12/05/09 21:10:21.75 JRh8Gdzr0
壊されかけてたよ。あの反応を見る限りじゃ。
だが。
「なんでそんなこと気にすんだよオメー。まさか、ヅラに気でもあるんじゃねーだろーな?」
思わず口をついて出た質問に、土方はカウンターを押しのけるように身体を起こした。そしてそのまま立ち上がると明らかに焦点も定まらないような目で、銀時の方を見ようとする。だが、ぐらぐらと揺れる彼の身体がそれを邪魔しているようだった。今にも倒れそうである。
「ちっげーよ! なんっで俺が、野郎なんかにッ……てか、よりにもよってあの野郎に気を持たなきゃいけねーんだよっ!?」
「あーごめんごめん。聞いてみただけ。からかってみただけ」
肩を掴んで押さえてやると、あっけなく土方は席に座った。が、そのままの勢いでカウンターに再び倒れこんだ。
幸いお銚子は倒さなかった。痛そうな音が店内に軽く響いただけで済んだ。
「高杉はぁ……まずいって……ほんと、あいつは、やべーん、だよ……ぉ」
へろへろになりながらも訴えてくる土方に苦笑しながら銀時はつぶやいた。
「それはむしろ、俺の方がよく知ってるよ……」
昔から知っていたのに、嫌というほどあの場で思い知らされた。
ため息をついて自分の酒を飲んでしまうと、銀時は寝息を立て始めた土方に一瞥くれて再びため息をついた。
結局、何が言いたかったのか分からなかった。それでも、おそらく土方は本当に桂のことを心配しているらしいということがよくわかった。
そしてそれが少しだけ、気に入らない自分がいた。
せっかくフォロ方くんに会えたのにねぇ。まぁこいつに相談したって仕方がないけどさ。そもそも恋愛相談だか人生相談だか、そういうことをする相手じゃねぇよな。
そんなことをぼんやりと考えてから、銀時は新たにあんみつを頼もうと口を開きかけた。
その時だった。
「トシー、いるかー?」
「あれ……ゴリラじゃん」
銀時が振り向くと暖簾を分けて中を見渡しているひげ男が視界に入った。銀時と目があうが、近藤の視線はその横にすぐ向けられた。
「ああ、いたいた……おーい、こっちだ沖田ァ!」
外の方に声を掛け、近藤は店の中に入ってきた。そのまま銀時たちの方にやってくると、土方を見下ろして肩をすくめた。
「すまねぇが邪魔するぞ万事屋。……あーあー、こいつつぶれちまったのか?」
「なんか、勝手に飲んで勝手につぶれてったけど。俺に責任ねーよ?」
「いや、いいんだ。わかってる。最近こいつの様子がおかしかったからな」
「たまにまた深夜アニメとかつけてましたからね、体育座りでぼんやりしながら」
沖田がやってきて、相変わらず飄々とした声で銀時に言う。
「旦那、どーもすみません。うちの土方がつき合わせたみたいで」
「別に、土方くんの奢りらしいからいいんだけどさ。酒はちょっと飲み足りねーけど」
沖田にそういうと、彼は軽く口元だけ微笑んで土方の身体を揺らしてみたりして反応を確かめ始めた。その間に近藤が店主に声をかけている。
「おっちゃん、勘定してある? ……あ、してない? じゃ俺が払うから。いくら?」
「あーあ。ほんとにつぶれてやがら。近藤さん、ほっといて帰りやせんか? これじゃお荷物ですぜ」
「まぁそう言うな。ここんとここいつは毎日あちこち駆けずり回って鬼兵隊のことを調べまわってたんだからよ。少しくらい優しくしたってバチは当たらねーぞ総語」
酔いが回ったのもあるが、どうもくたびれていたからその回りも速かったらしい。
銀時はそんな状態でなんで土方がわざわざ自分に会いに来るのかと不思議に思ったが、口にはしなかった。
ふと、財布を取り出して店主と談笑している近藤の傍らの沖田と視線が合った。
「……土方さん、何か言ってやせんでしたか?」
肩をすくめながら銀時は応えてやる。
「……何が? 別にたいしたこと言ってなかったよぉ、お宅らの捜査じゃ結局ろくなこともわかんねーとか、結局鬼兵隊の足取りはつかめてねーとか。前に聞いたのから進展してねーってことしかわかってねーよ」
「あらら。土方さん余計なこといっぱいしゃべっちまったみてーだ」
……。俺そんなこと一切言ってねーんだけど。
高杉みてーな奴だよな、こいつ。察しがいいって言うか。
半眼の銀時に、沖田は土方を担ぎあげようと試しながら言った。
「桂のことなんですけどね」