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541 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/21(月) 01:12:18 ID:hsFw6Wqd
この事件に際し、私が知っていることを全て書こうと思います。
私は生まれながらにして渋谷を離れたことがなく、
いまは神仙にある実家で家業を継ぐ者です。
この事件があった当時、渋谷のホテル街は今よりずっと客引きが盛んで、
当然ながらそこには、地回りの暴力団の重要な資金源の一つとして、
女性をあてがう商売が盛んに行われていました。
ここで当事件の被害者Yさんは、暴力団の後ろ盾を一切持たない素人の立ちんぼだったのですが、
私を含むあの界隈の住人は、
Yさんが客引きや男に凄まれている姿を何度か見ています。
夜通しホテル街に立つ客引き達としては、
自分らのシマを勝手に荒らすYさんという認識は共通していたはず。
それでも所詮は客引きですから、本物のヤクザの凄みがあるはずもなく、
Yさんとしては特段臆することもない、あくまで小ウルサイ連中くらいの認識だったのでしょう。
それが証拠に、「殺されてえのかテメエ!」と言われている姿を見た翌日でさえ、
夜には丸山界隈を歩くYさんを、私は祖父と一緒に目撃しましたから。
そしてあの事件があった当日、私が真っ先に思ったのはあの客引きと取り巻きの暴力団員なのですが、
あの事件以降、私が顔を知る数人の客引き全員が姿を見せなくなってしまったのです。
彼らが数年に渡り立ち続けていたホテル街は、
あの日を境に今日この日まで、ただの一度も姿を見たことがありません。
客引きの中には顔見知りになった人もいて、
挨拶程度の会話を交わしていた人もいました。
ある朝方私が大学へ通学する際、その客引きとたまたま一緒に道玄坂を下ることがありました。
彼は「これからようやく帰って寝るとこ(笑)」と私に言い、
話の流れで「お住まいはどちらなんですか?」などと私が聞いたこともありました。
そんなこともあって以降、あの事件の翌日から、顔を知る客引きが一斉に消えたのは、
「あんな事件があったのだから、商売もやりづらくて辞めたんだろう」などと言う住人もいます。
しかし、私にはどうしてもそうは考えられない理由があるのです。
先述の客引きに対し、私が住まいを聞いた際、彼の答えを私はハッキリ記憶しています。
「ウチら客引きはだいたい巣鴨、事務所で借り上げしてもらってるモンでね」
― 事件の詳細が明るみになっていく中で、
Yさんの定期券が巣鴨界隈で発見された報を聞いた時、私は心の底からゾッとしたものです。
この一連の話を直接話したのは、今は亡き私の祖父だけです。
祖父はなにかの間違いだから、このことは絶対に誰にも話してはいけない。と言い、
本気になったヤクザというのは本当に恐ろしい組織なんだ、と、いつもより少しだけ強めの口調で私に言いました。
事件から10余年が過ぎたいま、ここに書き留めておきたくなった心境は私にも分かりません。
また、これら私の知る事実が、ゴビンダという人の無罪を証明する材料には何らなっていないことも承知しています。
ただ、事実を事実として知って欲しかったのです。