13/03/12 01:48:24.25
再掲載
【音楽家東瑠利子、華麗なる愛】 ■第十八回■
曽祖父を失って1ヶ月。春の訪れは瑠利子の傷ついた心を癒した。
ある春の日。両親は瑠利子を花見に連れて行った。
公園の中に咲き乱れる桜の花は見る者の目を楽しませた。
父親は大きく深呼吸をして気持ちよさそうにいった。
「きれいな桜だなぁ…いい季節になったものだよ、ほんとに」
ところがそんな中で瑠利子はうつむき加減に沈痛な面持ちでいた。
「どうしたんだ瑠利子? どうかしたのか?」
と怪訝な面持ちで聞く父親に瑠利子は言った。
「だって落ちた桜の花びらがかわいそうで…もっと咲いていたかったと思うよ…
それなのに落ちてしまって…人に踏まれて痛いでしょうね…可哀相に…」
瑠利子はそういうと目に涙を浮かべた。
両親は娘の神のごとき真心の美しさに心から感銘した。
瑠利子の愛は人だけでなく、花にまで及んでいるのである。
両親は瑠利子の方にやさしく手を置くと、思わず号泣した。
(第十九回に続く)
(第十九回は今週末掲載予定です)