12/10/10 22:48:44.72 ChPbAUVB0
本拠地、ビッグスワンでのホーム戦
とくに見せ場もなく惨敗だった
スタジアムに響くファンのため息、どこからか聞こえる「来年からJ2だな」の声
無言で帰り始める選手達の中、田中は独りピッチで泣いていた
J1で手にした中位力、喜び、感動・・・
それを今の新潟で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、はっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たい芝の感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰ってトレーニングをしなくちゃな」苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、ふと気付いた
「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」
田中が目にしたのは、埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのように声援が響いていた
どういうことか分からずに呆然とするの背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「アトム、円陣だ、早く行くぞ」 声の方に振り返ったは目を疑った
「マルシオ・・・さん?」 「なんだ、居眠りでもしてたのか?」
「も、森保ヘッドコーチ、広島に行ったんじゃ?」 「かってに森保さんを移籍させないでくださいよ」
「ご、高徳まで・・・」 彼は半分パニックになりながらスクリーンを見上げた
暫時、唖然としていただったが、全てを理解した時、もはや田中の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
ピッチの中央へ全力疾走する、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌日、ベンチで冷たくなっていたアトムが発見され、貢は病院内で静かに息を引き取った