22/01/22 00:40:48.49 QGaBI1ju0.net
私にとっての「漫画」は、「真理」や「自由」への探求そのものでした。
しかし私の「真理」は、あまりに広大無辺で、深甚にて無上であり、虚であり空であり実存でさえなく、
更にそのすべてを凌駕するものでもありました。
エゴに振り回されている若い頃には到底描く術も、描く力もなかったのです。
それは人間としての一個人でははかり知れない、探求しえないモチーフでしたが、
人としてのタガが外れて行くと、その展望が少しずつ構築されていったのは幸いでした。
一生に一度納得できる作品のタイトルは「御祭舟(おさいせん)」(副題D9RECORD)というのもので、
タイトルは私の最後の単行本「御祭舟」から来ています。
これは2002年7月に自費出版(同人誌タイプ)という形で、それまでモーニングという週刊誌に
掲載されたものを何作かまとめたものでしたが、結局この後が続かず尻切れになっていました。
尻切れの理由はいくつかありましたが、
①描きたい画が描けない(技術的な問題)
②探求するテーマに届かない(知覚する術が薄かった)
この二つの大きな障害により20年近くとん挫していたモチーフでした。
18才の時に上京して、ずっと売れない漫画家をやっていましたので、
ろくな作品を残して来なかったなあとは思っています(実際そうでした)。
でもたまに何かポイントで気になる作品を残していたのも事実で、
最初の単行本(20才頃だったと思います・青林堂の影の編集者、高野慎三氏発行)
「淡紫抄(たんししょう)」という画集といいますか、ページ漫画のような描きおろしでしたが、
最終頁には「早く年寄りになりたい」とまるで私の人生を総括するような
センテンスが残されていたりしています。
またモーニングで描かせて頂いた「D9RECORD」では、今回チャレンジする漫画「御祭舟」に
少しかするような内容だったのには改めて驚かされます。
その頃は深く異界を知る術もなく、ただ遠い微かな感覚だけを頼りに描いたものでした。
ですから今見ると本当に幼い技量で、踏み込みも浅く、大した作品ではありませんでしたが、
それらにはこれからチャレンジする、オーム宇宙の、私たち人類の謎の片鱗が潜んでいたのです。
2020/12/13 No.4034