13/03/07 01:07:33.18 +1bvU3Zx0
やってみたけど作中で独特の意味を持つ固有名詞が多くて未読にはチンプンカンプンだなこれ
元ネタは文章に無駄がないから削りにくいし、あんま比較にならんかも
でもまあとりあえず抜き出したんで元ネタからどうぞ↓
慶国首都、堯天。本格的に陽射しが温んだ王宮に、ようやく遊学中の王が帰還した。
帰還して五日、王は王宮の奥にこもって出てこない。もと冢宰靖共、和州州侯牙峰、
そして和州の止水郷郷長昇鉱が捕えられた。逮捕を命じたのは王で、これに官吏は驚愕し、
ある者はひどく反発したが、とりあえず内殿にさえ出てこない王に異論を言う術がない。
(略 王が帰還するや、名のある大臣や地方領主の更迭を命じたことに戸惑う官吏の描写)
さまざまな思惑が入り乱れて五日、ようやく王が諸官を召集、主だった官を外殿に集めたのだった。
(略 2ページに渡って、朝廷の大改革人事を王自ら発表する描写)
「みんな、立ちなさい」
ざわ、と諸官は困惑して顔を見合わせる。おそるおそるというように、立ち上がり、
身の置き場に困ったように、周囲を見渡した。
玉座の王はそれを見渡してうなずく。側に控えた宰輔を振り返った。
「これは景麒にも聞いてもらう―わたしは人に礼拝されることが好きではない」
「―主上……!」
宰輔の咎める声に、王はわずかに苦笑する。
「礼と言えば聞こえは良いが、人の間に序列あることが好きではない。
人に対峙したとき、相手の顔が見えないことが嫌だ」
(略 1ページ半ほど、地位でもって他人に服従を強いることへの否定とその反応)
「私は、慶の民の誰もに王になってもらいたい」
言い放つ声は明確だった。
「地位でもって礼を強要し、他者を踏みにじることに慣れた者の末路は、
昇紘・呀峰の例を見るまでもなく明らかだろう。
そしてまた、踏みにじられることを受け入れた人々がたどる道も明らかなように思われる。
人は誰の奴隷でもない。そんなことのために生まれるのじゃない。
他者に虐げられても屈することない心、災厄に襲われても挫けることのない心。
不正があれば正すことを恐れず、豺虎(けだもの)に媚びず、―わたしは慶の民に、
そんな不羈(ふき)の民になってほしい。己という領土を治める唯一無二の君主に。
そのためにまず、他者の前で毅然と首(こうべ)を上げることから始めてほしい」
言って王は諸官を見渡す。
「諸官はわたしに、慶をどこに導くのか、と訊いた。これで答えになるだろうか」
諸官の返答はない。視線だけが王に向かう。
「その証として、伏礼を廃す。これをもって初勅とする」
【十二国記シリーズ「風の万里 黎明の空」下巻361から367ページ 1994年9月6日第1刷発行】