14/10/16 22:13:29.97 .net
繰り返し繰り返される親子の愛憎劇は
朱々と滴る最高の幕開けで
主人公が死んだ時その物語は終わる
脚本家は目深に被った黒のニット帽から
細い目を光らせていて
手にしたペンの先を真赤なインクに着けた
腕に四本の傷が描かれ
血とインクが交じり合った頃には
薄暗がりの岸壁で ケタケタ と笑い出し
二人の座るコンクリィトに朱の液体を零したのを見ると
次の瞬間 声も無く泣きだした
話としてはそんなに悪く無い筈なのだ
巻頭の見開きフルカラーを赤色のみで描くという
これ程無駄で無価値で我儘で斬新なことがあろうか
否あったかも知れない
しかし彼は脚本家の言うそれを受諾し
構図について話し合うべく脚本家の指定した場処である
昼も夜も人気のないこの岸壁に座したのだ
狂ったように笑われても困るが
泣かれても困る