この淫乱な雌犬が」
ラン「こないな格好しろ言うたんはゼフィアちゃんやんか…」
ゼフィア「自分の変態性を俺のせいにするつもりか?ククク…これはお仕置きが必要だな」
ラン「や、やだ…前みたいに外でなんてイヤや。お願いやから堪忍して!」
ミスティリカ「こんな感じなのね?」
レイナ「んなわけないでしょうが!変な妄想聞かせるんじゃないわよ!ゼラドもなんか言ってやんなさい!」
ゼラド「頭のお医者さんに行ったほうがいいと思うよ?」
レイナ「そこまで言わなくてもよろしい!」
ミスティリカ「(ああ、猥談した挙句病人扱いされて身悶える私って、なんて最低の屑なのかしら!)」
ハザリア「………」(ガタン!)
レモン「で、その変態に目を付けられたわけ?」
ゼフィア「……」
スレイチェル「まままままあ我が友に限って変な間違いなど万が一にも兆に一にも起こるはずがないとスレイチェルは信じているので別に何の心配もしていないったらいないのであります!」
ゼフィア「俺は
ガッシャーン!!
ゼフィア「!?」
ハザリア「ゼフィア・ゾンボルト!」
ゼフィア「カイツ?蹴り倒したドアはちゃんと直しておけ
ハザリア「ごちゃごちゃ抜かすな!貴様に話がある!その老けた面をちょっと貸せ!」
ゼフィア「……。仮にも上級生に向かってその態度はなんだ?」
ハザリア「フン!良識人ぶりおって!その姑息なやり方であの女を誑かしたか!」
ゼフィア「何の話だ」
ハザリア「とぼけるな!俺は断じて貴様を許さんぞこの色情狂のエロマッチョが!いいから屋上に来い!前歯へし折ってくれるわ!」
ゼフィア「………来いというなら行ってやろう」
ハザリア「……チッ」
マリ「ふん、変態の妄想を真に受けて暴走した挙句ボコボコにされた、とそういうことか」
リトゥ「(そういえばハザリア君、妹さんの交際にも反対してたよね…ふうん)」
マリ「人の話をちゃんと聞かないからそういう目に遭うんだ。馬鹿め」
ハザリア「黙れ!黙れよ!あんなふざけた話を冷静に聞けるものか!~~~ッッええい怒鳴らせるな傷に響く!」
リトゥ「ハザリア君てさ」
ハザリア「ああ?」
リトゥ「…やっぱりなんでもないや」
45:それも名無しだ
09/09/18 02:50:06 Fycx7ltY
マーズ「うは! 来た来た来た!
アンドロメダ瞬のピンチに、『なんだ、この恐ろしく攻撃的な小宇宙は』の流れ!
さっすが、オンタイは自分の仕事をわかってんなーっ!」
ランル「『いよいよ再開した『聖闘士星矢ND』、
しかし、本来カラーで描かれたものをモノクロで掲載するのはいかがなものか。
あと、『聖闘士星矢LC』のパンドラ様におかれましてはお役目ご苦労様といわざるをえない』
更新・・・・・・と」
マーズ「レビューをするんじゃねーよ、この連載クラッシャー!
タダでさえ、次は夏掲載とかゆって、秋の香りただようこんな季節になっちまってんのによー!」
ランル「だって、ラーナちゃんに借りた『聖闘士星矢』一連のコミックス読んだら、
なんかハマっちゃったっちゃ」
ラーナ「そしてそのコミックス群は、もちろんロボくんの部屋から無断借用したものです」
マーズ「わーん! おれか、おれのせーなのか!
ゴメンよオンタイ! ゴメンよシホミおばちゃーん!」
ラーナ「よしよし、わたしの胸でたんと泣きなさい」
ラーナ「心折れた男なんて弱いものです」
ランル「ラーナちゃんはさらりとオンナのテク使うから怖か」
マーズ「わーん! すがりつく胸がぺったんこだよー!」
ラーナ「むか」
46:それも名無しだ
09/09/18 09:30:26 RCiZnNv7
スパロボK出身だから変態なのか、
姫騎士の娘だから変態なのか、それが問題だ。
47:それも名無しだ
09/09/18 14:55:23 DefOUuxD
このドM具合と眼鏡と妄想癖の組み合わせは某侍漫画の眼鏡くの一思い出すわw
48:それも名無しだ
09/09/18 17:50:23 xCbk/jaA
女が身長140㎝くらいの小柄で男が身長190㎝オーバーで筋肉が発達してると
普通にしてても凌辱じみてくるから変態曇り眼鏡の選択は正しいのかもしれない
しかし変態妄想変態曇り変態眼鏡変態の身長が200㎝オーバーという可能性もゼロではないが
49:それも名無しだ
09/09/18 20:50:05 iglDUomY
>>44
>ハザリアボコボコ
屋上
ハザリア「(ぶらーん)」
ゼフィア「支えてるのは左手だ。利き腕ではないぞ?」
ですね分かります。
50:それも名無しだ
09/09/18 21:50:04 4Ez1K+fm
ミスティリカ「アトリームにも巨女というジャンルはあったそうですよ。
地球よりもはるかに、鼻がなくてゴムゴムのピストルとか撃ちそうな」
ミツハル「ごくり」
マーズ「キョーミを持ったらダメだミツハルさん!
それ、ただのサクラ大戦だから!」
ミスティリカ「アトリームにも『ラブプラス』はあったそうですよ。
地球よりもはるかに、ミナグチボイスで呼んでくれる名前のレパートリーが広いね」
ミツハル「宇宙は・・・・・・っ、失ってはいけない星をひとつ失ってしまった・・・・・・っ!」
マーズ「膝を着くんじゃねーよミツハルさん!
そんなことばっかししてたから滅んだんだよアトリーム!」
ミツハル「うるさい、ロボのお前になにがわかる!
ミナグチボイスに『みつはるくん』て呼んでもらえず、
『みつくん』とかでお茶を濁している僕の気持ちが!」
マーズ「いっさいわかんねーし、わかんなくていーよ!」
ミツハル「君はいいよな、『マーくん』とかで満足するんだもんな」
マーズ「やめてよー、そんなことでミツハルさんから負け犬の目を勝ち取りたくねーよー」
ミツハル「そういえば、ひと頃バランガさんちのゼラドちゃんの声は
タンゲさんがいいんじゃないかとかいわれてたけど、
さすがに『う゛ぃーくん』とかはないよね。どうしてんだろ」
マーズ「どーもしてねーと思うよ」
ミスティリカ「アトリームにもノーマルな爽やか青春カップルはいたそうだけど、
そんなのは些細なことよね」
マーズ「ササイじゃねーよ! もっとジューヨーシしろよ!
ゆっとくけど、おれ、あんたのゆーことほとんどピー音かかっちまってっからな!」
51:それも名無しだ
09/09/18 23:38:00 8hYKxG0H
【屋上】
ユウカ「で、なにしてんの」
ハザリア「フンドシ一丁の野人に早贄にされたわけではないことだけは確かだ!」
52:それも名無しだ
09/09/19 02:12:46 h4ColCrC
生徒会室
ルナ「(また変な転校生が来たのか)呼び出してすまぬが、生徒会を束ねるものとして少し言っておかねばならんことがあるのでな」
ミスティリカ「(ああ、生徒会室なんていうと即座にイケない妄想がとめどなく溢れ出してくる私ってなんて最低な屑なのかしら!)」
ルナ「(聞いておるのだろうか?)・・・。まあ、こちらに来たばかりでいろいろと不慣れなことも多いであろうことは私もよくわかる」
ミスティリカ「(私が生徒会長だったら各委員会長を順番に呼びつけて爛れた放課後のイベントを毎日でも・・・)」
ルナ「(なんだか怖いぞこやつ・・・)しかしだな、そなたの言動は・・・その、少々問題があるという意見が多い」
ミスティリカ「(あと中等部の子たちも適当な理由付けて引っ張り込んで・・・)」
ルナ「(目つきがまともでない・・・)もう少し公共良俗といったものを弁えた行動を
ミスティリカ「あなたのことはいろいろ知ってるわよ」
ルナ「(ビクッ)は?あ、ああ・・・そうか。それは、なんというか・・・光栄だ」
ミスティリカ「あなたは私と似た匂いを感じるわ!」
ルナ「ちょっと待て!同じ匂いとはどういうことだ!私は
ミスティリカ「ふふふふふ・・・隠すことなんてないわ。あなたも特殊な性癖を持っているんでしょ?」
ルナ「な!?無礼な!私は至ってノーマルだ!」
ミスティリカ「仮性ならともかく真性変態は自分をノーマルだと思ってるものよ」
ルナ「いい加減にせよ!私のどこが変態だというのだ!」
ミスティリカ「具体的にいうと自分の父親をオカズに
ルナ「に゛ゃーーー!!」
ごきゃっ
ミスティリカ「(うふふふふふ!首筋に回し蹴りをくらいながらも相手の縞パンツを視姦し悶絶している私ってなんて最低の屑なのかしら!)」
ガッシャーーーン!
咲美「何よ!?なんか凄い音したわよ!?」
キャクトラ「姫様!ご無事ですか!」
ルナ「ふーふー」
咲美「・・・・。この白目向いて失神してる奴・・・たしか転校生の・・・なにがあったのよ?」
ルナ「知らぬ!キャクトラ!!」
キャクトラ「は、はっ!」
ルナ「今期の文化部の予算案を提出してくる!戻るまでにその変態を私の目の触れぬところに始末しておけ!」
キャクトラ「御意!」
ルナ「(ばたん!)」
咲美「いつになく機嫌悪いわねルナ」
キャクトラ「はあ・・・」
咲美「しかしこいつ、なんか若干嬉しそうな顔して白目向いてるのが・・・気色悪いわね」
ミスティリカ「(・・・うふ・・・・・うふふふ・・・・・)」
53:それも名無しだ
09/09/19 07:54:23 S9VwmngX
>>47
と言うか俺、画伯の声で脳内再生されてるんだがw?
54:それも名無しだ
09/09/19 10:32:51 orLmh1KM
最低の屑頑張りすぎだろw
55:それも名無しだ
09/09/19 14:47:48 qO0C1ol3
タンゲと聞いて一瞬ダンペイの方を想像してしまった。
56:それも名無しだ
09/09/20 04:28:09 R5FyvL1k
ミスティリカさんの容姿はどんなもんだろう。
アンジェリカをいい具合に最低のクズにしたような感じだろうか。
ミストさんの成分はべつにいいや。
57:それも名無しだ
09/09/20 13:28:31 PJ4JlQ1D
ゲーム音声『びー。一緒に帰ろ?
だって、カノジョだもん』
ヴィレアム「うわあぁぁぁっ!
危険だ、これは危険だ! なんか、現実とかどうでもよくなってくる!
いったい、どっちが現実でどっちが虚構なんだ!」
キャクトラ「友よ、落ち着け友よ。
どうにもなりそうもない方が現実だ」
ヴィレアム「なにお前、俺を虚構に突き落としたいのか!?」
キャクトラ「そして友よ。私は、友のあだ名は『びーくん』より『べーやん』の方が好きだ」
ヴィレアム「お前の好みなんかどうでもいいよ!
『べーやん』て、それゼラドがちっちゃいころ『ヴィレアム』って発音できなくてそうなっちゃってただけだし!」
レラ「・・・・・・」
キャクトラ「おや、どうしたのですレラ殿。
いつになく深刻な顔をして」
レラ「あ・・・・・・、び・・・・・・ぃ」
キャクトラ「『合い言葉はビー』? なにかの暗号ですか」
ヴィレアム「コナミ大好きか俺ら!?」
58:それも名無しだ
09/09/20 16:58:01 OfL6XNk0
ヴィレアムはもう少し上手く立ち回れれば現実の方もどうにかできそうな気がするんだが
上手く立ち回れないからこそヴィレアムなんだろうな
59:それも名無しだ
09/09/21 05:25:53 MBQK9jNM
ここ最近、ランディ・ゼノサキスの胸にはひとつの疑念がある。
「あのさあ、ちょっと思うんだけど」
うっそうと生い茂る熱帯林の中だった。足元がぬかるんでいて、ひどく歩きにくい。
そして暑い。さっきから、汗がとめどなく頬を滴り落ちている。
「お前ら、ひょっとして俺にウソついてないか?」
―なにいってるの?
―そんなことないわよ。
―あるはずないじゃない。
誰もいない空中に、鈴の音に似たクスクス笑いが広がる。
「なに笑ってんだよ!
考えてもみりゃあ、ガキのころからずっとお前らの言うとおりに歩いてきたのに、
なんでいつもいつもわけのわかんないとこに出ちまうんだよ!」
ランディは、ちょっと近所のコンビニにシャーペンの芯を買いに来ただけだった。
それが、気が付くとどこともわからない熱帯林の中にいた。
「お前ら、束になって俺のことからかってんじゃないのか?」
小石の陰から、「プッ」と噴き出す声が聞こえた。
「いま噴き出したやつ誰だ!? 出てこい!
とっちめて精霊王かなんかのところに突き出してやる!」
―いや、精霊王とかないから。
―精霊って、基本勝手気ままな生き物ですから。
―王様とか、そういうのないから。
―たまに王様とか魔王名乗ってるイタいのがいるけど、うちらみんなスルーしてるし。
「うるせえよ! なんで精霊にまでそんなダメ出しされなきゃならねえんだ!」
精霊達がキャッキャとはしゃぎながら空中を飛び回る。
普通の人間に精霊を見ることは出来ない。はた目からは、ランディは誰もいない空中
に向かって喚いているひとでしかない。そんなことだから、ランディは普段学校で妄想
癖がある人間扱いされる羽目になる。
しかしランディの目には、紙人形のようなものがひらひらと空中を飛ぶ姿が、はっきり
と見えるのだ。
精霊たちに愛された子供。地底世界ラ・ギアスの神聖ラングラン王国でランディが生
まれたとき、お城の魔法使いだか錬金学士だかがそんなことをいったらしい。
ランディには、物心ついたときから精霊の姿が見える。正確には眼球で見ているわけで
はなく、プラーナでその存在を感じ取っているらしい。元々物質世界の住人でない精霊には
定まった姿などない。見る者によっては、羽の生えた少女にもなるし、とんがり帽子を
かぶったお爺さんにもなる。
しかし、考えてみると精霊が見えて得した経験という経験が、まったくない。精霊の力
を借りて魔法のようなものが使えることは使えるが、「だからなんだよ」といわれると、
「別に」と俯くしかない。火を起こしたいなら火の精霊よりもチャッカマンの方が簡単だし、
風が欲しければ風の精霊よりも扇風機の方が風量の調節も出来て便利だ。まったくもって、
機械文明万々歳だ。
60:それも名無しだ
09/09/21 05:27:27 MBQK9jNM
唯一助けになるとすれば、道に迷ったときに案内をしてくれることだが、それもどうも
怪しい。精霊たちときたら、いつもクスクス笑うばかりでちっとも目的地に近づけてくれ
ないのだ。
「よぅし、ちょっと待て。話し合おう。腹割って話あおう」
ランディは湿った落ち葉が積もる地面の上にどっかりと座り込んだ。
「いつからだ。いつから俺のことからかってた」
―いまさら。
「いまさらってなんだよ!
はは~ん、さては相当昔からからかってたな!?」
―あまり声を張り上げないで。
―わたしたちはみんなあなたのことが好きなのよ。
―生まれたばかりのあなたを見て、なんてイジりがいのありそうな子なんだろうって話してたのよ。
「赤ンボの頃からか!?」
精霊ってね、とってもイタズラ好きなの。幼いころ、錬金学士の母親がそんなことを
いっていたのを思い出す。
「なにがイタズラ好きだ! タチ悪ィよ! 十何年もなにしてくれてんだ!」
―1秒たりとも飽きなかったわ。
―逆に、よく今日まで気付かずに。
「いまいったのはお前かニレの樹の妖精! ちょっとそこ動くな!」
ランディは立ち上がり茂みの中に踏み入ろうとした。
それを迎えるように、ガサガサッと枝をかき分ける音がした。
「バシレウスキック!」
一瞬、火の粉か山猫の精霊が出たのかと思った。
直後、強烈な衝撃にアゴを突き上げられる。一瞬視界がブラックアウトし、脚から力が
抜けていく。
「ちょっと、やだ、大丈夫!?」
「うぅ、くそ、ニレの樹の精霊が、ニレの樹の精霊が」
「なにいってるかわかんないけど、あれ、マングローブだよ。
正確にはヤエヤマヒルギだけど」
空中で、樹の精霊がキャッキャと手を叩いて喜んでいるのが聞こえた。
今度こそ、ランディはがくりと意識を失った。
61:それも名無しだ
09/09/21 05:28:43 MBQK9jNM
◆
目を覚ますと、ランディは潰れかけたアバラ小屋の中にいた。ベッドもなにもない。
あちこちからスポンジの飛び出したマットの上に寝かされていた。
「うぅん」
額を抑えながら上半身を起こす。窓ガラスもはまっていない窓枠から、マングローブ
の枝が見えた。樹の精霊に対するムカつきが蘇る。
「くそぅ」
「あ、よかった。目、覚めたんだ」
ドアが開いて、誰か入ってきた。女の子だった。全身健康的に日焼けしていて、手には
水の入った桶をぶら下げている。汗の染みこんだティーシャツとスパッツという、
運動選手のような格好だった。肘と膝にはボロボロになったパッドを当てている。
「ゴメンね、精霊とかなんとかいって近づいてきたから、思わず」
ぱたぱたと近づいてきて、女の子は桶からタオルを拾い上げてぎゅうと絞り始める。
年齢は、ランディとおなじくらいだろうか。ちょこんと鼻が低く、笑顔が貼り付いて
いるようなカマボコ形の唇からは小さな八重歯が覗いている。あまり髪型に興味がない
のだろうか。赤茶けた髪の毛にはあまり櫛を入れていないようで、ボサボサと背中に
かかっていた。
可愛らしい少女だとは思う。髪の毛をもっとしっかりセットしていたら、相当な美少女
になるだろう。しかし、なぜだろう。もちろん少女の顔に見覚えはない。それなのに、
その顔を見ていると妙な胸騒ぎを覚えるのだ。精霊たちの裏切りが発覚して、自分が一時
的な人間不信に陥っているのかもしれない。
「あそこまでクリーンヒットするとは思わなくて」
「いや、なんていうか、肉体的なダメージより精神的ショックが」
「女の子に蹴り倒されたのが、そんなにショック?」
少女が少し悲しそうな顔をする。
「いや、ニレの樹の精霊が実はマングローブの精霊で」
「ねっ、あなた、ひょっとしてランちゃんじゃない?」
「は?」
「えっと、ほかには、Pちゃん、チーズ、ゾロリ先生、デューク・フリードの代役、
『トイ・ストーリー』の吹き替え下ろされたひと」
「誰がヤマちゃんだ!?」
声が似ているからなのか、方向音痴だからなのか、ランディはなぜか声優のヤマデラコ
ウイチ氏呼ばわりされることが多い。
「ああ、やっぱランちゃんだ」
少女はニコニコ笑いながら、ランディの額に濡れたタオルを載せる。
ようやく、わかった。顔の造りそのものはまったく似ていない。ただ、にっこり笑い
ながらランディをからかう月面出身の同級生に、この少女はそっくりだった。たしか、
妹がふたりいると聞いたことがある。
「どっちだ」
「え?」
62:それも名無しだ
09/09/21 05:29:50 MBQK9jNM
「ええと、芽夜か、統亜か」
「統亜だよ。紫雲家長女!」
紫雲統亜は、両手を腰に当てて得意そうに名乗る。
「お兄ちゃんからのよく聞いてたんだよ。手紙とか電話で。
ちょっぴり離婚歴があるけど、
『7色の声を持つ男』っていうあだ名があって役の幅がすごく広いって。
『キングダムハーツ』にいたってはスーパーヤマちゃん大戦っていっても過言じゃなくて、
特にドナルドダックの演技は世界のディズニーからも認められてるって」
「俺じゃないから。それ、ヤマデラさんの経歴だから」
「ね、ランちゃんさ。B型じゃない?」
「いきなりなんだよ」
「だって、シャクユミコとかもちっちゃいオッサン見たとかよく言うし」
「シャクユミコ扱いかよ!
シャクユミコなんてなぁ、そんなもん、大好きだよ!
ドクターコトーと結婚する直前のウチダユキを彷彿とさせる美人さんっぷりがたまんねえ!」
「へえ、シャクユミコ、好きなんだ」
統亜がしょぼんと顔を落とす。その視線の先には、ずいぶん控えめなサイズの胸があった。
「月にいるって聞いてたけど?」
「うん、お兄ちゃんはそう思ってるかもね。
でも、半年くらい前からここにいるよ」
「どこだよ、ここ」
「タイ王国」
なんで町内のコンビニに行こうとしてタイ王国にたどり着くんだろう。ランディは
つくづく、精霊達のタチの悪さを思い知った。
「ランちゃんこそ、なんでこんなとこいるの?」
「いや、シャーペンの芯が」
「う~ん、シャー芯かあ。難しいかも。ここ、バンコクから遠いし」
「お前は? こんなとこでなにしてんだよ」
「ムエタイ!」
バンテージを巻いた小さな拳を頭上に挙げて、紫雲統亜は嬉しそうに答える。
ランディは小屋の中を見まわした。天井からは古ぼけたサンドバッグが吊られ、
ベニヤ板が剥き出しの床の上には古ぼけたダンベルやゴムチューブが転がっている。
住まいというより、トレーニングルームのようだった。
「ええと、ムエタイ?」
タイの国技で、キックボクシングの元祖とも呼ばれている格闘技だ。キックやパンチ
に加えて肘や膝なども使う過激さが一部で人気だ。立ち技最強の呼び声も高く、そのた
め格闘マンガなどでは、ナントカ流古武術とか怪しげな技を使う主人公の強さを引き立
たせるための踏み台として使われることが多い。
「なんでまたムエタイなんて」
63:それも名無しだ
09/09/21 05:32:08 MBQK9jNM
日本の相撲とおなじように、ムエタイでも女性がリングに上がることは近代まで許さ
れなかった。現在でも、女子ムエタイは決してメジャーな競技ではない。
「うちのお母さん、膝蹴りが強烈なことで有名で」
「だからってムエタイチョイスするのがわかんねえよ。
なんかテキトーな中国拳法じゃダメだったのかよ」
「あと、サタケマサアキさんが声当ててたころのジョー・ヒガシが好きで」
「なんでよりにもよってそこを突いて来るんだよ!
サタケなんて、総合格闘ブーム初期に試行錯誤した挙げ句に失敗した選手じゃねえか!
レスラーと戦おうとして筋肉付けたら動きがトロくなって、
せっかくの打撃も台無しで、だいぶグダグダな感じで去っていったじゃねえか!
べつにヒヤマ声のジョーでいいだろ!
それ以前に、なんでジョーに行ったんだ! キングさんでいいじゃねえか!」
「でもあたし、フランス人じゃないし」
「ジョー・ヒガシだって月世界人じゃねえよ!」
「わっ、やっぱりランちゃんはポンポン突っ込むんだね」
「人の話を聞け!」
「やっぱ、『ミリオンダラー・ベイビー』観て、超感動したし!」
「じゃ、ボクシングやれよ!」
「あたしも、ヒラリー・スワンクさんみたくなる!」
「待て! お前、『ミリオンダラー・ベイビー』最後まで観てねぇだろ!」
アカデミー賞受賞作品である『ミリオンダラー・ベイビー』は、その鬱にならざるを
得ないラストが評判だった。
「統亜」
ドアが開いて、男がひとり小屋の中に入ってきた。
ランディはマットの上にごろりと寝転がり、男から顔を背けた。長身で、藍色のような
髪をした男性だった。フューリー独特の入れ墨が施された顔にはなぜか眼帯を着けてい
るが、突っ込んだら負けのような気がした。
「準備は出来ているか」
「うん、アル=ヴァン下段平トレーナー!」
「なんだそりゃあっ!」
うっかり、ついうっかり、ランディは起き上がってしまった。
「アル=ヴァン! あんたこんなとこでなにやってんだよ!」
アル=ヴァンは元フューリー聖騎士団の幹部で、現在は家庭に寄りつかず紫雲家の子供
にちょっかいを出してはあしらわれているダメなオッサンだ。
「違うよ、トレーナーはアル=ヴァンじゃないよ。
アル=ヴァン下段平だよ!」
「わかった、お前はバカなんだろう!」
統亜の兄克夜も、わりとひとの話を聞かない男だった。しかしこの少女は、さらに輪を
かけて人の話を聞かない。そのくせ、ひとの言うことは素直に信じ込んでしまうらしい。
いつか悪い男に騙されそうというか、今まさに悪いオッサンに騙されている真っ最中の
ようだった。
64:それも名無しだ
09/09/21 05:33:54 MBQK9jNM
◆
公式戦でないことは明らかだった。マングローブの森の中に無理矢理割り込ませるようにして、
粗末なリングが設置されている。観客席なんていう上等なものもない。50人くらいのオッサンが
地面の上に布を敷き、ディグリーというタイの安酒を飲んだりタバコを吸ったりしている。
聞いているだけで腸が捻れてくるような音楽に合わせて、統亜がリングの上でワイクルー
と呼ばれる試合前の舞踏を披露していた。赤茶けた頭にモンコンと呼ばれるリングをはめ、
伝統的なムエタイ衣装を着ている。踊りのテーマは、「グランディードのピンチにフューリー
創世の伝説に登場する龍神が駆けつけてきた情景を表現してる」らしい。コメントに困るの
で黙って観ていることにした。
黙っていられなくなったのは、入場してきた対戦相手を見たときだった。
「なんなんだよ、ありゃあ!?」
身長は180センチ近い。タンクトップの胸元を押し上げている長方形は、明らかに女性
の丸みを持っていなかった。肌は真っ黒で、腹筋はくっきりと8つに割れている。むっつり
と閉じられた唇のまわりには、うっすらとヒゲまで生えている。
「男じゃねえか!」
「違う。デイジー選手はれっきとした女性だ。ちょっぴりボーイッシュなだけだ」
「ヒゲ生えててなにがボーイッシュだよ!」
「文句があるなら確かめに行ったらどうだ」
「性別はともかく、あれ、ウェイト差があまりにも大きいだろ!」
統亜は小柄な少女だった。どう高く見ても、身長160センチは越えないだろう。デイジー
選手と向き合うと、まるっきり大人と子供だった。
「無差別級こそ本当の柔道だと、猪熊滋悟郎氏が仰っていた」
「柔道の話じゃねえか!」
「甘ったれるな。戦場において、敵が大きかっただの小さかっただの言う気か!」
「偉そうなこと言いたいなら、札束数えるのをやめろ!」
アル=ヴァンの手元には大量のバーツ紙幣があった。
この試合は、明らかに非公式なものだ。ルールそのものがあるかどうかも怪しい。賭け
が行われているのは、むしろ当然だ。アル=ヴァンは、全額統亜に賭けているに違いない。
格闘技において、体格差を克服するのは並大抵のことではない。ほぼ全員がデイジー選手
に賭けたに違いない。そしてアル=ヴァンは、自分で大穴を送り込んでおいて、全額統亜
に突っ込んでいるのだろう。
「あんたは紫雲家に恨みでもあんのか?」
「恨みはないが、統夜ばっかりズルいとは思う」
紫雲統夜には妻が3人もいる。統亜と克夜も、母親は違う。母親どうしの仲はいいらし
いが、だからといって月面世界で一夫多妻が一般的なわけではないらしい。
「統夜には性格のいい嫁が3人もいるのに」
「それはしょうがないだろ!」
アル=ヴァンは家庭でイヤなことがあったオッサンのような顔でカネを数え続けている。
このオッサンはもうダメだ。
「おい、おい!」
65:それも名無しだ
09/09/21 05:35:05 MBQK9jNM
ランディはリングに駆け寄り、ロープ越しに統亜を呼んだ。
「あ、ランちゃん、観に来てくれたんだ」
「お前、なに考えてるんだよ」
「見ててね、あたし、必殺のバシレウスキックで勝っちゃうから!」
「ひとの話を聞け!」
「なんか話があるの?」
「棄権しろ。お前の勝てる相手じゃねえ!」
それまで満面の笑顔だった統亜が、突然唇をとがらせてぷいと横を向く。
「ヤダ」
「ヤダじゃないだろ!」
「勝つもん」
「ありゃ男だぞ!」
「そうかなあ」
デイジー選手はスパッツ姿だった。男性独特の「もっこり」はない。しかし、そんなも
のは切り取ってしまえばいいだけだ。
旧世紀、ふたつの大国が冷戦を繰り広げていた時代のことだ。陸上競技の記録などを
見ると、信じられないほどの好成績が出ていることがある。しかしこの記録は、スポーツ
マンシップに則って正々堂々と出されたものではない。当時の世界大会は、現代以上に
国同士のケンカという側面が強かった。薬物検査の手法が確立していなかったことも
相まって、筋肉増強剤や向精神剤の使用が横行した。性転換手術を受けた男が女性の
大会に出たことまであったという。
現在、選手がノイローゼになるほど厳密な検査が行われているのは、不正の過去が大量
にあるからにほかならない。
「骨盤の形見ろ。赤ん坊入れとくスペースなんてないだろ。あれは間違いなく男だ!」
「それでも、勝つもん」
「話を聞けっていってるだろ!」
「お兄ちゃんだったら、あれにも勝つもん」
「そりゃ、お前の兄貴だったら」
「あのさ」
いつになく深刻な顔をして、統亜がぐいと近づいてくる。
「うちのお兄ちゃん、まあ、言動はあんなだけど、けっこうなんでも出来るんだよね」
「まあ、そうだな。言動はあんなだけど」
統亜の兄紫雲克夜は、ハーレムを作るために地球に来たなどと公言している。ハーレム
を維持するためには生活力が必要不可欠だという理由で、電卓検定だの野菜ソムリエだの、
わけのわからない資格ばかり取得している。最終的には司法試験にもパスするつもりらしいが、
それを教師に笑い飛ばされない程度の成績を取っている。加えて、幼いころから鍛錬を
続けてきた剣術も相当の腕だ。顔もそれなりに整っているし、ふた言目にはハーレム
ハーレムと言い出す悪癖さえ直せば、案外本当にハーレムを作れるかもしれない。
「お母さんが3人もいるお父さんもなんだけど、あんまり優秀なひとって嫉妬されやすいでしょ?
だからわざとバカっぽいこというひとがいってるんじゃないかなって、あたしは思ってるんだけど」
「いやぁ、そりゃ肉親の欲目ってやつだと思うぞ」
66:それも名無しだ
09/09/21 05:36:32 MBQK9jNM
「でもあたし、お兄ちゃんがなにか出来なかったとこって、見たことないもん」
「俺は年がら年中見てるけどな。ハーレム作れてないとことか」
「でもさ、あたしは違う。中途半端だもん」
統亜が目線を落とす。
「あたしは頭悪いし、運動だってズバ抜けてるわけじゃないし、魔法みたいのが使えるわけじゃないし」
「いや、魔法は使えても、あれあんまり役に立たないぞ」
「貧乳のくせに、なぜか胸が揺れるっていうのもわけわかんないし」
たしかに、統亜の胸は小ぶりだ。揺れるほどのボリュームはない。にもかかわらず、
統亜が少し身を屈めるだけで、その胸はぷるんとひとくちサイズのゼリーのように揺れる
のだ。なんというか、性欲とは別に、不思議な生物に遭遇したような気持ちになる胸だった。
「ほんとだ。お前の胸、それなんで揺れるんだ」
「たぶん、紫雲家式乳揺れ法のおかげ」
「ろくでもねえ教育してるな、紫雲家は」
「こういう中途半端なのは、もうヤダ。
あたしは、お兄ちゃんみたいになんでもできなくていい。
ひとつ、たったひとつ出来ればいい」
「それがムエタイか?」
統亜はまた笑顔に戻って元気よく頷く。
「『ミリオンダラー・ベイビー』のヒラリー・スワンクさんみたいになるの!」
「そんなに『ミリオンダラー・ベイビー』が好きなら、最後まで観ろ!」
「グワーグワー」とアヒルのような泣き声を出していたデイジー選手のワイクルーがいつ
の間にか終わっていた。明らかにカタギではないレフェリーが、「こちらへ」と統亜を招いている。
「じゃ、行ってくるね」
「おい」
「跳ねても揺れても紫雲家長女! あたしの胸が揺れてる限り、絶対勝つもん!」
なおも言葉をかけようとしたランディの肩を、ぐっとつかむ手があった。
アル=ヴァンだった。唇をまっすぐに引き結び、リングを見つめている。
「俺も、一度は引き留めたんだ。しかし彼女の意志は固かった。
そこで俺も仕方なく、彼女を大穴馬に仕立て上げざるを得なかった」
「『ミリオンダラー・ベイビー』みたいになってからじゃ遅いんだぞ!」
アル=ヴァンは無言のままだった。
ゴングが鳴る。
最初に動いたのは統亜だった。小刻みなフットワークでデイジー選手の死角にまわろう
としている。正面から打ち合っても勝ち目はない。身軽さを活かして、小刻みに攻撃を
入れていく作戦か。
作戦としては悪くない、オーソドックスなものだ。しかし、30センチ近い身長差はいか
んともし難かった。
デイジー選手が無造作なバックブロウを振るう。それだけで、せいぜいミニ・フライ級、
下手をすればアトム級の統亜は紙人形のように吹っ飛んだ。
わっ、と観客達が湧いた。ボロボロのシャツを着て安酒をあおっている男たちが幼児の
ように手を叩く。
67:それも名無しだ
09/09/21 05:38:55 MBQK9jNM
統亜は果敢だった。ダメージを見せない足運びでなおもデイジー選手との間合いを詰め
ようとする。しかし、デイジー選手が左腕を伸ばす、たったそれだけのガードでパンチが
届かなくなる。腕の長さが違いすぎるのだ。パンチを流すと同時に、デイジー選手の
巨体が弓なりに反る。至近距離から突き上げるような膝蹴りだった。統亜のささやかなバスト
のすぐ下、ミゾオチにめり込む音がリングサイドにまで聞こえた。
統亜の身体が一瞬宙に浮く。その動きに合わせて、デイジー選手が短くジャンプした。
真っ黒な肘が振り上げられる。そして、勢いよく落とされた。鈍い音がする。統亜の身
体がリングに落ちて、丸太のように転がった。
普通なら、ここでレフェリーが止めに入る。しかし、人相の悪いレフェリーは退屈そうな
顔をしてリングの隅に突っ立っているだけだ。
観客達の熱狂が湿度の高い空気を揺らす。
デイジー選手が統亜の上にのしかかる。そして、拳をメチャクチャに振り下ろし始めた。
とても見ていられない。最初から、まともな試合ではなかったのだ。肘サポーターや
膝サポーターはおろか、ボクシンググローブすらはめていない。軍手を少し厚くしたような
わけのわからないものを手に巻いているだけだ。
ボクシンググローブはダメージを内部に浸透させ、出血よりも先に脳震盪が起きやす
いように出来ている。KOがぽんぽん出た方が、観客は喜ぶからだ。しかし、この試合は
違う。あんな薄手の手袋で殴り合えば大量の出血が起こる。ここの観客は、流血を望んで
いるのだ。ヘッドギアすら着けていないのは、そのほうが苦痛に歪む顔を楽しめるからだろう。
「目を開けろ」
耳のすぐ側でアル=ヴァンが低い声で呟く。
「統亜は自らの意志でリングに立った。
私たちに出来るのは、最後まで見届けてやることだけだ」
「最後って、いつまでだよ。『ミリオンダラー・ベイビー』のラストみたいになるまでか!」
リングの上で統亜が動く。完全なマウントポジションになっていなかったことが幸いした。
デイジー選手の拳を払いのけて上体を起こす。両腕をがっちりとデイジー選手の胴体に巻き付けた。
クリンチ。違う。統亜とデイジー選手は、互いの額を擦るように頭をぶつけ合っていた。
ムエタイの特色でもある首相撲だ。統亜は、まだ攻撃の意志を失っていない。
デイジー選手がウェイトに任せて統亜を押し潰そうとする。統亜が一歩後退する。デイジー
選手が前のめりのような姿勢になった。両者の身体の間に空間ができる。
「バシレウスキック!」
まさに全身を使った膝蹴りだった。デイジー選手のレバーにクリーンヒットしている。
おなじ階級同士なら、文句なくKOが取れただろう。
しかし、それで終わりだった。デイジー選手の身体にすがりつくようにして、統亜の
身体がくずれおちる。デイジー選手は平然と立ったままだ。ハエがぶつかった程度の顔
でグローブを脇腹に当てている。
ゴングがまだ鳴らないことに、ランディは総毛立った。まさか、まだなのか。この上
まだ統亜を痛めつけようというのか、このリングは。
「やめろ、やめーッ!」
ランディはロープを飛び越えてリングの中に入っていった。統亜に駆け寄る。無表情
に突っ立っているデイジー選手に向けて手を振るい、追っ払う。
68:それも名無しだ
09/09/21 05:40:50 MBQK9jNM
「行け、あっち行け! 離れろ!」
統亜を助け起こす。思わず、顔を背けそうになった。あの低い鼻が、どこにあるのか
わからないほど顔じゅうが腫れ上がっている。
「クソッ、てめぇら、コノヤロウ!」
「・・・・・・ラン・・・・・・ちゃん」
ランディの腕の中で、統亜がうっすらと目を開けていた。左瞼は腫れ上がっていて、
右目しか動いていない。
「喋んな! 口ン中切れてるだろ」
「負けちゃった・・・・・・? あたし」
「うるせえ、立派だったぞ。お前は、立派なムエタイファイターだった!」
「くやしい・・・・・・な。『ミリオンダラー・ベイビー』みたいになれなくて」
「演技でもないこというんじゃねえ! 『ミリオンダラー・ベイビー』みたいになられてたまるか!」
「お兄ちゃんだったら・・・・・・、ふざけたこと・・・・・・いいながら勝っちゃうんだろうけど・・・・・・」
「あんなふざけたバカヤロウのことは考えるな!」
「なりたかったな・・・・・・。ヒラリー・スワンクみたいに・・・・・・、カッコよく」
「心配すんな」
ランディは、そっと統亜の身体をリングの上に横たえた。
「途中までしか観てなくても、『ミリオンダラー・ベイビー』、好きなんだろ。
だったら、ヒラリー・スワンクの後ろにクリント・イーストウッドがいたことくらいわかるだろ。
俺はあのイーストウッドほど歳とってないけど。
もうちょっと若い頃のイーストウッドのマネゴトくらいは出来るから」
のしのしとリング上を歩き、相変わらず無表情のレフェリーに詰め寄る。
「おい、飛び入りだ。俺が出るぞ。あいつとやらせろ」
レフェリーが困惑顔で顔を横に振る。
「なんか資格がいるのか? じゃ、日本のデータ調べてみろよ。
ランディ・ゼノサキス。小学校のころ、ジュニアボクシング大会で優勝してるから。
中学のときはちょっと、会場にたどり着かなかったけど。
ムエタイなんてどうせ、ボクシングに蹴りと肘と膝がくっついただけだろ?」
足元のロープ越しに、なにかぎゃんぎゃんと喚いている老人がいた。訛りの強いタイ語
でよくわからないが、「お前は男じゃないか」といっているらしい。どうやらコミッショ
ナーかなにからしい。
「うるせぇな、あれが女だってなら、俺だって女だよ。
なんだ? なにがいる?
リボンでも着けるか、スカートでも穿くか? なんならメイド服着て戦ってやろうか!」
老人がまた喚くが、訛りが強すぎてよくわからない。
「べつに、オラはええだよ」
後ろから低くしゃがれた声がする。デイジー選手だった。やはり、声も男そのものだ。
「さっきから耳障りだっただよ。
リングサイドでグワグワ、ヘタクソなドナルドダックみてえな声出しやがって」
「なにがヘタクソだよ!」
「うんにゃ、ヘタクソだ。おめぇ、オラを知らねえだか。
もう5年、このタイでドナルドダックの声当ててるだ」
「知るかそんなもん! なんでムエタイやってんだ!」
69:それも名無しだ
09/09/21 05:42:17 MBQK9jNM
「オラは家が貧乏だ。声優のギャラだけじゃ、とても食ってけねえ。
この国じゃ、貧乏なガキはムエタイやるか身体売るしか生きてく道はねえ。
男子ムエタイで結果出せないなら、タマとサオ切るくれえなんでもねえ。
オラは諦めねえ。絶対夢を叶えてみせる。
カネを作って、本家ディズニーで本物のドナルドダックの声をあてるだ」
「ドナルドダックへの情熱なんか語られたって俺が知るか!」
「ドナルドダック役は、世界中でオラひとりでいい。
ほかにドナルドダック役狙ってるヤツは、容赦なく潰すだ」
「べつにドナルドダック役は狙ってねえけど、俺にムカついてくれてるってなら好都合だ。
俺もな、てめェにムカついてるんだよ」
コミッショナー側がなにかコショコショと話し合い、やがて頷き合った。どうやら決まった
らしい。ランディは上着を脱ぎ、ジーンズを穿いただけの格好になった。
「おい」
リングサイドでアル=ヴァンがグローブをぶら下げていた。ランディはバンテージだけ受け
取った。どうせ、ルールなんてあってないような試合だ。
「統亜は?」
「問題ない。こういう試合だからな。脳や内臓に浸透するようなダメージは受けていない。
血が多めに出ただけだ」
統亜は、アル=ヴァンの後ろのベンチに横たわっていた。意識がないのか、ピクリとも動かない。
「じゃ、あいつには女の顔傷付けた罪だけ数えさせてやる」
リング中央に立つ。デイジー選手と向き合う。男のランディと比べても、デイジー選手は
ひとまわり大きかった。ウェイト差は考えたくもない。
統亜は、いったいどれだけの威圧を突き抜けてデイジー選手に向かっていったのだろう。
そう考えると、ランディはぎゅっと拳を握った。
レフェリーの説明もそこそこにゴングが鳴る。
試合開始早々、デイジー選手が突っ込んでくる。統亜戦とは打って変わったアグレッシブ
さだった。
ランディは顔面のガードを上げた。そのガードを下から割り込むように、衝撃が来る。
タッマラーと呼ばれるムエタイの縦肘攻撃だった。さらに、ティップという前蹴りが来る。
バックステップでダメージを散らしながら、ランディはフットワークを使ってデイジー
選手の横に回り込んだ。ジャブ、そして右のストレート。ガチンと硬い感触がバンテージ
を巻いただけの拳を迎え撃つ。
デイジー選手は片膝を上げてランディの拳を受け止めていた。ヨッパンというムエタイの
防御法だった。その堅牢な防御力は、鋼鉄の盾とも呼ばれている。つま先を一瞬リングに着けた
かと思うと、テッサイという左ミドルに変わって戻ってくる。
ランディの動きが止まる。そこに、テッカークワァー、テッカンコーサイ、テッカンコ
ークワァー。強力極まりないムエタイの打撃技がランディの全身に降り注ぐ。
「コンチクショウ」
ランディはマウスピースを噛み締めた。全身を打つ打撃の痛みを無視して、ずるりずるり
と前進する。
70:それも名無しだ
09/09/21 05:44:16 MBQK9jNM
デイジー選手がニヤッと笑ったような気がした。
長い両腕がランディの胴体にまわる。がっちりとつかまれた。しまった。クリンチだ。
ボクシングでは、この姿勢からの攻撃法がほとんど開発されていない。対してムエタイ
は売りのひとつが首相撲の攻防だ。身体を左右に揺さぶられ、腹に、アバラに膝を入れられる。
秒刻みでダメージが蓄積される。吐き気がマウスピースを押し上げる。いますぐ膝を
着きたいという欲求が頭蓋骨の中でぱんぱんに膨れ上がる。
―ランディ、ランディ!
耳元で囁く声があった。
幼いころから慣れ親しんできた小さな存在がランディのまわりに集まっていく。全身の
肌がほうと温かくなり、傷口の痛みが薄らいでいく。
―諦めないで。
―負けないで。
―さあ、目を開けて。
―私たちが力を貸してあげる。
―私たちはみんなあなたの味方よ。
―ランディ・ゼノサキスよ、いまこそ汝に風の魔装・・・・・・。
「うるせぇ、黙ってろクソ精霊どもーっ!」
マウスピースを吐き出して、ランディは喉が張り裂けんばかりに叫んだ。
「なにが精霊だ、なにが魔装機神だ、
風の魔装機神とかいって、全然風系の技持ってねえし!
イメージほど高機動じゃねえし!
お前ら、統亜のこと抱き上げたのか。
あいつな、軽いんだよ。細いんだよ。小さいんだよ。
それでも、一歩も退かずにこのカマ野郎に立ち向かっていったんだよ。
なのに、俺は精霊におんぶに抱っこで反撃しろってのか。
冗談じゃねえ。そんなの、全然カッコよくねえ。
俺はなぁ、現代版兜甲児って呼ばれた男の息子なんだよ!
ダーティーハリーやってたころのイーストウッドくらいのことしねえと、示しつかねえよ!」
デイジー選手の脇腹に一発フックを入れて拘束から逃れる。一瞬バックステップして、
すぐにリングを蹴った。全身でデイジー選手に飛びかかる。
デイジー選手は余裕の表情だった。フライボールを取る野手のような落ち着きで片脚を上げる。
ランディは再度リングを蹴った。さらに加速する。顔の皮膚が風圧に押されて後ろに流れる。
デイジー選手がテックワァーを放つ。まだ十分にモーメントが乗り切っていない右ミドル
を、ランディは片手ではたき落とした。デイジー選手の姿勢が崩れる。がら空きの背中が
ランディの目の前に広がる。
ランディはさらに加速を重ねた。全身の毛細血管がいまにも弾けてしまいそうに血がた
ぎっている。まるで、自分の身体が一陣の熱風になったような感覚だった。
ギョッと目を見開くデイジー選手と、瞬きひとつしないランディの目とが一瞬合う。
まるで魔法のようだった。バンテージを巻いたランディの拳がデイジー選手の右脇腹、
つまり肝臓の真上を捉える。そこから先は簡単だった。両足でリングを踏みしめ、重ねに
重ねた運動エネルギーを破壊力に換えて全身から押し出す。
「絶対運命破壊パーンチ!」
「グワッ」とアヒルのような声を出して、デイジー選手がリングの外まで吹っ飛んでいった。
71:それも名無しだ
09/09/21 05:46:54 MBQK9jNM
◆
ランディの勝利が告げられても、レフェリーはランディの手を掲げようとはしなかった。
観客席からはブーイングが飛んでいる。
「ランちゃん、ランちゃん、ランちゃぁ~ん!」
いつの間に回復したのだろう。統亜がリングに飛び込んできて、ランディ飛び付いてきた。
その勢いと体重に押されて、ランディはその場にひっくり返る。両脚にまったく力が入らない。
当分、歩きたくもなかった。
「スゴいよ、カッコよかった! 大張作画のジョー・ヒガシみたいだった!」
「イーストウッドじゃないのかよ」
瞼が重い。ランディは猛烈な眠気に襲われていた。統亜がなにをいっているのか、
半分も理解できない。
と、ぷるんと柔らかくて、温かいような冷たいような、ただひたすらにいい香りのする
感触がランディの頬をちょんと突いた。
「ん?」
「あっ、ゴメン、つい!
でも、ノーカンだよね! だって、ほっぺだったもん!」
「うんまあ、ほっぺだったなら、ノーカンなんじゃないの」
「え~」
空中で安酒の精霊が季節外れの春の歌を歌っているのを聴きながら、ランディは眠りに落ちた。
「でもね、『絶対運命破壊パンチ』っていうネーミングセンスはどうかと思うよ」
ランディはすでに眠りの中にいた。
◆
マングローブの森を出ると、ティーシャツにジーンズ姿のデイジー選手が待ちかまえていた。
「次に会うのは、オーディション会場だべな」
「は?」
「今日は勝ちを譲ったけども、オラ、ドナルドダック役は誰にも譲らねえだ」
「いや、いいよ。そんな宣言してくれなくても。いいからドナルドダック役に打ち込めよ」
デイジー選手が白い歯を見せてにっこりと笑う。そういう顔をすると、好青年にしか
見えなかった。こんな男が去勢しなければならないなんて、この国はやっぱりどこか歪んでいる。
「お前は、ここに残るのか?」
丈の短いワイシャツにジーンズスカートという格好の紫雲統亜は、相変わらずアル=ヴァン
と並んでいた。
「うん。ちゃんと、バンコクのリングに上がっても恥ずかしくないくらい強くなる」
「そりゃいいけど、お前、横のオッサンとは縁切れよな」
「アル=ヴァン下段平トレーナーは、立派なトレーナーだよ!」
「気付け、そいつは人間のクズだ」
「あのさ」
「なんだよ」
72:それも名無しだ
09/09/21 05:48:59 MBQK9jNM
「やっぱりあれ、カウントに入れていいかな」
統亜のいうカウントが、なにを差しているのかランディにはわからない。デイジー選手
に負けたときのカウントのことだろうか。あの始終棒立ちしていただけのレフェリーが
カウントを取っていた記憶はまったくないが。
「いいんじゃないの。負けを真摯に認めるって、けっこう重要だと思うよ」
「うん、ありがとう!」
統亜が白い八重歯を見せて笑う。
この少女は、ひょっとして可愛いのかもしれない。そんなことを考えながら、
ランディはタイ国際空港への道を踏み出した。
◆
もう二度と精霊のいうことなんか信じるもんかと決めていたから、あえて精霊の教える
道の反対方向を歩いていった。
そうすうと、なぜか紫雲克夜が済んでいるアパートの前に来た。
「さすが長い付き合いだなコノヤロー」
毒づきながら克夜の部屋のドアを叩く。チャイムを鳴らす気にはならなかったから、
ドアを足で蹴飛ばした。
「うん? Pちゃんどうしたの」
部屋着姿の克夜が顔を出す。
「あのさあカッちゃん、お前の、上の妹だっけ。
統亜の連絡先教えてくれないか」
「え、イヤだよ。なにいってるんだPちゃん。僕の可愛い妹たちにPちゃんのごとき子豚
を近づけさせるわけないじゃないか近づかせてたまるもんか僕が認めた相手じゃなけりゃ
妹たちには指一本触らせない。僕の愛らしくも何度いっても八重歯を治さない妹になにか
用があるっていうの? どんな用があるとしても僕は認めないけどね。なんなら勝負するかい
勝負。うんそうだ勝負しよう表に出なよ表に」
今まで見たことがないような無表情でまくしたてる克夜を前に、ランディはため息をついた。
「安心しろ、違うから。そういうんじゃないから」
「じゃ、なんだっていうんだい」
「これ、妹さんに送ってくれ」
ランディはDVDショップで買ってきたばかりの包みを克夜に手渡した。
「なんだい?」
「『ミリオンダラー・ベイビー』、最後まで観とけって伝えといてくれ」
空中では、相変わらず精霊たちがクスクスと笑っている。
しかし、もう構わない。精霊たちは友人ではあっても、頼るべき相手ではない。なにより
もまず、自分の意志で動かなくてはならないと、ランディは今回の迷子で学んだのであった。