13/01/31 16:08:35.45
>>133の続き
【音楽家東瑠利子、華麗なる愛】 ■第六回■
翌25日はクリスマスであった。
午後5時ごろから近所の住人約50人がやってきた。
貧しくてクリスマスを祝うことができない貧民のために
瑠利子の両親が参加を呼びかけたためであった。
住人たちはみな涙を流して感激した。
オルガンの音に合わせて賛美歌を合唱した一同は
今まで見たこともないような巨大なクリスマスケーキに驚嘆しつつ、
瑠利子の母親の挨拶を待った。
母は言った。
「皆様、本日はお忙しいところパーティーにお集まり下さいまして
まことにありがとうございます。お口に合うかわかりませんけれども
手作りの料理もご用意いたしましたので、お召し上がりいただきたく存じます。
これらの料理はパリに居りました時に覚えましたもので、
本場の料理と日本のそれとはやはり異なるところもございますけれども
よろしければお召し上がりいただければ幸いでございます。」
貧民は今まで食べたこともないような豪華な料理に感動した。
これがクリスマスパーティーというものなのか…
驚きと共に瑠利子一家の海よりも深い自愛に涙がこぼれるのであった。
(第七回に続く)