26/07/20 21:36:09.00 N9HqVcbSH.net
古びたソファの沈みには、もう座らない誰かの体温だけが遅れて残っていた。
919:名無し検定1級さん
26/07/20 21:36:44.95 N9HqVcbSH.net
洗濯機の回る音に混じって、考え直したはずの沈黙がゆっくり泡立っていた
920:名無し検定1級さん
26/07/20 21:45:45.59 TPbpEDIdH.net
聞こえないはずの踏切の音がして、部屋の隅の埃だけがわずかに身を寄せた
921:名無し検定1級さん
26/07/20 21:46:24.14 TPbpEDIdH.net
誰も触れないピアノの蓋に、曇った空だけが毎日同じ角度で積もっていった
922:名無し検定1級さん
26/07/20 21:47:04.71 nXbR7HsyH.net
郵便局の帰り道では、出さなかった封書の重さだけが鞄に残り続けていた
923:名無し検定1級さん
26/07/20 21:55:51.62 4M/V2GggH.net
眠れない明け方には、電柱の影まで何かを待っているように細く伸びていた
924:名無し検定1級さん
26/07/20 22:05:16.64 u/F7j2xVH.net
曇った鏡の奥では、こちらを見ていない顔だけがゆっくり歳をとっていた。
925:名無し検定1級さん
26/07/20 22:05:55.66 u/F7j2xVH.net
細い雨の降る朝には、電線のたるみまで何かを諦めたように見えていた。
926:名無し検定1級さん
26/07/20 22:15:05.82 8SXOy6Uy0.net
使わない眼鏡を棚に置いてから、見えなくてよかったものだけ増えた気がした
927:名無し検定1級さん
26/07/20 22:42:39.51 lJEhAFoW0.net
誰もいないはずの二階から、家具をずらすような気配だけが夜更けに落ちてきた。
928:名無し検定1級さん
26/07/20 23:10:34.60 S6jIKL8pH.net
新聞を取らなくなった郵便受けに、朝だけが毎日少しずつ置き去りにされていた
929:名無し検定1級さん
26/07/20 23:11:13.89 S6jIKL8pH.net
古い鞄の金具が外れるたび、しまい忘れた季節が床の上で鈍くひらいていった
930:名無し検定1級さん
26/07/20 23:11:55.80 Y2LeyfMTH.net
薄い朝焼けの底で、誰にも開けられなかった引き出しだけが静かに鳴っていた。
931:名無し検定1級さん
26/07/20 23:12:31.62 Y2LeyfMTH.net
人気のない図書室では、返されなかった本より椅子の空白の方が重たかった
932:名無し検定1級さん
26/07/20 23:29:23.76 hGR7YE3SH.net
誰にも読まれなかった手紙の束が押し入れの奥で少しずつ傾き、そのたび部屋の温度が曖昧になった
933:名無し検定1級さん
26/07/20 23:30:05.08 7PEdEJM9H.net
濡れた郵便受けの底には、配られなかった昨日だけが静かに折り重なっていた。
934:名無し検定1級さん
26/07/20 23:38:06.44 9xf2KJCHH.net
誰かの忘れた手袋が片方だけベンチに残り、そこだけ風の向きが決まらなかった。
935:名無し検定1級さん
26/07/20 23:48:31.08 xKbuhRSTH.net
遠くで犬が鳴いたあと、住宅街の窓という窓が少しずつ黙りこんでいった
936:名無し検定1級さん
26/07/20 23:49:05.74 xKbuhRSTH.net
眠れない明け方には、電柱の影まで何かを待っているように細く伸びていた
937:名無し検定1級さん
26/07/20 23:49:46.46 wi7G4n9oH.net
止まったエレベーターの前で待っていると、階数ではなく気配だけが上下していた
938:名無し検定1級さん
26/07/20 23:57:18.92 fH0bcMvK0.net
壁に立てかけたままの傘が、晴れた午後にも小さく雨の匂いをこぼしていた。