コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS SSスレ 32at GAL
コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS SSスレ 32 - 暇つぶし2ch350:ぷにぷに ◆/uQUf4aJ4k
08/11/28 17:53:01 Qm+RKwRU
【コイバナ】
蓬莱島に来てからというもの、C.C.はピザから遠ざかっていた。
最近で食したのは日本に潜伏していた偽装船の中に居た時だけ。
しかし、ここで食べようにもルルーシュは学園での準備があり今はここにはいない。
となればライなのだが、当の本人は部屋におらず彼女は探す羽目になる。
そうしてそこそこ広い蓬莱島を放浪してやっと見つけたのだが、どうやらカレンと言い合いをしているようだ。
だが、彼女が遠慮などする筈も無く間に割って入っていく。
「こんな所にいたのか。ライ、ピザを食―――」
「C.C.は黙ってて! じゃあ言わせて貰いますけどライだって無茶するじゃない!」
「僕はカレンみたいな無茶はしない。大体、無茶は無茶でも君と同じじゃないだろ?」
「だからピ―――」
「後にしなさいよ!」
流石のC.C.もカレンの剣幕にたじろいでしまう、彼女の怒りは相当らしい。
終わるのを待つしかないと思ったのか、C.C.はシミュレータのデータの閲覧をはじめた。
そこに表示された二人のリザルトを見て原因が読めた彼女はすぐさまちょっかいを出す事に決める。
「カレン」
「なによ!」
「諦めろ。お前ではライには勝てん、ゼロからの信頼も含めてな」
「なんですってー!」
「C.C.、火に油を注ぐ真似をするな……カレンもいい加減に落ち着いてくれ」
「落ち着けるわけないでしょ! それともパートナーよりC.C.の肩を持つ気なの!?」
「なんでそういう話になるんだ……」

351:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/28 17:53:10 A2Bt8ldo
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352:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/28 17:54:30 35V9fe4f
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353:ぷにぷに ◆/uQUf4aJ4k
08/11/28 17:56:01 Qm+RKwRU
喧嘩を尻目に椅子に腰を下ろして二人の痴話喧嘩を聞きながらリザルトログを眺めている彼女に声をかけてきた人物がいた。
見慣れない三人の女性。名乗りを聞けば新人のオペレーターなようだ。
どうやら黒の騎士団の戦闘空母となる斑鳩のブリッジに配属されたらしい。
そこで挨拶も兼ねてKMF隊の総隊長とゼロの親衛隊隊長である二人に挨拶しに来たそうだ。
だが肝心の二人はKMFやら態度の違いやらの喧嘩の真っ最中である。
そこへおずおずと話しかけてくる巻き毛の少女、双葉綾芽はC.C.に素直な疑問をぶつけた。
「あの……お二人は恋人なんでしょうか?」
瞬間、場は静寂に包まれた。まるで聞いてはいけない事を聞いてしまったかの様な空気だ。
その中でC.C.は面白おかしく答えてやろうと口を開こうとしたその時。
『違う!』
当の本人達からの否定の言葉で目論見はあっさりと破られた。
その否定を不思議そうな顔で受け止める双葉の横から眼鏡をかけたポニーテールの少女、日向いちじくが口を突っ込む。
「それじゃあ総隊長の恋人はC.C.さんなんですか?」
「そういう噂があるのかどうかは知らないけど、C.C.とだけは噂でも御免だな」
「おいっ、今のは聞き捨ててはやれんな。まさか私の愛人では不服とでも言いたいのか?」
「誰が愛人だ。そうやって面白半分で誤解の輪を広げるな」
喧嘩の火種が移行していき話題を振った二人がオロオロする中。
綺麗なセミロングヘアーの少女、水無瀬むつきはカレンに狙いを変えていた。
「でも、お二人ってお似合いだと思うんですけど?」
「そういうのはやめてよ。それに興味がないわ」
「カレン、嘘を言うな。男勝りだとは思っていたが総領事館で―――」
「あれは誤解だって言ったでしょ!」

354:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/28 17:57:40 35V9fe4f
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355:ぷにぷに ◆/uQUf4aJ4k
08/11/28 17:59:00 Qm+RKwRU
喧嘩は明後日の方向へ飛んでいき、女性陣は恋やあれやと話が二転三転している。
そんな中で一人仲間外れになったライは途方に暮れていた。
これでは模擬戦どころではないのもあり、少し考えてこの場を後にする事に決める。
「カレン、言い方が悪かったのはすまない。ただ、気には留めておいてくれ」
「あ、え、うん……」
肩を軽く叩いて去っていくライを見つめているカレンを四人の女性陣はにんまりと見ている。
紅月カレン、戦闘ではエースでも人生のエースにはまだまだ遠かった。

【LIES TOO CLOSE】
シャワーを浴び終えて髪を拭きながら、ライは茶化されてからはじめて真面目に考えていた。
異性への愛情についてなのだがどうにもそういう事には関心が向かない様子だ。
過去の自分を振り返っても、心に余裕がなかったなとしか思い出せないでいる。
そう、彼にはそんな事よりも守らなくてはいけないモノがあった。
だから気にもかけず武道や政治の勉学に勤しんでいた。母や妹を守る為に。
ギアスを手に入れたある時、彼は怒りと衝動に駆られ父と兄達を殺した。
王の座に就いた時も縁談の話はあったが断り続けていた、隣国からの攻撃でそれ所ではなかったから。
その結末は蛮族の全ての命を奪ったが、その代償は大切だった母と妹の命。
悲嘆に暮れたが自分に恋人の様な存在がいなかったのは僅かな救いだったのだろうか。
そう思いながらも母と妹と全国民を殺した自分が生きているのは救いではなく罰なのではないか。
その事実にすら目を背けたくて自身の死を願ったが、彼にギアスを与えた人物は彼に望まない答えを告げた。
『―――願いを叶えるまでは駄目。それを果たせる時が来るまで、おやすみ』

356:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/28 18:01:56 35V9fe4f
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357:ぷにぷに ◆/uQUf4aJ4k
08/11/28 18:02:01 Qm+RKwRU
ギアスによる記憶の封印と当時は自暴自棄だったのもあり、詳細な言葉は思い出せない。
タオルを洗濯籠に入れて自室のシャワールームを後にする。
他人との友愛は二度目の目覚めの折に知ったが、その時も記憶を取り戻す事で手一杯だった。
ゼロとの邂逅。C.C.が教えた世界。カレンが預けた信頼。ナナリーとの穏やかな時間。生徒会メンバーとの交流。黒の騎士団での戦い。
そこで知ったのは世界の優しさ。それが彼を―――
「ぁぅ……」
「なぁに、ボウヤも大胆ね」
俯きながら斑鳩にあるゼロの自室に向かおうと外観にある階段を上っていたライの目の前が急に見えなくなる。
どうやら階段を下りて来ていたラクシャータにぶつかった様だ。
問題は彼の頭が彼女の胸に埋まってしまった事だろう。
「こっちの不注意ですまない……」
「別にいいわよ。今更恥ずかしがる年でもないし」
体を一歩引いて距離を取ってから彼女の顔を見ると何やら不思議そうな顔しているのが気になる。
自分の顔を凝視しながら思い出したかの様に口を開いた。
「あんたってさ、恋人でもいたの?」
「唐突な上に突拍子な質問だな……今まで一度もいた事はないよ」
「ふぅん。ホントに変わった子ね」
キセルをクルクル回していたのをピタッと止めて彼女は言葉を続けた。
『自分と合う者に出会えないなら孤独に生き、愚か者を道連れにしない。愚か者と道連れするな』
彼女の言葉に耳を傾けていた彼の頭の中に言葉の続きが思い浮かんでくる。
『孤独で歩め、悪をなさず。求めるところは少なくとも。林の中の象のように』
「よく知ってたわね。感興の言葉の一節よ」
「ブッダだったかな……急にどうしたんだ?」
「ん~忠告って所かしらね」

358:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/28 18:04:14 35V9fe4f
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359:ぷにぷに ◆/uQUf4aJ4k
08/11/28 18:05:01 Qm+RKwRU
この先の会話に興味が無いのか彼女は階段を下りていく。
それを黙って見送るだけの彼に付け加える言葉を思い出したのか振り返って彼を見据えた。
「それじゃカレンちゃんの面倒はよろしくね~」
「そういう事はゼロに言ってくれ、僕がするべき事じゃないだろ?」
「なぁに、あんた達ってそういう関係じゃなかったの?」
「違う、ただのパートナーだ。なんでラクシャータにまで勘違いされているんだ……」
頭を抱える彼を見据えたまま思い違いだったのがわかったのか、彼女は彼に謝罪をしてその場を後にしていく。
彼も部屋に向かおうと階段を上りきった所で卜部と仙波に出会ったのだが卜部の表情が少々怪しい。
羨ましそうな表情をしているのが気になったのだが仙波に気にしなくて良いと言われてその場で別れた。
今日も騒がしい日常だなと思いながら二人を見送っていると玉城がこちらに向かってくる。
「玉城、またサボったのか?」
「いいじゃねえかよ、細かい話は無しだぜ戦友」
「どうなっても知らないからな……」
肩をバシバシ叩きながらいつもの調子で話す玉城にライは何を言えばいいのか思いつかなかった。
そこで先程まで考えていた事はなんだったのかを思い出そうとしたのだが、玉城が急に真面目な顔になる。
「ところでよ、一つ言っておくぜ」
「ん、なんだ?」
「お前みたいな野郎は何でも自分で抱え込むからな、これからは無茶とかすんなよ」
「急にどうしたんだ? 大体、僕がいなくなった所で―――」
「んな事を軽く言うんじゃねえ。それによ、お前になんかあったらあのゼロやカレンでも悲しむだろうぜ。だから死に急ぐんじゃねえぞ」
自分の存在価値。それは少なからずあると言う玉城の言葉に彼は内心驚いていた。
その時、同じ言葉をかけられた一年前を思い出した彼は玉城の変わらない人柄に感謝した。
変わってしまったものもあるが、変わっていないものもあるという事も含めて。

360:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/28 18:07:11 35V9fe4f
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361:ぷにぷに ◆/uQUf4aJ4k
08/11/28 18:08:01 Qm+RKwRU
「……わかった、これからは気をつけるよ」
「わかりゃいいんだよ。後よ、そうやって笑えるんなら普段から少しは笑えよな」
「ん、笑っていたか?」
「無自覚かよ……」
そのまま好き勝手に捲し立てて玉城はどこかへと消えていく。
そこで彼は気が付いた。玉城を訓練に戻さなくてはいけなかった事を。
今更止めようにも何処へ向かったのかがわからず姿も見当たらない。
結局、玉城の事は諦めてルルーシュの自室に入り新型KMF蜃気楼のマニュアルに目を通しはじめる。
ウィークポイント等の思案を続けている彼の頭の中に先程まで悩んでいた愛情の問題を思い出す。
だが、その問題にすぐ蓋をしてしまう。まるで考えるだけ無駄だという様に。
(人間は概ね自分で思っている程幸福でも不幸でもない、か……)
あるフランス作家の言葉を彼は思い浮かべた。
咎人である自分が優しさを知れただけでも幸福だと彼は思っている。
思い出がある限り彼はいつまでも幸せだ。だから戦っていられる、守りたい場所があるから。
その過程で優しさを教えてくれた人達からの責め苦を負っても彼は後悔しないだろう。
彼が望むのは他者の幸福と未来であり自身はそこに入っていない。
しかし、作家の言葉の続きにはこうある。
『肝心なのは、望んだり生きたりする事に飽きない事だ』
一年前、大切な人達を悲しませたくないからと彼は自らの忘却を望み眠りについた。
だが、目覚めを迎えた彼が見たのは悲しい結末だけだった。

362:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/28 18:09:14 35V9fe4f
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363:ぷにぷに ◆/uQUf4aJ4k
08/11/28 18:11:00 Qm+RKwRU
それを知った時、彼はもう一度生きる事を。戦う事を決意した。望み託した未来を残す為に。
確かに望んで生きてはいる。しかし、その為に不幸になるのは幸福と呼べるのだろうか。
今の彼が心に抱えている幸せのカケラ。今も傷ついている願いを癒したい衝動。
それはまるで嘘を重ねて作りあげた砂上の楼閣の如く空虚で曖昧だった。

【PLATINA SOUL】
からかいから逃げ出したカレンはシャワーを浴びようと斑鳩に用意されている自室に戻っていた。
団員服の上着とパイロットスーツをベッドに脱ぎ捨てて彼女はバスルームに入っていく。
蛇口を捻りシャワーを浴びながら考えていた、先程から頭に引っかかっていた事。
正確に言えば前々からだろう、ルルーシュとゼロの真実についてを。
『そうだ、俺がゼロだ』
神根島で暴かれたギアスによる日本人の虐殺とブラック・リベリオンの思惑。
『こいつはルルーシュだ! 日本人を、君を利用した男だ! そんな男を守りたいのか、君は!?』
壁に体を預けながらゆっくりと目蓋を閉じて彼女は自分に問いかける。
ゼロがいたから日本開放の夢は広がった、その広がった夢を壊したのもルルーシュだ。
自分の兄と同じ位に信じていたのに、結局は利用されていただけの関係。
『自分の心が浮ついて懇意の男に顔向けができない。と言ったところだ』
懇意にはしていたかもしれない、だが相手はそう思ってはいない。
あの時の言葉は本心だったのかを聞こうにも既に一年の月日が過ぎた。
そして二度目の同じ言葉を投げかけた彼の言葉の続きは隷属ではなく選択だった。
『あくまで君達自身の意思で選んでもらいたい。私に出来るのは旗印になる事だけだ』

364:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/28 18:13:04 35V9fe4f
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365:ぷにぷに ◆/uQUf4aJ4k
08/11/28 18:14:00 Qm+RKwRU
それを迫られる前から彼女は選んでいる。
特区に参加した多くの人間の命を奪ったルルーシュだが、そのルルーシュにしか状況の打破は出来ない。
この一年間で思い知らされたその事実。日本の独立の為にはゼロは必要不可欠である事。
彼女が慕っていた井上や仲間だった吉田や永田といった命を失っただけで何も変えられないまま終わるなど出来る筈がない。
様々な悲劇で散った命を無駄にしない為にも戦い続けるには彼はまだ必要だった。
(勝ち取ってみせる。みんなや紅蓮と一緒ならきっと……)
彼女自身、既に引き金は引いてしまっている。その過程で学園での知人の父親の命を奪ってしまった事もある。
ここで止めてしまえば彼女は奪うだけ奪っただけの略奪者に成り下がってしまう。
それは彼女の中に半分流れているブリタニア人がしてきた事と同じでしかない。
彼女は決意を固めるかの様にシャワーを止めてからバスルームを後にしてバスタオル一枚の姿になる。
ハンドタオルで髪を拭きながらベッドに腰を下ろした彼女は机に置いてある物に視線を移していく。
青色のストラップと繋がっている紅蓮の起動キーへと。
(私と同じハーフ、か。不思議な感じね)
ふと、彼女は自分と同じ日本人とブリタニア人のハーフの少年のライを思い浮かべた。
彼女がはじめて会った時、彼を信用できなかった。どうみてもブリタニア人にしか見えなかったからだ。
『彼は信用できる人物だ』
だが、人を駒だと言い切ったルルーシュがバベルタワーでは信用できるとまで言い切った。
ルルーシュだけではない、C.C.も同じ様な態度だった。
真実の一部しか知らない彼女だったが、その二人からの全幅の信頼を寄せられる。
つまり、それだけ真実に近くにいて頼られているという証だった。
それがわかった時、彼女は益々彼を信用できなくなった。
自分の知らない人間が全幅の信頼を寄せられている事。自分よりもKMFの扱いに長けている事。

366:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/28 18:16:07 35V9fe4f
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367:ぷにぷに ◆/uQUf4aJ4k
08/11/28 18:17:00 Qm+RKwRU
感情論寄りではあったがルルーシュの裏切りもあり信用できると言われては逆にできない。
そう思っていた彼女だったのだが彼と話し合うと確かに信用できる人柄だった。
無表情で口数は多くないが義務感は強く他人への思いやりもある。
(ルルーシュとライ……似てるけど……)
二人に漂う雰囲気が似ている事、それも彼女が信用できなかった理由の一つだ。
しかし、それはライの言葉と行動と共に不信感は消えたが違う悩みを浮き彫りにした。
記憶の彼方にある安心感、一年前にはあって今まで無かった感情。
二人の明確な違い。二人の明確な変化。それは彼女の心の中で影を落としていた。
(やっぱりゼロの事を……違う……ルルーシュの事もよね……)
記憶の檻に閉じ込められた日々。あの戦いの中で確かに感じていた気持ち。
指導者として。仲間として。背中を預けるという命を託す行為。
ルルーシュと似ているライとの出会いは彼女の心を揺らした。
嫌っている人間と同じ空気を持った相手に出会って痛感したのは―――
(そういうのは柄じゃないか。そんな事より日本の事からよね)
気持ちに蓋はしたが彼女の心は傾いていた。ルルーシュという存在に。
許す事を出来ない相手に抱く好意、それが彼女の心を衝いていた。
団員服に袖を通しながらその考えにシャットダウンをして彼女は視線を違う物へと移していく。
キーの側に置いてあるフォトフレームに入った家族と写っている写真へと。
兄が掴もうとした未来、母という守りたい存在。
彼女もまた守りたい者の為、そして願いの為に戦っている。
しかし、彼女自身が見つけた戦う理由はまだ無かった。

【魔女はかく語りき】
からかう対象に逃げられ目的も果たせなかったC.C.は斑鳩のルルーシュの自室に戻ってきた。

368:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/28 18:19:04 35V9fe4f
支援

369:ぷにぷに ◆/uQUf4aJ4k
08/11/28 18:20:01 Qm+RKwRU
部屋に入ると明かりがついており不思議に思ったがデスクチェアーに腰掛けたライを見てすぐに理解する。
ライも彼女を一瞥するだけでなにかの作業へと戻ってしまう。
団員服を脱ぎ散らかして彼女はソファーに置いてあるチーズ君の人形を抱きしめて寝転がる。
視線はライに向けていたが言葉も無くただ沈黙が漂っているだけだった。
「ライ―――」
「ピザならさっき手配した。明日には届くよ」
彼女は彼の返答に思わず目を丸くしてしまう。
あの口喧嘩の最中でもこちらの言葉には耳を傾けていた事に。
それと同時に彼の表情の僅かな変化も見て取れた。
「……模擬戦をしていたそうだが、カレンを使うつもりか?」
沈黙が再び漂う中、彼は深呼吸をして彼女の眼を見据えた。
そうして彼女が見た彼の蒼い眼には決意しか見えない。
「今は断言できないな。ただ、必要なら―――」
その先の言葉は聞かなくても彼女にはわかっていた。
この男がどこまでも愚直で頑固だという事を。
慰めも称賛もされないその選択は止めるべきだと彼女は理解している。
しかし、彼女にはどうやってするべきかわからなかった。
今止めればルルーシュは力に飲まれて彼女は彼を失ってしまう。
(自分勝手なものだな……それに過ぎた願いとでもいった所か……)
一年前に彼へ託したささやかな願い。次に目覚める世界が彼に優しくあるようにと。
だが、再び目覚めて彼が知ったのは世界の歪んだカタチだった。

370:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/28 18:22:05 35V9fe4f
支援

371:ぷにぷに ◆/uQUf4aJ4k
08/11/28 18:23:01 Qm+RKwRU
「……怨んでいるか、私の事を?」
「怨む? なぜC.C.を怨む必要があるんだ?」
彼の当然といった返答に彼女も困惑してしまう。
彼女の気紛れにも似た行動、世界の在り方と捉え方を教えた事。
「むしろ感謝しているよ。世界に興味を持てなかったのに―――」
「それ以上は言うな。あれは気紛れでした事だ、感謝される謂れはない」
彼の感謝の言葉は彼女の心を抉り傷つけた。
彼にも咎があるように彼女にも咎がある。
そんな自分が感謝される程、今の彼女は自分を許せていない。
そして彼の変化にも憤りを覚えた。
「お前は変わったよ……悲しませない為だと言いながら悲しませる道を選ぶなど……」
「ロバが旅に出ても馬になって帰ってくるとは限らないだろ」
「言葉で心を隠すな。誰もお前に―――」
「望まれても頼まれてもいない。でも、これが僕の願いだ」
彼の決意、それに綻びでもできればと彼女は思ったが彼の心は貝の様に固く閉ざされていた。
ただ、それは学園の人間や団員達の所為ではない。勿論彼女にも責はない。
彼は彼なりに守ろうとしているだけだ、この世界に訪れる明日を。
「怨まれるだけだぞ、それでも―――」
「構わない。みんなが笑っていてくれる明日が来るなら……それでも……」
彼の想いは純粋だと彼女にもわかっている。
しかし、誰も彼に手を差し伸べない現実を彼女は知っていた。
彼が世界にかけたギアスは彼から救いを取り上げたという事を。

372:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/28 18:25:05 35V9fe4f
支援

373:ぷにぷに ◆/uQUf4aJ4k
08/11/28 18:26:01 Qm+RKwRU
(これも力を手に入れ、使った代償か……)
作業を終えたのか、ファイルを片手に彼が部屋から立ち去ろうとした時。
彼の膝が折れてその場に跪いてしまう。
「ちっ……おい、しっかりしろ」
彼が手で抑えている指の隙間から覗かせた眼を見るとギアスが明滅している。
彼女には原因がわかっていたがそれでどうにかできる物でもない。
そんな中で背中を摩りながら彼に声をかける彼女の表情は悲しそうだった。
「息をしっかり吸え、ゆっくりと深くだ」
ギアスの明滅は収まりつつあったが呼吸は荒く彼はまだ跪いている。
「高亥に使ってからか、それとも以前からか?」
「目覚めてから……時折だよ……間隔も不定期だ……最近は大丈夫だったんだが……」
心配をかけまいとしているのだろうが彼女にはどうみても辛そうにしか見えない。
だが、彼女は慰めるという選択肢は選べなかった。それをするのは自分ではないと。
彼女も己の願いの為に傍観者に徹するしかなかった。
「……もう大丈夫だ……すまない……」
彼女の肩に手を乗せながらなんとか立ち上がる彼の姿は一年前より儚いと彼女は思えた。
そうしたのは自分でもあり世界でもあり彼自身でもある。
『王の力は人を孤独にする』
それを痛感しているからこそ彼女はここにいる。
しかし、無力でしかないのも事実だった。
「ライ、打ち克てよ。運命に。選択に。その行動の結果に」
「C.C.も傲慢だな……」
「なんだ。もう忘れたのか、私はC.C.だぞ?」

374:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/28 18:27:47 c2605Nls
支援

375:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/28 18:28:39 35V9fe4f
支援

376:ぷにぷに ◆/uQUf4aJ4k
08/11/28 18:29:00 Qm+RKwRU
ふらふらした足取りでドアに向かっていた彼が立ち止まり彼女を再度見据える。
彼女の記憶の中にある彼の髪の色より少し薄くなってしまったのを見て彼女はルルーシュの未来を案じてしまう。
これもルルーシュの進む道の成れの果ての一つなのかと。
「お前は私の過去を知っている、それでも望むのか?」
「駄目か?」
「いや……望むのは自由だ。だが―――」
「人は変わる、変われる。僕もそうだった、それに君も少し変わったよ」
それだけを言い残して彼は部屋を出て行ってしまう。
拒絶を残しながらも彼女の行動を許容しているその行動に彼女は苛立ちにも似た戸惑いを感じる。
「人間は面白いが……儚く物悲しいものだな……」
彼女の願いは誰かの犠牲無しには叶わない。
しかし、今の彼女はその願いを叶えていいのかを迷いはじめていた。
「マオ……シスター……」
彼女は人である事を忘れてしまった。
闇を抱えて。真実を奥底に沈ませて。心を痛ませて。
そうして魔女はかくも言葉を語っている。
故に人としてかくも心を語らなかった。

377:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/28 18:29:52 c2605Nls
支援

378:ぷにぷに ◆/uQUf4aJ4k
08/11/28 18:30:32 Qm+RKwRU
以上です
色々と方向がぶっ飛んできてアレな感じですね
ギアスと関係ない曲をテーマに選ぶと色々大変だ…
次回のキーワードは『ライがアップをはじめました』

>>177
確かに身体能力だけならスザクと表現するべきなのですが
あくまでナイトメア戦を指しているのでランスロットと表現しました
でも、ややこしいと言えばややこしいですね。申し訳ないです

色んな漫画やゲームを買ったのはいいんですが消化する暇が無い…
でも感想が増えて嬉しいので古参の方や新人さんに劣らない為にもSSをまず頑張ります
では、失礼しました

379:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/28 18:37:56 35V9fe4f
ぷにぷに卿、GJ!!!
乙でした。
支援できて光栄です。

ライ…幸せになってくれよ。
次回も楽しみに待っています。

380:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/28 21:00:29 Rj2zS+P6
>>378
GJでした!!
ライは自分より他人を心配するタイプですからね。
そういった部分も彼の魅力の一つですが、このライを見ていると色々と心配になってしまいますね。
果たして、ライを含めてみんなが笑いあえる日が来るのでしょうか!?

次回の投下を楽しみにお待ちしております!!


381:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/28 21:58:16 HRBNgO1g
>>378
ぷにぷに卿、GJでした!
人の為に自分をないがしろにしがちなライ、今は救いの無いその道の先
それでも、幸せになって欲しいと思いますね。
複雑な思いを抱えるカレン、そしていい人な玉城……皆に頼ることが出来れば良いのに。
綾芽の言葉にダブル○ーの、ですぅ娘を幻視。
貴公の次の投下を全力を挙げて待っております!

382: ◆1kC3aaXjik
08/11/29 00:12:26 It6J73Ty
●●ロスカラSSスレ移転の是非を問う投票のお願い●●

ロスカラSSスレ板移転問題についての投票を開始しました。

 投票期間:11月29日(土)24:00まで
 場所:避難所内投票所スレッド
    URLリンク(jbbs.livedoor.jp)
    
29日24時までの間に、上記投票所スレッドにて各自一票、
ロスカラSSスレッドの移転について賛成・反対をレスしてください。
30日になった時点で締め切り、集計します。

※投票所は、投票時間を過ぎた時点で板管理人の方によりスレッドストップされます。
 ギリギリの投票は出来るだけ控えて下さい。
・・・・・・・

それでは、よろしくお願いいたします。


383: ◆1kC3aaXjik
08/11/30 01:24:40 ETRrKOPI

●●ロスカラSSスレ移転の是非を問う投票●●

ロスカラSSスレ板移転問題についての投票が終了しました。
 
 賛成 46票
 反対 2票
(投票総数49票、無効票1票)

賛成多数により、今後、ロスカラSSスレは創作発表板に移転することとなります。

移転の方法などについて、引き続き意見交換が必要になりますので
避難所議論スレへの参加、動向の確認をお願いいたします。
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)

・・・・・・・
みなさん、ご協力をありがとうございました。

384:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 14:51:29 b+tfdbhC
静か過ぎる……
多くの作家さんがここから離れてしまったんじゃないか?と不安だ。



385:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 15:09:30 /8vUdLkI
寂しいなあ

386:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 18:29:41 oCTQrA0y
俺は信じてる
きっと帰ってくる
みんな投下をしに戻ってくる
とくに青い運命卿!
ぷりーづかむばっく!あおちゃん愛してる!!

387:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 18:53:18 T+c770zB
みんな受験とかで忙しいのさ
あとアクセス規制も厳しいみたいだしね

388:KOUSEI ◆g9UvCICYvs
08/11/30 19:57:19 a61PEx8E
どうも、二週間ぶりです。
今から続きを投下します。
全部で16レス(予定)です

389:KOUSEI ◆g9UvCICYvs
08/11/30 20:00:29 a61PEx8E
○シーン9『気持ちの問題』Cパート

「終わったぁ」
 ロイは背もたれに体を預けて大きく背伸びをした。
 行政特区失敗からちょうど九日。ようやくロイはラウンズとしてのその後処理全般を終えた。もっともだからと言って、通常の業務が減ったりはしないが、少なくともこれで一週間以上の徹夜からは解放されるだろう。
「お疲れ様です。キャンベル卿」
 そのそばからアルフレッドが紅茶を差し出した。ロイはお礼を言って、自分と同じく目の下にクマを作っている副官を見上げた。
「いや、お疲れ様。こんなに早く終わったのは、君が手伝いにきてくれたからだよ」
 ロイは副官にひとしきり感謝の言葉を並べた後、紅茶を口に含んだ。疲れている頭に、いつもより甘めに作ってある紅茶は良く染み渡った。
「うまい」
「恐縮です」
 アルフレッドは軽く頭を下げた。
「それにしても、正直、ここまで忙しいとは思いませんでした」
 そう言う青年士官の顔には明らかな疲労の色があった。この数日、副官としてロイの殺人的な業務の一部を任されていたアルフレッドは、充分にその能力を発揮し、ロイを助けていた。
「まぁ、君の場合は今回の着任の時期が悪かった」
 ロイはそう言って悪戯っぽく笑って見せた。
「なにせ、あの規模の式典が失敗に終わった直後だからね。その後に計画されていた企画は全部キャンセルだし、企画がキャンセルされればそれにしたがって、その企画に動員するはずだった人員、資材もろもろ不要になるから。大変だよ」
 ロイは人事のように述べて、そのまま疲れを吐き出すように深く息を吐いた。そして、手元にある書類を机の上でトントンと揃え、それをアルフレッドに差し出した。
「アルフレッド。これをローマイヤさんの所へ。その後はもう直帰で構わない」
「イエス・マイ・ロード。では、今日の所はこれで」
 アルフレッドは書類を受け取ると、丁寧な敬礼して、部屋を出ていった。その後ろ姿が少しフラついているのを見て、ロイは心の中で、おつかれさま、と呟いた。
「さて、僕は少し寝ようかな……」
 ロイはもう一度大きく背伸びをした。

390:KOUSEI ◆g9UvCICYvs
08/11/30 20:03:12 a61PEx8E
 時間は夜の七時過ぎだった。いつもならまだ元気に仕事をしている時間だが、ここ数日、ずっと徹夜で眠いのだ。形式上では業務時間内でもあるが、これだけ残業手当が付かない徹夜を繰り返したのだ。ささやかな睡眠ぐらい許されてもいいだろう。
 ロイは大きなあくびを一つして瞼を拭うと、執務室と繋がっている私室に足を向けた。
 その時、執務室に来訪者を知らせるブザーが鳴った。
「んっ、どうぞ?」
 ロイは足を執務室に戻して、睡魔に犯され始めた表情を引き締めた。
 それから数秒後、空気の抜けるような音がして、入り口のドアが横に開いた。すると、 
「こんばんは、ロイさん」
 現れたのは、ロイの上官であり、このエリアの総督であるナナリーだった。
「ナナリー総督?」
 ロイは早足で駆け寄り、いつも通り彼女に合わせて身を屈めた。
「申し訳ありません。総督に頼まれた件につきましては、まだ調査もしておらず―」
 ナナリーがルルーシュという人間の捜査状況の確認に来たと思ったロイは、そう素直に謝った。
 別に、まだウラが取れていないから教えないわけではなく、本当にここ数日はそんな事を調べる暇もなかったのだ。
「あ、いえ、そういう事では無いのです。ロイさんの忙しさは、知っているつもりですから」
 ナナリーは手を出して、それを顔の前で左右に振りながら、ロイの懸念を否定した。
 ロイは顔を上げ、分厚いレンズ越しにナナリーを眺めて「では」と聞き返した。
「どのような御用でしょうか?」
「あの、わたくし……」
 ナナリーは肩を落として、ついでに顔も伏せた。
「……」
 ロイもこの可憐な上官と付き合いだして一年以上が経過している。なので、ロイがその表情から、またナナリー総督は何か重いものを背負っているな、と判断するのはそれほど難しくは無かった。
「失礼しました。とにかく、席にお連れします。実は今さっき仕事が終わったばかりでして、よろしければお茶をご一緒していただきませんか?」
 しかし、目の前の少女はその誘いを素直に応じなかった。
「……あの、それは本当ですか?」
 ナナリーは何やら神妙な面持ちで聞き返してきた。
「はい? 何がですか?」
 ロイが驚いて尋ねると、ナナリーは少し迷って、

391:KOUSEI ◆g9UvCICYvs
08/11/30 20:06:41 a61PEx8E
「ロイさんは、私が訪ねるといつもそうおっしゃて下さるので、本当は無理をしているのでは無いかと……」
「そんな事はありませんよ」
 ロイは、内心ドキリとしたが、表面上は少し吹き出して笑って見せた。

 ○

 温い紅茶と、熱い上に、通常より相当濃いブラックコーヒーが置かれたテーブルを挟んで、ナイトオブゼロとエリア11の総督は何かを話し合っていた。
「私は、何のお役にも立てなくて……」
 そう言ったナナリーの言葉には、自分自身を卑下する響きがあった。
 ロイは返答に困った。
「……」
 今まで、ロイがナナリーから聞いていた話はこうだった。
 ナナリーは今回の行政特区日本失敗の責任を感じている。そして、その後始末のお手伝いをしたいと切に望んでいた。しかし、何もできなかった。
 文官に、私に何かできる事はありますか? と尋ねても、「いえ、総督の手を煩わせる事は何もございません」という言葉の連続。口調は優しいがその実、「忙しいからあっち行っててください」という意図がナナリーには感じられたそうだ。
(ふむ……)
 ロイはそんなナナリーに内心、同情した。しかし、ナナリーを冷たくあしらった文官たちの気持ちも理解できるロイだった。
 ロイもそうだったが、行政特区日本が終わって今日まで、ある程度の立場を有する軍人、文官は皆、行政特区の殺人的な後処理に追われていた。
 正直、あまりそういう後処理の能力に長けていないナナリー総督の面倒まで見切れないというのは、当然とは言わないまでも仕方の無い反応と言えるだろう。
 しかし、そのせいでナナリーの自信が大きく失われてしまったのも事実だった。そして、ここ数日の精力的なイレブン施設への訪問やマスコミへの顔出し等は、ナナリーの話から、ローマイヤがナナリーの心境を察して、無理やり組んだものだと言うのも分かった。
 おそらく、ローマイヤとしては、ナナリーに暇を持て余させるより、何かしらの仕事をやらせた方がナナリーにとっても良い、と考えたのだろう。
 しかし、ナナリーの方からしてみれば、そのローマイヤの行動は自分を仕事の邪魔者としてみている、だから外に回す、という風に映ったようだった。

392:KOUSEI ◆g9UvCICYvs
08/11/30 20:08:40 a61PEx8E
 ちなみに、ナナリーは自分をそのように見なしたローマイヤを怒ってはいない。ナナリーは自分の力量と幼さを良く認識している上に、むしろそのような気遣いをしてくれたローマイヤに感謝すらしている。
 だが、自身の能力の無さを情けなく思う気持ちに歯止めが効くものではい。
 ロイは、そんなナナリーを見つめ、困った顔をした。なんとか慰めてあげてさしあげたいものだが、その手段が思い浮かばないのだ。
 だが、ロイはふいにある事を思いついた。
「総督の部屋に行きましょう」
「?」
 急にロイが椅子から立ち上がって告げると、ナナリーが下に向けていた顔を上げた。
 その顔に、ロイは自信に満ちた微笑を向けた。

 ○

 ナナリーの車椅子を引いて総督の執務室に入ったロイは、すぐに目当てのものを見つけた。
「あったあった」
 ロイは車椅子を押し、二人でその目当てのものに近付くと言った。
「総督。やはり、まだ続けていらしたんですね」
 何を問われているのかに気付いたナナリーは、微笑んで小さく頷いた。
「はい。昔に比べてやれる時間は減ってしまいましたが、それでも、少しずつにでも続けていこうかと思いまして」
 そう言ってナナリーはその細い腕をスッと前に伸ばした。目は見えなくても、部屋に入った後に動いた歩幅や距離等から、手を伸ばせばそこにはそれがある事を知っているようだった。
 ナナリーの手にカサリと乾いたものが触れた。
 それは鶴だった。正確には折り鶴の大群だった。ぱっと見ただけでも百や二百ではきかない数が、糸に吊るされていた。
 日本の伝統、千羽鶴というものだった。これをナナリーは各イレブンの福祉施設に、訪問と共にプレゼントして回っているのだ。
 今までナナリーが贈呈した千羽鶴は三つ。目の前にあるのが四つ目だ。どこに贈呈されるかは決まっていないが、市役所の福祉課か、児童施設か、老人ホームのどれかになるだろう。
「あと、どのくらいで完成なのですか?」
 ロイが尋ねると、ナナリーは弾んだ声で答えた。
「あと、100羽ほどで完成します。そういえば、今まで作った中で、これが一番早く出来上がりそう」
 ナナリーは鶴に触れていた手を下ろして、瞼が閉じられたままの瞳をロイに向けた。

393:KOUSEI ◆g9UvCICYvs
08/11/30 20:10:36 a61PEx8E
「ロイさん。実は、先日カリーヌ姉さまが300羽ほど、鶴を送ってくださったんです」
 嬉しそうに言うナナリーを見ていると、ロイは自分の顔は笑顔にしか表情を変えられないのではないかと、思わず勘違いしてしまうような錯覚に囚われた。ロイはナナリーの嬉しそうな姿を見るのが好きだった。
「カリーヌ様がですか?」
「はい」
 本当に嬉しそうにカリーヌの名前を出すナナリー。
ロイは鶴の群の中に、少々見栄えの悪い鶴が紛れているのを見つけた。おそらく、それがカリーヌの折った鶴だろう。
「それは、ようございました」
 ロイは本心からそう言った。
 カリーヌは元々鶴の折り方など知らなかったはずだった。にも係わらず折り鶴を折り300羽も送ってくる。そこから導き出される答えは簡単だ。
 ナナリーが教えたのだ。カリーヌに鶴の折り方を。それは、過去の彼女たちの関係を知るロイにとっては、とても素晴らしい事のように感じられた。
 姉妹が鶴を折り合う姿は実に微笑ましいものだったのだろう。と、ロイはその様子を思い浮かべ、心が温かくなっていくのを感じた。
「本当に。これもロイさんのお陰です」
 ナナリーは感謝の言葉を述べた。だが本人は謙虚に答えた。
「いえ、僕はきっかけを作ったにすぎません。実際に仲良くなられたのはナナリー総督と、カリーヌ様です」
「ロイさん……」
 ナナリーはしばしロイを瞼の奥から見上げていたが、やがて頬を軽く染めて顔を横に背けてしまった。
「総督?」
「あ、いえ。何でもないんです……。それよりロイさん。なぜ、この部屋に来ようなどと?」
「ああ、それはですね」
「それは?」
「一緒に、総督と千羽鶴を完成させようと思ったからですよ」
 そう言ってロイは、鶴の群れの傍に置いてあった折り紙を手に取った。
「えっ? 鶴をですか?」
 なぜ今、鶴を折ろうなどど? という疑問がナナリーの顔に浮かんでいた。
「いいから、折りましょうよ」
 ロイは笑顔でそう言って、ナナリーに折り紙を一束手渡した。そして多少強引に、でもナナリーが驚かないように丁寧に車椅子を押して、テーブルまで連れて行った。
 そして二人は、残りの100羽を折り始めた。

 ○

394:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:12:04 Ca3Fy2BW
支援

395:KOUSEI ◆g9UvCICYvs
08/11/30 20:12:49 a61PEx8E
「唐突ですが、千羽鶴とは、千羽集まって初めて願いが叶うんですよね」
 鶴を折り始めて約一時間。千羽まで残り一桁を切った所で、ロイは鶴を折る手を止めずにナナリーに言葉をかけた。
「はい、千羽折って初めて願いが叶うと言われています」
 ナナリーも鶴を折る手を止めずに答えた。その手の動きは、目が見えていないにも関わらず、滑らかに動いている。流石に作業の速さはロイの方が一枚上手だが、完成度だけで言えば明らかにナナリーの方が上手だった。その事にロイは軽く感心した。
 しかし、ロイはナナリーに鶴を折ることの上手さを褒める前に、彼女に伝えたい事があった。
「あなたの理想も同じではないですか」
 そのロイのセリフがあまりにも自然に出されたので、ナナリーがそれを自分に向けられた言葉だと認識するのに数秒を要した。
「えっ……」
 ナナリーは動かしていた手をピタリと止めて、瞼と形の良いまつげに閉じられた瞳をロイに向けた。
「千羽鶴。それは九百九十九羽までそれはただの鶴の塊に過ぎません。最後の一羽を完成させてそれは初めて意味を持つのです」
 ロイは鶴を折り終え、また新しい折り紙に手を伸ばした。それは、ちょうど千羽目の折り紙だった。
「あの日。僕が始めて総督とお会いしたあの日です。協力をお願いされてから、僕はずっと思ってました。あなたの理想は素晴らしい。と」
 幸せな世界。それがナナリーの理想だった。
 それは一見、単純だが、その内容は複雑で、そこに至るまでの過程は困難を極めていた。
 しかし、ナナリーはそれを承知で、それでも理想をかなえようとしている。それが、皇帝陛下に運命を委ねられて、スラムの貧困から脱出し、自分自身が生きるためだけに今の仕事を始めたロイには、とても眩しいものに映ったのだ。
 ロイは、ナナリーの能力とか、可愛さとか、可憐さとかに魅力を感じて協力しているのではない。もちろん、理想の共感というのもあるが、それ以上にその理想を本気で追いかけている一途さに美を感じたから協力しているのだ。
 ブリタニアの皇族でありながら、戦争に疑問を感じ、立場の弱い民の身を案じる。一部の者達はそのナナリーの思想を民への点数稼ぎの偽善と言うが、ほとんどの皇族はその点数稼ぎすらしないのだ。

396:KOUSEI ◆g9UvCICYvs
08/11/30 20:15:03 a61PEx8E
 そしてロイはナナリーのその願いが点数稼ぎなどではなく純粋なものだと知っていた。いや、正確にはそれを感じ取り、確信していた。
 理想の共感。純粋な上官。美を感じさせる少女。とりあえず、これだけ揃っていれば、ロイが皇帝陛下に対する忠誠と共に並んで、それを捧げる相手となるのには充分足りた。
「総督、行政特区日本の件、心中お察しします。ですが途中で諦めては駄目です。でも、この問題にすぐに成果を求めてもいけません。あなたは、まだ」
 ロイは慣れた手つきで鶴を完成させ、それを少し掲げて細部を修正すると、にっこりと笑った。
「鶴を折りはじめたばかりではありませんか」
 そして、ロイは折り上がった最後の鶴をナナリーに手渡した。
「……」
 鶴を受け取ったナナリーはハッと顔を上げた後、閉じた瞳でジッとロイを見ていた。
 ロイはそんなナナリーの手を、少々ゴツゴツとした自分の両手で包んだ。
 もう言葉はいらなかった。そう思ってロイは年上らしく落ち着いた笑顔をナナリーに向けた。
 だが、次にナナリーが起こした行動に、流石のロイも年上の余裕顔を破顔して驚かずにはいられなかった。
「総督?」
 少女から、小さく鼻をすする音がした。
「す、すいませ……私……」
 総督はロイから顔を背けた。軽くウェーブのかかった髪が、ロイからナナリーの表情を隠した。
「こんな優しい言葉……。かけていただけるの……お兄さま……いなくなって……久々で……だから……」
 ロイが包んだ細い指は、小さく震え始めていた。
「すみません……。嬉しいんです……でも……涙が、止まらなくて……」
「……ナナリー総督」
 ロイは黙って立ち上がると、失礼だとは思いつつも車椅子に座る少女の体を優しく抱きしめた。そうする必要があると思った。
 ナナリーは最初小さく上半身を震わしたが、やがて、あふれ出る涙もそのままに、ロイの胸に向き直り、服を濡らし続けた。
 ロイは、ナナリーを抱きしめながら優しくその頭を撫でた。そのロイの動作は、まるでわが子を撫でる母親のように優しげで、父親のように頼もしかった。
 しかし、
 ある意味暖かい心がロイの心を侵食していく中で、そのある一角では、同時に激しいものが湧き上がっていった。
(スザク。君は一体何をしているんだ)

397:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:15:13 yOBYSGZx
支援

398:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:15:51 qnCHlb7q BE:1262445449-2BP(0)
sien

399:KOUSEI ◆g9UvCICYvs
08/11/30 20:17:08 a61PEx8E
 ロイは友に、親友であるスザクに強い歯痒さを感じた。それは、人間の感情で言えば怒りに近かった。いや、事実ロイは怒っていた。
(ユーフェミア様の仇を討ちたいという気持ちは分かる。分かるよ。でも……)
 ロイの歯は悔しげに軋みの音を立てた。
(今、この場で、この傷ついた少女を励ますのは君の役目だろ……)
 ロイは嗚咽の混じる呼吸を至近距離で聞きながら、言い様の無い感情を実感していた。
 ロイは、スザクにナナリーの傍にいてほしかった。それが何よりナナリーが喜ぶ事なのだ。
 しかし、スザクが中華連邦に行き、ロイがエリア11に残る。それは全く効率的であり、軍人として非難のしようも無ければ、スザクは非難を浴びせられる道理も無い。ロイとて一時は、その効率に目を瞑りスザクに中華連邦行きを譲ったのだ。
 しかし、この涙を見た今、ロイは、
 道理が何だ!
 と軍人ながらに思ってしまうのだった。
 ロイはナナリーの頭を優しく撫で続けた。
 思想、総督という地位、百万人の裏切り、本国と日本人からの冷笑、それらが寄ってかかってナナリーの心を蝕んでいた。
 ロイは、溜めていた重い感情を吐き出し続ける少女を、黙って受け止め続けていた。
(スザク、ナナリー総督はまだ乙女なんだ。それに比べて、背負っているものの重さは半端ではないんだ。笑っていてもこんなに溜め込んでいるんだ。そんな事にも気付かないのか……)
 スザクは今、ナナリーを見ていない。それは仕方の無い事とも思えるが、それでも……例え残酷な言い方でも、死んだ人間より生きた人間を見ろ! とロイは友人を怒鳴りたくて仕方が無かった。
 この時、ロイはせめてスザクがナナリーの本当の支えとなるまで、自分はそれを代替わりしようと改めて誓った。いや、そうしなければいけなかった。そうしなければ、あまりに大きなものを背負いすぎたこの少女はそう遠くない将来に潰れてしまうように思えた。
 同時に、ロイは今回の中華連邦の件が片付いたら、折を見てスザクと二人で話し合う場を作る事も決めた。もはやロイは本人に直接、色々言ってやらなければ気がすまない、と感じるようになっていた。
 そう思っていたロイの背後で、小さな風切り音が鳴って扉が開き、来訪者を受け入れた。
「失礼します総督。すこしお話が―」

400:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/30 20:18:13 CqHQfeNN
PS2のゲームカセットで2人プレー
が出来て自由にナイトメアを選んでバトルしたり
朱雀のストーリーが出来るカセット(PS2)
はありますか??

401:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:18:32 QZxdF7j1
シエーン

402:KOUSEI ◆g9UvCICYvs
08/11/30 20:20:01 a61PEx8E
 入ってきたのはローマイヤだった。彼女は最初、いつも通りの淡々とした表情で入室してきたのだが、それは扉をくぐって三歩目で崩壊した。
「!」
 ローマイヤは入室して、場の惨状を目撃すると、手に持った数枚の書類をパサリと落とした。
 その気配に気付いたロイはナナリーから体を離して振り返る。
 そして、ロイが離れて、今までナイトオブラウンズの白い軍服で隠れていたナナリーの姿を確認すると、ローマイヤは雷が直撃したかのように身を震わせた。
 ナナリーは泣いていた。そして、それに抱きつくナイトオブゼロ。
 その意味を解釈したローマイヤの瞳が驚きから戸惑いになり、やがて怒りになって、その肩はワナワナと震えた。
 みるみる内に表情が変わっていくローマイヤにロイは気の抜けた声をかけた。
「ど、どーしたのローマイヤ?」
 ローマイヤは、過去のの好意的? な視線から180度変化させて侮蔑と軽蔑をごった煮にして煮詰めて、さらに悪意をブレンドしたような瞳でロイを睨みつけ、怒鳴りつけた。
「見損ないましたキャンベル卿!!」
「?」
「そ、そ、そ、総督に手を―」
「手を?」
「手を出すなんて!」
「………………はい?」
 ロイはローマイヤの言っている意味を理解できず、呆然と聞き返した。それとは対照的に、ローマイヤは素早く身を翻して、部屋の壁に付いている防犯ベルのスイッチをポチッと押した。
 ジリリリリリリリリリリ!
 政庁に割れんばかりのベルが鳴り響いた。

 ○
 
 ローマイヤが鳴らしたベルは政庁全体に響き渡った。
「ナナリー総督の部屋からです!」
 政庁の警備を担当する部署では、それを確認した兵が、上官に顔を向けると同時に言った。
「なんだと!?」
 その報告を受け取った中年の上司は目を剥いた。そして、彼の頭の中にある考えがよぎった。
(まさか、黒の騎士団か!?)
 ありえない話ではなかった。いくらゼロと黒の騎士団の大部分が中華連邦に亡命したといっても、その全てが亡命したわけではないのだ。
 黒の騎士団は中華連邦に亡命したと思わせて、エリア11の政庁の警戒を緩ませ、それに乗じて潜伏させていた工作員に総督を襲わせる。
 現実味のある推測だ! と、少なくともこの上司は思った。
「おのれ!」

403:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:20:30 Ca3Fy2BW
>>400
誤爆?支援

404:KOUSEI ◆g9UvCICYvs
08/11/30 20:23:38 a61PEx8E
 黒の騎士団が絡んでいるとあらば、事態は急を要する。万が一黒の騎士団に総督になんらかの危害を加えられては政庁内の警備を仕切る自身の進退にも関わるからだ。
「警備は至急、総督の部屋に急行せよ!」
 上司の命令を受け取った部下は、「イエス・マイロード!」と頷き、マイクに向き直った。
「政庁全警備隊に通達! 総督の執務室に異常が発生、至急急行せよ! 繰り返す、至急急行せよ! これは訓練ではない。繰り返す。これは訓練ではない……」

 ○

「何だ?」
 ローマイヤに書類を手渡し、帰宅の途中にあった元グラストンナイツ、現ナイトオブゼロの副官であるアルフレッドは、鳴り響いたベルを聞いて、不審半分、驚き半分で立ち止まった。
 火事か? という予想が彼の頭をよぎったが、じきに聞こえてきた放送がそれを否定した。
『政庁全警備隊に通達! 総督の執務室に異常が発生、至急急行せよ! 繰り返す、至急急行せよ! これは訓練ではない。繰り返す。これは訓練ではない……』
 アルフレッドが放送に驚くと、廊下の向こうから兄弟のエドガーが走ってきた。彼も私服姿で後ろにリュックサックを背負っている所をみると帰宅途中だったようだ。
「アルフレッド! 今の放送聞いたか!?」
「ああ、聞いた」
 慌てる兄弟に比べて、アルフレッドはいくらか理性的な口調で言った。
「どうやら一大事みたいだな」
「何を落ち着いているんだ。今すぐ総督の部屋に向かおう!」
「いや、待て」
 アルフレッドは、身を翻したエドガーの肩に手を置いて止めた。
「何だ?」
「もしかしたら黒の騎士団かもしれない。お前たちは他のKMF部隊を率いて出撃し、政庁周辺の警戒にあたれ。俺はキャンベル卿の所に戻る」
『警備隊には特例A項の装備を許可する。繰り返す警備隊には特例A項の装備を―』
 その時、特例A項―テロリストが政庁内に侵入した場合の、実弾装備の携帯許可―の命令が政庁内に響いた。
 
 ○

405:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:25:55 VXgSzaWS
支援

406:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:26:43 /8vUdLkI
支援

407:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:27:44 x9YW2a0J
十分かもしれんが一応支援

408:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:31:31 UzmfNF2a
書き込みテスト

409:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:34:29 UzmfNF2a
40分ごろから投下をします。10レス程度ありますので宜しければ支援をお願いします。

410:KOUSEI ◆g9UvCICYvs
08/11/30 20:35:40 a61PEx8E
 事態は素早く、だが確実に大事になっていった。
 ローマイヤがベルを鳴らしてから一分で、警備隊は総督室の扉の前をこじ開けて中になだれ込んだ。また、すでに政庁の外にはベルを聞いて数機のKMFが出撃し、政庁の警戒にあたっている。外のKMFの数は、一分ごとにどんどん増えそうだった。
 一方、政庁内の兵士は二分で装備を整え、それぞれの隊長の元に集い、指示を受けている。
 この政庁に駐留している騎士や兵士はそのほとんどが戦女神と称えられたコーネリア隊の者達だった。それだけに行動は素早く、動きも洗練されたものであった。だが、今回の事に限って言えば、その優秀さがアダとなって、かえって被害が拡大したとも言える。
「総督のお命が最優先である!」
 ローマイヤがベルを鳴らしてから45秒後。総督執務室のドアの前で、警備隊長は緊迫した面持ちで告げた。部下たちは無言で頷いた。
 さすがに、総督執務室に一番近い場所で警備を担当している者達なだけあって、その表情には緊張はあっても焦りや、扉のむこうの未知のものに対する恐怖は微塵も無かった。
 警備隊長は、それらの部下の顔を見回して満足そうにもう一度頷いた。
「ドアを開けろ!」
 隊長が命令すると、兵士の一人が力強くドアを蹴飛ばして中になだれ込む。警備隊の仲間もそれに続いた。ドアを蹴破って四分の一秒後。二十を越える銃口が総督執務室の全てをその射程に収めた。
「総督!」
「総督!」
「総督! ご無事で!?」
 しかし、彼らが見たのは、
 エリア11の総督と、
 実質的現エリア11在留軍司令官と、
 総督主席文官の姿だけであり“敵”の姿などどこにも無かった。
「ナイトオブゼロ様。これはいったい」
 中年の警備隊長が自分の上司であるナイトオブゼロに尋ねる。しかし、答えたのはローマイヤだった。
「キャンベル卿を捕らえなさい!」
「?」
 数十人の何割かは首を傾げた。ローマイヤは珍しく興奮した様子で言葉を続けた。
「不忠にもこの男。(オオカミ的な意味で)皇女殿下に襲い掛かった!」
「!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
 多くの驚愕と戸惑いが、勇敢な警備隊隊員達の顔に表れた。
 しかし、次の瞬間ほとんどの警備兵がそのローマイヤの言葉を信じた。

411:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:36:24 Ca3Fy2BW
ちょい待ち、まだ投下中では?

412:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:37:18 /8vUdLkI
今投下中だぞ。支援

413:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:37:47 UzmfNF2a
リロードし忘れてたすいません。KOUSEI卿、どうぞ続きを!

414:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/30 20:38:44 CqHQfeNN
PS2で2人プレーが出来るゲームカセット
はありますか??
あと自由にナイトメアを選んでバトルが出来て
朱雀のストーリーができるコードギアスのカセットは
ありますか??(PS2)

415:KOUSEI ◆g9UvCICYvs
08/11/30 20:40:16 a61PEx8E
 涙を流す総督―しかも、ロイに泣き崩れたはずみで、衣類が少し乱れていた―。その隣で相変わらず呆然としているエリア11の軍司令官。そして、その司令官を指して怒っている主席文官。
 それらの状況もあったが、なにより警備兵の判断を確定させたのは、ロイのブリタニアでのある噂が原因だった。
 ブリタニアでのロイ・キャンベルに対する噂。それは、
 カリーヌ皇女殿下に好かれている。ナイトオブシックスのアーニャに懐かれている。ナナリー皇女殿下と仲が良い。つまり……。
 悲しいかな、ブリタニア内で、ナイトオブゼロは年下好みがすでに定説だった。
「全員。銃を置け!」
 警備隊長がたくましい腕を振り上げ、決意を込めた太い口調で命令すると。部下の警備兵達は命令に従って一斉に銃を床に置いた。
 流石に、不敬罪だとしてもナイトオブラウンズの一人をいきなり射殺するわけにもいかなかった。どんな理由があれ、彼らの生死与奪の権利は皇帝陛下が握っているのだ。
「へっ?」
 ナイトオブゼロ、いや、変態―と彼らは見なした―は、後ずさった。
「構え!」
 隊長の命令が飛ぶ。隊員達は同じタイミングで足を一歩前に踏み出し、ファイティングポーズを取った。
「ち、ちょっと」
 変態がさらに後ずさった。
「確保ぉぉぉぉ!」
 隊長が、腕を振り下ろしながら告げた。それが引き金だった。
 瞬間。たくましい男たちの“津波”が『うおおおおおおお!!』という咆哮と共に許されざる変態に襲い掛かった。
「えっ、ちょ!?」
 ロイは反射的に身構え、飛び掛ってくる男たちの何人かを投げ飛ばそうとした。だが、本当に投げ飛ばすわけにはいかないと判断したのか、彼は自分の手を瞬時に引っ込めた。だから、簡単な答えとして、彼は津波に呑まれた。
 結局。彼は警備員たちに組み伏せられて、頬を床に打ち、殴打され、揉みくちゃにされた。
 狼が取り押さえられていく一方。ローマイヤがナナリーに駆け寄った。鋭利な瞳に困惑の色を浮かべた主席文官はその少女の乱れた服装を直しながら声をかけた。
「総督、お怪我は!?」
「あの、ローマイヤさん。一体何が起きているのですか? あと何ですか、この男性の雄たけびは??」

416:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:41:21 oNxsEd0U
支援ついでに言っておく。
>>414
そのようなゲームは存在してません。

417:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:41:24 /8vUdLkI
支援


418:KOUSEI ◆g9UvCICYvs
08/11/30 20:43:05 a61PEx8E
 当然、怪我など無いナナリーは、自分の副官的立場にある女性に向けて、困惑した表情を向けるだけだった。彼女はこの部屋で繰り広げられている事の成り行きを理解していなかった。無知とは罪である。
「ご安心下さい。総督を襲った男は取り押さえました」
「襲う?」
 ナナリーは目は見えないのだが、それでも、状況を理解するために少しでも情報を得ようと顔を部屋に巡らせた。
「何をするんだ!? 放してくれ!」
「お黙りください! 皇女殿下に対して欲望あらわに襲い掛かるナイトオブラウンズなど前代未聞ですぞ! 恥をお知り下さい!」
「な、何を訳の分からない事を、って痛たたた!」
 その、ロイの情けない悲鳴を聞き取ったナナリーは、不意に事態を理解した。
「って、ええ!? 違います!」
 ナナリーは顔を真っ赤にして、叫ばん限りに全員に告げた。
「違うんです。誤解なんです! というか、何でそんな事になったのですか!?」
 ナナリーの悲鳴にも似た訴えで、数十人の男は動きを止めて、目を丸くしたのだった。
 ちなみに、今、この瞬間にも外ではKMFが出撃しつづけ、歩兵は列を成して敷地内を警戒し、ベルは鳴り響き、外のライトは全て政庁に向けて点灯し、地域の住人は政庁のただならぬ雰囲気を察知して道路にぞろぞろと集まりだしていた。

 ○

『と、いう事があった』
 夜。ロイは中華連邦で天子とオデュッセウスの婚約祝いのパーティーに出席していたアーニャから、定時連絡を受けていた。そして、その連絡の内容に興味深げに頷いた。
「……なるほど、ゼロがシュナイゼル殿下とチェスをね。あとで勝負の映像を送ってくれないかな?」
 しかし、アーニャはその件に関して返答せず、ただジッとロイを見つめていた。
「んっ? どうしたのアーニャ」
 返答には時間がかかった。
『ロイ。疲れてる?』
 今度がロイが返答に時間をかける番だった。ロイは腕を組み、大きく息を吐くと、力ない口調で言った。
「……まぁね。疲れてると言えば疲れてる」
 アーニャはしばし迷った顔をして、
『どうしたの。その顔……』
 と、ロイの顔を指して言った。

419:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:45:41 /8vUdLkI
支援


420:名無しさん@お腹いっぱい。
08/11/30 20:45:52 CqHQfeNN
PS2で2人プレーが出来るゲームカセット
はありますか??
あと自由にナイトメアを選んでバトル
ができて朱雀のストーリーが出来るカセットは
ありますか??

421:KOUSEI ◆g9UvCICYvs
08/11/30 20:46:06 a61PEx8E
 今、ロイの顔はとんでも無い事になっていた。何度も床に叩きつけられたせいで顔は腫れ、押しつぶされたせいで体中のあちこちがアザになっている。一言で言うならボロボロだった。
 もっとも、かけていた眼鏡が無事だったのと、大切なマントを羽織っていなかったので、それが汚れなかったのが不幸中の幸いとも言えた。
「……」
 ロイは今日起きた一連の騒動をアーニャに報告するのには抵抗があった。というか、勘違いとはいえ、そもそも自分がそんな事をしかねないと判断された事に、ロイは海より深く傷ついていた。
「……聞かないでくれるかい」
『……』
 この世の終わり、もしくは燃え尽きたボクサーみたいなロイの表情に何かを感じ取ったのだろう、アーニャは静かに頷いた。
『分かった。聞かない』
 ロイはホッとして、新しい会話を切り出そうとした。
「他に変わった事は」
『伝達事項は以上……ああ、あとジノが鼻の下を伸ばしてた』
 アーニャはその光景を思い出したのか、多少呆れ気味に首を振った。
『よりにもよってあんな女が良いとか。趣味が悪い』
 ロイは内心で軽く驚いた。アーニャがこうも人を堂々とけなすのは珍しい事だった。
「はは、趣味が悪い、か。で、その人はどんな人だったんだい?」
『ロイも知ってるはず。紅月カレン。黒の騎士団のエース。ジノが、彼女が手配書よりずっと可愛いとかで……見る?』
 画面の中のアーニャが何やら操作すると、しばらくしてロイの携帯電話が着信を訴えた。携帯電話に動画が送られてきたのだ。
 ロイが送られてきた映像を見ると、そこには二人の少女が映っていた。
 一人は黒髪の少女で、恐らくは皇家の当主だろう。そして、もう一人はまさしく紅月カレンだった。
 ロイは軽く笑って、ジノの行動に納得した。そして無意識に言った。
「なるほど、確かに美人だ。手配書なんかよりずっといい―」
 これは明らかな失言だった、とロイが気付いたのは、アーニャがモニターの中で眉間に深い溝を作っているのを見たからだった。
『……ロイも大きい方が好きなの?』
 ロイはアーニャの聞きたい事を悟った。アーニャが色々小さい事を気にしているのをロイは知っていたのだ。
「あ~……」
 ロイはどう答えるか迷って、結局おどけて見せた。
「な、何の話かな?」

422:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:48:22 VXgSzaWS
支援

423:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:48:25 /8vUdLkI
荒らし出たか?支援

424:KOUSEI ◆g9UvCICYvs
08/11/30 20:48:25 a61PEx8E
『……真剣に聞いてるのに、そういう不誠実な態度は嫌い』
 ロイの打算は、キレた“ランスロット”の前に立ち塞がる“無頼”の如く易々と粉砕された。
 ロイはお手上げ、といった心境だった。しかし、ブリタニアと覇権を争う中華連邦やEUに対してですら許される白旗も、ことアーニャ・アールストレイムに対しては通用し無い事をロイは良く知っていた。
「大小は関係無いよ」
 ロイは慌てて舌を回した。
「僕が女性にそういう魅力を感じるとするならば、それは心の輝きだろうね」
 咄嗟の事とはいえ、我ながら馬鹿な事を言い出した。とロイは思ったが、だからと言って止めるわけにもいかなかった。
 もう毒食わば皿までという心境だった。
「これは持論だけどね。美しく輝く心を持つ女性はそれに伴って、外見も美しくなるさ」
 と、ここでロイは思いついたように付け加えた。
「そう、アーニャのようにね」
『……本当?』
 すると、奇跡がおきてモニターの中のアーニャの機嫌が直ったようだった。とりあえずロイは安心した。
 女性が怒り出したらとりあえず褒める。これは、ロイがこの一年間様々な女性関係に悩まされた結果考え出した、自己防衛術だった。
「もちろんさ」
 ロイはトドメとして計算しつくした笑顔を浮かべた。顔の腫れた部分がモニターから見えないように顔と体位の位置を変え、大げさにならないように控えめに顔を緩める。
 相手の視界を計算して自分の表情をコントロールするのは交渉術における基本中の基本であり、ロイの得意分野でもあった。
 ちなみに、もろもろの技術を用いた事に罪悪感は無かった。アーニャが美しいと思う気持ち自体に嘘は無いのだ。
 それからやたら上機嫌になったアーニャ―少なくとも、ロイからはそう見えた―と、取り留めの無い会話を交わし、通信を終えた。
「さて……」
 ロイは立ち上がろうとして、机に置かれた自分の携帯がふと目に入った。
「……」
 ロイは特に理由無くその携帯を持ち上げ、先ほど送られてきた映像を見直した。
 紅月カレン。先の大アヴァロン攻防戦で自分に痛手を与えた女性。本来ならロイはこの少女を憎む立場ではあったが。
「君の心の輝きはさぞ美しいんだろうね」

425:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:49:03 CqHQfeNN
↑間違えました
>>416
じゃあどのようなカセットがあるんですか??

426:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 20:49:47 /8vUdLkI
支援

427:KOUSEI ◆g9UvCICYvs
08/11/30 20:51:32 a61PEx8E
 ロイは軽く笑った。そして、映像の中で生き生きとした動きをする少女に好意的な感情を抱いた。
 その歩き一つとっても、彼女は戦士だというのが良く伺えた。しかし、戦士という力強い表現の他に、ロイはその無駄の無い一挙一動が美しく可憐だとも思えたのだ。
「本当に美人だな……」
 ロイは、しばらくその映像を繰り返して見ていた。理由は特に無かった。少なくとも理由が思い当たらなかった。
「んっ?」
 その時、妙な事が起こった。ロイの視界が急激にぼやけたのだ。
「何だ?」
 一瞬、目にゴミでも入ったかと思ったが、それは違っていた。
 ロイは反射的に、指で目元を拭った。するとそこには、
「……涙?」
 目から離した指に少量の水滴が付いているのを見て、そして、頬に伝わる感触を感じて、ロイは首を傾げた。
「泣いてるのか僕は……なんで?」
 その理由も、自分が紅月カレンの映像を繰り返し見続けた理由同様、全く分からなかった。

 シーン9『気持ちの問題』Cパート 終わり。
 シーン10『ロイ・キャンベルの憂鬱』に続く。

428:KOUSEI ◆g9UvCICYvs
08/11/30 20:53:48 a61PEx8E
 投下終了です。
 支援感謝です。
 個人的に、この板に投下するのは最後にしたいな……。
 限界が2000バイトだし、途中で猿かかったし、くやしいのぅ、くやしいのぅ……。
 ではまた二週間後にお会いしましょう。

PS、トーマス卿へ。いつもお世話になっております。
   
   >>402
「ど、どーしたのローマイヤ?」を「ど、どうしたのローマイヤさん?」に
   更に、そのすぐ下の
   
   ローマイヤは、過去のの好意的?

   の、の、が一つ多いので、
   お手数ですが、修正をお願いできますでしょうか。

429:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:00:25 /8vUdLkI
投下お疲れ様です。
面白かったです!ナナリーをなぐさめる場面は感動した。
いい話だ…と思ったら!!
後半大爆笑!いやあギャップがいいですね。
そしてロイの涙のワケは…?
次回投下を楽しみにさせてもらいます。

430:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:00:43 VXgSzaWS
>>428
GJでした!!
ロイのナナリーに対する思いやりが色々と台無しに……ローマイヤさん、そりゃないよwwww

431:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:01:52 Ca3Fy2BW
>>428
乙です。
また一歩ロイが核心に近付きましたね。
次の鍵となりそうなのは本人との対面か?
でもスザクが阻止しそうだな……
今回のロイの不満と合わさって大揉めの予感が!?

432:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:06:27 gwS8y+F3
>>427 GJです!!
相変わらず面白いですね!
まさかロイが皆にボコボコにされるとはwwwww
そして、最後のロイの涙…次回に期待しています!!!

433:保管者トーマス ◆HERMA.XREY
08/11/30 21:07:11 UzmfNF2a
>>428
投下お疲れ様です。誤字は修正しておきましたので領地よりご確認ください。


さて先ほどは割り込み失礼しました。20分ごろから代理投下を始めたいと思いますので、
連続ですいませんが支援をお願い致します。

434:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:22:21 VXgSzaWS
支援

435:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:22:27 UzmfNF2a
では時間ですので、始めます。

========ここから前書き含む本文===================

タイトル:Intermezzi #4.5 ~ナイト・オブ・D~
ジャンル:ギャグ
カップル:ライ×ナナリー

保管庫0031-0413「Intermezzi #4 ~ピンク・ハリケーン~ 」の続きです。
・純血派編と学園編を並行→新シナリオへ?という展開です。
・なのでライはルルーシュ=ゼロを知りません。
・ただしスタート地点でルルーシュは利用を考えクロヴィスを殺していません。
 (公式記録上で死亡とされ本国へ帰っており、以後の展開は同じですが)
・両シナリオ終焉のギアスの暴走やテロリストの襲撃は無かったものとお考えください。
・アニメを含む公式ネタが若干入ってます。

ナナリーの「優しい世界」実現のため、ひたすら和平路線でルルーシュの復権を
目標とするライのドタバタ風味の日常風景です。
既にジェレミアをルルーシュに引き合わせ、兄妹の騎士同士となる筈なのですが、
イレギュラー相次ぎ、純血派シナリオ本編以上にライの苦労が続いています……。

が、今回はライがひたすらデレってるだけなので、ここらは無視して番外編ということで。

436:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:22:53 VXgSzaWS
支援

437:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:25:46 UzmfNF2a
「ライさん」
「なんだい、ナナリー」
「ジェレミアさん」
「はい、ナナリー様」
「お二人に、大事なお話があります」

庭園の花々を背景に、僕の姫君が真剣な面差しで言った。

ようやくルルーシュがナナリーにジェレミア卿を紹介したので、僕らは揃って中庭でうららかな昼下がりを過ごしていた。
軍人ということは絶対に明かすな!離宮に来たことのある貴族だという話で通せ!
と、超過保護シスコン兄貴は前もって僕らに厳命したが、どこかからの電話で席を外してくれたのを幸い、それは無かった話になった。
ジェレミア卿は困っていたが、僕がナナリーに全て打ち明けているのだから嘘を吐いて貰っても仕方がない。

ルルーシュが最愛の妹を可能な限り血腥い情報から遠ざけたい気持ちは分かる。僕だって出来るならそうしたい。
だからって、彼にとっては得難い味方、僕にとっては友人である人の立場をこの期に及んで偽る事に何の意味があるんだか。
いつまでも子供扱いして手の内に囲っておく事など出来ないと、何度言ってもこれだけは納得しないんだから困ったものだ。

だいたい、どう緘口令を布いたって、ジェレミア卿の挙措動作から軍人らしさを抜くなんて無理だ。
そしてナナリーが相手の気配からでも様々な事を察してしまうのはルルーシュが誰より知ってるだろうに。
要らない嘘はいずれ手痛いしっぺ返しになるんだぞ、ルルーシュ。

そう内心呟く僕の傍らでは小さなお姫様と長身の騎士が互いにちょっと遠慮がちに、ぎこちなくやり取りしている。
なんだか非常に可愛い構図だ。

438:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:27:33 UzmfNF2a
「ジェレミアさん」
「はい、ナナリー様」

本来なら、ナナリーがジェレミア卿を呼ぶならそのまま或いは爵位で呼ぶべきなのだろう。
しかし彼女はそれにどうしても馴染めず「さん」付けで彼を呼び、自分は呼び捨てにしてくれるよう頼んだ。
だからといって皇族を崇敬するジェレミア卿がそれに応じられる訳も無く、結果として折り合いがついたのが今の状態。

ヴィレッタ卿から注意事項を詰め込まれたそうで、いつもの全力モードを何処かへ追いやり、壊れ物にするようにそーっと息を詰めて相対するジェレミア卿。
そして最初の挨拶で彼に小さな手を預け、嬉しそうににっこり笑ったナナリーの愛くるしさといったら、もう!もう!もう!
と、僕が思い出してじたじた身悶えしてる間に、会話は続いていた。

「私に騎士の叙任の仕方を教えてくださいますか」
「それは、お教えできますが……」
何ゆえ、と言いかけたジェレミア卿はすぐに僕を見て、目許を和ませた。
僕はというと、かなり間抜けな顔をしていたと思う。
「ナナリー。君がずっと彼に会いたい、お願いがあると言ってたのは」
「ええ、ライさん」

現在のブリタニアにおける騎士とは、ナイトメアフレームのパイロットを指す。
旧来の意味の騎士は、主として統治に携わる皇族の専任となった場合にしか生きていない。
けれど僕がなりたいのはそのどちらでも無く、自ら選んだ主を守る、旧い時代の掟と誓いに生きる騎士だ。
僕の姫君は、それを知っている。

439:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:28:01 VXgSzaWS
支援

440:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:30:01 UzmfNF2a
でも、彼女がジェレミア卿に直接会いたいのは、何よりルルーシュを託すに足るかどうか知りたいからだと思っていた。
なのに彼女はまず僕との約束を想ってこの人を確かめ、そして口にしてくれたのだ。

「身分や実績どころか何も出来ない私の、騎士になって下さるとライさんはおっしゃいました。
それは私が皇族の生まれだからではなく、大昔の伝説の時代の、本来の騎士としてのお気持ちを下さるのです。
だから、旧いしきたりのように私の騎士になっていただきたいと夢見ていました。
それには立会い役として先達の騎士が必要だと、本で読んで、それで……」

頬を染めて一生懸命に説明し続ける彼女を見ていたら、なんだか鼻の奥がつーんと痛くなって、視界がぼやけてきた。
これはきっとアレだ、花粉症だ!なったこと無いからよく知らないけど!
僕が、自分でも分かるくらいぽーっとしてナナリーから目が離せないのは、熱があるんだ!
ジェレミア卿が僕を見て笑いをかみ殺してたのは気のせいだ!ていうか何がおかしいんですか!

「ナナリー様」
ジェレミア卿は静かに、彼女の前に膝をついた
「光栄です。その任、謹んで承ります」

そういえばこの人も、僕と同じような事をしてるのかも知れない。
だいたい、辺境伯の位を手にしていながら存在さえ明らかに出来ない皇子の騎士たらんとする時点で、この国の制度からはみ出している。
ルルーシュがいつか身分を公にできるよう動いてはいるけれど、そんな日が来なくてもたぶん彼はルルーシュを守ってくれるだろう。きっと、全力で。

「ナナリー様は、彼から剣を受け取らなくてはなりませんが」
「剣……ですね」
「よろしければ日を改めて、相応しいものを持参いたしますが」
ナナリーはいっとき迷うそぶりを見せたが、ややあって心を決めたらしい。
「あの……花では、いけませんか」
「花?でございますか?」
ええと、とジェレミア卿は言葉を探して、少しのあいだ躊躇った。

441:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:30:28 /8vUdLkI
支援

442:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:32:42 UzmfNF2a
「花を捧げるのは、騎士の役目ではありません」
ようやく見つけたらしい遠まわしな言葉の意味は僕にも分かる。
所属、階級としての騎士は本来は戦士だから、象徴として剣を用いるのは当然だ。
そして個人の騎士として任ぜられるということは、己の剣をその主君に捧げ、貴方の為にのみこれを揮うと誓うものだ。
剣を持たなかった場合、主君が下賜した剣を戴くこともある。

だとしたら。
僕の場合ナイトメアフレームをもって誓うことになるのかとか、
アレは個人の物じゃないからまずいかなとか、
そもそもナナリーに持ってもらうのは無理だろうとか、
ナナリーが騎乗<の>るなら猫型『にゃーいとめあ』だろうかとか、
ここしばらくのお気楽暮らしのせいか、瞬時に30パターンぐらいのボケツッコミが脳内で展開してしまった。
が、続いたナナリーの言葉は、僕を一気に現実へ引き戻した。

「剣を、持って欲しくないのです。人を傷つければ自分も傷つきます。私、ライさんには傷ついて欲しくない」
「それは……」
僕らは顔を見合わせた。
ジェレミア卿も僕も軍人だ。今まさに戦いの中にある機械を駆っている。
やはりナナリーには、世間の暗い面は知らせないままのほうがいいのだろうか、と思ったが。

ナナリーは、さらにこう続けた。
今、この世界でそれが難しいのは分かっています……と。
「わがままです、でも心は」
心だけは。

いつからだろう。
要りもしない急激な変革を望んで血で血を洗うなど、見たくないと僕は思っていた。
『……だから、明日も笑っていてね』
失った記憶の中で囁く誰かの想いが時折胸にこだまして、それは僕だけの願いじゃないと信じていた。

443:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:35:03 UzmfNF2a
そして知った、ナナリーの望む優しい世界。
人が互いに優しく出来る、そんな世界。
その世界に剣は要らないと、誰より僕は知っていた筈だ。
「今は心の在りようだけでも、いつかは、きっと」
想いをともにしてくれると知った時から、彼女こそが僕の姫。
「だから……花を用いたいのです。いけないでしょうか」

「ジェレミア卿、僕も花をもって誓いたいと思います」
僕の言葉に彼は思案顔をしたがそれでも頷き、言葉にしてナナリーに返してくれた。
「分かりました、ナナリー様。ライ卿ならばお望みを果たす事も出来ましょう」

安堵の吐息がナナリーの唇からこぼれ、そこに嬉しそうな微笑みが生まれた。
「ライさん、摘んでいただけますか」

庭園に咲き乱れる色とりどりの花。
本当は、桜にしたい。でも季節が巡ってしまったから、ナナリーと僕の思い出を作ったあの花は咲いてない。
だから僕は、黄色でふわふわした小さな丸い花を選んだ。

その花はエリア11の原生ではないと、授業中の余談に聞いた。
交易などの荷物に付いて運ばれてきたのだろうけれど、風に飛ばされた綿毛がヨーロッパからアジア、そして海を越えて日本へ長い時間をかけて辿り着いたのかもしれない。
どこからどう流れ着いたか分からない僕には似つかわしい、そんな気がする。

外の世界からもたらされたそれを、時に遺伝子汚染などと呼ぶのは知っている。
でも、芝生の端に星のように咲いてるのは悪い眺めじゃないと思う。

それに、今日のナナリーのドレスが白っぽいふわふわしたデザインで、綿毛のようなのだ。
なんだか、すごく……似合いじゃないか。

444:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:35:31 /8vUdLkI
支援

445:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:37:30 UzmfNF2a
ふと、どこかの丘の上で、この花に囲まれていた記憶がよぎった。
『昨日は鹿、一昨日は兎。そして今日もきっと何かに会えるわ』
誰かが、僕に向かって微笑んで言った。
そして並んで、小さな星々の間から綿毛が真っ青な空に飛んで行くのを見送った。
『……だから』

それは一瞬のことで、僕は黄色い花を一輪、胸前に構えて学園の庭に立っていた。
「それでいいのか?」
苦笑しながらジェレミア卿が言った。
「薔薇とか向日葵とか、そっちの丈の高いのとか、もっと派手なのがあるだろう」
あまり花の名前は知らないんだな、この人も。

それでも説明は求めずあえて変えさせようともせず、彼はナナリーに所作を説明した。
誓言のほうはオリジナルで行くしかないと、ふたりで相談しているようだ。
ここに騎士としての誓約を立て、ブリタニアの騎士として戦うことを願うか…が、この国での騎士に求める誓言だけど、彼女に必要な言葉はきっとそこには無いから。

「では、ルルーシュ様のお戻りを待って始めましょうか」
ナナリーがぱっと顔を上げた。
「あ、あの、お兄様には、内緒……なの、で……」
ナナリーの声がどんどん小さくなった。同時に両手で覆った頬の赤みが広がってゆく。
最後の言葉は聞き取れるぎりぎりだった。
「……二人だけ、で……」

僕は、顔の温度だけが急速上昇するのを感じていた。
そのリアクションは不意打ちすぎるよ、ナナリー。
びっくりした心臓が、何処かへ走って行きたがってる。

446:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:39:59 UzmfNF2a
そんな僕の顔を見て、ジェレミア卿はまた笑いを声に出すまいと頑張っていた。
何が面白いんですか一体。そんな、呼吸を止めないと堪え切れないほど笑えますか!
僕は無言で拳を振り回し、彼はそれを目にしてさらに苦しがる。見なければいいでしょうに!矛盾してるけど!

ややあって、ようやく落ち着いた彼は咳払いして言った。
「ライ卿、異存は無いのだな」
そして立会い役として、僕を導き姫君の前に跪かせた。

ナナリーには見えていない。
それに、もしかすると傍からは子供のママゴトのような眺めかもしれない。
けれどそれでも彼は、一動作も疎かにさせない。

ただ、本当はこの後に首打ち(コレー)が入るんだがな~、と呟いてたのだけは聞かなかったことにしよう。
あんな痛そうなの、されてたまるか。自分が何故そんな事知ってるか分らないけど。
今はとにかく全身全霊をこめて、姫君の言葉を受け取らなくては。

「ライさん。私、ナナリーの騎士として、何が起ころうともまた何処へ行こうとも、共に生きて……優しい世界を願ってくださいますか」

これは騎士に求める誓いでは無いかもしれない。でも僕らふたりの、ひとつの望みだ。

「はい、ナナリー姫。この身の全てにかけて、誓います」

僕は姫君に花を捧げる。

「汝、ライを私の騎士に任じます」

447:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:42:43 UzmfNF2a
差し伸べられた黄色い花が、僕の目の前でふわりと揺れる。
僕はそれを、両手で受ける。彼女の小さな手もろともに。

そこで、時が止まった。
と、思った。

「何をしている!」
ルルーシュが戻ってきて、騒々しい時間が動き出した。

「勝手なことをするな!ナナリーには、いずれもっと然るべき場で騎士をつける!」
予想通りの反応だな。然るべき相手を、と言われなかっただけマシとすべきか。
僕はやれやれと肩をすくめ、頑固者の友人に振り返った。

が、謝罪するかと思ったジェレミア卿が、ルルーシュの前に片膝をつくなり反論し始めた。

「殿下、ご報告しなかった点についてはお詫び申し上げます。しかし、ナナリー様がご自身の騎士を選び任じる権利は不可侵とご承知の筈です」
彼としては、ルルーシュがたった一人の妹を何より大事にしていると承知だからこそ、公正であって欲しいと思ったのだろう。
だが、ルルーシュが聞く耳をもつだろうか。

「また、わが友ライ卿はナナリー様の騎士として欠けるところ無き男と、既にお認めではありませんか」
え。そんな話、してたんだ。
「仮の儀としてでも、お許しを戴ければ……殿下?」

「……っ」
ルルーシュは物凄いしかめっ面をしたかと思うと、足取りを荒げてクラブハウスへ去ってしまった。
「お兄様……」
ナナリーの小さな声が届いたわけも無いけれど、彼はすぐに引き返してきた。

448:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:45:21 ggjur67O
支援

449:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:45:50 +WX1uAb1
前にテーブルの下に隠してあった長剣を、両手で引きずっている。

「ジェレミア・ゴットバルト、そこ動くな!」
「はっ!」

ちょっと待て!いきなりお手討ちか!
「ジェレミア卿、逃げて下さい!」
僕は跪いたままの彼の腕を掴んで引っ張った。が、しかし主君に動くなと言われた彼は梃子でも動く気配が無い。
その眼前で、ぶん、と風を切って剣が振られ、足元の芝生にめり込んだ。

ルルーシュは真っ赤になってそれを引き抜こうとする……が、抜けない。
呆気に取られて見守る僕らの前で両脚を踏ん張り、仰け反り、身体の向きを変えてぐいぐい引いているが、やはり抜けない。
たしか「おおきなかぶ」って童話があったっけ。
そんな事を思い出している僕の傍らで、見かねたジェレミア卿が手を出そうとする。

「で、殿下、宜しければその、お手伝いいたしますが?」
「ええい!うるさいっ!」

怒鳴った弾みに剣が抜け、ルルーシュはすってん、と仰向けに転んだ。

「殿下!ご無事ですか!お手討ちなればこちらから参ります!」
「何言ってんですかジェレミア卿!ルルーシュ、おい、危ないって!」

ルルーシュは真っ赤になって立ち上がると、今度は肩越しに剣を振りかぶろうとした。
前にスザクに教わったイレヴンの剣術、示顕流の構えに似ている。
でも、重さに耐えかねて、刀身もろともふらついていた。
これで倒れると身長プラス剣の刀身プラス腕の長さで、攻撃範囲がかなり大きい。
ナナリーを守らなくては!と振り向くと、彼女の車椅子は既に芝生の反対端へ移動されていた。
ありがとう咲世子さん!いつの間に来たか知らないけど!

450:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:46:42 +WX1uAb1
切っ先がまた僕らの鼻先を掠めて、地面に落ちた。
今度は斜めに刺さったので浅かったらしく、ルルーシュが全体重をかけて引っ張ると抜けた。
おお、とうっかり拍手した僕らの前で彼はしばらくのあいだ呼吸をととのえ、それから構えなおした剣をジェレミア卿の喉元に突きつけて叫んだ。

「お前の叙任がまだなのに、ライの世話をみている場合ではないだろう!
確かにお前は既に騎士たる身だが、俺の専属として任じるにはせめて公に名乗ってからと思い、あえて後の約定としたというのに!
もういい!立会いの騎士も要らん!略式で行くからなっ!」

……叙任、する気だったのか。
ちょっと涙目だ。もしかしてユフィやナナリーに先を越されて悔しかったりもするのか?
でも危ないから!君には本身の長剣じゃ無理だから!振り上げるなってば!
わあ!

思わず首をすくめ目をつぶった僕らの頭上に剣が降ってこよう、として。

きぃぃぃん、と澄み切った金属音がした。

咲世子さんが僕らの前に立ち、右手の果物ナイフで長剣を軽やかに受けていた。
「ルルーシュ様、立会いの騎士ならこちらにお一人いらっしゃるではありませんか」
彼女は僕をさして、にっこりと笑った。
「ライ様は、ナナリー様の騎士ですよね?」

451:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:47:23 +WX1uAb1
Epilogue】

ちなみにルルーシュは剣を振り回すうちに足首を捻挫し、咲世子さんに剣をはじかれた衝撃で手首をくじいていた。
さらに全身筋肉痛に見舞われたらしいが、それは翌日の話。

この儀はとりあえず日を改めてと、例の剣はジェレミア卿がルルーシュを抱えた反対の手で引っ下げて部屋へ戻した。
これがさらにルルーシュをクサらせたことは言うまでもない。
「次は本気でやるからな!」と、包帯を巻いて貰いながら、なお偉そうな口調で負け惜しみを言っていた。

ついでに最悪のショックが彼を襲ったのはその直後で、自分の行動でナナリーに何もかもがバレたと悟った時だった。
ぷんぷん怒ったふりをしているナナリーにつれなくされて、この世の終わりみたいな顔でベッドに潜った彼に、つける薬は無かった。

だから要らない嘘は吐くなというんだ、ルルーシュ。この程度で済んで良かったかも知れないぞ。
ナナリーには素直に謝り倒して許してもらえよ。
あと、鬱陶しいからと僕の部屋に避難(という名の押しかけ)して来てるC.C.を引き取ってくれ。

452:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:49:50 +WX1uAb1
以上です。
ちなみに「どこかの丘の上」での台詞の一部は、某名作SF小説から貰いました。
タイトルが分かった方は、ニヤリとして戴ければ。
~* D Is for Dandelion *~

====以上、あとがき含む本文終了====
最初に書き忘れましたが、これは

    銀鰻卿の作品です

支援ありがとうございました。

453:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 21:50:03 VXgSzaWS
支援

454:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 22:14:26 GurSsqOH
>>428
GJです。ローマイヤさん、それはあんまりですww
ロイはカレンを思い出しかけてるのだろうか、続きが気になります。

>>452
GJ&代理投下乙です、このライはナナリーにデレデレだなーwそしてルルーシュ、無理すんなww
某小説の一節が出てきましたが、これはつい最近、とあるゲームでお目にかかりました。

お二人の次回の投下をお待ちしています。

455:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 22:17:43 0e/Qqztk
>>452
代理投下乙! 銀鰻卿、GJです!
あなたのSSがまた読めて嬉しい!

台詞は思わずググって納得。二重三重に仕掛けられてる文章を読むとにやりとします。
剣ではなく、花で騎士の誓いを行うライナナ主従は実にらしいなと思いました。
ルルーシュは情けn……、いやいや、ジェレミアのことを思ってのことと考えると
やっぱりいい奴だよなとほろりときます。

次回の投下も楽しみにしています!

456:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 22:43:36 yOBYSGZx
オハヨウゴザイマシタ
>>428
KOUSEI卿、GJでした!
千羽鶴に例えた願い、あぁ、感動した!
その後、いきなり誤解されるロイ……警備兵www
ナイトオブゼロは年下好みwww
カレンのことを繰り返し見て涙を流すロイ、無意識の内に記憶を取り戻しかかっているのか……
貴公の次の投下を全力を挙げて待たせていただきます!

>>452
代理投下乙でした。
そして銀鰻卿、GJでした!
凄まじい! ナナリーの可愛さが阿修羅すら凌駕する!
剣ではなく花をもって騎士の叙任を行う、ナナリーらしくて良いですね。
……ルルーシュ……生きろ……
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!

457:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 23:13:57 GurSsqOH
23:30から投下します。本文・あとがき合わせて7レス分です。

458:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 23:20:39 +WX1uAb1
支援します

459:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/30 23:30:45 GurSsqOH
ありがとうございます、そろそろ投下します。

作者:余暇
タイトル:恋人初日の夜
カップリング:ライ×カレン
設定:騎士団編カレンEND直後

(注意)
・なるべくシンプルにしようと思ったら、激甘なだけになりました。

本文・あとがき合わせて7レスあります。

460:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 23:31:10 ETRrKOPI
支援

461:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 23:31:12 +WX1uAb1
支援

462:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/30 23:35:21 GurSsqOH
                                    『恋人初日の夜』

夜、僕は暗闇の中で目を覚ました。広い部屋の中央にあるベッドに、僕は寝かされていた。
「……痛っ。」
軽く体を動かすと、少し痛みが走った。無理もない、銃で数回撃たれたのだから。
「ああ、そうか。ここはアジトの医務室だっけ。」
特区日本の式典会場でゼロのギアスが暴走し、そのギアスにかかったユーフェミアが、会場にいる日本人を虐殺しようとした。
彼らが望んだ世界がギアスによって壊されるのが嫌で、自分の命に代えてもこの世界を守りたくて、僕はありったけの力を振り絞って会場にいる全員にギアスをかけた。
その際ユーフェミアに数回撃たれて意識がもうろうとしていたが、とにかく必死だった。自分の命がどうなろうと、どうでも良かった。
結果的には大惨事を免れて特区日本も成立、僕も一命を取り留めた。体の中にあったギアスが消失するというおまけ付きで。
(良かったんだよな、これで。ギアスのことはわからないけど、結果として血の流れない世界を創っていくスタート地点に立てたんだから。)
そう、これで良かったんだ。大切な人たちが笑って明日を迎えることができるのだから。決して代わりなどいない大切な仲間、そして世界でたった一人の……。
「ん?」
考え事をしていて気付かなかったが、僕の手を誰かが握っていた。暗闇の中で目を凝らすと、ベッドの横で誰かが椅子に腰掛け、静かに寝息を立てていた。
シルエットでしか判断できないが、僕にはすぐにその人物の正体がわかった。
「カレン?君なのか?」
「ん……。」
声をかけられ、その人物は目を覚ました。
「あ……。ライ、目が覚めたの?ごめんね、起こしちゃった?」
僕の予想通り、その人物は黒の騎士団のエースパイロットにして『騎士団の双璧』と呼ばれる僕のパートナー、そして世界でたった一人しかいない最愛の人、紅月カレンだった。


463:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 23:35:46 +WX1uAb1
支援

464:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 23:37:27 ETRrKOPI
支援

465:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 23:38:06 m+wxnwnU
支援

466:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/30 23:38:57 GurSsqOH
「別に目が覚めたのは君のせいではないが……。」
「そう、良かった。喉渇いてない?お水あるけど。」
「あ、ああ、頼む。」
カレンは椅子から立ち上がって部屋の電気をつけ、ベッドのそばにあったコップに水を注いだ。そして僕は彼女に支えられてゆっくりと体を起こし、コップを受け取った。
「一人で大丈夫?」
「ああ、これくらいは問題ない。」
僕はゆっくりとコップを傾けた。冷たい水が喉を潤していく。
「そう言えば、何故カレンはここにいるんだ。僕はもう大丈夫だから、帰っても良かったのに。」
「良くないわよ。その…こ、恋人の心配をしたり、面倒を見たりするのは当然じゃない。初日だからよくわからないけど。」
まだ照れがあるのだろう、カレンが顔を赤くして視線をそらした。確かに、昼間に僕がトレーラー内の簡易ベッドの上で意識を回復し、その直後に正式に恋人同士になったばかりだから、まだ初日と言えば初日だ。
そう考えると何だか恥ずかしくて、僕も顔が熱くなってきた。恋人とは、こうも不思議な感覚にさせられる関係なのか。
「それとも、ライはベタベタされるのは嫌い?」
「いや、そんなことはない。ただ、あまり君を束縛したくないから。恋人になったからって、急に今まで以上に相手に束縛される必要もないと思うし、迷惑もかけたくないから。」
「迷惑なんかじゃないわ、私が自分の意思で付き添っていたんだから。それに、そうやって変に距離を置かれる方が不安なの。本当にあなたの一番近くにいるのか、自信が持てないから。」
カレンがベッドに腰掛け、僕に身を寄せてきた。
「だから、遠慮しないで私に甘えて。ライは遠慮し過ぎるから、もっとわがままになって私を頼って。それが恋人としての最初のお願い。ルールその一、『相手に遠慮するな』ってとこかしら。」
「ルールか。じゃあ、守るしかないな。その代わり、君も遠慮しないで僕に甘えて欲しい。」
自分の顔のすぐ近くにあるカレンの顔を見ると、彼女は顔を赤くした。
「あ、そうか。ルールってことは、私も守らなきゃいけないのよね。遠慮しているつもりはないけど、遠慮なく甘えるって、どうすればいいのかな?」
僕も少し考えてみたが、やはりよくわからなかった。恋人とは難しい。


467:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 23:39:20 +WX1uAb1
支援

468:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/30 23:42:25 GurSsqOH
時計を見ると、午後十一時を過ぎた所だった。アジトに戻ったのは夕方で、食事をとったのは七時頃。その後すぐに眠ってしまったから、四時間ほど眠っていたことになる。
「カレンは今夜はどうするんだ?ここに泊まるとして、他にベッドかソファはないのか?椅子に座ったままだと、疲れが取れないぞ。」
「あるにはあるけど、今夜だけはライの手を離したくなかったから。大丈夫とわかっていても、この手を離したらもう会えなくなりそうで。」
カレンが僕の手を強く握る。僕は、彼女をここまで不安にさせていることが申し訳なく思えてきて、そっと彼女の肩を抱いた。
「大丈夫、僕はどこにも行かない。ずっと君のそばにいるから、二度と君を不安がらせたり、泣かせたりしないから。」
「うん、約束よ。破ったら承知しないから。」
「ルールその二、『相手を悲しませたりしない』も追加だな。」
「ふふっ、また増えたわね。」
僕たちは笑い合った。
「それで、今日はどうする?やっぱりちゃんと横になって寝るべきだと思うんだが。」
「そうね、肩とかこりそうだし。」
その時、僕はふと思った。「今夜は離れたくない」と彼女は願っている。今彼女は僕のベッドに腰掛けており、ベッドは意外と幅がある。そして彼女と話しているうちに、僕も離れたくなくなってきた。
以上から導き出される結論は……。
「あ、あのさ。もし迷惑じゃなかったら……。」
カレンが顔を真っ赤にして、僕を見つめた。どうやら、僕と同じ結論に達したらしい。
「べ、別に迷惑ではないから。むしろ僕もそうしたいから、うん。」
「そ、そうなんだ。そう言ってくれると、嬉しい…かも。」
カレンがすごく緊張しているのが伝わってくる。そして彼女に負けず、僕もかなり緊張していた。


469:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 23:42:54 +WX1uAb1
支援

470:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 23:44:21 ETRrKOPI
支援

471:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/30 23:47:58 GurSsqOH
部屋の電気が消えた中で、僕は隣にぬくもりを感じていた。まさか、初日からカレンと寝床を共にするとは。いや、決して変な意味で言ったのではない。それに合意の上だし…って、僕は何を言い訳がましいことを考えているんだ。
「何だか、緊張するね。」
隣にいるカレンが声をかけてきた。
「そうだな。それより狭くないか?ちゃんと眠れそうか?」
「ええ、狭くはないけど、ドキドキして眠れないかも。」
「同感だ、目が冴えてきた。」
二人とも思い切ったことをするものだと、今さらながら思う。ちゃんと眠れるといいのだが。
「狭いと言えば、ライはどうしてベッドの端っこで小さくなっているの?ちゃんとした所で寝ないと、体に障るわよ?」
「えっ、それは……。カ、カレンが薄着だから、触ったらまずいと思って。」
「だ、だって制服のままだと寝にくそうだから……。」
そう、カレンは寝る前に制服を脱いで薄着姿になっていた。僕は、彼女が着替える時後ろを向いていたので実際どんな姿なのかは知らないが、おそらく悩ましい姿なのだろう。
そして僕は恥ずかしさのあまり、ベッドの隅の方で小さくなっているわけだ。こんな光景をC.C.が見れば、からかわれるか呆れられるかのどちらかだろう。いや、両方か。
「べっ、別に少しくらい触れても大丈夫だから、こっちにおいでよ。それに、そんなに離れられたら、何だか寂しいから。」
「わ、わかった。カレンがいいって言うなら、そうする。」
僕は意を決して、少しずつベッドの中央付近に体を寄せた。寄り過ぎたのか、腕に柔らかい感触があったが、僕が離れようとするとカレンに捕まってしまった。
「どうして逃げるのよ。人に誘わせておいて、それはないじゃない。」
「いや、でも最低限の距離はとった方がいいだろう。君こそ恥ずかしくないのか?」
「確かにすごく恥ずかしいわよ。でも、やっぱり離れたくないし、離したくないもの。それに、二人一緒に恥ずかしい思いをした方が、気が紛れそうだし。まあ、開き直ったとも言うけど。」
もう開き直れたのか、度胸あるな。何だか早々に主導権を握られそうな気がする。


472:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 23:49:04 ETRrKOPI
支援

473:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 23:50:18 +WX1uAb1
支援

474:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/30 23:51:27 GurSsqOH
自分の腕を通して、カレンの速い鼓動が伝わってくる。
「やっぱり緊張しているのか?すごい心拍数だぞ。」
「そりゃあ、緊張もするわよ。それに、ライだって……。」
彼女の手が、僕の胸の上に伸びてきた。ただでさえ心拍数が上がっているのに、余計に緊張感が増した。
「すごく緊張しているのが、手に取るようにわかるんだけど。」
「この状況で緊張しない方がおかしい。それとも君は、僕が緊張もせず平然としている方がいいのか?」
「まるで遊び慣れた男か、女体に興味を持たない別世界の人間みたいね。そんなの、どっちもライらしくないから嫌。
ドキドキしてくれた方が、ちゃんと私を見てくれているってわかるから、今のままのあなたでいて。そして、ずっと私を好きでいて。」
僕の服と手をつかむ彼女の両腕に、さらに力がこもった。僕も、彼女の手を握り返す。
「ああ、わかった。いろんな君を見つけて、もっと君を好きになろう。ずっと好きなままで、一緒に新しい世界を歩こう。だから、ずっとそばにいて欲しい。」
「ふふっ、何だかプロポーズみたい。初日からこんな甘いセリフばかりで、これからどうなっちゃうのかしら。」
そう言われてハッとした僕は、みるみるうちに顔が熱くなるのを感じた。初日から飛ばし過ぎだろ、自分。でも、実際にはこれが本心だった。
過去の罪は消えることはない、だがそれでも守りたい世界が、守りたい人がいる。この人と新しい世界を歩みたい、幸せにしてあげたい。
「どう解釈してもらっても構わない、君の答えを聞かせて欲しい。」
すると僕の顔の上に、カレンの顔が近づいてきた。
「もちろん、答えはイエスよ。これからもよろしくね。」
「ああ、よろしく。」
暗闇の中で二人の唇が重なり、夜は更けていった。


475:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 23:52:03 +WX1uAb1
支援

476:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 23:54:11 qnCHlb7q BE:2840500499-2BP(0)
こんばんわ

12時からのんびり投下しようとおもってます。

5レスくらいなんで支援は途中一回くらいで大丈夫と思います。

477:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/30 23:55:54 GurSsqOH
「む……。」
「おはよぉ~、早速アツアツじゃなぁい。」
翌朝。目を覚ますと、ラクシャータがニヤニヤしながら立っていた。隣では、相変わらずカレンが気持ち良さそうに眠っている。しまった、診察の時間か!
「あっ、いや、これは……。」
「あ~、騒がない方がいいわよ。カレンちゃんを起こしてパニックを起こされたら、アンタの傷に障るかもしれないし。」
そう言われ、僕は口をつぐんだ。だが最悪だ、人に見られるかもしれないことを考慮すれば、早起きすべきだった。
「もう少し後にした方が良さそうね、すごく幸せそうな寝顔だし。でももうすぐ人が集まりだすから、早めに起こしてあげた方がいいわよ。」
「ああ、すまない。それと、今見たことはカレンには内緒にしておいてくれ。何だか後が恐そうだし。」
「はいはい、『どうして起こさなかった』って言われたくないものねぇ。」
そしてラクシャータは部屋を去る間際、僕の方を振り返った。
「カレンちゃんのこと、幸せにしてあげないとダメよ。惚れさせたアンタにはその責任があるんだから。もちろん、アンタ自身も幸せになることが前提だけど。」
「わかっている、もちろんそのつもりだ。」
最後にラクシャータはニヤリと笑うと、医務室を出ていった。
「ライ……。」
カレンが、寝言で僕を呼んだ。僕はしっかりと彼女を抱き寄せて、耳元で囁いた。
「僕はここにいる、いつでもいつまでも、君のそばにいる。もう君を悲しませない、不安がらせない。ずっと守るから、ずっと君を見つめているから。僕の最愛の人……。」
二人の新しい時間が、世界が、戦争という長い夜が明けるとともに動き出す。これから待ち受ける様々な出来事が、僕は楽しみで仕方がなかった。何故なら僕のそばには、カレンがいてくれるから。


478:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 23:55:58 qnCHlb7q BE:1227376875-2BP(0)
おっと、リロードし忘れごめんなさい。

余暇卿終了15分後くらいからスタートしますね。

479:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 23:57:09 ETRrKOPI
支援

480:名無しくん、、、好きです。。。
08/11/30 23:59:36 +WX1uAb1
支援

481:余暇 ◆kkvclxzIds
08/11/30 23:59:42 GurSsqOH
以上です、支援ありがとうございました。投下ラッシュ、久々ですね。
ベタベタな激甘ライカレSSは久しぶりに書いた気がします。書いてて楽しいや、やっぱり。
ネタはなくはないので、また書くと思います。

482:名無しくん、、、好きです。。。
08/12/01 00:07:27 j5q1L/6q
>459
余暇卿乙&GJでした
 とりあえず一言で言うならば
 甘い、甘すぎるぞこの夫婦、という感じです
 やっぱこの夫婦のラヴュラヴな感じはいいなとつくづく思いました
 貴公の次の投下をお待ちしています

483:名無しくん、、、好きです。。。
08/12/01 00:09:25 atMMprXn
>>481
甘――!
乙でした。ふたりのときめき、初々しくてなんとも。
あの式典のあとのふたりは、間違いなくこんな感じだったのだろうなと。
こちらまでドキドキします。

>>KOUSEIさん
ナナリーのもどかしさ、やるせなさ。
それを解きほぐすライが良かったです。ひとを慰めるのって難しい。
その実、きっとナナリーは着実に理解者を増やしているんだと思います。
思わぬハプニングでそんな思いが伝わったりすればいいなあと思いました。

>>銀鰻さん
今回も、楽しかったです!
この作品の、ジェレミア卿がもう大好きでたまらない。
咲世子さんも一緒に叙任してしまえばいいのに。
なんともデコボコな所帯になってきましたね。本当にいつもわくわくします。


みなさんの、次回の作品を拝見できるのを楽しみに。
ありがとうございました!

484:名無しくん、、、好きです。。。
08/12/01 00:14:29 aVHI4D5m
……ぐはっ!
あまりの甘さにむせた。
>>481
余暇卿、GJでした!
あまりの甘さにむせた。
……大事なことなので二回言いました!
恋人に成り立てで共に寝る、ヤバい、なんかニヤニヤしてしまう。
いい、むせる程に甘い!
とっても大事なことなので三回言いました!
貴公の次の投下を全力を挙げて待っております!

485:名無しくん、、、好きです。。。
08/12/01 00:20:46 abpHaN5g BE:140272122-2BP(0)
めちゃめちゃ甘いの乙です!

カレンエンド直後の出来事とはリアリティあっていいですね!


では、甘くないですが私も投下しようと思います。

486:B.B. ◆lpNb5xIsIU
08/12/01 00:23:56 abpHaN5g BE:946834439-2BP(0)
俺式ロスカラ続編~騎士団カレンルート~ 7話

一応シリアス系でタイトルどおり
騎士団カレンルートから特区日本の失敗ifからの続き。

騎士団の本部に帰ってきたが、夜も遅いのにやけに賑やかだった。
司令室には幹部のほとんどが居て、みな深刻そうな顔をしている。

見るからに 何かがあったのは明らかで、
さすがに朝から1日中デートしていた事に後ろめたさを感じる。
「ゼロ何があったんですか?」
カレンが雰囲気を読み取り、申し訳なさそうに聞いた。
「私とライが想定していた最悪のケースに陥ったが、あらかじめライが用意してくれていた情報と作戦案のおかげで早めに行動できた。
お前の男は相変わらず優秀だよ。」
「そうか、ありがとうゼロ。で、日にちはいつなんだい?」
「ちょっと待って、最悪のケースってなによ!」
ゼロがカレンを置いてけぼりにしながら話を続けようとしたので
たまらずカレンはゼロのセリフから かぶせるように僕にきいてきた。

ゼロがルルーシュと判明する以前の彼女の行動は
ゼロに必要とされる事が 私の全てだ と言わんばかりだ。
だからなのか、自分か紹介したライがあまりにも色々な事ができるのに対して
ナイトメアの戦闘だけは負けないように努力を行ってきた。
それが、いつの間にかカレンがライを意識するようになった原因でもある。

ゼロがルルーシュと判り僕と恋仲になっても、ゼロへの信頼においては譲れないプライドがあるのだろう。

487:B.B. ◆lpNb5xIsIU
08/12/01 00:25:30 abpHaN5g BE:490951627-2BP(0)
「カレンよ~。零番隊の隊長やってるのにそんな事もわかんねぇーの?」
と不良口調の若い男がカレンをちゃかした。
玉城、あんまりカレンを刺激しないでくれ…
と口には出さずに呟く。
「何よ玉城!あんたはわかったの?」
カレンは玉城のことを軽く睨みつける。
「ったりめ~だろ。」
カレンの睨めつけに臆することなく 鼻で軽く笑ってから玉城は続ける。
「結婚に決まってんだろ。天子とブリキ皇族のよぉ。
そんでもって黒の騎士団を結納品にするんだ。」

「なるほど、幹部でもない玉城がよく知ってるね。どうやって会議に潜り込んだんだ?」
カレンの機嫌を損ねると後々大変な思いをするのは僕だ。
僕も玉城を攻撃してカレンを援護する。
「あのなぁ!俺の役職は保留なだけで幹部である事は変わんねーんだよっ」
「「玉城は宴会太政大臣!」」
カレンとC.C.の声がハモった。
さすが!僕が中華連邦に戻ってからの間 日本で一緒にいただけはある。
「あのなぁ~!」
玉城が声を荒げたのは言うまでもない。

「なぁゼロ、俺の役職早く決めてくれよ~俺たち親友じゃねーかよ。」
でました、相変わらずの玉城の名言。

ゼロがみんなを助けた次の日から、毎日のように耳にしてきたセリフだ。
「その話はこの作戦が終わってからきちんと考えてやる。今は結婚式の方が優先だ。」
でました、相変わらずの玉城への空返事。

488:名無しくん、、、好きです。。。
08/12/01 00:25:52 aVHI4D5m
支援……いるのかな?

489:B.B. ◆lpNb5xIsIU
08/12/01 00:27:45 abpHaN5g BE:946834439-2BP(0)
「ゼロ、そろそろ二人に作戦説明を。」
とディートハルトが話が進まないのに痺れを切らしたようだ。

玉城をいじる事で生まれた平和な雰囲気にもピリオドが打たれる。
式は明後日。明日は顔合わせのパーティーを行うので、神楽耶の夫としてなのかはわからないが、ゼロが付き添いとしていくらしい。
カレンはゼロの付き添いとして祝賀会に参加
僕も皇という姓をもつ人間なので、完全に式に参加するつもりでいたが、
僕はクーデターを利用した作戦の見直しと準備が担当らしい。


そのほかに付け加える細かな点を簡潔に述べ、真夜中の会議はやっとおひらきになった。
にもかかわらず、僕とゼロは指令室に残っている。
お互い話す事があるのを確信したような面持ちで…

「ゼロ。この策はシュナイゼルの作戦なのだろ?」
「あぁ、恐らくそうだろう。」
マントを翻し僕のとなりを歩きながら言った。
「僕をどうして式に同行させないんだ?。」
「どうしてだ?」
ゼロは後ろに下がり、普段オペレーター達が座るイスに腰かけ足を組んだ
「狙いに行くんだろ?ギアスを。」
「流石だなライ。そこまでお見通しか。やはりお前は優秀だよ。」

一応ここはゼロの部屋ではないので、
いつ誰が来るかわからない。
そのため、仮面を外すことはできないので確認はできないが、声の雰囲気からどこか憂いを秘めていた。

─どうして?
様々な意味においての僕の一言。

「お前のギアスの状態をC.C.から聞いた。お前はもうギアスを使うな。」


490:B.B. ◆lpNb5xIsIU
08/12/01 00:29:22 abpHaN5g BE:841629964-2BP(0)
確かにそうだろう。
ルルーシュの場合、仮面やコンタクトレンズでなんとかなるが、僕の場合どうすればいい?
式での使用となれば、かなりの広範囲なので負担も大きい。
それはつまるところ 一回の使用で一気に暴走させてしまう可能性も少なくはないということだ。
暴走すれば、僕の声を聞く者全てに効果を及ぼしてしまうだろう。
それが故に、僕は以前の悲劇を生み出し、狂王という僕が生まれたのだ。

そんな事を繰り返すつもりは一切ないのだが、いざギアスを二度と使うなと言われても
すんなりと「わかった」と言う事は難しい。

「僕は昔の呪われた自分にけじめをつけなければならない。
確かに、自分の犯した罪の贖罪と、自分にかかっている呪いに誰かを巻き込みたくない。」

一度瞼をとじ、この一年間思ったり考えた事全てを振り返る。
より一層真剣な目をゼロに向け、僕は続けた。
「だけど、僕の贖罪は守りたいと思う人全てを守り、幸せにする事だ。
もし僕の目的にギアスが必要だと思ったら、一度だけ使う。
君は笑うかい?非現実的な理想のために矛盾した言い分で罪を重ねるのを。」
「いや…笑わないさ。」
仮面の下にあるルルーシュの顔はどんな顔なのかわからない。
どういう気持ちでこの端的な返事をよこしたのかは知る術もない。
「だが、一つだけ忘れるな。」
ゼロは僕の思考を遮り、話を続けた。
「お前は自分の思っている以上に活躍しているし、みんなお前を必要としている。
もっと自分を大事にするべきだ。お前は十分 昔の罪に向き合い、償いをしてきた。
俺は、そんなお前にも十分に幸せになる資格があると思うがな。」
そう言ってゼロの仮面を付けたルルーシュは部屋を出る際に手を僕の肩を軽く叩いて行った。

自分はもう幸せになる事が許されない存在だと思っていたのに、カレンもルルーシュもそれを許してくれる。

僕は……幸せ者だ………


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