18/12/22 20:14:51.00 3E6jmiXCp.net
廣井は常に第一線に立ち、現場で指揮を取った。ある年の12月25日、突然の嵐が防波堤を襲った。資材が次々と流される。
多額の国家予算を投じて作られた巨大クレーンも大波にさらされていた。
これが流されてしまえば、このプロジェクトは水泡に帰す。
廣井は大自然の猛威を前に立ち尽くすばかりであった。
人事を尽くして天命を待つ心境で、荒波を前に夜を徹して祈った。
翌朝、駆けつけた作業員たちは驚いた。かちかちに凍てついたカッパを着て、祈る廣井がそこにいたのである。
幸いにも、クレーンは少し傾いただけ。防波堤も怒濤に耐え抜いた。
この時、廣井は胸に密かにピストルを忍ばせていたという。
万が一の場合、責任を取って防波堤と共に死する決意であった。