12/05/09 21:19:05.66 0xKFzhtV0
「……」
桂は黙って銀時を見つめていた。言葉の意味をとらえかねているのか、言葉について考えていてくれるのか、視線だけを感じながらも銀時には当然判断できなかった。
そうして、どれだけ時間が経ったかわからない。
ただ、月は天頂部分までにも移動していなかったから、実際はさほどたっていなかったのかも知れない。
不意に、桂が立ち上がった。
思わずそちらを見上げると、彼は日本酒に蓋をして彼に言った。
「そろそろ冷え込んできた。中に入らぬか」
その顔は、柔らかい彩りを得た、やさしい笑みだった。
さほど酔っていたとも思わない。
どちらが先だったのかもわからない。
どちらからともなく寄り添い合った。
それだけだった。
いや、それだけではなかった。
お互いに言いたいことを少しだけ言い、聞きたいことを少しだけ聞いてみた。
「高杉は俺に指一本触れておらんよ」
それが気になっていたのか、と桂はどこか苦笑気味に言う。
「俺があいつ本人に捕まった、あの時まで……あいつは俺に触れもしなかった」
……そっか。
銀時は小さく返答した。それが見苦しい嫉妬だとでも思ったのか、安堵しつつも気まずそうな顔をしている。
「俺が好きか?」
銀時のようにばつの悪そうな回りくどい質問はしなかった。だから素直に聞いてみた。
だがそのごく単純な質問に、彼を抱き寄せる男は言葉を詰まらせた。
「……まぁ、その……うん」
「ならばそれほどでもないということか」
それであれだけのことをしてくれるのだから、お前はよっぽど嫉妬深いということだ。
「ちがっ……いや、そのな? ……ああ、もう……」
むずがゆそうなその反応に、苦笑する。
だが。
銀時が意を決して桂の耳元にその言葉をささやくまで、そう長くはかからなかった。