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ラインホルト・メスナー 2000年に行われたスピーチ(1)
いまでは北極、南極、東峰の極への旅が可能となり、エベレスト登山ですら旅行パンフ
レットの商品となっている。商業公募隊は、英語でいう「ビッグE」遠征を―世界最高峰
への遠征を―どこにでもある高速バスツアーのようなものに仕立てて、安全性の高さを
売り物にする。だが実際の登山で主役を担うのはシェルパたちである。南極点へは飛行機
で行けばいい。そこには50年も前からアメリカの観測基地がある。まるでそこが自分の
生活の場であるかのように、日々物資供給の飛行機が飛んで来るのだ。北極だって、
飛行機かヘリコプターで行ける。あるいは、団体旅行のように便利な原子力破氷船に乗る
という手もある。破氷船が、厚さ2メートルの流氷を砕きながら北極へ向かって突き進む時の、
バリバリ、メリメリ、スッシーンと響く轟音を聞こうとやってくるスリル好きの旅行者が、
毎年わんさといるのである。
こうやって誰もが観光客として世界を駆け巡るようになってから、4、50年は経つだろうか。
グローバル化の流れが世界を駆け巡るその前に、観光産業が世界を征服してしまったのだ。
通信革命がさらなる追い討ちをかけ、地球上のどの地点からでも、衛星電話でつながることが
できるようになった。かつては海を渡らなければ到達できなかった北極、南極、熱帯ジャングル、
高峰への冒険も、もはや冒険ではなくなった。