源氏物語千年紀 Genji 第八帖 at ANIME2
源氏物語千年紀 Genji 第八帖 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@お腹いっぱい。
09/06/26 02:53:04 up+cs1XX.net
スタッフ
原作・紫式部「源氏物語」
監督・脚本:出崎統
シリーズ構成・脚本:金春智子
キャラクターデザイン・作画監督:杉野昭夫
音楽監督:鈴木清司
音楽:S.E.N.S. Project
美術監督:河野次郎
CG監督:下山真吾
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント、手塚プロダクション

キャスト
光源氏:櫻井孝宏
弘徽殿の女御:藤田淑子
紫の上:遠藤綾
藤壺の女御:玉川紗己子
桐壷帝:堀内賢雄
頭の中将:杉田智和
葵の上:平田絵里子
六条の御息所:鶴ひろみ
朧月夜:長沢美樹
王命婦:田中敦子

主題歌
オープニングテーマ「日和姫」
作詞・作曲:椎名林檎、歌:PUFFY

エンディングテーマ「恋」
歌:中孝介

3:名無しさん@お腹いっぱい。
09/06/26 02:54:11 up+cs1XX.net
前スレ
源氏物語千年紀 Genji 第八帖
スレリンク(anime板)


ここは実質第九帖です

4:名無しさん@お腹いっぱい。
09/06/26 03:09:43 AOrkxW8f.net
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5:名無しさん@お腹いっぱい。
09/06/26 20:15:02 LxYpoNKa.net


6:名無しさん@お腹いっぱい。
09/06/30 18:53:09 DfWFfbgD.net
かそ

7:名無しさん@お腹いっぱい。
09/06/30 23:59:10 6cdHto+Q.net
『源氏物語千年紀Genji』TV放送局にこれを追加


[TSS] テレビ新広島    毎週水曜日 25:00~ (5/6~現在放映中)

8:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/01 23:55:42 mPyWYCcs.net
待たない女、来たれり
再度の逢瀬の契りで源氏の事を好きだとあらためて認識した朧月夜に、
事後の源氏が、兄は良い人です的な恋の達人とは思えぬKYな発言
せめてなぐさめようとして言った言葉だろうけど朧が泣き出すのも無理ないなw

新しい帝の元に入内したくないというほど源氏の事を強く想っているのに
自分が想うほどには源氏は自分の事を想ってくれていない事を覚ったのだろうか

暫く泣いた後に泣き止んで身を正し、しばらく逢えなくなりますねと告げるが、
その言葉とは裏腹に朧はまた光源氏と密会する気満々の御様子
最後にみせる笑顔が怖くもあり、女のたくましさも感じさせられる
朧月夜との関係がこの先の波乱の展開を予感させる終わりだった


9:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/02 23:59:10 14pln5W/.net
父の桐壺帝が退位して藤壺と共に御所を去り、藤壺が奏でる琴の音を
もう秘密の場所から聴けなくなってショボーンな光源氏
藤壺の揺れる心を感じさせる激しい演奏っぷりは見物だっただけに

時の移り変わりは諸行無常


10:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/03 23:59:36 T+YttPIT.net
葵の妊娠がわかって頭の中将と光源氏が取っ組み合うシーンがコミカルで可笑しかった

相撲というか、格闘技の起源は遠く日本書紀の時代にまでさかのぼれるらしい
まさに人類の歴史は戦いや争いと共に進化してきた歴史だなぁ

11:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/04 23:53:25 WjDx4Cnw.net
六条の御息所が源氏の正妻が身篭ったという噂を聞き、
すっかり関係が途絶えた源氏との甘い蜜月時代を思い出す
それが激しく体を求め合う情景ばかりというのも凄まじい情念の世界

安彦良和の漫画「神武」に、大国主ナムジの後妻のタギリ姫に対して
嫉妬の炎を燃やす正妻スセリ姫がかつての自分達の夜の睦み事を
話して聞かせるという場面があったがそれを思い出した
げに凄まじきは女のプライド

12:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/05 23:58:43 YHWyT3YV.net
葵祭での六条と葵の車争いは迫力ある演出で緊迫感のある名場面になっていると思う
現代でも場所取りのシビアさは花見の場所取り合戦に通じるものがあるなw

牛車を押し倒され情人呼ばわりされて衆人の中で辱められた六条の御息所
自分は光源氏の情人なのだと改めて思い知らされた場面だが、
その後の洗い髪のシーンは怖すぎるよ…
水滴をポチャンポチャンと髪から滴らせながら、
「わ~か~れ~な~け~れ~ば~……」


13:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/06 23:59:37 NKWc9hIf.net
病に倒れた葵の加持祈祷の最中、駆けつけた源氏の目の前で
横たわる葵の姿が六条の御息所の姿と重なる場面
源氏の手を自分の胸に導いて触らせるが、源氏がギョッとして慌てて手を引く
死体のように冷たい胸の感触が伝わってきそうだ
涙を流す六条の表情は綺麗なんだけど恐ろしい

14:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/07 23:56:47 O6GLrVQM.net
赤ん坊を抱きかかえて幸せそうな葵の姿
子供を交えた夫婦としての生活がようやくこれから始まるという時に……
源氏の御子を出産し終えた事でまるでその役目を終えたかのように亡くなってしまうとは

二人目の源氏の子も数奇な運命を辿る事に…


15:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/08 23:58:32 b7g5BnBe.net
鳥辺野の斎場で荼毘に付される葵の遺体
夕焼け空を見上げる男が二人、、、 源氏の君、声をあげての男泣き
葵を失う事で気付かされた己の罪深さ、失ったものの大切さ
いくら悔恨に身を焦がそうと、過ぎ去りし時が戻る事はもう無い…

…葵の雲は何処に?


16:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/10 00:02:21 R6tw8OPH.net
怨霊の悪夢に悩まされる六条が地獄の業火に焼かれる場面、
気がつくと自分の顔もまた怨霊のような表情に変わって……

生霊と化した姿を源氏に見られてしまった事で
源氏に真相を知られて、二人の関係がもう元には戻れない事を
自覚したのであろうか
源氏に別れを告げられる前に、いっそ自分のほうから去ろうと…
それが六条の御息所に唯一残された道だったのだろう

17:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/10 23:58:11 ko7mgW3l.net
源氏への想いを断ち切ろうとするかのように、斎宮となった娘に付き添い、
一年間の禊の為に嵯峨野の野宮へ向かう六条の御息所

牛車の中で眠る娘の髪を撫でる六条は光源氏にみせる女の顔とは異なり、
優しい母親の顔になっている
当然ではあるけど、六条にもこのような一面があった事に驚かされる

18:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/11 23:59:53 8N0myK0s.net
葵の四十九日の法要の日、疲れてまどろむ源氏が見る夢
源氏と葵が愛し合うこの場面はこのアニメの中でも屈指の美しさだと思う
雪が降りしきる光と影の幻想的な映像美は圧巻

葵が源氏の元から去り、目覚めると建物の外は雨が降っていて、
やって来た頭の中将に夢の中で葵が会いに来てくれたことを告白
「私の浮気を責めました(実際は責めていない)、今はそれさえも嬉しい」と
堪え切れずにすすり泣き

亡くなってしまった今では例え夢の中でも会えただけで嬉しく、いとおしい
せめてもう一度逢いたいという切ない想い
知らぬ間にそれ程深く深く、妻を愛していたんだなあと…

19:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/13 00:00:46 CR/5ZFWb.net
四十九日の法要も終わり、葵の忘れ形見・夕霧を義父母に預けて
約半年ぶりに二条の自宅に戻る事になった光源氏
葵の死後、疲労が重なってかなりやつれていた様子だったけれど
それも大分回復してきたのだろうか

屋敷に帰る道すがら、惟光が六条の御息所様が伊勢に下る為に
嵯峨野へ向かった事を話すと、光源氏が厳しい表情をみせる

しばし何かを考えているようだが、
かつて愛した夕顔、そして北の方である葵の上をとり殺した相手が
六条の御息所だとわかっているからこそ、
このまま去らせてはいけないと考えているのかもしれない

20:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/13 23:59:41 lh6w9v7X.net
そして二条の屋敷に帰り着くと紫の君がお出迎え
半年会わないうちにすっかりと大人びて見違えるように成長
これには光源氏も呆気にとられて驚いていた様子だった
この時期の女の子の成長は本当に早いな~


21:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/14 23:58:45 b2fr296w.net
葵が亡くなってから半年以上が経過したある日、競い馬に励む光源氏と頭中将
その光景はホセ・メンドーサとジョーの草競馬を思わせるものがあるw
平和な一幕にも見えるけど、元々は軍事教練の一種といえるかも

練習を終えて汗を拭っていると頭の中将が急に女の話題を振ってくる
義兄としては葵を亡くして激しく落ち込んでいた源氏を見ているだけに
今現在の女っ気のない源氏の事が気にかかっていたのだろう

「三年は喪に服すという教えもあります」と源氏が答えると「それは長い」と頭の君
「私もそう思います」と冗談めかして笑う源氏だが、その頭の中には
数ヵ月後に伊勢下向を控えた六条の御息所のことがあるのかもしれない
亡くなった葵の為にも六条ともう一度会い、けじめをつける必要があると…


22:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/15 23:58:16 n8RnTO6O.net
そして頭の中将が源氏の家に美しい花が咲いているらしいという噂が流れている事を話す
どうやら服喪中の源氏が出仕後に遊び歩かずに直帰で自宅に帰っている事で
宮中に紫についてのあらぬ噂が流れているらしいw

「確かにある事情があってお預りしている方がいます、しかしまだ子供ですよ」
「健やかに育って欲しい、そう願っているだけです」と答える源氏の君
その表情はすっかりお父さんw

葵を失って落ち込む源氏を心配していたが、どうやら大切に想う相手がいるらしい、
それはなにより、と一人で納得してニコニコと頷いている頭の中将
そのしたり顔の笑顔が癪に障ったのか、汗を拭って着替えたばかりの源氏が
「もう一戦いかがでしょう」と即座に申し込み、それに驚く頭の中将の反応が可笑しいw
一連のやり取りが男の友情ですな~w

頭「よよよよよよよよ、よ!?」


23:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/16 23:59:52 Ca5AVD53.net
ここで紫が源氏の屋敷に初めて連れて来られた頃の回想が入るわけだが、
惟光があれこれと事情を調べてきた話によると、

紫の父親は藤壺の兄・兵部卿宮だという事
側室だった母親は紫がまだ幼い頃に兵部卿宮の正妻にいびり殺されている事
その正妻のせいで兵部卿宮が紫を引き取れずに断念した事
代わりに北山で紫を育てていた祖母が最近亡くなった事などなど…

雪が降る中、祖母の尼が寒さから紫を守るように抱きしめている構図の絵は
『雪の女王』のマッチ売りの少女のエピソードを思い出させる
あれも祖母を失い、一人残された幼い少女が不幸な最期を遂げる話だったが、
もし源氏が引き取らなければ紫も同じような運命を辿っていたかもしれない

紫に同情的な惟光は源氏が二条の屋敷に紫を引き取る事に大賛成の様子w
寝起きで寝ぼけている無邪気な若紫が可愛い


24:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/18 00:00:11 D+iAri4x.net
回想シーン後、舞台は源氏邸に移って外は雨
光源氏の帰りを出迎えた紫の姿は
葵の四十九日の法要後の半年振りに会った頃よりも更に成長している

昼間の頭の中将との競馬勝負は引き分けだったらしいw
それを聞いて紫の君がころころと鈴のように笑う
日に日に美しく大人びていく紫の姿に、子の成長を見守る父親のように目を細める光源氏
「……楊貴妃か」
ふと、昼間の頭の中将の言葉を思い出して呟くが、すぐに何でもないと笑ってごまかす

紫のナレーションではこの頃の自分にとって源氏の君はまだ雲の上の方だと言っているが、
まだまだお兄様は憧れの存在なのだろう

25:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/18 00:06:26 swnfE9lp.net
書き込みに合わせて一話ずつ見返してる
同じ人が書いてるんだろうけど、毎日楽しみにしてるよー

しかし放送終わるとネタもないなー

26:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/18 00:51:14 D+iAri4x.net
>>25
サンクス!ありがたや~


源氏相撲対決
頭「どうだ、参ったか!」
光「あなたの手が先についた!」(←負けず嫌い)
頭「む、むう」

源氏競馬対決
紫「ご首尾はいかがでしたか」
光「両者互角の引き分けでした」(←負けず嫌い)
紫「まあ、それはそれは(笑)」


27:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/19 00:38:15 V0/dmNTQ.net
そして再び月日は流れて、葵の一周忌の法要も無事に済ませた頃、
いよいよ六条の御息所が野宮での一年間の潔斎を終えた斎宮と共に
明日、伊勢へと旅立つ日がやって来た

折り悪く、空には暗雲が立ち込めて暴風雨が吹き荒れる生憎の天候
しかし、まるでこの日が来るのを一年の間、待ちわびていたかのように
供もつけずに一人、源氏は馬を駆って疾風の如く嵐の中へ飛び出していく

突然の雷光が闇の中で馬上の源氏の姿を強く照らし出す
一瞬浮かび上がったその表情は厳しく険しい…

葵を死の呪いから救えなかった罪
生霊と化すほど六条を追いつめ、苦しめた罪
妻を殺した六条の御息所に何故会いに行くのか?
赦したいのか? それとも赦されたいのか?

ただ別れを告げるその為だけに…


28:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/20 00:57:43 Bptvry68.net
一方、六条の御息所は光源氏が今日訪れる事を強く予感しているようだ
葵を呪い殺した生霊の姿を源氏に見られてしまっている六条は
自分が京を去る前に、源氏は全てを終わらせる為に必ずやって来るだろう、と

瞑想を止めて外に出て、豪雨の中に立ち尽くして源氏の来訪を待ち受けている六条の御息所
その顔はさながら病んだ目をした幽鬼の如き表情で、鬼気迫るものが感じられる
激しい雨に打たれている全身が時折、影のように黒くぶれて
まるで怨霊と六条の姿が一体化しているかのようにも見える

源氏は気がついていないかもしれないが二人は何かが繋がっている、と六条自身は確信している
それは愛しても決して報われない相手を愛してしまった者同士という事なのだろうか…
六条は他の誰か(藤壺)を想っている源氏を愛し、追い求め、
源氏は父の寵妃である藤壺を愛し、追い求めている
どちらも求めても決して手に入る事はない叶わない恋

約一年振りに二人が再会する瞬間が近づいている…


29:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/20 17:02:57 WASvG5HN.net
雪の女王スレはエロパロコピペ厨
源氏物語スレはわけのわからん感想野郎

30:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/20 23:49:12 Bptvry68.net
>>29
自分がネタをふれよ
文句は立て逃げ>>1に言え

31:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/21 15:30:21 UiOeFhQk.net
六条の伊勢に行った娘って、のちの秋好?
見てみたかったなあ。母ゆずりのイイ女だろーな
出崎源氏の女達はアクがつえーから六条院がどうなることやらw

32:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/22 00:00:04 weheNeC7.net
嵐の中を駆け抜けて源氏が嵯峨野に到着
馬上から飛び降りて向かい合う光源氏と六条の御息所

「明日、御発ちになると聞き、せめてご挨拶を…」と到着早々に源氏が切り出すと
「こんな時、言葉は要りません。その事は貴方も御存知のはず」と六条が答える
少しの間があり、源氏が全てを呑み込む様に静かに頷く
「……はい」

目を逸らさずに見つめ合い、対峙する二人の間に凄まじい緊迫感が流れている
そして唐突に、息詰まる一瞬の静寂が!?


33:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/22 23:59:36 7Py3VTSl.net
静寂の後に続く、反響と色彩の残像…

そこにあるのはただ繰り返される男女の行為
無言に交わされる互いの精神の世界

それは荒御霊を鎮める魂鎮めの儀式か
傷ついた心の癒し、慰めか…
それとも二人の別れの時を告げる返歌なのだろうか


「別れられる……、これでよい…、何もかも…、これで良い……」


34:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/24 00:02:18 ahh71LPm.net
翌朝、六条を乗せた牛車が伊勢へと旅立っていく
あれほど吹き荒れた嵐は嘘のように過ぎ去っている
牛車の中の六条が今はどのような面持ちでいるのか窺い知る事は出来ない
果たして六条の御息所の荒ぶる心は救われたのだろうか?

回る牛車の車輪
ただ朝の光が美しく辺りを包んでいく…

それを馬上から一人見送る源氏の姿は哀しく寂しげである
ある意味、源氏の一番の理解者だった六条の御息所が去っていく
深まっていく源氏の孤独を埋める者は未だいない
光源氏の心を救える者は何処に?


今はただ 愛した人に さよならを



               第八話  『嵯峨野』    ―完―


35:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/25 00:00:04 A2lAIGLr.net
タイムスケジュールを纏めると大体こんな感じ?


妊娠中の葵が病に倒れる
源氏、葵の実家に行く
 ↓(約4ヶ月経過)
葵死去
 ↓(約2ヶ月経過)
四十九日の法要後、源氏、半年振りに二条邸に帰る
 ↓(約5ヶ月経過)
御所内の馬場で競い馬
 ↓(約5ヶ月以上経過)
六条、伊勢へ旅立ち

36:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/25 23:58:33 RGlgMvUZ.net
前スレからお役立ちなものを拝借


                  . 桐壺の更衣─┬(夫婦)─桐壺帝    右大臣
                    .    |  .|  .    | .       |
左大臣       藤壺─(夫婦)───┘     (夫婦)      (親子)
 |           \       .  |          |  ┌──┤
(親子)       (義理の親子・恋愛)|          |  | .   |
 ├───┐      \    (親子)      弘徽殿の女御  朧月夜
 |   .    |        \   |               .    ¦
頭の中将  葵の上─(夫婦)─光源氏-------(恋愛)-------------┘
   |         |     . |¦|\
   └─(友情).─|──┘¦|  \
             (親子)  .  .  ¦|  (恋愛)
              |     .  ¦|     \
             夕霧        ¦|   六条の御息所
惟光(源氏の従者)           ¦|
                      ¦└(夫婦)─紫の上(若紫)
                     (恋愛)
                      ¦
                      夕顔


37:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/26 23:58:47 33rRGYQQ.net
前々スレからも一つ


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38:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/27 23:58:44 Q811XE3/.net
更にもう一つ


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39:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/29 00:00:37 RdD/RdEi.net
日本のアニメーションを代表する監督5人、
杉井ギサブロー監督、りんたろう監督、出崎統監督、高橋良輔監督、富野由悠季監督が広島に集結した!

五大監督かく語りき……「私が手塚治虫から学んだこと」
URLリンク(ascii.jp)



虫プロ出身の五大巨匠の根っこにあるものが会話から垣間見えますな


40:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/29 23:59:31 SbY7g2zt.net
アニメ会の『ヲタめし!』 出崎統監督ゲスト登場回
URLリンク(www.voiceblog.jp)


『源氏物語千年記 Genji』の見所、女性観、ヤンデレについての監督の話あり
かなり後半


41:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/30 23:59:17 VYenYsGK.net
デジタル技術で描いた“古典”と“常識”
『源氏物語千年紀 Genji』 出﨑統監督インタビュー
URLリンク(www.p-tina.net)

「監督にこんなこと言われちゃったし、監督にこんな風にやれって言われてるけど、俺はこの方が面白いと思う」って言ってくるのを、
俺は待ってるわけよ。で、そういうのと自分がぶつかったときに、やっぱり作ってる実感がするじゃない。
「こいつ、イイなあ」と思ったりね。


これが集団作業で作品を作り上げる醍醐味ですな


42:名無しさん@お腹いっぱい。
09/07/31 23:59:39 UsChUb9P.net
今月発売のDVD第四巻を買ってきた
これで源氏物語DVDもついに最終巻だな~
できればもっと続きを観たい

今回は初回特典の紙パッケ裏に幼い紫の絵があるサプライズがあった
パッケ表の大人紫と少女の紫で、時を越えてW競演ということにw

杉野昭夫氏が描く成長した紫の絵は可愛いな~


43:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/01 23:59:26 hkaMAgYA.net
紙パッケの中の真パッケージでは若紫の絵が前の方にコラされてる

キャラと一緒に描かれている羽ばたく鳩は出崎作品ではお馴染みw
鳩と鳩の間を動画で繋ぐとそのまま動きそうだ


44:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/02 23:59:45 GVq97MXt.net
今回のDVDに付いている6P解説書に
「Genjiで見る出崎スタイル 出崎演出が光る名シーン」というコーナーがあって
そこでいろいろな出崎演出法が簡単に解説されていたのだが、
「止め絵」の所の説明に「光源氏の笑顔が眩しい、劇画止め絵表現」と書いてあった

そこの部分の絵に、第4話での若紫との初めての出会いの笑顔を選ぶとは
ナイスチョイスだww
このカットを選んだ人はわかっているなw


45:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/03 23:58:46 32N1T3gy.net
「繰り返しショット」の所では「重要なシーンなので3回繰り返す」という説明とともに
光源氏が藤壺に迫るカットが使用されていた

重要なことなので3回言いました、みたいな解説が面白いw


46:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/04 23:59:38 rVjAKe8J.net
DVD特典CDも今回が最後というわけで
ミカドラジオ完全版の第7回と第8回のゲストは出崎監督

第7回 16:30→21:16
第8回 18:47→24:25

収録時間は第7回が約5分、第8回が約5分半、ネット配信版より多く収録されている模様

ちなみにあと千年経てばまたアニメ化されるかもしれないそうな
次は、源氏物語二千年紀委員会発足か?


47:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/06 00:00:07 YqvjXcaD.net
第九話のタイトル『叢雲』は光源氏の周囲に立ち込め始める暗雲を指すのだろうか
諸行無常の言葉が示す通り、万物は絶えず流転変化し、常なるものは無し

今まで輝きを放つ存在であった光源氏に陰りの季節が訪れるのがこの話数辺りからであろう


48:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/07 00:00:03 OtLARICu.net
雨雲が空を覆い、やがて静かに雨が降り出す
しかし闇の中でも鈍く妖しい光を全身から放つ存在があった

屋敷で一人、竹笛を吹く光源氏の表情は苛立ち、激しい怒りが瞳に宿っている
その内なる怒りは何に向けられたものなのか?
光源氏の脳裏をよぎるのは、葵の無念の死の記憶か、六条との苦い別離なのか…

望まぬままに愛する者や近づく者を傷つけてしまう己への激しい怒りと苛立ち、
それは誰よりも一番許せない存在である自分自身に対する怒りなのではないだろうか


49:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/08 00:00:40 jsNxXeuN.net
そんな源氏の元に惟光が駆け込んできて
源氏の父・桐壺院が危篤に陥った報を伝える
愕然とする源氏

子にとってあまりにも大きな父親の存在
失って初めて、その庇護の元に己が自由に生き得ていた事を知る

強く逞しい人間でも永遠ではなく、いつかは終わりの時を迎える
考えたくなかった未来、あえて目を背けていた事実
それが今、訪れようとしている

雨の中、必死に馬を走らせる光源氏
今また大切な存在が源氏のそばから去っていこうとしている…


50:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/08 23:59:33 jsNxXeuN.net
場面は、病床の桐壺院と傍に付き添う藤壺に変わり、

死の床につき、今までの諸々の事がまるで夢のようだと述懐する桐壺院
やつれきったその表情には明らかに死相が現れている

長い間尽してくれた藤壺に礼を言い、二人の子、春宮を頼むと言い残す
そして今まさに光を失おうとしている桐壺院の虚ろな目は現実を離れ、
果たせなかった近江での藤壺との舟遊びの夢を見る……
霧に包まれた幻想的な湖面
幻の船の行き先は観音菩薩がおわす補陀落浄土なのだろうか


人の一生は一夜の夢の如し


51:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/10 00:00:14 8cPf7vhp.net
桐壺院 崩御
雨の中、駆けつけた源氏はひと足遅く、呆然と立ち尽くす
足元がグラリと揺らぐような衝撃を受けたのだろうか

頭から滴る水滴をぬぐいもせずに立つ光源氏に藤壺が声をかける
最近視力が衰えて遠くの物が見えなくなってた院に御顔を見せてあげて下さい、と
ただ力なくうなだれるしかない光源氏
父の死に目に間に合わなかった後悔は、この後、源氏を苦しめていく事になっていくだろう
抱えた裏切りの秘密の重さと共に…

降り続く雨は光源氏の涙雨なのか
まるで道に迷った幼子のように、雨に打たれながら馬で帰る源氏の後姿が淋しい
もはや敬愛する父はどこにもいない

時雨はそのまま次の月まで降り続いたという……


52:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/16 00


53::53:31 ID:CHsBg6GB.net



54:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/16 23:59:17 UOAZYb+1.net
>>52
最初の辺りの話では、父の側室であり継母である藤壺への禁断の想いを
他の女(主に年上)に溺れることで忘れようとしているからかな

女たらしも代償


55:行為の逃避でしかなく、そこには愛がない



56:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/17 03:30:57 fO7YrynY.net
しかしこうしてアニメになるとさすが古典だ。枠としての強度が半端じゃない。
アニメ作品としてどちらが優れているかは別として、ベルばらやら兄さまへを
超える物語の強度がある。1000年間物語の女王として日本に君臨してきた
だけのことはあるわ。原作読みたくなった。円地版は1巻だけ読んだけど、
やっぱり原著じゃないと折角日本人に生まれたのに損だよなあ。

57:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/18 00:01:12 JORHH0cm.net
はてさて

桐壺院がお隠れになってから時は移ろい、季節は冬
光源氏と頭中将が源氏邸にて降りしきる粉雪を眺めながらの雪見酒
風流な美しい眺めとは裏腹に何やら頭中将が憂い顔
酔いが回れば愚痴も出る

58:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/19 00:32:58 eTwXZved.net
酔った頭中将の話によると、先帝・桐壺院が亡くなってからというもの、
政務の場での右大臣の専横が目に余るようになってきているとの事
それも、皇太后・弘徽殿の女御が右大臣家の一の姫であり
そして現帝・朱雀帝の生母でもある威光からだという

現帝の威を借る右大臣一派にとって、光源氏は亡き先帝が愛した側室の子であり
次の帝となられる春宮の後見人でもあって何かと邪魔な存在
その連中にくれぐれも足をすくわれぬよう気をつけるよう警告する頭中将
ほろ酔い気分の雪見酒も何やら空虚な苦い酒に…

不吉な予感を孕ませつつ、
偉大な父を失い、政治的な後ろ盾を無くした光源氏の背後にも
ひたひたと暗い政争の影が迫ろうとしていた……


59:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/19 22:06:06 mCuvdXlQ.net
>>54
原作は世界的な著名度がある作品です。

60:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/20 00:13:57 i/S5jeN3.net
一方、光源氏と重大な秘密を共有する藤壺は
桐壺院の死後、日増しに大きくなる罪の意識に苛まれていた

一心に琴を激しく掻き鳴らす藤壺の姿は千々に乱れた心中を表すかのよう
突然、弦の上に手の平を叩きつけて泣き崩れてしまう
院を騙し続けた苦しみの余り、いっそ死にたいと命婦に告白する
そんな藤壺を労わるかのように後ろからそっと抱きしめて
たとえ行き先が地獄でも自分はついて参りますと答える命婦

そこで画面の色調が急にモノクロフィルムのように変わる演出がゾクリとくる
王命婦の藤壺に対する深い忠義心を感じさせられる


61:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/21 00:26:53 3n4OuTt/.net
そして季節は再び流れて、桜が咲き誇る春

春宮の御殿に母の藤壺の宮が訪れる
誕生から数年が経ち、春宮は幼いながらも利発そうな子に成長している
瞳の色は藤壺と同じで、顔立ちは光源氏の幼い頃に似ているようだ

春宮と戯れている藤壺は優しい母親の表情をみせている
悩み深き藤壺にとって、ひとときの安らげる幸せな時間であろうか

そこにたまたま春宮の後見人である光源氏が御機嫌伺いに訪れる
春宮の乳母から藤壺も別の御殿に訪問中と聞き、さすがに動揺の色を隠せない光源氏

春宮の本当の父母である二人の再会……、
春の嵐ならぬ、波乱の予感である


62:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/22 00:28:30 EeqjaoVq.net
藤壺に御伽噺を聞かせてもらっている途中、光源氏が現れてはしゃぐ春宮
春宮は後見の源氏の君にかなり懐いている様子だ

春宮に御挨拶をしつつ、御簾越しに藤壺の方をちらりと見遣る源氏
しかし拒絶するかのように、さっと目をそらす藤壺

幾万の言葉を重ねるよりも、光源氏のその視線は今も変わらぬ藤壺への想いを
熱く語りかけている
しかし藤壺は急に用事を思い出したと立ち上がり、その場を離れようとする

…明らかに避けられている
その事実がかつての切ない記憶と心を苛み、源氏の表情が僅かに歪む
しかし言葉には出さない
あの日の晩、藤壺が源氏に伝えた決意、密かに交わされた約定…

平伏した姿勢のまま微動だにしない源氏の横を足早に通り過ぎていく藤壺と王命婦
二人の子を前にして互いに何も語らず、話す事さえ出来ず、触れ合えもしない……
これがあの日、禁忌を犯した源氏が受けるべき罰なのであろうか?


63:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/22 21:30:12 CIEarJy+.net
>>53
源氏って結局、自身が一番好きだったんだろうなと思う。。
藤壷(桐壺)に捕われてる自分が好きというか。。
葵も紫もその他女君も死んだり、手の届かない状態にならないと
本気で大事だとは実感してない気が。

64:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/23 00:00:36 EeqjaoVq.net
>>61
自分が一番好きな男だったならば、身の破滅につながるような相手には手を出さずに
まず保身に走るのではないかと思う
相手の反応で自分が傷付くような事は言わず、行わず、当り障りのない事だけをやる
しかし光源氏はそうはしなかったと
心の命ずるままに行動して結果的に相手も自分も周囲の女性も傷付いた

光源氏は本当に藤壺の事を愛していたのではないでしょうか
その方法は間違っていたとしても、本来、恋とはそういうものではないかな


65:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/23 23:59:48 rLyitfCp.net
藤壺が立ち去る場面で特筆すべき点として
三つの異なる角度からの連続した止め絵と
画面分割による両者の表情の微細な変化を捉えた心理描写だろうか

かつてベルサイユのばら(後半)などでも用いられた独特の手法であり
藤壺と光源氏の心の内を見事に表現している

あいかわらず出崎演出が冴え渡っていて嬉しい

66:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/25 00:00:28 c5iwCn6c.net
光源氏とすれ違ったその夜、藤壺は妖しい夢をみる
それは自分の寝所に忍んでくる光源氏の夢

帝の不在時に、藤壺から文をもらって忍んできたのだという
そんな文は出していないと藤壺が否定すると源氏は帰ろうとする
思わず引きとめようとして本心を話してしまう藤壺
本当は貴方が来るのをずっと待っていたのだと

否定する理性を心は裏切り続け、光源氏その人を求める藤壺
吹雪の屋外へ出て去っていく源氏の背を見送りながら泣き崩れる
もしも二人が普通の男女の出会いであったのなら、と……


67:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/26 00:31:21 /nD9qTPz.net
藤壺がハッと眠りから目覚めると、全身にすっかり寝汗をかいている
寝間に王命婦を呼び、今しがた夢を見たことを話す
それは、ほとほと自分自身に愛想が尽きるような許しがたい夢であったと…

今日、内裏でほんの少し源氏の君を見かけたこと
ただそれだけで大きく心乱されてしまったこと
虚ろな藤壺の瞳は暗い絶望の色に染まり、
その心中には未だ夢で見た吹雪がごうごうと音を立てて吹き荒れている

桐壺院の遺言通り、春宮を守る為、そして許しがたい我が身を罰する為
覚悟を決めたと、藤壺は淋しげに微笑みながら告げる
もしやと�


68:@する王命婦 藤壺は、まるで世俗の重いしがらみを脱ぎ捨てるかのように 肩に羽織った艶やかな衣をはらりと落とす ある決意をもって



69:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/27 01:00:16 9519cvp6.net
そして、夜空に満月が輝くある日の晩のこと、
自宅にて光源氏が竹笛を吹いていると、王命婦が密かに庭に忍んでくる
藤壺の宮様からの「お会いしたい」という言伝をもって

以前、藤壺から別れを告げられることになった真夜中の密会の時には
命婦から伝えられた藤壺の言葉に激しく胸を高ぶらせ、承知したと答えた源氏だったが
今回は一転して落ち着いているようにみえる

あれから流れた歳月は光源氏の心境を僅かでも諦観へと導いたのであろうか?
数年前に交わされた約束は今も守られ続けている
全ては藤壺の為、そして二人の子、春宮の為

春宮の出生に疑いをもたれぬよう徹底して源氏から遠ざかろうとする藤壺の振る舞いも
全て己が犯した罪によるものと受け入れているのであろうか

70:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/27 16:34:49 hMlE0As7.net
出崎統癌だって
もう全身に転移してるかもらしい…

71:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/28 01:00:28 ExGuf+gH.net
王命婦に誘われ、密かに藤壺の元を訪れる光源氏
御簾越しに藤壺と源氏が静かに見つめあう

互いに多くの想いが交錯しているのか
最後の別れからあまりにも長い月日が流れてしまった
しかし、見つめ合う時が藤壺と源氏を昔の二人に引き戻す

源氏12歳の元服時、藤壺との御簾越しの別れ
あの時、せめて最後に御簾を上げて一目御顔をお見せ下さいという
ほんのささやかな願いすらも叶えられなかった

多くの時を経て、源氏は再びあの時と同じ願いを口にする
どうか御簾を、御簾を上げていただけますか、と
すると、「はい」と静かに応じる藤壺の宮
藤壺も昔のように「光君様」という、かつての呼び方に戻っている

源氏が元服した日が少年期の藤壺との別れとするなら、
今また同じような場面で、今度は御簾を上げての直接の対面…
それは現し世における今生の別れを意味しているのか

光源氏を呼び出した藤壺の用向きとは何なのか
この後、話された内容は?
果たして藤壺が心に期したものとは……


72:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/28 22:06:19 MqYI3HOm.net
源氏はショタからナルシスト青年へと立派に成長してるのに
初登場時から全く見かけの変わらない藤壷すげえ
若い時から老けてたというべきか?

73:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/29 00:31:59 zd9vw6PP.net
>>69

1話の出会い      9話のラスト

光源氏 9歳   →   24歳くらい?

藤壺宮 14歳  →  29歳くらい?


74:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/29 21:06:24 fxtGNdJd.net
一話の藤壺14歳...ラストは29歳...マジか
そう思ってよ~く見れば多少違うような...?
しかし出崎源氏のおなごは皆30代に見える。外見内面含めて。
実際は10代後半~20代前半か

75:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/30 00:31:56 7BKG+UX9.net
光源氏と藤壺のつかの間の逢瀬の夜の後、
藤壺中宮が出家したのはそれからほどなくしての事であった

剃髪し、袈裟を纏って、戒を授かる藤壺
共に得度した尼僧姿の王命婦をともない、何処かヘ旅立っていく
行先は観音霊場巡礼を目指した修行の旅であろうか

夕焼けの道を歩み去る、うら寂しい二人の女人
墨染めの衣が最早二人が俗世に生きる者ではない事を物語っている

一方、光源氏は自分の屋敷で一人、膝を抱えて悄然と座り込んでいる
憔悴し切った表情はまるで全てが終わってしまったかのように虚ろで
放心状態に陥ってしまっている
時折その瞳には荒んだ危うい光が見え隠れする

この世を捨てた藤壺と、一人取り残された光源氏
この別れが源氏の未来に破滅的な暗い影を落とす

また一人、光源氏と深い関わりのあった女性が去っていく…
生きる支えであり目的でもあった藤壺を失い、
これから光源氏は何処へ向かっていくのだろうか……



               第九話  『叢雲』    ―完―


76:名無しさん@お腹いっぱい。
09/08/31 00:30:03 UrIIqPd0.net
源氏物語千年紀Genjiの脚本・シリーズ構成の金春智子氏が
出崎監督との最初の出会いを語る
URLリンク(www.madhouse.co.jp)


77:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/02 00:30:24 O6mzpf+y.net
アニメ会の『ヲタめし!』 「源氏物語千年紀 Genji」出演者ゲスト回

第47回ゲスト:光源氏役・櫻井孝宏
URLリンク(www.voiceblog.jp)
第51回ゲスト:桐壺帝役・堀内賢雄
URLリンク(www.voiceblog.jp)
第52回ゲスト:紫の上役・遠藤綾
URLリンク(www.voiceblog.jp)


78:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/03 01:00:22 Ek0T+sSi.net
第十話のタイトル『謀叛』はかなりセンセーショナルな題名だが、
古来より人の世に争いの種は尽きず、白村江の戦い、壬申の乱、
大津皇子の処刑など、朝廷内の権力闘争において政敵を葬る際の口実として
謀叛という言葉はその時々で都合良く使われてきたようだ

そして今また、政治的に微妙な立場にいる光源氏にも謀叛の嫌疑をかけて
権力の座から追い落とそうとする者達がいた


79:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/04 00:30:49 qn6wjTf6.net
一日が終わる夕暮れ時の都の往来
行き交う立派な二台の牛車
すれ違いざまに牛車の網代から物見越しに扇が投げ込まれる
(すごいコントロールの良さだw)
牛車の主・光源氏がそれを手にとり開いてみると
それはかつてある女性と交わした見覚えのある扇だった
扇には大江千里和歌が書かれている


 照りもせず 曇りもはてぬ 春の夜の
            朧月夜に しくものぞなき


来る女・朧月夜の君との危険な再会であった


80:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/05 00:31:22 cU3cYyWa.net
そして雨の降るある夜のこと、右大臣の屋敷で密会する光源氏と朧月夜
以前、二人が会ったのがまだ葵の上懐妊発覚前だったとすると
あれから数年ぶりの再会ということになろうか

朧月夜はその後入内し、現在は尚侍として帝のそばに仕えているという
今回は帝にはわらわ病みと偽って実家に宿下がりしたとの事
それも全て源氏の君に会うための嘘


81:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/06 00:59:51 jltt1jt2.net
こうして時々源氏の君にお逢いしないと生きている気がしないと朧月夜は言う
しばらく逢瀬を重ねれば帝の元に戻ってもまた元気にご出仕ができます、と

晴れ晴れとした表情であっけらかんと話す朧月夜を見て光源氏は思わず笑いを洩らさずにはいられない
藤壺が去った後の鬱々と落ち込んだ気分を自由奔放な朧月夜の明るさが吹き飛ばしてくれたのだろうか
仮病でさえも自分に会う為の嘘と思えば可愛く思えてくるもの
身勝手は嫌われてしまいますか、と朧月夜が問うと、いいえ、呆れるほどにいとおしい、と光源氏が答える

部屋には馥郁とした香の香りが立ちこめ、二人の男女の艶めいた会話が続く…
朧月夜の着物の柄の花が浮き上がるような画面効果が美しい


82:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/07 01:00:14 2g/aPZIL.net
すると急にドタバタと廊下から慌しい足音が聞こえてくる
帝から見舞いの品が届いたと喜んでいる朧月夜の父・右大臣であった
(娘の部屋に夜中にずかずかと押し入る無神経な父親である)

情事の最中に踏み込まれ、慌てて単を身に纏い御簾の外に出る朧月夜
返事をして御簾の中から注意を逸らそうとするが、
右大臣は男物の帯が御簾の中に引き込まれていくのに気がついてしまう

さては男か?と血相を変えて御簾の中に分け入ってみると
素肌に派手な衣を羽織っただけの裸の男がこちらに背中を向けて座っている
貴様、何者かと誰何するも見覚えのある顔にたじろいでしまう

「ごきげんよう、右大臣殿」
光源氏としては、最早、逃げも隠れも出来ぬ、この状況
せめて見苦しい振る舞いだけはせぬようにと思ったのだろうか
しかし居直りにも映る光源氏の冷静振りにかえって怒りが込み上げる右大臣であった


83:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/08 00:59:47 9gZcNmvv.net
朧月夜は権勢を増している右大臣の六番目の娘
その右大臣の屋敷において朧月夜と事に及ぶのがどういうことを意味するのか
頭中将にも以前注意するように警告されていたが、
現在の自分が置かれている政治的立場とその危険性は
光源氏も十分に理解していたはず

それなのに敢えて危険を冒して右大臣の屋敷に忍んで行ったのは
最愛の藤壺の出家という衝撃、それにより心にぽっかりと大きく生じた空虚な穴、
その隙間を埋めるかのようなタイミングで朧月夜が再び現れた為だろうか?

藤壺との繋がりを断たれた光源氏はまるで錨を失った嵐の中の船のように危なげで
どこか投げやりになっているようにも感じられる

これも因果が招いた巡り合わせなのであろうか


84:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/09 01:00:49 7O544/5v.net
夕日に赤く染まった右大臣邸
事の仔細を父の右大臣から聞き、驚く弘徽殿大后
源氏と六の君との関係が入内後も続いていた事にとまどう右大臣だが、
父から相談を受ける内に弘徽殿の表情が厳しくなっていく

さっそく帝への言上を提案するが、いや、それは待て待てと止める右大臣
現在、朱雀帝の一番のお気に入りが六の君の朧月夜であり、
その寵愛が損なわれるのは右大臣家としては宜しくない
それに弘徽殿の息子である朱雀帝は右大臣にとっては孫にあたる
その朱雀帝の心を傷つけるのはあまりに忍びないという

しかし弘徽殿はひるむことなく更に父に言い寄る
今、問題にすべきなのは源氏の君のことである、と

帝が大切になされている六の君と知っての此度の狼藉、
謀叛の心これありと思われても仕方ないこと、と言い放つ
さすがの右大臣も「謀叛」という不穏な言葉には息を呑むのであった…


85:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/10 01:00:26 guoef0QE.net
「謀叛ですか?」
結局、内裏にて帝に事のあらましを伝える弘徽殿大后
だが、朱雀帝に一笑に付されてしまう

源氏の宰相と六の君との関係はずっと以前からの事と聞き及んでおり、
むしろ横車を押しているのはこちらのほうであると、穏やかに話す朱雀帝
だが、後先は関係ありませんと、鬼のような形相で弘徽殿は我が子に言い募る

帝が御手元に置き、その御心をかけられている内侍との密通はまことに恐れ多きこと、
本来ならば死罪にも値する重罪にございまする、と捲くし立てる
朱雀帝がまあまあとなだめるも、まあまあではございません!と更に激しさを増す

この事が宮中に知れ渡って国中の民までもが知る事となれば、帝の権威に傷が付き、
ひいては御国の乱れる元ともなりかねません、と


86:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/11 01:00:20 z8SGafCM.net
弘徽殿の激しい剣幕に眉をひそめつつも、そう、事を大袈裟になさいますなと答える朱雀帝
恋は恋です、と穏やかに母に語りかける
「人と人、心と心で説けばよい事。 国の興亡を持ち出すまでもありますまい」
静けさを持つ瞳で諭すように話す朱雀帝はさすがは国の頂点に立つ人格者の佇まいである

「確かに我が身は六の君に恋焦がれております。 ゆくゆくは我が妻に、と思わぬ日はないくらいです。
でもそれとて、六の君の心が第一。 六の君の恋が私のほうに向いてくれたらの話。
私はその日が来るのを楽しみに待つのみ。 いけませんか、母上? それが恋、私の恋…」

我が子の切ないまでの素直な心情を聞き、悲しそうな弘徽殿大后
「まことに貴方という人は…。 待つこと、耐えること、選ぶのはそんな道ばかり…。 小さい頃から…」
朱雀帝が淋しげに笑い、不器用な恋は母親似ですよ、と答えると、少し驚く弘徽殿

「桐壺の更衣、そして藤壺の女御。 貴女という子を生した人がありながら別の人を愛した父を、
先帝を、それでも貴女は待っていた。 そんな貴女を見ながら私は大人になったのです」

朱雀帝がかける優しい労わりの言葉に、弘徽殿は涙を堪えて目を伏せるのであった


87:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/12 01:01:10 Zguq8P0G.net
だが、なればこそと弘徽殿は思う
やはり、我が子・朱雀帝の障害となる存在は許せない、と

しかしながら、と更に訴えを続ける
「帝を軽んずる密通はやはり謀叛と見なさざるを得ない大罪、
せめて流罪との御処置があっても宜しいかと」と尚も執拗に食い下がる
弘徽殿の目には狂気が宿る
しかし、その感情は己が夫の愛した藤壺の更衣とその子・光源氏に対する
嫉妬と憎しみが入り混じった私情によるものでもあった

「母上、いいかげんになさりませ!」と、ついに声を荒げて言い放つ朱雀帝
御殿の廊下から振り返ったその姿は、逆光で黒くシルエットになっていて
その表情を読み取る事は出来ない
だが、弘徽殿に二の句を告げさせない帝の威厳を強く感じさせるものであった


こうして密通騒動は朱雀帝の判断により一旦収まったかのようにも思えたのだが……


88:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/12 01:10:16 Zguq8P0G.net
>>84
× 藤壺の更衣  →  ○ 桐壺の更衣


89:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/13 01:03:36 q8rxvKLr.net
人の口に戸は立てられぬとは良く言ったもので、
帝の心配をよそに、光源氏の噂は瞬く間に都中に広まっていく……
今までなまじ光源氏の評判が高かった分、嫉妬と羨望が混ざった悪意ある噂が付け加えられて
異様な盛り上がりをみせていく


そして季節は流れて、京の都に再び春がやって来る
街のそこかしこに満開の桜が咲き誇り、都大路に桜吹雪が舞い落ちる
そんな中を頭中将が供もつけずに一人散策をしている

道行く頭中将の耳には都人たちの口さがない噂話が入ってくる
茶屋で一服する最中も、聞こえてくるのは話題の主の光源氏のことばかり

貴族の娘から町屋の娘、果ては自分の屋敷の飯炊き女まで手当たり次第に手をつけるとか
ついには帝の女に手を出して腕折りで都を追放されるとか、無責任な噂で盛り上がっている
(口の軽い噂好きの女房たちが醜聞を洩らしたのであろうか?)

酷いものになると、光源氏が後見している春宮を押し立てて帝を退位させ、
自分が政事を一人占めする気だったらしい、と勝手な憶測をする者までいる始末
噂の影響は決して馬鹿に出来ないものがある…


友の身を案じて険しい表情をみせる頭中将であった


90:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/14 01:00:06 wd57VV6i.net
一方、噂の渦中の人、光源氏は二条邸にいた
特に何をするでもなく座り込み、庭の桜が散る様をただ呆けた様に見上げている
悪意に満ちた噂は当然光源氏の耳にも届いているだろうが、
その事が光源氏の心にどのような痛みを与えているのだろうか?

すると何処からか澄んだ笛の音が流れてくる
どこか悲しげなその音色に惹かれるように屋敷の中を歩いていくと
若紫が一人、竜笛を一心に吹いている

源氏は戸口に座り込みながら紫の演奏にじっと耳を澄ませる

「……美しいが、どうにも寂しい曲ですね……」
源氏がそう呟くと、紫の瞳から一筋の涙が静かに流れ落ちるのであった…
(杉野紫の作画が美しい止め絵である)


91:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/15 01:07:10 04Rt6P1m.net
笛を落として源氏に駆け寄り、「お兄様!」と抱きつく紫
光源氏は震える紫を抱きとめると、自分の不穏な噂のせいで不安になっているのだろうと謝るが
紫は、いいえ、違うのですと否定する
きっとお兄様がお困りになっているはずなのに私にはお助けするだけの力がない、
それが悲しいのです、と

紫のその真摯な訴えを聞いて源氏は驚く
紫が本心から不安でないはずがない
屋敷の外に出ることすら躊躇われるような、今まで光源氏を誉めそやしていた世間の誰もが
手の平を返したように好奇や非難の視線を注ぐ中、
このようなうら若い少女が、誰よりも自分を真剣に心配をしてくれているという事に

光源氏はこの少女を何とか安心させてやりたいと願って、喉の奥から声を搾り出す
大丈夫、貴女のその気持ちを聞いただけで私は勇気が出ます、ありがとう、ありがとう、と
その言葉を聞いて光源氏の腕の中で紫は泣き出してしまう


庭の池に舞い落ちた桜の花弁が水流に巻かれて水の中で渦巻いている
まるで運命に翻弄される二人のように……


92:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/16 01:01:01 0kGYoIs/.net
紫が光源氏に駆け寄るこの場面では非常に美しい特殊効果が施されている

紫が小走りに走ることで着物の花模様が体の動きから遅れてずれるように浮かび上がり、
そして源氏に抱きとめられて大きく広がる
まるで一瞬、紫の背後が一面の花畑になったかのようである

そして動きが止まって、花々は衣の元の位置に収まるようにゆっくりと消えていく
これはヒロインの背後に花が咲く、一人少女漫画背景効果とでも呼ぶべきだろうかw

出崎演出にまた新たなる独特の映像技法が加わったようである


93:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/17 01:04:05 emz8LbIP.net
膨れ上がった噂はその真偽の如何を問わずに無形の圧力を持ち始める

大内裏では、今や官吏たちまでもが光源氏の処遇に関する噂話に熱中している
そこにふと通りがかった頭中将が足を止めて聞き耳をたてる

もし源氏の君が流罪と決まれば、位はもちろん、屋敷や所領の荘園も全て没収されて
家族や抱えている家来たちもその日から路頭に迷うことになるだろう、
全ては帝のご決断ということだ、と言う

また別の官吏は、源氏の君の運命はもはや風前の�


94:煤A いくら栄耀栄華を誇っても消える時は消えるということですか、と 利に聡い役人らしい日和見的な言葉を発している 戸口の外で一人、沈思黙考する頭中将 すると急に官吏の一人が辺りを憚るように声をひそめて別の話題を口にする ここへきて、新しい、しかもとてつもなく深刻な疑惑が浮かんできたことをご存知か?と



95:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/18 01:00:56 2aC4HpiE.net
「新たな疑惑!?」
「そうです。 しかも御国の根幹を揺るがすような恐ろしい疑惑です」

夕暮れの右大臣邸で、弘徽殿大后と向かい合って座る右大臣が驚きの声をあげる
遠くの寺院からは鈍い鐘の音が響いてくる
話を聞く内に、右大臣の額にはさすがに冷汗が浮かぶ

弘徽殿が言うには、その疑惑とは今の春宮が先の帝と藤壺宮の御子ではなく、
実際は源氏の君と藤壺宮との間に出来た御子ではないかというものだったからである

その会話を偶々その場に居合わせた朧月夜が聞き、ハッと息を呑む
二人に気付かれないように几帳の影に隠れて、そっと様子を伺う

何か確たる証しでもあるのかと右大臣が訊ねると、弘徽殿はその根拠を挙げる
第一に、春宮の顔立ちが宮中でも評判になったほど源氏の君の幼い頃に生き写しである事
第二に、藤壺宮の出産日からの逆算が微妙に藤壺の御宿下がりの頃と合致する事

藤壺宮の御宿下がりの頃に源氏の君との密通があったというのか!?と右大臣が叫ぶと
あくまでも疑惑でございますと、平然と答える弘徽殿
しかしその表情は不敵な自信に満ち溢れている
右大臣は思わず唸り声をあげるしかなかった


96:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/19 01:00:18 qlfvh6K6.net
「しかしながら先の帝はもう既に御隠れになり、藤壺宮様は先日御出家され、
もはやこの現し世の方ではありません」
残るは源氏の君のみ、と語る弘徽殿の目がギラリと鋭く光る

弘徽殿大后には今度こそ邪魔な源氏を追い落とそうという決意が漲る
故に右大臣である父上のお力をもって源氏の君の御詮議を、と本題を切り出す

だが、事の重大さに怖気づいたのか右大臣は動揺し、思わずその場に立ち上がる
「罪人のように捕らえて取調べをせよと申すのか!?
源氏の姓を名乗っていても帝の皇子ぞ、そのような事は私の一存では出来ない」
駄目だ、駄目だ、と完全に腰が退けてしまっている

それならばと、弘徽殿は自ら朱雀帝に進言すると言い出す
勝手にせい、と右大臣が匙を投げると、その言葉を待っていたかのように
その場を立ち去る弘徽殿であった


97:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/20 01:31:08 5yVIlb9k.net
邸内の渡殿を歩む弘徽殿
外はすっかり薄暗くなっている
すると廊下の途中で、後ろから「お姉さま」と声をかけられる
姿を現わしたのは、弘徽殿が通るのを待ち構えていた朧月夜の君である

「……お見事なまでのご執心。 私、感心致しましたわ」
朧月夜の遠回しの皮肉に、足を止めた弘徽殿が無言で僅かに振り返る

「源氏の君様をどこまで追い詰めればお気が済みますの?
只々、源氏の君様が御自分の昔の恋敵・桐壺の更衣様の御子であるというだけで…」

核心を突いたその言葉に息を呑む弘徽殿
だが、源氏の身を案ずる朧月夜は構わずにそのまま言葉を続ける

「…新しい恋をなさいませ」

純粋に人を想う恋の気持ちも、満たされぬ年月が醜い妄執へと変化させてしまうのだろうか?
弘徽殿も新しい恋に生きれば、そのような煩悩の古い迷妄から逃れられようと

だが、その言葉を聞いた途端、弘徽殿は激しく身を翻す!
一瞬で朧月夜の背後をとって腕をつかみ、まるで懐刀のように扇を喉元に突き付ける

刹那の一瞬の逆転の後、二人の間に異常に緊張した空気が走る
弘徽殿が放つ凄まじい殺気に朧月夜は身動きどころか、声一つあげられない

「……お部屋にお戻りなさい。 貴女は父上から謹慎を仰せつかった身なのですよ」

もし手元の扇が真剣であったならば、朧月夜はとっくに死んでいたであろう
世間に恥を晒して省みる事の無い愚かな我が妹、その気ならばとうに殺しているという恫喝か

これが弘徽殿と朧月夜の、帝の後宮で長年くぐってきた修羅場の数の差であろうか?
弘徽殿の前では朧月夜もただの世間知らずの小娘にすぎない

完全に気圧された朧月夜は、ただ「…はい」と頷く事しか出来なかった


98:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/21 01:01:05 M70pNumn.net
場面は変わり、夜の源氏邸
突然、前触れもなく来訪した頭中将が夕餉を振舞われている
迷惑気な源氏に対して、頭中将は何故か御機嫌の様子で飲み食いしている

「少なくとも私の知るところ、今、都で最も名が通り、その上、最悪と言われている男が
我が友である、という事がどうも、何となく気分が良い」

普通、気分が悪くなるはずだが…、と納得がいかない様子の源氏の君に
爽やかに笑いながら理由を説明する頭中将
(このアニメ内で今まで見たことのないような最高の笑顔であるw)

「いや、理由は簡単。 美しい、完璧だ、などと言われている友をもっていると
知らず知らずのうちに羨望と嫉妬がない交ぜの肩こりが起きて、
体がどうも思うように動かなくなる」

しかしその言葉とは裏腹に、実に愉しげな表情で茶碗から飯を掻き込む頭中将

「だが!今は快適! まさに快適なのだ!」


99:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/22 00:59:56 XFwJDdWa.net
「どうも良く解らぬ、何をしに参られた?」と、源氏が訝ると、
頭中将は笑いながら、横に控えている惟光に、返事の代わりに茶碗を差し出す
そして、当分ここに寝泊りするから宜しく頼む、とようやく要件を切り出す
(豪快におかわりを要求する居候w)

「お前の御主人様の用心、警護の為だ」と、頭中将は答えるが、
まだ事態がよく飲み込めない様子の惟光

「何しろ、これだけ評判が悪いと何が起こるかわからん。
前にもちょっとした事件を起こした貴族の家が焼き討ち、強盗という目にあった」

権力の基盤を失えば、なまじ金持ちの貴族の屋敷は夜盗の格好の標的にもなろう
あれこれ口の悪い事を喋っていたのは、落ち込んでいるであろう源氏を励ます為、
家まで押しかけてきたのも、友である光源氏の身の安全を心配しての事

親友に気を使わせぬ気さくな振る舞いの中に、さりげない男の優しさをみせる頭中将であった
(しかし最後まで箸を離さないのが可笑しいw)


100:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/23 01:31:19 vmS5TI5m.net
それからしばらくの後、澄んだ満月が都の夜空を照らす頃、
帝から召喚された光源氏が密かに拝謁を賜る

弘徽殿大后からの執拗な陳情を受けて、さすがに朱雀帝も光源氏にまつわる悪質な噂が
巷に蔓延るのを放置する事が出来なくなったのであろう
それが此度の秘密裏の謁見に繋がったのだと思われる
それに、源氏に直接会ってその真意を確かめておきたいという帝の意向もあるのだろうか

煌々と輝く満月の明かりが暗い室内を照らし出す中、向かい合って座る二人
無言で帝に対して深々と頭を下げる源氏
(自らの不徳で生じた一連の騒ぎをお詫びする意味もあるのか…?)

朱雀帝が戸外の月を見上げながら静かに口を開く

「……このような月が、もし毎晩出ていたら本当に困った事になりますねぇ。
いつも心の底まで照らし出されて、大事に、大事に、心の奥にしまっておいたものが
何もかもさらけ出されてしまう……」


光源氏と藤壺宮に関する重大な疑惑を既に伝え聞いている朱雀帝、
そして呼び出された時点で、己に処分が下される事を覚悟している光源氏、
この邂逅で源氏の運命が決しようとしていた……


101:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/24 01:01:20 WCA3E1QP.net
朱雀帝は穏やかな口調で全てを見通しているかのように語り続ける

「人は誰も心に秘密をもって生きるものです。 その秘密があるから人に優しさを与え、
自らを励ますこともできる……。 そうだとは思えませんか?」

源氏のほうに身を乗り出す朱雀帝
源氏は平伏したままの姿勢で「御意」と答える
暗に、藤壺宮と源氏の関係を示唆しているようにも聞こえる朱雀帝の問いかけだが、
しかしその言葉には決して非難の響きはない

朱雀帝は労わるような優しい眼差しで源氏を見ながら、「大変でしたね…」と声をかける
伏せていた目を僅かに上げる源氏
朱雀帝は源氏の手を取り、その場に立たせる

「貴方の舞、大好きです。 一緒に舞っていただけますか?」
朱雀帝の問いに静かに微笑む光源氏
「……喜んで」

舞にはその時の演者の心が如実に現れる
共に舞う事で源氏の心の奥底を知りたいと朱雀帝は考えているのだろうか


102:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/25 01:32:08 EcOipsz3.net
静かに舞い始める二人
力強い足捌きと優美な手の動き、そして次第に熱を帯びていく舞
きらきらと飛び散る汗
室内に衣擦れの音が響く…

源氏の舞はかつて頭中将と青海波を舞った時以上の見事さだが、
朱雀帝の動きも決してそれに劣っていない
源氏の動きに合わせて見事についていく
息の合った踊りは、腹違いではあるがやはり同じ血を分けた兄弟だからであろうか
二人が舞う様はまるで一幅の美しい書画のような清涼な趣である

月光の元で鮮やかな二人舞をみせる光源氏と朱雀帝
その動きには一切の迷いや澱みが感じられない
これから下される裁定の事など心の内から消え去っているかのように……

舞うことを通じて、互いに何かを確認しあっているかのような兄弟の姿であった


103:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/26 01:41:05 dbH6pqs6.net
踊り終わって座り込み、暫し、乱れた呼吸を整える二人
(汗をかいて扇でパタパタあおいでいる朱雀帝)

心地良い爽快な高揚感と心躍る舞の共有の感覚、
それらがゆっくりと治まっていく中、
それとは別に、国を治める帝として、その政の全てを司る者として
臣下に公正に下さねばならない判断もある…
どうしても避けられぬものならば、その前に一つだけ尋ねておきたい事がある

朱雀帝はふいに、隣に控えて座る光源氏にさり気無く問い掛ける
「貴方が今、どうしても守りたいものを教えて下さい」と…

すると源氏は少しの間の後に、静かに口を開いて答えた

「先の御帝より後見を託された春宮様、
私の為に仕事をし、私の為に全てを尽してくれている私の家の者達すべて、
 ………以上でございます」

源氏の思わぬ返答に驚く朱雀帝

既に源氏は己が断罪される覚悟を決めていたのだと…
たとえ自分にどのような極刑が下されようとも構いませぬゆえ、
どうか春宮様の身と、関わり無き私の家の者達をお救い下さい、と


104:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/27 01:40:11 81S8RMH6.net
「貴方は?貴方御自身はどうしても守りたいものには入らないのですか!?」

朱雀帝が思わずそう尋ねると、源氏は静かに答えた
「私は…、 私は成るがまま…」
「成るがまま?」
朱雀帝が聞き返す

「生きるも死ぬるも天が決めたまま。 …それで良しと。 その中で精一杯、……それで良しと。
子供の頃よりそう決めております」

源氏は己が罪と、そして死ですらも従容と受け入れている
そのような昔から只一人の女性をひたすら想い続けてきたのか、と朱雀帝は全てを悟る

「子供の頃より…。 誰にも助けは求めなかった?」
朱雀帝が居た堪れぬようなって尋ねると、はい、と頷く光源氏

幼い頃より東宮として育てられた朱雀帝も子供時代に同じような孤独を経験しているのだろう
だから我が事のように源氏のその気持ちがわかるのだろうか
思わず涙を浮かべながら「辛い少年時代を……」と呟く

しかし光源氏は遠くを見る目で「いえ、楽しいものでした…」と答える
夜空に浮かぶ幽玄の月を眺めているようで、そうでなく、
光源氏の瞳には、今となっては遥か遠くに過ぎ去った藤壺宮と過ごした少年の日々が
映っているのだろうか?
それは光源氏の心の奥底に大切に仕舞われた、宝物のような思い出…


全てはうたかたの夢のように……


105:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/28 01:30:49 3lDVVZ8V.net
朱雀帝と光源氏の謁見の時は終わった
朱雀帝が立ち上がり、真っ直ぐに見つめ合う二人

源氏との対話で心が定まったのか、朱雀帝は曇りのない眼差しを向けて
光源氏に帝としての意思を伝える
「…全てを御任せいただけますか?」

源氏は目を伏せながら粛々とそれをお受けする
「はい。 ……なるがままに」

全ては帝の御心の望まれるままに……

こうして、後日、正式に下される朱雀帝の裁決に全ては委ねられたのであった…


106:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/29 01:39:54 wIB4xkIH.net
そして、ついに運命の裁決の日がやって来る

その日、参内した大勢の朝臣たちが御所の謁見の大広間に集められている
最前列中央には光源氏が座し、周囲の好奇の視線に晒されながら
帝の訪れを静かに待っている

ざわめく広間ではひそひそと、今日下される裁定についての会話が交わされている
ある者は、最低でも光源氏の流罪、財産没収は免れまい、と語り、
またある者は、春宮様の後見として宰相にまで上り詰めた御方が
いよいよ政の表舞台から下ろされる、と愉悦にも似た声を洩らしている

今や謀叛の嫌疑がかけられている源氏と係わりになろうとする者はおらず、
誰一人、源氏の傍に寄って話し掛けようとする者はいない

すると急に、騒がしかった場内が水を打ったように静まり返る
帝がようやく姿を現わされたからである
朱雀帝は中央の御座所へ進むと、御簾の向こう側でゆっくりと着座する
源氏とは御簾越しに丁度向かい合うような形になる

誰もが朱雀帝の御言葉が発せられるのを固唾を飲んで見守っていた……


107:名無しさん@お腹いっぱい。
09/09/30 01:47:41 fX/FQ9aC.net
静寂を破り、朱雀帝が口を開く
よく通る凛とした声がその場に響き渡る

「源氏の宰相よりその位を返上し、謹慎したいとの申し出がありました。
引き止めましたがその気持ちは固く、帝としてその申し出を認める事としました!」

帝より放たれた御言宣に光源氏はハッとして顔を上げる
一斉に広間にどよめきが起こる

(申し出による謹慎っ!?)
(ええっ!?流罪ではないという事ですか!?)
(なるほど! 自ら身を退く事で処罰を免れたということだ)
(処罰でなければ財産は守られる!?)

動揺し、口々に囁き合う朝臣たち
だが、帝の御言宣の本当の意図を理解している者はいない
そんな喧騒の中、朱雀帝の視線と光源氏の視線が御簾越しに絡み合う

これで春宮様の御身は守られよう

その場にて朱雀帝の決断の真の意味を知る者は光源氏ただ一人であった…


108:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/01 01:49:14 VIZYDlrY.net
さざ波の様にざわめく場内を制するように朱雀帝が声を張り上げる

「尚、この裁定につき、不満不服のある者は、この場にて申し出られよ!
この帝が話を直接、聞き申す!!」

朱雀帝の大音声に気押されて、居並ぶ公卿たちも静まり返る
源氏の失脚を見越してほくそ笑む者たちは肩透かしを食らい、内心面白くない
しかし、口を挟む事が躊躇われる程の威光に満ちた帝の厳然たる態度の前には
さすがに押し黙るしかなかった

(兄上……)
自ら身を張っての朱雀帝の裁定に、思わず胸の奥から熱いものが込み上げてくる光源氏
しかし、兄の心遣いを無にしてはいけないと、そっと目蓋を伏せる
だが、その目尻には一粒の涙が光る…

周囲の誰もが、まるで一斉に敵となったかのような四面楚歌の状況の中で、
初めて本当の人の温かさと優しさに触れた光源氏であった……




                第十話  『謀叛』    ―完―


109:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/02 01:47:12 J3TwGf0m.net
紫の年齢については諸説あるようだが、アニメでの初登場回は大体10歳くらいだろうか
それから物語内で数年が経過した紫は、もう「若紫」と呼ぶにはそぐわない
大人びた女性の雰囲気を備えつつある


110:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/03 01:30:25 pbxMG1Cs.net
そんな最終話タイトルの 「若紫へ」は、監督繋がりでウルトラヴァイオレットを思い出すw

オリジナルのウルトラヴァイオレットから創られたクローンのウルトラヴァイオレット コード044(若紫)へ


111:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/04 01:30:15 0dmwAr6x.net
他にも「おにいさまへ…」という作品もあったなあw
宮様や薫の君が住む世界

青蘭学園のヒロインから文通相手のおにいさまへ
須磨の光源氏から都の若紫へ

おにいさま……涙が止まりせん……


112:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/05 01:30:05 21FhrKAS.net
出崎統監督に聞く。ミニインタビュー
URLリンク(www.style.fm)
Genji以前に手掛けていたTVシリーズ「雪の女王」についてのインタビュー

このアニメは幼い少女が出会った旅の吟遊詩人とのロードムービー的構成になっていたのだが、
年齢が離れたこの二人には最終回に哀しい別れが待っている展開だった
(一応、別の意味でハッピーエンドなのだろうけれど……)
光源氏と紫の歳の差カップルとは対照的な結末で、実に興味深い


113:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/05 01:35:07 WGAx2JFl.net
よくできているな~、オカルトシーン(例:夕顔を襲う亡霊)もよく処理されているし・・・。

源氏物語千年紀 Genji のOVAキボンヌ。
「源氏物語千年紀 Genji  若紫」で1時間・・・。
ただし、R指定。

114:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/05 02:10:13 WGAx2JFl.net
原作者がカッコイイ!!

正体不明!!これ最強www

115:原作者:紫式部の基礎データ
09/10/06 00:59:48 ZjFDInXb.net
本名:不明   (「藤原香子」という説がある。女房名は「藤式部」)
生没年:不明 (973?~1016?)
性別:♀
身長・体重:不明
出身地:不明(京都説がある)
父親:越後守藤原為時(歌人・漢学者)
母親:摂津守藤原為信女(官人)
職業:中流貴族・作家・歌人など。中宮の藤原彰子(ふじわらのしょうし)に仕える。現在では「小説家」の肩書きも追加されている。

主なエピソード
・子供のころから漢文を読みこなしたなど、子供のころから頭が冴えていた。
・父が、彼女の弟に漢文を教えていると、そばで聞いていた彼女のほうが先に覚えてしまった。
・父は、「そちが男だったら良かったのに」となげいたという。 当時は男社会だったため、時代が悪かったと彼女の才能を惜しんだ。
・彼女は1001-1008年ごろの期間に「源氏物語」を作成したといわれている。
・当時の貴族ではめずらしいいわし好きであったという伝説がある。
・源氏物語の仕事によって彼女は海外では「World's First Novelist」ということになっており、世界史にも大きな足跡を残している。
・英語名は「murasaki Shikibu」「Lady Murasaki」など。

つまり、原作者は「正体不明」ということですww

116:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/06 01:32:11 EL6wpju3.net
最終話タイトル 「若紫へ」は、光源氏の若紫への想いを伝えているのだろうか

故郷を離れて遠い土地を旅していると、ふと出会った美しい風景に足を止めて
しみじみと見入る事が良くあったりするもので、
そして、そのような美しい景色から得た感動を誰かと共有したいと願ったり…
そんな時には具体的に大切な人の顔が思い浮かんだりもして

都落ちして流れてきた光源氏が須磨の地で懐かしく脳裏に思い浮かべるのは
都に残してきた紫か、それとも……


117:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/07 01:30:26 vveMJglF.net
それは、いづれの御時にか……

まるで承平・天慶の乱を思わせる戦ありけり

戦装束に身を包んだ勇ましい武者姿の光源氏
そこに突如、風を切る音と共に馬上の源氏に突き刺さる二本の矢

眼前に広がる丘陵地帯からは、雲霞の如く敵の大群が押し寄せてくる
だが、源氏は矢傷にも怯まずに、平将門も斯くや、という獅子奮迅の戦い振りをみせる
雨のように降り注ぐ矢を切り落としながら馬を走らせて、敵陣深く切り込んでいく……


いつ果てるともなく続く、幻想世界で繰り広げられる戦乱絵巻
……それは光源氏の深層心理が源氏に見せた妖しい夢なのだろうか?


118:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/08 01:40:20 Eps+AXZs.net
轟々と風が鳴っている

幻の戦いの結末はどうなったのだろうか?
雪が降り積もった大地に黒々とした血の痕が点々と続いている……

吹雪が舞う白い雪原を、長槍を杖代わりにして足取り重く歩く光源氏
傷付き、刀折れ矢尽きたその姿は敗軍の将の惨めさそのもので、
かつて光り輝くようだと称された頃の面影は今はどこにも無い

そんな落人の源氏に声をかける旅装束の尼僧が二人…
出家した藤壺と王命婦である
「光る君さま…、何処へ、何処へいらっしゃるおつもりですか?」

精根尽き果てた様子の光源氏はその場に膝をつき、うなだれたまま答える
「戦いに敗れ、都より落ちて参りました……」


119:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/09 01:41:26 u2//v77j.net
変わり果てた源氏の姿を哀れと思ったのか、おいたわしい、と嘆く王命婦

「心の臓には矢が二本…。何処へ往くかと訊かれても、残り少ない我が命…」
萎えた膝に力を込め、再び立ち上がる光源氏
(源氏の胸を射抜いた二本の矢は、夕顔と葵の死が与えた愛別離苦の苦しみを現わす
メタファーなのだろうか?)
「そうですね…、往けることなら極楽浄土。 だが、それは無理な話でございましょう…」

藤壺達が立つ場所の背後には、まるで何かの関門のように建つ鳥居が幾つも見えている
その方向に藤壺達が目指す彼岸、神仏が住まう光明の世界があるのだろうか?
そちらに向かって進めば、迷い苦しむ光源氏の心も救われるのかもしれない…

だが、源氏は一顧だにすることなく、その前を通り過ぎて行く
今の源氏が希求し、足掻き求めるものは、その方向には無いことを知っているのだろうか

突然、雪庇を踏み抜いてしまったのか、光源氏の体がズブズブと雪の中に沈んでいく
「ハハ…、ハハハハ……」

惨めな己の姿に自嘲する光源氏
青白く歪んだその表情は陰鬱な狂気に満ち満ちている……


120:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/10 02:00:35 EmPxe5nW.net
雪庇から自力で這い上がったのか、全身雪まみれで力無く座り込む光源氏
少し離れて藤壺と王命婦も雪の上に座っている

人の世は苦界というならば、求め続けても決して我執の渇きを癒せぬ生こそ無間地獄
二人の比丘尼の存在は地獄に現れ衆生を救済するという菩薩の化生であるかのようにも思える

藤壺は、「極楽浄土は無理」と言う源氏に「どうして無理な話なのですか」と続けて問い掛ける

「…禁断の恋、ならぬ恋。 罪を重ねて生き地獄。
道を外して最愛の人を泣かせたこんな身に、極楽浄土は有り得ぬ話……」
かつて犯した罪業と、今も己を苛む後悔の念に苦しめられ続けている光源氏

痛々しい源氏の様に、思わず手を合わせて祈る藤壺
「御念仏を唱えませ。悔い改めて唱えれば、御仏の心にもきっと届くと教えにあります」

だが、その言葉は今の源氏の心の奥には届かない
源氏は暗く虚ろな色を瞳に浮かべたまま、救いがたい自分自身に絶望したかのように自嘲する

「はてさて…、どんな教えを説かれましても、私はどうにもなりません……」


121:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/11 02:00:17 1qBRfbAj.net
音もなく降る綿雪は勢いを増し、うなだれて座る源氏の肩や背に次第に降り積もっていく
全ての罪と穢れをその白さで覆い隠そうとするかのように……

源氏は藤壺の仏法帰依の誘いを拒絶するかのように、尚も告悔を続ける
「悔い改めるその前に、愛を重ねたその人の肌の香りを思い出す…」

そう語る源氏の脳裏には、かつて最愛の藤壺と抱き合い、愛し合った時の記憶が
決して消えない残照のようにまざまざと浮かぶ

すると、源氏のその記憶と言葉を咎めるかのように何処からか複数の矢が飛来し、
源氏の背中に突き刺さる!
それは五欲の罪を重ねる源氏に、天から下された罰なのであろうか?

苦痛の唸り声を上げて雪の上に前のめりに倒れる源氏

この幻想世界では終わることのない苦しみが永遠に繰り返される…
そこから逃れるすべは無いのだろうか……


122:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/12 02:02:04 mU96acSb.net
「罪は罪…、 されど愛は愛!」
闇の底から怨嗟の如き声が響く
それは矢を受けて倒れ伏したはずの源氏の声であった

「現世を去ったその人を、もしも再びこの腕に抱いて想いが叶うなら!!」
突然、源氏が激しく身を起こして叫びを上げる!
その姿は、まるで悪鬼のように狂おし�


123:「までの狂気を孕んでいる 「地獄も良し!! 修羅も良し!!」 既に致命的なまでに矢傷を受けているはずの源氏は、 己が一度死んだであろう事にも気がついていないのだろうか? この世界で彷徨う者には死ぬ事すら許されないのだろうか だとするならば、たとえ死ですらも、魂の安息にはつながらない… 源氏は再び長槍を杖代わりにして歩き出す まるで自分が死者である事を知らぬまま地獄を彷徨う亡者のように…… 見送る藤壺と王命婦は「ああ、おいたわしい」と嘆きの声を上げ、手を合わせる 二人は只、源氏の後姿を見送りながら、祈り続けるしかない 御仏の救いも、無明の闇に囚われている源氏には届かない……



124:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/13 01:30:32 RxBy/rw+.net
降る雪は吹雪に変わり、さすらう源氏の往く手を遮るように激しく吹きつける
向かい風に逆らって歩きながら、光源氏は自らに問い掛ける
(何処へ往く…? 光源氏よ、何処へ往く……)

極寒の世界に人影は無く、答えを返す者はいない…
目的も行き先もわからぬまま、ただ前へ進む
やがて夜が明けたのか血のように赤い朝日が地平線に昇るが、それにも構わずに歩き続ける

一体、どれくらいの間、歩き続けているのだろうか
時間の感覚はとうに失せている

そして、源氏にもついに限界の時がやって来る
歩き疲れ、力尽き、雪原に倒れる光源氏
横たわる身体の上に雪が降り積もり、ただ風だけがびょうびょうと吹き抜けていく……


125:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/14 02:00:13 7S9ssWwb.net
「ハハ…ハ…。 全ては…夢……」
雪の大地に突っ伏したまま、力無く微かに笑う光源氏
このまま目的を失い、煉獄に囚われた亡霊として消えていくのか?

「いや…、夢より儚いものとせば、何処へ往こうがそれで良し…」
空を蔽っていた雲が僅かに晴れて、源氏の頭上より光が射し始める
(諸法無我の道理に至り、執着から離れる事で自由な境地を得たのだろうか)

その光に励まされたかのように、光源氏は槍を手にすると再び立ち上がる

「…なるがまんまに、生くるのみ!」

光源氏が向かう遥か前方の彼方には、僅かに広がる海が見えている
そこには一体、何が待ち受けているのであろうか?

光源氏は再び歩き始める
まだ見ぬ運命に導かれるように……




                  アバン・幻想    ―終了―


126:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/15 02:00:28 wlivQ8Kw.net
麗らかな春の陽射しが射す御所
源氏の官位返上しての謹慎が公に決まってしばらくした後、
光源氏は朱雀帝に出立前の御挨拶をするべく内裏に伺候していた


「須磨へと聞き及びましたが…」
簀子に立ち、庭園の池を眺めながら朱雀帝が問う
「須磨といえば、流刑の地。人家も疎らな荒涼とした海岸が長く続く処、と聞いています」

朱雀帝の後ろに控えて座る源氏が頷く
「はい。 都を離れ、静かに謹慎致しますには程良き地かと…」

光源氏に対する帝の此度の寛大な措置には、不満を抱く公卿も多いのであろう
源氏が早々に謹慎の地として須磨を選んだのは、そういった周囲に対する配慮もあるのだろうか
これ以上、帝に御迷惑をかける訳にはいかぬと考えての源氏の選択だと思われる

「空いた家屋敷などあれば、そこを借り上げ、当面の仮住まいとするつもりでございます」


127:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/16 02:30:48 OZ2ezNdX.net
「出立は…?」
残念そうに下向の日取りを尋ねる朱雀帝に、源氏が答える
「出来るだけ早く。月の変わる前に、と」

「…そうですか。 寂しくなります」
しみじみと語る朱雀帝は、源氏の傍に歩み寄り、差し向かいに座る
「お戻りになり、また舞などのご教授を」
はっ、と畏まる源氏

「まだ世間には騒がしくあれやこれやという者がおります。どうか十分にお気をつけなされて」
道中の安全を気遣う帝の優しい言葉に、感謝の気持ちで一杯になる光源氏
兄・朱雀帝にはとても返しきれぬほどの恩がある

「…ありがとうございます!」
高鳴る胸を抑えつつ、深々と頭を下げる光源氏であった


128:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/17 02:09:54 D9EISjSJ.net
夜も更けゆく頃の源氏邸
光源氏が旅立ちの挨拶をしたためた文を大量に自室で書いていると、背後より誰かが呼ぶ声がする
忙しげな源氏は少しだけ手を止め、座ったまま誰何する

「…誰ですか? 惟光か? 急ぎの事でなければ後にしてくれぬか。
 今、私は方々の方々へ御挨拶の手紙を書いている。
 何しろ、どの位の留守になるかわからないのですから」

「お兄様に申し上げます」
薄暗い室内に灯る明かりに照らされて座す紫の君が、改まって声をかける
ああ、貴女でしたか、と源氏は気がつくと、筆を置いて紫のほうに向き直る

「何故、私は須磨へ連れて行ってはいただけないのでしょうか?」
思い詰めた様子で尋ねる紫の真剣な表情に、源氏は少し困った様子で説明をする

「須磨での暮らしはとても質素なものとなります。それに、旅も峠を幾つも越える辛いものです。
 この家より持っていける物は必要最小限の身の回りの品だけ。 ですから、連れて行けるのも
 惟光と、惟光が選んだ者たち数人だけ。 残った者たちはしっかりと力を合わせて、
 私が帰ってくるまで、この家を守ってくれなければなりません」


129:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/18 02:01:17 JxTSo3pB.net
「いつ、お帰りになるのですか?」
居ても立ってもいられない感じの紫が光源氏の方ににじり寄る

「…それは……」
どう諦めさせたものかと戸惑う源氏へ、更に紫が詰め寄る
「十日ですか? 二十日ですか?」
「いや……」

「そんなの嫌です!」
紫が声を張り上げる

「いつ、お帰りになるのかわからない方を、胸をわくわくさせて御門の前を行ったり来たり。
 お出迎えのお着物は落ち着いたものが良いか、華やかなものか。
 お化粧は紅を薄めか、少し濃ゆめか…」

夢中で喋っている内に気持ちが高ぶって抑えきれなくなり、ついには泣き出してしまう
自分の袖で顔を蔽い、絶え間なく流れる涙を隠す

今までは待つ時間でさえ楽しかった光源氏のお出迎えも
次に源氏が屋敷を出れば、今度はいつ戻ってこられるかわからない……
もしかすると、もう二度と会う事すら叶わないかもしれない
そんな不安な気持ちが紫の心を激しく掻き乱し、堪えていた感情を爆発させてしまったのだろうか

「そんな…、たったの私の出迎えに……。いつもそんなに……?」
紫の予想外の告白に驚く光源氏
思わず口を出た問いに、泣いている紫は答えられない
不器用に指を使って頬を流れる涙を何度も拭っている


130:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/19 02:01:07 fj5hjiCo.net
そんな様子に、光源氏は紫の傍に寄ると、優しく肩に手を置く
「まだまだ子供と思っていたのに…。 貴女が御化粧を…、紅を…」
知らなかった、と呟く光源氏の胸に、涙を流しながら、そっと身を寄せる紫

「もうずっと、お兄様のお帰りを、待って、待って、待って……」
それはいつの頃からか、幼い日よりずっと重ねられ続けてきた、光源氏への紫の淡い想い……

「そうですね…、ああ…、 そう、その事を私は知っていたようですね…」
光源氏は己の心の内を探る様に、ゆっくりと気持ちを言葉にしていく

「貴女が此処で待っている。 だから私は此処に帰って来られていたのだと思います」
「本当ですか!?」
間違いありません、と答える光源氏に、紫の表情がパッと元の明るさを取り戻す

「苦しい時


131:も、悲しい時も、この家で貴女の笑顔が待っている。  その笑顔が見たくて、私は此処に帰って来ていたのです…」 紫との日々の何気ない生活が、孤独な光源氏の心にどんなに救いをもたらしてくれていたのか、 辛く苦しい時も、紫の笑顔が自分に再び生きる活力を与えてくれていたのだ その事に今更ながらに思い当たる光源氏であった 源氏の言葉を聞いて、あぁ、と吐息を洩らす紫の頬を、また一粒の涙がはらりと零れ落ちる しかし、それは先程までの悲しみの涙ではなく、愛しい人に愛され、必要とされている喜びを知った 幸せの涙であった……



132:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/20 02:20:27 Bj74L7Av.net
源氏は紫を優しく包み込むように抱きしめ、髪をそっと撫でる

「…今度も待っていてくれますか? 半年か、一年か、貴女をどのくらい待たせるかは判りませんが、
 今度こそ。是非とも待っていて欲しい……。私の妻として」

その言葉に紫は驚いて息を呑む
「…妻!?」

「はい。許してくれますか?」
源氏は紫を真っ直ぐに見つめながら問い掛ける
そして紫は無言をもって、その光源氏の問いに応えた

「今、私は貴女を、紫の君を。 あの月に誓って、妻と致します」

「お兄様…、……源氏の君さま…」
紫が顔を近づけ、二人は唇を重ねあう……


源氏の須磨下向が間近に迫ったその日、紫の君は光源氏の妻となった…


133:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/21 02:30:20 V5AMRGqN.net
そして、雨の降るある日、光源氏は北山にある先の帝の御陵を訪れた

旅立ちの前に、しばらく都を離れる事になる報告と御詫び、それと、旅行く者と留守を守る者、
その両方への御加護を、亡き父・故 桐壺院に御願いする為である

鬱蒼と木々が生い茂った薄暗い山道を、光源氏が只一人歩んでいく
鳥居をくぐり、長い石段を登ると、参道の両側には沢山の紫陽花の花が咲いており、
降り続く雨に濡れて薄く光っている

暫し歩き続けた後、やがて山中の御陵がある場所に到着する
先帝の陵墓は質素な造りが為されており、中央の石碑には碑文が彫られている

光源氏は雨に濡れるのにも構わずに跪くと、父の墓石に向かって手を合わせた


134:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/22 02:20:51 1GqD6dpu.net
御陵を管理する僧院の僧侶が供えたのか、焼香台で焚かれている香木が雨で燻り、
香の煙りが辺り一面に漂っている

すると急に、人気が無い筈のこの場に、透き通った鉦の音が響き始める
何者かの気配を感じた源氏が振り返ると、そこには、亡くなった筈の桐壺院の姿があった
「…父上っ!?」

中空に霞のように浮かぶ父の御霊を見て、愕然とする光源氏
地面に両手をつくと、「お久しゅうございます!!」と叫び、涙ぐむ

そんな光源氏に対して、桐壺院の霊は静かに呟くように語り掛ける
(……許せ…、 許せよ…、 光………)

桐壺院の御霊は何かを伝えようとしているのだろうか?
父の言葉の意味を計りかねる光源氏

「父上…? 御許しをいただかねばならぬのは私の方でございますっ!!」
罪を犯したのは不義を働いた私なのです、と長い間、胸につかえていた想いを告白する
父の死に目に間に合わず、真実を伝えられないまま亡くなってしまった罪の意識と後悔…
それを今こそ、伝えなければならない

しかし、桐壺院はそんな源氏の気持ちを知ってか知らずか、また同じ言葉を繰り返す
(……許せ…、 …許せよ……、 光………)

「父上!」と、もどかし気に身を乗り出す光源氏


135:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/23 02:00:15 gMpQI5k/.net
いつの日か父に本当の事を告げ、心から謝りたかった
親不孝を許して欲しかった
それを果たせなかった自分はあまりにも罪深い……

すると、桐壺院の霊は声をあげて微かに笑う
(そうではない…、光…、 お前を許せと言っているのだ……)

ハッとする光源氏
御隠れになられた故院は、既に全てを御承知になられているのであろうか

亡き父を裏切り、愛する女性を傷付け、世を捨てさせるまでに追いつめた罪
そんな愚かな自分をどうしても許せずに苦しんでいる光源氏
それを父は許せというのだろうか?

(許すとはそういう事だ……、 まず自分を許せ、光……、 …許せ……)

私のことよりも、まず己を許せ
もう罪の意識で自分を責め続けるのは止めよ、と…

他者に愛されたいと望む者は、まず自らが他者を愛せ、というように、
己自身を許せぬ者は自分で自分を罰しようとするが故に、決して救われる事がない
だからこそ、まず己自身を許せと……


子を想う父の深い情愛に触れて、光源氏は感極まり滂沱の涙を流すのであった


136:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/24 02:20:58 lE6UWpgH.net
「父上! …それが、…それが出来ませぬ! …光は! それが出来ませんのでございます!!」
そう叫ぶと、その場に声を上げて泣き崩れる光源氏

(あぁ……、 うん…、 …うん……、 …そうか………)
子供のように泣きじゃくる源氏の姿を見つめながら、桐壺院が優しい笑顔を浮かべて頷く
その表情は、我が子の行いを全て受け止め、温かく見守る父親の顔であった…

やがて、音も無く後ろに下がるように、桐壺院の姿が宙へと消えていく
それと同時に再び地面を叩く雨音が激しく鳴り始める
光源氏はずぶ濡れになりながら、ただひたすらひれ伏したまま泣き続けている

周囲に咲く紫陽花の花の色が雨に打たれて墨水画のように滲む
父の御霊が去ったその場には、一人取り残された光源氏の慟哭がいつまでも響いていた……


137:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/25 02:30:19 o1GPJ2PE.net
そして、いよいよ出立の日の前日がやって来る

須磨への旅立ちを明日に控え、縁のある方々とのお別れの挨拶も全て済ませた光源氏の牛車が
ようやく二条の屋敷に到着しようかという夜半のことである

降り続く長雨に人通りも絶えた夜の往来を、武装した一団が駆け抜けていく
足元の泥水を跳ね上げながら夜道を走り、手に手に鈍く光る太刀を携えている
野盗と思われる連中だが、全員が剣呑な雰囲気を全身から強烈に発散させている

賊達は夜陰に乗じて物陰に隠れ、光源氏の牛車が通るのを息を潜めて待ち構えていたのか、
急に夜道に飛び出してくると、奇声を発しながら牛車に襲い掛かってきた!

馬で随行する惟光がいち早くそれに気が付いて、「曲者!」と声を上げるが、時、既に遅し
賊は牛車を牽引する牛を切り殺して大勢で轅に取り付き、力任せに屋形ごと牛車を引き倒す!

大きな音を立てて横転し、無惨な姿を晒す牛車
それを、得物を構えた大勢の野盗たちが取り囲む


138:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/26 02:30:18 Sri7t36t.net
野盗達の輪から頭目と思しき男が前に歩み出る
手に薙刀を持ち、星兜を被って口髭を生やした、むくつけき巨漢である
男はニヤニヤと笑いながら、牛車を囲んで守る源氏の家人達に話し掛ける
「へへへ…、 どうもこうもあるもんかい。 俺たちゃ、光源氏殿の御車と見ての参上さ!」

横転した牛車の車輪が、降り注ぐ雨を受けながらカラカラと空しく空回りしている
野盗の頭目が恫喝するように、一際大きく声を張り上げる
「さあ、出て来い! 牛車の中でのんびり寝てる場合じゃねえぞ!!」

「……やれやれ」
倒れた屋形の中からゆっくりと光源氏が姿を現わす
そして自分の家来衆の前に進み出ると、野盗の手下達がそれを遠巻きに取り囲む

「人の行く手を勝手に止めて、 出て来い、眠るなと、言いたい放題……」
光源氏は、先程叫んだ声の主に見当をつけて振り返ると、そちらの方へ歩いていく
冷静な光源氏の態度に、さしもの不敵に笑っていた野盗の頭目も薙刀を構えて身構える

「何処のどなたか存じませんが…、 無礼千万、甚だしい!
 ……場合によっては仕置き致すが、宜しいか!?」
不機嫌そうな光源氏の目に激しい怒気が宿る

「何抜かす! この、謀反人がぁ!!」
突如、叫び声を上げながら、野盗の頭目が大上段に振り上げた薙刀で襲い掛かった!
寸前に光源氏は太刀を抜き、相手の切先を逸らして鮮やかな身のこなしで攻撃をかわす


139:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/27 01:40:06 WFgCSo25.net
一方、その頃、二条の源氏邸では、居候中の頭の中将が夕餉を食していた
そこに、源氏邸に仕える家人がやって来て、慌てた様子で注進する

「た、た、た、大変でございます! す、す、すぐ其処で、斬り合いが!!」
屋敷の近くで物騒な騒動が起きている事に気が付いて、すっかり気が動転しているようである
それを聞き、箸をとめる頭の中将

すると更にその場に、全身濡れ鼠の惟光が血相を変えて駆け込んで来る
「ど、どうも! うちの御主人様が!!」
斬り合いの場から一人、馬を走らせ、屋敷の者に源氏の危機を知らせに来たのだろうか

それを聞くや否や、頭の中将の表情がさっと厳しく変わった
(ついに押しかけ用心棒の出番のようである)


140:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/28 02:00:30 hphfKyOD.net
乱戦が続く中、光源氏は襲い掛かってくる賊の群れを次々と華麗な剣技で斬り捨てていく
負けじと源氏の従者達も奮闘している

辺りには、斬られて出来た血溜まりや取り落とされた刀など、雨の中、凄惨な様相を呈している
しかしやはり多勢に無勢
数で劣る源氏達は次第に追い詰められ、背中合わせに円陣を組む形で賊達に包囲されてしまう

そんな中、源氏が気丈に、頭目の男に問い掛ける
「いつまで続けるつもりだ? そちらの怪我人が増えるばかりだぞ。
 それに私はお前達に怨まれる理由などない」

勝利を確信したのか、野盗の頭目がニヤリと余裕の笑みを浮かべる
「へへ…、恨みつらみじゃねえさ。 そんなもんじゃ、飯は食えねえ。
 ……だが、謀反人の首を上げたとなりゃあ、話は別だ。 大義名分、立派に通っている。
 世間での俺達の相場が良くなるのよ!」

身勝手な理由を一方的に捲くし立てる賊の頭目
その言葉に後押しされたように、ジリジリと包囲の輪を狭めていく野盗集団…
すると急に、殺気立つ野盗達の背後から、誰かの声がする

「…フン、何が相場だ。 大方、右大臣一派に取り入って、仕事の一つも貰うつもりの連中だ」

ギョッとして一斉に振り返る盗賊達
そこには、雨の中、腕組みをして立つ頭中将の姿があった!


141:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/29 02:00:54 fE0zdP4B.net
「ん…? 誰だ、お前は!?」
胡散臭げな視線を向けながら野盗の首領が問う
突然の伏兵の出現に驚いたが、見たところ、相手はたかが一人と舐めてかかっている

頭中将としては、今頃は源氏の屋敷の者が検非違使の元に知らせに走っているだろうが
この危急存亡の場には、救援はとても間に合いそうにない
それで自ら危険を冒してまで、親友の窮地に駆けつけたのであろう

嘲るように頭の中将が告げる
「残念�


142:セったな。 俺は左大臣一派の縁の者だ」 権門の威光には弱いと見えて、名門・藤原の左大臣の名を出されて動揺する盗賊達 更におどけた仕種で挑発する頭中将を見て、苛立つ頭目が虚勢を張って叫んだ 「…こいつの首も貰っちまえっ!!」 それを合図に、一斉に雄叫びを上げて頭中将に襲い掛かってくる手下達 しかし、頭中将は少しも焦らずに平然と鼻を鳴らすと、手に持った扇を地面に投げ捨てた 「…フン、 ちょっと…、首はあげられないっ!!」 勢い良く突っ込んで来た先頭の盗賊の顔に掌底、次の男には正拳、 そして更に次の男には前蹴りと、流れるような三連続攻撃を浴びせる 刀で斬りかかって来る男達を次々と素手であしらい、八面六臂の大暴れ! さすがは光源氏と並んで、当代一、二を争う公達と言われた男・頭中将である 腕っ節の強さも半端ではない



143:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/30 02:20:28 HhFgXZo2.net
背後に現れた、めっぽう腕が立つ新たな敵に攪乱される盗賊達
前後に戦力を分断されて乱戦となり、混乱する場
その一瞬の隙を光源氏は見逃さなかった

横転した牛車の反対側に回り込むと、上に跳び乗り、そこから一気に跳躍する
虚を衝かれた野盗の頭目は、慌てて薙刀を構えて上方からの斬撃を防ごうとするが、
源氏が振り下ろす刃は薙刀の柄ごと切断して頭目の頭部を断ち割った!

雨に濡れた地面に着地する源氏
その背後で、野盗の頭目が着けていた兜がゆっくりと地に落ちて、二つに割れる……

野盗の手下達は統率者を失って混乱し、形勢は逆転した

こうして、無位無官の源氏を狙った野盗達の襲撃は頭中将の加勢もあって失敗に終わり、
戦いは終結したのであった


144:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/31 01:30:34 0yyLz7A0.net
そして最後の夜

別れの朝までの僅かな、そして貴重な時間を、屋敷の寝所で寄り添って横になり、
共に過ごしている光源氏と紫の二人
しかし先程までの大立ち回りの興奮が未だ冷めないのか、源氏は中々眠りにつけない
そして、それは添い寝に慣れない紫の君も同様であった

「……眠れないのですね?」
光源氏が紫にそっと訊く

「あ…、お兄様こそ、起きてらして……」
紫が目蓋を開く
「出立は早朝でございましょう? お兄様こそお休みにならなければいけないのですよ」
紫が疲れている様子の源氏に優しい気遣いをみせる

小さく笑って「ありがとう」と礼を言うと、光源氏は上半身を起こした
「わかってはいるのですが、どうしても眠れない」

それにつられて紫も身を起こし、白小袖の乱れを直す


145:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/01 02:01:33 HG+8Bh4d.net
「うん…、貴女のせいだ」
眠れない源氏が悪戯っぽく紫に囁く

「えっ、私の?」と、紫は戸惑う
慌てて単衣を引き寄せながら、遠慮がちに源氏の傍から身を引く

「ごめんなさい。 私…、 あっ…、 そう、私…、今までのように西の対に下がって……。
 そうすればお兄様は一人で気楽に……。 そうでした……。 ごめんなさい」
出過ぎた真似をしてしまっただろうかと、内心、不安になる紫
しょんぼりと気落ちしたように項垂れる

「違いますよ。違うのですよ。 貴女は此処にいて良いのです。 何しろ、貴女はもう私の妻です」
源氏は紫の方に改まって向き直ると、その小さな手を取って言った

「妻は此処に。 此処にいなければなりません」

しかし紫はまだ信じられない様子で、源氏に恐る恐る訊ねた
「でも…、 でも、お兄様は私のせいだと…」

それを聞いて、くすくすと面白そうに源氏が笑う
「それは、そう。 貴女のせい」

「ほら、」と、からかわれて不満そうな紫に、源氏はまた声に出して楽しげに笑うのであった


146:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/02 02:30:29 CdDaDlMg.net
源氏は紫の手を握り、その細い肩にもう片方の手を置くと、優しく見つめながら語り掛ける

「貴女とこうしていられるのは、本当に今だけ。 夜明けまでのほんの僅かな時間。
 そんな大事な、大切な時を寝ている訳にはいかないと、起きていなさいと
 心がそう私に命じているのです」

すると紫は何かに気がついたように、「ああっ」と驚きの声を上げ、急に明るい表情をみせた
その変化に驚いた源氏が理由を訊ねる

「だって、私、 先程、お兄様の寝顔を見ながら、全く同じ事を…。 ええ、思っていたのです。
 ……ですから…………」
笑顔で源氏を見上げて答えていた紫だが、途中で口篭ると、その瞳が複雑に揺れ始める
そして、音も無く一筋の涙がこぼれ落ちた

静かに声を殺してむせび泣く紫

「…だって仕方がありません。 朝が来たら私の大好きなお兄様と、半年、いえ、長ければ一年以上、
 お別れしなければいけないのですもの………」

涙声で途切れがちになりながらも、頬を伝う涙を拭い、己の気持ちを伝える紫の君
光源氏はただ黙って、そっと紫の肩を抱く

降り続く雨が屋敷の庭の池に、たくさんの水紋をつくっている
水辺には紫陽花の花が咲き、雨に打たれながら濡れそぼっている

無情にも二人の別れの時が刻々と近付いてきていた……


147:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/03 02:20:10 hRCjrxWX.net
「……起きていてもいいのですよね?」
泣き止んだ紫が遠慮気味に訊ねると、勿論、と答える光源氏

「私、朝まで起きています」
「うん、私もそうします」

隣りに寄り添って座る源氏に勢い込んで告げた紫だったが、
源氏の返事を聞くと、その胸に頬を寄せて幸せそうに微笑む
「嬉しい…、 二人で朝を待つなんて」

(ああ、神様…、 どうか二人の次の朝も出来るだけ早く来ますように……)

紫は心底、天の神々に祈らずにはいられなかった

どうかこの幸せが今しばらく続きますように、
遠い地に旅立つ源氏の君さまをお守り下さいますように、
また二人で共に笑って過ごせる日がやって来ますように、と……


148:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/04 02:00:26 j1gsJW6A.net
紫は光源氏と向き合いながら、真剣に己の覚悟を伝えようとする

「待っています。 源氏の君さまのお帰りを。
 私の全てをその日の為に準備して。 ……待っています!」

そんな紫を真っ直ぐに見つめながら、源氏が紫の名を呼ぶ
「紫の君…、 我が妻よ」
「はい」
力強く応える紫の君
光源氏を見上げる紫の瞳からまた涙がこぼれ落ちる
だが今度は笑顔のままで…

 (貴方のお帰りをずっとお待ちしております)
 (必ず貴女の元に帰ります)

それは二人がいつの日か、きっとまた笑顔で再会出来るようにとの願いを込めた
誓約のようでもあった……


そして更に夜は更けていき、長く降り続いていた雨は明け方近くになって
ようやく上がったのであった


149:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/06 01:01:08 9A8/GE1t.net
眩しい朝日が射す畦道を行く光源氏一行
まだ薄暗い内の出立だったので、一行は既に都を離れ、郊外を進んでいる

騎乗の源氏と惟光、僅かな荷を載せた荷車を牽く者、押す者、徒歩で随行する者、
総勢六名という少人数の陣容である

誰かに見られれば、没落した公家衆がひっそりと都落ちしていく寂しい姿に見えたかもしれない
しかし源氏の心に澱んでいた黒雲は既に過ぎ去り、今は頭上に広がる雨上がりの蒼天のように
どこまでも晴々と澄み渡っているのであった

兄・朱雀帝や亡き父・桐壺院の肉親の情愛
莫逆の友・頭中将との固い友情
そして紫の上の一途な愛

それらの人々との確かな繋がりは、闇に輝く灯�


150:ホのように源氏の心を暖かく満たしていた 彼らの事を想う時、光源氏は身の内に新たな力が湧いてくるのを感じるのだった 人は決して孤独ではない 彼らから受けた恩や与えられた無私の愛情をいつか返せる日がくるように…… 光源氏は必ずまたこの地に帰ってくる事を心に誓い、須磨へと旅立っていくのであった



151:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/07 02:00:42 Nm+vcRX7.net
所変わって、人里離れた山中にある、うらぶれた小さな祠
周囲は鬱蒼と生い茂った木々に囲まれている
そこに旅姿の尼僧・王命婦が何処からか一人で戻ってくる

観音開きの扉を開けて中に入ると、奥の方に同じく尼僧姿の藤壺がうずくまり、身体を休めている
突然の人の気配に身じろぎして、足を身体の方に引き寄せようとするが動きがおぼつかない

そんな様子に気がついた王命婦が藤壺に声を掛けた
「あ…、大丈夫でございますか? おみ足が痛むのではございませんか?」

「…大丈夫。 大丈夫ですよ、命婦」
平静を装って藤壺は答えたが、言葉とは裏腹にその表情には疲労の色が濃い

二人が都を出発して仏道修行の旅に出てから幾星霜
(それは西国三十三箇所を巡る観音霊場の旅だろうか?)

故院の一周忌の法要後の出奔だったとしても、既にかなりの長旅である
寝殿で暮らしていた藤壺にとって、慣れぬ山歩きは相当辛いものである事は想像に難くない
足を患い、疲れた身体を山中で見つけた打ち捨てられた祠で一休めしていたのであろうか


152:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/08 02:40:14 CH9WFbHF.net
藤壺が無理をしているのを察して、王命婦は藤壺に近付いて、その足に手を伸ばす
「いいえ、おさすりします。 さ、こちらへおみ足を」

「あ…、ありがとう。 お願いします」
中腰の姿勢のまま動けずにいる藤壺の足首やふくらはぎを、王命婦は丹念に指圧し始める

「でも、これも出家した者なら当然なさねばならぬ修行の旅。 このくらいの事で泣いてはいけませんね…」
藤壺は命婦の献身に感謝しつつも、思うに任せない己の身体を情けなく感じながら呟いた

修行を修め、功徳を積み、輪廻の輪から解脱して涅槃に入る
仏道とは受戒して法衣を纏えばそれで終わりではなく、そこから本当の修行が始まるのだから

ともすれば弱気になり、発心を忘れて挫けそうになる己の気持ちを、改めて引き締める藤壺尼であった



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