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空海コレクション「十住心論」(ちくま学芸文庫)抜粋 00.大綱序
生きとし生ける者たちは迷っているために、帰るべきわが家を知らないから、地獄や餓鬼や畜生(三趣)の世界に沈んで、四種の「生あるもの」(母胎から生まれる、卵から生まれる、湿気から生まれる、突然に生まれる)に生まれかわり死にかわりして、さまよい苦しんでいる。
如来は、そのような無知な者をあわれんで、その帰るべき道を、お示しになったのである。帰り道には、「まっすぐなもの」もあれば、「まがったもの」もある。
しかし、密教のすばらしい車は、虚空を速やかに飛び越えて、この一生の間に、かならず到着することができる。
いま、この「大日経」を根拠として、真言行を実践する者の、心のありかたの次第を明らかにしてゆこう。
空海コレクション「十住心論」(ちくま学芸文庫)抜粋 01.異生羝羊心(いしょうていようしん) - 煩悩にまみれた心1
羝羊(雄羊)は動物の中で、もっとも性向が下劣で劣っている。それは、ただ水と草と淫欲とのみを思って、ほかに知ることがない。故に、インドの語法の上から、迷える者の類に喩えたのである。
大火事の家の中にいるような、八つの苦しみを直視しなければ、どうして「罪の報いとして、地獄・餓鬼・畜生の三悪道に堕ちる」と信ずることができようか。
迷いの世界における、「生」「老」「病」「死」が四苦。
さらに、「愛別離苦(あいべつりく。愛する者と離別する苦)」「怨憎会苦(おんぞうえく。にくむべき者と会う苦)」「求不得苦(ぐふとくく。求めても得られない苦)」「五陰盛苦(ごおんじょうく。肉体上・精神上の苦)」を加えて八苦。
身体の「悪しき、はたらき」には三種ある。殺すこと、盗むこと、男女の道を乱すこと。
言葉の「悪しき、はたらき」には四種ある。嘘をつくこと、ののしりの言葉を使うこと、二枚舌、うわべを飾った言葉。
意の「悪しき、はたらき」には三種ある。貪り、怒り、癡(おろか)さ。
以上のような、十種の「悪しき、はたらき」は、その一つずつが、みな「三種の悪しき世界(三悪道)」に至る原因となる。