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【自称音楽家東瑠利子、奇妙な日々】 ■第十五回■
瑠利子は毎日渋々に幼稚園に通った。行きたくないとダダをこねた事も
あったが、父に一喝され怖くてそれ以上は言えなかった。
身体は大きく育っていたが、心が伴っていなかった。
それは他の子供と比べても明らかだった。
2月のある日。幼稚園では子供たちによる相撲大会が行われた。
男女混合の大会で、体の大きな瑠利子は途中までは女の子はもちろん、
男の子も力任せに投げ飛ばしていたが、準決勝で自分よりはるかに小さな
男の子にあっさり負けてしまった。
しかし瑠利子は負けを認めたがらず、酷く泣き叫び先生や周囲の友達を
困らせた。
表彰式でもひとりブツブツ文句を言い続け、勝者をたたえる拍手すら
しなかった。
このようなところを見ても、いかに瑠利子が勝ち負けにこだわる性格で
しかも常に自分が勝者であるべきと言う点に強く固執しているという
ことがわかる。
瑠利子は帰宅した後、両親には優勝したと報告をした。
それは彼女にとって珍しい嘘でもなんでもなく、いつもの事だった。
両親とってもその話の真偽も、もっと言えば瑠利子がどこで何をしていようと
さほど興味があるわけでもなく、その話はそこで終わりとなった。
瑠利子はわずか4歳にして極めて異常な性格や行動の兆しがみられる
ようになっており、そのことに関しても時々指摘をうけたり、時には苦情を
言われる事もあったが、母親がその都度「子供のすることですから」で
見てみぬふりをするのもまたいつもの事だった。
(第十六回に続く)