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笹倉佐保子＝デビ
『生贄』とは、一九六六年五月から六七年一月にかけて『アサヒ芸能』に連載された作品である。単行本化は六七年四月。伊丹十三の装幀がほどこされ、徳間書店から出版された。
「セミ・ドキュメント小説」と題された『生贄』では、東南アジアの新興国・アルネシア連邦への戦後賠償問題が扱われている。日本からアルネシアへ総額数億ドル規模の賠償がおこなわれるにあたり、チャンスを逃がすまいと商社はしのぎをけずる。
そして国際利権劇のるつぼで、伊東さき子と笹倉佐保子というふたりの女性は、アルネシア連邦大統領・エルランガのもとへ送られていく。最初に大統領の寵愛を得たのは、伊東さき子だった。しかし、
彼女は「他人に利用されているとも知らず、まるでシンデレラ姫のような夢をみていた、阿呆な女です。しかし、誰を恨むこともありません。ただこんな惨めな想いを、もう二度と日本の女性たちに繰り返させないで下さい」と
刻んだ遺書を残し、自殺してしまう。一方、笹倉佐保子は大統領の第三夫人の地位を獲得し、アルネシア利権のキーパーソンとなっていく。
単行本のあとがきに付された梶山じしんの言葉を借りれば、「“政治力”のある女性」は「その秀れた頭脳と、美貌とを駆使して、逆に自分を利用しようとした政治家や、商人たちを手玉にとり、復讐し、勝利を収める」のだった。
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