05/07/14 01:56:42 10lbQB8N.net
本の中で、天巧は、将来やってみたいマジックの考想を書いていた。
空中での消失というマジックだ。
要するに空中で本人が消える訳だが、さて、どうして実現しようかとの話になる。
本人が何かの装置で空中に打ち上げてもらい、そのまま空中で消える。
そのままなら魔法だが、それは無理。観客のまえで一瞬に消えるのは不可能なので、
何らかの方法で観客から見えないタイミングを作る必要がある。
現実的な方法は、煙幕。消失予定空間を煙で覆うのである。
では、次に煙に隠れて、どこへ逃げ出すかという方法を考えないといけない。
なにしろ空中である。観客に見つからずに逃げ出すルートは限られている。
360度観客に取り囲まれる状況ではまず不可能。
当然観客は、片方に集められる。観客とは反対に壁を作るのもひとつの方法。
ただし、壁の後ろに隠れるんだろうと、すぐにばれてしまう。
演出には説得力が必要だ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
観客の前、天巧は、空中へ飛び出す、飛び上がる付近の空間は煙で覆われる。
煙の奥で、ロープに飛びついて、壁の後ろへ隠れる。
次の瞬間、壁は爆発し倒壊する。
天巧の姿は無い。
上空のヘリコプターの縄ばしごにぶら下がって、天巧、手を振りながら再登場。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
まだ問題がある。煙の中でロープにつかまる事が出来るか？
壁の後ろへはどうやって行く？煙で覆われた瞬間に隠しておいた扉を開けるか？
使ったロープはどこへ隠す？
壁が爆破される前にどうやって脱出する？
どうやってヘリコプターへ移動する？
天巧自身、考想の最中だったようで、完成は、未来のマジシャンの任せるとして、
本を締めくくっていたのを覚えている。