10/04/26 23:54:29 kZ2BndXl
AERA 2010年4月12日号
燻るプーチン首謀説-モスクワ地下鉄爆破テロ
URLリンク(megalodon.jp)
URLリンク(publications.asahi.com)
ロシアでのテロ報道は独特だ。記者発表は限定され、当局(多くはFSB)が影響力のある
メディアにリークする。そこが発信源になって次々にメディアにキャリーされ「筋書き」ができる。
その一方、現場の独自取材や内部告発で筋を疑わせる情報が発掘されることもある。
今回も現場に立ち会った警察関係者の情報として、解析された駅の監視カメラに実行犯に
付き添う「スラブ系の2人の女」が映っていたことが明らかになった。スラブ系は白色人種で
ロシア人が主。カフカスにも少数いるが、過去のテロ事件からみて筋書きへの疑念も浮かぶ。
昨年11月に起きたモスクワ発の特急列車爆破テロでも、現場から逃走した「スラブ系の男」
が警察に手配された。FSBはこの情報を握りつぶし、カフカス系テロ集団の犯行と断定。
北カフカス地域のイングーシ共和国でも掃討作戦で容疑者らを殺害、拘束したと発表した。
目撃されたスラブ系は「見届け屋」と称される工作員ではないのか。
スラブ系に限らずテロ現場に諜報機関の工作員とみられる人物が介在した例は少なくない。
02年にモスクワの劇場で起きた占拠事件では、犯行グループの中にテルキバエフという人物が
いた。FSBの突入作戦の直前に現場から逃走。後に、ジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤ
氏のインタビューに応じ、「特務機関(FSB)から送り込まれた」と告白した。
この人物はロシア有力紙の記者証を所持し、政界の実力者ロコージン議員の側近という別の
顔を持つ。正体は武装勢力を揺動するため組織に潜入したFSB工作員だった。この告白の
翌年、不審な交通事故死を遂げた。
学校占拠事件でも、ただ一人拘束された実行犯のクラエフ服役囚の裁判で、複数の人質が
「犯人には明らかにロシア人とわかるスラブ系の女がいた」と証言した。しかし、犯行現場から
女たちは忽然と姿を消した。
FSBや軍参謀本部情報総局(GRU)の特務機関が直接、破壊活動に手を染めなくとも、
工作員の揺動で「武装勢力によるテロ」という主張がまかりとおる。
こうした工作活動に、政権中枢がかかわったことを明らかにしようとしたのが、FSB元職員の
リトビネンコ氏と、前述のポリトコフスカヤ氏だ。
モスクワなどで発生した1999年のアパート連続爆破事件では、当時のエリツィン大統領を
補佐したしたプーチン首相が、チェチェン独立派の犯行と決めつけ、第2次チェチェン戦争の口火
を切って求心力を高め、自ら大統領への階段を駆け上がった。
だが、対テロ戦の裏で、事件は意外な展開をみせた。アパート爆破未遂の現場で地元警察に
逮捕された「スラブ系の不審者」がFSB工作員である可能性が高まった。この事件で、「プーチン
に権力を掌握させるためFSBが爆破テロを仕組んだ」と内部告発したのがリトビネンコ氏だった。
同じく、プーチン氏と旧KGB派の「謀略」を批判的に報道し続けたポリトコフスカヤ氏は、06年
10月に自宅アパートで射殺された。翌月、リトビネンコ氏も亡命先のロンドンで放射性物質を
投与、毒殺された。いずれも特務機関の関与が指摘される。
今回の地下鉄爆破テロで、プーチン首相は、「テロリスト」を下水道から引きずり出す」と啖呵
を切った。アパート連続爆破事件のときに、「テロリストは便所に隠れても息の根を止める」と
発言し、国民の喝采を浴びた過去を意識したのだろう。
さっそく、プーチン首相はテロ対策を強化するための法改正を明言。