16/07/12 19:10:55.10 CAP_USER.net
上林陽治 / 地方自治総合研究所
公務員は安定した仕事?
―本日は、非正規公務員問題に詳しい、上林陽治さんをお迎えし、お話を伺います。上林さん、こんにちは。
こんにちは。
―不勉強で恐縮なんですが、公務員の世界にも非正規問題はあるのですか。
はい。地方自治体に勤務している職員の3人に1人は非正規公務員です。
2012年の総務省の統計で比較すると、最も身近な自治体である市区町村の正規公務員は約92万人(注1)、これに対し非正規公務員の人数は約40万人(注2)です。
ここには任期6月未満や週勤務時間20時間未満の非正規公務員は含まれていませんから、実際はもっと多い。だから3人に1人。
また正規公務員より非正規公務員の方が多い自治体も2012年には43団体あり、長野県の筑北村では役場職員の約7割が非正規公務員でした。
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―公務員は身分が保障されて、安定した職業という印象です。
非正規公務員はおおむね任期1年の有期雇用です。長年勤務していても、無期雇用に転換することはなく、年度末には決まって雇止めの危機にさらされています。そういう公務員が3分の1を占めているのです。
公務員は安定した職業と思っていらっしゃる方は多いと思います。だけど実態と印象に大きな乖離がある。これも非正規公務員問題の特徴なのです。
―実態と印象が乖離したのはなぜですか。
公務員の非正規化が、急速に進んだからではないでしょう。
総務省の労働力調査では、民間の労働市場で非正規従業員の割合が全雇用者の4人に1人になったのが1999年。3人に1人になるのが2006年。ですから7年を要しています(注3)。
(注3)総務省『労働力調査』「長期時系列表9 雇用形態別雇用者数-全国」
これでも「早いな」と思いますが、公務員の非正規化状況をみると、市区町村では、2008年が4人に1人(注4)、2012年が3人に1人で、4年しか要していない。ほぼ倍のスピードです。
この急速な公務員の非正規化に認識が追いついていない。だから実態と印象が乖離しているのではないでしょうか。
(注4)総務省「臨時・非常勤職員に関する調査結果について(平成20年4月1日現在)」
非正規公務員と公務員の差は?
―急速な非正規化は、なぜ進んだのでしょう。
端的にいえば、人が足りないのに、仕事が増えたからです。
2005年から2012年の7年間で正規公務員は27万人減少している。だけど仕事は減らせない。むしろ増えています。
保育園の待機児童は増え、学童保育の需要も高まっていますし、高齢化に伴い生活保護受給世帯は増加している。
児童虐待やDV被害が増え、オレオレ詐欺などの消費者被害も拡大している行政とりわけ地方自治体は、これらに対処しなければなりません。
だけど、「小さな政府」の志向性が高まる中で、正規公務員は増やせない。だから、公務員の定数にカウントされない非正規公務員を増やし、これに代替させ、増大する仕事に対処してきたのです。
2005年から2012年にかけての7年間で、非正規公務員の人数は約45万人から約60万人へと15万人、33%も増加したのはその結果です。そして残りの業務は、民間事業者に業務委託をしてきたのです。
―「代替」ということは、非正規公務員は、正規公務員と同じ仕事をしているのですか。
その通りです。
たとえば公立保育園の保育士の52%は非正規の保育士です。もちろん彼女たちは、保育士資格をもち、正規の保育士と同じ仕事をしている。クラス担任や主任を勤める非正規保育士さえいる。
新人の正規の保育士を研修するのはベテランの非正規の保育士です。
ハローワークでは、2014年度において、常勤職員11,140人に対し非常勤の相談員が16,737人でした。ハローワークで失業者の求職相談にあたっている相談員の5人のうち3人は非正規公務員なんです。
ところがハローワークの非常勤相談員数は2011年度がピークで21,295人でした。その後3年間で約5000人が雇止めされています。
年度末の3月31日をもって雇止めされた非常勤の相談員が、4月1日にカウンターの反対側に座り、自分の仕事探しの相談をしているというブラックユーモアのような話が、本当に起こっているのです。
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